JPH06242340A - 偏波保持光ファイバカプラとその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 偏波保持光ファイバ２の２つの応力付与部
５、５の中心を結ぶ線ｍ、ｍが互いに平行で、かつこの
線ｍが、各偏波保持光ファイバ２、２のコア部３、３の
中心を結ぶ線ｎと直交した状態となるように、偏波保持
光ファイバ２、２を複数本並列させ、融着延伸するべき
部位の両側において、各偏波保持光ファイバ２、２を固
定部材７、７に固定し、その後融着延伸することを特徴
とする。 【効果】 再現性良く、光学特性の安定した偏波保持光
ファイバカプラ１を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、融着延伸型の偏波保持
光ファイバカプラとその製造方法に関し、特に光学特性
の安定した偏波保持光ファイバカプラと、それを再現性
良く得るための偏波保持光ファイバカプラの製造方法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来一般に、偏波保持光ファイバを複数
本並列させ、一部を融着延伸した偏波保持光ファイバカ
プラが利用されている。偏波保持光ファイバとは、単一
モード光ファイバ中の応力分布に異方性を持たせること
により、ファイバを伝搬する２つの直交モード間の縮退
を解いて伝搬定数の差を持たせ、モード間の結合をなく
したものである。これにより、ある偏波に一致した光を
ファイバに入射すると、その偏波のみが保持されたまま
伝搬するのである。偏波保持光ファイバの例としては、
例えばコア部の両側に応力付与部を設けたＰＡＮＤＡ型
と呼ばれるものがある。ＰＡＮＤＡ型の偏波保持光ファ
イバにあっては、応力付与部に熱膨張係数の大きい材料
を用いることにより、光ファイバ母材を溶融線引きし固
化する過程で大きな歪をコア部に非等方的に生じさせる
のである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】さて、このような偏波
保持光ファイバを用いた光ファイバカプラを製造するに
際し、偏波保持光ファイバの断面内における角度配置を
正しく決めて軸合わせを行うことが重要である。図２
に、２本のＰＡＮＤＡ型の偏波保持光ファイバ２、２を
用いた偏波保持光ファイバカプラ１の断面構造の好まし
い例を示す。この例においては、２つの応力付与部５、
５の中心を結ぶ線ｍ、ｍが互いに平行で、かつこの線ｍ
が、２本の偏波保持光ファイバ２、２のコア部３、３中
心を結ぶ線ｎに直交した状態になるように、それぞれの
偏波保持光ファイバ２、２が配置されている。

【０００４】ところが従来は、応力付与部５、５の位置
を合わせることが難しく、また十分な再現性が得られて
いないのが実情である。従来の偏波保持光ファイバカプ
ラ１の断面内における角度配置の例を図１１および図１
２に示す。図１１の偏波保持光ファイバカプラ１にあっ
ては、２つの応力付与部５、５の中心を結ぶ線ｍと、２
本の偏波保持光ファイバ２、２のコア部３、３中心を結
ぶ線ｎとが、直交しておらず、また図１２の偏波保持光
ファイバカプラ１にあっては、応力付与部５、５の中心
を結ぶ線ｍ、ｍ同士が平行状態になっていない。このよ
うな角度配置では、偏波保持光ファイバカプラ１を通過
した光の偏波保持特性が低下し、クロストーク劣化を招
くことになる。クロストークとは、ｘ偏波にパワーＰｘ
を入射した時にｙ偏波に漏れるパワーＰｙの比をｄＢ表
示したものであり、一般に、 ＣＴ＝１０log10（Ｐｙ／Ｐｘ） で表されるが、図１１あるいは図１２に示した断面構造
の偏波保持光ファイバカプラ１では、クロストーク値
は、−１０ｄＢよりも悪くなることが懸念される（好ま
しい値は−２０ｄＢ以下である）。

【０００５】従来、ＰＡＮＤＡ型の偏波保持光ファイバ
２、２の偏波軸を合わせる方法として、偏波保持光ファ
イバ２、２の側面から光を当て、透過してくる光のパタ
ーンを解析することにより軸合わせするという方法があ
る。

【０００６】ところが従来は、このようにして折角軸合
わせを行っても、この偏波保持光ファイバ２、２を融着
延伸のための装置に送り込む過程等において、再び軸ず
れが生じ、図１１あるいは図１２に示したような望まし
くない角度配置になってしまうことが多々あった。その
ため、得られた偏波保持光ファイバカプラ１にあっては
偏波保持特性が低下してクロストーク劣化を生じ、また
光学的に安定した偏波保持光ファイバカプラ１を再現性
良く得ることが非常に難しかった。

【０００７】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、光学特性の安定した偏波保持光ファイ
バカプラと、それを再現性良く得るための偏波保持光フ
ァイバカプラの製造方法を提供することを目的としてい
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、本発明の偏波保持光ファイバカプラは、コア部の
両側に応力付与部を有する偏波保持光ファイバを複数本
並列させ、一部を融着延伸させた偏波保持光ファイバカ
プラにおいて、偏波保持光ファイバの２つの応力付与部
の中心を結ぶ線が互いに平行で、かつこの線が、各偏波
保持光ファイバのコア部の中心を結ぶ線と直交した状態
で、融着延伸部の両側が固定されてなることを特徴とし
ている。

【０００９】また本発明の偏波保持光ファイバカプラの
製造方法は、偏波保持光ファイバの２つの応力付与部の
中心を結ぶ線が互いに平行で、かつこの線が、各偏波保
持光ファイバのコア部の中心を結ぶ線と直交した状態と
なるように、偏波保持光ファイバを複数本並列させ、融
着延伸するべき部位の両側において、各偏波保持光ファ
イバを固定部材に固定し、その後融着延伸することを特
徴としている。

【００１０】

【作用】本発明の偏波保持光ファイバカプラにあって
は、各偏波保持光ファイバを軸合わせした状態で、融着
延伸部の両側が固定されているので、良好な偏波特性を
有する。

【００１１】また本発明の偏波保持光ファイバカプラに
よれば、各偏波保持光ファイバを軸合わせした後、融着
延伸するべき部分の両側において固定部材に固定し、そ
の後融着延伸するので、融着延伸工程に移行する際に軸
ずれすることがなく、再現性良く、光学特性の安定した
偏波保持光ファイバカプラを得ることができる。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照して、本発明の偏波保持光
ファイバカプラを説明する。図１および図２が、本発明
の偏波保持光ファイバカプラの一実施例を示すもので、
概略、複数本の偏波保持光ファイバ２、２を並列させ、
その一部を融着延伸することによって得られたものであ
る。図中符号Ａが融着延伸部、Ｂが非融着延伸部であ
る。偏波保持光ファイバ２の外周には、非融着延伸部Ｂ
において、紫外線硬化型樹脂等からなる被覆層６が設け
られている。

【００１３】偏波保持光ファイバ２は、所謂ＰＡＮＤＡ
型を呼ばれるもので、Ｇｅドープ石英等からなる高屈折
率のコア部３と、コア部３の周囲に設けられ純粋石英等
からなる低屈折率のクラッド部４と、コア部３の両側に
設けられた応力付与部５、５とを有している。応力付与
部５には、Ｂドープ石英など、熱膨張係数の大きい材料
が用いられる。

【００１４】これら偏波保持光ファイバ２、２は、偏波
保持光ファイバ２の応力付与部５、５の中心を結ぶ線
ｍ、ｍが互いに平行で、かつこの線ｍが、各偏波保持光
ファイバ２、２のコア部３、３の中心を結ぶ線ｎと直交
した状態に、配置されている。

【００１５】この状態で、各偏波保持光ファイバ２、２
は、融着延伸部Ａの両側において、固定部材７に固定さ
れている。

【００１６】固定部材７は、略板状のものであり、その
上に偏波保持光ファイバ２の非融着延伸部Ｂが載せら
れ、接着剤８によって接着、固定されている。

【００１７】固定部材７は、前記のような板状のものの
他に、例えば図３ないし図５に示したような形状、すな
わちＬ字型、Ｕ溝型あるいはＶ溝型のものなどを使うこ
ともできる。これらの形状の固定部材７によれば、前記
のような板状のものに比べて、偏波保持光ファイバ２、
２を固定し易い利点がある。

【００１８】また、偏波保持光ファイバ２を固定部材７
に固定する手段としては、前述した接着の他に、適当な
機械的手段、例えば真空チャック方式などの方法を採用
することもできる。

【００１９】このように、本実施例の偏波保持光ファイ
バカプラ１にあっては、各偏波保持光ファイバ２、２を
前述したように軸合わせした状態で、融着延伸部Ａの両
側が固定されているので、良好な偏波特性を有し、クロ
ストーク劣化の少ない安定な光学特性を示すものとな
る。

【００２０】次に、偏波保持光ファイバカプラ１の製造
方法について説明する。まず、偏波保持光ファイバ２、
２を複数本並設させて、偏波軸合わせを行う。偏波軸合
わせを行うに際しては、従来の方法を採用すればよい。
すなわち図６に示すように、光源１０からの光を偏波保
持光ファイバ２、２の側面に当て、透過した光のパター
ンをレンズ１１およびＴＶカメラ１２等で解析しなが
ら、各偏波保持光ファイバ２、２の偏波軸を合わせてい
く。偏波軸合わせは、図２に示したように、偏波保持光
ファイバ２の応力付与部５、５の中心を結ぶ線ｍ、ｍが
互いに平行で、かつこのｍ線が、各偏波保持光ファイバ
２、２のコア部３、３の中心を結ぶ線ｎと直交した状態
となるまで行う。

【００２１】次いで、偏波保持光ファイバ２、２の融着
延伸するべき部位の両側を固定部材７、７に固定する。
この時、偏波軸がずれるのを防止するために、先の偏波
軸合わせの際、偏波保持光ファイバ２の両端を、予め固
定部材７、７の上に載せておき、該固定部材７、７の上
で偏波保持光ファイバ２を回転させながら偏波軸合わせ
を行うようにするとよい。またこの時、後ですぐに融着
延伸に取り掛かることができるよう、図７に示すよう
に、２本の偏波保持光ファイバ２、２の融着延伸するべ
き部位を、予め接触させた状態で、接着剤９等により固
定しておくとよい。

【００２２】次に、こうして固定された偏波保持光ファ
イバ２、２を融着延伸装置に移動して、融着延伸を行
う。融着延伸は、図８に示すように、両側に延伸力を加
えながら、先に固定部材７、７に固定された箇所の中間
程度の位置を加熱溶融させることによって行う。得られ
た偏波保持光ファイバカプラ１を、所定の補強器（図示
略）に収容して、目的の偏波保持光ファイバカプラを得
る。

【００２３】このように、本実施例の偏波保持光ファイ
バカプラの製造方法によれば、各偏波保持光ファイバ
２、２を前述した状態となるように軸合わせした後、融
着延伸するべき部分の両側において固定部材７、７に固
定し、その後融着延伸するので、融着延伸工程に移行す
る前に軸ずれすることを防止できる。したがって、再現
性良く、光学特性の安定した偏波保持光ファイバカプラ
１を得ることができる。

【００２４】以下、具体的実施例を示して、本発明の効
果を明らかにする。コア径８μｍ、応力付与部径３０μ
ｍ、外径１２５μｍ、被覆径２５０μｍの単一モード偏
波保持光ファイバを用い、これを２本並設させて軸合わ
せした後、両端を板状の固定部材に接着、固定し、その
後融着延伸して、波長１.３０μｍ、分岐比１：１の偏
波保持光ファイバカプラを作製した。

【００２５】こうして得られた偏波保持光ファイバカプ
ラの結合度波長特性を測定した。測定は、図９に模式的
に示したように、ポート１（Ｐ１）より光を入射させ、
Ｐ２、Ｐ３に出射した光を測定した。結果を、図１０に
示す。

【００２６】図１０より、実施例の偏波保持光ファイバ
カプラにおいて、良好な結合度波長特性を有しているこ
とが明らかであった。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の偏波保持
光ファイバカプラとその製造方法によれば、偏波保持光
ファイバの偏波軸合わせを行った後固定部材に固定する
ので、融着延伸時に、偏波保持光ファイバが軸ずれする
ことを防止できる。したがって、良好な偏波特性を有
し、クロストーク劣化の少ない安定な光学特性を示す偏
波保持光ファイバカプラを、再現性良く得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の偏波保持光ファイバカプラの一実施例
を示す斜視図である。

【図２】同偏波保持光ファイバカプラの断面図である。

【図３】図１における固定部材とは異なる例の固定部材
を示す断面図である。

【図４】固定部材の他の例を示す断面図である。

【図５】固定部材の他の例を示す断面図である。

【図６】偏波保持光ファイバを軸合わせする方法を示す
断面図である。

【図７】偏波保持光ファイバを固定部材に固定する方法
を示す断面図である。

【図８】偏波保持光ファイバを融着延伸する方法を示す
断面図である。

【図９】実施例の偏波保持光ファイバカプラへの光の入
射を模式的に示す図である。

【図１０】実施例の偏波保持光ファイバカプラの結合度
波長特性を示す図である。

【図１１】従来の偏波保持光ファイバカプラの一例を示
す断面図である。

【図１２】従来の偏波保持光ファイバカプラの他の例を
示す断面図である。

【符号の説明】

１ 偏波保持光ファイバカプラ ２ 偏波保持光ファイバ ３ コア部 ５ 応力付与部 ７ 固定部材 ｍ ２つの応力付与部の中心を結ぶ線 ｎ 各偏波保持光ファイバのコア部の中心を結ぶ線

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コア部の両側に応力付与部を有する偏波
   保持光ファイバを複数本並列させ、一部を融着延伸させ
   た偏波保持光ファイバカプラにおいて、 偏波保持光ファイバの２つの応力付与部の中心を結ぶ線
   が互いに平行で、かつこの線が、各偏波保持光ファイバ
   のコア部の中心を結ぶ線と直交した状態で、融着延伸部
   の両側が固定されてなることを特徴とする偏波保持光フ
   ァイバカプラ。
2. 【請求項２】 偏波保持光ファイバの２つの応力付与部
   の中心を結ぶ線が互いに平行で、かつこの線が、各偏波
   保持光ファイバのコア部の中心を結ぶ線と直交した状態
   となるように、偏波保持光ファイバを複数本並列させ、
   融着延伸するべき部位の両側において、各偏波保持光フ
   ァイバを固定部材に固定し、その後融着延伸することを
   特徴とする偏波保持光ファイバカプラの製造方法。