JPH0623547A - パルスアーク溶接装置 - Google Patents

パルスアーク溶接装置

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JPH0623547A
JPH0623547A JP18088792A JP18088792A JPH0623547A JP H0623547 A JPH0623547 A JP H0623547A JP 18088792 A JP18088792 A JP 18088792A JP 18088792 A JP18088792 A JP 18088792A JP H0623547 A JPH0623547 A JP H0623547A
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Hitoshi Matsui
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は1パルス毎にワイヤ溶滴をワーク上
に滴下させるパルスアーク溶接装置に関し、ワイヤとワ
ークの短絡を検知して短絡時期を適正化することによ
り、常に良好な溶接を行うことを目的とする。 【構成】 ワイヤ13とワーク11との間に電圧検出回
路22、短絡判定基準電圧発生回路24及び比較器23
からなる短絡検出装置を設ける。平均電圧設定回路25
は短絡検出信号が送信されたら設定値を上げる。短絡発
生時期を検出する短絡発生時期算出回路30とパルス波
形修正指令回路31とを接続する。パルス波形修正指令
回路31は短絡が適正な時期にされるようにパルス出力
設定部32に指令を出す。電流波形設定回路38はワイ
ヤ13とワーク11との間隔を短絡限界位置に保持しつ
つ適正時期にワイヤ溶滴が滴下されるように電流波形を
設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパルスアーク溶接装置に
係り、特にアーク放電の熱で溶融したワイヤ溶滴を、1
パルス毎にそのピンチ力で絞り出して被溶接材上に滴下
させるパルスアーク溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、アーク溶接の消耗電極である
ワイヤと被溶接材であるワークとの間に、直流のベース
電流とパルス状の電流とが重畳されたアーク放電を形成
して、溶接によるスパッタの発生を抑制するアーク溶接
装置が知られている(特公昭62−50221号公
報)。
【0003】上記のような溶接装置において、ワイヤと
ワークとの間に上記のパルス電流(アーク電流)が流れ
ると、ワイヤの先端部には、パルス電流が流れる度にパ
ルス電流が引き起こす磁力によるピンチ力が生じる。ま
た、ワイヤとワークとの間にアーク放電が形成している
場合、ワイヤの先端部はその放電の熱により溶融する。
このため、アーク放電の熱で溶融したワイヤ先端部は、
パルス電流によるピンチ力により絞り出され、被溶接部
位に滴下される。
【0004】また、上記公報記載の装置は、ワイヤとワ
ークとの間に生じる電位差を監視して、所望のアーク長
を維持することができる。すなわち、アーク電圧等放電
条件を一定に保持してアーク放電の安定化を図ることが
できる。このため、その放電条件を適当に設定すれば、
1パルスのパルス電流毎にワイヤ溶滴をワーク上に滴下
させることができる。
【0005】このようなアーク溶接装置によれば、ワイ
ヤ溶滴が規則的にワーク上に滴下されるため、溶接ビー
ドの外観が綺麗であることに加え、アーク放電の安定化
やスパッタの低減が可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の装
置においては、1パルス毎にワイヤ溶滴がワーク上に滴
下されるための放電条件と、所望のアーク長を維持する
ための放電条件とが一致することを前提としている。こ
のため、何らかの原因で、この前提が不成立となると、
1パルス毎の滴下がされなくなる。
【0007】例えば、溶接トーチとワークとの相対位置
がばらついた場合、アーク長が一定であるから、溶接ト
ーチの給電部からワイヤの先端部までの距離がばらつ
く。このため、溶接トーチの給電部とワイヤの先端部と
の間の電気抵抗値がばらつき、ワイヤを流れる電流によ
る発熱量がばらつくことになる。
【0008】つまり、このばらつきによりワイヤ自身の
温度が変動し、ワイヤを溶融させるために必要な放電条
件が変わることになる。このため、所定のアーク長に保
持するための放電条件と、1パルス毎にワイヤ溶滴がワ
ーク上に滴下されるための放電条件とが食い違ってしま
う場合がある。
【0009】同様に、ワイヤを構成する成分が変わり、
溶融時におけるワイヤの表面張力が変化したような場合
には、ワイヤを滴下させるのに要するピンチ力が変動し
て、所定のアーク長に保持するための放電条件と、1パ
ルス毎にワイヤ溶滴がワーク上に滴下されるための放電
条件とが食い違ってしまう。
【0010】また、上記の装置においては、放電用電源
の二次側回路、すなわち電源とワイヤを接続するパワー
ケーブルと、ワークをセットするワークセット治具と電
源を接続するパワーケーブルとの間の電圧降下をアーク
電圧としている。
【0011】このため、パワーケーブルの長さや断面積
が変わったり、ワークとワークセット治具との間に異物
が介在して、その間の電気抵抗値が変動した場合は、正
真のアーク電圧がこの影響を受けて、所望のアーク長が
得られないことになる。
【0012】更に、上記従来のアーク溶接装置では、溶
接トーチからワイヤを送りだす速度が、ワイヤの曲率半
径の変化や、ワイヤの摩耗カスの影響で所定の速度より
遅くなることがある。この場合は、供給されるワイヤの
絶対量が不足し、上記の場合と同様、所定のアーク長を
得るための放電条件と、1パルス毎にワイヤ溶滴をワー
ク上に滴下するための条件と両立しない場合がある。
【0013】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、ワイヤ溶滴によりワイヤとワークとが短絡する
時期を検出して、適正な時期に適当な滴下がされるよう
にフィードバック制御を行い、常に良好な溶接を行うこ
とができるパルスアーク溶接装置を提供することを目的
とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、所定の速
度で順次供給される消耗電極を用いるパルスアーク溶接
装置において、図1の原理図に示すように、前記消耗電
極と被溶接物との間にアーク放電を形成する放電手段M
1と、該放電手段M1で形成されたアーク放電の電流ま
たは電圧を監視して、前記消耗電極の溶融滴により前記
消耗電極と前記被溶接物との短絡を検出する短絡検出手
段M2と、該短絡検出手段M2の発する短絡検出信号に
基づいて、短絡発生時期が前記放電手段が放電すべきパ
ルス放電の周期に対して、早期領域か適正領域か後期領
域かを判断する短絡時期判断手段M3と、前記短絡検出
手段M2の短絡検出時に、前記放電手段M1が放電すべ
き放電出力の設定値を所定の幅で上げると共に、前記短
絡時期判断手段M3の出力信号に基づいて、短絡がパル
ス放電の周期に対して適正領域で生じるように、パルス
出力の電流波形を設定し直す放電条件設定手段M4とか
らなるパルスアーク溶接装置で解決される。
【0015】
【作用】上記の構成によれば、前記消耗電極と前記被溶
接物が短絡すると、前記放電手段で形成されているアー
ク放電の放電出力が上がって、前記消耗電極の消耗速度
が早くなる。このため、前記消耗電極と前記被溶接物と
の間隔が広がり、短絡が解消される。
【0016】また、前記消耗電極と前記被溶接物が短絡
すると、前記短絡時期判断手段の出力に基づいて、短絡
がパルス放電の周期に対して適正な時期に行われるよう
に前記放電手段のパルス出力が変更される。
【0017】前記消耗電極と前記被溶接物の短絡は、前
記消耗電極の溶融部が前記被溶接物上に滴下することに
より起こる。従って、前記短絡時期判断手段の出力に基
づいて前記放電手段のパルス出力が変更されると、前記
消耗電極の溶融滴が前記被溶接物上に滴下される時期が
適正化される。
【0018】従って、前記消耗電極の滴下が、前記放電
手段の出力するパルス出力と同期して、1パルス毎に1
回の滴下が確実に確保されると共に、スパッタの発生が
抑制される。
【0019】
【実施例】図2は、本発明に係るパルスアーク溶接装置
の一実施例の構成図を示す。同図中、符号1は一次入力
の整流回路を表す。この整流回路1の出力端子は平滑回
路2に接続され、次いで、パワー素子回路3に接続され
る。パワー素子回路3は、後述の制御装置20の出力信
号に基づいて、所望の波形のアーク電流を発生する回路
である。
【0020】また、パワー素子回路3の出力端子は高周
波トランス4と接続されている。トランス4は整流回路
5に接続され、整流回路5の出力端子のうち正極は、リ
アクトル6を有するパワーケーブル8を介して溶接トー
チ10に、また整流回路5の負極はシャント7を有する
パワーケーブル9を介して被溶接物であるワーク11に
接続されている。
【0021】溶接トーチ10には、その中心軸に沿っ
て、ワイヤリール12から供給されるワイヤ13が挿入
されている。このワイヤ13は溶接トーチ10内でパワ
ーケーブル8と電気的に導通している。またワイヤ13
は本実施例装置でアーク溶接を行う際の消耗電極に相当
し、モータ制御回路14の制御信号に基づいて回転する
1対のワイヤ供給ローラ15に挟まれている。
【0022】以上が放電手段に相当し、その動作につい
ては、従来のパルス溶接装置の場合と同様である。すな
わち、装置の一次側に供給された3相交流は、整流・平
滑された後直流電源としてパワー素子回路3に供給され
る。以後、制御装置20の信号に基づいてパワー素子回
路3から出力された所望の波形の信号は、降圧・整流等
の波形成形を経て、直流のベース電流と所望のパルス電
流とが重畳されたアーク電流として、ワイヤ13とワー
ク11との間に供給される。
【0023】このため、ワイヤ13とワーク11との間
でアーク放電を開始させると、直流ベース電流と所望の
パルス電流が重畳した電流波形を有するアーク放電が形
成される。また、このときワイヤ13の先端はこのアー
ク放電の熱により溶融し、ワイヤ溶滴としてワーク11
上に滴下されて徐々に消耗する。モータ制御回路14
は、この消耗分を供給するような速度でワイヤ供給モー
タ15を回転させて所定の速度でワイヤ13を順次供給
する。
【0024】尚、本実施例装置においては、パワー素子
回路3に与える信号により、ワイヤ13とワーク11と
の間に形成されるアーク電流のベース時間、ベース電流
値、パルスピーク電流値、及びパルスピーク時間を変更
することができる。
【0025】以下、本実施例の要部である制御装置20
の構成について説明する。本実施例装置においては、短
絡検出手段、短絡時期判断手段及び放電条件設定手段を
この制御装置20で構成している。
【0026】制御装置20内の電流検出回路21は、上
記のシャント7の両端に接続され、その両端の電位差か
らアーク電流を検出する。また、電圧検出回路22は、
上記のパワーケーブル8、9にそれぞれに接続され、そ
れらの間の電位差からアーク電圧を検出する。
【0027】図3は、ワイヤ13とワーク11との間に
標準的なパルス電流及びベース電流を供給して、ワイヤ
13とワーク11との間が短絡した際に、電流検出回路
21及び電圧検出回路22が検出する波形を示す。尚、
同図(A)はワイヤ13の状態を、同図(B)、(C)
はそれぞれ電流検出回路21、電圧検出回路22が検出
する波形を示す。
【0028】同図中、時刻T1 にパルス電流が立ち上が
ると、同図(B)、(C)に示すようにアーク電流及び
アーク電圧が共に上昇する。このとき、ワイヤ13の先
端部には、このパルス電流による強いピンチ力が働く。
このため、ワイヤ13先端の溶融部は、同図(A)に示
すように時間の経過と共に絞り出される。
【0029】図3(A)は、ワイヤ13とワーク11と
の間隔が狭い場合を表しており、ワイヤ13の溶融部
(ワイヤ溶滴)がワーク12上に滴下する際(同図中、
時刻Ts)、ワイヤ13とワーク11の短絡現象が生じ
ている。
【0030】このため、同図(B)、(C)に示すよう
に、電流、電圧波形は時刻Tsで変動を示し、特に電圧
波形は、短絡現象が終わるまでほぼ電圧0となる。すな
わちアーク電流またはアーク電圧を監視することによ
り、ワイヤ13とワーク11の短絡については検出が可
能となる。本実施例装置においては、検出が容易である
ことから電圧検出回路22が検出するアーク電圧に基づ
いて上記の短絡の検出を行っている。
【0031】図2に示すように、電圧検出回路22の出
力端子は、短絡判定基準電圧発生回路24の出力端子が
接続されている比較器23に接続され、ここでワイヤ1
3とワーク11との間に短絡が生じているか否かが判定
される。上記の電圧検出回路22、比較器23及び短絡
判定基準電圧発生回路24が短絡検出手段に相当する。
【0032】比較器23の出力端子は、平均電圧値設定
回路25に接続されており、短絡が検出された場合、そ
の信号を即座に平均電圧値設定回路25に送信する。平
均電圧値設定回路25は、この信号を受けたら、ワイヤ
の消耗速度を早めて短絡が生じないだけの間隔を確保す
るために、平均電圧設定値を所定値だけ高く設定し直
す。
【0033】平均電圧値設定回路25の出力端子は、比
較器26に接続されている。また、比較器26のもう一
方の入力端子には電圧値平均化回路27が接続されてい
る。この電圧値平均化回路27は、上記の電圧検出回路
が検出したアーク電圧を平均化する回路で0平均電圧の
実測値を出力する回路である。
【0034】また、比較器26の出力端子はベース時間
設定回路28に接続されている。このため、平均電圧値
の設定値と実測値が同一になるように、ベース時間が増
減される。すなわち、設定値が実測値より高い場合は、
パルス電流が占める割合を増やすためベース時間が減ら
され、その逆の場合は、ベース時間が増やされ、ワイヤ
13の消耗が抑制される。
【0035】一方、平均電圧値設定回路25には、比較
器23の他に設定電圧値減少指令回路29が接続されて
いる。この設定電圧値減少指令回路29は所定の幅で平
均電圧設定値を減少させる指令を送信する回路である。
このため、平均電圧値設定回路25で設定される平均電
圧設定値は、短絡が検出されない間は常に減少を続け
る。平均電圧設定値が減少すると、ワイヤ13の溶融速
度が遅くなり、ワイヤ13とワーク11との間隔は徐々
に狭くなりやがて短絡する。
【0036】上記したように、ワイヤ13とワーク11
とが短絡した場合は、平均電圧設定値が所定幅だけ増加
する。すると、ワイヤ13の溶融速度が早くなり、ワイ
ヤ13とワーク11との間隔が広がり短絡が防止され
る。その後再び平均電圧設定値が減少を始め、以後、上
記の制御が繰り返される。
【0037】図4は、本実施例装置において、1パルス
毎にワイヤ溶滴をワーク11上に滴下させるための条件
を示している。同図中、斜線で示す領域(領域A)が条
件の成立する領域で、それよりパルスピーク時間Tpが
短い、またはパルスピーク電流Ipが低い領域(領域
B)や、Tpが長い、またはIpが高い領域(領域C)
は条件不成立の領域である。
【0038】図5は、上記の各領域置におけるワイヤ溶
滴の滴下時期とアーク電流との関係を示す。尚、同図
(A)、(B)、(C)はそれぞれ領域A、B、Cにお
ける状態を示している。
【0039】同図(A)に示すように、1パルス毎にワ
イヤ溶滴をワーク11上に滴下させる条件が成立してい
る場合、時刻T1 にパルス電流が立ち上がるとワイヤ1
3の先端にパルス電流によるピンチ力が作用し、溶融部
の絞り出しが始まり、パルス電流が立ち下がる時刻T2
と次回のパルス電流が立ち上がる時刻T3 との間の時刻
Taにワイヤ溶滴の滴下が行われる。
【0040】これに対して、Tpが小さいか、またはI
pが低いためピンチ力が不足している領域Bにおいて
は、同図(B)に示すように、1パルスで十分に溶融部
を絞り出すことができない。このため、溶融部が滴下さ
れる時刻Tbが次回のパルス電流が立ち上がる時刻T3
より後になり、1パルス毎にワイヤ溶滴が滴下できてい
ない。
【0041】また、Tpが大きいか、Ipが高いかして
ピンチ力が強すぎる領域Cにおいては、同図(C)に示
すように、パルスが立ち下がる時刻T2 より早くワイヤ
溶滴が滴下される(時刻Tc)。このため、次回のパル
ス電流が立ち上がる際には、ワイヤの溶融がかなり進ん
でおり、更に早いタイミングで滴下が行われる。このよ
うに、ピンチ力が大きすぎる場合は、パルス電流の周期
よりワイヤ溶滴が滴下される周期の方が早く、1パルス
毎に1回を超える滴下がされることになる。
【0042】また、領域Aを満たすTp及びIpの条件
は、ワイヤ13の温度、溶融時における表面張力の違い
等により変動するため、TpとIpを固定値として扱う
ことはできない。
【0043】そこで、本実施例装置においては、ワイヤ
溶滴の滴下時期を監視し、その滴下が適正な時期に行わ
れるようにパルス電流の出力を制御している。以下、こ
の滴下時期制御について説明する。
【0044】図2に示すように、比較器23の出力端子
は、平均電圧値設定回路25の他に放電時期検出手段に
相当する短絡発生時期算出回路30にも接続されてい
る。また、短絡発生時期算出回路30は、電流波形設定
回路38と接続されている。この電流波形設定回路38
は、ワイヤ13とワーク11との間に流すアーク電流波
形を設定する回路で、パルス電流の立ち上げ、立ち下げ
時期及び、ベース電流、パルスピーク電流を設定してい
る。
【0045】このため、短絡発生時期算出回路30に、
比較器23から短絡検出信号が送信されてきた場合、そ
の短絡がどのタイミングで起きた短絡であるかを判定す
ることができる。
【0046】短絡発生時期算出回路30の出力端子は、
パルス波形修正指令回路31と接続されている。このパ
ルス波形修正指令回路31は、短絡発生時期算出回路3
0から送信されてくる信号に基づいて、パルス出力設定
部32の設定内容を修正する指令を送信する回路であ
る。
【0047】図6に、本実施例装置における滴下時期判
定基準を表す図を示す。本実施例装置においては、パル
ス電流が立ち上がった後所定時間経過後の時刻t1
ら、パルス電流立ち下がり時刻t2 までの間に短絡が発
生した場合、溶融部から溶滴への早期移行(上記、図5
(C)に相当)であると判断する。
【0048】また、時刻t2 から次回のパルス電流立ち
上がり前の所定時刻t3 までの間に発生した場合は適正
移行(図5(A)に相当)、時刻t3 から次回のパルス
電流立ち上がり後の所定時刻t4 までの間に発生した場
合を後期移行(図5(B)に相当)として判断してい
る。
【0049】すなわち、早期移行(t1 <短絡発生時刻
Ts≦t2 )であれば、パルス波形修正指令回路31か
らパルス出力設定部32に対して、パルス出力を下げる
ような指令が送られ、適正移行(t2 <Ts≦t3 )な
ら現状維持、後期移行(t3<Ts≦t4 )ならパルス
出力を上げるような指令が送られる。
【0050】尚、本実施例装置においては、時刻t3
次回のパルス電流が立ち上がる時刻との間に所定の間隔
をあけてある。このため、適正範囲内で発生した短絡が
何らかの要因で長引いても、次回のパルス電流が立ち上
がるまで持続されることがない。従って、適正範囲内に
短絡したワイヤ溶滴にパルス電流が流れてスパッタの原
因となることはない。
【0051】本実施例装置のパルス出力設定部32は、
ベース電流設定回路33、パルスピーク電流設定回路3
4及びパルスピーク時間設定回路35から構成される。
ここで、例えばパルス波形修正指令回路31からパルス
出力を下げる旨の指令がきたら、これらの回路のうち少
なくとも1つの回路の設定値を下げる。また、パルス波
形修正回路31からパルス出力を上げる旨の指令がきた
ら、これらの回路のうち少なくとも1つの回路の設定値
を上げる。
【0052】このパルス出力設定部32と上記のベース
時間設定回路28は放電条件設定手段を構成し、ベース
時間設定回路28、ベース電流設定回路33、パルスピ
ーク電流設定回路34及びパルスピーク時間設定回路3
5の出力端子は、共に電流波形設定回路38と接続され
ている。
【0053】また、上記したように、ベース時間設定回
路28は、ワイヤ13とワーク11が短絡したら、それ
らの間隔を開いて短絡を防止し、次いで再び短絡するま
でその間隔を狭めてワイヤ13とワーク11を短絡させ
るようにベース時間を設定している。
【0054】このため、電流波形設定回路38で設定さ
れる電流波形によれば、ワイヤ13の先端部は、常にワ
ーク11と短絡するかしないかの位置に保持され、かつ
ワイヤ13とワーク11が短絡する度に、短絡発生時期
が適正な時期に修正される。
【0055】電流波形設定回路38の出力信号は、比較
器36に供給され、この比較器36において上記の電流
検出回路21の出力と比較される。また、比較器36の
出力端子は、上記のパワー素子回路3を駆動するパワー
素子駆動回路37に接続されている。このため、パワー
素子駆動回路37は、比較器36の作用により、ワイヤ
13とワーク11との間を流れるアーク電流が電流波形
設定回路38で設定された電流波形と同一になるように
パワー素子回路3を駆動する。
【0056】図7は、本実施例装置の効果を説明するた
めの図を示す。以下同図に沿って、本実施例装置の効果
について説明する。同図中、横軸に示すパルス出力は図
2のパルス出力設定部32で設定された出力を表す。
【0057】また、図7中破線より上の領域(同図中、
A2、A3、B3、C3)は、アーク長が大であるため
短絡を起こさない領域を、破線より下の領域(同図中、
A1、B1、B2、C1、C2)は短絡を起こす領域を
示す。
【0058】ここで、後期移行領域における短絡(同図
中、B1、B2における短絡))及び早期移行領域にお
ける短絡(同図中、C1、C2における短絡)は、ワイ
ヤ13とワーク11との間にパルス電流が流れている際
に起こる。このため、その際に発生するスパッタは、適
正移行領域における短絡(同図中、A1における短絡)
の際の発生するスパッタに比べて大きいものとなる。
【0059】また、同図中、B2、C2では短絡が起こ
るのに、A2において短絡が起こらないのは、後期移行
及び早期移行の領域では、ワイヤ13の溶融部がパルス
電流のピンチ効果により絞られて縦長に変形している間
に短絡が起こるからである。
【0060】上記したように、本実施例装置において
は、ワイヤ13とワーク11の間隔が広く短絡を起こさ
ない場合、ワイヤ13の消耗速度を抑制して短絡を起こ
させる。すなわち、アーク溶接開始時においてワイヤ1
3とワーク11との位置関係が、図7中領域A3、B
3、C3にある場合、それぞれ領域A2、B2、C2へ
と移行する。
【0061】B2、C2へと移行した場合は、この時点
でワイヤ13とワーク11が短絡する。この場合、上記
したように以後の短絡を防止するため、アーク長を長く
する。同時に、この短絡からそれぞれが後期移行、また
は早期移行の領域にあることが判定され、適正移行の領
域に修正される。従って、B2、C2の領域にあったア
ーク電流条件はA3方向に修正され、A3に達するまで
同様の動作が繰り返される。
【0062】A3からA2に移行した場合は、まだワイ
ヤ13とワーク11が短絡していないため、更にアーク
長が短くされてA1へと移行する。A1に達すると、ワ
イヤ13とワーク11との短絡が検出されるため、以後
の短絡を防止するためアーク長が長くされる。
【0063】この場合、短絡は適正な時期にされている
と判定されるため、パルス出力Pはそのままとされ、以
後、短絡発生時期がずれるまで、A1、A2間を往復す
る。
【0064】また、アーク放電開始時において、アーク
電流の条件がB1、C1であった場合も上記の動作と同
様に、短絡防止のためアーク長が長くされると同時に短
絡が適正な時期の発生するようにパルス出力Pが修正さ
れて、A1、A2間の往復制御に収束する。
【0065】このように、本実施例装置によれば、常に
短絡発生時期、つまりワイヤ溶滴の滴下時期が適正な時
期に保たれ、1パルス毎にワイヤ溶滴をワーク上に滴下
することができる。このため、溶接トーチ10の位置が
ばらついたり、パワーケーブル8、9の抵抗値が変更さ
れたりして1パルス毎にワイヤ溶滴をワーク11上に滴
下させるためのアーク電流条件が変化した場合でも、そ
れらの影響を受けずに常に良好な溶接品質を確保するこ
とができる。また、後期移行及び早期移行領域において
ワイヤ13とワーク11が短絡することが稀であるた
め、溶接品質に影響を与えるような大きなスパッタの発
生を抑制することができる。
【0066】更に、本実施例装置では、常にワイヤ13
とワーク11を短絡限界付近の間隔として短いアーク長
で保持しているため、磁気吹き等によってアークが前後
左右にふらつくことが無く、高速溶接においても安定し
た溶接を行うことができる。
【0067】尚、本実施例装置においては、パルス出力
設定部32内にベース電流設定回路33、パルスピーク
電流設定回路34及びパルスピーク時間設定回路35を
設けているが、これに限るものではなく、これらの回路
の内少なくとも1つの回路を設けてあれば良い。
【0068】また、ベース時間設定回路28及びパルス
出力設定部32に記憶回路を組み込んで、設定値を記憶
する構成としても良い。この構成によれば、同一条件の
繰り返し溶接が行われる際には、前回の溶接中に設定さ
れた設定条件が次回の溶接開始時の設定条件となり、溶
接開始当初から良好な溶接品質が確保される。
【0069】
【発明の効果】上述の如く、本発明によれば、常に消耗
電極の滴下時期が適正な時期に保たれ、1パルス毎にそ
の溶滴を被溶接物上に滴下するための放電条件が変化し
た場合でも、常に良好な溶接品質を確保することができ
る。
【0070】また、パルス電流が流れている間に消耗電
極と被溶接物が短絡することが稀であるため、溶接品質
に影響を与えるような大きなスパッタの発生を抑制する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパルスアーク溶接装置の原理図で
ある。
【図2】本発明に係るパルスアーク溶接装置の一実施例
の構成図である。
【図3】本実施例装置において、ワイヤとワークが短絡
した際の電流及び電圧波形を示す図である。
【図4】本実施例装置において、1パルス毎にワイヤ溶
滴をワーク上に滴下させる条件を示す図である。
【図5】本実施例装置において、ワイヤ溶滴が滴下され
る時期とアーク電流との関係を示す図である。
【図6】本実施例装置において、ワイヤ溶滴を滴下する
時期を示す図である。
【図7】本実施例装置の効果を説明するための図であ
る。
【符号の説明】
M1 放電手段 M2 短絡検出手段 M3 短絡時期判断手段 M4 放電条件設定手段 10 溶接トーチ 11 ワーク 13 ワイヤ 21 電流検出回路 22 電圧検出回路 23、26、36 比較器 24 短絡判定基準電圧発生回路 25 平均電圧値設定回路 28 ベース時間設定回路 29 設定電圧値減少指令回路 30 短絡発生時期算出回路 32 パルス出力設定部 33 ベース電流設定回路 34 パルスピーク電流設定回路 35 パルスピーク時間設定回路

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の速度で順次供給される消耗電極を
    用いるパルスアーク溶接装置において、 前記消耗電極と被溶接物との間にアーク放電を形成する
    放電手段と、 該放電手段で形成されたアーク放電の電流または電圧を
    監視して、前記消耗電極の溶融滴により前記消耗電極と
    前記被溶接物との短絡を検出する短絡検出手段と、 該短絡検出手段の発する短絡検出信号に基づいて、短絡
    発生時期が前記放電手段が放電すべきパルス放電の周期
    に対して、早期領域か適正領域か後期領域かを判断する
    短絡時期判断手段と、 前記短絡検出手段の短絡検出時に、前記放電手段が放電
    すべき放電出力の設定値を所定の幅で上げると共に、前
    記短絡時期判断手段の出力信号に基づいて、短絡がパル
    ス放電の周期に対して適正領域で生じるように、パルス
    出力の電流波形を設定し直す放電条件設定手段とからな
    ることを特徴とするパルスアーク溶接装置。
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