JPH06218425A - 異形棒あるいは異形管の引抜加工方法およびその引抜加工用金型 - Google Patents

異形棒あるいは異形管の引抜加工方法およびその引抜加工用金型

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JPH06218425A
JPH06218425A JP2494393A JP2494393A JPH06218425A JP H06218425 A JPH06218425 A JP H06218425A JP 2494393 A JP2494393 A JP 2494393A JP 2494393 A JP2494393 A JP 2494393A JP H06218425 A JPH06218425 A JP H06218425A
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Masami Kawada
正美 川田
Yuko Tsuchiya
祐子 土屋
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Nikkei Techno Research Co Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
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Nikkei Techno Research Co Ltd
Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 矯正工程を経ること無しに高い真直度を得る
ことができ、品質のより安定した異形棒あるいは異形管
をより安価に製造する。 【構成】 ダイス1のダイス半角αを5°以下とし、製
品3の断面形状と相似な断面形状をもつ素材2を引抜加
工途中においても製品断面形状と相似関係を維持しつつ
2回以上引抜加工を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、円形断面をもたない異
形棒あるいは異形管を引抜加工するための引抜加工方法
および引抜加工用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常の丸棒、管のような円形断面をもつ
抽伸製品は、冷間引抜加工後矯正工程を経て製品仕様を
満足する真直度を得ることが一般的である。しかしなが
ら、四角棒、六角棒に代表される異形棒あるいは異形管
は、円形断面をもつ抽伸製品と異なり、機械設備による
曲がり矯正工程をもつことは希である。その理由は、特
定製品だけにしか利用できない専用設備となり、設備は
高価で、かつ需要も一般的には専用設備をもつほど多く
を期待できないからである。したがって、異形棒あるい
は異形管の引抜加工は通常挺子を利用するような仕方で
製品自身を挺子とし、曲がり方向およびその程度を目視
で判定しつつ、一本ずつ手作業で矯正していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、異形棒
あるいは異形管の引抜加工方法においては、上述のよう
な手作業による矯正工程を必要とするため、生産性が低
く、製造原価を大幅に上昇させるという問題があった。
また、製品の真直度に関する品質にある範囲の分布をも
ち、1本1本あるいは製造機械ごとにその均質性に欠け
る嫌いがあるという問題もあった。
【0004】したがって、本発明は上記したような従来
の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするとこ
ろは、矯正工程を経ること無しに高い真直度を得ること
ができ、品質のより安定した異形棒あるいは異形管をよ
り安価に製造することができるようにした引抜加工方法
およびその引抜加工用金型を提供することにある。
【0005】本発明者は上記目的を達成するため種々の
実験と研究を重ねた結果、引抜工程および金型形状の組
み合わせにより、矯正工程を経ることなしに真直度に関
する難易度の高い製品仕様を満足する異形棒あるいは異
形管を得ることができる引抜加工方法および引抜加工用
金型を見出すことができた。すなわち、ダイス半角を5
°以下とし、製品断面形状と相似な断面形状をもつ素材
を引抜加工途中においても製品断面形状と相似関係を維
持しつつ2回以上引抜加工を行うものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、その第1の発明は、引抜加工用金型により円形断面
をもたない異形棒あるいは異形管を引き抜く引抜加工方
法において、製品断面形状と相似な断面形状をもつ素材
を引抜加工途中においても製品断面形状と相似関係を維
持しつつ2回以上引き抜くものである。第2の発明は、
上記第1の発明において、アルミニウム合金を含む銅、
黄銅等の展伸用金属あるいはその合金からなる引抜素材
をダイスによって引き抜くものである。第3の発明は、
上記第1または第2の発明に用いられる引抜加工用金型
において、ダイス半角が最大5°以下で、引抜加工途中
においても製品断面形状と相似関係を維持しつつ塑性変
形するよう規定したアプローチ形状を有するものであ
る。
【0007】
【作用】本発明においては、製品断面形状(ダイス形
状)と相似関係を維持しつつ塑性変形させると塑性変形
が等方的に進行して変形が少なく、またダイス半角を5
°以下に設定すると、素材の寸法あるいは表面性状の変
動に起因する製品真直度の変動が少なく、しかも引抜加
工時の塑性変形が横断面全域にわたって均一な変形とな
る。したがって、高い真直度の引抜加工を行うことがで
きる。
【0008】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。図1はダイスの縦断面図、図2は同ダ
イスの横断面図である。本実施例は断面形状が四角形の
異形棒の引抜加工に適用した場合を示す。1は引抜加工
用金型としてのダイス、2は押出素材、3はダイス1に
よって引き抜かれた製品である。
【0009】前記ダイス1は、円筒状に形成されたダイ
スケース1Aと、ダイスケース1A内に焼きばめた超鋼
合金、セラミックス等からなるダイス本体1Bとで構成
されているが、ダイス本体1Bとしては焼きばめに限ら
ず、ダイスケース1Aと一体化させてダイス鋼、超鋼合
金等で製作されるものであってもよい。ダイス1の中央
にはダイス孔5が形成されており、またこのダイス孔5
の内周面はアプローチ部6、ベアリング部7およびレリ
ーフ部8を形成している。前記アプローチ部6は、押出
素材2の挿入側に傾斜する(広がる)テーパ面とされ、
その傾斜角、すなわちダイス半角α(αA ,αB )は最
大5°以下に設定されている。この場合、アプローチ部
6の上下面のダイス半角αA と、側面のダイス半角αB
とは異なり、例えばαA =4°、αB =2.67°にそ
れぞれ設定されている。前記ベアリング部7は、製品3
の外形寸法および形状を規定するもので、例えば高さH
=27mm、幅W=18mm、長さ(ベアリング長さ)
L=2〜10mmの範囲に設定されている。前記レリー
フ部8は、製品3の引抜方向(矢印A方向)に適宜角度
(β=10°程度)で傾斜する(広がる)テーパ面とさ
れる。レリーフ角βは、レリーフ部8の上下面、側面共
に同一角度とされる。前記素材2は、アルミニウム合金
を含む銅、黄銅等の展伸用金属、あるいはその合金から
なり、製品3の断面形状と相似関係を満足する断面形状
を有している。そして、この素材2は、引抜加工途中に
おいても製品断面形状と相似関係を維持しつつ2回以上
の引抜工程を経て製品3となる。1回の引抜加工範囲で
ある断面減少率は5〜30%である。
【0010】丸棒の引抜加工において、引抜力は図3に
示すような構成要素から説明されることが一般である。
すなわち、摩擦も付加的剪断変形も存在しない理想の塑
性変形をする際に必要な力(a)と、ダイス半角αの増
加に伴って漸増する付加的剪断変形に必要な力(b)、
およびダイス半角αの増加に伴って漸減する摩擦力
(c)とである。したがって、それらの総和である引抜
力はダイス半角αを変数として一般に曲線(d)のよう
な変化をとる。図3より明らかなようにある断面減少率
を与えられるとそこで引抜力が最小となるダイス半角α
が存在し、従来これを最適ダイス半角とし、重要なダイ
ス設計仕様としてきた。また、このダイス半角は断面減
少率の増加に伴って漸増する。したがって、通常1回の
引抜加工範囲である断面減少率20〜30%において、
最適ダイス半角は約8°付近にあり、この近傍のダイス
半角を仕様とすることが一般である。矯正工程を経るこ
となしに、難易度の高い真直度仕様を満足する、円形断
面をもたない引抜棒あるいは引抜管製造技術を、ダイデ
ザイン、断面減少率、引抜工程の設定と言った、いわゆ
るソフトウエアの範囲で確立するためには、できるだけ
均一に塑性変形させることが望ましい。上述のような抽
伸業界の製造技術に関する常識と、抽伸製品の大部分が
円形断面をもつことを背景に、真直度に関する難易度の
高い製品仕様をもつ四角棒を得るための基礎調査とし
て、周囲4面のうち2面のみを引抜加工によって圧縮す
る一方向収縮の塑性変形を、ダイス半角を変数に測定し
た。供試材はT4 調質のA2011合金(JIS H4
040(1988)、以下同様)製押出棒で、引抜加工
におけるダイス半角を変数とするメタルフローと、その
帰結である塑性変形の均一さをマイクロビッカース硬度
によって検証した。メタルフローの測定は半割り材の一
方の内面に格子線をけがき、2本1組として引抜加工を
行なった後、先進からの遅れ距離という仕方で調査し
た。それによると、経線の先進からの遅れ距離はダイス
半角の増加に伴って増加すること、すなわち、ダイス半
角の増加に伴って付加的な剪断変形量が増大することを
示し、相対的に均一変形からの偏りが大きくなることを
意味する。このことはマイクロビッカース硬度計による
硬度分布測定によっても一部裏付けられた。すなわち、
先進からの遅れ距離の大きい外周部ほどビッカース硬度
は高く、中央部の均一変形に近い部分は硬度が低くなる
というような硬度分布を得た。
【0011】上述したように通常の引抜用ダイスのダイ
ス半角は約8°付近を仕様とする場合が殆どである。と
いうのは、一般に設定される断面減少率は20〜30%
の範囲で、これ以下の断面減少率では繰り返し加工する
とき生産性が劣ること、あるいは1回の引抜加工のみで
後工程に再結晶を開始するような熱処理工程をもつとき
は再結晶組織が粗粒となり、種々の欠陥の源となる可能
性をもつからである。一方、30%を越える断面減少率
を設定するときは焼き付き、破断の危険が増加すること
が挙げられる。したがって、ダイス半角が約8°付近の
ダイスを用いると最小引抜力ですむことから同一引抜能
力を有する抽伸機であればより大きな断面積をもつ製品
の製造が可能となること、構造体としてのダイスそれ自
身の視点からは同一形状を持つ製品の引抜加工において
付加される応力が最小となることから、必要最小限度の
寸法ですむという利点をもつ。このような背景にあって
ダイス半角を最大5°以下と規定したのは、上述の結果
に基づいて塑性変形をより均一に行わせることは勿論、
ダイスのアプローチ部における素材との接触長さを適度
に長く保ち、素材がダイスアプローチ部に接触する直前
で起こすバルジ効果が外周に沿ってできる限り均一とな
ること、特にコーナー部でこの現象は増幅され易く、ダ
イス半角8°の通常のダイスではコーナー部の曲率にも
依存するが、著しいときはいわゆる鍛造加工でいう畳み
込みに相当する加工欠陥を引抜加工においても誘発する
一因となり得るからである。好ましくはダイス半角を最
大4°とすることで、特に下限のダイス半角を設定しな
かったのは、後述するように製品断面形状(ダイス形
状)と素材断面形状とが相似関係をもつばかりでなく、
引抜加工途中においても製品断面形状(ダイス形状)と
相似関係を維持しつつ塑性変形するよう配慮したアプロ
ーチ形状をもつことから、例えば長辺と短辺の長さの比
が大きな値をとる四角棒の引抜加工において、収縮率の
大きい短辺を含む面のアプローチのダイス半角を4°と
すれば、収縮率の小さい長辺を含む面のアプローチのダ
イス半角は限りなく零に近い値をとるからである。一
方、ダイス半角が5°を越える仕様とするとき、上述し
たようにダイス半角の増加に伴って付加的剪断変形量が
増加することより均一な塑性変形という観点からはかけ
離れること、さらには素材がダイスアプローチ部に接触
する直前で引き起こすバルジ効果が特にコーナー部で増
幅され、いわゆる鍛造加工でいう畳み込みに相当する加
工欠陥を引抜加工においても誘発する可能性をもつこ
と、その上特に断面減少率の小さいほど顕在化するので
あるが、ダイスアプローチ部における素材との接触長さ
が適正な範囲を外れ異常に短くなることから、引抜加工
途中にビビリを発生し生産性の阻害は勿論、真直度以前
の問題を持ち込むこととなる。
【0012】但し、図3から明らかなように、ダイス半
角を最大5°以下とするダイスを用いる時の引抜力はダ
イス半角8°付近の仕様をもつダイスと比較して明らか
に過分の引抜力を必要とすること、さらにはダイスに付
加される荷重が大きくなることを考慮し、強度を備えた
ダイス設計を指向することから、ダイス製造コストの上
昇を引き起こすという欠点をもつものの、その損失を補
って余りある利益をもたらす。製品断面形状(ダイス形
状)と素材断面形状とが相似関係をもつばかりでなく、
引抜加工途中においても製品断面形状と相似関係を維持
しつつ塑性変形するよう配慮したアプローチ形状を規定
したのは、円形断面をもつ抽伸製品に見られるように、
素材横断面上で塑性変形が可能な限り等方的に進行する
ことを目指したものである。製品断面形状(ダイス形
状)と素材断面形状のみが相似関係をもち、引抜加工途
中においては製品断面形形状(ダイス形状)と相似関係
をもたないアプローチ形状をもつダイスを用いて引抜加
工するとき、僅かではあるが付加的剪断変形量の増加に
伴って引抜力の増加と同時に、先進からの遅れ距離も僅
かに増加することから、相対的に塑性変形の均一さから
かい離することが明らかになっている。
【0013】さらに、引抜加工直前後にわたる製品断面
形状(ダイス形状)と素材断面形状とが相似関係をもつ
ことを規定したのは、上記理由と同一理由で、素材横断
面上で塑性変形が可能な限り等方的に進行することを目
指したものである。一方、この考え方の対極にあるのが
上述の四角棒を用いた周囲4面のうち2面のみを引抜加
工によって圧縮する一方向収縮の塑性変形で、塑性変形
の仕方が引抜方向または引抜方向に直角の方向によって
異なり塑性変形の均一さという観点からかい離が生ずる
ことは勿論、寸法形状、潤滑等の材料特性の小さな変動
に対する感受性の高いことが予想されることから引抜加
工時の曲がりの制御も困難になるものと推測される。
【0014】素材とする押出材の寸法あるいは表面性状
の変動に起因する製品真直度の変動をできる限り低減さ
せるため、2回以上の引抜工程を規定したのは、周知の
ように押出加工が熱間加工であることから押出材は寸法
精度に劣り、抽伸製品が1/100mmの位の寸法公差
を問うことができるのに対し、押出製品においては1/
10mmの位であり、このような範囲の寸法変動が押出
材全長、押出本数、および押出機会毎に生じ、引抜加工
時の塑性変形の不均一さ、すなわち抽伸製品の真直度に
関する制御の困難さ、さらには抽伸製品の真直度品質の
低下を引き起こすからである。一方、1度引抜加工した
材料を素材とするとき、上述したような寸法精度につい
ての不都合は大幅に改善され、難易度の高い真直度仕様
を満足する抽伸製品を得ることができる。
【0015】引抜加工時の潤滑においても以下に示すよ
うな問題を2回以上の引抜工程を規定することで解決す
ることが可能である。押出材の表面品質は寸法と同様に
押出材全長、押出本数および押出機会毎に変動する上、
その後引抜加工に至るまでの素材の移動、切断、熱処
理、および先付工程で表面が汚染され、引抜加工時の潤
滑という観点からみると無視し得ない問題を内包してい
る。この素材の表面性状に関する問題は、通常の製品仕
様をもつ抽伸製品においては殆ど障害とならないが、例
えば四角棒の真直度に代表されるような難易度の高い製
品仕様をもつ抽伸製品に出会うと顕在化するものと理解
することができる。したがって、引抜加工を既に完了し
た材料を素材とするとき、素材の表面は略均一に潤滑剤
に覆われており、さらに次の引抜加工に至るまでに表面
を汚染させる機会が殆ど皆無であると考えられることか
ら、均一な塑性変形および抽伸製品の真直度に関する制
御の容易さ、さらには抽伸製品の真直度品質の向上をも
たらす。故に真直度について難易度の高い抽伸製品の製
造に関して2回以上の引抜工程を規定することは非常に
有効な方法となる。
【0016】アルミニウム合金を含む銅、黄銅等の展伸
用金属、あるいはその合金からなる、円形断面をもたな
い引抜棒あるいは引抜管を規定したのは、展伸用金属あ
るいはその合金毎に引抜加工における塑性変形および潤
滑の詳細はそれぞれ異なるものの、真直度について難易
度の高い仕様をもつ、円形断面をもたない引抜棒あるい
は引抜管の引抜加工における塑性変形および潤滑につい
ての原理、概念は展伸用金属あるいは合金がいずれであ
るかを問わず、全く同一であるからである。
【0017】次に、本発明の実施例について説明する。
30×20mm/mmのA2011合金製四角棒を供試
材に、本発明にかかわる引抜加工方法および引抜加工用
金型によって引抜加工し、従来法と比較する仕方でその
真直度を測定した。本発明にかかわる1伸材の形状を2
8.5mm×19mmとし、2回の引抜加工により最終
製品形状を27mm×18mmとした。断面減少率は1
9%である。製品長さは1250mmで、ユーザーの真
直度に関する製品仕様は自重をかけることなしに全長で
1mm以下、局部曲がり0.3mm/300mm以下で
ある。真直度の測定は図4に示すように定盤9上に被測
定物である製品3を載せ、側面にステンレス製定規を当
て、定規と製品3との間隙dをシックネスゲージで測定
する方法である。測定結果の一部を表1に示す。ここで
言う従来法とは四角棒四面のダイス半角を全て8°と
し、一度の引抜加工で最終製品形状である27mm×1
8mmに加工する方法である。
【0018】
【表1】
【0019】上記表1に示す結果から明らかなように、
この発明に係る引抜加工方法および引抜加工用金型を用
いて引抜加工を行なえば、引抜加工上がりの状態で厳し
い真直度に関する製品仕様を全ての試料が満足した。一
方、従来法では測定した24試料のうち、わずか3試料
のみが仕様を満足するのみで、明らかに本発明にかかわ
る引抜加工方法および引抜加工用金型によって引抜加工
した製品の方が真直度に優れていることが明らかになっ
た。
【0020】なお、本実施例においては異形棒の引抜加
工について説明したが、本発明はこれに何ら特定される
ものではなく、異形管に対しても適用可能であり、その
場合は図5に示すようなプラグ10を芯金11によって
支持した芯金方式または固定しない浮きプラグ式の引抜
加工用金型として引抜加工を行えばよいことは勿論であ
る。プラグ10としては、例えば芯金11に接続される
プラグ本体10Aと、プラグ本体10Aの外周に焼きば
められたダイス鋼、超硬合金等の材質からなる環状のプ
ラグチップ10Bの2部材で構成される。12は押出
管、13は製品である。ダイス1の構成は上記した実施
例と同様であるため、その説明を省略する。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る異形棒
あるいは異形管引抜加工方法によれば、ダイス半角を5
°以下とし、引抜加工途中においても製品断面形状(ダ
イス形状)と相似関係を維持しつつ塑性変形するよう配
慮したアプローチ形状をもつ引抜加工用金型を用いて2
回以上引抜加工を行うようにしたので、素材の寸法ある
いは表面性状の変動に起因する製品真直度の変動が少な
く、また引抜加工時の塑性変形が等方的に進行して横断
面全域にわたって均一な変形となる。したがって、従来
よりも高い真直度が得られ、また品質のより安定した円
形断面をもたない異形棒あるいは異形管の製造が可能で
ある。この結果、手作業による矯正工程を必要とせず、
生産性の向上、省力化、製造コストの低減を図ることが
でき、安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイスの断面図である。
【図2】同ダイスの横断面図である。
【図3】ダイス半角と引抜力との関係を示す図である。
【図4】真直度の測定を示す図である。
【図5】異形管の引抜加工に用いられる引抜加工用金型
の断面図である。
【符号の説明】
1 ダイス 2 素材 3 製品 6 アプローチ部 7 ベアリング部 8 レリーフ部 12 押出管 13 製品 αA,αB ダイス半角 β レリーフ角
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】但し、図3から明らかなように、ダイス半
角を最大5°以下とするダイスを用いる時の引抜力はダ
イス半角8°付近の仕様をもつダイスと比較して明らか
に過分の引抜力を必要とすること、さらにはダイスに付
加される荷重が大きくなることを考慮し、強度を備えた
ダイス設計を指向することから、ダイス製造コストの上
昇を引き起こすという欠点をもつものの、その損失を補
って余りある利益をもたらす。製品断面形状(ダイス形
状)と素材断面形状とが相似関係をもつばかりでなく、
引抜加工途中においても製品断面形状と相似関係を維持
しつつ塑性変形するよう配慮したアプローチ形状を規定
したのは、円形断面をもつ抽伸製品に見られるように、
素材横断面上で塑性変形が可能な限り等方的に進行する
ことを目指したものである。製品断面形状(ダイス形
状)と素材断面形状のみが相似関係をもち、引抜加工途
中においては製品断面形状(ダイス形状)と相似関係を
もたないアプローチ形状をもつダイスを用いて引抜加工
するとき、僅かではあるが付加的剪断変形量の増加に伴
って引抜力の増加と同時に、先進からの遅れ距離も僅か
に増加することから、相対的に塑性変形の均一さからか
い離することが明らかになっている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】さらに、引抜加工前後にわたる製品断面形
状(ダイス形状)と素材断面形状とが相似関係をもつこ
とを規定したのは、上記理由と同一理由で、素材横断面
上で塑性変形が可能な限り等方的に進行することを目指
したものである。一方、この考え方の対極にあるのが上
述の四角棒を用いた周囲4面のうち2面のみを引抜加工
によって圧縮する一方向収縮の塑性変形で、塑性変形の
仕方が引抜方向に対し直角方向(LT方向)または厚さ
方向(ST方向)によって異なり塑性変形の均一さとい
う観点からかい離が生ずることは勿論、寸法形状、潤滑
等の材料特性の小さな変動に対する感受性の高いことが
予想されることから引抜加工時の曲がりの制御も困難に
なるものと推測される。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 引抜加工用金型により円形断面をもたな
    い異形棒あるいは異形管を引き抜く引抜加工方法におい
    て、製品断面形状と相似な断面形状をもつ素材を引抜加
    工途中においても製品断面形状と相似関係を維持しつつ
    2回以上引き抜くことを特徴とする異形棒あるいは異形
    管の引抜加工方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の引抜加工方法において、
    アルミニウム合金を含む銅、黄銅等の展伸用金属あるい
    はその合金からなる素材をダイスによって引き抜くこと
    を特徴とする引抜加工方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の引抜加工方法
    に用いられる引抜加工用金型において、ダイス半角が最
    大5°以下で、引抜加工途中においても製品断面形状と
    相似関係を維持しつつ塑性変形することを特徴とする引
    抜加工用金型。
JP2494393A 1993-01-21 1993-01-21 異形棒あるいは異形管の引抜加工方法およびその引抜加工用金型 Pending JPH06218425A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN118180181A (zh) * 2024-02-23 2024-06-14 嘉兴永励精密钢管有限公司 一种金属油管生产用冷拔机及使用方法

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CN118180181A (zh) * 2024-02-23 2024-06-14 嘉兴永励精密钢管有限公司 一种金属油管生产用冷拔机及使用方法

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