JPH06216421A - 酸化物超伝導膜の作製方法 - Google Patents

酸化物超伝導膜の作製方法

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JPH06216421A
JPH06216421A JP4100481A JP10048192A JPH06216421A JP H06216421 A JPH06216421 A JP H06216421A JP 4100481 A JP4100481 A JP 4100481A JP 10048192 A JP10048192 A JP 10048192A JP H06216421 A JPH06216421 A JP H06216421A
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solvent
substrate
metal salt
organic metal
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Hisashi Otani
久 大谷
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 有機金属塩熱分解法により、良質な酸化物超
伝導薄膜を低温で作成する。 【構成】 有機金属塩を溶媒に溶かし成膜したものを加
熱、焼成する際に、加熱方法として上方から膜の表面を
直接加熱し、同時に基板側を冷却することによって温度
勾配を作り、溶媒の気化等が膜と気相の界面のみから起
こるような構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸化物超伝導薄膜あるい
は同厚膜の作製方法に関する。
【0002 】
【従来の技術】現在、デバイス応用等の重要性から酸化
物超伝導膜の作製が盛んに行われている。その製法とし
てはCVD 法、スパッタリング法、蒸着法、イオンクラス
タービーム法、分子線エピタキシー法、レーザーアブレ
ーション法等が行われており、いずれの方法においても
エピタキシャルなアズデポで超伝導性を示す薄膜が得ら
れており、これらは主に半導体用途としての開発が進め
られている。そういった見地からは、前述の方法はいず
れも優れた方法であり、いずれも甲乙つけがたい状況で
ある。しかし、そこまでの高品位な薄膜は必要ないとい
う用途も多く、そういった場合には、前述のいずれの方
法においてもコストを考えると問題が多い。そのため、
よりコストの安い簡便な方法として、最近有機金属塩熱
分解法による成膜法が注目をあびている。この方法は、
有機金属塩を適当な有機溶媒に溶解させ、その溶液を用
いてディッピング等により成膜し、その後熱分解させる
ことにより酸化物超伝導薄膜あるいは同厚膜を得る方法
で、非常に簡便であるため産業上のメリットが大きいと
考えられる。
【0003 】
【発明が解決しようとする課題】前述の様に有機金属塩
熱分解法は非常に有望なプロセスであると考えられる
が、現在行われている方法では、有機物の熱分解の際に
発生するガスによるボイドやモフォロジーの悪化が解決
されておらず、その結果実用上の大きな目安となる臨界
電流密度も他の製法による薄膜と比較してオーダーが1
桁から2桁低く実用レベルには到達していないのが実情
である。
【0002】また、CVD 法、スパッタリング法、蒸着
法、イオンクラスタービーム法、分子線エピタキシー
法、レーザーアブレーション法等においては、一般的に
800 ℃以下、場合によっては600 ℃以下で薄膜が得られ
ているのに対し、有機金属塩熱分解法においては、一般
的に900 ℃以上の高温が必要とされている。この様に非
常に高温を必要とすることは、単に製造装置への要求が
シビアになるだけにとどまらず、基板との反応が問題に
なるなど、プロセス的に考えて不利な点が多く、低温化
が望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機金属塩熱
分解法において、高モフォロジー、高Jcを有する薄膜あ
るいは厚膜を得ることを目的とする。また、その焼成温
度を他の薄膜作製方法並に低温化することを目的とす
る。
【0004】まず、本発明の経緯について簡単に説明す
る。
【0005】発明者も従来技術による有機酸塩熱分解法
の研究を行ってきたが、有機物を熱分解する温度を変化
させ、膜質との相関関係を調べた結果、有機物が分解す
る以前に溶媒が蒸発してしまうため、膜が一種のゲル状
となり、そのため、溶媒の蒸発時あるいは溶媒の蒸発後
に発生したガスによって前述のゲルに孔が開き、このこ
とが膜が多孔質となる原因であることを発見した。ま
た、この現象が温度だけではなく、加熱方法にも大きく
依存していることを発見した。そしてこの問題を解決す
るために様々な実験を行った結果、本発明に到達した。
【0006】本発明は、有機金属塩熱分解法による酸化
物超伝導薄膜の作成に際し、所望の基板上に有機金属塩
を溶媒と共に成膜後、前記基板を冷却しつつ該基板上に
成膜された有機金属塩の表面のみを加熱、酸化し、酸化
物超伝導材料からなる薄膜あるいは厚膜に変成せしめる
ことをその特徴とする。
【0007】もう少し詳しく本発明を説明することにす
る。有機金属塩の溶媒の沸点近傍に温度を固定し、加熱
方法を変化させて溶媒蒸発に伴う膜の変化を観察した。
加熱方法としては、基板の下方から、同上方から、同全
周からの3種類の方法について比較を行った。まず、下
方から加熱した結果を図1.aに模式図を示しながら説
明することにする。下方から加熱した場合においては基
板1と溶媒2の界面から溶媒の気化3が始まるため、結
果として膜中に泡4が発生し、モフォロジーの良い膜は
得られなかった。それに比較して、基板の上方から加熱
した場合を図1.bに示しながら説明すると、溶媒2と
気相との気液界面から溶媒の気化5が起こるため、膜の
荒れが少ないことがわかった。全周加熱は前記2つのほ
ぼ中間の結果であった。
【0008】前述の様に、基板の上方から加熱した場
合、溶媒と気相との気液界面から溶媒の気化が起こるた
め、膜の荒れが少ないのであるが、それだけで全てが解
決されるわけではなく、場合によっては膜が荒れてしま
った。これは上方からの加熱により、溶媒のみならず基
板までもが加熱され、気液界面だけではなく溶媒全体が
沸騰してしまうことに起因する。それを防ぐために、基
板側を冷却し温度勾配を作ることにより、溶媒と気相と
の気液界面のみから溶媒の気化を行うことが可能にな
り、再現性良くモフォロジーの良い膜を作成することが
可能になった。図2に、温度勾配の例を示してある。
【0009】上記説明は、溶媒の気化に関してである
が、有機金属塩の熱分解の際に生成される気体の放出に
関しても、熱分解が気相との界面から起こるため、溶媒
の気化の際と全く同様の効果が得られ、その結果本発明
によって、再現性良くモフォロジーの良い膜を作成する
ことが可能になった。
【0010】また、前述の発明を更に発展させたものと
して、加熱、酸化工程を減圧中で行うことにより、前述
の効果に付け加えて低温化が可能となるのであるが、そ
の理由を以下に述べることにする。気相を減圧にすると
いうことは、気相のケミカルポテンシャルを低くするこ
とに他ならない。その結果、膜と気相との界面における
ケミカルポテンシャルの差が大きくなり、反応がより円
滑に進む、即ち低温化が可能となる。また、この減圧に
よる効果は膜と気相との界面において、より顕著な効果
を示すため、前述の通り、基板を冷却しつつ基板上に成
膜された有機金属塩の表面のみを加熱、酸化するとい
う、本発明の請求項1と組み合わせることにより相乗効
果を発揮することが期待されるのである。ただし、減圧
にした場合、酸化物を生成するための酸素が十分に得ら
れない場合があり、その場合は別に酸化性ガス等を供給
しなければならない点に注意が必要である。
【0011】上記の構成について、図を用いてより詳細
に説明を加えることにする。まず、全体の構成を図3に
示すが、この装置の構成は、本発明の実施例において使
用したものと全く同一である。焼成部分は、高真空に対
応可能なステンレス製のチャンバー15内に設置される。
基板19は、水冷によって冷却可能なステージ20の上に載
せられ、加熱は上方に配置された赤外線ランプ18によっ
ており、本発明の通り成膜された有機金属塩の表面のみ
を加熱、酸化できる構成となっている。そして、本発明
のポイントである基板への酸化性気体16の直接導入は、
アルミナよりなるノズル17によって行われる。焼成の際
は、チャンバー内はロータリーポンプ及びターボ分子ポ
ンプ(広域ターボを使用している)21によって真空に保
持される。
【0012】本発明に従った焼成の手順を次に示す。請
求項1に対応する手順は、以下の手順の内の真空(減
圧)プロセスを常圧のプロセスにすれば良いだけなの
で、あえて別に説明することはしない。
【0013】まず、チャンバー内のステージ上に基板を
設置する。この基板は、有機金属塩の成膜を終了したも
のである。この有機金属塩を有機溶媒に溶解した溶液を
基板上に成膜する成膜方法としては、本発明では主に半
導体プロセスで実績の有るスピンコート法を用いたが、
他の方法でも構わない。スピンコートによる場合には、
溶媒の蒸発及び有機物の分解をより円滑に進めるため
に、1回のスピンコーティングによる製膜は薄い方が望
ましい。その為には溶液の粘度と量及びスピンコーター
の回転数を適正化する必要がある。
【0014】次に、チャンバー内をロータリーポンプ等
によって真空に引く。この工程により、沸点の低い溶媒
であればその殆どが気化してしまうが、余り急激に減圧
あるいは真空にすると、溶媒が一斉に気化する際に膜を
荒らしてしまうため、減圧はゆっくりと、また溶媒の蒸
発が終了するまではあまり減圧にしない方が良い。ま
た、溶媒の沸点が十分に高く、減圧しても十分に気化し
ないときには、必要に応じてヒーターでアシストするだ
けでも溶媒を飛ばす目的には十分であった。
【0015】次いで、ノズルから酸化性気体を基板に吹
きつける。酸化性気体の流量は、膜を酸化するに十分な
量であれば、膜を荒らさないためにも必要最小限の量に
したほうが良い。また、ガスを導入している際にも、ポ
ンプは当然作動させたままで、あくまで酸化性気体は基
板の極近傍のみに高濃度で存在するようにする。この酸
化性気体としては、一般的なものとしては酸素である
が、オゾンの様に同体積でもより酸化能力の高いものを
使用することは有効である。そして、その後ヒーターの
電源を投入し、成膜された側のみから加熱を行い、所望
の温度で焼成するのである。勿論、この際に冷却可能な
ホルダーによって基板側から冷却を行い、温度勾配を大
きくする様な構成とし、焼成(加熱、酸化を含む)を行
った。
【0016】尚、バルクについては必ず行われている酸
素アニールであるが、本発明においては必要に応じて行
い、酸化物超伝導材料がイットリウム系の場合には、従
来技術と同様に酸素分圧1気圧で500 ℃〜1000℃例えば
600 ℃において1時間のアニールを行ったが、酸素アニ
ール無しでも超伝導性を示したことを付け加えておく。
【0017】
【作用】本発明の製法を利用することによって、有機金
属塩熱分解法においても、他の成膜法と同程度の臨界電
流密度を有するモフォロジーの良い薄膜あるいは厚膜を
再現性良く得ることが可能となった。またその成膜方法
においては、熱処理温度を従来の有機金属塩熱分解法よ
りも数100 ℃低温化することが可能となり、このことは
拡散による基板材料からのコンタミを防ぐと同時に、基
板材料自身の選択度も広くなるという利点を有してい
る。
【0018】以下に実施例を示し、より詳細に本発明を
説明する。
【0019】
【実施例】「実施例1」本実施例では、請求項1に対応
する、基板を冷却しつつ基板上に成膜された有機金属塩
の表面のみを加熱、酸化することによって酸化物超伝導
材料からなる薄膜あるいは厚膜を作成する作成方法を中
心に説明を加える。即ち、焼成に使用した装置は図1の
ものであるが、減圧にせず、大気圧において行った例を
示す。
【0020】超伝導材料の有機金属塩は多くの種類があ
るが、本実施例では、有機金属塩としては代表的なオク
チル酸塩を、超伝導材料としてはイットリウム系の超伝
導材料(Y1Ba2Cu3O7-y 以下YBCOと省略)を用いた。
【0021】YBCOのオクチル酸塩の作成方法であるが、
まず、YBCOの超伝導材料の粉末を作製した。作製方法
は、Y2O3、BaCO3 、CuO の原料粉末(3N 以上の高純度材
料を使用した) をストイキオメトリーな組成で湿式混合
し、空気中で950 ℃で12時間焼成した。
【0022】次に、この粉末を硝酸に溶解し、前記硝酸
溶液をオクチル酸アンモニウム溶液と混合し置換反応に
よって、超伝導材料のオクチル酸塩を作製し、これを溶
媒抽出法によって分離、精製した。
【0023】各オクチル酸塩はICP 、抵抗率測定等で分
析し、組成のズレ等が無いことを確認した。
【0024】基板としてはMgO の(100) 面のヘキ開面を
使用し、成膜方法はスピンコート法で行った。
【0025】有機金属塩の溶媒であるが、溶媒に求めら
れる一般的な条件は、常温において有機金属塩の溶媒と
して作用し、かつ基板界面との濡れが良いことである。
また必要に応じて、粘度調節や基板界面との濡れ特性向
上を目的として他の溶媒を加えることも重要であろう。
今回の実験については、溶媒抽出にトルエンもしくはキ
シレンを用いているため、必然的にこれらは含まれ、そ
れ以外に何を溶媒として加えるかが問題となってくる。
本実施例1では、トルエンとオクチルアルコールの混合
溶媒を用いた例を示す。
【0026】まず、トルエン(もしくはキシレン)のみ
で成膜を行なった場合、粘度が低く、また基板との濡れ
が良くないため、1回の成膜で得られる膜厚が非常に薄
く、実用上問題があることがわかった。ちなみに、トル
エンの粘性率は20℃において0.773cP である。次に、オ
クチルアルコールを添加して成膜を行なった。その結
果、粘度を高め、同時に基板との濡れを改善でき、トル
エン(もしくはキシレン)のみに比較して、1 回の成膜
で膜厚をかせぐことが可能であることが判明した。よっ
て、成膜には上記2種類の混合溶媒を使用することにし
た。尚、オクチルアルコールの粘性率は、20℃において
7.73cPでトルエンの約10倍の値である。
【0027】すなわちオクチルアルコールは粘度及び界
面との濡れを改善することが分かった。
【0028】しかし、上記の様に、粘度、界面との濡れ
を改善した混合溶媒を使用しても、どうしてもモフォロ
ジーが悪く、ポーラスな膜しか得られないという問題が
生じた。このことは、臨界電流密度Jcの低下に直結する
大きな問題である。具体的には、77Kにおける臨界電流
密度Jcは〜100A/cm2に過ぎず、とても実用に耐えるもの
ではなかった。しかし、この事は当社のみならず、他の
研究室においても同様に抱えている大きな問題であり、
有機物をガスとして放出しなければならない、本方法に
おいては本質的な欠点でも有る。解決方法としては、Bi
系において一般的に行なわれているように、パーシャル
メルトさせるという方法もあるのだが、デバイスの作製
等から考えた場合、熱処理のプロセス自体は、温度が低
ければ低いほど良いため、できたら行ないたくない。
【0029】ところで、モフォロジーが悪い原因は何な
のか、仮焼き温度を変化させ、膜質との相関関係を調べ
た結果、前述の発明の構成において詳しく述べた様に、
膜が一種のゲル状となった段階ですでに多孔質であるこ
とが、焼成後の膜が多孔質となる原因であることを発見
した。そこで、本発明の方法により焼成を行ってみるわ
けであるが、その前に、有機金属塩及び溶媒等の分解温
度と沸点を調べた。これは、基板の冷却によって作成可
能な温度勾配はたかだか100 度程度であり、そのため必
要以上の加熱を防ぎ、本発明の効果を十分に発揮させる
ためである。オクチル酸塩の分解温度は、TG-DTAによる
測定の結果より、約250 ℃前後から始まり、400 ℃程度
でほとんど終了し、またトルエン. オクチルアルコール
の沸点はそれぞれ110.625 ℃と184.7 ℃であった。この
ことから、焼成の際の温度を決定した。
【0030】設定した温度は、基板表面温度200 ℃前
後、基板裏面温度(ステージの基板直下に付けられた熱
電対で測温しているため、正確には裏面温度とは異な
る)100℃以下であり、基板表面温度は赤外線ランプの
出力を制御することにより、また基板裏面の温度は冷却
水の流量により制御した。表面温度はパイロメーターに
より測定した。
【0031】前述の温度で焼成を1時間行い、完全に溶
媒を蒸発させた後、350 ℃程度のオクチル酸塩の分解温
度付近においても同様に約1時間の熱処理を加えた。こ
の時の基板直下の温度は約250 ℃となるように冷却水の
流量を調節した。そしてその後の900 ℃の本焼成におい
て、有機物を完全に飛翔させ、結晶化を合わせて行い、
超伝導材料(Tc88K)からなる膜を得ることができた。
SEM(走査型電子顕微鏡)によってモフォロジーを観
察したところ、ボイド等の殆ど無い、緻密な表面が得ら
れていた。また、結果として得られた薄膜の特性は、77
Kにおける臨界電流密度Jcが〜10000A/cm2であった。比
較のために、上述の例の表面温度に相当する温度の電気
炉中(これは全周加熱に相当する)で焼成した試料は、
若干ボイドの含まれた、ポーラスな膜であり、臨界電流
密度もJcが〜100A/cm2と非常に低かった。
【0032】「実施例2」本実施例として、有機金属塩
熱分解法において、焼成の際に減圧状態で酸化ガスを吹
きつけながら行った場合と、大気中で焼成を行った場合
の比較し、本発明の低温化の部分について特に説明を加
える。
【0033】酸化物超伝導材料としては、実施例1と同
様にYBCOであって、原料はそのオクチル酸塩を用いた。
また、溶媒はトルエン、オクチルアルコールからなる混
合溶媒を用いた点も実施例1と同様である。
【0034】また、成膜法は実施例1と同様にスピンコ
ート法によった。
【0035】有機金属塩熱分解法における一般的な焼成
条件は、実施例1で示した様に空気中で900 ℃前後であ
る。それを、650 ℃で焼成した結果を比較のために示
す。焼成の方法は実施例1と同様、即ち本発明に従い、
基板を冷却しつつ膜の表面のみを加熱、酸化する構成と
したことは言うまでもない。この様にして得られた膜は
その後の酸素アニールによっても超伝導性を示さず、XR
D による分析の結果、超伝導材料に起因するピークは殆
ど観測されず、そのため焼成が十分に進んでいないこと
が確認された。
【0036】次に、同様の試料を用いてロータリーポン
プ及びターボ分子ポンプによってチャンバー内を10-6To
rr以下まで真空にした。課題を解決するための手段の中
で説明した様に、減圧は急激にならないように排気側の
コンダクタンス制御を行い、溶媒が完全に蒸発した後に
更に高真空にした。この様な構成によって焼成した結
果、薄膜はボロボロで、炭化物ができている様子であっ
た。これは、炭酸塩の分解は上手くいっても、それと同
時に酸化も十分に行なわれなければならないことを示唆
する。
【0037】酸化を進めるためには酸素を供給すればよ
いのだが、ただ酸素を流した場合には、十分に酸化が進
むように酸素を流してしまうと真空度が低くなってしま
い、減圧の効果が失われる。そのため、薄膜の表面近傍
に酸化ガス、例えば酸素を供給し、膜表面の極近傍だけ
を酸化雰囲気にすることにより、比較的高い真空度と酸
素の供給という2つの矛盾する条件を解決することにし
た。前記の様な構成とすることによって、〜数Torrの全
圧(これはそのまま酸素の分圧に相当する)において
も、十分に酸化を行い、超伝導性を示す薄膜を650 ℃に
おいても得られることが明らかとなった。これらの薄膜
をXRD で分析したところ、YBCOに起因するピークと基板
に起因するピーク以外は観測されず、そのため超伝導薄
膜が作製されていることが確認された。ただし、低温化
したことによって、ピークが若干ブロードになってお
り、結晶性は若干低下している様であった。また、SE
M(走査型電子顕微鏡)によってモフォロジーを観察し
たところ、ボイド等の殆ど無い、緻密な表面が得られて
おり、この点では実施例1とほぼ同様であったが、若干
実施例1の方が良い様であった。
【0038】これらの超伝導薄膜について、臨界電流密
度を測定した結果を最後に述べる。結果として得られた
薄膜の特性は、650 ℃で焼成した薄膜については、77K
における臨界電流密度Jcが〜1000A/cm2 で、大気中で焼
成した、実施例1の結果に比べ若干悪い結果であった
が、700 ℃で焼成した薄膜は、77Kにおける臨界電流密
度Jcが〜10000 A/cm2 であり、高い臨界電流密度と低温
化を同時に満たすことが可能であることが実証された。
【0039】「実施例3」本実施例では、溶媒の蒸発工
程までを常圧で、その後の本焼成までを減圧で行った例
を示す。有機金属塩、及び基板等も前記2つの実施例と
同様であり、それゆえに溶媒の蒸発工程までを実施例1
の同工程で、その後の本焼成までを実施例2の同工程に
従って行った。
【0040】結果のみを述べると、本焼成温度700 ℃に
おいて、77Kにおける臨界電流密度Jcが〜20000 A/cm2
であり、またSEM(走査型電子顕微鏡)によってモフ
ォロジーを観察したところ、ボイド等は観察されず、実
施例1及び2に比較して更に高品位な膜が得られた。
【0041】
【発明の効果】本発明によって、有機金属塩熱分解法と
いう簡便な方法によって、他の成膜方法と同程度の臨界
電流密度を有する薄膜を得ることが可能となった。ま
た、本発明を用いることによって、成膜の加熱結晶化工
程、すなわち本焼成の温度自身も低温化することが可能
となり、基板等の選択の巾も広くなった。本発明の方法
によって得られる薄膜は単結晶薄膜ではないが、非常に
緻密な膜であり、そのことを反映した臨界電流密度の高
さと、成膜時間の短さを利用して、超伝導磁気シールド
等への応用が特に有望であると考えられる。
【0042】また、複雑な形状の基体上への成膜にも、
本発明は有用であり、産業上大きなメリットを有するも
のと考えられる。
【0043】本明細書において、上方加熱の方法は赤外
線ランプであったが、他のヒーター等でも構わない。ま
た、基板の冷却も、単に放熱板等を設けるだけでも十分
である。即ち、本発明は非常に拡張性の高いものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)下方加熱における溶媒気化の模式図
(b)上方加熱における溶媒気化の模式図
【図2】本発明によって得られる温度勾配の例
【図3】本発明において使用した装置の模式図
【符号の説明】
1 基板 2 有機金属塩及びその溶媒 3 気化した溶媒 4 気化した溶媒による泡 5 気化した溶媒 6 有機金属塩及びその溶媒 7 基板 8 温度曲線 15 真空チャンバー 16 酸化性ガス 17 ノズル 18 赤外線ランプ 19 基板 20 ステージ 21 排気系

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機金属塩熱分解法による酸化物超伝導
    薄膜の作製方法であって、所望の基板上に有機金属塩を
    溶媒と共に成膜後、前記基板を冷却しつつ該基板上に成
    膜された有機金属塩の表面のみを加熱、酸化し、酸化物
    超伝導材料からなる薄膜あるいは厚膜に変成せしめる工
    程を有することを特徴とする酸化物超伝導膜の作製方
    法。
  2. 【請求項2】 有機金属塩熱分解法による酸化物超伝導
    薄膜の作製方法であって、所望の基板上に有機金属塩を
    溶媒と共に成膜後、減圧中で前記基板を冷却しつつ該基
    板上に成膜された有機金属塩の表面のみを加熱、酸化
    し、酸化物超伝導材料からなる薄膜あるいは厚膜に変成
    せしめる工程を有することを特徴とする酸化物超伝導膜
    の作製方法。
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JP2010275119A (ja) * 2009-05-26 2010-12-09 Japan Steel Works Ltd:The 超電導酸化物材料の製造方法及び装置

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