JPH0620668B2 - ねじ加工具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、ねじ加工具に係るもので、とくに溝付き自
己固定型ねじ部材を製作するためのねじ加工具に関する
ものである。

従来の技術 従来、ねじ加工具には転造ダイス、圧造ダイス、タップ
等が多く用いられているが、第８図〜第10図に示す溝付
き自己固定型（セルフロツク型）ねじ部材の製作には適
用できない。

第８図〜第９図に示した溝付き自己固定型ねじ部材は、
そのねじ山(A)が、軸線方向の断面において、下側部分
(a₁)と上側部分(a₂)とに区別され、両部分のうち、下側
部分(a₁)は、ねじ山のフランク角と合致する側面で形成
され、前記上側部分(a₂)はその両側面が半径方向にほぼ
平行する側面で形成され、その部分にはその先端中央部
位から半径方向に切り込まれたＶ形溝(1)が設けられ、
その溝(1)により、上側部分(a₂)は溝をなかにして対向
する部分(2)、(2)に分割されており、雌ねじ部材との螺
合操作において、第１０図に示されているように、雄ね
じのねじ山(A)を形成している上側部分(a₂)の対向部分
(2)、(2)のうち、フランク角の外側に突き出される部分
が雌ねじのねじ山(A′)との間隙に導入されると、相手
ねじ山の側面との接触によって押圧され、Ｖ形溝(1)を
なかにして対向している分割部分(2)、(2)は内方に向け
て弾性変形をなし、ねじ締付けの終りでは、上側部分(a
₂)の分割部分(2)、(2)はその側面が下側部分(a₁)の側面
と同一平面になるように弾性変形し、下側部分(a₁)の側
面と共同して雌ねじのねじ山側面に圧接され、そこで下
側部分(a₁)は相手ねじ部材と剛性状態で圧接する剛性ね
じ部分として作用し、前記上側部分(a₂)は弾性変形して
いる分割部分(2)、(2)が弾性反発力をもって相手ねじと
圧接する弾性ねじ部分として作用し、両作用の外力に対
する相乗応力により、高い緊締力をもつすぐれたセルフ
ロツク機能が発揮されるようになっている。

発明が解決しようとする問題点 上記の溝付き自己固定型ねじ部材は、従来の転造ダイ
ス、圧造ダイス、タツプ等のねじ加工具では製作できな
いが、これらのねじ加工具を２個用意し、第１ねじ加工
具に２条ねじを切れる加工具を用い、第２ねじ加工具
に、前記第１ねじ加工具を通して加工したねじ部材のね
じ山のうち、相隣れる２つのねじ山を、塑性変形によ
り、上側部分を離した状態で１つのねじ山に合体するこ
とのできる加工具を用いれば、製作可能である。

しかし、２つの加工具を使用してねじを形成するには、
その両加工具のリード角ならびにピツチを正確に合致さ
せるために、加工具自体の製作精度ならびに加工具を機
体に据付ける際の据付け精度を高く保持しなければなら
ず、僅かな誤差で加工不良となる欠点がある。とくに、
小径のねじ部材は製作がむずかしい。

問題点を解決するための手段 この発明は、ねじ加工具は、所要のリード角とピッチを
有する多条ねじを形成するための第１ねじ加工部と前記
第１ねじ加工部を通して加工されたねじ部材の相隣れる
２つのねじ山を、前記第１ねじ加工部の２倍のピッチと
同じリード角のもとで、１つのねじ山に合体してそのね
じ山の上側部分に半径方向の溝を形成し、該溝に隣合う
溝部をさらに深い谷部とするための第２ねじ加工部とを
連続して設け、それによって、溝付き自己固定型ねじ部
材を簡単容易に製作できるようにしたものである。

実施例 第１図ないし第４図は、この発明を転造盤用平ダイスに
実施した例である。第１図の(Ｂ)はねじ加工具となる固
定側（または運動側）平ダイスであって、このダイス
(B)には、所定のリード角とピツチをもった２条ねじを
転造するための第１ねじ加工部(10)と、この第１ねじ加
工部(10)で転造加工されたねじ部材の相隣れる２つのね
じ山を塑性変形で合体して１つのねじ山に転造加工する
ために、第１ねじ加工部(10)と同じリード角でその２倍
のピツチをもたせて該合体したねじ山の上側部分に半径
方向の溝を形成し、該溝に隣合う溝部をさらに深い谷部
とするための第２ねじ加工部(11)とが連続して設けられ
ている。

第２図は、前記平ダイス(B)を形成しているねじ加工部
(10)、(11)の形状と、そこで転造加工されたねじ部材の
ねじ山断面を示したものて、(イ)は第１ねじ加工部(10)
の２条ねじ加工刃形、(ロ)はそこで転造加工されたねじ
部材のねじ山断面、(ハ)は第２ねじ加工部(11)の加工刃
形、(ニ)はそこで転造加工されたねじ部材のねじ山断面
をそれぞれ示したものである。

第３図および第４図は、前記平ダイス(B)を用いた転造
加工で溝付き自己固定型ねじ部材を製作する工程を示し
たもので、(C)は転造加工される素材である。

すなわち、固定側平ダイス(B)とこれと同じ運動側平ダ
イス（図示してない）とのあいだに供給された素材(C)
は、第１ねじ加工部(10)を通る間に、第２図の(ロ)で示
した２条ねじ山が転造加工され、そのまま第２ねじ加工
部(11)に進入し、そこを通過する間に、相隣れる２つの
ねじ山を１つのねじ山に合体してそのねじ山の上側部分
に半径方向の溝を形成し、該溝に隣合う溝部をさらに深
い谷部１２とする転造加工が施され、第２図の(ニ)で示
した溝付きねじ山が形成される。

上記の如く構成されたねじ加工具の使用によれば、次の
効果が得られる。

(1) 溝付き自己固定型ねじ部材の製作上での不良品の
発生要因を解消できる。

(2) 小径ねじ部材の場合は製作がむづかしく、製作で
きたとしても不良品が多く出るが、その小径ねじ部材を
容易に、かつ確実に製作することができる。

(3) また、前記ねじ加工具の使用によれば、いろいろ
な形状のねじ山を有する溝付き自己固定型ねじ部材も製
作できる。

(4) ねじ加工が２工程であると、設備、作業員、管理
は大体２倍必要となり、逆に生産数量は低下するように
なるが、前記ねじ加工具の使用によれば、従来のねじ加
工と同様に一回の工程でよいから、上記のような問題は
生じない。

前記実施例は雄ねじを加工する転造ダイスについて述べ
たものであるが、この発明は、第５図の転造用２ロール
ダイス、第６図の転造用３ロールダイス、第７図のプラ
ネタリー式転造ダイスにそれぞれ実施できるものであ
り、その場合にも前記と同様な効果が得られる。また、
雌ねじを製作するタツプ（切削タツプ、転造タツプ）、
あるいは圧造ダイスに実施することもできる。なお、図
面中、前記転造ダイスの図面と同一または類似する部分
には同じ符号を付してある。

発明の効果 以上に述べたように、この発明によれば、ねじを加工す
るためのねじ加工具は、所要のリード角とピッチを有す
る多条ねじを形成するための第１ねじ加工部と、前記第
１ねじ加工部を通して加工されたねじ部材の相隣れる２
つのねじ山を、前記第１ねじ加工部の２倍のピッチと同
じリード角のもとで、１つのねじ山に合体してそのねじ
山の上側部分に半径方向の溝を形成し、該溝に隣合う溝
部をさらに深い谷部とするための第２ねじ加工部とが連
続して形成されているので、このねじ加工具の使用によ
れば、ねじ山の先端に溝を有する自己固定型ねじ部材の
製作を大巾に簡易化させることができ、しかも不良品の
発生防止と品質の安定化が図れると共に溝入り自己固定
型ねじ部材の安定供給に大きく寄与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例を示す転造ダイスの斜視
図、第２図は転造ダイスのねじ加工部の形状説明図、第
３図および第４図は転造順序を説明する要部の拡大断面
図、第５図は転造用２ロールダイスの実施例、第６図は
転造用３ロールダイスの実施例、第７図はプラネタリー
式転造ダイスの実施例をそれぞれ示したもので、第８図
は溝付き自己固定型ねじ部材の側面図、第９図はねじ山
部分の拡大断面図、第１０図は螺合状態のねじ山部分の
断面図である。 (A)……溝付き自己固定型ねじ部材のねじ山、 (a₁)……ねじ山下側部分、(a₂)……上側部分、 (1)……Ｖ形溝、(2)、(2)……対向部分、 (A′)……雌ねじのねじ山、(B)……ねじ加工具、 (10)……第１ねじ加工部、(11)……第２ねじ加工部。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ねじ山の先端部に半径方向の溝を有する自
   己固定型ねじ部材を加工するためのねじ加工具であっ
   て、 そのねじ加工具は、所要のリード角とピッチを有する多
   条ねじを形成するための第１ねじ加工部と、 前記第１ねじ加工部を通して形成されたねじ部材の相隣
   れる２つのねじ山を、前記第１ねじ加工部の２倍のピッ
   チと同じリード角のもとで、１つのねじ山に合体してそ
   のねじ山の上側部分に半径方向の溝を形成し、該溝に隣
   合う溝部をさらに深い谷部とするための第２ねじ加工部
   とが連続して設けられていることを特徴とするねじ加工
   具。
2. 【請求項２】前記ねじ加工具は、平ダイス、ロールダイ
   ス、圧造ダイス、タップのいずれかで構成されている特
   許請求の範囲第１項記載のねじ加工具。