JPH06201876A - 原子炉の炉心構造 - Google Patents

原子炉の炉心構造

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JPH06201876A
JPH06201876A JP5001651A JP165193A JPH06201876A JP H06201876 A JPH06201876 A JP H06201876A JP 5001651 A JP5001651 A JP 5001651A JP 165193 A JP165193 A JP 165193A JP H06201876 A JPH06201876 A JP H06201876A
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JP
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core
reactor
neutron
fuel
plate
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JP5001651A
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English (en)
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Tsukasa Kikuchi
司 菊池
Kiyoshi Ueda
精 植田
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】原子炉圧力容器に対する高速中性子の照射量を
低減し、原子炉の長寿命化を図る。 【構成】原子炉圧力容器3に近い部分の燃料集合体9に
L形中性子吸収板21を配置する。燃料集合体9は4体1
組となり、その中間に十字形制御棒10が配置される。L
形中性子吸収板21により高速中性子の照射量を効果的に
抑制して原子炉の寿命を長くし、原子炉内を循環する炉
水の線量を抑える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は原子炉の炉心構造に係
り、特に少数の特殊な燃料集合体を利用することなく、
且つ高レベル廃棄物となる炉内構造物の量を最小限に抑
えながら、しかも高速中性子の照射量を効果的に抑制し
て、原子炉の寿命を長くし、さらに原子炉内を循環する
炉水の線量を抑える原子炉の炉心構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の原子炉の寿命を長くする原子炉の
炉心構造について、まず加圧水型原子炉(以下、PWR
と略す)を例にとって説明する。図9は正方形状の燃料
集合体1を規則的に配置してなるPWRの炉心2と原子
炉圧力容器3(以下、RPVと略す)の位置関係を1/
4水平断面で示したものである。
【0003】炉心2とRPV3との間にはステンレス鋼
製の炉心バッフルや熱遮蔽体が、沸騰水型原子炉(以
下、BWRと略す)にあってはシュラウドが配置されて
いるが、この図では、これらの原子炉構造物は説明を単
純化するために図示せず、シュラウド等の炉心外周構造
物、外周構造物または単に構造物と呼ぶが、まとめてR
PVとして説明する。したがって、本願明細書ではRP
V3はこれら構造物の総称として定義する。
【0004】原子炉の寿命を考える上で、RPV3の健
全性は原子炉で最も重要なものの一つである。それらR
PV3の健全性が損なわれる最大の原因は、炉心2から
放出される高速中性子による照射損傷であることがよく
知られている。
【0005】RPV3の中性子照射損傷はそれらの水平
断面で均等には進行せず、相対的には炉心2の燃料集合
体1に近い部分から劣化が進行する。すなわち、図9を
例にとれば、炉心最外周に配置されている燃料集合体1
に最も近い同図のa点とb点が最も照射損傷が進行しや
すい部分である。
【0006】したがって、PWRでは炉心外周部を構成
する一部の燃料集合体に中性子吸収棒を装荷する方法が
提案されている。すなわち、図9の例では、RPV3に
最も近い位置にある同図のcおよびdの燃料集合体に中
性子吸収棒4を装荷する方法である。
【0007】図10はRPV3に近い位置の燃料集合体1
に中性子吸収棒4を装荷した例を示すものである。つま
り、燃料集合体1の4隅のうち、左上の部分が図9のR
PV3側に近接し、右下の方向が炉心2の中心方向に向
いている断面方形のPWR燃料集合体の水平断面を示す
ものである。
【0008】同図から明らかなように、中性子吸収棒4
はRPV3に面する左上の部分を中心に装荷されてお
り、RPV3の最も高速中性子の照射を受ける部分の同
照射量を低下させて、RPV3の健全性を維持すること
によって原子炉の寿命を長くする効果を期待したもので
ある。なお、前記中性子吸収棒4としては、一つの原子
核で何度も中性子を効果的に吸収することのできるHf
製の金属棒が使用されている。
【0009】図10において、PWR燃料集合体1では制
御棒案内シンブル5および計装用シンブル6が使用さ
れ、グリッドは制御棒案内シンブル5にスリーブを通し
て機械的に固定される。燃料集合体1の各シンブル5,
6は燃料棒7の格子状配列の中央部に計装用シンブル6
を、16〜24本の制御棒案内シンブル5をほぼ均等な間隔
でそれぞれ燃料棒7の代りに配置している。
【0010】次に、従来の原子炉の炉心に中性子吸収板
を装荷する方法について、BWRを例にとって説明す
る。初期のBWRにおいては、ポイズン・カーテンと呼
ばれる中性子吸収板が装荷されていた。ポイズン・カー
テンを装荷する目的は、燃焼初期の燃料集合体の反応度
を抑制することであった。このため、ポイズン・カーテ
ンの材質としては、核分裂を引き起こす熱中性子を効果
的に吸収する硼素入りステンレス鋼(以下、B−SUS
と略す)製の金属板が使用されていた。
【0011】図11は、平板状のポイズン・カーテン8、
方形の燃料集合体9、十字形制御棒10および炉内計装案
内管11からなるBWR炉心の水平断面を模式的に説明し
たものである。
【0012】同図に示すように、燃料集合体9の反応度
を抑制するポイズン・カーテン8の装荷位置は炉心の内
部に限られており、その形状は平板となっている。ま
た、ポイズン・カーテン8の水平方向の長さは、炉内計
装案内管11との取り合いから、燃料集合体9の一辺の長
さの 1.5倍程度とされている。図11中符号12は炉内構造
物の一つであるシュラウド、13は水槽を示している。
【0013】図12は、上端が鉤形状のフック14を有する
ハンガー・ロッド15と、例えばB−SUSなどの中性子
吸収材からなるシート部と称する中性子吸収板16とで構
成されるポイズン・カーテン8を示すものである。ポイ
ズン・カーテン8はハンガー・ロッド15上端の鉤形状フ
ック14を図13に示す上部格子板18の梁19に掛けることに
よって保持される。
【0014】図13は周辺構造物としての上部格子板18を
示している。すなわち、薄肉広幅の梁19を互いに切り込
みをいれて障子のさん状に直角に組み合わせ、正方形の
開口部20を構成している。RPV3に組み込むためにそ
の外周は円形としている。
【0015】BWR上部格子板18の正方形の開口部20は
4体の燃料集合体9に対して横方向の支持と案内を行う
ためのもので、4体の燃料集合体9ごとに装荷される十
字形制御棒10も装荷できる空間を有している。
【0016】ところで、従来の原子炉の構造材としての
Hf材の利用方法について説明すると、PWRにおいて
は、前述のようにRPV3の高速中性子による照射損傷
を抑制するため、炉心を構成する燃料集合体のうち、外
周の燃料集合体の一部のものにHf棒を装荷している。
また、Hfは制御棒の長寿命化を図る目的で、PWRや
BWRの制御棒の中性子吸収材としても実用化されてい
る。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】一般に燃料の製造コス
トを低く抑える方法の一つとして、燃料集合体の種類を
少なくすることが有効であることはよく知られている。
したがって、RPV3の高速中性子による照射損傷を低
くする目的で、Hfを装荷するような特殊な燃料集合体
を少数体だけ製造することを燃料の製造コストを高くす
る要因となる。
【0018】前記特殊な燃料集合体はその目的によりR
PV3に最も近い位置に常に配置されることとなるが、
この位置は炉心2の最外周の位置にあたり、前述の核燃
料を有効に利用する観点からは最も燃焼度が進んだ燃焼
集合体を装荷すべき位置である。
【0019】したがって、前記特殊な燃料集合体をRP
V3に最も近い位置、すなわち炉心の最外周の位置に常
に配置することは核燃料を有効に利用する観点から望ま
しいことではない。
【0020】また、ウランなどの核燃料を有効に利用す
る観点から、原子炉の炉心に燃料集合体を配置する方法
として、燃焼度の進んだ燃料集合体を炉心の最外周に配
置する方法はよく知られている。この方法はRPVの高
速中性子照射量の低減に寄与しているものの、その目的
が核燃料の有効利用であるため、RPVの高速中性子照
射量の低減策としては更に改良の余地が残されている。
【0021】原子炉から発生する高レベル廃棄物を低減
する方法として、最も単純で明快な一つの方法は炉内構
造物の量を最小限にすることである。しかしながら、図
11に示したように、初期のBWRで採用されていたポイ
ズン・カーテン8は炉心水平方向の内部領域の全面への
装荷で、その枚数は相当な量となっており、原子炉から
発生する高レベル廃棄物を増加させる要因となる。
【0022】また、原子炉から発生する高レベル廃棄物
の低減する第2の方法として、長寿命の炉内構造物を採
用することが考えられる。ポイズン・カーテン8ではB
−SUSを中性子吸収材として採用しているが、上述の
観点から、中性子吸収材としての寿命が短い10B(n,
α)反応を利用するB−SUSで炉内構造物を構成する
ことは、原子炉から発生する高レベル廃棄物を増加させ
る第2の要因となる。
【0023】ところで、既に述べたように、PWRでは
高速中性子によるRPV3の照射損傷を抑える目的で純
粋なHf材を炉心外周の燃料集合体の内部に配置して利
用する方法が既に提案されている。
【0024】しかしながら、熱中性子を効果的に吸収す
る制御棒の材料としてHfが採用されていることからも
分かるように、Hfは高速中性子だけでなく熱中性子に
対しても強い吸収体として作用するため、RPVの高速
中性子による照射損傷を抑える目的で、純粋なHf材を
燃料集合体の内部に配置して中性子吸収材として使用す
るのは核分裂反応も抑制するため不利である。
【0025】さて、Hf材を原子炉の構造材として利用
する際の状態として、原子炉内の炉水と直接接触する場
合を考えてみると、軽水炉(LWR)の炉水温度は 300
℃前後であるため、高温水中のHfは、次の反応でその
表面に酸化膜を生じる。 Hf+2H2 O→HfO2 +2H2 この反応と平行して、表面近傍のHfの一部が極く微量
ながら水中に溶け出す。高温水中のHfの挙動はZrと
類似している。
【0026】図14は、Hf板とZr板とをサンプルとし
て、ノジュラー腐食を強制的に形成させた炉外試験結果
の例である。この炉外試験の条件はサンプルを 500℃の
蒸気にさらすもので、炉外試験の条件としては過酷なも
のである。図14から明らかなように、高温水に対する活
性度は非常に低いものの、Zrの方が高く、したがって
腐食の進行が速い。
【0027】しかしながら、炉水に溶け出した後の挙動
を考えると、Hfの方が重要である。すなわち、Hfは
中性子吸収材として有効な材料である反面、その中性子
に対する燃焼連鎖の過程でZrの場合より放射化物がよ
り強く形成されるため、Hfが炉水に溶け出した場合に
は炉水による放射線線量率を上昇させる要因となる。
【0028】一方、Zrは燃料集合体のチャンネルボッ
クスや燃焼棒の被覆管など、原子炉の主要な構造材であ
り、しかもHfに比べて炉水に溶け出す性質が強いこと
から、Hfに比べると相対的により多くのZrが炉水に
溶け出しているものと考えられる。しかし、Zrは中性
子にはほとんど反応せず、また反応しても弱い放射能し
か生成しないため、炉水の線量率を上昇させる要因とは
なっていない。
【0029】本発明は上記課題を解決するためになされ
たもので、原子炉の炉心周辺部に配置される燃料集合体
の外周を構成する金属製筒のRPVに面する部位に、中
性子を吸収してもガスを発生しない中性子吸収材を添加
して高速中性子束を低減させ、RPVに対する高速中性
子の照射量を低減し、原子炉の長寿命化を図った原子炉
の炉心構造を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】第1の発明は多数の方形
燃料集合体を規則的に配置して構成された炉心と、この
炉心を取り囲んで構成された原子炉圧力容器などの炉心
外周構造物とからなる原子炉の炉心構造において、前記
炉心外周構造物に近い一部分または全ての外周面に、平
板または横断面L形の中性子吸収板を配置してなること
を特徴とする。
【0031】第2の発明は多数の方形燃料集合体を規則
的に配置して構成された炉心と、この炉心を取り囲んで
構成された原子炉圧力容器などの炉心外周構造物とから
なる原子炉の炉心構造において、前記炉心外周構造物に
近い一部分または全ての外周面に、平板または横断面L
形の中性子吸収板を配置し、前記中性子吸収板をハフニ
ウム金属板またはジルコニウム・ハフニウム合金板で構
成し、前記ハフニウム金属板またはジルコニウム・ハフ
ニウム合金板の表面に保護酸化膜を形成してなることを
特徴とする。
【0032】第3の発明は多数の燃料棒を規則的に配列
して燃料バンドルとなし、この燃料バンドルを金属製チ
ャンネルボックスに収納して燃料集合体となし、この燃
料集合体を原子炉圧力容器などの炉心外周構造物の内部
に規則的に配置して炉心を構成した原子炉の炉心構造に
おいて、前記炉心外周構造物に近接する前記燃料集合体
の金属製チャンネルボックスは前記炉心外周構造物に近
接する部分の少なくとも高速中性子照射量が高くなる部
位に中性子吸収材が含有されていることを特徴とする。
【0033】
【作用】第1の発明は原子炉用構造材等のRPVの高速
中性子による照射損傷を抑制するための中性子吸収板
が、平板または横断面L形板で構成され、従来例のよう
な少数の特殊な燃料集合体を必要としない。このため、
燃料の製造コストは低く抑えられ、ウランなどの核燃料
を有効に利用する観点からも望ましい。
【0034】また、中性子吸収板を原子炉の炉心水平方
向のRPVに近いまたは全ての外周面に配置することに
より、炉内構造物の量を最小限に抑え、中性子吸収材と
して長寿命のHfを利用している。このため、高レベル
廃棄物となる炉内構造物の量を最小限に抑えることがで
きる。
【0035】第2の発明は中性子吸収板の構成材料とし
てHfまたはZr−Hfを採用することにより、高速中
性子を効果的に吸収しながらも、核分裂反応を維持する
熱中性子の損失を低く抑えるような中性子吸収材を提供
することができる。
【0036】さらに、炉内構造物としてのHf板または
Zr−Hf板は、保護酸化膜が形成されている。このた
め、およそ 300℃前後の高温水となってる炉水にさらさ
れる条件下であってもHfの炉水への溶け出しが抑制さ
れ、炉内を循環する炉水の線量の上昇を抑えることがで
きる。
【0037】第3の発明では、炉心外周構造物に近接す
る燃料集合体の外周部を構成する金属製チャンネルボッ
クスは炉心構造物に近接する部分の少なくとも高速中性
子束が高い部位に、中性子吸収材であるHf,HfをZ
rで希釈して中性子吸収率を調節したHf−Zr合金、
同様にHfをチタン(Ti)で希釈したHf−Ti合
金、中性子吸収材である希土類元素のディスプロシウム
(Dy),サマリウム(Sm),ガドリニウム(G
d),ユーロピウム(Eu),エルビウム(Er)など
の酸化物をZr中に例えばサーメットとして添加してい
る。
【0038】したがって、チャンネルボックス内に配置
されている燃料棒の位置の熱中性子束はあまり大幅には
低下せず、炉心バッフル、熱遮蔽体、シュラウド、RP
Vなどの炉心外周構造物への高速中性子に流入率が効果
的に低下し、その結果高速中性子照射量が減少するの
で、これら構造物の長寿命化が達成される。
【0039】
【実施例】図1および図2を参照しながら本発明に係る
原子炉の炉心構造の第1の実施例を説明する。なお、図
中、図11と同一部分には同一符号を付している。図1に
おいて、断面円筒状のRPV3の内部には断面正方形の
燃料集合体9が多数束ねられて炉心を構成している。燃
料集合体9の4体に1本の割合で断面十字形制御棒10を
配置し、燃料集合体9を多数束ねてなる炉心の外周面の
うち前記RPV3に最も近い燃料集合体9の外面に横断
面L形のHf板からなるL形中性子吸収板21を配置して
いる。Hf板からなるL形中性子吸収板21には保護酸化
膜処理が施されている。なお、図1ではシュラウドは省
略している。
【0040】図2はL形中性子吸収板21を一部切欠して
拡大した斜視図を示すものである。前記中性子吸収板21
は横断面L形のHf板からなるシート部22と、このシー
ト部22を図13に示した上部格子板18の梁19から吊り下げ
るための2本のハンガー・ロッド15と、前記シート部22
と相対する燃料集合体との間隔を一定に保持するための
スペーサパッド17とから構成される。前記ハンガー・ロ
ッド15の上端にはフック14が形成されており、図13に示
した上部格子板18の梁19に吊り下げるのに都合のよいも
のである。
【0041】そして、ハンガー・ロッド15の形状は、初
期のBWRに採用されていた従来技術と同等のものであ
る。なお、保護酸化膜処理は従来からジルコニウム合
金、例えばジルカロイなどに施されているもので、例え
ば 400℃の蒸気におよそ24時間程度さらすものである。
【0042】しかして、L形中性子吸収板21は、RPV
3のうち最も原子炉の炉心に近い部分の高速中性子の照
射量を低下させる。また、L形中性子吸収板21の装荷位
置はRPV3に最も近い燃料集合体の外面に限られ、し
かもL形中性子吸収板21の材質として中性子吸収能力の
寿命が長いHf板を採用している。
【0043】さらに、L形中性子吸収板21として使用さ
れるHf板には保護酸化膜処理が施されおり、およそ 3
00℃前後の高温水となっている炉水中へのHfの溶け出
しが抑制されている。
【0044】第1の実施例によれば、RPVのうち最も
原子炉の炉心に近い部分の高速中性子の照射損傷が抑え
られ、原子炉の寿命を長くしながらも、少数の特殊な燃
料集合体を製造する必要がなく、燃料の製造コストを低
く抑えながら、しかもウランなどの核燃料を有効に利用
する観点からも望ましい。
【0045】また、RPV3の高速中性子の照射損傷を
抑えるためのL形中性子吸収板21の配置はRPV3に最
も近い燃料集合体の外面に限られ、しかもL形中性子吸
収板21として使用されるHf板の中性子吸収能力の寿命
が長いため、高レベル廃棄物となる炉内構造物の量を最
小限に抑えることができる。さらに、原子炉内を循環す
る炉水に溶け出すHfの量も抑制されており、溶出した
Hfに起因する炉水の線量の上昇も抑えることができ
る。
【0046】図3は本発明の第2の実施例を示すもので
ある。RPV3の内部には横断面正方形の燃料集合体9
を多数束ねて炉心を構成する。燃料集合体9の4体に1
本の割合で十字形制御棒10を配置し、燃料集合体9を多
数束ねてなる炉心の全ての外周面に平形中性子吸収板23
およびL形中性子吸収板21を配置する。中性子吸収板2
1,23はHf板からなり、表面には保護酸化膜処理が施
されている。
【0047】前記平形中性子吸収板23の構造は、図12に
示した従来のポイズン・カーテン8と同等の構造を有す
るものである。ただし、前記ポイズン・カーテン8の幅
のように、炉内計装案内管11との取り合いのため燃料集
合体9の一辺の長さの 1.5倍となるような制限はない。
また、L形中性子吸収板21の構造は、第1の実施例のも
のと同様のもので図2に示した構造を有する。
【0048】また、以上の実施例では中性子吸収板21,
23としてHf板を例にとって説明してきたが、中性子吸
収板21,23をZr−Hf板とした場合も同様の効果が期
待できる。
【0049】中性子吸収板21,23に求められる能力は、
RPVの照射損傷の原因となる高速中性子を低減しなが
らも、核分裂を引き起こす熱中性子をあまり損失しない
ものである。したがって、RPVの照射損傷の原因とな
る高速中性子束があまり大きくない原子炉にあっては、
中性子吸収板21,23としてZr−Hf板を採用する方に
利点がある。
【0050】さらに、以上の実施例ではBWRを例にと
って説明してきたが、PWRの場合にも同様の作用と効
果が得られることは明らかである。
【0051】次に図4から図6を参照しながら本発明の
第3の実施例を説明する。図4は本発明の第3の実施例
を示すもので、断面円筒形のRPV3の内部に、水槽13
を隔ててシュラウド12と呼ばれる炉心容器があり、シュ
ラウド12の内部に横断面正方形の燃料集合体9が多数規
則的に配置されて断面がほぼ円形の炉心が構成されてい
る。近年の大型の原子炉では 700ないし 800体の燃料集
合体がシュラウドの内部にほぼ円形に配置されている
が、本実施例では簡単のため 164体の燃料集合体で構成
された小型の原子炉を示している。
【0052】炉心は主として前記燃料集合体9の4体に
1本の割合で十字形制御棒10が配置されて構成されてい
る。炉心の外周部にはシュラウド12に面して中性子吸収
材を有する燃料集合体24が配置されている。この燃料集
合体24は図5に示したようにジルカロイ製チャンネルボ
ックス25のL形の2面イ,ロにはハフニウム(Hf)シ
ート26が貼着されている。
【0053】図5(A)はHfシート26を2側面に貼着
したチャンネルボックス25の斜視図で、図5(B)は横
断面図である。隣接する2側面には 0.5ないし 1.5mm厚
程度のHfシート26をチャンネルボックス25に溶接等に
よって貼着している。
【0054】最外周でもシュラウド12からの距離が比較
的大きい燃料集合体ではシュラウド12に面するチャンネ
ルボックス25の側面でもHfシート26は貼着されていな
い。通常チャンネルボックス25はHfを取り除いた主成
分がジルコニウム(Zr)のジルカロイ(Zry)でつ
くられているが、本実施例では図4中、太線で示したL
形の部分にHfシート26が貼着されている。
【0055】なお、Hfシート26の代りにチャンネルボ
ックス25のジルカロイ中にHfを添加することもでき
る。ZrとHfとは任意の割合で合金(全率固溶体)を
形成することはよく知られているとおりである。またZ
rとHfとは健全な溶接ができることもよく知られてい
る。
【0056】したがって目的に応じた濃度のHfを添加
したZr−Hf合金からなる中性子吸収材を有するチャ
ンネルボックス25を作ることができる。Hfシート26が
貼着またはHfが添加されているチャンネルボックス25
の表面には酸化被膜があらかじめ形成されており、Hf
の極く微量の炉水中への溶出をも抑制している。
【0057】図6は燃料集合体の軸方向高速中性子束分
布を模式的に示すための図であって、(A)は燃料集合
体(図を簡単にするためチャンネルボックス25のみ示
す)、(B)は高速中性子束分布であり、核分裂を生じ
る燃料の有効部分も合わせて示した。
【0058】下端部分aと上端部分cは高速中性子束が
比較的低いため、aとcの部分に基くシュラウド12やR
PV3などの炉心外周構造物の高速中性子照射量は比較
的低い。したがってaとcの部分では人為的に高速中性
子束を低下させる必要性は低い。すなわち、少なくとも
bの部分において高速中性子束を低下させることが本実
施例の考え方である。
【0059】図4に示す炉心外周部に配置された燃料集
合体のL形部分にHfのような中性子吸収材が存在する
と主として熱中性子が吸収されて熱中性子束が低下し、
その結果核分裂率が低下するため高速中性子束が低下
し、シュラウド12の高速中性子照射量が低減する。
【0060】なお、保護酸化膜処理は従来からジルコニ
ウム合金、例えばジルカロイなどに施されているもの
で、例えば 400℃の蒸気におよそ24時間程度さらして処
理するものである。
【0061】前記チャンネルボックスの少なくとも断面
L形のHfを含む部分には、保護酸化膜処理が施されて
おり、およそ 300℃前後の高温水となってる炉水中への
Hfの溶け出しが抑制されている。
【0062】第3の実施例によれば、シュラウド12のう
ち最も炉心に近い部分の高速中性子の照射損傷が抑えら
れ、原子炉の寿命を長くしながらも、少数の特殊な燃料
バンドルを製造する必要がなく、燃料の製造コストを低
く抑えながら、しかもウラン等の核燃料を有効に利用す
る観点からも望ましい原子炉の炉心が得られる。
【0063】また、シュラウド12の高速中性子の照射損
傷を抑えるための中性子吸収材の配置は、シュラウド12
に最も近い燃料集合体の外面に限られるため、原子炉の
反応度低下による燃料サイクルコストの増大を最小限に
抑えることができる。さらに、原子炉内を循環する炉水
に溶け出すHfの量も抑制されており、溶出したHfに
起因する炉水の線量率の上昇も抑えることができる。
【0064】図7は本発明に係る第4の実施例を示すも
のである。この第4の実施例が第3の実施例と異なる点
は炉心の最外周に配置されている燃料集合体のチャンネ
ルボックスのうち、シュラウド12に面する側面には全て
中性子吸収材を有する燃料集合体24を配置していること
である。このため、第3の実施例の場合よりさらにシュ
ラウド12などの炉心外周構造材の高速中性子照射量を低
減させることができる。その他の点では第3の実施例と
ほぼ同じであるため説明を省略する。
【0065】図8は図5(B)に対応してチャンネルボ
ックス25に中性子吸収材層27またはHfシート26を設け
た5種類の例をまとめて示したものである。すなわち、
図8(A)と(B)では2側面に、(C)と(D)では
1側面に中性子吸収材が添加された中性子吸収材層27と
なるZr合金板と、中性子吸収材を実質的に含まないZ
r合金板とが溶接により一体化され、正方形の断面を有
するチャンネルボックス25が形成されている。
【0066】(E)では方形のZr合金製チャンネルボ
ックス25の1側面を削り込んで凹所を形成し、Hfなど
の中性子吸収材を含むHfシート26がその凹所に貼着さ
れている。中性子吸収材を含むHfシート26の貼着はチ
ャンネルボックス25の内面でも外面でもよい。
【0067】なお、以上の実施例では中性子吸収材とし
て中性子と反応してもガスを発生しないHfを用いる場
合について説明してきたが、中性子吸収材としてはHf
に限定されるものではない。まずHfを用いる場合でも
Hfメタル、Hf−Zr合金、Hf−Ti合金などがあ
る。
【0068】Hf以外には中性子と反応してもガスを発
生しないディスプロシウム(Dy)、サマリウム(S
m)、ガドリニウム(Gd)、ユーロピウム(Eu)、
エルビウム(Er)などの希土類元素の酸化物をZrの
中に例えばサーメットとして添加してもよい。
【0069】さらに、以上の実施例ではBWRを例にと
って説明してきたが、BWRに限らず燃料バンドルを金
属製チャンネルボックスで取り囲んで燃料集合体とする
場合には同様の作用と効果が得られることは明らかであ
る。
【0070】
【発明の効果】第1の発明によれば炉心の水平断面のR
PVに近いまたは全ての外周部に、平板または横断面L
形中性子吸収板を配置させることにより、少数の特殊な
燃料集合体を利用することなく、且つ高レベル廃棄物と
なる炉内構造物の量を最小限に抑えながら、原子炉の寿
命を長くすることができる。
【0071】第2の発明によれば中性子吸収材としてH
fを採用することにより、中性子吸収板の寿命を長くす
ることができ、高レベル廃棄物となる炉内構造物の量を
さらに低減できる。そして、RPVの照射損傷の原因と
なる高速中性子束があまり大きくない原子炉にあって
は、中性子吸収板をZr−Hf板とすることにより、核
分裂を引き起こす熱中性子をあまり損失しない構造とす
ることができる。
【0072】また、Hf板またはZr−Hf板に、保護
酸化膜を形成させる処理を施すことにより、原子炉を循
環する炉水へのHfの溶け出しを抑制することができ、
炉水の線量を抑えることができる。
【0073】第3の発明によれば、炉心の外周を構成す
る炉心バッフル、熱遮蔽体、シュラウド、圧力容器など
の炉心外周構造物への高速中性子の流入率が低下し、そ
の結果高速中性子照射量が減少するので、これら構造物
の長寿命化が達成される。
【0074】燃料集合体の外周を構成する金属製チャン
ネルボックスは容易に内部の燃料バンドルと分離できる
ため、少数の特殊な燃料集合体を利用することなく、且
つ高レベル廃棄物となる炉内構造物の量を最小限に抑え
ながら、原子炉の寿命を長くすることができる。
【0075】また、中性子吸収材としてHf,Dy,S
mなどを採用することにより、中性子吸収材を含む金属
製チャンネルボックスの寿命を長くすることができ、高
レベル廃棄物となる炉内構造物の量をさらに低減でき
る。
【0076】そして、炉心外周構造物の照射損傷の原因
となる高速中性子束があまり大きくない場合には、金属
製チャンネルボックスの中性子吸収特性を、HfとZr
などとを混合することによって弱めることができ、核分
裂を引き起こす熱中性子の損失率を抑制できる。
【0077】燃料バンドルの内部にはこれら中性子吸収
材は配置しないため、熱中性子の損失は微少であり、相
対的に高速中性子を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る原子炉の炉心構造の第1の実施例
を示す水平断面図。
【図2】図1の実施例で使用する中性子吸収板の要部を
示す斜視図。
【図3】本発明に係る原子炉の炉心構造の第2の実施例
を示す水平断面図。
【図4】本発明に係る原子炉の炉心構造の第3の実施例
を示す水平断面図。
【図5】(A)は図4および図6における燃料集合体の
チャンネルボックスを示す斜視図、(B)は(A)にお
ける横断面図。
【図6】図4における燃料集合体の高速中性子束軸方向
分布を説明するためのもので、(A)は燃料集合体の斜
視図、(B)は(A)における燃料有効部に対応する中
性子束分布図。
【図7】本発明に係る原子炉の炉心構造の第4の実施例
を示す水平断面図。
【図8】(A)から(E)は図7におけるチャンネルボ
ックスの変形例をそれぞれ示す横断面図。
【図9】従来の加圧水型原子炉の炉心構造を1/4断面
で示す水平断面図。
【図10】図9における加圧水型原子炉用燃料集合体を
示す水平断面図。
【図11】従来のポイズン・カーテンを用いた沸騰水型
原子炉を示す水平断面図。
【図12】(A)は図11におけるポイズン・カーテンを
示す正面図、(B)は(A)の側面図。
【図13】従来の沸騰水型原子炉の上部格子板を一部切
欠して示す斜視図。
【図14】ハフニウムとジルコニウムの炉外腐食試験結
果を示す特性図。
【符号の説明】
1…PWR用燃料集合体、2…炉心、3…原子炉圧力容
器(RPV)、4…中性子吸収棒、5…制御棒案内シン
ブル、6…計装用シンブル、7…燃料棒、8…ポイズン
・カーテン、9…BWR用燃料集合体、10…十字形制御
棒、11…炉内計装案内管、12…シュラウド、13…水槽、
14…フック、15…ハンガー・ロッド、16…中性子吸収
板、17…スペーサパッド、18…上部格子板、19…梁、20
…開口部、21…L形中性子吸収板、22…シート部、23…
平形中性子吸収板、24…中性子吸収材を有する燃料集合
体、25…チャンネルボックス、26…Hfシート、27…中
性子吸収材層。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多数の方形燃料集合体を規則的に配置し
    て構成された炉心と、この炉心を取り囲んで構成された
    原子炉圧力容器などの炉心外周構造物とからなる原子炉
    の炉心構造において、前記炉心外周構造物に近い一部分
    または全ての外周面に、平板または横断面L形の中性子
    吸収板を配置してなることを特徴とする原子炉の炉心構
    造。
  2. 【請求項2】 多数の方形燃料集合体を規則的に配置し
    て構成された炉心と、この炉心を取り囲んで構成された
    原子炉圧力容器などの炉心外周構造物とからなる原子炉
    の炉心構造において、前記炉心外周構造物に近い一部分
    または全ての外周面に、平板または横断面L形の中性子
    吸収板を配置し、前記中性子吸収板をハフニウム金属板
    またはジルコニウム・ハフニウム合金板で構成し、前記
    ハフニウム金属板またはジルコニウム・ハフニウム合金
    板の表面に保護酸化膜を形成してなることを特徴とする
    原子炉の炉心構造。
  3. 【請求項3】 多数の燃料棒を規則的に配列して燃料バ
    ンドルとなし、この燃料バンドルを金属製チャンネルボ
    ックスに収納して燃料集合体となし、この燃料集合体を
    原子炉圧力容器などの炉心外周構造物の内部に規則的に
    配置して炉心を構成した原子炉の炉心構造において、前
    記炉心外周構造物に近接する前記燃料集合体の金属製チ
    ャンネルボックスは前記炉心外周構造物に近接する部分
    の少なくとも高速中性子照射量が高くなる部位に中性子
    吸収材が含有されていることを特徴とする原子炉の炉心
    構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2887357A1 (en) * 2013-12-17 2015-06-24 Global Nuclear Fuel-Americas, LLC Nuclear reactor fluence reduction systems and methods
JP2021089254A (ja) * 2019-12-06 2021-06-10 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 沸騰水型原子炉

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