JPH06170683A - 切屑吸引式転削工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 切削条件に応じてカバー先端部から供給する
圧縮空気の状態を調整することを可能とし、切屑吸引率
を向上させることのできる切屑吸引式転削工具を提供す
る。 【構成】 軸線回りに回転せしめられる工具本体４２の
先端外周部に切刃チップ５０が装着され、工具本体４２
に切屑収納室４４を画成するカバー４６が工具軸線回り
に回転可能に設けられ、カバー４６には、切屑収納室４
４とカバー外部とを連通する吸引口９０が形成されてな
る切屑吸引式転削工具において、カバー４６の先端側部
分に、工具先端側に向けて開口する噴出口８４を形成
し、カバー４６に、噴出口８４の内部とカバー外部とを
連通する吹入部を形成し、カバーの先端側部分の外側
に、先端部がカバー４６の径方向内側にリング状に突出
するエアー調整部材９６を、カバー１６の軸線方向に沿
って進退可能に設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、切屑を吸引しながら
被削材の平面切削を行うことのできる切屑吸引式転削工
具に関し、さらに詳述すれば、生成された切屑の吸引率
を向上させることのできる切屑吸引構造の改良に関す
る。

【０００２】

【従来の技術及びその課題】図４及び図５は従来の切屑
吸引式転削工具の一例を示すものである。これらの図に
示す切屑吸引式転削工具は、略円筒状を呈し、その先端
側が拡径された工具本体２と、この工具本体２の周面外
方を覆い、工具先端側に開口する切屑収納室（空間）５
を画成するカバー４とを備えて構成されている。

【０００３】工具本体２の先端側外周部には、クランプ
ねじ（図示省略）により締め込まれる楔部材６によっ
て、スローアウェイチップ（切刃チップ）８が周方向等
間隔に複数個装着されており、各スローアウェイチップ
（以下「チップ」と略称する。）８に対応して形成され
た、軸線方向視において円弧状を呈するチップポケット
１０には、工具本体２の先端部に配設された切屑案内部
材１２の各先端部１２ａが、チップ８のすくい面と僅か
な隙間をあける状態で設けられている。また、工具本体
２の中心部には、該工具本体２を軸線方向に貫く中心穴
１４が形成されており、この中心穴１４にアーバ１６の
嵌合軸１８が嵌合された上で、締付ボルト２０によって
両者が一体に固定されている。アーバ１６は、キー２２
を介して工作機械の主軸２４に固定されている。

【０００４】前記カバー４は、アーバ１６に嵌装された
ラジアルベアリング２６の外側に嵌挿された支持カバー
２８と、この支持カバー２８の内側に、工具軸線方向に
スライド可能に設けられた可動カバー３０とから構成さ
れており、工具本体２に対して工具軸線回りに回転可能
となっている。支持カバー２８には図６に示すように長
孔３２が形成されており、この長孔３２に挿入され可動
カバー３０に螺合するボルト３４によって、可動カバー
３０が支持カバー２８に対してスライド可能に固定され
ている。また、カバー４の側方には、切屑収納室５とカ
バー４の外部とを連通する吸引口３６が形成されてお
り、この吸引口３６に、図示しない吸引機に連結された
吸引ホース４０の一端部が、排出管３８を介して接続さ
れている。

【０００５】上記切屑吸引式転削工具にあっては、カバ
ー４の周方向の位置決め固定をした上で、切屑収納室５
内の空気を吸引口３６から吸引しつつ、主軸２４によっ
て工具本体２を回転させ、軸線方向先端側及び径方向外
方に突出する設けられたチップ８の切刃で、被削材の平
面加工を行ってゆく。チップ８の切刃で逐次生成された
切屑は、図７に示すように切屑案内部材１２に導かれて
切屑収納室５内に吸引されていき、さらに吸引口３６を
経て吸引機側に移送され、回収されてゆく。なお、図７
においては切屑案内部材１２を簡略化して示している。

【０００６】ところで、上記のような切屑吸引式転削工
具においては、切削条件（主として切込み量）に応じ
て、工具軸線方向における切刃先端と可動カバー３０の
先端とがなす距離Ｌ１（図７参照）を所定の範囲におさ
めるべく、その都度、支持カバー２８に対する可動カバ
ー３０の突き出し量を調整する必要がある。即ち、距離
Ｌ１が切込み量Ｌ２（図７）より小さい場合には、可動
カバー３０の先端が被削材に接触してしまい、距離Ｌ１
が大きすぎる場合には、被削材と可動カバー３０の先端
との隙間が大きくなり過ぎ、吸引率が低下してしまう。
従って、従来の切屑吸引式転削工具においては、可動カ
バー３０の突き出し量の調整を、その都度、正確に行う
必要があり、この作業に手間がかかるため、これを改善
したいという要望があった。

【０００７】上記の要望に答えるものとして、本出願人
は、カバー先端部から圧縮空気を噴出する構造の切屑吸
引式転削工具を先に提供している（特願平４−２９５４
１０号）。本発明は、前記切屑吸引式転削工具をさらに
改良したものであり、切削条件に応じてカバー先端部か
ら供給する圧縮空気の状態を調整することを可能とし、
切屑吸引率をさらに向上させることのできる切屑吸引式
転削工具を提供することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、軸線回りに回
転せしめられる工具本体の先端外周部に切刃チップが装
着され、前記工具本体に、該工具本体の周面外方を覆
い、工具先端側に開口する切屑収納室を画成するカバー
が、工具軸線回りに回転可能に設けられ、前記カバーに
は、前記切屑収納室とカバー外部とを連通する吸引口が
形成されてなる切屑吸引式転削工具において、前記カバ
ーの先端側部分に、周方向全体に渡って工具先端側に向
けて開口する噴出口が形成され、前記カバーに、前記噴
出口の内部とカバー外部とを連通する吹入部が形成さ
れ、前記カバーの先端側部分の外側には、先端部が前記
カバーの径方向内側にリング状に突出するエアー調整部
材が、前記カバーの軸線方向に沿って進退可能に設けら
れたことを特徴としている。

【０００９】また、前記エアー調整部材は、その内周部
を前記カバーの外周部に螺合せしめられた構成としても
よい。

【００１０】

【作用】上記構成に係る切屑吸引式転削工具にあって
は、カバーの周方向の位置決め固定、並びに、エアー調
整部材のカバーからの軸線方向の突き出し量を調整した
上で、切屑収納室内の空気を吸引口から吸引するととも
に、吹入口から圧縮空気を吹き入れて噴出口から工具先
端側に向けて噴出させ、この状態で工具本体を軸線回り
に回転させ、工具本体に装着された切刃チップで被削材
の平面切削を順次行ってゆく。

【００１１】切削時において、噴出口から噴出される圧
縮空気は、カバーの周方向全体を包囲しつつ被削材表面
に当接し、カバー先端部と被削材表面との間に圧縮空気
の流れによる遮断層を形成する。そして、被削材表面に
当接した圧縮空気の流れの全部若しくは大部分は、工具
本体の先端部近傍から切屑吸引室に向かう吸引空気の流
れに引きつけられて合流し、吸引口からカバー外部に吸
引されてゆく。

【００１２】従って、切刃チップによって生成された切
屑は、前記の遮断層によってカバーの外部に飛散するこ
とが防止されると同時に、切屑収納室に向かう圧縮空気
の流れによって、切屑収納室に向かう移動が一層促進さ
れ、切屑吸引率が向上する。

【００１３】さらに、噴出口から噴出される圧縮空気
は、カバーに対するエアー調整部材の軸線方向の位置に
応じて、径方向における噴出方向（噴出角度）、又は噴
出する際の圧力を定められ、切削条件に適した状態で噴
出される。そして、これにより切屑吸引率が一層向上さ
れる。

【００１４】

【実施例】以下、添付図面を参照して本発明の実施例を
説明する。図１は本発明の一実施例に係る切屑吸引式転
削工具を示す軸方向断面図であり、図２は同切屑吸引式
転削工具の底面図である。

【００１５】これらの図に示す切屑吸引式転削工具は、
後述するカバー及びその先端側部分の構造を除く基本的
な構成については、前述の図４乃至図７に示したものと
同様であり、略円筒状を呈し、その先端側が拡径された
工具本体４２と、この工具本体４２の周面外方を覆い、
工具先端側に開口する切屑収納室４４を画成するカバー
４６とを備えて構成されている。

【００１６】工具本体４２の先端側外周部には、楔部材
４８によって固定されるチップ５０が周方向等間隔に複
数個装着されており、各チップ５０に対応して形成され
たチップポケット５２には、切屑案内部材５４がボルト
５６により装着固定されている。また、工具本体４２の
中心部には、該工具本体４２を軸線方向に貫く中心穴５
８が形成され、この中心穴５８にアーバ６０の嵌合軸６
２が嵌合された上で、段付スリーブ６４を介して締付ボ
ルト６６が締め付けられ、両者が一体に固定されてい
る。アーバ６０は、キー溝部６８に挿入されるキーを介
して、前述の切屑吸引式転削工具と同様に、工作機械の
主軸に固定される。

【００１７】本実施例の特徴であるカバー４６及びその
先端側部分の構造は次のようになっている。カバー４６
は、アーバ６０に嵌装されたラジアルベアリング７０，
７２の外側に嵌挿された外カバー７４と、この外カバー
７４の内側にねじ７８で固定された内カバー７６とから
構成されており、工具本体４２に対して工具軸線回りに
回転可能となっている。

【００１８】外カバー７４と内カバー７６との間には、
略リング状のエアー供給室８０と、このエアー供給室８
０の下方に円筒状に延びるエアー供給路８２が形成され
ており、エアー供給路８２の下部には、周方向全体に渡
って工具先端側に向けて開口する噴出口８４が連通して
形成されている。また、エアー供給室８０の側方には、
エアー供給室８０の内部とカバー４６の外部とを連通す
る吹入口８６が形成されており、図示しないコンプレッ
サー等の圧縮空気供給手段に一端を連結されたチューブ
８８の他端部が、吹入口８６に連結されている。前記エ
アー供給室８０及びエアー供給路８２は、吹入部を構成
している。

【００１９】また、カバー４６の側方には、切屑収納室
４４とカバー４６の外部とを連通する吸引口９０が形成
されており、この吸引口９０に、図示しない吸引機に連
結された吸引ホース９２の一端部が接続されている。な
お、吸引口９０のうち、前記エアー供給路８２に連通す
る部分の周囲には、シール部材９４が充填され、エアー
供給室８０と吸引口９０の内部とは隔絶されている。

【００２０】カバー４６の先端側部分には、その外側に
略円筒状を呈するエアー調整部材９６が設けられてい
る。カバー４６の先端側外周部にはねじ部４６ａが形成
されるとともに、エアー調整部材９６の内周部には、前
記ねじ部４６ａに螺合するねじ部９６ａが形成されてお
り、エアー調整部材９６はカバー４６に対してその軸線
回りに回動せしめられることにより、カバー４６の軸線
方向に沿って進退調整が可能となっている。

【００２１】エアー調整部材９６の先端部９８は、カバ
ー４６の径方向内側にリング状に突出する形状とされて
いる。本実施例においては、図１に示す軸方向断面にお
いて、先端部内側面９８ａが工具軸線Ｘ1に対してなす
角度θ1は、３０゜〜６０゜の範囲に設定されている。

【００２２】上記構成に係る切屑吸引式転削工具にあっ
ては、アーバ６０を工作機械の主軸に装着し、カバー４
６の周方向の位置決め固定、並びに、エアー調整部材９
６のカバー４６からの軸線方向の突き出し量を調整した
上で、切屑収納室４４内の空気を吸引口９０から吸引す
るとともに、吹入口８６から圧縮空気を吹き入れて噴出
口８４から工具先端側に向けて噴出させる。そして、こ
の状態で工具本体４２を軸線回りに回転させ、工具本体
４２に装着されたチップ５０で、被削材の平面切削を順
次行ってゆく。

【００２３】切削時において、噴出口８４から噴出され
る圧縮空気は、カバー４６の周方向全体を包囲しつつ被
削材表面に当接し、カバー４６の先端部と被削材表面と
の間に圧縮空気の流れによる遮断層を形成する。そし
て、被削材表面に当接した圧縮空気の流れの全部若しく
は大部分は、工具本体４２の先端部近傍から切屑吸引室
４４に向かう吸引空気の流れに引きつけられて合流し、
吸引口９０からカバー４６の外部に吸引されてゆく。従
って、チップ５０によって生成された切屑は、圧縮空気
流の遮断層によってカバー４６の外部に飛散することが
防止されると同時に、切屑収納室４４に向かう圧縮空気
の流れによって、切屑収納室４４に向かう移動が一層促
進され、これにより切屑吸引率が向上する。

【００２４】さらに、噴出口８４から噴出される圧縮空
気は、エアー調整部材９６の先端部９８により、その状
態を調整された状態で被削材の表面に当接する。即ち、
図１及び図２に示す実施例の場合、エアー調整部材９６
をカバー４６に対して軸線方向上方に移動させれば、噴
出口８４から出る圧縮空気は、その噴出方向の軸線Ｘ1
側への傾斜が強められ、同時に噴出する圧力も強められ
る。逆に、エアー調整部材９６を軸線方向下方へ移動さ
せれば、噴出方向の軸線Ｘ1側への傾斜は弱められ、同
時に噴出する圧力も弱められる。従って、エアー調整部
材９６の軸線方向の位置を調整することにより、切削条
件に適した圧縮空気の噴き出し状態とすることができ、
切屑吸引効率が一層向上する。

【００２５】なお、エアー調整部材９６の先端部の形状
は、上記実施例で示したものには限られず、種々の変形
が可能である。例えば、図１のＡ部を図３に示されるよ
うに、先端部内側面９８ａが軸線方向に対して直交する
形状とすることにより、噴出口８４から噴出される圧縮
空気の圧力調整をより容易に行うことが可能である。

【００２６】また、上記実施例においては、エアー調整
部材９６をカバー４６の外周部に螺合させる構成として
いるが、例えばエアー調整部材９６に軸線方向に延びる
長孔を形成してカバー４６にボルト止めする構成とする
ことも可能である。

【００２７】

【発明の効果】以上説明したように、この発明に係る切
屑吸引式転削工具よれば、カバーに対してエアー調整部
材の軸線方向の突き出し量を調整することにより、切削
条件に応じてカバー先端部から供給する圧縮空気の状態
を調整することができ、切屑吸引率をさらに向上させる
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る切屑吸引式転削工具を
示す軸方向断面図である。

【図２】同切屑吸引式転削工具の底面図である。

【図３】本発明の他の実施例に係る部分拡大図である。

【図４】従来の切屑吸引式転削工具を示す軸方向断面図
である。

【図５】図４の切屑吸引式転削工具の底面図である。

【図６】図４の切屑吸引式転削工具のVI方向からの矢視
図である。

【図７】可動カバーの位置調整を説明するための図であ
る。

【符号の説明】

４２ 工具本体 ４４ 切屑収納室 ４６ カバー ５０ 切刃チップ ８０ エアー供給室 ８２ エアー供給路 ８４ 噴出口 ８６ 吹入口 ９０ 吸引口 ９６ エアー調整部材

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】軸線回りに回転せしめられる工具本体の先
   端外周部に切刃チップが装着され、前記工具本体に、該
   工具本体の周面外方を覆い、工具先端側に開口する切屑
   収納室を画成するカバーが、工具軸線回りに回転可能に
   設けられ、前記カバーには、前記切屑収納室とカバー外
   部とを連通する吸引口が形成されてなる切屑吸引式転削
   工具において、前記カバーの先端側部分に、周方向全体
   に渡って工具先端側に向けて開口する噴出口が形成さ
   れ、前記カバーに、前記噴出口の内部とカバー外部とを
   連通する吹入部が形成され、前記カバーの先端側部分の
   外側には、先端部が前記カバーの径方向内側にリング状
   に突出するエアー調整部材が、前記カバーの軸線方向に
   沿って進退可能に設けられたことを特徴とする切屑吸引
   式転削工具。
2. 【請求項２】前記エアー調整部材は、その内周部を前記
   カバーの外周部に螺合せしめられたことを特徴とする請
   求項１記載の切屑吸引式転削工具。