JPH0615165Y2 - オイルシール - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、オイルシールに関し、更に詳細には回転軸が
ハウジングを貫通する部分のオイルシールに関するもの
である。

〔従来の技術〕

例えばエンジンの場合、クランク軸がハウジングを貫通
する部分には、クランク室内の潤滑油が外部に漏洩しな
いようにオイルシールが設けられる。従来のオイルシー
ルとしては、ゴムなどの弾性体から成り、且つ軸の周囲
を圧接するリップ部を有する部材をクランク軸とハウジ
ングとの間に圧入するラジアルタイプ、実開昭６１−１
８２４６０号公報の考案のようにクランク軸に圧入など
の手段で取付けたフランジ状のオイルスリンガと、前記
ラジアルタイプ同様の回転軸面とのそれぞれに接するリ
ップを有するアクシアル・ラジアル併用タイプのオイル
シールなどがある。

その他の従来例として第３図に示すようなアクシアルタ
イプ単独のオイルシールがある。即ち、このオイルシー
ルは、回転軸１に圧入などの手段で取付けたオイルスリ
ンガ２と、ハウジング４に同様に圧入などの手段で取付
けたシール部材６とから成るものである。

シール部材６は、金属製の筒状部材８とその表面にゴム
などの弾性部材から成り、且つ前記オイルスリンガー２
に接するリップ１０を設けたシール部１２を焼付け手段
などで固着した構造をしている。そしてオイルスリンガ
２がリップ１０に接するシール面には渦巻き状の溝から
なるネジ目１４を設け、軸側に漏洩したオイルを遠心力
を利用してハウジング内部１６内に還流させると同時に
シール面の潤滑を行うようにしている。

以上の説明によって明らかなようにアクシアルタイプの
オイルシールのシール面の摩擦力は、リップ１０の弾性
力と取付け位置によって適宜調節できる利点がある。な
お空間部２２側に漏洩したオイルがダストシール２４側
に洩れ出すのを防止するこめにスロワー１８，２０を設
けている。また通常、空間部２２はネジ目を着けたオイ
ルスリンガの回転により負圧と成る。したがって、この
負圧によりリップ１０がオイルスリンガ２側に吸引され
て摩擦力が増大するのを防止するために、前記ダストシ
ール２４は、通常不織布など通気性を有するフィルタ状
の素材が使用される。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、前記ラジアルタイプのオイルシールは、取付
けの際の圧入時にシール面が回転軸にこすられてリップ
部に傷が発生しり、リップと接する面の硬度を上げるた
めに高価なクロムメッキの必要を生じたり、また回転軸
とオイルシールとの偏心など油洩れの原因となる要因が
多いという問題がある。

また前記公報のオイルシールは、ラジアルタイプのリッ
プの前記欠点を持つことの外に、構造が複雑であり、取
付けも困難であるという問題がある。また第３図のオイ
ルシールは、構造は単純化されているが、オイルスリン
ガー２の遠心力でシール面のオイルが飛散して潤滑油が
不足してリップ１０が摩耗するという問題と、図から明
らかなとおり軸方向に長い形状をしているので、その分
エンジンが大きくなり、また既存のエンジンに適用する
ことが困難であるなどの問題がある。

本考案は、以上の問題に着目して成されたものであり、
アクシアルタイプのオイルシールの特性を十分発揮で
き、構造がより簡単で小型化が可能であり、しかも着脱
がより容易なオイルシールを提供することを目的として
いる。

〔課題を解決するための手段〕

以上の目的を達成するための本考案のオイルシールの構
成は、回転軸のハウジング貫通部位にオイル用主スリン
ガと、その外側に前記より小径のオイル用副スリンガと
を設け、前記ハウジングに取付けるオイルシール本体に
は、前記主スリンガを外側から圧接するリップと、前記
主・副スリンガの間に、且つ前記回転軸に面してリング
状突起を設けたことを特徴としている。

前記副スリンガにもリップ（以下副リップという）を設
けたり、該副リップの代りに前記副スリンガの前後に２
つのリング状突起を設けるなど、オイルシール機能を増
強することができる。

なおオイルスリンガは、回転による遠心力でリップとの
接触部分を通り空気及び付着するオイルを半径方向に運
ぶポンプ作用をする。したがって、リップと接するシー
ル面の潤滑オイルが不足する危険があるので、これを防
止するために、主スリンガに小穴を複数個設け、ハウジ
ング内の空気，オイルを主スリンガの外側に供給できる
ようにすることが好ましい。

〔作用〕

本考案のオイルシールは、主及び副から成る複数のオイ
ルスリンガを設けることにより、回転部分と静止部分と
のオイルシールを主スリンガとこれに接するリップによ
って行い、主スリンガの外に漏洩したオイルが回転軸に
沿って外部に洩れ出ることを副スリンガが防止する。

また前記リング状突起は、前記リップからシール部に漏
洩したオイルを塞き止め、シール部の下側で逆にリップ
側に逆流させて遠心力によりハウジング内に回収する。
その際シール面を潤滑することができる。

即ち、主オイルスリンガとこれに当接するリップとによ
って大部分のシールを行い、該シールを通過したオイ
ル、即ち前記シール部分から漏洩したオイルないし潤滑
用に導入したオイルなどの僅かなオイルを前記リング状
突起及び副オイルスリンガによって回収する２段シール
作用が得られる。

前記作用をより有効にするために、前記シール部のリン
グ状突起の少なくとも内側を、少なくとも回転軸に平行
の筒状とするか、リップに向かって径を大きくするテー
パ状とすると、リップから洩れ出たオイルの回収がより
容易になる。

前記副リップ又は複数のリング状突起を設けた場合に
は、副スリンガの位置から外側の被覆部に洩れたオイル
も回収することができる。更に主スリンガとリング状突
起との間に第３のスリンガを設け、副スリンガに達する
オイルを低減させよりオイルシール効果を増加させるこ
とができる。

〔実施例〕

以下添付の図面を対照して、エンジンのクランク軸につ
いての一実施例により本考案を具体的に説明する。

第１図は、本実施例のオイルシールの断面図であり、第
１図と同様の部材には同じ番号を付し説明を省略する。
図においてクランク軸（以下回転軸という）１には、大
きい径の主（以下メインという）スリンガ２_１とこれよ
に径の小さい副（以下セカンドという）スリンガー２_２
とを設けた筒状部材２６を、セカンドスリンガ２_２が外
側にくるように、例えば圧入手段などで取付けている。
メインスリンガ２_１には貫通穴２８を設けここからオイ
ルの出入りを可能にしてメインスリンガ２_１に常時オイ
ルが供給されるようにしている。

前記２つのスリンガー（以下誤解のおそれのない場合に
はメイン，セカンドを省略する）２_１，２_２に、それぞ
れ接する主（以下メインという）リップ１０_１及び副
（以下セカンドという）リップ１０_２を備えたシール部
材６は、筒状部８をハウジング４に圧入して取付けてい
る。この場合、メインスリンガ２_１に接するメインリッ
プ１０_１は、セカンドスリンガ２_２の径より大きい内径
を有するので、取付けの際互いの部材が干渉することは
ない。なお、前記の各取付け手段は、圧入手段に限定さ
れず、他の手段によっても行うことができる。

前記シール部材６は、金属製の筒状部材８に前記リップ
（以下誤解のおそれのないときはメイン，セカンドを省
略する）１０_１，１０_２を設けたゴム製のシール部１２
を図のように加硫焼付けしたものであり、リップ１
０_１，１０_２の間のシール部１２はリップイ１０_２（外
側）からリップ１０_１（内側）に向かって拡開するテー
パ状とし、その途中にリング状の突起３０を設けた構造
をしている。

前記シール部材６は、ハウジング４に圧入することによ
りリップ１０_１，１０_２の弾性でスリンガ２_１，２_２に
圧接させてシールする。更にセカンドオイルスリンガ２
_２にはオイルが殆ど達しないため、摩擦抵抗が少なく、
耐摩耗性に富む素材、例えばフッソ系樹脂などから成る
部材３２をリップ１０_２の表面に取付けた。したがって
シール面に無理な力が掛る危険がない。なお、図の３２
は回転軸に取付けたギヤである。

次に本実施例のオイルシールの動作を説明する。回転軸
１が回転するとハウジング内部（クランク室内部）１６
内にオイルミストが飛散した状態になる。そしてメイン
スリンガ２_１がメインリップ１０_１に接しながら回転す
ると、遠心力とネジ目１４との作用でオイル及び周辺の
空気を半径方向に送るポンプ作用が働き、シール面（リ
ップとの接触面）を潤滑する。この潤滑に使用するオイ
ルは、メインスリンガ２_１に明けた複数の小穴２８から
供給されるので潤滑オイルが不足することがない。

前記小穴２８などから空間部２２内に侵入したオイル
は、メインスリンガ２_１の遠心力で大部分が該スリンガ
２_１の面上を半径方向に移動するが、一部セカンドスリ
ンガ２_２に達する。これら空間部２２内に達したオイル
の挙動について以下に説明する。

メインリップ１０_１かはシール部１２を伝わって流下す
るオイルＡはリング状突起３０により塞き止められて該
突起３０を伝わってシール部１２の下側に達しオイルＢ
の流れのようにリップ１０_１の方へ逆流する。そしてメ
インスリンガ２_１の回転により油滴Ｃとなってハウジン
グ内部１６に回収される。

またセカンドスリンガ２_２に達したオイルＥは、同様に
遠心力によりシール部１２壁に飛散し該壁を流下する
が、リング状突起３０に塞き止められ、オイル溜り３３
を形成し、溢れたオイルは前記オイルＢに合流してハウ
ジング内部１６に回収することができる。

セカンドリップ１０_２に達したオイルは、セカンドスリ
ンガ２_２により空間部２２内に戻され前記オイル溜りＦ
に回収される。したがって、本実施例のオイルシールを
超えて外部にオイルが漏洩することを防止することがで
きる。

第２図によって第２実施例を説明する。シールを示すも
のである。第２実施例は、第１図のセカンドリップ１０
_２をリング状突起３０_２に変更した点にある。この場
合、第１図に示すオイル溜りＦから理解されるように、
リング状突起３０_１の内径Ｄ_１は、リング状突起３０_２
の内径Ｄ_２より大きくする必要がある。その他は第１図
のオイルシールと同様である。

第２図の実施例では、セカンドスリンガ２_２に達したオ
イルは、遠心力によりシール部１２側に飛ばされたオイ
ルＦは、リング状突起３０_２を伝わって流下し、図示し
ないオイル溜り（第１図のＦ）に回収される。本実施例
では、セカンドオイルスリンガ２_２に摩擦部分がないの
で、第１図の部材３２のような高価な材料を使用する必
要がなく同様のシール効果を得ることができる。

第１図，第２図においてメインスリンガ２_１に設けた小
穴２８は、シール面の潤滑状況によって省略することが
できる。

また、前記各実施例の変形として、第２図のリング状突
起３０_１，３０_２との間のシール部１２の内径を、メイ
ンスリンガ２_１に向かって縮小するようなテーパ状（図
示せず）とすることによりリング状突起３０_２を省略し
ても外部おオイルが洩れることを防止するたとができ
る。更にスリンガ２_１，２_２の間に第３のスリンガ（図
示せず）を設けることにより、セカンドオイルスリンガ
２_２に達するオイル量を低減させることができる。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案のオイルシールは、回転軸の
ハウジング貫通部位にオイル用主スリンガと、その外側
に前記より小径のオイル用副スリンガとを設け、前記ハ
ウジングに取付けるオイルシール本体には、前記主スリ
ンガを外側から圧接するリップと、前記主・副スリンガ
の間に、且つ前記回転軸に面してリング状突起を設ける
構成としたために、次の効果を得ることができる。

即ち、２段シール効果による高いシール性能と、シール
面の潤滑が容易に行えるのでシール面の摩耗の低減する
ことができ、しかも容易に入手できる材料で、しかも従
来の製造手段により容易に製造することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は第１の実施例によるオイルシールの縦断面図、
第２図は別の実施例によるオイルシールの半断面図、第
３図は従来のオイルシールの半断面図である。 １……回転軸、２……オイルスリンガ、２_１……主（メ
イン）スリンガ、２_２……副（セカンド）スリンガ、６
……シール部材、１０……リップ、１０_１……メインリ
ップ、１０_２……セカンドリップ、１２……シール部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸のハウジング貫通部位にオイル用主
   スリンガと、その外側に前記より小径のオイル用副スリ
   ンガとを設け、前記ハウジングに取付けるオイルシール
   本体には、前記主スリンガを外側から圧接するリップ
   と、前記主・副スリンガの間に、且つ前記回転軸に面し
   てリング状突起を設けたオイルシール。