JPH06136442A - 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法 - Google Patents

高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法

Info

Publication number
JPH06136442A
JPH06136442A JP29127392A JP29127392A JPH06136442A JP H06136442 A JPH06136442 A JP H06136442A JP 29127392 A JP29127392 A JP 29127392A JP 29127392 A JP29127392 A JP 29127392A JP H06136442 A JPH06136442 A JP H06136442A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
working
strength
hot
treatment
austenitic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP29127392A
Other languages
English (en)
Inventor
Terutaka Tsumura
輝隆 津村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP29127392A priority Critical patent/JPH06136442A/ja
Publication of JPH06136442A publication Critical patent/JPH06136442A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】深井戸油井用検層線として好適なオーステナイ
ト系線材の製造。 【構成】(1) Cu: 0.2〜3.0 %、Ni:10.0〜65.0%、C
r:15.0〜27.0%およびMo:1.0 〜11.0%を含有するオ
ーステナイト鋼または合金を、1000℃以上の温度に加熱
してから熱間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の
温度域で終了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を
施し、次いで 300〜700 ℃で温間加工を施し、その後冷
間加工を施す。 (2) 上記(1) に記載の方法に加えて更に、冷間加工後 4
50〜700 ℃で時効処理する。 上記(2) に記載の時効処理を上記(1) に記載の温間加工
後、または同じく直接溶体化処理後に行うこともでき
る。 【効果】同一強度レベルの従来の再加熱溶体化処理法を
用いた材料に比べて、耐SCC性に悪影響を及ぼさない
ように冷間加工量を低減することができるので、油井検
層線等に好適な高強度で耐SCC性に優れたオーステナ
イト系材料の線材を製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に耐食性、なかでも
耐応力腐食割れ性(以下、耐SCC性という)に優れる
とともに、高い強度をも兼ね備え、油井検層線等の用途
に好適なオーステナイト系線材の製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年、油井および天然ガス井は、深井戸
化の傾向が著しく、そのため井戸の掘削時あるいは油や
天然ガスの生産時に、各種の測定器や治具を井戸中に吊
り下げるための油井検層線の強度向上が強く要求されて
いる。加えて産出油や産出ガス中に、湿潤な硫化水素
(H2S)をはじめ炭酸ガス(CO2)や塩素イオン (Cl- ) な
どの強腐食性物質を含む油井やガス井にまで開発の目が
向けられるようになって来たことから、その腐食対策も
一層重要性を増している。
【0003】従来、油井検層線の腐食対策としては、井
戸の中へ腐食抑制剤(インヒビター)を投入する方法が
最も一般的なものとして知られているが、この方法では
十分な成果が期待できないことが多く、また海上油井や
ガス井等には有効に活用できないという問題があった。
【0004】このような事情に鑑み最近では、より高級
な耐食性材料が用いられる傾向にあり、オーステナイト
系ステンレス鋼およびインコロイやハステロイ(いずれ
も商品名)などの高合金材料が採用され始めている。し
かし、これらの材料はオーステナイト系であるため、通
常の製造方法である溶体化処理のままでは強度が低く、
深井戸用油井検層線としての強度を満足し得ないもので
ある。そこで、オーステナイト系のステンレス鋼や合金
を適用するにあたっては、溶体化処理後更に冷間加工を
施して、要求される高強度を具備させているのが現状で
ある。
【0005】しかるに、本発明者らのこれまでの詳細な
実験、研究によって、「H2S −CO2−Cl- 環境下におけ
る油井、ガス井用鋼材の腐食の主たるものは応力腐食割
れ(以下、SCCという)であるが、この場合のSCC
はオーステナイト系ステンレス鋼における一般的なそれ
とは挙動を全く異にするものであって、Cl- の存在もさ
ることながら、それ以上にH2S の影響が極めて大き
い」、更に「冷間加工を施して強化する場合は大きな加
工量(断面減少率)が必要となるが、こうした強冷間加
工は、集合組織を発達させるので、上記SCCに対する
抵抗性を著しく減少させる」ことが解明された。
【0006】このように、オーステナイト系のステンレ
ス鋼や合金には、強度不足を補うために強冷間加工を施
すと、H2S の存在する環境下での耐食性が著しく劣化す
るという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上述のよ
うな問題点を解消するために、耐SCC性に悪影響を及
ぼさないように、冷間加工量をできるだけ低減できるオ
ーステナイト系ステンレス鋼や合金の強化手段を見出す
ことを課題としてなされたもので、極めて腐食性の強い
H2S −CO2 −Cl- 環境下の油井やガス井でも優れた耐久
性と高強度を発揮する、深井戸用検層線などとして好適
なオーステナイト系線材の製造方法を提供することを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の製造
方法にある。
【0009】(1) 重量%で、Cu: 0.2〜3.0 %、Ni:1
0.0〜65.0%、Cr:15.0〜27.0%およびMo: 1.0〜11.0
%を含有するオーステナイト鋼または合金を、1000℃以
上の温度に加熱してから熱間加工を行い、この熱間加工
を800 ℃以上の温度域で終了した後、直ちに急冷する直
接溶体化処理を施し、次いで 300〜700 ℃で温間加工を
施し、その後冷間加工を施すことを特徴とする高強度高
耐食性オーステナイト系線材の製造方法。
【0010】(2) 上記(1) に記載の方法に加えて更に、
冷間加工後 450〜700 ℃で時効処理することを特徴とす
る高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
【0011】(3) 上記(1) に記載の化学組成のオーステ
ナイト鋼または合金を、1000℃以上の温度に加熱してか
ら熱間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の温度域
で終了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を施し、
次いで 300〜700 ℃で温間加工を施し、更に 450〜700
℃で時効処理し、その後冷間加工を施すことを特徴とす
る高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
【0012】(4) 上記(1) に記載の化学組成のオーステ
ナイト鋼または合金を、1000℃以上の温度に加熱してか
ら熱間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の温度域
で終了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を施し、
次いで 450〜700 ℃で時効処理し、更に 300〜700 ℃で
温間加工を施し、その後冷間加工を施すことを特徴とす
る高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
【0013】本発明者は、前記目的を達成すべく研究を
重ねた結果、以下の(a)〜(e) に示す知見を得た。
【0014】(a)Cu 、Ni、CrおよびMoを含有するオース
テナイト系のステンレス鋼や合金(以下、オーステナイ
ト系材料という)では、熱間加工後そのままの状態で直
接に急冷する処理 (直接溶体化処理) を行い、続いて温
間加工を行えば、凍結された熱間加工歪および温間加工
歪、さらには温間加工時のCuの析出との重畳作用で強度
が大幅に向上し、しかもH2S −CO2 −Cl- 環境下の油
井、ガス井での耐SCC性が良好となるため、更なる強
化のために冷間加工を施しても、小さな加工量で大きな
強度が得られ、耐食性は従来の再加熱溶体化処理後に強
冷間加工を行う方法( 以下、従来法という )によるもの
と比較して良好である。
【0015】(b) 耐SCC性向上のためには、鋼材中の
C含有量を0.1 重量%未満とすることが好ましいが、そ
うした低C材でも、上記直接溶体化処理とその後に温間
加工を行うことを組み合わせる方法による強化作用は十
分に大きい。また、直接溶体化処理を行った後温間加工
を施し時効処理するか、あるいは時効処理しその後に温
間加工を施すことを組み合わせた方法では、強化作用は
一層大きくなる。
【0016】(c) 直接溶体化処理温度が800 ℃以上の場
合に、特に良好な耐SCC性が得られる。
【0017】(d) 上記、直接溶体化処理と、それに続い
て温間加工、冷間加工を施した後にさらに時効処理を行
えば、更なるCuの析出によって強度が極めて大きく向上
する。
【0018】この場合、冷間加工量は小さくできるの
で、耐SCC性は従来法によるものと比較して極めて良
好である。
【0019】(e) 一方、上記直接溶体化処理とそれに続
く温間加工を施した後に時効処理を行っても、あるい
は、上記直接溶体化処理とそれに続く温間加工との間で
時効処理を行っても、凍結された熱間加工歪および温間
加工歪、さらには温間加工時と時効処理時に析出したCu
との重畳作用で強度が極めて大きく向上し、しかも耐S
CC性も良好であるため、その後に更なる強化のために
施す冷間加工量は小さくできるので、耐SCC性は従来
法によるものと比較して極めて良好である。
【0020】本発明は、上記知見に基づいてなされたも
のであって、前記の成分を含有するオーステナイト系材
料、例えば SUS 316 J1 などのオーステナイト系ステン
レス鋼やインコロイ、ハステロイ(いずれも商品名)な
どのような高合金鋼を、1000℃以上の温度に加熱してか
ら熱間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の温度域
で終了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を施し、
次いで温間加工を施し、その後冷間加工を施すか、更に
この「冷間加工」の後に時効処理することにより、或い
は上記の「温間加工」と「冷間加工」との間、または
「直接溶体化処理」と「温間加工」との間に更に時効処
理することにより、耐SCC性に優れるとともに、強度
も十分に高いオーステナイト系線材を得る点に特徴を有
するものである。
【0021】
【作用】本発明の方法における製造工程は、前記の各技
術的手段と、それによってもたらされる作用、効果とを
総合的、有機的に組み合わせることによって更に次のよ
うに一層の効果を奏する。すなわち、 Cu、Ni、CrおよびMoを含有するオーステナイト系材料
を選定し、これを1000℃以上の高温に加熱して、炭化物
やσ相などの析出物をオーステナイト中に固溶せしめた
後に熱間で加工を行い、熱間加工後に急冷する直接溶体
化処理を施し、更に粗大な炭化物やσ相等の析出をみる
ことのないように適正な温間加工を行えば、凍結された
熱間加工歪および温間加工歪、さらには温間加工時のCu
の析出との重畳作用で強度が大幅に向上する。
【0022】そして、このようにして得られる材料で
は、更に一層高い強度を付与するために冷間加工を施
す。しかし、上記の各加工歪みがすでに凍結された状態
で冷間加工を施すのであるから、このときの加工量は通
常の再加熱溶体化処理材をベースとしたものに比べて低
減できるので、耐SCC性の劣化を防止することができ
る。
【0023】更に上記加工に加えて時効処理すれば、
凍結された熱間加工歪み、温間加工歪み、および温間加
工時に析出したCu、更には冷間加工歪みとが、時効処理
により析出するCuと重畳して極めて大きく強度が上昇す
る。
【0024】直接溶体化処理し、続いて温間加工後に
初めて時効処理を施しその後冷間加工しても、その場合
の冷間加工量は、同様の理由で従来の再加熱溶体化処理
材をベースとしたものに比べて大幅に低減できることと
なり、耐SCC性の劣化は殆ど生じない。
【0025】上記の時効処理を前記直接溶体化処理と
温間加工の間に行っても、最終の冷間加工の際に、その
前までに凍結されていた熱間加工歪みや温間加工歪み、
更には時効処理や温間加工時におけるCuの析出による強
度上昇に、この冷間加工による強化が重畳して強度が極
めて大きく上昇する。従ってこの場合にも、最終の冷間
加工量は、従来の再加熱溶体化処理材をベースとしたも
のに比べて大幅に低減できることとなり、耐SCC性の
劣化は殆ど生じない。
【0026】従来の溶体化処理は、熱間加工後一旦常
温まで大気中で冷却したものを高温に再加熱して急冷す
るというものであるが、本発明の方法における直接溶体
化処理は、この溶体化処理への再加熱と、この温度に保
持するための熱ネルギーを節約できるという副次的効果
をも有するものである。
【0027】次に、本発明の方法において、加工のため
の温度条件を前記のように限定した理由を説明する。
【0028】オーステナイト系材料を熱間加工するため
の加熱温度を1000℃以上としたのは、次の理由による。
すなわち、この温度を下回る低温域での加熱温度では、
材料の変形抵抗が大きくなって熱間加工が困難となるほ
か、炭化物やσ相などの析出物のオーステナイト中への
固溶が不十分となって熱間加工性が劣化し、加えて所望
のミクロ組織が得られないから、耐SCC性の劣化を招
くことになる。
【0029】この加熱の上限温度は特に定める必要はな
い。材料加工時に高温での脆性を生じない温度とすれば
よく、グリーブル試験機を用いる高温引張試験での絞り
値が50%以上となるような温度 (例えば1200〜1250℃)
を選べばよい。
【0030】熱間加工後の直接溶体化処理を開始する前
の温度を800 ℃以上としたのは、この温度未満まで徐冷
されると炭化物やσ相などの析出物が生じて、耐SCC
が劣化するので、これを防止するためである。
【0031】温間加工は、 300〜700 ℃の温度域で行
う。300 ℃を下回る温度での温間加工では、冷間加工す
る場合と同様の集合組織が発達して耐SCC性が劣化す
るためである。一方、700 ℃を超えると温間加工の前段
の熱間加工歪および温間加工歪歪が解放されて、その後
の軽度の冷間加工では高強度化が期待できなくなること
に加えて、この温間加工時に析出するCuが粗大化して、
同様に高強度化に有効でなくなるからである。
【0032】時効処理は 450〜700 ℃の温度域で行う。
450 ℃を下回るとCuの析出が十分でなく、Cu析出による
強度上昇効果が小さい。一方、700 ℃を超えると、析出
したCuが粗大化することに加えて、この処理前に生じた
熱間加工歪、温間加工歪あるいは冷間加工歪が解放され
るために、高強度化に有効でなくなる。さらに700 ℃を
超えて長時間時効処理を行うと、粗大な炭化物やσ相が
析出して耐SCC性も劣化する。
【0033】温間加工後あるいは時効処理後の冷間加工
量は、従来法で処理したものに冷間加工を施して同一強
度レベルを得る場合に比べて、小さくすることができる
が、前述のように強冷間加工は耐SCC性を劣化させる
ので、断面減少率で30%以下とすることが好ましい。こ
の断面減少率は次式で定義されるものである。
【0034】 断面減少率 (%) ={(S0 −S1)/S0 }×100 ただし、 S1 :加工された線材の、主加工方向に対して直角をな
す断面の面積 S0 :素線材の主加工方向に対して直角をなす断面の面
積 次に、本発明の方法の素材となるオーステナイト系材料
の化学組成を前記のように限定した理由を説明する。
【0035】Cu:Cuは強度、耐食性を向上させる効果を
有する。その含有量が0.2 %未満ではこれらの効果が期
待できない。一方、3.0 %を超えると熱間加工性を劣化
させる。
【0036】このために Cu 含有量は 0.2〜3.0 %の範
囲とした。
【0037】Ni:Niはオーステナイト系の材料を得るの
に必須の成分であるが、10.0%未満では耐食性の劣化を
招くことがある。一方、65.0%を超えると経済的な不利
を招くことになる。よって、Ni含有量は10.0〜65.0%の
範囲とした。
【0038】Cr:Crは腐食に対する抵抗性の改善に極め
て有効で、また強化作用があるが、15.0%未満ではこれ
らの改善効果が充分ではない。一方、27.0%を超えると
冷間における延性が極端に劣化して成形性が損なわれ
る。よって、Cr含有量は15.0〜27.0%の範囲とした。
【0039】Mo:Moは強化作用とともに耐食性を高める
効果があるが、1.0 %未満ではこれらの効果が充分えら
れず、一方、11.0%を超えると経済的な不利を招くこと
になる。
【0040】よって、Mo含有量は 1.0〜11.0%の範囲と
した。
【0041】C含有量は、直接溶体化処理によって炭化
物などの固溶を十分に行わせて所望の耐SCC性を得る
ために、0.1 %未満、好ましくは、0.03%以下とするの
がよい。
【0042】Si含有量は、脱酸に十分で、かつ延性に害
を及ぼすことなく耐食性を確保できる1%以下の必要最
小限の含有量に抑えるのが望ましい。
【0043】Mn含有量は、熱間加工性を改善し、適正な
ミクロ組織を得るために、望ましくは0.01%以上の、ま
た硬脆化相を生じさせることなく耐食性を確保するため
に、2.0 %以下の、それぞれ含有量とするのがよい。
【0044】ところで、直接溶体化処理と類似した鋼の
加工熱処理手段として、直接焼入れやオースフォーミン
グなどの処理が知られている。しかし、本発明の方法で
用いる上記の直接溶体化処理の効果は、次の点でこれら
の処理とは全く異なるものである。すなわち、 (イ)直接焼入れ処理は、鋼を安定オーステナイト域で
熱間加工した後、直ちに焼入れを行ってマルテンサイト
変態を起こさせる処理であり、その後焼戻しをして使用
される場合が多いが、熱間加工後直ちに焼入れするた
め、再加熱焼入れする場合よりもオーステナイト粒が大
きく、従って焼きが入りやすくなって鋼の硬化能が著し
く上昇し、強度の向上がもたらされる。しかし、本発明
の方法による高強度化は、このマルテンサイト変態によ
る強化を利用するものではない。
【0045】(ロ)オースフォーミングは、オーステナ
イト化した鋼を等温変態線図の入江の温度まで急冷して
得たオーステナイトのままの組織のものに、その温度で
適当な塑性変形を与えてから焼入れしてマルテンサイト
変態を起こさせ、その後に焼戻しを行う処理である。一
定温度での加工および変態を生じさせる点で、本発明の
オーステナイト系材料の強化処理とは根本的に異なって
いる。
【0046】しかも、オースフォーミングによって顕著
な高強度を得るためには、ほぼ0.1%以上のC含有量が
必要であるが、本発明の方法によるオーステナイト系材
料の強化処理の場合には、0.1 %未満の低C含有量で
も、後述の実施例において示すように大きな強化効果が
得られる。
【0047】
【実施例】
(実施例1)通常の方法によって表1に示す化学組成を
有するオーステナイト系材料の鋼片を製造した。これら
の鋼片を1230℃に均熱した後、熱間線材圧延を行い、外
径 6.0mmの線材とした。その後直接溶体化処理または従
来法で再加熱溶体化処理を施した。次いで、直接溶体化
処理したものについては、温間加工と冷間加工、更に時
効処理を行い、一方、従来法によるものについては冷間
加工を行って、それぞれ引張強さを測定した。表2(1)
および表2(2) に熱間圧延後の各工程と処理の条件、お
よび引張強さの測定結果を示す。
【0048】表2から、本発明の方法によって高強度化
することができ、また小さな冷間加工量で、従来の再加
熱溶体化処理材に大きな冷間加工量を施したものに匹敵
する高強度が得られることが明らかである。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2(1)】
【0051】
【表2(2)】
【0052】(実施例2)前記表1の合金番号1の鋼片
を1170℃に均熱した後、熱間線材圧延を行い、外径5.0m
m の線材とした。その後表3に示す工程と条件で、直接
溶体化処理または従来法による溶体化処理を行った後、
時効と加工の各処理を行って引張強さを測定した。その
結果を併せて表3に示す。この表3からも、本発明の方
法によって容易に高強度化が可能なことが明らかであ
る。
【0053】
【表3】
【0054】(実施例3)前記表1の合金番号3の鋼片
を1200℃に均熱した後、熱間板材圧延を行い、5〜12mm
厚さの板材とした。その後表4に示す工程と条件で、直
接溶体化処理または従来法による溶体化処理を行った
後、時効と加工の各処理を行って引張強さを測定した。
さらに、得られた板材から圧延方向と直角に、2mm厚さ
×10mm巾×75mm長さの試験片を採取してSCC試験を実
施した。
【0055】図1はこのSCC試験の方法を説明する縦
断面の概略図である。図示するような3点支持ビーム治
具2を用いて、上記の試験片に引張強さの60%に相当す
る応力を付加し、3気圧H2S 、3気圧CO2 でH2S とCO2
を飽和させた5%NaCl溶液(温度150 ℃) 中に150 時間
浸漬し、割れ発生の有無を観察する方法によった。図1
において、1は上記の試験片、2は同じく治具であり、
応力を付加するためのネジ4、ネジ押え3および支持点
5がある。
【0056】表4に引張強さとともにSCC試験結果を
まとめて示す。表4から、本発明の方法によるもので
は、高強度が得られ、しかも800 ℃を下回る低温域から
直接溶体化処理したもの、および同一強度レベルの従来
の再加熱溶体化処理+強冷間加工処理したものに比べ
て、耐SCC性が良好なことが明らかである。
【0057】
【表4】
【0058】
【発明の効果】本発明の方法によれば、同一強度レベル
の従来の再加熱溶体化処理法を用いた材料に比べて、耐
SCC性に悪影響を及ぼさないように冷間加工量を低減
することができるので、油井検層線等に好適な高強度で
耐SCC性に優れたオーステナイト系材料の線材を製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板状試験片のSCC試験の方法を示す縦断面の
概略図である。
【符号の説明】
1:試験片、2:治具、3:ネジ押え、4:ネジ、5:
支持点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 19/05 E 38/00 302 Z 38/44 C22F 1/10 H

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cu: 0.2〜3.0 %、Ni:10.0〜
    65.0%、Cr:15.0〜27.0%およびMo:1.0〜11.0%を含有
    するオーステナイト鋼または合金を、1000℃以上の温度
    に加熱してから熱間加工を行い、この熱間加工を800 ℃
    以上の温度域で終了した後、直ちに急冷する直接溶体化
    処理を施し、次いで 300〜700 ℃で温間加工を施し、そ
    の後冷間加工を施すことを特徴とする高強度高耐食性オ
    ーステナイト系線材の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の方法に加えて更に、冷間
    加工後 450〜700 ℃で時効処理することを特徴とする高
    強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の化学組成のオーステナイ
    ト鋼または合金を、1000℃以上の温度に加熱してから熱
    間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の温度域で終
    了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を施し、次い
    で 300〜700 ℃で温間加工を施し、更に 450〜700 ℃で
    時効処理し、その後冷間加工を施すことを特徴とする高
    強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の化学組成のオーステナイ
    ト鋼または合金を、1000℃以上の温度に加熱してから熱
    間加工を行い、この熱間加工を800 ℃以上の温度域で終
    了した後、直ちに急冷する直接溶体化処理を施し、次い
    で 450〜700 ℃で時効処理し、更に 300〜700 ℃で温間
    加工を施し、その後冷間加工を施すことを特徴とする高
    強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法。
JP29127392A 1992-10-29 1992-10-29 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法 Pending JPH06136442A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29127392A JPH06136442A (ja) 1992-10-29 1992-10-29 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29127392A JPH06136442A (ja) 1992-10-29 1992-10-29 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH06136442A true JPH06136442A (ja) 1994-05-17

Family

ID=17766746

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29127392A Pending JPH06136442A (ja) 1992-10-29 1992-10-29 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH06136442A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0789089A1 (en) * 1995-09-01 1997-08-13 Mitsubishi Jukogyo Kabushiki Kaisha High-nickel austenitic stainless steel resistant to degradation caused by neutron irradiation
WO2001090432A1 (en) * 2000-05-22 2001-11-29 Sandvik Ab; (Publ) Austenitic alloy
US7081173B2 (en) 2001-11-22 2006-07-25 Sandvik Intellectual Property Ab Super-austenitic stainless steel

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0789089A1 (en) * 1995-09-01 1997-08-13 Mitsubishi Jukogyo Kabushiki Kaisha High-nickel austenitic stainless steel resistant to degradation caused by neutron irradiation
EP0789089A4 (en) * 1995-09-01 1998-08-19 Mitsubishi Heavy Ind Ltd AUSTENITIC STAINLESS STEEL WITH A HIGH NICKEL CONTENT, RESISTANT TO DEGRADATIONS CAUSED BY NEUTRONIC IRRADIATION
US5976275A (en) * 1995-09-01 1999-11-02 Mitsubishi Jukogyo Kabushiki Kaisha High-nickel austenitic stainless steel resistant to degradation by neutron irradiation
WO2001090432A1 (en) * 2000-05-22 2001-11-29 Sandvik Ab; (Publ) Austenitic alloy
US6905652B2 (en) 2000-05-22 2005-06-14 Sandvik Ab Austenitic alloy
US7081173B2 (en) 2001-11-22 2006-07-25 Sandvik Intellectual Property Ab Super-austenitic stainless steel

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6146472A (en) Method of making case-carburized steel components with improved core toughness
JP2954922B1 (ja) 析出硬化型高珪素鋼製品の熱処理方法
CN112662971B (zh) 一种具有梯度结构的高强twip钛合金及其热轧方法
JPH03229839A (ja) 2相ステンレス鋼およびその鋼材の製造方法
JP3241263B2 (ja) 高強度二相ステンレス鋼管の製造方法
JP2861024B2 (ja) 油井用マルテンサイト系ステンレス鋼材とその製造方法
JPH07207337A (ja) 高強度2相ステンレス鋼材の製造方法
JPH06136442A (ja) 高強度高耐食オーステナイト系線材の製造方法
JP2003253401A (ja) 耐粒界腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP3328967B2 (ja) 靭性および耐応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JP2000119806A (ja) 冷間加工性に優れた鋼線材およびその製造方法
JPH0559168B2 (ja)
US4353755A (en) Method of making high strength duplex stainless steels
JP2003129178A (ja) 遅れ破壊特性に優れた高強度pc鋼棒
JPH07188740A (ja) 高強度高耐食オ−ステナイト系金属材の製法
JP3201081B2 (ja) 油井用ステンレス鋼およびその製造方法
JPH0375336A (ja) 耐食性の優れたマルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法
JPH0128815B2 (ja)
JP3417016B2 (ja) 熱間加工性および耐食性に優れた高靭性マルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JPS6123713A (ja) 高強度2相ステンレス鋼の製造方法
JPH06235048A (ja) 高強度非磁性ステンレス鋼及びその製造方法
JP2814528B2 (ja) 油井用マルテンサイト系ステンレス鋼材とその製造方法
JPH07179943A (ja) 耐食性に優れた高靭性マルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JP2580407B2 (ja) 耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼継目無鋼管の製造法
JPH07110970B2 (ja) 耐応力腐食割れ性の優れた針状フェライトステンレス鋼の製造方法