JPH06124647A - 含浸形陰極及びその製造方法並びに電子管の製造方法 - Google Patents
含浸形陰極及びその製造方法並びに電子管の製造方法Info
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- JPH06124647A JPH06124647A JP26996492A JP26996492A JPH06124647A JP H06124647 A JPH06124647 A JP H06124647A JP 26996492 A JP26996492 A JP 26996492A JP 26996492 A JP26996492 A JP 26996492A JP H06124647 A JPH06124647 A JP H06124647A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 電子管製造工程の陰極封入工程において生ず
る被覆膜酸化に起因する電子放出特性の劣化を受けない
電子管の製造方法を提供する。 【構成】 Sc被覆型含浸形陰極の被覆膜の上面に銅保
護膜を形成する。封入工程での大気中400℃の加熱に
おいては被覆膜を保護させ、真空排気後の陰極活性化の
ための1150℃程度の加熱で蒸発させる。 【効果】 電子管の製造コストを安くできる。
る被覆膜酸化に起因する電子放出特性の劣化を受けない
電子管の製造方法を提供する。 【構成】 Sc被覆型含浸形陰極の被覆膜の上面に銅保
護膜を形成する。封入工程での大気中400℃の加熱に
おいては被覆膜を保護させ、真空排気後の陰極活性化の
ための1150℃程度の加熱で蒸発させる。 【効果】 電子管の製造コストを安くできる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスカンジウムを含む表面
被覆膜層を有する含浸形陰極およびそれを用いたブラウ
ン管、撮像管等の電子管に関する。
被覆膜層を有する含浸形陰極およびそれを用いたブラウ
ン管、撮像管等の電子管に関する。
【0002】
【従来の技術】含浸形陰極は高電流密度動作が可能な陰
極であり、電子管の高出力化、特にブラウン管において
は高輝度化、高精細化のために欠くことのできない陰極
である。
極であり、電子管の高出力化、特にブラウン管において
は高輝度化、高精細化のために欠くことのできない陰極
である。
【0003】含浸形陰極の基本構成は、タングステンか
らなる耐熱多孔質基体に、BaOを主体に、他にAl2O3やCa
Oを水素雰囲気中で加熱溶融し、含浸させたものであ
る。この溶融含浸した物質を、一般に含浸剤と称する。
らなる耐熱多孔質基体に、BaOを主体に、他にAl2O3やCa
Oを水素雰囲気中で加熱溶融し、含浸させたものであ
る。この溶融含浸した物質を、一般に含浸剤と称する。
【0004】含浸形陰極は動作時において、常に1000℃
程度に加熱されており、耐熱多孔質基体と含浸剤は反応
し、Baを遊離する。Baは拡散により陰極表面に供給
され、同様に陰極内部または電子管内部雰囲気中から供
給されたOと共に、陰極表面つまりタングステン基体上
に吸着する。このように、金属表面にBaとOから成る
吸着層が形成されると、金属表面の仕事関数が実質的に
引き下げられ、電子放出が容易となる。これが、含浸形
陰極の動作原理であり、これに対する詳細な考察は、例
えば、ジャーナル・オブ・フィジックス D:アプライ
ド・フィジックス,第15巻(1982年)第1519頁から第1529
頁(J. Phys. D: Appl. Phys.,15(1982)1519-1529)に
記載されている。含浸形陰極は電子放出部分が基本的に
金属であるため電気的な抵抗が小さい。そのため含浸形
陰極は、アルカリ土類金属炭酸塩を原材料とする電気的
に高抵抗な酸化物陰極のような、ジュール発熱による陰
極材料自体の分解に起因する陰極劣化は生じない。従っ
て、含浸形陰極は、酸化物陰極に比較し高電流密度動作
が可能である。
程度に加熱されており、耐熱多孔質基体と含浸剤は反応
し、Baを遊離する。Baは拡散により陰極表面に供給
され、同様に陰極内部または電子管内部雰囲気中から供
給されたOと共に、陰極表面つまりタングステン基体上
に吸着する。このように、金属表面にBaとOから成る
吸着層が形成されると、金属表面の仕事関数が実質的に
引き下げられ、電子放出が容易となる。これが、含浸形
陰極の動作原理であり、これに対する詳細な考察は、例
えば、ジャーナル・オブ・フィジックス D:アプライ
ド・フィジックス,第15巻(1982年)第1519頁から第1529
頁(J. Phys. D: Appl. Phys.,15(1982)1519-1529)に
記載されている。含浸形陰極は電子放出部分が基本的に
金属であるため電気的な抵抗が小さい。そのため含浸形
陰極は、アルカリ土類金属炭酸塩を原材料とする電気的
に高抵抗な酸化物陰極のような、ジュール発熱による陰
極材料自体の分解に起因する陰極劣化は生じない。従っ
て、含浸形陰極は、酸化物陰極に比較し高電流密度動作
が可能である。
【0005】しかし、含浸形陰極は、高電流密度動作が
可能な反面、動作温度が酸化物陰極のおよそ750℃に比
較して、より高温で動作させる必要がある。前述の基本
構成の含浸形陰極の場合、10A/cm2の電流密度を得るた
めにはおよそ1100℃に加熱する必要がある。
可能な反面、動作温度が酸化物陰極のおよそ750℃に比
較して、より高温で動作させる必要がある。前述の基本
構成の含浸形陰極の場合、10A/cm2の電流密度を得るた
めにはおよそ1100℃に加熱する必要がある。
【0006】このため、含浸形陰極の改良は、この動作
温度を低下させることを目的に行なわれている。例え
ば、前述の基本構成の含浸形陰極の表面にオスミウムを
被覆した含浸形陰極が開発され、その動作温度はおよそ
1000℃に低下した。さらに、タングステンを主体に酸化
スカンジウムやタングステン酸スカンジウムを含む薄膜
を被覆した含浸形陰極は900℃で前述の電流密度動作が
可能である。本文中においては以後、これらをOs被覆
型含浸形陰極、Sc被覆型含浸形陰極と記述するが、こ
れらに関しては、アイイーイー・プロシーディング,第
128巻,パート1,ナンバー1(1981年)第19頁から第3
2頁 (IEE Proc.,128,Pt1,No1(1981)19-32)ならび
に、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フ
ィジックス,第27巻,ナンバー8(1988年)第1411頁か
ら第1414頁(Jpn. J. Appl. Phys.28,No.8(1988)1411-1
414)に記載されている。
温度を低下させることを目的に行なわれている。例え
ば、前述の基本構成の含浸形陰極の表面にオスミウムを
被覆した含浸形陰極が開発され、その動作温度はおよそ
1000℃に低下した。さらに、タングステンを主体に酸化
スカンジウムやタングステン酸スカンジウムを含む薄膜
を被覆した含浸形陰極は900℃で前述の電流密度動作が
可能である。本文中においては以後、これらをOs被覆
型含浸形陰極、Sc被覆型含浸形陰極と記述するが、こ
れらに関しては、アイイーイー・プロシーディング,第
128巻,パート1,ナンバー1(1981年)第19頁から第3
2頁 (IEE Proc.,128,Pt1,No1(1981)19-32)ならび
に、ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フ
ィジックス,第27巻,ナンバー8(1988年)第1411頁か
ら第1414頁(Jpn. J. Appl. Phys.28,No.8(1988)1411-1
414)に記載されている。
【0007】ところで、陰極は、ガラス製チューブの電
子管内に他の電極と共に封入される製造工程において、
大気雰囲気中で約400℃で加熱される。これは、ガラス
製チューブの電子管製造においては避けられない工程で
ある。
子管内に他の電極と共に封入される製造工程において、
大気雰囲気中で約400℃で加熱される。これは、ガラス
製チューブの電子管製造においては避けられない工程で
ある。
【0008】その結果、Os被覆型含浸形陰極では、オ
スミウム被覆膜は酸化され、有害でかつ揮発性を有する
OsO4を生じ、かつ電子放出特性が劣化する。このため、
被覆膜としてオスミウム単独でなくルテミウムとの合金
膜を用いるOs/Ru被覆型含浸形陰極が一般的に用い
られている。
スミウム被覆膜は酸化され、有害でかつ揮発性を有する
OsO4を生じ、かつ電子放出特性が劣化する。このため、
被覆膜としてオスミウム単独でなくルテミウムとの合金
膜を用いるOs/Ru被覆型含浸形陰極が一般的に用い
られている。
【0009】同様に、Sc被覆型含浸形陰極において
も、封入工程を経ることにより電子放出特性の劣化がお
きる。この原因は明らかでないが、被覆膜中のタングス
テンが酸化された結果、酸化タングステンと陰極内部か
ら供給されたバリウムが反応し、BaWO4が形成され、こ
れが電子放出に寄与しないためと推定される。ところ
で、含浸形陰極はブラウン管内でのガス放出を抑制する
ため、陰極からのバリウム蒸発を抑制するため、または
ブラウン管製造工程内の陰極活性化時間を短縮するため
に、あらかじめ封入前に900℃以上で真空容器中で予備
加熱処理を行うことがある。しかしながら、予備加熱処
理を行ったSc被覆型含浸形陰極は、封入工程による被
覆膜酸化により著しく電子放出特性が劣化する。
も、封入工程を経ることにより電子放出特性の劣化がお
きる。この原因は明らかでないが、被覆膜中のタングス
テンが酸化された結果、酸化タングステンと陰極内部か
ら供給されたバリウムが反応し、BaWO4が形成され、こ
れが電子放出に寄与しないためと推定される。ところ
で、含浸形陰極はブラウン管内でのガス放出を抑制する
ため、陰極からのバリウム蒸発を抑制するため、または
ブラウン管製造工程内の陰極活性化時間を短縮するため
に、あらかじめ封入前に900℃以上で真空容器中で予備
加熱処理を行うことがある。しかしながら、予備加熱処
理を行ったSc被覆型含浸形陰極は、封入工程による被
覆膜酸化により著しく電子放出特性が劣化する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】陰極の被覆膜の酸化を
防ぐには、封入工程を窒素雰囲気中で行えばよいが、製
造コストの上昇をまねき量産には不適である。しかし、
Sc被覆型においては、封入を窒素雰囲気中で行ない酸
化を抑制する以外にはこれまで対策がなかった。
防ぐには、封入工程を窒素雰囲気中で行えばよいが、製
造コストの上昇をまねき量産には不適である。しかし、
Sc被覆型においては、封入を窒素雰囲気中で行ない酸
化を抑制する以外にはこれまで対策がなかった。
【0011】本発明の目的は、Sc被覆型含浸形陰極を
用いた電子管の製造方法において、封入工程における被
覆膜の酸化を防止することにある。また、それに用いる
優れた耐酸化特性を有するSc被覆型含浸形陰極および
その製造方法を提供することにある。
用いた電子管の製造方法において、封入工程における被
覆膜の酸化を防止することにある。また、それに用いる
優れた耐酸化特性を有するSc被覆型含浸形陰極および
その製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は、Sc被覆膜
の表面に銅保護膜を形成することにより達成できる。こ
こで、銅保護膜はスパッタ法や蒸着法などの一般的な成
膜方法により容易に形成することができる。
の表面に銅保護膜を形成することにより達成できる。こ
こで、銅保護膜はスパッタ法や蒸着法などの一般的な成
膜方法により容易に形成することができる。
【0013】
【作用】電子管製造における陰極封入工程において、大
気中で約400℃で加熱される。この時、銅保護膜の一部
又はほとんどは酸化するが、破損せず本来の被覆膜表面
の酸化を防ぐことができる。封入後、電子管は真空排気
され、陰極活性化のために1150℃程度で加熱される。こ
の工程において、銅および銅酸化物は蒸発し、本来のS
cを含む被覆膜が陰極表面に現われる。
気中で約400℃で加熱される。この時、銅保護膜の一部
又はほとんどは酸化するが、破損せず本来の被覆膜表面
の酸化を防ぐことができる。封入後、電子管は真空排気
され、陰極活性化のために1150℃程度で加熱される。こ
の工程において、銅および銅酸化物は蒸発し、本来のS
cを含む被覆膜が陰極表面に現われる。
【0014】ところで、保護膜は陰極表面全面を均一に
覆い、塗布膜下の被覆膜の酸化を十分に防ぐ必要があ
る。さらに、陰極の活性化時に容易に短期間に消失する
ことが必要である。このためには、少なくとも50nm以
上、500nm以下であることが必要である。
覆い、塗布膜下の被覆膜の酸化を十分に防ぐ必要があ
る。さらに、陰極の活性化時に容易に短期間に消失する
ことが必要である。このためには、少なくとも50nm以
上、500nm以下であることが必要である。
【0015】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を示し、
本発明を具体的に記述する。
本発明を具体的に記述する。
【0016】実施例1 図1に、含浸形陰極の作製工程をブロック図に示す。同
図において、破線で囲んた部分が従来と異なる。
図において、破線で囲んた部分が従来と異なる。
【0017】含浸形陰極の基本構成は、タングステン粉
末をプレス、焼結したのち、BaOを主体とする酸化物つ
まり含浸剤を含浸したものである。これを基本型含浸形
陰極と呼ぶ。本実施例では、含浸剤として、BaO、C
aO、Al2O3を4:1:1に混合したものを用いた。
そして、この含浸剤を、水素雰囲気中で1900℃に加熱溶
融し、タングステンの焼結体つまり多孔質体に含浸し
た。本実施例で用いた基本型含浸形陰極の大きさ及び形
状は、直径1.2mm、厚さ0.4mmの円筒状のペレットで
ある。
末をプレス、焼結したのち、BaOを主体とする酸化物つ
まり含浸剤を含浸したものである。これを基本型含浸形
陰極と呼ぶ。本実施例では、含浸剤として、BaO、C
aO、Al2O3を4:1:1に混合したものを用いた。
そして、この含浸剤を、水素雰囲気中で1900℃に加熱溶
融し、タングステンの焼結体つまり多孔質体に含浸し
た。本実施例で用いた基本型含浸形陰極の大きさ及び形
状は、直径1.2mm、厚さ0.4mmの円筒状のペレットで
ある。
【0018】Sc被覆型含浸形陰極は、基本型含浸形陰
極の上面に、WにSc2W3O12を含む膜をスパッタ成膜
法を用いて被覆して作製した。このときスパッタターゲ
ットは、タングステンとSc2W3O12の複合ターゲット
を用いた。被覆膜の組成はSc/Wの元素比で0.10から
0.15に調整し、膜厚は300nmとした。銅保護膜はスパ
ッタ成膜法により形成した。ただし、陰極の予備加熱処
理を行う場合は、この保護膜の形成は予備加熱処理の後
に行う必要がある。本実施例では、予備加熱処理とし
て、真空容器中にて1150℃で4時間の加熱を行った後、
銅保護膜を形成した。
極の上面に、WにSc2W3O12を含む膜をスパッタ成膜
法を用いて被覆して作製した。このときスパッタターゲ
ットは、タングステンとSc2W3O12の複合ターゲット
を用いた。被覆膜の組成はSc/Wの元素比で0.10から
0.15に調整し、膜厚は300nmとした。銅保護膜はスパ
ッタ成膜法により形成した。ただし、陰極の予備加熱処
理を行う場合は、この保護膜の形成は予備加熱処理の後
に行う必要がある。本実施例では、予備加熱処理とし
て、真空容器中にて1150℃で4時間の加熱を行った後、
銅保護膜を形成した。
【0019】次に、封入工程での電子放出特性劣化を防
止する効果を模擬的に確認するために、大気中で400
℃,5分の加熱を行った。そして、真空容器中で再び11
50℃加熱による活性化を行い放出電流およびその加熱変
化を測定した。
止する効果を模擬的に確認するために、大気中で400
℃,5分の加熱を行った。そして、真空容器中で再び11
50℃加熱による活性化を行い放出電流およびその加熱変
化を測定した。
【0020】図2に、本実施例の含浸形陰極の電子放出
特性を、銅保護膜の無い従来例と比較して示す。横軸は
真空容器中での1150℃での活性化(再加熱)時間であり、
縦軸は900℃での陰極放出電流量である。ただし、放出
電流量は予備加熱処理後の値を1.0として規格化して表
している。測定は、陽極を陰極から7mm離して配置
し、陽極に4kVの電圧を印加して行った。大気中での
加熱酸化の影響を明確にするため、大気中加熱前の陰極
放出電流量を図の左端に示している。保護膜厚が30nm
から900nmの結果を、保護膜無しの従来例1と比較し
て示している。
特性を、銅保護膜の無い従来例と比較して示す。横軸は
真空容器中での1150℃での活性化(再加熱)時間であり、
縦軸は900℃での陰極放出電流量である。ただし、放出
電流量は予備加熱処理後の値を1.0として規格化して表
している。測定は、陽極を陰極から7mm離して配置
し、陽極に4kVの電圧を印加して行った。大気中での
加熱酸化の影響を明確にするため、大気中加熱前の陰極
放出電流量を図の左端に示している。保護膜厚が30nm
から900nmの結果を、保護膜無しの従来例1と比較し
て示している。
【0021】図2より、50nmから500nmの銅保護膜
を有する陰極3,4,5は、大気酸化後に、真空中で再
加熱すれば放出電流量は大気酸化前の値に回復すること
が分かる。銅保護膜厚が50nmより薄い陰極2の場合、
保護膜は陰極表面を覆いきれず、スカンジウムを含む被
覆膜が酸化を受け電子放出の劣化は回復不能である。ま
た、保護膜が500nmより厚い陰極6,7では、銅保護膜
の蒸発に時間を要し放出電流が回復をするまえに陰極本
来の劣化が始まるものと考えられる。
を有する陰極3,4,5は、大気酸化後に、真空中で再
加熱すれば放出電流量は大気酸化前の値に回復すること
が分かる。銅保護膜厚が50nmより薄い陰極2の場合、
保護膜は陰極表面を覆いきれず、スカンジウムを含む被
覆膜が酸化を受け電子放出の劣化は回復不能である。ま
た、保護膜が500nmより厚い陰極6,7では、銅保護膜
の蒸発に時間を要し放出電流が回復をするまえに陰極本
来の劣化が始まるものと考えられる。
【0022】本実施例では、含浸剤として、BaO、C
aO、Al2O3を4:1:1に混合したものを用いた
が、これは5:3:2や他の組成のものにおいても同様
の効果を示すことは容易に類推される。さらに、本実施
例の銅保護膜の作製法としてはスパッタ成膜法を用いた
が、これは蒸着法など他の成膜方法でもよいことは明白
である。また、本実施例では、本発明の効果を強調する
ため、封入工程での電子放出特性の劣化が著しい予備加
熱処理を施した陰極に関して説明したが、これは予備加
熱を施さない陰極に関しても有効である。
aO、Al2O3を4:1:1に混合したものを用いた
が、これは5:3:2や他の組成のものにおいても同様
の効果を示すことは容易に類推される。さらに、本実施
例の銅保護膜の作製法としてはスパッタ成膜法を用いた
が、これは蒸着法など他の成膜方法でもよいことは明白
である。また、本実施例では、本発明の効果を強調する
ため、封入工程での電子放出特性の劣化が著しい予備加
熱処理を施した陰極に関して説明したが、これは予備加
熱を施さない陰極に関しても有効である。
【0023】実施例2 図3に本発明の含浸形陰極を実装した電子管の実施例と
して、ブラウン管の構成を示す。ブラウン管では、ヒ−
タ9で加熱される陰極10から放出した電子を、幾枚か
の電極で構成される電子銃で蛍光面15に収束させる。
電子銃は、陰極の前面に配置される第1電極11および
その次の第2電極12からなる電子引出部と、主として
電子ビ−ムを収束する主レンズ部からなる。主レンズ部
13は一般に、2枚から4枚の電極から構成される。ま
た、電ビ−ムは偏向コイル14で蛍光面前面に走査され
る。ところで、ブラウン管の製造工程においては、陰極
は電子銃に組み込まれた後、ガラスで金属端子が固定配
置された電流導入端子に取り付けられる。そして、これ
をガスバ−ナ−を用いて蛍光面を有するガラスバルブと
一体化される。これを封止と呼ぶが、このとき陰極は大
気中で数分間ではあるが約400℃の加熱を受ける。こ
のとき従来のSc被覆型含浸形陰極では被覆膜の酸化が
生じ、陰極本来の電子放出特性を発揮できない。本来の
特性を発揮させるためには、窒素雰囲気中で封止するよ
うに特別な製造プロセスを行う必要がある。しかし、実
施例1において説明した含浸形陰極を用いた本実施例の
電子管においては、この被覆膜酸化は生ぜず、従来工程
で十分な電子放出特性を発揮する。
して、ブラウン管の構成を示す。ブラウン管では、ヒ−
タ9で加熱される陰極10から放出した電子を、幾枚か
の電極で構成される電子銃で蛍光面15に収束させる。
電子銃は、陰極の前面に配置される第1電極11および
その次の第2電極12からなる電子引出部と、主として
電子ビ−ムを収束する主レンズ部からなる。主レンズ部
13は一般に、2枚から4枚の電極から構成される。ま
た、電ビ−ムは偏向コイル14で蛍光面前面に走査され
る。ところで、ブラウン管の製造工程においては、陰極
は電子銃に組み込まれた後、ガラスで金属端子が固定配
置された電流導入端子に取り付けられる。そして、これ
をガスバ−ナ−を用いて蛍光面を有するガラスバルブと
一体化される。これを封止と呼ぶが、このとき陰極は大
気中で数分間ではあるが約400℃の加熱を受ける。こ
のとき従来のSc被覆型含浸形陰極では被覆膜の酸化が
生じ、陰極本来の電子放出特性を発揮できない。本来の
特性を発揮させるためには、窒素雰囲気中で封止するよ
うに特別な製造プロセスを行う必要がある。しかし、実
施例1において説明した含浸形陰極を用いた本実施例の
電子管においては、この被覆膜酸化は生ぜず、従来工程
で十分な電子放出特性を発揮する。
【0024】
【発明の効果】本発明の含浸形陰極を用いれば、窒素雰
囲気中での封止を必要としないので、電子管の製造コス
トを安くできる。
囲気中での封止を必要としないので、電子管の製造コス
トを安くできる。
【図1】本発明の含浸形陰極の一実施例の製造工程を説
明するブロック図である。
明するブロック図である。
【図2】大気中加熱を行った陰極の、放出電流の銅保護
膜厚依存性を説明する図である。
膜厚依存性を説明する図である。
【図3】本発明の電子管の一実施例のブラウン管の断面
図である。
図である。
1…銅保護膜無しの陰極における放出電流の活性化時間
変化、2…銅保護膜30nmの陰極における放出電流の
活性化時間変化、3…銅保護膜50nmの陰極における
放出電流の活性化時間変化、4…銅保護膜300nmの
陰極における放出電流の活性化時間変化、5…銅保護膜
500nmの陰極における放出電流の活性化時間変化、
6…銅保護膜700nmの陰極における放出電流の活性
化時間変化、7…銅保護膜900nmの陰極における放
出電流の活性化時間変化、8…予備加熱処理後、大気雰
囲気中での加熱を行う前の放出電流量、9…ヒ−タ、1
0…陰極、11…第1電極、12…第2電極、13…主
レンズ部、14…偏向コイル、15…蛍光面。
変化、2…銅保護膜30nmの陰極における放出電流の
活性化時間変化、3…銅保護膜50nmの陰極における
放出電流の活性化時間変化、4…銅保護膜300nmの
陰極における放出電流の活性化時間変化、5…銅保護膜
500nmの陰極における放出電流の活性化時間変化、
6…銅保護膜700nmの陰極における放出電流の活性
化時間変化、7…銅保護膜900nmの陰極における放
出電流の活性化時間変化、8…予備加熱処理後、大気雰
囲気中での加熱を行う前の放出電流量、9…ヒ−タ、1
0…陰極、11…第1電極、12…第2電極、13…主
レンズ部、14…偏向コイル、15…蛍光面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 絵実子 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 成清 正 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 楠 敏明 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内
Claims (5)
- 【請求項1】バリウムを含む酸化物を含浸させた多孔質
タングステン基体の電子放出面に、タングステンと、ス
カンジウム、酸化スカンジウムおよびタングステン酸ス
カンジウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1つ
とを含む被覆膜が形成された含浸形陰極において、上記
被覆膜上に銅の保護膜が形成されていることを特徴とす
る含浸形陰極。 - 【請求項2】上記保護膜の厚さは、50nm以上500nm以
下である請求項1記載の含浸形陰極。 - 【請求項3】バリウムを含む酸化物を含浸させた多孔質
タングステン基体の電子放出面に、タングステンと、ス
カンジウム、酸化スカンジウムおよびタングステン酸ス
カンジウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1つ
とを含む被覆膜が形成された含浸形陰極の製造方法にお
いて、上記被覆膜形成工程後に、真空中で900℃以上で
加熱する工程、および該加熱工程後に上記被覆膜上に銅
の保護膜を形成する工程を有することを特徴とする含浸
形陰極の製造方法。 - 【請求項4】上記保護膜の厚さは、50nm以上500nm以
下である請求項3記載の含浸形陰極の製造方法。 - 【請求項5】請求項1乃至4のいずれか一項に記載の含
浸形陰極を有する電子管の製造方法において、ガラス製
チューブを加熱溶融して該ガラス製チューブに上記含浸
形陰極を大気中にて封入する工程と、該封入工程後上記
ガラス製チューブを真空排気する工程と、該真空排気工
程後上記含浸形陰極を加熱する工程を有することを特徴
とする電子管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26996492A JPH06124647A (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 含浸形陰極及びその製造方法並びに電子管の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26996492A JPH06124647A (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 含浸形陰極及びその製造方法並びに電子管の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06124647A true JPH06124647A (ja) | 1994-05-06 |
Family
ID=17479679
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26996492A Pending JPH06124647A (ja) | 1992-10-08 | 1992-10-08 | 含浸形陰極及びその製造方法並びに電子管の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06124647A (ja) |
-
1992
- 1992-10-08 JP JP26996492A patent/JPH06124647A/ja active Pending
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