JPH06107668A - テトラチアフルバレン誘導体前駆体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の製造方法およびテトラチアフルバレン誘導体の製造方法 - Google Patents

テトラチアフルバレン誘導体前駆体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の製造方法およびテトラチアフルバレン誘導体の製造方法

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JPH06107668A
JPH06107668A JP4262348A JP26234892A JPH06107668A JP H06107668 A JPH06107668 A JP H06107668A JP 4262348 A JP4262348 A JP 4262348A JP 26234892 A JP26234892 A JP 26234892A JP H06107668 A JPH06107668 A JP H06107668A
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tetrathiafulvalene
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Miyuraa Hararudo
ミュラー ハラルド
Yoshinobu Ueha
良信 上羽
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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    • C07D497/02Heterocyclic compounds containing in the condensed system at least one hetero ring having oxygen and sulfur atoms as the only ring hetero atoms in which the condensed system contains two hetero rings
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 高純度のテトラチアフルバレン誘導体を高収
率で製造する製造方法と、テトラチアフルバレン誘導体
およびその前駆体とを提供する。 【構成】 製造方法は、1,3,4,6−テトラチアペ
ンタレン−2,5−ジオンの1つの環を開環して1,3
−ジチオール−2−オン−4,5−ジチオラートジアニ
オンを作成し、これを1価または2価の有機基を含む化
合物と反応させた後、その2分子をカップリングさせ
る。下記式(1) ,(3) ,(4) ,(6) 等のテトラチアフル
バレン誘導体およびその前駆体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機電導体、有機超電
導体、有機磁性体、有機エレクトロクロミック材料、有
機エレクトロルミネセンス材料等への応用が期待されて
いる有機電荷移動錯体の合成原料である、特定構造のテ
トラチアフルバレン誘導体およびその前駆体と、上記特
定構造のテトラチアフルバレン誘導体およびその前駆体
を含む、種々のテトラチアフルバレン誘導体およびその
前駆体の製造に適した製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来、有
機電導体、有機超電導体、有機磁性体、有機エレクトロ
クロミック材料、有機エレクトロルミネセンス材料等へ
の応用が期待されている有機電荷移動錯体の合成原料と
して、テトラチアフルバレン誘導体の使用が検討されて
いるが、現在実用化されているテトラチアフルバレン誘
導体には限りがあり、有機電荷移動錯体のさらなる展開
のために、新たなテトラチアフルバレン誘導体の開発が
望まれている。
【0003】また、従来のテトラチアフルバレン誘導体
の合成方法としては、下記に示すように種々の方法があ
る。 Steimecke et al.あるいはHartke et al. が提唱し
た合成方法に則って、二硫化炭素をアルカリ金属で還元
することから出発して1,3−ジチオール−2−チオン
誘導体を作製する。そして、これを1,3−ジチオール
−2−オン誘導体(ジチオロン)に変換した後、その2
分子をカップリングさせてテトラチアフルバレン誘導体
を製造する(G.Steimecke et al., Phosphorus and Sul
fur, 1979,Vol.7, pp.49-55、K.Hartke et al., Chem.B
er.113, 1898-1906(1980)参照。)。 1,3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−
ジオンを出発原料として、相間移動触媒を用いて合成す
る(R.R.Schumaker et al., J.Org.Chem., 1984,Vol.4
9, 564-566参照。) 。 1,2−エタンジチオールとクロロアセチルクロラ
イドとを出発原料として合成する(J.Larsen et al. Sy
nthesis, 134, 1989参照。)。
【0004】ところが上記の合成方法では、二硫化炭
素をアルカリ金属で還元する反応を行う際に爆発の危険
性があること、除去が困難な反応副生成物を生じるこ
と、1,3−ジチオール−2−チオン誘導体を1,3−
ジチオール−2−オン誘導体に変換する工程を必要とす
るなど多くの工程を要し、目的生成物としてのテトラチ
アフルバレン誘導体の収率が悪いこと、等の問題があ
る。
【0005】またの合成方法では、合成に到るまでに
4つのステップを必要とする上、合成後に相間移動触媒
を除去する工程も必要であるため、やはり収率が悪いと
いう問題がある。とくに、相間移動触媒を除去するには
カラムクロマトグラフィーが使用されるため、長時間の
労力を要し、生産性が悪い。さらにの方法では、合成
に到るまでに5つのステップを必要とし、収率が悪いこ
と、テトラチアフルバレン誘導体の1種であるビスエチ
レンジチアテトラチアフルバレン(BEDT−TTF)
の合成には適するが、その他のテトラチアフルバレン誘
導体の合成には適用しにくく適用範囲が狭いこと、等の
問題がある。
【0006】本発明は以上の事情に鑑みてなされたもの
であって、有機電荷移動錯体のさらなる展開のために有
用な、新規なテトラチアフルバレン誘導体およびその前
駆体を提供することと、上記新規なテトラチアフルバレ
ン誘導体およびその前駆体を含む各種のテトラチアフル
バレン誘導体の合成に適用可能で適用範囲が広く、爆発
等の危険性がないため安全で、除去が困難な反応副生成
物を生じるおそれがなく、しかも反応ステップ数が少な
くて生産性にすぐれ、高純度のテトラチアフルバレン誘
導体およびその前駆体を高収率で製造するための製造方
法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用】上記課題を解
決するための、本発明のテトラチアフルバレン誘導体前
駆体は、下記式(1) 〜(3) :
【0008】
【化9】
【0009】のいずれかで表されることを特徴とし、本
発明のテトラチアフルバレン誘導体は、下記式(4) 〜
(6) :
【0010】
【化10】
【0011】のいずれかで表されることを特徴とする。
上記本発明のテトラチアフルバレン誘導体前駆体および
テトラチアフルバレン誘導体は、従来にない新規な構造
を有しており、有機電荷移動錯体のさらなる展開のため
に有用である。また、本発明のテトラチアフルバレン誘
導体前駆体の製造方法は、一般式(7):
【0012】
【化11】
【0013】(式中R1 ,R2 は同一または異なって任
意の有機基を示す。また上記R1 ,R 2 は互いに結合さ
れて環を形成してもよい。)で表されるテトラチアフル
バレン誘導体前駆体を製造する方法において、1,3,
4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジオンを、不
活性雰囲気下、アルカリ金属のメトキシドを含むアルコ
ール溶液中で、30℃以下の温度で反応させて、その1
つの環を選択的に開環して1,3−ジチオール−2−オ
ン−4,5−ジチオラートジアニオンを作成した後、こ
の1,3−ジチオール−2−オン−4,5−ジチオラー
トジアニオンを、上記式(7) 中のR1 ,R2 に相当する
1価または2価の有機基を含む化合物と反応させること
を特徴とする。
【0014】さらに本発明のテトラチアフルバレン誘導
体の製造方法は、上記で製造したテトラチアフルバレン
誘導体前駆体を亜リン酸トリアルキルの存在下で加熱、
攪拌することにより、その2分子をカップリングさせ
て、一般式(8) :
【0015】
【化12】
【0016】(式中R1 ,R2 は上記と同じ基を示
す。)で表されるテトラチアフルバレン誘導体を製造す
ることを特徴とする。本発明者らは、前記の目的を達成
すべく、テトラチアフルバレン誘導体製造の出発原料と
反応工程について種々検討した。そして、下記式(9) :
【0017】
【化13】
【0018】で表される1,3,4,6−テトラチアペ
ンタレン−2,5−ジオンの2つの環のうち1つの環を
選択的に開環できれば、従来より少ない工程で、テトラ
チアフルバレン誘導体前駆体としてのジチオロンを合成
できるとの知見を得た。ところが、1,3,4,6−テ
トラチアペンタレン−2,5−ジオンを、ナトリウムア
ルコキシドのような強アルカリの存在下で反応させる
と、2つの環が両方とも開環することは一般に知られて
いるが、1つの環を選択的に開環させる方法については
知られていなかった。
【0019】そこで本発明者らは、上記1,3,4,6
−テトラチアペンタレン−2,5−ジオンの1つの環を
選択的に開環させる方法について、さらに検討を行っ
た。そして、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属の
アルコキシドを、メタノール等のアルコールに溶解して
濃度1M程度の溶液を作製し、酸素や水分等を除去した
不活性雰囲気下、この溶液に、上記1,3,4,6−テ
トラチアペンタレン−2,5−ジオンを加えて30℃以
下の比較的低温の条件下、とくに室温条件下で10分間
程度反応させると、除去が困難な副生成物を生じるおそ
れがなく、しかも爆発等の危険性のない比較的安全な反
応により、2つの環のうちの1つを選択的に開環できる
ことを見出し、前記本発明のテトラチアフルバレン誘導
体およびその前駆体の製造方法を完成するに至ったので
ある。
【0020】そして本発明の製造方法においては、下記
反応工程式に示すように、1,3,4,6−テトラチア
ペンタレン−2,5−ジオン(9) の1つの環を選択的に
開環して1,3−ジチオール−2−オン−4,5−ジチ
オラートジアニオン(10)を得、この1,3−ジチオール
−2−オン−4,5−ジチオラートジアニオン(10)を、
前記式(7) 中のR1 ,R2 に相当する1価または2価の
有機基を含む化合物と反応させて、一般式(7) で表され
るテトラチアフルバレン誘導体前駆体を製造するまでの
工程を1ポット、1ステップで行うことができる。また
上記反応は、除去が困難な副生成物を生じるおそれがな
い。したがって、高純度のテトラチアフルバレン誘導体
前駆体を高収率で製造することが可能となる。
【0021】
【化14】
【0022】(式中R1 ,R2 は前記と同じ基を示
す。) また、上記前駆体2分子をカップリングさせる反応を合
わせても、僅か2ステップでテトラチアフルバレン誘導
体を製造することができるので、高純度のテトラチアフ
ルバレン誘導体を高収率で製造することも可能となる。
さらに上記製造方法には、爆発を伴うような危険な反応
がないので安全性が高い。
【0023】しかも上記製造方法においては、1,3−
ジチオール−2−オン−4,5−ジチオラートジアニオ
ン(10)と反応させる1価または2価の有機基の選択によ
り、従来公知の各種のテトラチアフルバレン誘導体およ
びその前駆体を製造することができるだけでなく、従来
法では製造することができなかった、前記式(1) 〜(3)
のいずれかで表される本発明のテトラチアフルバレン誘
導体前駆体、および前記式(4) 〜(6) のいずれかで表さ
れる本発明のテトラチアフルバレン誘導体等、新規なテ
トラチアフルバレン誘導体をも容易に製造できるので、
適用範囲が広い。
【0024】以下に本発明を、製造方法の工程にしたが
って説明する。まず本発明のテトラチアフルバレン誘導
体前駆体の製造方法においては、出発原料としての前記
式(9) で表される1,3,4,6−テトラチアペンタレ
ン−2,5−ジオンの2つの環のうちの1つを選択的に
開環させて、式(10)で表される1,3−ジチオール−2
−オン−4,5−ジチオラートジアニオンを得る。
【0025】開環の方法としては、前述したようにアル
カリ金属のアルコキシドのアルコール溶液(濃度1M程
度)中に、酸素や水分等を除去した不活性雰囲気下で、
上記1,3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−
ジオン(9) を加え、30℃以下の比較的低温の条件下、
とくに室温条件下で10分間程度反応させる方法が採用
される。
【0026】アルコキシドとしては、ナトリウムメトキ
シド、ナトリウムエトキシド等の、ナトリウムと低級ア
ルコールとのアルコキシドが主として使用される他、種
々のアルカリ金属とアルコールとのアルコキシドを使用
することができる。アルコキシドの配合比率は、1,
3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジオン1
モルにつき2モル程度が好ましい。
【0027】つぎに、上記開環反応が終了した反応容器
中に、引続き、前記式(7) 中のR1,R2 に相当する1
価または2価の有機基を含む化合物を添加して、やはり
室温で1〜30時間程度反応させる。そして、反応終了
後の反応生成物を水中に加え、塩化メチレン等の有機溶
媒で抽出して乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して粗生成
物を得た後、これを再結晶法、再沈澱法、カラムクロマ
トグラフ法等の従来公知の精製方法によって精製する
と、前記一般式(7) で表されるテトラチアフルバレン誘
導体前駆体が得られる。
【0028】R1 ,R2 に相当する有機基を含む化合物
としては、1,3−ジチオール−2−オン−4,5−ジ
チオラートジアニオン(10)との反応性等を考慮すると、
塩素化物、臭素化物、沃素化物等のハロゲン化物が好適
に使用される。有機基が1価である場合、ハロゲン化物
としてはモノハライドが使用され、有機基が2価である
場合にはジハライドが使用される。
【0029】より具体的には、R1 ,R2 として導入す
る有機基がメチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジ
ル基等のアラルキル基、ヒドロキシアルキル基あるいは
トリメチルシリルエトキシメチル基等の1価の基である
場合には、それぞれアルキルクロライド、アルキルブロ
マイド、アルキルアイオダイド等のアルキルハライド;
アラルキルクロライド、アラルキルブロマイド、アラル
キルアイオダイド等のアラルキルハライド;トリメチル
シリルエトキシメチルクロライド、トリメチルシリルエ
トキシメチルブロマイド、トリメチルシリルエトキシメ
チルアイオダイド等のトリメチルシリルエトキシメチル
ハライドなどのモノハライドが使用される。モノハライ
ドは、1,3−ジチオール−2−オン−4,5−ジチオ
ラートジアニオン1モルに対して約2モル添加される。
【0030】またR1 ,R2 として導入する有機基が、
互いに結合されて環を形成する2価の基、たとえば、エ
チレン基、プロピレン基等のアルキレン基やジメチレン
チオ基、ジメチレンエーテル基等である場合には、それ
ぞれアルキレンジクロライド、アルキレンジブロマイ
ド、アルキレンジアイオダイド等のアルキレンジハライ
ド;ジメチレンチオジクロライド、ジメチレンチオジブ
ロマイド、ジメチレンチオジアイオダイド等のジメチレ
ンチオジハライドなどのジハライドが使用される。ジハ
ライドは、1,3−ジチオール−2−オン−4,5−ジ
チオラートジアニオン1モルに対して約1モル添加され
る。
【0031】なお、ハロゲン化物の反応性が高く、反応
が急激に進行するおそれがある場合や、多量に反応させ
る場合には、開環反応が終了した反応液をアルコール等
で希釈するとともに、ハロゲン化物を同じアルコールに
溶解した溶液として、上記反応液に添加するのが、安全
上望ましい。上記本発明のテトラチアフルバレン誘導体
前駆体の製造方法によって製造される、前記一般式(7)
で表されるテトラチアフルバレン誘導体前駆体のうち、
下記式(1) 〜(3) :
【0032】
【化15】
【0033】のいずれかで表される本発明のテトラチア
フルバレン誘導体前駆体は、後述する本発明のテトラチ
アフルバレン誘導体の製造原料として、有機電荷移動錯
体のさらなる展開のために有用である。つぎに、本発明
のテトラチアフルバレン誘導体の製造方法においては、
まず上記前駆体の製造方法で製造されたテトラチアフル
バレン誘導体前駆体の所定量を、精製した亜リン酸トリ
アルキルに溶解または分散する。亜リン酸トリアルキル
としては、亜リン酸トリエチル等の種々の化合物が使用
できる。亜リン酸トリアルキルの使用量はとくに限定さ
れないが、たとえば亜リン酸トリエチルの場合、テトラ
チアフルバレン誘導体前駆体1ミリモルに対し、5ml程
度が好ましい。
【0034】そしてこの溶液を攪拌しつつ、100〜1
20℃程度に加熱すると、テトラチアフルバレン誘導体
前駆体2分子のカップリング反応が進行して、目的生成
物である、前記一般式(8) で表されるテトラチアフルバ
レン誘導体を含む反応生成物が、強い黄色ないし赤茶色
の析出物として、反応液中に析出する。この後、上記析
出物をろ別し、メタノール等の溶媒で洗浄した後、これ
を再結晶法、再沈澱法、カラムクロマトグラフ法、昇華
法等の従来公知の精製方法によって精製すると、前記一
般式(8) で表されるテトラチアフルバレン誘導体が得ら
れる。
【0035】なお、上記本発明のテトラチアフルバレン
誘導体の製造方法で製造される、一般式(8) で表される
テトラチアフルバレン誘導体のうち、下記式(4) 〜(6)
【0036】
【化16】
【0037】のいずれかで表される本発明のテトラチア
フルバレン誘導体は、従来にない新規な化合物であり、
有機電荷移動錯体のさらなる展開を可能とするものであ
る。以上のように本発明によれば、除去が困難な副生成
物を生じるおそれがない上、爆発等の危険性もない僅か
1ポット、1ステップの反応工程で、テトラチアフルバ
レン誘導体前駆体を製造できる上、このテトラチアフル
バレン誘導体前駆体から、やはり爆発等の危険性のない
僅か1ステップの反応工程で、テトラチアフルバレン誘
導体を製造できる。
【0038】したがって本発明によれば、従来法で製造
されたものより高純度のテトラチアフルバレン誘導体前
駆体およびテトラチアフルバレン誘導体を、従来より安
全かつ高収率で製造できるので、従来は不可能であった
テトラチアフルバレン誘導体の低コスト化、量産化が可
能となる。しかも本発明によれば、従来公知の種々のテ
トラチアフルバレン誘導体とその前駆体を製造できるだ
けでなく、従来は製造することができなかった新規なテ
トラチアフルバレン誘導体とその前駆体をも容易に製造
できるので、テトラチアフルバレン誘導体を原料とする
有機電荷移動錯体のさらなる展開が可能となる。
【0039】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。実施例1 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I ナトリウムメトキシド(CH3 ONa)をメタノールに溶
解した、濃度1Mの溶液9.4ml(ナトリウムメトキシ
ドの量が9.6ミリモル)に、1g(4.8ミリモル)
の1,3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジ
オンを一度に加えて、得られた暗緑色溶液を室温で10
分間攪拌した。
【0040】つぎにこの反応液に、1.36g(9.6
ミリモル)のメチルアイオダイドを一度に加え、室温で
さらに2時間攪拌した。つぎにこの反応液を150mlの
水中に加え、50mlの塩化メチレン(CH2 Cl)で3回
抽出した後、硫酸マグネシウム(MgSO4 )で乾燥し、
溶媒を減圧除去して、固形の粗生成物を得た。
【0041】そして、この粗生成物をエタノールを用い
て再結晶させて精製したところ、0.7g(収率70
%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測定した
ところ53〜56℃であって、下記式(11):
【0042】
【化17】
【0043】で表される4,5−ジメチルチオ−1,3
−ジチオール−2−オン(分子量210.3)であるこ
とが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) ナトリウムメトキシド(CH3 ONa)をメタノールに溶
解した、濃度1Mの溶液47ml(ナトリウムメトキシド
の量が48ミリモル)に、5g(24ミリモル)の1,
3,4,6−テトラチアペンタレン−2,5−ジオンを
一度に加えて、得られた暗緑色溶液を室温で10分間攪
拌した。
【0044】つぎにこの反応液を125mlの無水メタノ
ールで希釈した後、6.8g(48ミリモル)のメチル
アイオダイドを48mlの無水メタノールで溶解した溶液
を30分間かけて滴下し、その後さらに、室温で22時
間攪拌した。つぎにこの反応液を750mlの水中に加
え、250mlの塩化メチレン(CH2Cl)で3回抽出し
た後、硫酸マグネシウム(MgSO4 )で乾燥し、溶媒を
減圧除去して、固形の粗生成物を得た。
【0045】そして、この粗生成物をエタノールを用い
て再結晶させて精製したところ、3.6g(収率70
%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測定した
ところ53〜56℃であって、上記式(11)で表される
4,5−ジメチルチオ−1,3−ジチオール−2−オン
であることが確認された。
【0046】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.1g(10ミリモル)の4,5−ジメチル
チオ−1,3−ジチオール−2−オンを、新たに蒸留、
精製した亜リン酸トリエチル〔P(OC2 5 3 〕5
0mlに溶解して溶液を作製し、この溶液を攪拌しながら
100〜120℃に加熱して3時間反応させ、液中に析
出した析出物をろ別し、10mlのメタノールで3回洗浄
した後乾燥し、さらにクロロホルムを用いて再結晶させ
て精製したところ、0.37g(収率50%)の精製物
を得た。
【0047】得られた精製物を元素分析法(EA)によ
り分析したところ、下記式(12):
【0048】
【化18】
【0049】で表されるテトラチアフルバレン誘導体で
あることが確認された。実施例2 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、1.22g(9.6ミリ
モル)のベンジルクロライドを使用したこと以外は、前
記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合
成Iと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0050】そして、この粗生成物を塩化メチレンに溶
解し、ペンタンで再沈澱させて精製したところ、1.4
4g(収率85〜90%)の精製物を得た。得られた精
製物を融点測定、EA、KBrタブレットを用いた赤外分
光分析法(IR)、質量分析法(MS)および核磁気共
鳴分析法( 1H−NMR)の各分析法により分析したと
ころ、下記の結果が得られた。 ・融点:59〜59.5℃ ・EA calcd (%):C:56.32 H:3.88 found (%):C:56.04 H:3.78 ・IR(KBr)ν[cm-1]: 1679(vs,C=O),1454,1240,89
8,762,692 ・MS(EI)m/z:362[M+ ],243,211,
121,91 ・ 1H−NMRδ[ppm vs TMS]:3.87(s,4
H,C 2 ),7.27(mC ,10Harom) このことから、上記精製物は下記式(13):
【0051】
【化19】
【0052】で表される4,5−ジベンジルチオ−1,
3−ジチオール−2−オン(分子量362.5)である
ことが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、6.08g(48ミリモ
ル)のベンジルクロライドを使用したこと以外は、前記
実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成
IIと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0053】そして、この粗生成物を塩化メチレンに溶
解し、ペンタンで再沈澱させて精製したところ、7.3
g(収率90%)の精製物を得た。得られた精製物の融
点を測定したところ59〜59.5℃であって、上記式
(13)で表される4,5−ジベンジルチオ−1,3−ジチ
オール−2−オンであることが確認された。
【0054】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した3.6g(10ミリモル)の4,5−ジベンジ
ルチオ−1,3−ジチオール−2−オンを使用したこと
以外は、前記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体
の合成と同様にして、0.38g(収率80%)の精製
物を得た。
【0055】得られた精製物をEA、IR、MSおよび
1H−NMRの各分析法により分析したところ、下記の
結果が得られた。 ・EA calcd (%):C:58.92 H:4.07 found (%):C:58.26 H:3.83 ・IR(KBr)ν[cm-1]:1493,1451,89
3,768(vs),701(vs),660 ・MS(EI)m/z:692[M+ ],567,536,
490,444,380,357,324,212 ・ 1H−NMRδ[ppm vs TMS]:3.85(s,8
H,C 2 ),7.28(mC ,20Harom) このことから、上記精製物は下記式(14):
【0056】
【化20】
【0057】で表されるテトラチアフルバレン誘導体で
あることが確認された。実施例3 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、1.6g(9.6ミリモ
ル)のトリメチルシリルエトキシメチルクロライドを使
用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチアフルバ
レン誘導体前駆体の合成Iと同様にして固形の粗生成物
を得た。
【0058】そしてこの粗生成物を、シリカゲル担体と
ヘキサン/エチルアセラート混合溶媒(80/20)と
を用いて、カラムクロマトグラフ法により精製して、
1.36g(収率60%)の、下記式(15):
【0059】
【化21】
【0060】で表される4,5−ビス(トリメチルシリ
ルエトキシメチル)チオ−1,3−ジチオール−2−オ
ン(分子量442.81)を得た。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、8.0g(48ミリモ
ル)のトリメチルシリルエトキシメチルクロライドを使
用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチアフルバ
レン誘導体前駆体の合成IIと同様にして固形の粗生成物
を得た。
【0061】そしてこの粗生成物を、シリカゲル担体と
ヘキサン/エチルアセラート混合溶媒(80/20)と
を用いて、カラムクロマトグラフ法により精製して、
6.8g(収率60%)の、上記式(15)で表される4,
5−ビス(トリメチルシリルエトキシメチル)チオ−
1,3−ジチオール−2−オンを得た。 *テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した4.4g(10ミリモル)の4,5−ビス(ト
リメチルシリルエトキシメチル)チオ−1,3−ジチオ
ール−2−オンを使用したこと以外は、前記実施例1
の、テトラチアフルバレン誘導体の合成と同様にして、
0.32g(収率30%)の、下記式(16):
【0062】
【化22】
【0063】で表されるテトラチアフルバレン誘導体の
粗生成物を得た。実施例4 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、0.9g(4.8ミリモ
ル)のエチレンジブロマイド(1,2−ジブロモエタ
ン)を使用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチ
アフルバレン誘導体前駆体の合成Iと同様にして固形の
粗生成物を得た。
【0064】そして、この粗生成物を、エタノールを用
いて再結晶させて精製したところ、0.5g(収率45
〜50%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測
定したところ125〜126℃であって、下記式(17):
【0065】
【化23】
【0066】で表される4,5−エチレンジチオ−1,
3−ジチオール−2−チオン(分子量208.3)であ
ることが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、4.5g(24ミリモ
ル)のエチレンジクロライドを使用したこと以外は、前
記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合
成IIと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0067】そして、この粗生成物を、エタノールを用
いて再結晶させて精製したところ、3.26g(収率6
5%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測定し
たところ125〜126℃であって、上記式(17)で表さ
れる4,5−エチレンジチオ−1,3−ジチオール−2
−チオンであることが確認された。
【0068】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.1g(10ミリモル)の4,5−エチレン
ジチオ−1,3−ジチオール−2−チオンを使用したこ
と以外は、前記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導
体の合成と同様にして、0.5g(収率68%)の精製
物を得た。
【0069】得られた精製物をEAにより分析したとこ
ろ、下記式(18):
【0070】
【化24】
【0071】で表されるテトラチアフルバレン誘導体
(ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン,BEDT
−TTF)であることが確認された。実施例5 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、0.49g(4.8ミリ
モル)のプロピレンジブロマイド(1,3−ジブロモプ
ロパン)を使用したこと以外は、前記実施例1の、テト
ラチアフルバレン誘導体前駆体の合成Iと同様にして固
形の粗生成物を得た。
【0072】そして、この粗生成物を、エタノールを用
いて再結晶させて精製したところ、0.58g(収率5
5%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測定し
たところ103〜104℃であって、下記式(19):
【0073】
【化25】
【0074】で表される4,5−プロピレンジチオ−
1,3−ジチオール−2−チオン(分子量222.3)
であることが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、2.4g(24ミリモ
ル)のプロピレンジブロマイド(1,3−ジブロモプロ
パン)を使用したこと以外は、前記実施例1の、テトラ
チアフルバレン誘導体前駆体の合成IIと同様にして固形
の粗生成物を得た。
【0075】そして、この粗生成物を、エタノールを用
いて再結晶させて精製したところ、2.9g(収率55
%)の精製物を得た。得られた精製物の融点を測定した
ところ103〜104℃であって、上記式(19)で表され
る4,5−プロピレンジチオ−1,3−ジチオール−2
−チオンであることが確認された。
【0076】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.2g(10ミリモル)の4,5−プロピレ
ンジチオ−1,3−ジチオール−2−チオンを使用した
こと以外は、前記実施例1の、テトラチアフルバレン誘
導体の合成と同様にして、0.47g(収率65%)の
精製物を得た。
【0077】得られた精製物をEAにより分析したとこ
ろ、下記式(20):
【0078】
【化26】
【0079】で表されるテトラチアフルバレン誘導体
(ビスプロピレンジチオテトラチアフルバレン,BPD
T−TTF)であることが確認された。実施例6 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、0.315g(4.8ミ
リモル)のジメチレンチオジクロライド(ビスクロロメ
チルスルフィド)を使用したこと以外は、前記実施例1
の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成Iと同様
にして固形の粗生成物を得た。
【0080】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、0.2
9g(収率20〜25%)の精製物を得た。得られた精
製物を融点測定、EA、IR、MSおよび 1H−NMR
の各分析法により分析したところ、下記の結果が得られ
た。 ・融点:195〜197℃ ・EA calcd (%):C:24.98 H:1.68 found (%):C:25.13 H:1.66 ・IR(KBr)ν[cm-1]: 1682(s),1651(vs),1612(s),1
357,1223,1162,1128,885,85
6,720 ・MS(EI)m/z:240[M+ ],180,166,
90 ・ 1H−NMRδ[ppm vs TMS]:4.00(s,4
H) このことから、上記精製物は下記式(1) :
【0081】
【化27】
【0082】で表される4,5−(2−チアプロピレ
ン)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−オン(分子量
240.3)であることが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、1.58g(24ミリモ
ル)のジメチレンチオジクロライド(ビスクロロメチル
スルフィド)を使用したこと以外は、前記実施例1の、
テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成IIと同様にし
て固形の粗生成物を得た。
【0083】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、1.4
4g(収率25%)の精製物を得た。得られた精製物の
融点を測定したところ195〜197℃であって、上記
式(1) で表される4,5−(2−チアプロピレン)−ジ
チオ−1,3−ジチオール−2−オンであることが確認
された。
【0084】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.4g(10ミリモル)の4,5−(2−チ
アプロピレン)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−オ
ンを使用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチア
フルバレン誘導体の合成と同様にして、0.08g(収
率65%)の精製物を得た。
【0085】得られた精製物をEA、IRおよびMSの
各分析法により分析したところ、下記の結果が得られ
た。 ・EA calcd (%):C:26.76 H:1.79 found (%):C:26.94 H:1.69 ・IR(KBr)ν[cm-1]: 2980,1364,1272,1164,1126,
878,852,770,722 ・MS(EI)m/z:448[M+ ],268,222,
178,148,88 このことから、上記精製物は下記式(4) :
【0086】
【化28】
【0087】で表されるテトラチアフルバレン誘導体で
あることが確認された。実施例7 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、0.55g(4.8ミリ
モル)のジメチレンオキシジクロライド(ビスクロロメ
チルエーテル)を使用したこと以外は、前記実施例1
の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成Iと同様
にして固形の粗生成物を得た。
【0088】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、0.5
g(収率50%)の精製物を得た。得られた精製物を融
点測定、EA、IRおよび 1H−NMRの各分析法によ
り分析したところ、下記の結果が得られた。 ・融点:159〜161℃ ・EA calcd (%):C:26.77 H:1.79 found (%):C:26.95 H:1.69 ・IR(KBr)ν[cm-1]:1682(s),1670
(vs,C=O),1241,1292,1226,10
51(s,C−O),911(s) ・ 1H−NMRδ[ppm vs TMS]:3.32(s,4
H) このことから、上記精製物は下記式(2) :
【0089】
【化29】
【0090】で表される4,5−(2−オキサプロピレ
ン)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−オン(分子量
224.32)であることが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、2.76g(24ミリモ
ル)のジメチレンオキシジクロライドを使用したこと以
外は、前記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前
駆体の合成IIと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0091】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、2.5
g(収率50%)の精製物を得た。得られた精製物の融
点を測定したところ159〜161℃であって、上記式
(2) で表される4,5−(2−オキサプロピレン)−ジ
チオ−1,3−ジチオール−2−オンであることが確認
された。
【0092】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.2g(10ミリモル)の4,5−(2−オ
キサプロピレン)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−
オンを使用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチ
アフルバレン誘導体の合成と同様にして、0.11g
(収率70%)の精製物を得た。
【0093】得られた精製物をEA、IRおよびMSの
各分析法により分析したところ、下記の結果が得られ
た。 ・EA calcd (%):C:28.82 H:1.93 found (%):C:28.86 H:1.82 ・IR(KBr)ν[cm-1]:2980,1423,12
88,1225,1040,974,908,773,
696,664 ・MS(EI)m/z:416[M+ ],355,291,
222,178,88 このことから、上記精製物は下記式(5) :
【0094】
【化30】
【0095】で表されるテトラチアフルバレン誘導体で
あることが確認された。実施例8 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I メチルアイオダイドに代えて、0.56g(4.8ミリ
モル)のブロモエタノールを使用したこと以外は、前記
実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成
Iと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0096】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、0.7
1g(収率55%)の精製物を得た。得られた精製物を
融点測定、EA、IR、MSおよび 1H−NMRの各分
析法により分析したところ、下記の結果が得られた。 ・融点:90〜92℃ ・EA calcd (%):C:31.09 H:3.73 found (%):C:31.09 H:3.43 ・IR(KBr)ν[cm-1]:1682(s),3278
(s,br,OH),1675.5(vs,C=O),14
07,1076,1055,883,793 ・MS(EI)m/z:270[M+ ],242,199,
149,121,45 ・ 1H−NMRδ[ppm vs TMS]:3.05(mC ,4
H,−SC 2 ),3.8(mC ,4H,HOC 2 ) このことから、上記精製物は下記式(3) :
【0097】
【化31】
【0098】で表される4,5−ビス(ヒドロキシエチ
ル)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−オン(分子量
270.39)であることが確認された。 *テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成II(スケー
ルアップ) メチルアイオダイドに代えて、2.80g(24ミリモ
ル)のヒドロキシエチルクロライドを使用したこと以外
は、前記実施例1の、テトラチアフルバレン誘導体前駆
体の合成IIと同様にして固形の粗生成物を得た。
【0099】そして、この粗生成物を、イソプロピルア
ルコールを用いて再結晶させて精製したところ、3.6
g(収率55%)の精製物を得た。得られた精製物の融
点を測定したところ90〜92℃であって、上記式(3)
で表される4,5−ビス(ヒドロキシエチル)−ジチオ
−1,3−ジチオール−2−オンであることが確認され
た。
【0100】*テトラチアフルバレン誘導体の合成 上記テトラチアフルバレン誘導体前駆体の合成I,IIで
合成した2.7g(10ミリモル)の4,5−ビス(ヒ
ドロキシエチル)−ジチオ−1,3−ジチオール−2−
オンを使用したこと以外は、前記実施例1の、テトラチ
アフルバレン誘導体の合成と同様にして、下記式(6) :
【0101】
【化32】
【0102】で表されるテトラチアフルバレン誘導体を
得た。
【0103】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のテトラチ
アフルバレン誘導体とその前駆体は、従来にない新規な
構造を有しており、有機電荷移動錯体のさらなる展開の
ために有用である。また、本発明のテトラチアフルバレ
ン誘導体前駆体の製造方法によれば、除去が困難な副生
成物を生じるおそれがない上、爆発等の危険性もない僅
か1ポット、1ステップの反応工程で、テトラチアフル
バレン誘導体前駆体を製造できる。また本発明のテトラ
チアフルバレン誘導体の製造方法によれば、上記テトラ
チアフルバレン誘導体前駆体から、やはり爆発等の危険
性のない僅か1ステップの反応工程で、テトラチアフル
バレン誘導体を製造できる。
【0104】よって本発明によれば、従来法で製造され
たものより高純度のテトラチアフルバレン誘導体前駆体
およびテトラチアフルバレン誘導体を、従来より安全か
つ高収率で製造できるので、従来は不可能であったテト
ラチアフルバレン誘導体の低コスト化、量産化が可能と
なる。したがって本発明の製造方法は、有機電導体、有
機超電導体、有機磁性体、有機エレクトロクロミック材
料、有機エレクトロルミネセンス材料等の種々の分野へ
の応用が期待されているテトラチアフルバレン誘導体
を、安価かつ多量に供給する方法として、工業的利用価
値が高い。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1) : 【化1】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体前駆体。
  2. 【請求項2】式(2) : 【化2】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体前駆体。
  3. 【請求項3】式(3) : 【化3】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体前駆体。
  4. 【請求項4】式(4) : 【化4】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体。
  5. 【請求項5】式(5) : 【化5】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体。
  6. 【請求項6】式(6) : 【化6】 で表されることを特徴とするテトラチアフルバレン誘導
    体。
  7. 【請求項7】一般式(7) : 【化7】 (式中R1 ,R2 は同一または異なって任意の有機基を
    示す。また上記R1 ,R 2 は互いに結合されて環を形成
    してもよい。)で表されるテトラチアフルバレン誘導体
    前駆体を製造する方法において、1,3,4,6−テト
    ラチアペンタレン−2,5−ジオンを、不活性雰囲気
    下、アルカリ金属のメトキシドを含むアルコール溶液中
    で、30℃以下の温度で反応させて、その1つの環を選
    択的に開環して1,3−ジチオール−2−オン−4,5
    −ジチオラートジアニオンを作成した後、この1,3−
    ジチオール−2−オン−4,5−ジチオラートジアニオ
    ンを、上記式(7) 中のR1 ,R2 に相当する1価または
    2価の有機基を含む化合物と反応させることを特徴とす
    るテトラチアフルバレン誘導体前駆体の製造方法。
  8. 【請求項8】上記請求項7で製造したテトラチアフルバ
    レン誘導体前駆体を亜リン酸トリアルキルの存在下で加
    熱、攪拌することにより、その2分子をカップリングさ
    せて、一般式(8) : 【化8】 (式中R1 ,R2 は上記と同じ基を示す。)で表される
    テトラチアフルバレン誘導体を製造することを特徴とす
    るテトラチアフルバレン誘導体の製造方法。
JP4262348A 1992-09-30 1992-09-30 テトラチアフルバレン誘導体前駆体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体前駆体の製造方法およびテトラチアフルバレン誘導体の製造方法 Pending JPH06107668A (ja)

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US08/124,227 US5817837A (en) 1992-09-30 1993-09-21 Tetrathiafulvalene derivative precursors, tetrathiafulvalene derivatives, and processes for producing them
CA002106794A CA2106794A1 (en) 1992-09-30 1993-09-23 Tetrathiafulvalene derivative precursors, tetrathiafulvalene derivatives, and processes for producing them
DK93115470T DK0590539T3 (da) 1992-09-30 1993-09-24 Fremgangsmåder til fremstilling af tetrathiafulvalenderivater og deres prækursorer
DE69324875T DE69324875T2 (de) 1992-09-30 1993-09-24 Verfahren zur Herstellung von Tetrathiafulvalen-Derivaten und ihrer Vorläufer
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