JPH06106530A - 繊維複合シートの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 繊維複合シートが薄肉の場合であっても、肉
厚分布および繊維分布が均一になるようにする。 【構成】 多数の連続モノフィラメントよりなる強化繊
維束F1を、粉体状熱可塑性樹脂の流動床装置１内に配置
された振動付与回転体６に接触させながら通過させるこ
とにより強化繊維束F1に一定周期の振動を与えて開繊を
促しかつ粉体状熱可塑性樹脂F2を各モノフィラメントに
付着させるとともにモノフィラメント相互間に捕捉す
る。開繊された樹脂付着繊維F2の熱可塑性樹脂を加熱溶
融してシート化し、繊維複合シートＳを得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、いわゆるプリプレグシ
ートなど、各種の繊維強化成形品に使用される繊維複合
シートの製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】繊維複合シートの製造方法として、多数
の連続モノフィラメントよりなる強化繊維束を、粉体状
熱可塑性樹脂の流動床中を通過させ、繊維束の各モノフ
ィラメントに粉体状熱可塑性樹脂を付着させ、樹脂付着
繊維束の熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート化する方法
は知られている（特公昭５２−３９８５号公報参照）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の方法では、
繊維に対する粉体状熱可塑性樹脂の付着にむらがあるた
め、特に、薄肉のシートを製造する場合、肉厚分布およ
び繊維分布の均一なものを得ることが困難であった。

【０００４】本発明の目的は、上記の問題を解決した繊
維複合シートの製造方法を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明による繊維複合シ
ートの製造方法は、多数の連続モノフィラメントよりな
る強化繊維束を、粉体状熱可塑性樹脂の流動床装置内に
配置された振動付与回転体に接触させながら通過させる
ことにより強化繊維束に一定周期の振動を与えて開繊を
促しかつ粉体状熱可塑性樹脂を各モノフィラメントに付
着させるとともにモノフィラメント相互間に捕捉する工
程と、開繊された樹脂付着繊維の熱可塑性樹脂を加熱溶
融してシート化する工程とを含むことを特徴とするもの
である。強化繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊
維、セラミック繊維、ポリアマイド繊維、ポリエステル
繊維などがあげられる。強化繊維の軟化点は、熱可塑性
樹脂の溶融点より高くなければならない。強化繊維の軟
化点が熱可塑性樹脂の溶融点以下であると、加熱溶融時
にその強度が失われる。モノフィラントの直径は１〜５
０μｍ、とくに２〜３０μｍが好適である。１μｍ未満
では、加熱溶融工程までの引き取りや振動により生じる
テンションに耐え得る強度が得られず、また繊維複合シ
ートとしての強度も得にくい。５０μｍを超えると、粉
体状熱可塑性樹脂の流動では開繊しにくい。

【０００６】強化繊維束のテンションの最適値は、強化
繊維のフィラメント径によって異なるが、５００〜３０
００ｇｆが好適である。テンションが５００ｇｆ未満で
は強化繊維束は開繊しにくく、３０００ｇｆを超える
と、強化繊維が加熱溶融工程までの引取りや振動により
生じるテンションに耐え得ない場合がある。

【０００７】粉体熱可塑性樹脂の流動は気体によるもの
でもよいし、槽自体の振動によるものでもよい。また、
強化繊維は粉体樹脂の流動床中に完全に埋没している状
態が好ましい。粉体熱可塑性樹脂としては、ポリエチレ
ン、ポリプロピレンなどのオレフィン重合体、塩化ビニ
ル樹脂およびその共重合体、ポリエーテルサルフォン、
ポリフェニレンサルファイドなどのエンジニアリングプ
ラスチック、これらの熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との
混合樹脂などがあげられ、粒子径は１０〜３００μｍ程
度が好適である。１０μｍ未満では、流動で飛散する粉
体が多すぎ、３００μｍを超えると、モノフィラメント
間への樹脂含浸に良好な流動状態が得られない。

【０００８】振動付与回転体における強化繊維との接触
部分の形状は、フィラメントを切断するような鋭利なも
のでなければよく、材質、フィラメント径などで決定さ
れる強化繊維強度や、強化繊維のテンション、強化繊維
との接触状態などによって適宜選択される。前記接触部
分の材料としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなど
のプラスチック類や鉄、アルミなどの金属類があげられ
る。また、振動付与回転体の回転は、駆動によるもので
もよく、強化繊維の接触移動に伴って摩擦回転するもの
でもよい。回転体と強化繊維の接触は連続でも不連続で
もよい。強化繊維に与える振動の振動数とその振幅は本
発明の方法によって得られるシートの用途や目的とする
成形品の肉厚により適宜選択される。

【０００９】開繊された樹脂付着繊維の熱可塑性樹脂の
加熱溶融には、加熱ロール、熱風、遠赤外線などの汎用
加熱源が使用できる。加熱温度は、粉体熱可塑性樹脂の
種類や繊維複合シートの用途などにより適宜選択され
る。

【００１０】

【作用】本発明による繊維複合シートの製造方法は、多
数の連続モノフィラメントよりなる強化繊維束を、粉体
状熱可塑性樹脂の流動床装置内に、配置された振動付与
回転体に接触させながら通過させることにより強化繊維
束に一定周期の振動を与えて開繊を促しかつ粉体状熱可
塑性樹脂を各モノフィラメントに付着させるとともにモ
ノフィラメント相互間に捕捉するものである。

【００１１】従って、振動付与回転体から強化繊維に一
定周期でテンションの緊張と緩和が交互に加えられ、開
繊が確実に行なわれて粉体状熱可塑性樹脂がフィラメン
ト相互間に充分に侵入すると同時に、捕捉される樹脂量
の分布が均一化されるので、シート化した際、繊維分布
及び肉厚分布の均一な繊維複合シートが得られることと
なる。

【００１２】

【実施例】

実施例１ 図１には、この実施例に用いられる繊維複合シートの製
造装置が示されている。以下の説明において、前とは図
１の右方向をいうものとする。

【００１３】図１の装置は、流動床装置(1) と、流動床
装置(1) の後方に配置せられた複数の強化繊維束巻戻し
ロール(2) と、流動床装置(1) の槽の後壁やや上方及び
槽の前壁やや上方に配置せられた２本の上部ガイド・バ
ー(3) と、槽内の底近くの前後に配置せられた２本の下
部ガイド・バー(4) と、両下部ガイド・バー(4) の中間
に配置せられた振動付与回転体(6) と、流動床装置(1)
の前方に配置された上下一対の加熱ロール(7) と、加熱
ロール(7) の前方に配置された上下一対の巻取りロール
(8) と、巻取りロール(8) の前方に配置せられた巻取機
(9) とを備えている。

【００１４】なお、流動床装置(1) は、粉体状熱可塑性
樹脂が安定的に浮遊、流動する状態に保たれていれば、
どのような構成であってもよい。また、複数の強化繊維
束巻戻しロール(2) は、便宜上上下に分けて図示した
が、実際は横方向一列に並列状に存在する。

【００１５】振動付与回転体(6) は、図２にその詳細を
示したように、流動床装置(1) における強化繊維束(F1)
の上方でかつこれと直交するように、一対の垂下板(10)
に回転自在に取付けられた駆動軸(11)と、駆動軸(11)の
長さの中程に、等間隔に放射状に固着されたすべて同一
長さのアーム(12)の端に、駆動軸(11)と平行になるよう
に固着された６本の横断面円形のバー(13)とよりなり、
一方の垂下板(10)より外方に突出した駆動軸(11)の一端
部にはスプロケット・ホイール(14)が取付けられてい
る。振動付与回転体(6) の上方には、モータ(15)が配置
せられており、その出力軸(16)に取付けられたスプロケ
ット・ホイール(17)と駆動軸(11)のスプロケット・ホイ
ール(14)とにエンドレス・チエーン(18)がかけわたさ
れ、モータ(15)の回転動力が駆動軸(11)に伝達せられる
ようになっている。

【００１６】つぎに、繊維複合シートの製造方法につい
て説明する。

【００１７】各巻戻しロール(2) から多数の連続フィラ
メントよりなる強化繊維束(F1)１４本を巻取りロール
(8) によりひねりが生じないようにしながら巻戻し、横
に並べた状態で流動床装置(1) の粉体状熱可塑性樹脂流
動床（Ｒ）中を回転する振動付与回転体(6) の６本のバ
ー(13)に次々と接触させながら通過させる。

【００１８】そして、流動床（Ｒ）通過中の強化繊維束
(F1)に対し回転体(6) により振動を与えることにより、
強化繊維束(F1)の開繊を促しかつ粉体状熱可塑性樹脂を
各モノフィラメントに付着させるとともにモノフィラメ
ント相互間に捕捉する。開繊された樹脂付着繊維(F2)の
熱可塑性樹脂を２００℃の加熱ロール(7) により加熱溶
融してシート化し、得られた繊維複合シート（Ｓ）を巻
取りロール(8) により巻取機(9) に巻取る。

【００１９】粉体状熱可塑性樹脂としては、粉体状塩化
ビニル樹脂（平均粒径２００μ）１００phr を安定剤
１．５phr 、滑剤０．５phr とともにスーパーミキサー
で混合して用い、強化繊維としては、ロービング状ガラ
ス繊維（径１７μｍ）を用いた。駆動軸(11)の長さは５
５０mm、アーム(12)の長さは８０mm、バー(13)の長さは
４８０mmでその直径は１２mmとし、強化繊維束(F1)の最
大振幅が２５mmとなる位置に振動付与回転体(6) を配置
した。また、振動付与回転体(6) の回転速度を２００r.
p.m とし、ライン速度を２．０ｍ／分とした。

【００２０】図３には、ガラス繊維複合シート（Ｓ）の
横断面図が示されているが、同図において、(19)はガラ
ス繊維、(20)は塩化ビニル樹脂を示す。得られたガラス
繊維複合シート（Ｓ）の平均厚みは０．４５mm、幅は４
５０mm、ガラス繊維含有率は５５重量％であった。

【００２１】実施例２ この実施例に用いられる繊維複合シートの製造装置が図
４に示されている。これが図１の装置と異なるのは、振
動付与回転体(26)がモータ(15)により回転させられるの
ではなく、強化繊維の接触移動により摩擦回転する点、
アーム(22)の長さを２００mmとした点及び下部ガイド・
バーを除いた点である。回転体(26)の中心にある軸は駆
動軸ではなく、中心軸(21)であり、動力伝達に必要な部
材は存在しない。

【００２２】図４の装置を用いた以外は、実施例１と同
様にして繊維複合シートを製造した。

【００２３】実施例３ 図５に示すように、実施例２における回転体(26)２つを
流動床装置(1) 内の前後に配置した装置を用いた以外
は、実施例１と同様にして繊維複合シートを製造した。

【００２４】実施例４ この実施例で用いられる繊維複合シートの製造装置は、
図６に示されているように、図１の駆動軸(11)が直径１
２０mmの水平円柱体よりなる振動付与回転体(36)の中心
より２５mmの偏心位置に貫通状にかつ一体的に回転する
ように取付けられている（アームやその先端のバーは取
付けられていない）点が異なり、その他は図１の装置と
異ならない。

【００２５】図６の装置を用いた以外は、実施例１と同
様にして繊維複合シートを製造した。

【００２６】比較例１ 回転体を用いないこと以外は、実施例１と同様にして繊
維複合シートを製造した。

【００２７】比較例２ この比較例で用いられる繊維複合シートの製造装置は、
図７に示されているように、図１における回転体(6) の
代わりに、流動床装置(1) の槽の前壁上方に、上に向か
って移動する樹脂付着繊維(F2)に対し前方から振動を与
える振動付与バー(41)が配置せられたものである。な
お、バー(41)は流体圧シリンダ(42)のピストン・ロッド
(43)の先端に取付けられている。その他は図１の装置と
異ならない。

【００２８】図７の装置を用いた以外は、実施例１と同
様にして繊維複合シートを製造した。

【００２９】なお、実施例１〜３において、バー(12)(2
2)の数は適宜増減可能である。

【００３０】実施例２〜４及び比較例２において、実施
例１と同一部分には同一符号を付することによりその説
明は省略されている。

【００３１】表１に各例の繊維分布測定及び肉厚分布測
定の結果を示した。

【００３２】(1) 繊維分布測定 各例の繊維複合シートを幅方向に４０等分割し、熱可塑
性樹脂をオーブンで焼出して繊維含有量を測定し、ＣＶ
値（変動係数）を算出した。

【００３３】(2) 肉厚分布測定 各例の繊維複合シートを幅方向４０点に分割し、マイク
ロメーターを用い肉厚を測定し、ＣＶ値を算出した。

【００３４】

【表１】 上記結果より明らかなように、この発明の方法で製造し
た繊維複合シートは、その肉厚分布および繊維分布にお
いて優れていた。

【００３５】

【発明の効果】本発明の繊維複合シートの製造方法によ
れば、通常肉厚の場合は勿論、薄肉であっても肉厚分布
および繊維分布が均一なシートを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例１に使用される繊維複合シート
の製造装置の側面図であり、流動床装置は垂直断面で示
されている。

【図２】図１における振動付与回転体の詳細斜視図であ
る。

【図３】繊維複合シートの拡大横断面図である。

【図４】実施例２に使用される振動付与回転体を備えた
流動床装置の垂直断面図である。

【図５】実施例３に使用される振動付与回転体を備えた
流動床装置の垂直断面図である。

【図６】実施例４に使用される振動付与回転体の拡大斜
視図である。

【図７】比較例２に使用される振動付与バーと流動床装
置の配置状態を示す垂直断面図である。

【符号の説明】

(1) ：流動床装置 (6)(26)(36) ：振動付与回転体 (F1) ：連続強化繊維束 (F2) ：開繊された樹脂付着繊維 (S) ：繊維複合シート

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多数の連続モノフィラメントよりなる強
   化繊維束を、粉体状熱可塑性樹脂の流動床装置内に配置
   された振動付与回転体に接触させながら通過させること
   により強化繊維束に一定周期の振動を与えて開繊を促し
   かつ粉体状熱可塑性樹脂を各モノフィラメントに付着さ
   せるとともにモノフィラメント相互間に捕捉する工程
   と、開繊された樹脂付着繊維の熱可塑性樹脂を加熱溶融
   してシート化する工程とを含むことを特徴とする繊維複
   合シートの製造方法。