JPH0610329A - 耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 土石流を食い止めるために山の中の渓流に設
置される鋼製堰堤において、耐候性鋼材を使用し、この
耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤の支柱２下部の周囲に、
底版コンクリート３面から上方に向けて保護壁４を設け
た耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤。 【効果】 完成時の塗装をなくすとともに、メンテナン
スフリーとすることができ、さらに、支柱下部の美観を
維持することができるとともに、支柱下部を土石流から
保護することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、砂防ダムとして使用す
る鋼製堰堤に関し詳しくは耐候性鋼材を使用した鋼製堰
堤に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】鋼製堰堤は、鋼管を立体格子状に組合せ
た構造で、土石流を食い止めるために山の中の渓流に設
置される透過型の砂防ダムである。この堰堤は、中小出
水時には鋼管の間から土砂を下流に透過させて、常に堰
堤の上流側に土石流捕捉用のポケットを確保する。一
方、土石流時には、土石流の先端に巨礫が集まる性質を
利用して、それを最上流の鋼管柱の間隙で捕捉する土砂
調節機能をもっている。

【０００３】従来、砂防ダムはコンクリートで造られて
いたが、コンクリートダムの場合、どんな小さい粒径の
土砂をも止めてしまうため、短期間でダムが満砂し、肝
心の土石流時に役に立たなくなってしまうことがある。
1985年10月に、鋼製砂防構造物設計便覧が発刊されて以
来、上記の鋼製堰堤の使用が急激に増加し始めた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来の鋼製堰堤は美観
と環境保護の点から、完成時塗装を施して設置してい
る。しかし、設置場所が山中であるため、その後の補修
は困難で補修されていないのが現状である。このため
柱、梁にはさびが発生し美観を損ない、支柱の下部は土
石流が当たり塗装が剥がれ、さびた鋼材が露出したまま
になっている。また、完成時の塗装は、多くの労力と費
用を必要とする。

【０００５】完成時の塗装をなくし、メンテナンスフリ
ーにするためには耐候性鋼材の使用が考えられるが、支
柱の下部はたえず流水があり、耐候性鋼材特有の安定さ
びが生成しにくく色むらが生じ、安定さびが生成しても
土石流が当たり、安定さびが剥離し、また流出さびが底
版コンクリート表面を汚染し、美観を損なうため、耐候
性鋼材の鋼製堰堤への使用が遅れていた。

【０００６】本発明は、上記の問題点を解決するために
なされたもので、鋼製堰堤に耐候性鋼材を使用し、支柱
下部を保護することによって、完成時の塗装をなくすと
ともに、メンテナンスフリーとし、支柱下部の美観を維
持するとともに、支柱下部を土石流から保護した耐候性
鋼材を使用した鋼製堰堤を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、土石流
を食い止めるために山の中の渓流に設置される鋼製堰堤
において、耐候性鋼材を使用し、この耐候性鋼材を使用
した鋼製堰堤の支柱下部の周囲に、底版コンクリート面
から上方に向けて保護壁を設けた耐候性鋼材を使用した
鋼製堰堤である。

【０００８】

【作用】耐候性鋼材は、安定さびを生成する元素を含有
する鋼材で、晴天と雨天の繰り返しを受けることによっ
て、３〜５年の間に鋼材表面に安定さびを生成し、その
後流出さびは減少していく。耐候性鋼材は、山の中など
の環境のよい地点で使用すると早期に安定さびが生成
し、よい結果をもたらす。したがって、鋼製堰堤に耐候
性鋼材を使用することによって、完成時の塗装をなくす
とともに、メンテナンスフリーとすることができる。

【０００９】さらに、支柱下部の周囲に保護壁を設ける
ことによって、美観を損なう流水による安定さびの色む
ら、土石流による安定さびの剥離を防止し、また、保護
壁を底版コンクリート面から上方に向けて設けることに
よって、耐候性鋼材の表面に安定さびが生成するまでの
流出さびを保護壁内に導き、底版コンクリート表面の流
出さびによる汚染を防止しすることができる。

【００１０】

【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。図
１(a) 、(b) は鋼製堰堤の例で、鋼製堰堤１は支柱２を
底版コンクリート３に埋め込んだ状態で渓流の流れを遮
るように設置されている。本発明は耐候性鋼材を鋼製堰
堤１に使用したもので、その支柱下部の詳細を図２に示
す。

【００１１】図２(a) は支柱２の周囲に、支柱２よりも
大きい保護壁４を底版コンクリート３面から上方に向け
て設け、支柱２と保護壁４の間に隙間５を設けている。
この隙間５に、雨水、結露、水蒸気などで支柱２を伝わ
って流下してくる流出さびを導き、底版コンクリート３
表面の汚染を防止する。

【００１２】隙間５に導かれた流出さびは、隙間５に溜
まり自然蒸発する。雨量が多く、流出さびが隙間５から
溢れ出るときは、雨水で洗い流され底版コンクリート３
の表面を汚染することはない。また、保護壁４を設けて
いるため、支柱２を土石流から保護することはいうまで
もなく、支柱下部の美観を損なうこともない。

【００１３】図２(b) は土石流によって、保護壁４が破
損する場合を想定したもので、上流側の隙間５に中詰め
材６を詰め、隙間をなくし保護壁４を補強するととも
に、中詰め材６の上面を下流側に傾斜させ、流出さびを
下流側に導き、下流側の隙間５に流出さびを溜める。

【００１４】図２(C) は同様に、保護壁４が破損する場
合を想定したもので、保護壁４を支柱２の上流側に密着
させ、保護壁４を補強するとともに、上流側の保護壁４
の上端に下流側に傾斜した溝７を設け、流出さびを下流
側に導き、下流側の隙間５に流出さびを溜める。

【００１５】保護壁４の材質は特に規定しないがコンク
リート、合成樹脂等、環境汚染がないものが望ましい。
また、中詰め材６の材質も保護壁４と同様に環境汚染が
ないものが望ましく、セメントモルタル等が考えられ
る。

【００１６】以上のように、耐候性鋼材を鋼製堰堤に使
用しているため、完成時の塗装をなくすとともに、メン
テナンスフリーとすることができるとともに、支柱下部
を保護壁で保護しているため、支柱下部の美観を維持す
ることができるとともに、支柱下部を土石流から保護す
ることができる。

【００１７】

【発明の効果】本発明は、土石流を食い止めるために山
の中の渓流に設置される鋼製堰堤において、耐候性鋼材
を使用し、この耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤の支柱下
部の周囲に、底版コンクリート面から上方に向けて保護
壁を設けた耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤であって、本
発明の鋼製堰堤を使用することによって、完成時の塗装
をなくすとともに、メンテナンスフリーとすることがで
き、さらに、支柱下部の美観を維持することができると
ともに、支柱下部を土石流から保護することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】鋼製堰堤の例を示す図である。

【図２】本発明の鋼製堰堤の支柱下部の詳細を示す図で
ある。

【符号の説明】

１…鋼製堰堤、２…支柱、３…底版コンクリート、４…
保護壁、５…隙間、６…中詰め材、７…溝。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 土石流を食い止めるために山の中の渓流
   に設置される鋼製堰堤において、耐候性鋼材を使用し、
   この耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤の支柱下部の周囲
   に、底版コンクリート面から上方に向けて保護壁を設け
   たことを特徴とする耐候性鋼材を使用した鋼製堰堤