JPH0593788A - 異常発熱検知装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 異常発熱を検知すべき対象物の表面温度と、
形状記憶合金を用いた熱センサ体の形状復帰変態温度と
が一致するようにすること。 【構成】 熱センサ体１の形状記憶部位５を、検知対象
に装着するための装着部材（２、又は９）の結合部４に
最も接近させたこと。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、形状記憶合金を利用
した、電気導体とその接続部及びその他の機器における
異常発熱を検知する装置の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、電気導体の接続部、例えば、電
気鉄道の電車線路における、き電線の接続部（直線接続
部，分岐接続部等）は、直線接続部を例にとると、硬銅
より線、又は硬アルミより線からなるき電線を直線接続
管の両端部からそれぞれ挿入した後、電線接続用油圧機
を用いて、直線接続管を圧縮変形させて接続するよう構
成してある。

【０００３】しかしながら、このように構成したき電線
の接続部分では、接続不良を起こす場合がある。このよ
うな接続不良が生じた場合、特に接続が圧縮変形による
場合には、直線接続管の内面とき電線の外面との電気的
接触は不完全な状態になって異常発熱の原因となり、ま
たその状態の継続は加熱による空気酸化を助長して、ま
すます電気的接触を劣化させ、一層発熱させるとともに
熱影響により、き電線の金属組織の結晶粒の粗大化によ
る材力の低下をも促し、断線事故が生ずることがある。

【０００４】さらには、この接続不良の場合、接続直後
から接続部分が異常発熱し、時間の経過とともにますま
す高温となるが、この異常発熱は外観からは判別し難い
ため、ついにはき電線の発熱断線事故を招く危険性が生
ずることになる。

【０００５】そこで従来より、接続不良によるき電線等
の電気導体の接続部における発熱断線事故を防ぐため、
特願平１−２５８８号、特願平１−２５８９号、及び特
願平１−２５９０号に記載する如き異常発熱検知装置が
実用化されている。

【０００６】従来の異常発熱検知装置は、図６乃至図１
０に例示する如く、熱センサ体１をステンレスタイラッ
プ２等で、電気導体の接続部３に装着するものである。
図の熱センサ体１は全長８０ｍｍの長板状で、その中央
結合部をステンレスタイラップ２に直角に取り付けるも
のである。熱センサ体１の中央結合部中心から距離ｌ′
（１０ｍｍ）の位置には、発生熱負荷により変態温度を
超えると、屈曲起立するように形状復帰する形状記憶部
位を設定して成る。なお、形状記憶部位から熱センサ体
１の自由端までの距離ｍ′は３０ｍｍである。そして、
接続部３に異常発熱を生じた場合には、熱センサ体１が
図６に実線で示す直線状態から破線で示す屈曲起立した
状態となり、目視により異常発熱を検知し得るようにな
っている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上述のような従来の異
常発熱検知装置を、き電線接続部３に装着し、接続部３
を発熱状態に昇温させ、接続部３の表面温度と熱センサ
体１の立ち上がり角度との関係を求めたところ図９に示
す如き結果を得た。この結果より、各熱センサ体（変態
点５５、７０、９０、１１０℃の４種類）の立ち上がり
角度４５°の状態と最大立ち上がり角度状態とにおけ
る、各接続部３の表面温度の値は、図１０に示す如くな
る。これら図９及び図１０より、例えば変態点５５℃の
熱センサ体１では、接続部３の表面温度が５５℃となっ
た時点において逆Ｕ字形（立ち上がり角度９０°）に立
ち上がることができず、表面温度が６０℃でやっと４５
°まで立ち上がり、表面温度７０℃で立ち上がり角度９
０°に立ち上がっている。これにより、５５℃の変態温
度で９０°屈曲する記憶形状を持つ熱センサ体１が、実
際に変形して検知する接続部３の表面温度は７０℃であ
ることになる。よって、熱センサ体１に接触する対象物
の異常発熱による表面温度が、熱センサ体１を９０°屈
曲した形状に復帰する変態温度に等しくないという問題
を生ずる。

【０００８】本発明は上述の点に鑑み、異常発熱を検知
すべき対象物の表面温度と、熱センサ体の形状復帰変態
温度とが一致するようにする異常発熱検知装置を提供す
ることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の異常発熱検知装
置によれば、第１に形状記憶合金を用いて構成した熱セ
ンサ体の結合部に、異常発熱を検知すべき対象にこの熱
センサ体を装着する装着部材を結合させたものにおい
て、一定温度で屈曲するように形状復帰する形状記憶部
位を、熱センサ体の結合部に構造上不都合を生じない範
囲で最も接近させた位置に配置構成したことを特徴とす
る。

【００１０】また、第２に熱センサ体の形状記憶部位か
ら自由端までの距離を短くし、この自由端部に熱伝導性
の悪い合成樹脂等で形成した目印板を設置したことを特
徴とする。

【００１１】

【作用】上述のように構成することにより、まず第１の
構成では、検知対象が一定温度以上に発熱し、熱センサ
体が形状復帰を開始し、その形状記憶部位が検知対象か
ら離間し検知対象からの直接接触による熱伝導を受けな
くなった後でも、検知対象に接する結合部に近いためこ
れからの伝熱を十分に受け、形状復帰するという作用を
奏する。

【００１２】また、第２の構成では、異常発熱を検知し
た当初において、熱センサ体の結合部から形状記憶部位
に伝わった熱が、さらにその自由端部に逃げて放熱され
るのを防止し形状記憶部位が十分に昇温する。これとと
もに、熱センサ体が小形化しても、その形状復帰動作に
よって目印板を大きく動作するようにし、外部から異常
発熱を容易に確認できるようにするという作用を奏す
る。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の異常発熱検知装置の実施例を
図１ないし図５によって説明する。なお、この図１ない
し図５において、前述した図６ないし図１０に示す従来
例に対応する部分には同一符号を付すこととし、その詳
細な説明を省略する。

【００１４】図１は本発明装置の第１実施例を示す要部
平面図、図２はその要部側面図であり、図で１は熱セン
サ体、２はステンレスタイラップである。この熱センサ
体１には、その中央のステンレスタイラップ２との結合
部４の中央から距離ｌ（６ｍｍ）だけ置いた部位に、形
状記憶部位５を設定する。この形状記憶部位５は、変態
点で角９０度、又はそれに近い角度で屈曲するように設
定したものである。また、本例装置では、熱センサ体１
の各形状記憶部位５を、ステンレスタイラップ２の結合
部４に、可能な限り近接させるとともに、熱センサ体１
における各形状記憶部位５から各自由端までの長さｍ
（１０ｍｍ）を可能な範囲で短くしている。

【００１５】上述のように構成した理由は次の通りであ
る。まず、従来、熱センサ体１の変態温度と、これが実
際に形状復帰するときの対象物の表面温度が一致しない
理由についてみる。この理由は、熱センサ体１を接続部
３に接触させて装着しておいても、接続部３が発熱して
変態温度に達し、形状記憶部位５が形状回復を始める
と、その時点で形状記憶部位５が接続部３から離れてし
まう。よって、それ以後は、ステンレスタイラップ２で
緊締密着している熱センサ体１の中央部からの熱伝導の
みによって、形状記憶部位５に熱が伝わり、形状回復が
行われるためである。そこで、熱センサ体１の形状記憶
部位５をその結合部４に可能な限り近接させ、熱伝達を
良好にするものである。

【００１６】また、熱センサ体１の形状記憶部位５が形
状回復の開始により接触部３の表面から離れると、熱セ
ンサ体１の形状記憶部位５から熱センサ体１の端部まで
の部位は放熱作用を呈して、熱センサ体１の正常な検知
作用を妨げることになる。そこで、熱センサ体１の形状
記憶部位５からその自由端までの長さｍを可能な範囲で
短くするものである。

【００１７】さらに、上述の如く構成すると、熱センサ
体１の全長が短くなるので、異常発熱の目視検知が不便
となる。そこで、この熱センサ体１の両自由端部にそれ
ぞれ目印板６を取り付ける。この目印板６は、熱センサ
体１の長さ、幅より大きな矩形状にした２枚の蛍光塗料
入り熱可塑性プラスチック製シートを貼合わせて鞘状に
構成したもので、その鞘状の隙間に熱センサ体１の各端
部を嵌め、接着剤で固定し、取り付ける。なお、本例装
置では、目印板６の材料として、バイエル社製ＬＩＳＡ
ＫＬ１−９４００（ポリカーボネイト製）のシートを用
いた。さらに、色の使い分けとして、５５℃用の熱セン
サ体１は緑色、７０℃用のものは黄色、９０℃用のもの
では赤色を用いるのが好ましい。

【００１８】上述のように構成した本例装置では、接続
部３の異常発熱時、熱センサ体１の形状回復にともなっ
て、目印板６も立ち上がり、これが受光すると、その外
面から強度の緑，黄，又は赤色の蛍光を発し、熱センサ
体１の形状復帰状態を、遠方からでも容易に確認できる
ようにするものである。上述のように構成した本例装置
では、通常の異常発熱の検知に用いた場合、熱センサ体
１の設定変態温度と、実際に形状復帰したときの接続部
３の表面温度が十分な精度で一致し、その目的を達成で
きることが確かめられた。なお、検知対象となる接続部
３等の表面温度の異常を、より高精度で判定する必要が
あるときは、予め、対象物の表面温度と、熱センサ体１
の立ち上がり角度との関係を、種々の環境条件の下で測
定し、前述した図９に示す如き対象物の表面温度と熱セ
ンサ体の立ち上がり角度との関係図を作成し、実際の検
知時に、この関係図と比較して、対象物の表面温度を高
精度で判定できるものである。

【００１９】次に、本発明装置の第２実施例を図３によ
って説明する。なお、図３において前述した図１，図
２，図６乃至図８に示したものと対応する部分には同一
符号を付すこととし、その詳細な説明を省略する。

【００２０】図３は本例装置の要部を取り出して示す側
面図であり、図で１は熱センサ体、２はステンレスタイ
ラップ、６は目印板、７はき電線のより線、８は金属テ
ープである。金属テープ８は、高導電、伝熱性感圧接着
剤で裏打ちしておく（なお、本例装置では、金属テープ
８としてＣＨＯＭＥＲＩＣＳ／ＴＷＣ社製のコ・フォイ
ルを用いた。）。この金属テープ８は、長さ約３０セン
チメートル程に切断し、より線７の異常発熱検知装置の
取り付け対応位置に３重位に巻き付ける。この際、金属
テープ８の裏側に接着剤が付いているので、容易に巻装
貼着することができるものである。

【００２１】また、より線７として硬銅より線を用いる
ときは、銅製の金属テープ８を用いるものとする。さら
に、より線７として硬アルミより線を用いるときは、ア
ルミ製の金属テープ８を用いるものとする。

【００２２】前述の如くより線７に金属テープ８を巻装
することにより、巻装した金属テープ８の外周面はより
線７の素線による凹凸がなくなって円筒状となり、表面
が滑らかになる。よって熱センサ体１は、より線７に巻
装した金属テープ８の外周面にステンレスタイラップ２
で巻装し、良好な接触状態で保持でき、適正な異常発熱
の検知を可能とするものである。なお、本例装置の構成
では、従来の図８に示す如き熱センサ体１を用いても、
より線７に良好な接触状態を保持させるようにできるこ
とは勿論である。

【００２３】次に、本発明装置の第３実施例を図４及び
図５によって説明する。なお、この図４及び図５におい
て、前述した図１，図２，図６乃至図８に示したものと
対応する部分には同一符号を付すこととし、その詳細な
説明を省略する。

【００２４】この本発明の第３実施例を示す図４の平面
図、及び図５の側面図で、１は熱センサ体、５は形状記
憶部位、６は目印板、９は磁石部材、１０は銅テープで
ある。

【００２５】この磁石部材９は、サマリウム・コバルト
磁石を矩形状に形成したものである。また、磁石部材９
の底部に当たる磁力吸着用平面部９ａには、熱センサ体
１を嵌め込む溝９ｂを設ける。そして、磁石部材９の溝
９ｂ内に図示するように熱センサ体１を嵌め込んだ状態
で、磁石吸着用平面部９ａとこの熱センサ体１の外部に
露呈する側面とが同一平面となるように構成する。

【００２６】このように磁石部材９の溝９ｂ内に熱セン
サ体１を嵌め込んだものは、図示するように、これらの
外周全体を取り巻くように銅テープ１０を巻装貼着して
一体に構成する。この銅テープ１０は、ＣＨＯＭＥＲＩ
ＣＳ／ＴＷＣ社製のコ・フォイルを用いる。この銅テー
プ１０はその裏側に高導電・伝熱性感圧接着剤で裏打ち
してあるので、巻装貼着作業を容易にできる。

【００２７】また、形状記憶部位は、熱センサ体１にお
ける磁石部材９の取り付け部分の両側位置にそれぞれ可
能な限り近接して設定し、異常発熱検知時に熱センサ体
１が、その目印板６を設置した両自由端部を磁石部材９
側に曲げる如く形状復帰せしめるように構成する。

【００２８】上述のように構成した本例装置は、その磁
力吸着用平面部９ａを鉄鋼製品に当接させ、磁力によっ
て吸着させる。この鉄鋼製品は、異常発熱を検知すべき
対象物であり、オーステナイト系ステンレス鋼及び非鉄
製品を除くものである。例えばエンジン、排気管、ドラ
フト、鉄道用レール、家庭日常機器等の多種多様の鉄鋼
製品がある。

【００２９】また、本例装置は、強力な磁力によって検
知対象物に装着するものであるから、この対象物が多少
振動しても極めて確実に装着され、脱落することもな
い。さらに本例装置の着脱が容易であり、検知対象物に
本例装置取り付け用孔等の損傷を与えることなく装着で
きるものである。

【００３０】尚、本発明は上述の実施例に限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
その他種々の構成を取り得ることは勿論である。

【００３１】

【発明の効果】以上詳述したように本発明の異常発熱検
知装置によれば、形状記憶合金を用いて構成した熱セン
サ体の結合部に、異常発熱を検知すべき対象にこの熱セ
ンサ体を装着する装着部材を結合させたものにおいて、
一定温度で屈曲するように形状復帰する形状記憶部位
を、熱センサ体の結合部に構造上不都合を生じない範囲
で最も接近させた位置に配置構成したので、検知対象が
一定温度以上に発熱し、熱センサ体が形状復帰を開始
し、その形状記憶部位が検知対象から離間し検知対象か
らの直接接触による熱伝導を受けなくなった後でも、検
知対象に接する結合部に近いためこれからの伝熱を十分
に受け、形状復帰するので、検知対象の表面温度と、形
状復帰する変態温度との間の誤差を十分に小さくできる
という効果がある。

【００３２】また、熱センサ体の形状記憶部位から自由
端までの距離を短くし、この自由端部に熱伝導性の悪い
合成樹脂等で形成した目印板を設置することにより、異
常発熱を検知した当初において、熱センサ体の結合部か
ら形状記憶部位に伝わった熱が、さらにその自由端部に
逃げて放熱されるのを防止し形状記憶部位が十分に昇温
するようにして、検知対象の表面温度と形状復帰する変
態温度との間の誤差をさらに小さくするという効果があ
る。また、熱センサ体が小形化しても、その形状復帰動
作によって、目印板が大きく動作するので、外部から異
常発熱を容易に確認できるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の異常発熱検知装置の第１実施例を示す
要部平面図。

【図２】上記実施例の要部側面図。

【図３】本発明の第２実施例を示す要部側面図。

【図４】本発明の第３実施例を示す平面図。

【図５】上記実施例の側面図。

【図６】従来の異常発熱検知装置を例示するき電線装着
状態の側面図。

【図７】上記従来例のき電線装着状態の一部断面正面
図。

【図８】上記従来例の装置要部を示す平面図。

【図９】上記従来例における接続部の表面温度と熱セン
サ体との立ち上がり角度との関係を示す説明線図。

【図１０】上記従来例における各熱センサ体の立ち上が
り角度４５°のときと、最大立ち上がり角度のときにお
ける、接続部の表面温度の値を示す説明線図。

【符号の説明】

１…熱センサ体、２…ステンレスタイラップ、３…接続
部、４…結合部、５…形状記憶部位、６…目印板、７…
より線、８…金属テープ、９…磁石部材、１０…銅テー
プ。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 異常発熱を検知すべき対象に装着するた
   めの装着部材を形状記憶合金を用いた熱センサ体の結合
   部に取り付け、一定の変態温度で屈曲するように形状記
   憶させた形状記憶部位を前記熱センサ体の前記結合部
   に、構造上不都合を生じない範囲で最も接近させた位置
   に配置構成したことを特徴とする異常発熱検知装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載の異常発熱検知装置におい
   て、熱センサ体の形状記憶部位から自由端までの距離を
   短くし、当該自由端部に熱伝導性の悪い材料で形成した
   目印板を設置して構成したことを特徴とする異常発熱検
   知装置。