JPH0580484U - 端糸切り装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 衣類やスリッパなどの繊維製品をミシン縫製
する際に、潤滑油を自動的に供給することにより、縫目
の始めや終わりに生じる遊び糸を切り取る作業を長時間
継続する。 【構成】 前面において斜め上方へ設置する固定刃と可
動刃を有する糸クリッパ本体と、該クリッパ本体の少な
くとも上方部を覆うカバーとを備え、カバー内部に注油
タンクを取付け、該タンクから延びるチューブを経てク
リッパ本体の固定刃と可動刃との間に潤滑油を供給す
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、衣類やスリッパなどの繊維製品をミシン縫製する際に、縫目の始め や終わりに生じる遊び糸を切り取る装置に関し、潤滑油を自動的に供給すること により、糸切り作業を長時間継続できる端糸切り装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

ミシン縫製の際に縫目の始めや終わりに生じる遊び糸は見苦しく、繊維製品の 商品価値を損うことになる。従来では、この遊び糸を小型はさみや糸切りバリカ ンなどで切り取っているけれども、この糸切り作業はきわめて能率が悪く、作業 を急ぐと繊維製品自体を損傷することもしばしば発生する。このため、遊び糸を 切断する各種の手持ち電動器具が提案されており、該器具で切り取った遊び糸は 一般に家庭用掃除機に吸引除去している。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

手持ち電動器具である実開昭６３−１１５０９４号は、公知の毛玉取り器と同 様に、多数の吸引孔を有する外刃の内部に回転刃を収納し、この糸切り取り装置 は、潤滑油を自動的に供給する機構を備えていない。このため、この装置で糸切 り作業を長時間継続する際には、適当な時間ごとに外刃を外して内刃に注油する ことを要し、その都度糸切り作業が中断することになる。注油の際に、外刃を外 さずに、該外刃の吸引孔から直接注油すると、油が外刃の表面に付着して布地を 汚すことになる。

【０００４】 また、公知のバリカン式の電動器具でも、注油の際に糸切 り作業が中断することは同様である。可動刃が固定刃と接触しながら摺動するバ リカン式の電動器具では、比較的短時間ごとに注油することを要するため、糸切 り作業をしばしば中断することになり、作業能率を一定以上で高めることは困難 である。

【０００５】 本考案は、従来の遊び糸切断器具に関する前記の問題点を 改善するために提案されたものであり、バリカン式の電動器具に潤滑油を自動的 に供給することにより、糸切り作業を長時間継続して作業能率を高めることがで きる端糸切り装置を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案に係る端糸切り装置１は、図１及び図２に 例示するように、前面において斜め上方へ設置する固定刃２と可動刃３を有する 糸クリッパ本体４と、該クリッパ本体の少なくとも上方部を覆うカバー５とを備 える。カバー５は通常細長い筒形であって、クリッパ本体４には可動刃３を駆動 する公知の電動モータ（図示しない）などを収納すればよい。

【０００７】 図２から明らかなように、細長い注油タンク６をカバー５ の内部に取付け、該タンクから延びるチューブ７を経てクリッパ本体４の固定刃 ２と可動刃３との間に潤滑油を供給する。チューブ７内には親油性の撚り糸８（ 図５）を挿入し、タンク内の潤滑油を撚り糸８，９にしみ込ませ、毛管現象によ って固定刃２と可動刃３との間まで浸透させる（図４参照）。

【０００８】 注油タンク６のゴム栓１０に、極く微細な小孔（図示しな い）を設けると好ましい。これにより、タンク６内の油量が減少してもタンク内 が低圧化することを防止する。このような微細な小孔の代りに、空気だけを透過 する半透膜をゴム栓１０の通気孔に張設してもよい。

【０００９】 カバー５の前面にはガイドプレート１１を一体又は別体に 取付け、該プレートは斜め下方へ湾曲している。ガイドプレート１１の波形端部 １２は、プレート両側部１３，１３に比べて内方へ配置することを要する（図３ 及び図６参照）。ガイドプレート１１の波形端部１２の先端１４は、クリッパ本 体４の固定刃２に向けてさらに内方へ湾曲させると好ましい（図６参照）。

【００１０】

【作用】

本考案の端糸切り装置１では、注油タンク６から延びるチューブ７を経て、ク リッパ本体４の固定刃２と可動刃３との間に潤滑油を自動的に供給することによ り、糸切り作業を長時間継続できる。注油タンク６のゴム栓１０には小孔を設け 、タンク６内の油量が減少してもタンク内が低圧化することを防止し、撚り糸８ ，９による一定の油吸収を保持させて潤滑油の自動供給を維持する。

【００１１】

【実施例】

次に、本考案を実施例に基づいて説明する。図１及び図２に示すように、本考 案に係る端糸切り装置１は、金属製の固定刃２と可動刃３が斜めに前方へ突出し た糸クリッパ本体４と、前端面を除いてクリッパ本体４を覆う手持ち可能な筒形 のプラスチックカバー５とを備える。クリッパ本体４は、交流の電動モータ（図 示しない）を収納した細長いプラスチックケースで覆い、該モータで可動刃３を 振動駆動する。

【００１２】 カバー５の内寸は、クリッパ本体４の外寸よりも大きく、 該カバー内側のほぼ下半分をクリッパ本体４の表面と接触させることにより、カ バー５の内側上方とクリッパ本体４の上方表面との間に空間を有し、この空間が エア流通路１５となる。流通路１５の形状は、カバー５の内面とクリッパ本体４ の上方表面との間に２枚の垂直仕切り板（図示しない）を設置することで一定に 維持する。

【００１３】 カバー５には、後方壁１６を垂直に固着し、該後方壁の外 方にホース接続部１７を突出させて固定する。エア流通路１５は、後方壁１６に 設けた貫通孔１８（図１）を介してホース接続部１７と連通する。ホース接続部 １７には、図６に示すように家庭用掃除機などの吸引装置１９のホース２０を嵌 合すればよい。

【００１４】 細長い注油タンク６は、カバー５の内部においてクリッパ 本体４の上面に水平に設置し、該タンクの後端部を後方壁１６に設けた貫通孔に 挿入して固着する。注油タンク６のゴム栓１０は、通気用の小孔（図示しない） を有し、後端に固着したフランジ部２１が後方壁１６の外面と接触することによ り、ゴム栓１０の着脱が可能である。また、注油タンク６の先端には、前方へ延 びるチューブ７を連通状に接続し、該チューブ内に綿糸などの親油性の撚り糸８ （図５）を挿入する。タンク６内の先端には、綿などの吸油部材２２を挿入し、 装置１が上向きになってもチューブ内を撚り糸８に潤滑油を送っている。

【００１５】 クリッパ本体自体は公知であり、固定刃２と可動刃３を一 体的に組込んだ構造でもよいけれども、この実施例におけるクリッパ本体４では 、その傾斜前端に着脱可能に嵌め込む半円形平面の刃取付け部材２４（図４）を 有する。クリッパ本体４の前方には、チューブ通過用の貫通孔２５（図２）を設 ける。チューブ７は、貫通孔２５を経てクリッパ本体４を斜め下方に通過して刃 取付け部材２４の後側まで達し、撚り糸８をチューブ７からさらに所定寸法露出 させる（図５参照）。刃取付け部材２４の後側には、電動モータの偏心軸２６が 突出している。

【００１６】 図４から明らかなように、一般にプラスチック製の刃取付 け部材２４は半円形平面であり、裏側に固定刃２と可動刃３を重ね合わせ設置し ている。刃取付け部材２４では、その先端部に金属製の固定刃２を一体的に固着 し、該固定刃に対して可動刃３をバネ２７，２７で押圧する。刃取付け部材２４ をクリッパ本体４の前端に嵌め込んだ際に、偏心軸２６が可動刃後部の突出片２ ８，２８に位置し、該偏心軸の回転によって可動刃３を左右に振動する。

【００１７】 固定刃２の下方をその左側から右側まで延びる撚り糸９の 両端は、固定刃２と可動刃３との間に位置し、該撚り糸の一部は綿などの吸油部 材２９と接触している。撚り糸８にしみ込んだ潤滑油は、吸油部材２９でいった ん保持され、さらに撚り糸９を経て固定刃２と可動刃３との間に常時送られるこ とになる。

【００１８】 一方、カバー５の前端面３０は、クリッパ本体４における 刃取付け部材２４の前端面３１とほぼ同じ角度（水平面に対して３０度前後）で 下方へ向って後方へ傾斜し、該クリッパ本体４をカバー５内に収納すると、その 前端面３１はカバー前端面３０と位置がほぼ一致する。金属製のガイドプレート １１は、カバー５の前端面３０の上方部を覆うように取付け（図３参照）、該プ レートによってエア流通路１５の前方を狭くする。

【００１９】 ほぼＬ字形側面のガイドプレート１１は、図２から明らか なように、カバー５にボルト止めする水平部３２からほぼ垂直下方に屈曲し、カ バー前端面３０に沿って円弧状に湾曲しながら斜め下方へ延びる。ガイドプレー ト１１の屈曲下方部における波形端部１２は、使用時に刃取付け部材２４の前端 面３１とほぼ同じ水平面に位置し、その全体がプレート両側部１３，１３に比べ てわずかに凹んで内方へ位置している（図３及び図６参照）。

【００２０】 波形端部１２は、例えば幅約２.５ｍｍ，高さ約４ｍｍで あり、その先端１４とクリッパ本体４の固定刃２との間に、通常約２ｍｍ幅の横 長の間隙３５を有する。波形端部１２の先端１４を固定刃２に向かってさらに内 方へ湾曲させることにより、吸引エアの一部は、図６で矢印で示すように、凹ん だ波形端部１２からその先端１４上を通過し、固定刃２と可動刃３の方向へ流入 する。

【００２１】 クリッパ本体４内に収納した交流の電動モータは、該本体 側面のスイッチ４０（図１）でＯＮ，ＯＦＦでき、該スイッチはカバー５の矩形 孔４１によって外側から作動できる。この電動モータのコード４２は、図１では 吸引機１９例えば家庭用掃除機のホースから独立しているけれども、図７のよう にコードをホース２０の周囲に巻き付けて一体化し、スイッチ４０によって家庭 用掃除機などの吸引機１９も同時にＯＮ，ＯＦＦすると好ましい。

【００２２】 図２を参照すると、調整ネジ４５を糸クリッパ本体４の後 方に回転自在に取付けて突出させ、該調整ネジをカバー５の後方壁１６のネジ孔 にねじ込んでいる。調整ネジ４５は、頭部に＋又は−溝を形成してドライバで回 転できるように構成し、該調整ネジを回すと糸クリッパ本体４を前後方向へ水平 移動できる（図２の一点鎖線参照）。

【００２３】 端糸切り装置１の使用時には、家庭用掃除機１９の電源を 入れ、次にスイッチ４０をＯＮにすると、クリッパ本体４内の電動モータ及び掃 除機１９が同時に作動する。掃除機１９によって、ホース２０及び接続部１７を 経てエア流通路１５内を減圧化する。掃除機１９の吸引力が高すぎると、布地４ ６自体を吸込むので好ましくない。

【００２４】 端糸切り装置１は、図６のように糸切り作業時にその前端 面３０，３１を布地４６に強く押し付け、プレート両側部１３，１３が布地表面 と密接しても、ガイドプレート１１の凹んだ波形端部１２は布地表面との間にわ ずかの間隙を保ち、エアは常にプレート１１の湾曲前面から波形端部１２及び間 隙３５を経て通路１５の中へ吸引されている。この結果、遊び糸４７がかなり長 く且つ布地４６に付着していても、波形端部１２の縦隙間又は間隙１５から装置 内へ吸込むことができる。

【００２５】 図３に示すように、プレート波形端部１２の先端部１４を クリッパ本体４の固定刃２に向けてさらに内方へ湾曲させれば、図６の矢印のよ うにも流通するエアにより、吸込まれた遊び糸４７の立ち上がりをいっそう促進 する。立ち上がった遊び糸４７は、図６の矢印のように流通する吸引エアによっ て固定刃２と可動刃３の方へ押し付けられるため、装置１によって容易に切断さ れることになる。

【００２６】 また、端糸切り装置１では、注油タンク６の中に潤滑油を 収納しているから、この潤滑油は使用時においてチューブ７内の撚り糸８，９を 経て、固定刃２と可動刃３との間に自動的に供給されることになる。注油タンク ６のゴム栓１０には小孔を設け、タンク６内の油量が減少してもタンク内が低圧 化することを防止し、撚り糸８，９による一定の油吸収を保持させて潤滑油の自 動供給を常に維持する。

【００２７】

【考案の効果】

本考案の端糸切り装置では、注油タンクから延びるチューブを経て、クリッパ 本体の固定刃と可動刃との間に潤滑油を自動的に供給することにより、糸切り作 業を長時間継続できる。したがって、クリッパ本体が公知のバリカン式の電動器 具であっても、注油のために糸切り作業が中断することがなく、作業能率を一定 以上高めることが容易である。

【００２８】 本考案に係る端糸切り装置は、その前端面を布地に押し付 けても所定のエア吸引を維持でき、その吸引力によってかなり長い遊び糸や、布 地に付着している遊び糸でも吸込んで切り取ることが可能である。本考案の端糸 切り装置は、従来の糸切り装置に比べて糸切り作業が容易であるうえに効率的に 遊び糸を切り取り、しかも背広やワイシャツ又はスリッパなどの生地を切る恐れ は殆どない。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案に係る端糸切り装置を示す側面図であ
る。

【図２】 端糸切り装置の全体を示す縦断面図である。

【図３】 端糸切り装置の前端面を斜め下方から示す平
面図である。

【図４】 糸クリッパ本体の刃取付け部材の裏側を示す
平面図である。

【図５】 図４の刃取付け部材を外した状態を示す図３
と同様の端糸切り装置の平面図である。

【図６】 端糸切り装置の要部を拡大して示す部分断面
図である。

【図７】 端糸切り装置の使用状態を示す概略側面図で
ある。

【符号の説明】

１ 端糸切り装置 ２ 固定刃 ３ 可動刃 ４ クリッパ本体 ５ カバー ６ 注油タンク ７ チューブ １０ ゴム栓

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 前面において斜め上方へ設置する固定刃
   と可動刃を有する糸クリッパ本体と、該クリッパ本体の
   少なくとも上方部を覆うカバーとを備え、カバー内部に
   注油タンクを取付け、該タンクから延びるチューブを経
   てクリッパ本体の固定刃と可動刃との間に潤滑油を供給
   する端糸切り装置。
2. 【請求項２】 注油タンクから延びるチューブ内に親油
   性の撚り糸を挿入し、タンク内の潤滑油を撚り糸にしみ
   込ませ、毛管現象によって固定刃と可動刃との間まで浸
   透させる請求項１の装置。
3. 【請求項３】 注油タンクのゴム栓に小孔を設けること
   により、タンク内の油量が減少してもタンク内が低圧化
   することを防止し、撚り糸による一定の油吸収を保持さ
   せる請求項１の装置。