JPH0576364A - 動物遊離細胞の固定化物、固定化方法および培養方法 - Google Patents

動物遊離細胞の固定化物、固定化方法および培養方法

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JPH0576364A
JPH0576364A JP3241947A JP24194791A JPH0576364A JP H0576364 A JPH0576364 A JP H0576364A JP 3241947 A JP3241947 A JP 3241947A JP 24194791 A JP24194791 A JP 24194791A JP H0576364 A JPH0576364 A JP H0576364A
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carrier
culture
cell
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Yoshio Oshima
宣雄 大島
Kenichi Yanagi
健一 柳
Hirotoshi Miyoshi
浩稔 三好
Hideki Fukuda
秀樹 福田
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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    • C12MAPPARATUS FOR ENZYMOLOGY OR MICROBIOLOGY; APPARATUS FOR CULTURING MICROORGANISMS FOR PRODUCING BIOMASS, FOR GROWING CELLS OR FOR OBTAINING FERMENTATION OR METABOLIC PRODUCTS, i.e. BIOREACTORS OR FERMENTERS
    • C12M25/00Means for supporting, enclosing or fixing the microorganisms, e.g. immunocoatings
    • C12M25/16Particles; Beads; Granular material; Encapsulation
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 微孔性の立体網状多孔質構造を有する粒子状
の担体に動物遊離細胞を固定化してなる動物遊離細胞固
定化物、同担体からなる充填層部分を有する培養器内に
おいて、該充填層内に動物遊離細胞を含有する液を供給
することにより、細胞を該担体中に保持させる動物遊離
細胞の固定化方法および動物遊離細胞を培養するに際
し、同培養器を使用し、動物遊離細胞を該培養器内で担
体中に高密度に保持させたのち、動物遊離細胞を担体中
にてそのまま生育せしめて培養する動物遊離細胞の培養
方法。 【効果】 物理的強度が高く化学的にも安定でかつ容易
に入手できる微孔性の立体網状多孔質構造を有する粒子
状担体を充填した培養装置を用いることにより、簡単な
手段による固定化法を利用して、細胞を該担体中に保持
せしめた状態で効果的に生育せしめ、容易に細胞の高密
度培養が達成できるので、有用生理活性物質の生産、ハ
イブリッド型人工臓器などに利用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動物遊離細胞の固定化
物、固定化方法および培養方法に関する。さらに詳しく
は、微孔性の立体網状多孔質構造を有する粒子状の担体
を利用する動物遊離細胞の固定化物、該担体の充填層に
動物遊離細胞を含んだ液を供給することにより該動物遊
離細胞を該担体中に保持させる動物遊離細胞の固定化方
法、および培養器内において該固定化方法により動物遊
離細胞を固定化した充填層内に培養液を供給することに
より動物遊離細胞を多孔質担体中に保持した状態で培養
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ヒ
ト、動物など多細胞系からなる生体内において、細胞は
種々の生理活性物質を産生し、またこれを受けとること
により個体としての恒常性を維持しているが、近年、こ
のような生体内で細胞相互間に働く生理活性物質を取出
し再び生体内に戻すこと、すなわちこれらの生理活性物
質を生体由来の医薬品として利用することの有用性が明
らかにされてきた。従来このような生体由来の生理活性
物質を取得するためには、とくにヒトのばあい、血液、
尿などから抽出するなどの方法をとらざるをえず、これ
らの物質を大量に入手するには大きな制約があった。そ
こで、無限に増殖可能なヒトまたは動物由来の各種の株
細胞に遺伝子操作や細胞融合操作を施し、これらの細胞
を大量に培養し、目的とする物質、たとえばインターフ
ェロン、インターロイキン、各種の細胞増殖因子、ホル
モン、血液凝固因子、モノクローナル抗体などを産生さ
せることにより、これらの有用物質を大量に生産する方
法が検討されている。しかし、これらの無限増殖可能な
株細胞はがん細胞類似のものと考えられ、その使用は安
全性の面で問題を残している。また、異種動物由来の細
胞が産生した糖タンパク質はヒト型のものと比べて一般
に糖の構造が異なっており、このためこれらの糖タンパ
ク質の生理活性は本来のものと比べて低くなる、あるい
は活性をまったく失なうばあいが多い。したがって、生
体由来の有用生理活性物質を効率よく生産するために、
ヒトまたは動物の組織から遊離した正常細胞、すなわち
動物遊離細胞を生体外の人工的な環境のもとで高密度か
つ大量に培養する技術を確立することが求められてお
り、したがって、そのような技術の確立は産業上意義深
いものである。
【0003】また、動物遊離細胞の培養は、生きた細胞
を人工の臓器の一部として利用するバイブリッド型人工
臓器や皮膚移植のための細胞供給源としてもその応用が
期待されている。たとえば、劇症肝炎をはじめとする肝
不全の治療のために人工的に肝機能を代行するための肝
機能補助装置、すなわち人工肝臓においては、肝臓の機
能があまりにも複雑で現在なお解明されていない部分も
多いため人工的な手段のみでその機能を完全に代行する
ことは現状では不可能であり、生体由来の肝素材、なか
でも遊離肝細胞を利用するハイブリッド型のものの開
発、実用化が期待されている。このような装置内におい
ては、細胞が生体内において発現していた機能を保持し
たままで遊離細胞を長時間安定に培養できなければなら
ないとともに、生体を維持するに充分な機能を確保する
ために、また装置工学的な観点から考えても、細胞を高
密度かつ大量に培養する必要がある。
【0004】血液系の細胞を除くと、肝細胞などの動物
遊離細胞(以下、細胞という)は、一般に、その生育に
細胞が接着するための器壁を必要とするばあいが多く、
従来より医学・生物学の研究の目的では、ガラスやプラ
スチックからなるシャーレやフラスコの内部で単層培養
が行なわれてきた。しかし、これらの培養においては、
培養液中の細胞の密度は低く、また大量の細胞を培養す
るためには広大な表面積が必要であることから、前記の
ような目的で使用するに耐えないものであった。このた
め、細胞の高密度、大量培養を行なうためには、単位容
積あたりの培養表面積(培養表面積/容積)を上げるこ
とが不可欠な課題となる。また、細胞は生体外ではその
増殖力が小さい、あるいは遊離肝細胞のようにほとんど
増殖しないものもあるため、このような細胞を培養する
際には、あらかじめ培養器内で高密度にしかもできるだ
け均一に植付け、細胞を生育させる必要がある。
【0005】単位容積あたりの培養表面積を上げるため
に、表面に肝細胞を付着させた単層培養シートを多数積
層する人工肝臓装置が開発されている(たとえば、特開
昭64-17653号公報参照)。しかしこれらの装置では、装
置を無菌的に組立てるのが困難であり、必要な細胞数を
確保するのに多数のシートを準備しなければならず、ま
た細胞が実際に使用できる状態になるまでに長時間を要
するため、実用的ではない。
【0006】微小なビーズ、いわゆるマイクロキャリア
ーの外表面に細胞を付着させ培養を行なう方法(たとえ
ば、特開昭59-67965号公報参照)や中空繊維の外表面上
に細胞を付着させ生育させるホローファイバー培養法
(たとえばシー エフ ダブリュ ウルフ、アーティフ
ィシャル オーガンズ(C.F.W.Wolf、Artificial Organ
s )、4巻、279 頁(1980)参照)も、単位容積あたり
の培養表面積を上げるための培養法として検討されてい
る。しかし、マイクロキャリアーを用いて培養を行なう
と、マイクロキャリアー上の細胞は常に物理的外力にさ
らされるため、物理的外力に弱い細胞の生育は阻害さ
れ、またホローファイバー法でも、ファイバーを充填し
たモジュール内で溶存酸素や栄養分の濃度分布の不均衡
が生じたりファイバーの目詰りが起こる点でまだまだ問
題を残している。また、これらの基材への細胞の付着が
不良であるばあいも多い。
【0007】また、細胞をアルギン酸カルシウムなどの
多糖類のゲルに包括固定化し培養する方法も報告されて
いるが(たとえば、特開昭60-18179号および特開昭60-2
24627 号各公報参照)、これらの方法は(1)固定化担
体が培地中のある種の成分に対して不安定である、
(2)固定化担体の物理的強度が弱く、長期的な培養が
困難である、(3)固定化法が何段階にも及ぶという点
で複雑である、(4)固定化の際に一部の細胞の死滅が
避けられない、などの問題を有しており不都合であっ
た。
【0008】そこで、前記の目的に応用可能な簡単な手
段によるもので、細胞が長期にわたって安定に高密度状
態で生育できるような新たな固定化法、培養法が望まれ
ていた。
【0009】本発明者らは、かかる実情に鑑み、単位体
積あたり広い表面積を確保できる微孔性の立体網状多孔
質構造を有する担体を細胞の支持体として使用すること
に着目して鋭意研究を続けた結果、微孔性の立体網状多
孔質構造を有するプレート状の担体内で遊離肝細胞が良
好に生育することを見出した(柳ら、人工臓器、19巻、
840 頁(1990)および柳ら、人工臓器、20巻、162 頁
(1991)参照)。しかし、プレート状の担体を使用する
本培養方法はそのままではスケールアップが困難であり
担体内容積の利用効率もさほど高くないため、装置形状
や細胞の播種方法などを改善することによってさらにす
ぐれた装置の開発が望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、微孔性の立体
網状多孔質構造を有する粒子状の担体に動物遊離細胞を
固定化してなる動物遊離細胞固定化物、微孔性の立体網
状多孔質構造を有する粒子状の担体からなる充填層部分
を有する培養器内において、該充填層内に動物遊離細胞
を含有する液を供給することにより、該動物遊離細胞を
該担体中に保持させることを特徴とする動物遊離細胞の
固定化方法および動物遊離細胞を培養するに際し、微孔
性の立体網状多孔質構造を有する粒子状の担体からなる
充填層部分を有し、該充填層内に培養液を供給させる培
養器を使用し、該動物遊離細胞を該培養器内で該担体中
に高密度に保持させたのち、該動物遊離細胞を該担体中
にてそのまま生育せしめて培養することを特徴とする動
物遊離細胞の培養方法に関する。
【0011】
【実施例】本発明者らは、前記目的を達成すべくさらに
検討を重ねた結果、微孔性の立体網状多孔質構造を有す
る担体を粒子状に細切したものおよびこれらの粒子状担
体が少なくともその一部分において充填層を形成するよ
うな培養器を使用し、該培養器内において細胞を懸濁し
た培地を充填層に通液するなどの方法により特別な操作
もしくは薬剤などの必要もなく細胞は担体の細孔内に捕
捉、固定化され、固定化された細胞は該充填層内に培養
液を供給せしめることにより担体内に保持された状態で
良好に生育し、充填層内において担体内に保持された細
胞密度のばらつきも少なく、かつ、上述のように1枚の
プレート状の担体を用いる方法よりもさらに高い細胞密
度がえられ、スケールアップも簡単であることから、容
易に高密度培養が達成可能であることを見出し、本発明
を完成するにいたった。
【0012】すなわち本発明は、細胞を固定化または培
養するに際し、単位体積あたり広い表面積を有する微孔
性の立体網状多孔質構造を有する粒子状担体ならびに該
粒子状担体を充填した層内に培養液を供給させる培養器
を使用し、該培養器内において細胞を含有した液を該担
体充填層に供給することにより該担体内に高密度で保
持、固定化させたのち、該担体充填層に培養液を供給す
ることにより該細胞を該担体中にてそのまま生育せしめ
て培養することを特徴とする動物遊離細胞の固定化物、
固定化方法、および培養方法に関する。
【0013】つぎに本発明の固定化物、固定化方法およ
び培養方法について説明する。
【0014】本発明の動物遊離細胞の固定化物は、微孔
性の立体網状多孔質構造を有する粒子状担体に動物遊離
細胞を捕捉、保持させたものをいう。本発明において用
いられる微孔性の立体網状多孔質構造を有する担体(以
下、担体という)としては、単位体積あたりの表面積が
広く、培養すべき細胞に対して毒性を示さず、該細胞が
該担体中に保持されて外部に流出せず、培地の流入およ
び流出がスムーズに行なわれ、かつ該担体内において細
胞の付着、生育が容易であるものが望ましい。また前記
担体は水および培地中で変質せず、高圧蒸気滅菌に耐え
うるような性質を有し、弱酸、アルカリおよび多くの有
機溶媒に対して耐薬品性を示し、化学的に安定なものが
好ましい。さらに、細胞の大量培養を実現するためには
担体を大量に充填する必要があるため、物理的強度が高
く、比重は水よりわずかに高いものが好ましい。かかる
担体を使用すると、高圧蒸気などにより担体の滅菌を培
養器内などで容易に行なうことができ、また培養終了後
担体を回収し加熱処理および弱酸またはアルカリあるい
は溶剤処理することにより細胞を溶解し離脱させ、洗浄
後担体を再使用することが可能となり好都合である。ま
た、前記担体の有する立体網状多孔質構造とは、その担
体を構成する物質が立体的にかつランダムな方向に網目
状構造を形成した結果その担体内に複雑に入り組んだ細
孔が生じたものであるが、この細孔は連続細孔、すなわ
ちすべての細孔が連続しており、その孔径が均一で、細
孔の配列に方向性がなく、かつ空隙率が高いものがよ
い。さらに、前記担体の有する立体網状多孔質構造は、
培養する細胞、担体を充填する培養器の形状、大きさに
よって用いる担体の細孔径も異なるが、細胞を固定化す
る際の効率、細胞の保持能、および担体内における細胞
の生育状態から考慮して、平均孔径が約1〜1000μm、
好ましくは5〜600 μmの範囲内の孔径を有するものが
望ましい。
【0015】このような担体としては、たとえばろ過材
などの用途として市販されている立体網状連続多孔質構
造を有するポリビニルホルマール樹脂、高分子材料を発
泡または多孔質化させたもの、ステンレススチール製の
焼結金属担体、多孔性のガラスやセラミックス、または
キトサン、セルロース、デキストランなど天然由来の高
分子物質で多孔質構造を有するものなどがあげられる。
高分子の発泡または多孔質化材料としては、ポリエチレ
ンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン系;ブタ
ジエンまたはイソプレンなどのジエン系;ポリウレタ
ン;ポリ塩化ビニル、アクリルアミド、ポリスチレンま
たはポリビニルアルコールなどのビニル系重合体;ポリ
エーテル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはナイ
ロンなどの縮合系;シリコンおよびフッ素樹脂などの材
料が適用できる。そのなかでも、細胞の保持能の大小や
担体の物理化学的特性あるいはコスト面から考慮する
と、ポリビニルホルマール樹脂のうちホルマール化度が
60〜90%のもので、平均孔径が約20〜600 μmの範囲の
孔径を有するものがとくに好都合である。また、前記担
体を、細胞の付着を促進する物質、たとえばコラーゲ
ン、ポリリジン、フィブロネクチン、ラミニン、ヒスト
ン、ゼラチンなどの物質でコーティング、架橋などの処
理をして使用したり、また担体表面の荷電状態などの表
面特性を変化させて使用することも可能である。
【0016】前記粒子状担体の形状、大きさとしては、
使用する培養器の形状、大きさに応じて種々のものを使
用することができる。たとえば、担体が球形やブロック
形であるばあいがあげられるが、球形のものであればお
おむね直径0.1 〜20mm、ブロック形のものであれば一辺
が0.1 〜20mmの大きさのものを使用し、これを培養器に
充填して使用する。球形やブロック形の粒子状担体を充
填して使用するばあい、プレート状あるいは円柱状の比
較的大きな担体を使用するばあいに比べて、細胞の固定
化の際、充填層内における細胞密度のばらつきを少なく
できる利点をもつ。また、粒子状担体の大きさに応じて
充填層内の充填密度を変更でき、また培養液の偏流も少
なくできるため、装置の設計や操作上都合がよい。ま
た、充填層内の圧力損失も小さくできるため、培養液を
流入するに要する所要動力が少なくできる利点をもつ。
【0017】本発明において用いられる細胞としては、
本発明の方法の培養条件下にて生育可能なものであれば
よく、ヒトまたは動物由来の肝細胞、膵ランゲルハンス
島細胞、血管内皮細胞、腎臓細胞、神経細胞、下垂体細
胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、副腎皮質細胞およびマ
クロファージなどの動物遊離細胞、初代細胞があげられ
る。さらに、これらの細胞を株化したものや、遺伝子組
換えや細胞融合などの操作により人為的に変性された細
胞であってもよい。
【0018】本発明の動物遊離細胞の固定化方法は、粒
子状担体を充填した層を少なくとも一部に有する培養器
内において、該担体を充填した層内に細胞を含んだ液を
供給することよりなる。これにより細胞は担体内に保持
され自然に固定化されるので、細胞を担体に固定化する
のに特別な薬剤、操作はとくに必要としない。すなわ
ち、前に述べたような担体の構造上の特性により、細胞
は該担体の細孔に入り込みさえすれば細孔内に容易に捕
捉されそのまま付着でき、また単位体積あたり広い表面
積を有しているため、該担体中での高密度な細胞の固定
化が容易に達成できる。さらに培養器内において該担体
充填層内に培養液を供給することにより細胞は該担体中
でそのまま生育できるため、細胞の高密度培養が実現可
能となる。細胞を含んだ液を担体を充填した層内に供給
する方法としては、培養器内でろ過の要領で細胞を培地
などに懸濁した液を担体を充填した層内に通す方法、乾
燥状態にある親水性が高い担体に細胞懸濁液を含浸させ
る方法などがあげられる。細胞懸濁液を担体充填層に通
すことにより固定化する方法では、細胞懸濁液を担体充
填層にゆっくりと注入することにより、比較的高効率で
しかも充填層内において保持細胞数のばらつきが少ない
状態に固定化できる。また、細胞懸濁液を担体充填層内
に循環しても効率的に細胞を固定化できる。親水性の高
い担体を使用しているばあいには、担体を乾燥状態で培
養器内に充填しこれに細胞懸濁液を加えると、担体の吸
水力によって細胞を細孔内に捕捉させることができる。
このように本発明の方法は細胞の固定化を培養器の内部
で容易にかつ自然に行なうことができるので、固定化の
操作は従来の方法と比べて非常に簡単に短時間で行なう
ことができ、かつ雑菌汚染の可能性も少なくなる。ま
た、本発明の方法による固定化物では、前記のゲル包括
法やホローファイバー法などの固定化法に比べて固定化
担体における拡散抵抗が小さいため、固定化担体内にお
ける培養液中の栄養分や溶存酸素などあるいは血漿中の
細胞が代謝すべき物質の物質移動速度が速いという利点
も有している。このため、担体中にて培養液から栄養分
や酸素などの供給と細胞が産生する物質の排出、あるい
は血漿中の有害物質の代謝が培養器内で容易にかつ効率
的に行なわれ、結果的に細胞を大規模にかつ高密度状態
で培養することが可能となる。
【0019】本発明の動物遊離細胞の培養方法は、前記
の方法で固定化された動物遊離細胞を、培養器内におい
て担体充填層に培養液を供給しながらそのまま生育させ
ることよりなる。すなわち、本発明の方法においては、
粒子状担体は培養器内において充填層の状態で使用され
る。担体に保持された細胞を培養する培養器としては、
撹拌槽型や流動層型の培養器も考えられるが、担体の充
填層を内部に有する培養器は、これらの培養器に比べ
て、培養器内における担体の充填密度や細胞密度を著し
く高くすることができ、また培地の流動などが穏和な条
件のものとで培養を行なえるため、最も好適である。
【0020】本発明の方法において使用される培養液と
しては、通常、細胞の培養に使用されうる一般的な培地
であればよく、血清を加えたものでもよいし、血清を用
いない、いわゆる無血清培地でもよい。本発明の方法を
ハイブリッド型人工臓器に適用するばあいには、通常の
培地のほかに、血液より分離した血漿や血液そのものも
使用される。
【0021】かくして培養器内において細胞は担体中に
保持されているので、培養器からの培養液または血漿な
どの分離がスムーズにかつ簡単に行なうことができる。
したがって、培養器から細胞の生育を阻害する物質を含
んだ古い培養液を抜出し、また新しい培養液や酸素を培
養器に供給することにより、効率的な培養が可能とな
る。培養器から古い培養液を抜出し新しい培養液を供給
する方法は、連続的に行なってもよいし、間欠的に行な
ってもよい。遊離肝細胞を培養しハイブリッド型人工肝
臓として使用するばあいには、有害物質を多く含んだ血
漿などを充填層内に供給することにより、層内の肝細胞
によって有害物質を代謝させることが可能となる。充填
層内に培養液あるいは血漿などを供給する方式はとくに
限定されないが、通常は充填層に対して一定方向に培養
液あるいは血漿などを流す方式が用いられる。もちろ
ん、培養液を流す方向を適時切り換えてもよい。また、
充填層内部の管状の空塔部分に培養液を供給することに
より、培養液を流入方向に分割し、それぞれを半径方向
に流して層内の通過距離を短くすることによって、圧力
損失や層内での栄養分、溶存酸素などの濃度勾配を小さ
くできるラジアルフロー方式を採ってもよい。これらの
形式は充填層の大きさや使用する細胞によって適宜決定
される。
【0022】培養器への酸素供給手段としては、培養器
へ酸素を含有するガスを直接吹き込んでもよいし、培養
器内で酸素を含有するガスを培養液の表面に吹き付ける
ことで供給してもよいし、酸素を含有する流体から膜な
どを介して間接的に供給してもよいし、酸素の溶解度が
高い液状酸素キャリヤーを利用してもよい。また培養器
から抜出した培養液に酸素を供給したのち再び培養器に
送り返すことも可能である。このばあいには、培養器か
ら抜出した培養液から同時に目的有用物質を回収し、ま
た生育阻害物質を除去したのちに培養器に送り返しても
よい。
【0023】つぎに実施例にもとづいて本発明をさらに
詳しく説明するが、本発明はもとよりこれらに限定され
るものではない。
【0024】実施例1 (1)細胞 体重 150〜250gのウイスター系ラットからコラゲナーゼ
灌流法(ピー オーセグレン、メソッズ セル バイオ
ロジー(P.O.Seglen、Methods Cell Biol.)、13巻、29
頁(1976)参照)により遊離肝細胞をえた。肝細胞は生
存率が80%以上のものを使用した。
【0025】(2)培地 培養用純水1リットルにウィリアムスE培地(William´
s medium E)(フロウ・ラボラトリーズ製)を11g、炭
酸水素ナトリウム 2.2gを溶解したものに、デキサメサ
ゾン(dexamethasone )0.1 μM、インスリン(insuli
n )0.1 μM、アプロチニン(aprotinin )5,000KIU/
l、ペニシリンG(penicillin G)20,000IU/l、ストレ
プトマイシン(streptomycin)20mg/l、アンフォテリシ
ンB(amphotericin B)50μg/lを加えて基本培地とし
た。培養開始後18時間までの培養初期段階では基本培地
に牛胎児血清(ギブコ・オリエンタル製)を10%添加し
たもの(以下、血清添加培地という)を使用した。な
お、培地は交換前にしばらく炭酸ガス培養器内に入れ、
pHを調整したのち使用した。
【0026】(3)培養装置 実験に使用した培養装置を図1に示す。培養槽1は、内
径12.2mm、直胴部の高さ60mmのガラス製である。リザー
バー2内の培地はポンプ3によって培養槽内に供給さ
れ、培養槽より出た培地は再びリザーバーへと循環され
る。リザーバー内の培地は恒温槽4により37℃に保た
れ、したがって培養槽も37℃に保たれる。培地への酸素
供給は、除菌フィルター8、加湿槽5を通したガスをリ
ザーバーに上面通気することにより行なわれる。ガスに
は95%の空気と5%の二酸化炭素の混合ガスを用い、ガ
ス流量は50ml/minとした。
【0027】(4)細胞の固定化 微孔性の立体網状多孔質構造を有する担体として、ポリ
ビニルホルマール樹脂シート(カネボウ化成(株)製、
カネボウスポンジシート、品名ベルイーター、品番A-34
10(平均孔径:250 μm))を使用し、これを2×2×
2mmの粒子状に切断した。これらの粒子250 個を培養槽
1に充填し、培養装置全体を120 ℃、20分間高圧蒸気滅
菌した。その後、担体をコラーゲンコートするために、
0.03%コラーゲンを含有する0.02N 酢酸に一晩浸潤した
のち、リン酸バッファー(以下、PBSと略す)および
基本培地で洗浄した。
【0028】つぎに、コラゲナーゼ灌流法によりえた遊
離肝細胞を2×106 cells/mlとなるように血清添加培地
に懸濁したのち、細胞懸濁液10mlを培養槽上部より培養
槽内に注入することにより、細胞を播種、固定化した。
このとき培養槽下部より流出した細胞数を数え、注入し
た細胞数から差引くことにより培養槽内に保持された細
胞数を求めたところ、注入細胞数の73%が保持されてい
ることがわかった。
【0029】また比較のための対照用実験として、35mm
のプラスチック製ディッシュ(ファルコン製、1008)を
コラーゲンコートし、PBSと基本培地で洗浄したの
ち、細胞を5×105 cells/mlの濃度となるように血清添
加培地に懸濁して、細胞懸濁液2mlをディッシュに分注
して播種し、単層培養を行なった。
【0030】(5)培養 前記の播種、固定化操作を行なったのち、リザーバー内
の血清添加培地(30ml)を約1.5ml/min の流量でポンプ
により循環して灌流培養を開始した。培養開始後3時間
目で培地の全量を新しい血清添加培地に交換し、流量を
約6.0ml/min に増やして培養を継続した。培養18時間目
に、培地を基本培地に1mMアンモニアを添加したもの
(以下、アンモニア添加培地という)と交換し、培地中
のアンモニア濃度および尿素濃度の経時変化をアンモニ
ア測定キット(アンモニアテストワコー、和光純薬製)
および尿素窒素測定キット(尿素窒素テストワコー、和
光純薬製)を用いてそれぞれ測定することで、固定化肝
細胞のアンモニア代謝能ならびに尿素合成能を調べた。
なお、アンモニア代謝能および尿素合成能は、培地をア
ンモニア添加培地に交換後2時間目の測定値を用いて検
討した。また、培養開始30時間後、充填層内の担体をそ
の位置に応じて3つに分けて取出し、細胞を超音波細胞
破砕機にて破砕して蛍光色素法(シー エフ ブランケ
ット(C.F.Brunket )ら、アナリティカル バイオケミ
ストリー(Analytical Biochemistry )、92巻、497 頁
(1979)参照)により、それぞれの位置における固定化
細胞密度を測定した。
【0031】対照用実験については炭酸ガス培養器内で
培養を行なったが、培地交換の時間ならびに培地の種類
は固定化灌流培養と同様である。培養開始30時間後、デ
ィッシュ上で生育した肝細胞をかきとり、固定化灌流培
養のときと同様の方法で細胞数を測定した。
【0032】固定化灌流培養の結果、担体への固定化細
胞密度は充填層全体の平均値で4.30×106 cells/(1cm
3 担体)であり、各部分における分布は、上部には32.4
%、中部には35.3%、下部には32.3%でありほとんど均
一に細胞は固定化されていた。一方このときの対照用実
験の結果は5.74×105 cells/mlであったため、多孔質体
を担体とする充填層型培養器によって、細胞密度は約7.
5 倍に増加していることがわかる。また固定化された細
胞が本来の機能を維持しているかどうかを確認するた
め、アンモニア代謝能と尿素合成能を測定したが、固定
化灌流培養のばあいはアンモニア代謝能が29.8 nmole/h
/(105 cells)、尿素合成能が64.1 nmole/h/(105 cells)
であったのに対して、対照用実験ではそれぞれ30.5 nmo
le/h/(105 cells)と 55.1 nmole/h/ (105 cells)であ
り、明確な違いはみられなかったことから、固定化され
た細胞は本来の機能を有したままであると考えられる。
【0033】実施例2 実施例1で使用した担体以外に、平均孔径の異なるポリ
ビニルホルマール樹脂シート(カネボウ化成(株)製、
カネボウスポンジシート、品名ベルイーター、品番A-33
10(平均孔径:100 μm)、A-3510(平均孔径:500 μ
m))も用い、培養槽内に注入する細胞懸濁液の濃度と
量を変更した以外は、実施例1と全く同様に行なった。
【0034】実験条件、すなわち細胞懸濁液濃度、懸濁
液量、および担体平均孔径を表1に、固定化細胞密度お
よび細胞の分布の測定結果を表2に、対照用実験との細
胞密度の比較を表3に、アンモニア代謝能の測定結果を
表4に、尿素合成能の測定結果を表5にそれぞれ示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】まず表2より、細胞はかなりの高密度で培
養槽内に固定化されていることがわかる。全体的な傾向
として、注入した細胞濃度を高めたものは固定化細胞密
度も高くなっており、担体の細孔径の違いによる固定化
密度の差は明確にみられなかったことから、すべての担
体で良好に固定化されていることがわかる。多いもので
は1×107 cells/(1cm3 担体)以上の結果がえられて
いるが、これは従来の結果と比較してもかなり高い値と
なっている。また培養槽内において細胞が比較的均一に
固定化されていることからも本発明の有効性が確認でき
る。
【0041】つぎに各実験と並行して行なった対照用実
験の培養結果に比べて、固定化灌流培養では何倍の細胞
密度がえられているかを示したのが表3である。この表
より、多いものでは単層培養の30倍以上の密度で細胞は
固定化されており、細胞を高密度かつ大量に培養するば
あいに本発明方法が非常に有利であることを示してい
る。
【0042】表4と表5から、固定化細胞密度が比較的
低いもの(Run 2、3)では細胞の機能は単層培養の結
果と同様、あるいはわずかに高い結果がえられた。した
がって、固定化された細胞はこの程度の密度では良好に
生育しているものと考えられる。固定化細胞密度が高い
もの(Run 5、7、8、9)ではわずかに機能の低下が
みられるものの固定化密度が高いため、装置全体からみ
れば高活性を有している。最終的な細胞密度はこれらの
点を考慮しながら決定される。
【0043】実施例3 遊離肝細胞懸濁液濃度を1.2 ×107 cells/ml、懸濁液量
を5mlとし、実施例1と同様にコラーゲンコートした担
体と、コラーゲンコートせずに高圧蒸気滅菌後PBSお
よび基本培地で洗浄した担体を用いた以外は実施例1と
同様の操作を行なった。細胞注入時に培養槽内に保持さ
れた細胞数は、コラーゲンコートしたものが注入細胞数
の79.2%、コラーゲンコートしなかったものが77.0%で
あった。
【0044】培養終了後、担体への固定化細胞密度を測
定した結果、コラーゲンコートしたものでは6.65×106
cells/(1cm3 担体)(細胞数の分布は、上部:30.8
%、中部:37.7%、下部:31.5%)であり、コラーゲン
コートしなかったものでは7.14×106 cells/(1cm3
体)(細胞数の分布は、上部:30.8%、中部:36.9%、
下部:32.3%)であった。尿素合成能測定結果について
はコラーゲンコートしたものが124.4 nmol/h/(105 cell
s)で、コラーゲンコートしなかったものが157.1nmol/h/
(105 cells)であった。
【0045】両者の間で、固定化細胞密度ならびに細胞
の機能において明確な違いがみられなかったことから、
本発明方法を用いることにより少なくとも血清培地存在
下では細胞を固定化するための特別な操作を行なわなく
ても、良好に培養できることがわかる。
【0046】実施例4 (1)細胞 実施例1と同様の方法にて遊離肝細胞をえた。
【0047】(2)培地 培養用純水1リットルにL-15 (Leibovitz´s L-15)培
地(ギブコ・オリエンタル製)14.7gを溶解したもの
に、デキサメサゾン 0.1μM、インスリン 0.1μM、ア
プロチニン 5,000KIU/l 、ペニシリンG 20,000IU/l 、
ストレプトマイシン 20mg/l 、アンフォテリシンB 50
μg/l を加えてpHを7.4 に調整して基本培地とした。培
養開始後22時間までの培養初期段階では基本培地に牛胎
児血清(ギブコ・オリエンタル製)を10%添加した血清
添加培地を使用した。
【0048】(3)培養装置 ガスに空気を使用した以外はすべて実施例1と同様のも
のを用いた。
【0049】(4)細胞の固定化 細胞懸濁液濃度を2.45×107 cells/ml、懸濁液量を3ml
とし、対照用実験に1×106 cells/mlの濃度で2ml播種
したものを用いた以外は実施例1と同様に行なった。固
定化培養の培養槽内には注入細胞の91%が保持されてい
た。
【0050】(5)培養 前記の播種、固定化操作を行なったのち、リザーバー内
の血清添加培地40mlを約1.5ml/min の流量で循環し固定
化灌流培養を開始した。培養開始後3時間目で全量を新
しい血清添加培地に交換し、流量を約6.0ml/min に増や
して培養を継続した(なお、以後培地交換は、すべて全
量交換である。)。その後、培養22、44、67、96、119
、144 、164 、188 および213 時間目に培地交換を行
なった。このうち22、44、67、119 、164 、213 時間目
の培地交換においては基本培地に1mMアンモニア(この
濃度は重症の肝不全時の血中アンモニア濃度に匹敵す
る)を添加した疑似血液に交換し、96、144 、188 時間
目には基本培地に交換した。対照用実験についても、同
じ時間で同じ培地に交換を行なった。
【0051】固定化灌流培養では、培地交換の前後およ
び疑似血液に交換後6時間目で、また対照用実験につい
ては培地交換の前後で培地のサンプリングを行ない、培
地中の尿素濃度およびLDH活性を生化学自動分析装置
(ベックマン製、ASTRA8)にて測定した。また疑
似血液に交換後、0、1、2、4および6時間目におい
て、疑似血液中の尿素濃度を実施例1と同様の方法にて
測定し、疑似血液交換直後の尿素濃度変化を詳細に調べ
た。
【0052】図2に固定化灌流培養(以下、PVFと記
載)、および対照用実験(5×105 cells/ml(2ml)で
播種したものは1e6、1×106 cells/ml(2ml)で播
種したものは2e6と記載。以下同様)の培地中、ある
いは疑似血液中の尿素濃度の経時変化を示す。図3に
は、疑似血液交換後の詳細な尿素濃度経時変化より求め
た尿素合成能と培養時間との関係を示す。また、図4に
は、固定化灌流培養と対照用実験における累積のLDH
活性と培養時間との関係を示す。
【0053】図2より生成尿素量は時間とともに減少し
ているものの、200時間以上という肝細胞培養としては
かなりの長期間培養の培養後期においても、少なからず
尿素合成能を有していることがわかる。またとくに培養
後期においては、単層培養を行なった対照用実験と比較
して、固定化灌流培養の方が良好に尿素合成能を維持し
ている。また、図3より、対照用実験の結果は2つの播
種条件ともに同様の傾向で尿素合成能が低下しているの
に対し、固定化灌流培養の結果では対照用実験と比較し
て、尿素合成能の低下の割合が少ないことがわかる。図
4でLDH活性は細胞の障害の尺度として測定したが、
全体の細胞数が違うためその値自体には差があるもの
の、いずれの培養条件においても培養開始後約40時間以
降はほとんどLDH活性は検出されていない。したがっ
て、固定化灌流培養においても培養開始後40時間以降は
安定に培養されており、培養が安定化されるまでの時間
も単層培養と変らないことがわかる。
【0054】以上の結果から、本発明方法により遊離肝
細胞は長時間培養可能であり、単層培養の結果よりも細
胞の機能の低下の割合が少なかったことからも、本発明
方法の有効性が説明できる。
【0055】比較例1 (1)細胞 実施例1と同様の方法にて遊離肝細胞をえた。
【0056】(2)培地 実施例1と同じ培地を使用した。培養開始後20時間目ま
では血清添加培地を使用し、その後24時間は基本培地を
用いて培養した。
【0057】(3)培養装置 実験に使用した培養装置を図5に示す。リザーバー11は
内径36mm、高さ60mmのアクリル製で、その底部に直径40
mmの円形のプレート状担体12が保持されている。リザー
バー内の培地は担体を通り、ポンプ13により再びリザー
バー内へと循環される。装置全体を37℃に保たれている
炭酸ガス培養器内に入れ、培養を行なった。
【0058】(4)細胞の固定化 担体として実施例1で使用したものと同じポリビニルホ
ルマール樹脂シートを使用し、直径40mm、厚さ2mmのプ
レート円盤状に切断した。これを60mmのディッシュに入
れ、実施例1と同様の方法で高圧蒸気滅菌ならびにコラ
ーゲンコートを行なった。
【0059】つぎに、実施例1と同様の方法にてえた遊
離肝細胞を 2.0×106 〜1.26×107 cells/mlとなるよう
に血清添加培地に懸濁したのち、細胞懸濁液4mlをディ
ッシュ内で担体の上から滴下することにより細胞を担体
に播種、固定化した。
【0060】また、対照用実験については、実施例1と
同様に行なった。
【0061】(5)培養 前記の播種、固定化操作を行なったのち、2時間はその
ままディッシュ内で静置培養を行なった。培養開始後2
時間目で担体を装置に組込み、リザーバー内に血清添加
培地を30ml添加し、約10ml/minの流量で循環して灌流培
養を開始した。20時間目で培地を基本培地に交換して24
時間培養したのち、44時間目で基本培地に1mMアンモニ
アを添加したアンモニア添加培地に交換し、アンモニア
代謝能、および尿素合成能を実施例1と同様の方法で測
定した。培養終了後担体を取出し、実施例1と同様の方
法にて固定化細胞密度を測定した。対照用実験について
は、実施例1と同様に行なった。
【0062】固定化培養の結果、担体への固定化細胞密
度は最大で5.02×106 cells/(1cm3 担体)であった。
一方このときの対照用実験の結果は、3.94×105 cells/
mlであったことから、単層培養の13倍の細胞密度はえら
れたものの、固定化充填層培養において良好に培養され
たものと比較すれば、固定化細胞密度は半分以下である
ことがわかる。なおこのときのアンモニア代謝能、およ
び尿素合成能の値はそれぞれ 20.5nmol/h/(105 cell
s)、68.3nmol/h/(105 cells)であり、固定化充填層培養
の結果と変らなかった。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、物理的強度が高く化学
的にも安定でかつ容易に入手できる微孔性の立体網状多
孔質構造を有する粒子状担体ならびに該粒子状担体を充
填した培養装置を用いることにより、簡単な手段による
固定化法を利用して、細胞を該担体中に保持せしめた状
態で効果的に生育せしめることができる。したがって、
本発明の粒子状担体充填層を用いる方法によれば容易に
細胞の高密度培養が達成できるので、有用生理活性物質
の生産、ハイブリッド型人工臓器などに利用することが
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で示した、本発明の培養方法を実施す
るための培養装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例4で示した本発明の方法により行なった
遊離肝細胞の固定化培養実験、および対照用実験の培地
中の尿素濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例4で示した各培養条件下における尿素合
成能の経時変化である。
【図4】実施例4で示した各培養条件下における累積の
LDH活性の経時変化である。
【図5】比較例1で示した、これまで立体網状多孔質構
造を有する担体を用いて動物遊離細胞を培養する際に、
本発明者らが使用していた培養装置の一例を示す概略図
である。
【符号の説明】
1 充填層型培養槽 2 リザーバー 3 ポンプ 4 恒温槽 5 加湿槽 6 トラップ 7 ガス流量計 8 除菌フィルター 11 リザーバー 12 プレート状担体 13 ポンプ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微孔性の立体網状多孔質構造を有する粒
    子状の担体に動物遊離細胞を固定化してなる動物遊離細
    胞固定化物。
  2. 【請求項2】 微孔性の立体網状多孔質構造を有する粒
    子状の担体からなる充填層部分を有する培養器内におい
    て、該充填層内に動物遊離細胞を含有する液を供給する
    ことにより、該動物遊離細胞を該担体中に保持させるこ
    とを特徴とする動物遊離細胞の固定化方法。
  3. 【請求項3】 動物遊離細胞を培養するに際し、微孔性
    の立体網状多孔質構造を有する粒子状の担体からなる充
    填層部分を有し、該充填層内に培養液を供給させる培養
    器を使用し、該動物遊離細胞を該培養器内で該担体中に
    高密度に保持させたのち、該動物遊離細胞を該担体中に
    てそのまま生育せしめて培養することを特徴とする動物
    遊離細胞の培養方法。
JP3241947A 1991-09-20 1991-09-20 動物遊離細胞の固定化物、固定化方法および培養方法 Pending JPH0576364A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP0881287A2 (en) * 1997-05-29 1998-12-02 Japan Science and Technology Corporation Carrier for microorganism containing diffused microelements and inorganic nutrient salts
US6303375B1 (en) 1998-06-23 2001-10-16 Terumo Kabushiki Kaisha Cell supporting matrix, cell culture device, and fluid treating device
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WO2020203769A1 (ja) * 2019-03-29 2020-10-08 積水化学工業株式会社 細胞培養用足場材料、細胞培養用容器、細胞培養用繊維及び細胞の培養方法

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