JPH057619A - 血清不含医療用規定溶液およびその溶液を用いた角膜の保存方法 - Google Patents

血清不含医療用規定溶液およびその溶液を用いた角膜の保存方法

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JPH057619A
JPH057619A JP3152056A JP15205691A JPH057619A JP H057619 A JPH057619 A JP H057619A JP 3152056 A JP3152056 A JP 3152056A JP 15205691 A JP15205691 A JP 15205691A JP H057619 A JPH057619 A JP H057619A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】角膜の移植に際し、提供者の角膜を移植前の保
存中、視覚組織、特に角膜組織を強化する物質または方
法を提供することを目的とし、また、低温保存中、正常
な生理代謝と角膜の脱腫脹を維持することによって角膜
組織の生存力を強化し、さらには、眼組織、特に角膜組
織が新鮮な組織の特徴を維持できる期間を延長すること
を目的とする。 【構成】水性栄養素および電解液、グリコサミノグリカ
ン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩衝剤、抗酸化剤、膜安定
剤、抗生物質および/または抗真菌剤、ATP前駆物質
並びに細胞栄養補助剤からなることを特徴とする血清不
含医療用規定溶液と、角膜の移植に際して、該血清不含
医療用規定溶液を用いた角膜の保存方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医療用規定栄養水溶液
中での眼組織の保存、一層詳細には、提供者の角膜組織
の切除から移植までの間のヒト角膜組織の保存および劣
化の防止に関する。
【0002】
【従来の技術】角膜移植は、角膜の病気に冒された多く
の人の視覚回復に有効である。この方法は広く受け入れ
られているが、例外なくドナー組織の有効性不適合によ
って著しく妨げられている。この問題は保存溶液の緊急
開発を促し、MKTM−保存媒体および硫酸コンドロイチ
ン含有媒体の開発がなされ、ドナー組織の品質の有効性
に良好な影響を与えた。
【0003】この分野では、提供された角膜の保存時間
を延長し、移植の成功の大きな要因となる生存内皮を保
持するという観点のもとに研究が続行された。今日の技
術では、通常の室温では、2〜3日以上は組織を適性に
保存できないが、4℃では14日未満の角膜保存が報告
されている。角膜基質の腫張が増加することによって示
されるように、96時間以上の保存は上皮破壊および角
膜の透明度の喪失が起こる。この基質浮腫は角膜内皮
(角膜基質を裏打ちする特別な細胞層)の障害物ポンプ
機能の維持が低下するためである。
【0004】角膜保存後の浮腫と維持された角膜の脱腫
脹の機能的状態は臨床的に非常に重要であり、そして外
科手術の結果の成否に直接影響を与える。角膜の透明度
を維持するには、相対的に脱水状態を維持するのが角膜
の有効性にとって重要である。角膜の脱腫脹は基本的に
内皮細胞によって行われるエネルギ依存現象である。角
膜を生存状態にしておくには、高レベルのATPによっ
て維持されたエネルギ依存機能を保持するために種々の
酵素反応が行わなければならない。
【0005】角膜の4℃保存法における低温は、角膜の
代謝速度を遅くするが、保存用媒体は角膜の基本的要求
を満たすものでなければならない。従って、角膜保存媒
体は、均衡のとれた塩、アミノ酸、エネルギ源、抗酸化
剤、緩衝剤、膜安定剤、グリコサミノグリカン、脱腫脹
剤および抗生物質の複雑な混合物となる。温度を低下さ
せることは膜脂質、蛋白質および水の構造を変化させ
る。なお、それぞれのものは、能動拡散、担体−基体相
互作用およびカップリング関係の容易性を妨げることに
よって能動輸送機構を変えることができる。このように
形態学的および生化学的変化と膜機能の障害は、低代謝
速度と非常に大きな因果関係があると考えられる。従っ
て、イオンおよびアミノ酸組成、炭酸水素塩平衡、利用
可能なエネルギ源、溶解酸素レベル、浸透圧モル濃度お
よびpH等の生理学的パラメータのしっかりした評価を
各保存媒体についてなされるべきである。拡張4℃保存
に関するパラメータは、保存中に受ける細胞劣化の回復
力について定義されるであろう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、成人角膜内
皮の再生力は限度があり、有糸分裂像はin vivo
では滅多に観察されない。in vivoでのヒト角膜
内皮は、通常、細胞移動によって損傷部位へ移動して外
傷に対応する。しかし、in vivoにおける内皮細
胞有糸分裂は、ウナギ、ネコおよび霊長類で示されてい
る。組織培養では、有糸分裂はウナギおよびヒト角膜内
皮で観察されている。In vitroにおける角膜の
慣例損傷および機械損傷後のオートラジオブラフィーチ
ミジン摂取に関する研究は単層内皮での有糸分裂像の存
在を証明している。外科手術による外周および疾患は内
皮細胞の損失を促進し、さらに角膜を傷つける。このよ
うに角膜内皮の長期保存および強化は眼組織のアイバン
クでの保存の非常に重要な点である。
【0007】角膜組織の保存および取り扱いに係る組織
概論は、Corneal Surgery 、1−4章、1−128頁
[医学博士 フェデリック エス.ブライトビル(Fede
rick S. Brightbill, M.D.)編集、シー. ブイ. モスビ
ー社(C.V. Mosby Company)、ミズーリ州セントルイス
市、1986年]に記載されている。種々の保存媒体お
よび方法が提案され、そして最近の研究は、ドナーから
組織を摘出し移植するまでの間ドナー組織の品質を維持
し実際に強化し、角膜組織の保存期間を延長する方法で
続けられている。
【0008】従って、本発明は移植前の保存中、視覚組
織、特に角膜組織を劣化を防ぐ物質または方法を提供す
ることを目的とする。本発明は一面において低温保存
中、正常な生理代謝と角膜の脱腫脹を維持することによ
って角膜組織の生存力を強化する。本発明の別の面で
は、眼組織、特に角膜組織が新鮮な組織の特徴を維持で
きる期間を延長する。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明は、水性栄養素および電解液、グリコサミ
ノグリカン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩衝剤、抗酸化
剤、膜安定剤、抗生物質および/または抗真菌剤、AT
P前駆物質並びに細胞栄養補助剤からなることを特徴と
する。
【0010】また、本発明は、 a. イーグル最少必須培地(MEM)、TC199培
地、およびイーグル最少必須培地とTC199培地の混
合培地からなる群から選ばれる水性栄養素および電解液
と、 b. 硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸デル
マチン、硫酸ヘパリン、硫酸ヘパラン、硫酸ケラチン、
硫酸ケラタン、およびヒアルロン酸からなる群から選ば
れる0.01mg/mlから100mg/mlのグリコ
サミノグリカンと、 c. デキストラン、硫酸デキストラン、ポリビニルピ
ロリドン、ポリエチレングリコール、酢酸ポリビニル、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキ
シプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる
0.01mg/mlから100mg/mlの脱腫脹剤
と、 d. グルコース、ピルベート、シュークロース、フル
クトース、およびデキストロースからなる群から選ばれ
る0.05mMから10mMのエネルギ源と、 e. 炭酸水素塩緩衝液、およびHEPES緩衝液から
なる群から選ばれる0.1mMから100mMの緩衝剤
と、 f. アスコルビン酸、2−メルカプトエタノール、グ
ルタチオン、およびα−トコフェロールからなる群から
選ばれる0.001mMから10mMの抗酸化剤と、 g. ビタミンA、ビタミンB、レチン酸、エタノール
アミン、ホスホエタノールアミン、セレン、およびトラ
ンスフェリンからなる群から選ばれる0.01mg/m
lから500mg/mlの膜安定剤と、 h. アンホテリシン−B、硫酸ゲンタマイシン、硫酸
カナマイシン、硫酸ネオマイシン、ナイスタチン、ペニ
シリン、トブラマイシン、およびストレプトマイシンか
らなる群から選ばれる0.1μg/mlから1mg/m
lの抗生物質および/または抗真菌剤と、 i. アデノシン、イノシン、およびアデニンからなる
群から選ばれる0.001mMから10mMのATP前
駆物質と、 j. コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
3)3 、および非必須アミノ酸からなる群から選ばれる
0.001mMから10mMの細胞栄養補助剤と、 からなることを特徴とする。
【0011】また、本発明は、水性栄養素および電解
液、グリコサミノグリカン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩
衝剤、抗酸化剤、膜安定剤、抗生物質および/または抗
真菌剤、ATP前駆物質並びに細胞栄養補助剤からなる
生理的pH、低温(2℃から15℃)でヒト角膜組織を
含む眼組織の保存効果を維持あるいは強化する成分を含
むことを特徴とする。
【0012】また、本発明は、 a. イーグル最少必須培地(MEM)、TC199培
地およびイーグル最少必須培地とTC199培地の混合
培地からなる群から選ばれる水性栄養素、および電解液
と、 b. 硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸デル
マチン、硫酸ヘパリン、硫酸ヘパラン、硫酸ケラチン、
硫酸ケラタン、およびヒアルロン酸からなる群から選ば
れる0.01mg/mlから100mg/mlのグリコ
サミノグリカンと、 c. デキストラン、硫酸デキストラン、ポリビニルピ
ロリドン、ポリエチレングリコール、酢酸ポリビニル、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキ
シプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる
0.01mg/mlから100mg/mlの脱腫脹剤
と、 d. グルコース、ピルベート、シュークロース、フル
クトース、およびデキストロースからなる群から選ばれ
る0.05mMから10mMのエネルギ源と、 e. 炭酸水素塩緩衝液、およびHEPES緩衝液から
なる群から選ばれる0.1mMから100mMの緩衝剤
と、 f. アスコルビン酸、2−メルカプトエタノール、グ
ルタチオン、およびα−トコフェロールからなる群から
選ばれる0.001mMから10mMの抗酸化剤と、 g. ビタミンA、ビタミンB、レチン酸、エタノール
アミン、ホスホエタノールアミン、セレン、およびトラ
ンスフェリンからなる群から選ばれる0.01mg/m
lから500mg/mlの膜安定剤と、 h. アンホテリシン−B、硫酸ゲンタマイシン、硫酸
カナマイシン、硫酸ネオマイシン、ナイスタチン、ペニ
シリン、トブラマイシン、およびストレプトマイシンか
らなる群から選ばれる0.1μg/mlから1mg/m
lの抗生物質および/または抗真菌剤と、 i. アデノシン、イノシン、およびアデニンからなる
群から選ばれる0.001mMから10mMのATP前
駆物質と、 j. コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
3)3 、および非必須アミノ酸からなる群から選ばれる
0.001mMから10mMの細胞栄養補助剤と、 からなる生理的pH、低温(2℃から15℃)でヒト角
膜組織を含む眼組織の保存効果を維持あるいは強化する
成分を含むことを特徴とする。
【0013】また、本発明は、 a. 水性栄養素および電解液としてのイーグル最少培
地(MEM)と、 b. グリコサミノグリカンとしての0.01mg/m
lから100mg/mlの硫酸コンドロイチンと、 c. 脱腫脹剤としての0.01mg/mlから100
mg/mlのデキストランと、 d. エネルギ源としての0.05mMから10mMの
ピルベートまたはデキストロースと、 e. 緩衝剤としての0.1mMから100mMの炭酸
水素塩緩衝液またはHEPES緩衝液と、 f. 抗酸化剤としての0.001mMから10mMの
2−メルカプトエタノールまたはα−トコフェロール
と、 g. 抗生物質および/または抗真菌剤としての0.1
μg/mlから1mg/mlの硫酸ゲンタマイシンと、 h. ATP前駆物質としての0.001mMから10
mMのアデノシン、イノシンまたはアデニンと、 i. 細胞栄養補助剤としての0.001mMから10
mMのコレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
3)3 、または非必須アミノ酸からなる生理的pH、低温
(2℃から15℃)でヒト角膜組織を含む眼組織の保存
効果を維持あるいは強化する成分を含むことを特徴とす
る。
【0014】さらに、本発明は、 a. 水性栄養素および電解液としてのイーグル最少培
地(MEM)と、 b. グリコサミノグリカンとしての2.5%硫酸コン
ドロイチンと、 c. 脱腫脹剤としての1%デキストランと、 d. エネルギ源としての110mg/lピルベートま
たは1000mg/lグルコースと、 e. 緩衝剤としての2200mg/l炭酸水素塩緩衝
液または25mMHEPES緩衝液と、 f. 抗酸化剤としての0.5mM 2−メルカプトエ
タノールまたは0.01mg/α−トコフェロールと、 g. 抗生物質および/または抗真菌剤としての100
mg/l硫酸ゲンタマイシンと、 h. ATP前駆物質としての5mg/lアデノシン、
10mg/lイノシンまたは10mg/lアデニンと、 i. 細胞栄養補助剤としての0.2mg/lコレステ
ロール、10mg/lL−ヒドロキシプロリン、0.0
1mg/ld−ビオチン、0.1mg/lカルシフェロ
ール、0.025mg/lナイアシン、0.05mg/
lp−アミノ安息香酸、0.25mg/l塩酸ピリドキ
シン、1.36mg/lビタミンB12、0.5mg/l
Fe(NO3)3 、または0.1mM非必須アミノ酸からな
る生理的pH、低温(2℃から15℃)でヒト角膜組織
を含む眼組織の保存効果を維持あるいは強化する成分を
含むことを特徴とする。
【0015】
【構成の具体的説明】4℃での角膜保存の中間時点で
は、内皮の機能状態を維持し得る組織保存が提供される
べきである。ヒトおよび動物の眼組織、特に角膜は規定
の血清不含の栄養素補給保存液中で低温でアイバンクに
おける保存中に劣化することなく、しかも実際に強化さ
れることが実験で証明された。血清不含医療用規定溶液
中で保存した場合の好ましくない特徴は回避され、しか
も、低温保存中、正常な生理代謝および角膜脱腫脹を保
持する角膜内皮細胞のポテンシャルは増加する。
【0016】角膜内皮は全角膜層の透明度の保存に関与
する。内皮は種々の角膜層のイオン組成を調整し、それ
によって浸透圧を維持し、角膜を永続的に水和し、一定
の厚さと透明度を保つ。内皮細胞機能の阻害は、結果と
して角膜浮腫を誘発し、透明度の部分的または完全な喪
失を引き起こす。合成樹脂媒体の組成は、保存時間の延
長と温度の低下によって引き起こされる基質水和を増加
させるようにするものでなければならない。
【0017】角膜基質の著しい水分接種力は、膠原線維
間の硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタンまたは硫酸ケ
ラタン等のグリコサミノグリカン(GAGS)の存在に
よる。腫張角膜基質内の膠原線維の電子顕微鏡研究で膠
原線維の直径は正常であり、原線維の直径と大きな相違
はない。この発見は基質の腫張がむしろ原線維間基質の
用量増加によることを示している。さらなる屈折につい
ての研究は角膜がほぼ乾燥した状態から正常厚の3倍ま
で腫張し得るという事実に拘らず原線維の水和は変化し
ないことを示している。角膜をヒアルロニダーゼまたは
セチルピリジニウムクロリドで処理すると、基質主張は
著しく減少する。この研究も主張は原線維間気質で起こ
ることを示している。
【0018】硫酸コンドロイチンのようなグリコサミノ
グリカンは、二糖類の反復単位からなる長い不均衡な多
糖類である。グリコサミノグリカンは多くの糖残基が硫
酸基またはカルボキシル基、またはその両基の存在故に
高く負電荷を帯びている。グリコサミノグリカン鎖は、
伸張ランダムコイルコンホメーションとその質量のた
め、大用量を占める傾向がある。親水性なので、大量の
水を引きつけ、それによって低濃度でさえ水和ゲルを形
成する。この傾向はその高密度の負電荷で非常に強化さ
れ、浸透性に活性カチオンを引きつける。このグリコサ
ミノグリカンの水和力は、分子間マトリクス内において
伸縮力に抵抗し、また、圧縮力と抵抗する腫張圧または
膨圧を生じる。その極性と水和機構によりグリコサミノ
グリカン鎖は水溶性分子の迅速拡散を許容する。
【0019】最近の研究では、プロテオグリカンを基本
とする物質は全体として角膜水和に重要な役割を果たし
ており、異なるプロテオグリカン(それらは異なる水和
力を有する)は角膜全体で水分勾配を確立する役割も果
たしている。角膜全体で硫酸ケラタンおよび4−硫酸ケ
ラタンの拡散は、角膜の非対称水和に直接的に関与す
る。4−硫酸コンドロイチンの濃度は内皮近くより上皮
近くで大きい。硫酸ケラタンは内皮近くでより大きい。
硫酸ケラタンおよび支配的には硫酸ケラタン含有プロテ
オグリカンは、水収着力は大きいが水保持力は小さい。
従って、硫酸ケラタン含有プロテオグリカン勾配(内皮
で最大)は、その収着力が大きいので総水分含量勾配を
上昇させるのに役立つ。反対に、4−硫酸コンドロイチ
ンおよび硫酸デルマタン含有プロテオグリカン(水保持
力が大きい)は上皮近くで最大の結合水勾配を確立する
のに役立つ。この勾配は大気にさらされる角膜の前面の
脱水を減少させるのに役立つ。従って、角膜全体の水分
勾配はプロテオグリカンの拡散とその水収着力および水
保持力と高い相関がある。
【0020】本発明は、硫酸コンドロイチン含有保存溶
液を用いた手術中および手術後の主張を減少させる。角
膜腫張の増加は、長い低温保存中の基質中への硫酸コン
ドロイチンの低分子量部の流入によるらしい。余分な液
体が強膜−角膜縁の切断部を通して吸収される。デキス
トランおよび濃縮硫酸コンドロイチン糖の脱腫脹剤の使
用は、低温保存中の角膜の水和をコントロールする。電
荷的に中性の分子であるデキストランは保存中角膜を腫
張させる過剰の水を浸透圧的に制限し、一方、負に電荷
している硫酸コンドロイチンは実際に細胞膜に結合し、
膜安定効果を付与する。硫酸コンドロイチンおよびデキ
ストランは、保存角膜を取り囲む水性環境中のコロイド
浸透圧を増加することによって基質水和の防止を助け
る。角膜保存中、保存後の角膜脱腫脹の維持は、手間、
移植外科医が出くわす縫合問題、およびそれに続く移植
の失敗の危険を減らすのに臨床的に重要である。
【0021】角膜保存後の内皮機能の状態と角膜の脱腫
脹維持は臨床的に重要であり、基本的に外科手術結果の
成功に寄与する。
【0022】本発明は、細胞栄養補助の使用により中の
細胞の正常な進行性損傷の減少または除去および角膜損
傷治癒の強化を含む。時宜を得た、そして適切な角膜組
織の治癒は視力回復には必要である。
【0023】障害を通して角膜内皮細胞を喪失する。さ
らに内皮細胞は前室を含む手術でしばしば損傷を生じ
る。外傷による損傷または加齢による喪失は内皮細胞の
大きさの成長(デスメ膜(Descemet's membrane )の露
出表面を覆うように移動する)により補われる。臨床例
では、内皮機能不全は、細胞密度よりも細胞サイズ変化
と関係がある。巨大細胞の数の増加の様子は角膜浮腫の
増加に関連がある。巨大細胞の接合は異常である。細胞
接合の異常は、細胞間隙の等価性を増し、角膜への液体
拡散が増加する。ミトコンドリアまたは粗面小胞体等の
小器官密度低下が、巨大細胞では減少する。これらの小
器官は適性な生物ポンプの機能にとって重要である。ポ
ンプ機能が不十分であれば角膜基質へ液体が過剰に蓄積
する。さらに、これらの巨大細胞は拡張外部膜を有し、
低下生物ポンプ部位、増加角膜腫張を伴う機能変化を補
足する。角膜浮腫を惹起する内皮細胞機能障害は、内皮
細胞密度が正常値の40%におちた時、内皮細胞密度の
変化率が3倍から4倍に増加し、巨大細胞の大きさが正
常内皮細胞の7.5倍まで大きくなった時におこること
に注目すべきである。
【0024】前室環境が内皮の細胞再生を制限し、細胞
移動により損傷治癒を助ける。過剰の細胞喪失は巨大細
胞の形成によって補われる。さらに、このような方法で
細胞喪失に対応するように細胞に信号を送るのはヒト角
膜内皮細胞と細胞外マトリクスの複雑な相互作用であ
る。
【0025】本発明は、さらに、細胞代謝、損傷治癒お
よび生存を強化するために追加のアミノ酸、ビタミン、
微量無幾塩類およびエネルギ促進前駆物質を角膜に補給
する栄養溶液を提供する。細胞増殖はDNA合成を導く
事象によって規制され、細胞がDNA合成を続けるかど
うか、あるいは細胞周期の早い段階で停止するかどうか
は、細胞外条件に依存する。細胞代謝は必須栄養素の低
下により、ヘキソース輸送、グリコーゲン輸送、タンパ
ク質合成、アミノ酸およびイオン輸送を増加することに
よって強化することができる。
【0026】新規な栄養素含有溶液は血清不含である。
血清補給溶液は組織培養中、ヒト角膜内皮細胞の制限さ
れた有糸分裂を刺激できるが、ヒトの移植用の組織に使
用するための製品中に血清が存在すると、多くの欠点を
有する。血清はウィルス性疾患等の病気を移す媒体とな
り得る。ヒト由来ではない血清は、免疫反応を誘発し得
る沢山の物質を含み、全ての血清はエンドトキシン等の
物質や成長因子(それらは実際に細胞の有糸分裂を阻止
する)を含有する。これら問題点は本発明の血清不含医
療用規定溶液によって回避される。
【0027】角膜保存液はよく知られている。本発明
は、一般に、水性栄養素および電解溶液、グリコサミノ
グリカン、脱腫脹剤、エネルギ原、緩衝剤、抗酸化剤、
膜安定剤、抗生物質、ATP前駆物質および細胞栄養補
助剤を含む。栄養素および電解溶液は組成培養の当分野
でよく定義されている。このような溶液は、細胞維持お
よび細胞成長に必要な最小濃度で必須栄養素と電解質を
含む。溶液の実際の組成は非常に様々である。一般的に
は、無機塩類(カルシウム、マグネシウム、鉄並びに炭
酸、硝酸、リン酸のナトリウム塩およびカリウム塩、塩
化ナトリウムおよびカリウム塩等)、必須および非必須
アミノ酸、ビタミンおよび他の必須栄養素を含む。
【0028】化学的に規定された基本的な栄養媒体は商
業的に入手可能である。例えば、ギブコ ラボラトリー
(Gibco Laboratories) (ニューヨーク州 グランドア
イランド市 スタンレーロード3175、郵便番号14
073)、およびマイクロバイオロジカル アソシエー
ト(メリーランド州 ウォーカーズヴィル市 ブリッグ
フォールロード 私書箱127、郵便番号21793)
からイーグル最小必須培地(MEM)およびTC199
の名称で市販されている。角膜保存溶液はこれらの栄養
媒体の応用である。
【0029】本発明の血清不含医療用規定溶液は、ME
MおよびTC199にATP前駆物質、ビタミン、アミ
ノ酸および成長促進補助剤を添加した成分からなる。
【0030】本発明の血清不含医療用規定溶液を市販の
角膜保存培地CSMTM(医学博士R.L.リンドストロ
ーム (Lindstrom)および理学士 デブラ L.スケルニ
ック (Debra L.Skelnik)の開発、シロン アフサルマ
イクス社(Chiron Ophthalmics. Inc.) (カリフォルニ
ア州アービン)から市販))、およびTC199(ギブ
コ ラボラトリー(ニューヨーク州 グランドアイラン
ド市)から市販)と表1において比較した。
【0031】本発明の組成物および方法に使用する好適
な血清不含医療用規定溶液は、水性電解液(例えば、イ
ーグル最小必須培地および/またはTC199)、0.
01mg/mlから100mg/mlのグリコサミノグ
リカン(例えば、標準または精製高または低分子量硫酸
コンドロイチン(A、BまたはC異性体)、硫酸デルマ
タン、硫酸デルマチン、硫酸ヘバリン、硫酸ヘバラン、
硫酸ケラチン、硫酸ケラタンおよび/またはヒアルロン
酸)、0.01mg/mlから100mg/mlの脱腫
脹剤(例えば、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリ
ビニルーロリドン、ポリエチレングリコール、酢酸ポリ
ビニル、ヒドロキシメチルプロピルメチルセルロース、
カルボキシプロピルメチルセルロース等の低または高分
子量多糖類)、0.05mMから10mMのエネルギ源
および炭素源(例えば、グルコース、ピルベート、シュ
ークロース、フルクトース、デキストロース)、0.1
mMから100mMの緩衝剤(例えば、炭酸水素緩衝液
およびヒドロキシエチルピペリゼンエタンスルホン酸緩
衝液(HEPES))、生理的pH(好ましくは、6.
8〜7.6)を維持するために0.001mMから10
mMの抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、2−メルカ
プトエタノール、グルタチオン、α−トコフェロー
ル)、0.01mg/mlから500mg/mlの膜安
定剤(例えば、ビタミンAおよびB、レチン酸および/
または補因子、エタノールアミンおよびホスホエタノー
ルアミン、セレンおよびトランスフェリン)、0.00
1mMから10mMの構成物質および/または抗真菌剤
(例えば、アンホテリシン−B、硫酸ゲンタマイシン、
硫酸カナマイシン、硫酸ネオマイシン、ナイスタチン、
ペニシリン、トブラマイシン、硫酸ストレプトマイシ
ン)および0.001mMから10mMのATP前駆物
質、および0.001mMから10mMの細胞栄養補助
剤(例えば、コレステロール、L−ヒドロキシプロリ
ン、d−ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p
−アミノ安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB 12
Fe(NO3)3 、非必須アミノ酸)を含む。
【0032】本発明の血清不含医療用規定溶液は、アイ
バンクでの低温保存後に細胞代謝、細胞生存、損傷治癒
および角膜脱腫脹を強化するのに充分な量のグリコサミ
ノグリカン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩衝剤、抗酸化
剤、膜安定剤、抗生物質、ATP前駆物質および細胞栄
養補助剤を補った水性栄養電解液からなる。摘出角膜を
無菌的に角膜保存溶液の容器に移し、次いで容器を密閉
する。保存および輸送のためには、角膜を低温(例え
ば、2℃〜15℃、最適には4℃)に維持し、細菌繁殖
の危険を最小化し、角膜組織の代謝損傷を減ずる。この
ような低温でも、内皮細胞は14日まで維持できること
が発見された。移植時に、正常角膜の脱腫脹は手術中お
よび手術後も維持される。内皮細胞機能および代謝が維
持され、角膜の永続的水和、そして手術後も一定の厚さ
と透明度が確保される。移植用の生存角膜の提供に加
え、損傷治癒を強化する。
【0033】本発明はその範囲を逸脱することなく種々
の変更が可能である。例えば、本血清不含医療用規定溶
液はいろいろな医療に応用することができ、眼科にのみ
厳密に限定されるものではない。
【0034】
【実施例1】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に
説明するが、これに限定されるものではない。血清不含医療用規定溶液 4℃での角膜保存中間期間は、内皮の機能と移植後の角
膜脱腫脹を維持する組織を保存する。CSMTMとK−S
olTMは4℃で保存するための標準媒体となっている。
カウフマン(Kaufman)H.E.、バーネル(Varnell)
E. D.、カウフマン(Kaufman)S.等で述べられてい
る通り、K−SolTM角膜を保存する。Am. J.Ophtha
lmol 1985、100、299−304、ボルネ(Bo
urne) W.M.2.5%硫酸コンドロイチン中に4℃で
1〜13日保存した移植ヒト角膜の内皮細胞の生存、A
m.J.Ophthalmol 1986、102、382−6、
リンドストローム( Lindstrom) R.L.、スケルニッ
ク(Skelnik)D.L.、マインドラップ(Mindrup) E.
A.等、硫酸コンドロイチン含有媒体での角膜の4℃保
存、Invest Ophthalmol Vis Sci (Suppl) 1987、
28(3)、167、ブーグラ(Bhugra) M.K.、シ
ュガー(Suger)A、メイヤー(Meyer)R.等、MKTM
よびK−SolTM保存の一組の実験結果、Invest Ophth
almol VisSci (Suppl)1988、29、112、およ
びラス(Lass) J.H.、ラインハート(Reinhart)
W.J.、ブルナー(Bruner) W.E.等、ヒト角膜移
植におけるK−SolTMと硫酸コンドロイチン角膜保存
媒体中での角膜保存の比較、Ophthalmology 1989、
96、688−97に記載されている通りである。
【0035】角膜の厚さの増加は、CSMTM保存角膜で
もあり、手術時に明らかに再腫張が起こる。しかし、手
術後1ヶ月正常な角膜厚になる。角膜腫張の増加は、4
℃で長く保存中に硫酸コンドロイチンの低分子量部分が
基質に流入するためであろう。角膜腫張を少なくするた
めに、血清不含硫酸コンドロイチン含有媒体へのデキス
トランの添加が角膜水和を最少化するかどうかをみるた
めの研究がなされた。
【0036】MKTM媒体中の有効な浸透剤であるデキス
トランは角膜を薄く保ち、角膜内皮のバリア機能を有効
に維持する。デキストラン含有媒体中に保存された角膜
は、デキストランのコロイド浸透圧によって主張が抑制
される。デキストランは角膜内皮に浸透し、基質に侵入
する。このデキストランの侵入および排出は、保存期間
および内皮の状態に応じたデキストランの浸透の程度に
より4℃で速やかに起こる。このようにデキストラン
は、硫酸コンドロイチン含有媒体による低温保存に伴う
角膜腫張を減じる魅力的な試薬である。イーグル最少必
須培地(MEM)からなる血清不含医療用規定溶液は、
アールス塩(Earle・s salt) 、炭酸水素ナトリウム、2
5mM HEPES、0.1mM 非必須アミノ酸、1
mM ピルビン酸ナトリウム、2mM L−グルタミ
ン、0.5mM 2−メルカプトエタノール、1.0%
デキストラン、2.5%硫酸コンドロイチンおよび10
0μg/mlゲンタマイシンが添加されている。
【0037】基本媒体にはさらに以下の成分が添加され
ている。
【0038】Fe(NO3)3 ・9H2 O、硫酸アデニン、
コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、アスコルビ
ン酸、リン酸α−トコフェロール、D−ビオチン、カル
シフェロール、ナイアシン、p−アミノ安息香酸、塩酸
ピリドキシン、アデノシン、イノシンおよびビタミンB
12。これらの成分は基本培地を完全に規定するために添
加され、細胞成長と細胞機能を強化する(表1A乃至表
1C参照)。
【0039】この血清不含医療用規定溶液の安全性およ
び有効性を評価するために、4℃で12日間保存したヒ
ト角膜を用いて硫酸コンドロイチン濃度の容量応答曲線
を描いた。硫酸コンドロイチン濃度は、1.5%、1.
75%、2.0%および2.5%であった。角膜厚の測
定は、4℃保存で0日、1日、7日および12日行っ
た。
【0040】さらに、我々の研究室で開発した単離技術
が、自然の内皮の特徴を残しているヒト角膜内皮の第一
次、そして続く継代培養の確立を可能にした。In v
itroで条件をこれらのヒト角膜内皮細胞を増殖状態
に維持し、活発に有糸分裂を行わせる。[ 3H]−チミ
ジン取り込みによって測定するようにDNA合成の刺激
と阻害における種々の試験媒体の効果を評価するために
定量的バイオアッセイが開発された。
【0041】次に、臨床試験を行い、血清不含医療用規
定溶液(配合A)中に保存し、次いで患者に移植した角
膜の厚さおよび生存内皮を評価した。材料および方法 ヒト角膜における硫酸コンドロイチン用量応答曲線 ヒトドナー眼球を生理食塩水(normal sallne )中、
1.0%ヨウ化ポビドン中に3分間浸し、次に生理食塩
水中に1分間浸した。次に、18−ゲージ針装着用シリ
ンジを用いて生理食塩水12ccで洗浄した。年齢また
は死因のために移植には不適当な16対の提供者からの
角膜を死から平均12時間後に認証アイバンクで摘出
し、1・5%、1.75%、2.0%および2.5%硫
酸コンドロイチンを添加した医療用規定溶液20ml中
に放置した。コントロール媒体は市販のDexsolTM
(シロン アフサルマイクス社、カリフォルニア州 ア
ービン)を用いた。角膜を媒体中に入れる前に、成分補
充媒体を室温に暖め、角膜厚を測定した。角膜厚の測定
は、マイクロメーターで調整したロイツ型顕微鏡を用い
て行った。マイクロメーターダイヤル指示器をステージ
上にダイヤル指示器脚部直下ステージを貫通する調整ね
じで顕微鏡スタンドに取り付けた。角膜厚の測定は内皮
にピントを合わせ、調整ねじをダイヤルが“0”になる
ように調整し、上皮が焦点にくるようにステージを上
げ、ダイヤル指示器の目盛りを読み取ることにより行
う。次いで、角膜を4℃に冷却し、12日間保存した。
角膜を保存媒体から取り出し、2mM L−グルタミン
および100μg/mlゲンタマインシを添加したME
M15ml中に入れた。次に、角膜を34℃に2時間暖
め、角膜の中央部厚の測定を加温介し後30、60およ
び120分時に行った。角膜内皮は、最後の角膜厚測定
を行った後、0.1%トリパンブルーおよびアリザリン
レッドSで染色して評価した。ヒト角膜内皮細胞の[ 3H]−チミジン取り込み 14種の媒質成分を以下のようにして試験した。
【0042】Fe(NO3)3 ・9H2 O、硫酸アデニン、
コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、アスコルビ
ン酸、リン酸α−トコフェロール、D−ビオチン、カル
シフェロール、ナイアシン、p−アミノ安息香酸、塩酸
ピリドキシン、アデノシン、イノシンおよびビタミンB
12。成分は別々に、あるいは一緒に、アールス塩、炭酸
水素ナトリウム、25mM HEPES、0.1mM
非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、2m
M L−グルタミン、0.5mM 2−メルカプトエタ
ノール、2.5%硫酸コンドロイチンおよび100μg
/mlゲンタマイシンを添加したイーグル最少必須培地
(MEM)からなる基本媒体に添加した。1.75%お
よび2.0%の硫酸コンドロイチンも試験した。コント
ロール媒体は10%ウシ胎児血清を添加した市販のDe
xsolTM(シロン アフサルマイクス社、カリフォル
ニア州 アービン)およびCSMTMからなる。全ての試
験媒体サンプルは実験時に新たに調整され、室温に暖め
られた。定量的バイオアッセイ 定量的バイオアッセイは血清不含または含有媒体中でイ
ンキュベートされたヒト角膜内皮細胞のDNAの
3H]−チミジンの取り込みに基づく。
【0043】コスター(Coctar)96ウエル組織培養プ
レートの指定された媒体最終容量200μl中に3×1
3 接種した。4代継代したヒト角膜内皮細胞を95%
空気、5%CO2 中、35.5℃で加湿インキュベータ
中に保存した。10%ウシ胎児血清を添加したCSMTM
中で24時間インキュベーション後、媒体を除去し、各
ウエルをアールス塩および25mM HEPES含有血
清不含最少必須培地で一度洗浄した。次に細胞を洗浄
し、適当な試験溶液でインキュベートした。次にヒト角
膜内皮細胞を1microcuvie/ウエルの[ 3H]−チミジ
ンの存在下でさらに72時間インキュベートした。摂取
を放射性媒体の吸引によって終結させ、細胞を血清不含
最少必須培地で2回洗浄した。ヒト角膜細胞を0.5%
トリプシンで剥離し、液体シンチレーション計数用に調
整した。[ 3H]−チミジンカウントは酸不溶カウント
を表す。一元変動分析(One-way analysis of varianc
e)とニューマン−ケウルス マルチプルレンジテスト
(Newman-Keuls multiple range test)を用いて統計的
有意差(p<0.05)を評価した。臨床試験 アイバンク法 ヒトドナー眼球を1.0%ヨウ化ホビドン生理食塩水に
3分間浸し、次に生理食塩水中に1分間浸した。次に、
18ゲージ針装着シリンジを用いて生理食塩水12cc
で洗浄した。適性な提供者からの角膜を平均死後8.6
時間にアイバンクで摘出し、血清不含医療用規定溶液
(配合A)中に入れた。角膜を溶液中に入れる前に該溶
液を室温に戻した。次いで角膜を4℃に冷却し、平均
4.3日間保存した(平均1〜7日)。被移植者の基準 以下の被移植者の診断結果を用いた。
【0044】無水晶体水疱性角膜症、フックスジストロ
フィー、偽水晶体水疱性角膜症、角膜瘢痕、円錐角膜お
よび移植の失敗。手術前の試験は細孔強制視力、眼内
圧、、細隙灯および検眼鏡試験からなる。The United S
tates of Health and Human Servicesのガイドラインに
準拠し、臨床試験の全関係者から同意を得た。この任意
的臨床試験は Institutional Review Board の同意とモ
ニタを得て行われた。手術法 移植時に角膜を室温に戻した。提供者の角膜を角トレフ
ィンプレスを用いて内皮側から切断した。ヒアルロン酸
ナトリウム(Healon)またはヒアルロン酸ナトリウム−
硫酸コンドロイチン(Viscoat )を全てのケースで用い
た。手術中および手術後の治療は全例で略同様である。
縫合術は12インタラプテッド10−0縫合とランニン
グ11−0縫合[ナイロンまたはメルシレン(mersilen
e)]の組み合わせからなる。各施術の最後にゲンタマイ
シン、ベタメサゾンおよびアンセフ(Ancef)を結膜下に
注射した。手術後の処置 手術後全ての患者は最初の1ヶ月1日4回ネオマイシン
またはゲンタマインシ点滴を受けた。必要な場合には代
表的なステロイドを塗布した。手術後最初の2ヶ月間、
患者の合併症、拒絶反応、角膜の欠陥新生、感染症、傷
漏れ(wound leak)、創傷離開、上皮欠損の存続および
全体的な角膜状態を観察した。角膜の超音波膜厚測定
は、手術前、手術後1日、1週間、1ヶ月および2ヶ月
で行った。この研究を行った患者総数は15人である。
角膜膜厚のグループ間差を分析し、対t−テストを用い
て有意差があるかどうか評価した。結論 ヒト角膜におけるデキストラン用量応答曲線 角膜厚についての4℃で12日間インキュベートしたヒ
ト角膜の硫酸コンドロイチン用量応答曲線を図1に示
す。1.35%硫酸コンドロイチン含有DexsolTM
でインキュベートした角膜は、1日、7日および12日
で有効な薄さであった。これらの時点での角膜厚の測定
値は、0.425±0.082mm、0.530±0.
040mmおよび0.572±0.043mmであっ
た。1.5%−2.0%硫酸コンドロイチン含有媒体で
インキュベートした角膜は、同時点で角膜脱腫脹が増加
し、2.5%硫酸コンドロイチンで角膜は最も薄いこと
を示した。インキュベーション後1日、7日および12
日後の角膜厚はそれぞれ0.405±0.021mm、
0.480±0.042mm、0.480±0.028
mmであった。12日間DexsolTM中に保存した角
膜は34℃に暖めた後腫脹は19.6%増加することを
示した。硫酸コンドロイチン1.5%−1.75%に保
存した角膜の加温後の腫脹は統計的には差のない増加で
あった。2.0%および2.5%硫酸コンドロイチン中
に保存した角膜は加温後の腫脹は15.6%および1
3.5%増加を示した(図2)。
【0045】試験した全硫酸コンドロイチン濃度につい
て全ての単層内皮細胞は無傷で、正常な内皮細胞形態で
あった。より高い硫酸コンドロイチン濃度でインキュベ
ートした角膜は基質ひだおよびデスメー膜のアリザリン
レッドS染色域は殆どなかった。全てのアリザリンレッ
ドS染色は全角膜で最小であり、基質ひだの部分に限ら
れていた。結論として、1.35%−2.5%硫酸コン
ドロイチン中に保存した全ての角膜は、4℃で12日間
の保存後も無傷の角膜内皮を有していた。医療用規定溶
液(2.5%硫酸コンドロイチン含有)中に保存された
角膜は12日の保存期間中、最も優れた角膜脱腫脹を維
持した。この試験グループについては34℃に再加温後
の最小の角膜の折り畳みと腫脹も注目に値する。これら
の結果は、移植用に4℃でヒト角膜を保存するのに本発
明の血清不含医療用規定溶液を使用するのを支持するも
のである。ヒト角膜内皮細胞の[ 3H]−チミジン取り込み 血清不含医療用規定溶液の成分を評価するためにこの研
究を行った。
【0046】試験媒体をヒト角膜内皮細胞を用いた[ 3
H]−チミジン取り込みバイオアッセイで評価した。こ
のバイオアッセイはこれらの細胞のDNAへの[ 3H]
−チミジンの取り込みを阻害または刺激するかどうかを
評価するための感度の高い方法である。1または14成
分以上を含む試験溶液でインキュベートしたヒト角膜の
内皮細胞による[ 3H]−チミジンの取り込みを血清不
含DexsolTM培地と10%FBS添加CSMTM培地
と比較した(図3)。統計的有意差(P<0.05)の
評価には、一元変動分析とニューマン−ケウルス マル
チプルレンジテストを用いた。
【0047】このバイオアッセイでは、細胞は増殖状態
(活発に有糸分裂をしている状態)に保った。ヒト角膜
内皮細胞DNAへの[ 3H]−チミジン取り込みの阻害
は、細胞代謝の阻害、細胞状態の悪化および細胞毒の可
能性の指標である。10%FBSを低下したCSMTM
地でインキュベートしたヒト角膜内皮細胞は、新たに調
整したコントロールの血清不含DexsolTM培地と比
較すると、統計的に有意に高い[ 3H]−チミジン取り
込み率を示した。1.75%または2.0%硫酸コンド
ロイチンでインキュベートしたHCE細胞は、血清不含
DexsolTMでインキュベートしたHCE細胞と統計
的に近似した[ 3H]−チミジン取り込み率を示した。
以下の各成分と組み合わせた2.5%硫酸コンドロイチ
ンおよび1%デキストランの添加は、血清不含Dexs
olTMでインキュベーションしたHCE細胞と統計的に
近似する[ 3H]−チミジン取り込み率を示した(成
分:Fe(NO3)3 ・9H2 O、硫酸アデニン、L−ヒド
ロキシプロリン、アスコルビン酸、リン酸α−トコフェ
ロール、D−ビオチン、塩酸ピリドキシン、イノシンお
よびビタミンB12)。アデノミンまたはアデノミン、ア
デミンおよびイノシンの組み合わせを添加した2.5%
硫酸コンドロイチンおよび1%デキストラン添加媒体
は、DexsolTMコントロール培地でインキュベート
したHCE細胞より統計的に大きい[ 3H]−チミジン
取り込み率を示した。全ての14種の成分を補充MEM
基礎培地中、2.5%硫酸コンドロイチンと組み合わせ
ると、DexsolTMコントロールと比べ統計的に大き
い[ 3H]−チミジン取り込み率を示した。試験した全
ての媒体は、72時間のインキュベーション期間を通し
て正常内皮細胞の形態を維持した。
【0048】ヒト角膜内皮細胞を用いた[ 3H]−チミ
ジン取り込みの研究から、結論として、2.5%硫酸コ
ンドロイチン、1%デキストラン、Fe(NO3)3 ・9H
2 O、硫酸アデニン、コレステロール、L−ヒドロキシ
プロリン、アスコルビン酸、リン酸α−トコフェロー
ル、D−ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p
−アミノ安息香酸、塩酸ピリドキシン、アデノシン、イ
ノシンおよびビタミンB 12からなる血清不含医療用規定
溶液(配合A)はバイオアッセイのパラメータによって
評価すると血清不含DexsolTM培地より統計的に大
きく[ 3H]−チミジン取り込み率を刺激できた。この
血清不含医療用規定溶液は、さらに完全な規定溶液を提
供することによって、コントロールDexsolTMより
もヒト角膜内皮細胞の有糸分裂ポテンシャルを強化する
ことができる。従って、この溶液は4℃保存媒体として
使用し得る。臨床試験 15角膜を血清不含医療用規定溶液(配合A)を用い移
植した。一人の外科医によって全患者の手術をし、全患
者について以下の研究を行った。提供者の角膜は以下の
特徴を持っていた。
【0049】角膜の提供者の年齢(平均53±19
才)、死から摘出までの時間(平均4.3±2.7時
間)および死からの保存時間(平均4.3±3.2時
間)。4℃での角膜の保存時間は4.3日であった(1
〜7日)100%配合Aで保存された移植角膜は2ヶ月
でも澄明であった。この患者群中では永続的な上皮欠損
はみられなかった。手術中の角膜厚は0.623±0.
054mmであった。同様の条件のもとでDexsol
TM中に保存した角膜の手術中の厚さの測定値は、0.7
87±0.047mmであった。配合AおよびDexs
olTM保存角膜の1週間時の厚さはそれぞれ0.650
±0.084mmおよび0.743±0.093mmで
あった。配合A保存膜は、手術中および手術後1週間に
おいて有意に薄かった(図4)。2ヶ月の追跡期間中に
全患者で角膜は段々薄くなった(角膜厚:1ヶ月0.6
12±0.167mm、2ヶ月0.544±0.062
mm)。眼内圧は全患者正常範囲内であった。配合A保
存角膜群では基本的に提供角膜に問題はなかった。
【0050】血清不含医療用規定溶液(配合A)は手術
中および手術後に正常角膜脱腫脹を維持するのに有効で
あった。内皮細胞機能および代謝が維持され、角膜の正
常水和を許容し、一定の角膜厚と手術後の透明性が保た
れた。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】TC−199、CSMTMおよび血清不含医
療用規定溶液の配合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】4℃保存後のヒト角膜の角膜厚である。
【図2】4℃12日間保存後および保存後24℃に暖め
るまでの角膜厚である。
【図3】血清不含医療用規定溶液組成物でインキュベー
トしたヒト角膜内皮細胞の[ 3H]−チミジン取り込み
である。
【図4】手術後の角膜厚(mm)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 リチヤード エル.リンドストローム アメリカ合衆国、ミネソタ州 55331、エ クセルシオール、レイクビユー アベニユ ー 20050 (72)発明者 デブラ スケルニツク アメリカ合衆国、ミネソタ州 55008、ケ ンブリツジ、ルート 5、ボツクス 344

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水性栄養素および電解液、グリコサミノグ
    リカン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩衝剤、抗酸化剤、膜
    安定剤、抗生物質および/または抗真菌剤、ATP前駆
    物質並びに細胞栄養補助剤からなることを特徴とする血
    清不含医療用規定溶液。
  2. 【請求項2】a. イーグル最少必須培地(MEM)、
    TC199培地、およびイーグル最少必須培地とTC1
    99培地の混合培地からなる群から選ばれる水性栄養素
    および電解液と、 b. 硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸デル
    マチン、硫酸ヘパリン、硫酸ヘパラン、硫酸ケラチン、
    硫酸ケラタン、およびヒアルロン酸からなる群から選ば
    れる0.01mg/mlから100mg/mlのグリコ
    サミノグリカンと、 c. デキストラン、硫酸デキストラン、ポリビニルピ
    ロリドン、ポリエチレングリコール、酢酸ポリビニル、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキ
    シプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる
    0.01mg/mlから100mg/mlの脱腫脹剤
    と、 d. グルコース、ピルベート、シュークロース、フル
    クトース、およびデキストロースからなる群から選ばれ
    る0.05mMから10mMのエネルギ源と、 e. 炭酸水素塩緩衝液、およびHEPES緩衝液から
    なる群から選ばれる0.1mMから100mMの緩衝剤
    と、 f. アスコルビン酸、2−メルカプトエタノール、グ
    ルタチオン、およびα−トコフェロールからなる群から
    選ばれる0.001mMから10mMの抗酸化剤と、 g. ビタミンA、ビタミンB、レチン酸、エタノール
    アミン、ホスホエタノールアミン、セレン、およびトラ
    ンスフェリンからなる群から選ばれる0.01mg/m
    lから500mg/mlの膜安定剤と、 h. アンホテリシン−B、硫酸ゲンタマイシン、硫酸
    カナマイシン、硫酸ネオマイシン、ナイスタチン、ペニ
    シリン、トブラマイシン、およびストレプトマイシンか
    らなる群から選ばれる0.1μg/mlから1mg/m
    lの抗生物質および/または抗真菌剤と、 i. アデノシン、イノシン、およびアデニンからなる
    群から選ばれる0.001mMから10mMのATP前
    駆物質と、 j. コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
    ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
    安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
    3)3 、および非必須アミノ酸からなる群から選ばれる
    0.001mMから10mMの細胞栄養補助剤と、 からなることを特徴とする血清不含医療用規定溶液。
  3. 【請求項3】水性栄養素および電解液、グリコサミノグ
    リカン、脱腫脹剤、エネルギ源、緩衝剤、抗酸化剤、膜
    安定剤、抗生物質および/または抗真菌剤、ATP前駆
    物質並びに細胞栄養補助剤からなる生理的pH、低温
    (2℃から15℃)でヒト角膜組織を含む眼組織の保存
    効果を維持あるいは強化する成分を含むことを特徴とす
    る血清不含医療用規定溶液。
  4. 【請求項4】請求項3記載の血清不含医療用規定溶液中
    で、提供者の角膜組織を切除し、該組織を保存し、次い
    で該組織受容者である患者に移植することからなる浸透
    角膜移植法において、該組織の保存温度は、約2℃から
    15℃であることを特徴とする血清不含医療用規定溶液
    を用いた角膜の保存方法。
  5. 【請求項5】a. イーグル最少必須培地(MEM)、
    TC199培地およびイーグル最少必須培地とTC19
    9培地の混合培地からなる群から選ばれる水性栄養素、
    および電解液と、 b. 硫酸コンドロイチン、硫酸デルマタン、硫酸デル
    マチン、硫酸ヘパリン、硫酸ヘパラン、硫酸ケラチン、
    硫酸ケラタン、およびヒアルロン酸からなる群から選ば
    れる0.01mg/mlから100mg/mlのグリコ
    サミノグリカンと、 c. デキストラン、硫酸デキストラン、ポリビニルピ
    ロリドン、ポリエチレングリコール、酢酸ポリビニル、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキ
    シプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる
    0.01mg/mlから100mg/mlの脱腫脹剤
    と、 d. グルコース、ピルベート、シュークロース、フル
    クトース、およびデキストロースからなる群から選ばれ
    る0.05mMから10mMのエネルギ源と、 e. 炭酸水素塩緩衝液、およびHEPES緩衝液から
    なる群から選ばれる0.1mMから100mMの緩衝剤
    と、 f. アスコルビン酸、2−メルカプトエタノール、グ
    ルタチオン、およびα−トコフェロールからなる群から
    選ばれる0.001mMから10mMの抗酸化剤と、 g. ビタミンA、ビタミンB、レチン酸、エタノール
    アミン、ホスホエタノールアミン、セレン、およびトラ
    ンスフェリンからなる群から選ばれる0.01mg/m
    lから500mg/mlの膜安定剤と、 h. アンホテリシン−B、硫酸ゲンタマイシン、硫酸
    カナマイシン、硫酸ネオマイシン、ナイスタチン、ペニ
    シリン、トブラマイシン、およびストレプトマイシンか
    らなる群から選ばれる0.1μg/mlから1mg/m
    lの抗生物質および/または抗真菌剤と、 i. アデノシン、イノシン、およびアデニンからなる
    群から選ばれる0.001mMから10mMのATP前
    駆物質と、 j. コレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
    ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
    安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
    3)3 、および非必須アミノ酸からなる群から選ばれる
    0.001mMから10mMの細胞栄養補助剤と、 からなる生理的pH、低温(2℃から15℃)でヒト角
    膜組織を含む眼組織の保存効果を維持あるいは強化する
    成分を含むことを特徴とする血清不含医療用規定溶液。
  6. 【請求項6】請求項5記載の血清不含医療用規定溶液中
    で、提供者の角膜組織を切除し、該組織を保存し、次い
    で該組織受容者である患者に移植することからなる浸透
    角膜移植法において、該組織の保存を約2℃から15℃
    の温度で行うことを特徴とする血清不含医療用規定溶液
    を用いた角膜の保存方法。
  7. 【請求項7】a. 水性栄養素および電解液としてのイ
    ーグル最少培地(MEM)と、 b. グリコサミノグリカンとしての0.01mg/m
    lから100mg/mlの硫酸コンドロイチンと、 c. 脱腫脹剤としての0.01mg/mlから100
    mg/mlのデキストランと、 d. エネルギ源としての0.05mMから10mMの
    ピルベートまたはデキストロースと、 e. 緩衝剤としての0.1mMから100mMの炭酸
    水素塩緩衝液またはHEPES緩衝液と、 f. 抗酸化剤としての0.001mMから10mMの
    2−メルカプトエタノールまたはα−トコフェロール
    と、 g. 抗生物質および/または抗真菌剤としての0.1
    μg/mlから1mg/mlの硫酸ゲンタマイシンと、 h. ATP前駆物質としての0.001mMから10
    mMのアデノシン、イノシンまたはアデニンと、 i. 細胞栄養補助剤としての0.001mMから10
    mMのコレステロール、L−ヒドロキシプロリン、d−
    ビオチン、カルシフェロール、ナイアシン、p−アミノ
    安息香酸、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、Fe(NO
    3)3 、または非必須アミノ酸からなる生理的pH、低温
    (2℃から15℃)でヒト角膜組織を含む眼組織の保存
    効果を維持あるいは強化する成分を含むことを特徴とす
    る血清不含医療用規定溶液。
  8. 【請求項8】請求項7記載の血清不含医療用規定溶液中
    で、提供者の角膜組織を切除し、該組織を保存し、次い
    で該組織受容者である患者に移植することからなる浸透
    角膜移植法において、該組織の保存を約2℃から15℃
    の温度で行うことを特徴とする血清不含医療用規定溶液
    を用いた角膜の保存方法。
  9. 【請求項9】a. 水性栄養素および電解液としてのイ
    ーグル最少培地(MEM)と、 b. グリコサミノグリカンとしての2.5%硫酸コン
    ドロイチンと、 c. 脱腫脹剤としての1%デキストランと、 d. エネルギ源としての110mg/lピルベートま
    たは1000mg/lグルコースと、 e. 緩衝剤としての2200mg/l炭酸水素塩緩衝
    液または25mMHEPES緩衝液と、 f. 抗酸化剤としての0.5mM 2−メルカプトエ
    タノールまたは0.01mg/α−トコフェロールと、 g. 抗生物質および/または抗真菌剤としての100
    mg/l硫酸ゲンタマイシンと、 h. ATP前駆物質としての5mg/lアデノシン、
    10mg/lイノシンまたは10mg/lアデニンと、 i. 細胞栄養補助剤としての0.2mg/lコレステ
    ロール、10mg/lL−ヒドロキシプロリン、0.0
    1mg/ld−ビオチン、0.1mg/lカルシフェロ
    ール、0.025mg/lナイアシン、0.05mg/
    lp−アミノ安息香酸、0.25mg/l塩酸ピリドキ
    シン、1.36mg/lビタミンB12、0.5mg/l
    Fe(NO3)3 、または0.1mM 非必須アミノ酸から
    なる生理的pH、低温(2℃から15℃)でヒト角膜組
    織を含む眼組織の保存効果を維持あるいは強化する成分
    を含むことを特徴とする血清不含医療用規定溶液。
  10. 【請求項10】請求項9記載の血清不含医療用規定溶液
    中で、提供者の角膜組織を切除し、該組織を保存し、次
    いで該組織受容者である患者に移植することからなる浸
    透角膜移植法において、該組織の保存を約2℃から15
    ℃の温度で行うことを特徴とする血清不含医療用規定溶
    液を用いた角膜の保存方法。
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