JPH0570350A - 抗コクシジウム剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 薬剤非耐性のコクシジウムは勿論、特にポリ
エーテル系化合物に対して耐性を獲得したコクシジウム
に対して有効な薬剤を提供する。 【構成】 下式に示す化合物ＦＯ−８８８が強い抗コク
シジウム活性を有することを発見して完成したもので、
化合物ＦＯ−８８８を有効成分として含有する抗コクシ
ジウム剤。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】鶏コクシジウム症は、近年の集約
的養鶏の普及に伴い、ブロイラーや種鶏等の平飼いで飼
育されている場合に多く発生し、高率の死亡、飼料効率
の低下、産卵率の低下等を引起し、養鶏産業に多大の経
済的損失を与える重要な疾病の一つである。本発明は、
かかる疾病の予防および治療を目的としたもので、化合
物ＦＯ−８８８を有効成分として含有する家畜・家禽用
抗コクシジウム剤に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、抗コクシジウム剤としては、サル
ファ剤、キノリン剤、抗チアミン剤、抗生物質等が実用
化されており、最近では、ポリエーテル系抗生物質（例
えば、モネンシン、サリノマイシン、ラサロシド等）が
広く使用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】コクシジウム原虫は、
抗コクシジウム剤に対し耐性を獲得し易いという性質の
ため、抗コクシジウム剤の開発当初の有効性が持続せ
ず、数年にしてその効力を失わせてしまう。したがっ
て、それら耐性を獲得したコクシジウムに対して有効な
新規抗コクシジウム剤の開発が待たれている。特に、現
在抗コクシジウム剤としては、ポリエーテル系抗生物質
が広く使われており、ポリエーテル系抗生物質に対し耐
性を獲得したコクシジウムに有効な薬剤が求められてい
る。本発明の目的は、上記の観点から、薬剤非耐性のコ
クシジウムは勿論、特にポリエーテル系化合物に対して
耐性を獲得したコクシジウムに対して有効な薬剤を提供
するものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、現在広く
使用されているポリエーテル系抗コクシジウム剤に対し
て耐性を獲得したコクシジウムに有効な薬剤を開発する
ことを目的として研究の結果、化合物ＦＯ−８８８が強
い抗コクシジウム活性を有することを発見し、本発明を
完成するに至った。

【０００５】本発明者らは、特にポリエーテル耐性のコ
クシジウムに着目し、ＢＨＫ−２１細胞（ハムスター腎
臓細胞樹立株、大日本製薬）に、ポリエーテル耐性のア
イメリア・テネラ（ Eimeria tenella：コクシジウム原
虫）のスポロゾイト（ Sporozoyte ：図１参照）を接種
培養し、同時に薬剤を作用させて、初代シゾゴニー（Sc
hizogony：図１参照）に対する発育抑制効果の有無から
薬剤の効能を判定するという方法により、多数の化合物
について探索を行なった結果、化合物ＦＯ−８８８物質
が初代シゾゴニーに対し、強い発育抑制効果を有するこ
とを見出した。本発明でいう化合物ＦＯ−８８８は、下
記化１の構造式で示されるものである。

【０００６】

【化１】

【０００７】本化合物は、糸状菌 Humicola sp. ＦＯ−
８８８株の生産する物質であり、その抗コクシジウム活
性は、例えば、初代シゾゴニー抑制効果が培養液当り
０．０５〜０．５μｇ／mlである。本化合物は、薬剤非
耐性のコクシジウムは勿論、ポリエーテル耐性のコクシ
ジウムに対して強い活性を示すのが特徴であり、例え
ば、ポリエーテル耐性のアイメリア・テネラを使用した
鶏インビボ（ in vivo )実験において、ポリエーテル系
抗コクシジウム剤としてモネンシン（８０ppm ／飼料）
では、該アイメリア・テネラの感染を全く防止できな
い。これに対して、本化合物（３０ppm ／飼料）を用い
ると、同株の感染を完全に防止できた。

【０００８】このように、化合物ＦＯ−８８８が抗コク
シジウム作用を有することは、従来知られておらず、本
発明者らが初めて見出した知見である。本発明は、かか
る知見に基づいて完成された発明である。

【０００９】本発明の化合物ＦＯ−８８８の使用にあた
っては、単味または通常の方法、例えば、適当な担体と
共に粉剤、粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、プレミック
ス剤、液剤、乳剤等の剤型にして使用することができ
る。適当な担体としては、通常、飼料用薬剤に利用され
ているものが使用され、例えば、乳糖、蔗糖、でんぷ
ん、麦粉、とうもろこし粉、ふすま、大豆油粕、脱脂米
糠、炭酸カルシウム、その他市販の飼料原料等を挙げる
ことができる。また、本発明化合物は、担体と共に、各
種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、酵素製剤、解
熱剤、鎮静剤、消炎剤、殺菌剤、着色剤、芳香剤、保存
剤等と配合併用して使用することもできる。本発明化合
物の投与濃度としては、投与方法、投与目的、疾病症状
等によって異なるが、通常、飼料中に０．０００５％〜
０．０１％、好ましくは０．００２％〜０．００５％と
なるように配合して投与するのが適当である。

【００１０】

【発明の効果】本発明の抗コクシジウム剤は、下記の実
験例から明らかなように、薬剤非耐性のコクシジウムは
勿論、ポリエーテル耐性のコクシジウムに対して強い活
性を示す。

【００１１】本発明化合物ＦＯ−８８８の抗コクシジウ
ム作用に関する実験例は、次のとおりである。 実験例１ インビトロ（ in vitro ）効果試験 ａ）試験方法 常法により、小ガラス平板上にＢＨＫ−２１細胞を移
殖、培養し、これにポリエーテル耐性のアイメリア・テ
ネラオーシストより調製したスポロゾイトを移殖した。
同時に、各種薬剤の希釈液を感作させ、３日間培養した
後、固定、染色後、顕微鏡観察を実施して、完熟シゾン
ト（ Schizont ）を観察した。

【００１２】ｂ）結 果 化合物ＦＯ−８８８を用いた時の結果について、図２に
示した。図２から明らかなように、０．０５μｇ／ml以
上の濃度で、シゾゴニー抑制作用が見られた。また、
０．５μｇ／ml以上の濃度では細胞毒が見られ、ＢＨＫ
−２１細胞自体に影響が見られた。

【００１３】実験例２ 鶏ヒナにおける効果試験 ａ）試験方法 ８日令の白色レグホン種雄ヒナ５羽を１群として、６群
準備した。各群に所定の薬剤添加飼料を給与飼育し、１
日後（９日令）に、非感染対照区を除くすべての群に、
ポリエーテル耐性のアイメリア・テネラの成熟オーシス
トを、１０⁴ 個／羽 経口投与した。オーシスト感染
後、さらに７日間飼育を続行し、感染後７日目（１６日
令）に解剖して、盲腸病変を観察した。また、その間の
各群の血便排出数、生存率、相対増体率、排出オーシス
ト数を測定した。供試飼料は、抗菌剤無添加の市販幼雛
用標準飼料を用いた。

【００１４】ｂ）試験結果 表１に、ＦＯ−８８８の鶏ヒナコクシジウム症に対する
試験結果を示す。

【００１５】

【表１】

【００１６】ｃ）考 察 上記試験結果から明らかなように、本発明に係るＦＯ−
８８８は、ポリエーテル耐性のアイメリア・テネラに対
し、強い抗コクシジウム作用を示した。

【００１７】

【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明は、これらの実施例の範囲に限定されるものでは
ない。 実施例１ 脱脂大豆粉９０部に、化合物ＦＯ−８８８の１０部を混
和し、粉剤とする。使用時は、これを有効物質濃度０．
００２％〜０．００５％の範囲となるように飼料に添加
して使用する。

【００１８】実施例２ ＦＯ−８８８の５部を、ふすま９５部に混和し、粉剤と
する。使用時は、実施例１に準じて使用する。

【００１９】実施例３ ＦＯ−８８８の１部と乳糖８０部および炭酸カルシウム
１９部を混和し、錠剤とする。使用時は、実施例１に準
じて使用する。

【図面の簡単な説明】

【図１】鶏コクシジウム原虫の発育環である。

【図２】本発明化合物の抗コクシジウム作用に関する効
果試験の結果を示すグラフである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大村 智 東京都世田谷区瀬田５−12−７ (72)発明者 岩井 譲 千葉県成田市加良部２−２−１−９−303

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 化合物ＦＯ−８８８を有効成分として含
   有することを特徴とする抗コクシジウム剤。