JPH057027A - 酸化物超電導薄膜およびその製造方法ならびに超電導トンネル接合およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導薄膜およびその製造方法ならびに超電導トンネル接合およびその製造方法

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JPH057027A
JPH057027A JP3305124A JP30512491A JPH057027A JP H057027 A JPH057027 A JP H057027A JP 3305124 A JP3305124 A JP 3305124A JP 30512491 A JP30512491 A JP 30512491A JP H057027 A JPH057027 A JP H057027A
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superconducting
oxide
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film
layer
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JP3305124A
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Inventor
Yoshiki Ishizuka
芳樹 石塚
Tadao Miura
忠男 三浦
Yoshiaki Terajima
喜昭 寺島
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】基板面に垂直な方向に大きな臨界電流密度およ
びコヒーレンス長が得られる酸化物超電導薄膜を提供す
る。 【構成】活性酸素とBi系、Tl系、Pb系からなる群
より選択される酸化物を構成する一部の金属成分を供給
して基板上に酸化物からなる組成変調膜を形成し、さら
に活性酸素とBi系、Tl系、Pb系からなる群より選
択される酸化物を構成する全部の金属成分を供給して組
成変調膜上に酸化物超電導薄膜を形成することにより、
全c軸のうち基板面に垂直な方向に向いているc軸の割
合を1%以下に抑える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸化物超電導薄膜および
その製造方法ならびに超電導トンネル接合およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジョセフソン接合として知られる超電導
トンネル接合は、最も一般的には2層の超電導体の間に
膜厚10〜1000nmの薄い非超電導体(トンネル
層)を挟んだ構造を有している。この接合は、超高速か
つ低消費電力型スイッチング素子、および磁場、マイク
ロ波、放射線などの超高感度センサとしての応用が期待
されている。
【0003】従来、超電導体としては金属系材料例えば
Nb3 Geが用いられてきた。しかし、金属系材料は臨
界温度が低いことから、冷媒として液体ヘリウムを用い
る必要があり、コストが高くなるという問題があった。
これに対して、複合銅酸化物系の超電導体の発見以降、
液体窒素温度を超える臨界温度を有する超電導材料が実
現され、エレクトロニクス分野への応用の可能性が広が
った。
【0004】液体窒素温度を超える臨界温度を有する複
合銅酸化物系の超電導体としては、Y系のYBa2 Cu
3 7-x 、Bi系の(Bi,Pb)2 Sr2 Can-1
n 2n+4、Tl系のTl2 Ba2 Can-1 Cun
2n+4などが知られている。これらの材料を超電導トンネ
ル接合などのエレクトロニクス分野へ応用する場合、薄
膜化が必要になる。ただし、超電導体を薄膜化しても、
バルク結晶で得られるのと同程度の、転移幅、ゼロ抵抗
温度などの超電導特性が要求される。薄膜化の方法とし
ては、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、クラス
ターイオンビーム法、MOCVD法などが用いられる。
【0005】ところで、酸化物超電導体においては、臨
界電流密度およびコヒーレンス長は大きな異方性を示
し、c軸と垂直な方向で大きな値を示す。すなわち、結
晶中のc軸と垂直な方向にCu−Oで形成される2次元
面が存在し、その面に沿って超電導電流が流れる。同様
に、コヒーレンス長(ξ)に関しても、Cu−O面に垂
直な方向(c軸方向)の値ξc は、Cu−O面に平行な
方向(aまたはb軸方向)の値ξa,b に比べて極端に短
い。例えば、Y系超電導体ではξc =0.51nm、ξ
a,b =3.1nm、Bi系超電導体ではξc =0.21
nm、ξa,b =4.0nmといった値が報告されてい
る。
【0006】前述したような基板−超電導層−非超電導
層(トンネル層)−超電導層の積層構造を有する最も一
般的なジョセフソン素子では、膜厚方向に大きな超電導
電流が流れることが好ましい。ところが、酸化物超電導
体のc軸が基板面および接合面に対して垂直である場
合、超電導電流の伝導は基板面と平行な方向で有利にな
る。この場合、トンネル層を通して超電導電流を流すた
めには、トンネル層の膜厚を0.1nmのオーダーで制
御して超薄膜化しなければならない。しかし、ピンホー
ルなどの発生を考慮すると、現実的にはこのような超薄
膜を形成することは困難である。これらの議論からわか
るように、c軸は基板面および接合面と平行方向(基板
に対して垂直方向から90度傾いた方向)に向いている
ことが最も好ましい。ただし、Cu−O面が膜厚全体に
わたってつながってさえいれば、超電導電流は膜厚方向
に伝導するため、必ずしもc軸が基板と平行方向に向い
ている必要はないと考えられる。
【0007】以上のように酸化物超電導体を用いてジョ
セフソン接合を形成するに際しては、膜の結晶方位が重
要な問題になる。
【0008】Y系の酸化物超電導体に関しては、適当な
基板を選択し、成膜条件を調整することにより、a軸配
向、(110)配向、(103)配向の膜が得られてい
る。また、トンネル層としてPrBa2 Cu3 7-x
どの酸化物半導体を用いることにより、a軸配向の超電
導層を有するジョセフソン接合も得られている。しか
し、Y系酸化物超電導体は大気中での安定性、臨界温度
などの点で劣っている。
【0009】一方、Bi系、Tl系、Pb系の酸化物超
電導体は、大気中での安定性、臨界温度などの点で優れ
ており、ジョセフソン素子には適していると考えられ
る。
【0010】しかし、Bi系、Tl系、Pb系の酸化物
超電導体では、結晶構造の異方性が大きいため、望まし
い配向を有する膜を形成することが困難である。例え
ば、SrTiO3 、LaAlO3 、LaGaO3、Mg
Oなどの単結晶基板の(100)面上に、スパッタリン
グ法、蒸着法、MOCVD法などの方法により、これら
の酸化物超電導体を成膜すると、膜の結晶のc軸は基板
面に対して垂直な方向になる。Bi系、Tl系、Pb系
の酸化物超電導体には、多くの安定相が存在するが、全
ての相で同様な配向が得られる。また、このような配向
を有する超電導薄膜例えばBi系2223相では、超電
導転移のオンセット温度は110Kであり、バルクの値
とほぼ等しい高温が得られる。しかし、転移幅が広く、
ゼロ抵抗温度は80K程度に低下する。
【0011】Bi系酸化物超電導体では、SrTiO3
(110)基板を用い、スパッタリングガスとして純酸
素300mTorr、高周波電力100Wの条件で、ス
パッタリング法により成膜した場合、c軸が基板面に垂
直な方向から約50°傾いた成分を有する膜が得られて
いる。しかし、得られた膜には10%以上のc軸配向成
分が含まれる。また、c軸が基板に垂直な方向から約5
0°傾いた成分に関しても、垂直方向を軸として互いに
対称な2つの方向に成長している。このため、方位の異
なるグレイン間の接合部において結晶性が乱れ、良好な
膜が得られない。
【0012】次に、超電導トンネル接合を形成する場
合、トンネル層としては、MgOなどの絶縁体、Agな
どの常伝導体を用いることもできる。ただし、トンネル
層の上に良質な超電導膜を形成するためには、エピタキ
シャル成長させることが好ましい。このため、例えばB
i系超電導体に対しては、格子定数がよくマッチングし
ているBi2 Sr2 CuOy1などの酸化物半導体を用い
ることが好ましい。しかし、Bi系、Tl系、Pb系の
超電導体の場合、基板上での膜のc軸配向性が強いた
め、現在までのところ、超電導層がc軸配向した接合し
か得られていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、基板
面に垂直な方向に大きな臨界電流密度およびコヒーレン
ス長が得られる酸化物超電導薄膜、およびこのような酸
化物超電導薄膜を有する超電導トンネル接合を提供する
ことにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の酸化物超電導薄
膜は、基板上に形成されたBi系、Tl系、Pb系から
なる群より選択される酸化物からなる酸化物超電導薄膜
において、酸化物の全c軸のうち基板面に垂直な方向に
向いているc軸の割合が1%以下であることを特徴とす
るものである。
【0015】本発明の酸化物超電導薄膜の製造方法は、
活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群より選
択される酸化物を構成する一部の金属成分を供給して、
基板上に酸化物からなる組成変調膜を形成する工程と、
活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群より選
択される酸化物を構成する全部の金属成分を供給して、
前記組成変調膜上に酸化物超電導薄膜を形成する工程と
を具備したことを特徴とするものである。
【0016】本発明の酸化物超電導薄膜の製造方法は、
基板の温度をy(℃)、活性酸素の量とBi系、Tl
系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成する
金属成分の量との比率をxとして、y=850、y=
6.25x+540、y=4x+560の3直線で囲ま
れる範囲内の条件で、活性酸素と金属成分とを供給して
基板上に酸化物超電導薄膜を形成することを特徴とする
ものである。
【0017】本発明の超電導トンネル接合は、基板上に
順次形成された、それぞれBi系、Tl系、Pb系から
なる群より選択される酸化物で構成される、下部の超電
導層、トンネル層および上部の超電導層を有する超電導
トンネル接合において、前記下部の超電導層、トンネル
層および上部の超電導層を構成するそれぞれの酸化物の
全c軸のうち基板面に垂直な方向に向いているc軸の割
合が1%以下であることを特徴とするものである。
【0018】本発明の超電導トンネル接合の製造方法
は、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群よ
り選択される酸化物を構成する一部の金属成分を供給し
て、基板上に酸化物からなる組成変調膜を形成する工程
と、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群よ
り選択される酸化物を構成する全部の金属成分を供給し
て、前記組成変調膜上に下部の酸化物超電導層を形成す
る工程と、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からな
る群より選択される酸化物を構成する一部の金属成分を
供給して、前記下部の超電導層上に酸化物からなるトン
ネル層を形成する工程と、活性酸素と、Bi系、Tl
系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成する
全部の金属成分を供給して、前記トンネル層上に上部の
酸化物超電導層を形成する工程とを具備したことを特徴
とするものである。
【0019】本発明の超電導トンネル接合の製造方法
は、基板の温度をy(℃)、活性酸素の量とBi系、T
l系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成す
る金属成分の量との比率をxとして、y=850、y=
6.25x+540、y=4x+560の3直線で囲ま
れる範囲内の条件で活性酸素と金属成分とを供給して基
板上に下部の酸化物超電導層を形成する工程と、y=8
50、y=4x+480、y=2.5x+525の3直
線で囲まれる範囲内の条件で活性酸素と金属成分とを供
給して下部の酸化物超電導層上に酸化物からなるトンネ
ル層を形成する工程と、y=850、y=6.25x+
540、y=4x+560の3直線で囲まれる範囲内の
条件で活性酸素と金属成分とを供給してトンネル層上に
上部の酸化物超電導層を形成する工程とを具備したこと
を特徴とするものである。
【0020】以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0021】本発明において、超電導体としては、B
i、TlまたはPbを含む複合酸化物超電導材料、例え
ばBi系の(Bi,Pb)2 Sr2Can-1 Cun
2n+4、Tl系のTl2 Ba2 Can-1 Cun 2n+4が用
いられる。より具体的には、Bi系2212相(Bi2
Sr2 CaCu2 y2)、Bi系2223相(Bi2
2 Ca2 Cu3 y3)などである。
【0022】本発明の酸化物超電導薄膜においては、全
c軸のうち基板面に対して垂直方向に向いているc軸の
割合が1%以下である。
【0023】本発明の超電導トンネル接合は、基板上
に、下部の超電導層、トンネル層および上部の超電導層
が順次形成された構造を有する。各層はBi系、Tl
系、Pb系からなる群より選択される酸化物で構成され
る。トンネル層を構成する金属成分は、下部および上部
の超電導層を構成する金属成分の少なくとも一部と同一
であることが好ましい。このようなトンネル層として
は、Bi2 Sr2 CuOy1、Bi2 Sr2 CaCu2
y2、Tl2 Ba2 CuOz1、Tl2 Ba2 CaCu2
z2など、超電導層と類似の組成を有する酸化物が挙げら
れる。そして、各層を構成するそれぞれの酸化物に関し
て、全c軸のうち、基板面に垂直な方向に向いているc
軸の割合が1%以下である。
【0024】また、超電導層の膜厚方向で大きな臨界電
流密度を得るためには、c軸の主配向方向が基板面に垂
直な方向に対して5°以上傾いており、かつc軸が互い
にほぼ平行であることが好ましい。さらに、10°以上
傾いていることがより好ましい。
【0025】本発明において上記のように限定したのは
以下のような理由による。前述したように、超電導電流
を膜厚方向に伝導させるためには、Cu−O面が膜厚全
体にわたってつながっていることが必要である。このた
めには、c軸は基板面に垂直な方向に対して5°以上傾
いていることが好ましい。しかし、c軸の大部分が基板
面に垂直な方向から傾いていたとしても、垂直方向に向
いた成分が混在していれば、膜厚方向の臨界電流密度は
非常に敏感に影響を受ける。例えば、膜厚方向に並ぶ結
晶格子列のうち1つの格子のみがc軸配向していたとし
ても、膜厚方向の臨界電流密度は大幅に低下する。実際
のデバイスでは、ピンホールなどの影響を避けるため、
超電導層は300nm程度の膜厚が必要とされる。この
ような膜では、膜厚方向に100個を超えるユニットセ
ルが積層されている。したがって、実用上、膜中のc軸
配向成分は全体の1%以下に抑える必要がある。
【0026】酸化物超電導薄膜の全c軸のうち基板面に
垂直な方向に向いているc軸の割合、すなわちc軸配向
成分の割合は以下のようにして算出することができる。
【0027】(a)通常のX線回折による方法。膜厚と
X線散乱因子の値とから、基板面に平行な面の理論的な
ピーク強度が求められる。実験的に得られたピーク強度
と理論的なピーク強度との比較により、c軸配向成分の
割合が算出される。
【0028】(b)磁気抵抗の測定による方法。X線回
折により膜の主配向方向を決定する。c軸が基板面に垂
直な方向に対して傾いている成分が100%であると仮
定して、印加磁場の方向に対する磁気抵抗の値を理論的
に計算する。c軸配向成分が含まれていると、磁気抵抗
の実測値は理論値と異なる。この差の大きさから、c軸
配向成分の割合が算出される。
【0029】また、c軸が互いに平行であるか否かは以
下のようにして確認できる。
【0030】(a)4軸X線回折または非対称X線回折
による方法。膜面内において、例えば(00n)面(た
だし、nは自然数)の方向の分布を調べる。c軸が互い
に平行になっている場合、(00n)面は面内で一方向
を向いているため、そのピークは1か所に現れる。一
方、c軸が互いに平行になっていない場合、何か所かに
ピークが現れるか、ピークが現れない。
【0031】(b)磁気抵抗の磁場方位依存性を調べる
方法。超電導転移のオンセット温度とゼロ抵抗温度との
中間の温度において、数テスラの磁場を印加し、その方
向を膜の面内および膜に垂直な面内で変化させる。磁場
と電気伝導面であるCu−O面との方向が一致したとき
に抵抗は極小値を示すので、Cu−O面の方向が判明す
る。この結果から、c軸が互いに平行であるか否かを確
認できる。
【0032】本発明において、基板としては、ペロブス
カイト構造を有する単結晶基板であり、その表面が(1
10)面であるものが適用される。ペロブスカイト構造
を有する単結晶としては、SrTiO3 、LaAl
3 、LaGaO3 、NdGaO3 、PrGaO3 、L
iNbO3 、KTaO3 、LaSrGaO4などが挙げ
られる。なお、ペロブスカイト構造がc軸方向に複数個
(k個)積層されて単位格子を形成している場合には、
表面に現れる格子定数に関して(10k)面と(11
0)面とは等価であるので、この面も適用できる。この
ような基板を用いれば、c軸配向成分が1%以下である
超電導薄膜を形成するのに有利である。
【0033】また、基板面としては、前記(110)面
または(10k)面から3〜7度傾いた面を用いること
が好ましい。この傾斜は、(110)面を[001]方
向と[1-10]方向とで規定した場合の、[1-10]方
向に対する値とする。(10k)面に対する傾斜も、
(110)面に対する傾斜と等価な方位とする。このよ
うな基板面を用いれば、c軸方向が互いに平行な膜を形
成するのに有利となる。
【0034】さらに、基板としては、ペロブスカイト構
造を有する単結晶基板またはMgO基板であり、その表
面が(100)面または(001)面から3〜7度傾い
た面であるものを用いることが好ましい。この傾斜は、
(100)面を[010]方向と[001]方向とで規
定した場合の、[010]方向または[001]方向に
対する値とする。(001)面に対する傾斜も、(10
0)面に対する傾斜と等価な方位とする。このような基
板面を用いれば、c軸が基板面と平行となり、かつc軸
方向が互いに平行な膜を形成するのに有利となる。
【0035】なお、基板が前記の条件を満たしていない
場合でも、単結晶基板上に前記の条件を満たすバッファ
層を形成すればよい。
【0036】本発明の酸化物超電導薄膜は、活性酸素
と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群より選択される
酸化物を構成する一部の金属成分を供給して、基板上に
酸化物からなる組成変調膜を形成し、活性酸素と、Bi
系、Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物を
構成する全部の金属成分を供給することにより製造でき
る。
【0037】ここで、組成変調膜(グレーディング膜)
とは、理想的な酸化物超電導体の組成に対して一部の金
属成分が過剰に含まれる膜をいう。この方法では、活性
酸素とともに、Bi系、Tl系、Pb系からなる群より
選択される酸化物を構成する一部の金属成分を短時間だ
け供給し、ひきつづき酸化物を構成する全部の金属成分
を供給する。ただし、初期の酸化物中に酸化物超電導薄
膜の構成成分が拡散する結果として、組成の勾配が生じ
た組成変調膜が形成されるため、両者の間には必ずしも
明確な界面があるわけではない。この過剰に含まれる金
属成分は、酸化物超電導体のペロブスカイト構造を形成
する金属元素のうち少なくとも一種である。Bi系の場
合、組成変調膜には、理想的な酸化物超電導体の組成に
対してSr、Ca、Cuからなる群より選択される少な
くとも1種の金属成分が過剰に含まれている。一方、B
iを過剰に含む組成変調膜を形成した場合には、所望の
配向を有する超電導薄膜を得ることはできない。
【0038】本発明の超電導トンネル接合を形成する場
合にも、基板と下部の超電導層との間に組成変調膜を形
成する。さらに、下部の超電導層とトンネル層との間お
よび/またはトンネル層と上部の超電導層との間に組成
変調膜を形成してもよい。
【0039】以上のように組成変調膜を形成しない場
合、以下に示すように、成膜時に特定の条件を選択する
必要がある。
【0040】すなわち、基板の温度をy(℃)、活性酸
素の量とBi系、Tl系、Pb系からなる群より選択さ
れる酸化物を構成する金属成分の量との比率をxとし
て、y=850、y=6.25x+540、y=4x+
560の3直線で囲まれる範囲内の条件で、活性酸素と
金属成分とを供給して基板上に酸化物超電導薄膜を形成
する。
【0041】また、組成変調膜を形成せずに超電導トン
ネル接合を製造する場合にも、下部および上部の超電導
層を成膜する際に、前記と同様の条件が用いられる。さ
らに、例えばBi2 Sr2 CuOy1からなるトンネル層
を成膜する際には、基板温度をy(℃)、基板面に供給
される活性酸素量と金属成分量との比率x(活性酸素/
金属成分)として、y=850、y=4x+480、y
=2.5x+525の3直線で囲まれる範囲内の条件が
用いられる。
【0042】いずれの場合でも、基板温度および/また
は活性酸素量と金属成分量との比を制御する。活性酸素
量を制御する方法としては、以下のような方法がある。
例えば、高周波励起による酸素プラズマを用いる場合、
高周波電力および/または放電管内への酸素流量を制御
する。オゾンを用いる場合、オゾン流量を制御する。N
2 O、NO2 を用いたレーザ蒸着法の場合、レーザ強度
および/またはガス流量を制御する。これらの方法を用
いることにより、良質の超電導薄膜を再現性よく形成で
きる。前記の範囲以外の条件で成膜すると、所望の結晶
配向を有する薄膜が得られない。
【0043】
【実施例】図1は本発明において用いられた蒸着装置の
構成図である。成膜室1内には基板ホルダ4が配置さ
れ、この上に基板3が固定される。この基板ホルダ4の
後方には基板加熱用のヒータ5が配置されている。成膜
室1内には、基板3に対向するように、それぞれ蒸着源
が挿入されるクヌーセン・セル2a、2b、2c、2d
が配置されている。各クヌーセン・セルには図示を省略
した加熱用ヒータが設けられている。成膜室1内には、
基板3に対向するように、活性酸素を導入するための石
英管6が配置され、その周囲にはコイル7が巻かれてい
る。石英管6内の放電空間は内径20mm、長さ100
mmの円柱状であり、先端のノズル径は直径1mmであ
る。石英管6には酸素が導入され、コイル7には高周波
(RF)電源8から電力が供給される。この結果、石英
管6内に酸素プラズマが生成され、この酸素プラズマが
基板3へ供給される。成膜室1は排気系9によって排気
される。
【0044】この装置を用い、図2に示すように基板1
01上に超電導層102を形成した。
【0045】実施例1 基板3として表面が(110)面であるSrTiO3
基板ホルダ4にセットした。蒸着源として、Bi、S
r、CaおよびCuを各クヌーセン・セル2a〜2dに
挿入した。成膜室1内を1×10-8Torrまで排気し
た後、各クヌーセン・セル2a〜2dを加熱し、Biソ
ースを460℃、Srソースを465℃、Caソースを
564℃、Cuソースを1073℃に設定した。これと
同時に、基板3を800℃に加熱した。その後、金属成
分の着膜と同時に高周波で励起された酸素プラズマの供
給を開始した。酸素の流量は0.45sccm、RF電
力は40Wに設定した。
【0046】90分後に形成されたBi系酸化物の膜厚
は80nmであった。この膜の超電導転移温度は80K
であった。得られた膜のX線回折パターンを図3に示
す。図3から、この膜はBi2 Sr2 CaCu2y2
の(119)面が基板面に平行であるという配向を示し
ていた。この場合、c軸は基板面に垂直な方向に対して
約42°傾いている。c軸配向成分の割合は0.3%で
あった。誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法による
測定から、この膜の組成はBi:Sr:Ca:Cu=
2:3.5:1.5:3.0であった。
【0047】さらに、4軸X線回折により膜面内でのc
軸の方位を調べたところ、c軸を基板面に投影した方向
は基板の[1-10]方向と[-110]方向にほぼ等しい
割合で分布していた。
【0048】比較例1 酸素流量を2.3sccmとした以外は、前記と全く同
様にしてBi系超電導薄膜を形成した。
【0049】得られた膜のX線回折パターンを図4に示
す。図4から、この膜は、Bi2 Sr2 CaCu2 y2
相の(117)面が基板面に平行な成分と、c軸が基板
面に対して垂直方向に向いている成分を含んでいた。c
軸配向成分の割合は約70%であった。(117)面が
基板面に平行な成分においては、c軸は基板面に垂直な
方向に対して約49°傾いている。ICPによれば、こ
の膜の組成はBi:Sr:Ca:Cu=2:2.5:
1.4:2.8であった。
【0050】以上のような実験を繰り返し、Bi2 Sr
2 Can Cun+1 y 相(ただし、n≦1)の配向と、
成膜条件との関係を調べた。図5は、横軸に基板面に供
給される活性酸素量と酸素以外の成分量(粒子数)との
比率x、縦軸に基板温度y(℃)をとり、c軸配向の成
分が全体の1%以下であるような膜を作製できる範囲を
示すものである。
【0051】ここで、基板近傍での活性酸素量は、レー
ザ誘起蛍光分光法により定量する。なお、活性酸素量
は、酸素流量(すなわち放電管内の圧力)とRF電力に
より制御できる。また、基板面に供給される金属成分の
量は以下のような方法で定量する。(a)ICPによっ
て薄膜を定量分析することにより、各元素の着膜量を知
ることができる。したがって、定量された元素量と成膜
に要した時間とから、単位時間あたりの供給量が求めら
れる。(b)成膜開始前に水晶振動子などの膜厚計を用
いて着膜レートを制御する際に、成膜時と同一の酸素供
給条件とし、各元素の着膜レートを求める。これらの方
法のほかに、成膜中に原子吸収分光法を用いることもで
きる。また、誤差は大きいが、形成される結晶の組成が
ほぼわかっているので、薄膜の膜厚からおおよその着膜
量を知ることもできる。
【0052】(活性酸素の量/金属成分の量)の比xの
値は、例えば実施例1の場合は約45、比較例1の場合
は約65である。
【0053】図5において、斜線で示される範囲は、y
=850(直線A)、y=6.25x+540(直線
B)、y=4x+560(直線C)の3直線で囲まれて
いる。図5における斜線域以外の条件で形成された膜
は、c軸配向を有する成分が全体の1%を超えるかもの
か、Bi系2201相であるか、Bi系超電導体以外の
結晶であるか、または結晶化していないものである。な
お、Bi系2201相は、超電導転移する場合でもその
超電導転移温度が10K程度であるため、超電導体とし
ての実用性が乏しい。
【0054】実施例2 種々の条件で膜厚300nmの2223相のBi系超電
導薄膜を形成した。c軸配向成分の比率と、77Kにお
ける膜厚方向の臨界電流密度との関係を表1に示す。表
1からわかるように、c軸配向成分の比率が減少するに
したがって臨界電流密度が増加している。
【0055】
【表1】
【0056】実施例3 種々の条件で2223相のBi系超電導薄膜を形成し
た。なお、得られた各薄膜の化学組成は、Bi:Sr:
Ca:Cu=2:2:2:3から±2%以内の範囲にあ
る。各薄膜について、0.1mAの電流を流し、膜面内
で超電導転移温度を測定した。c軸配向成分の比率と、
転移のオンセット温度およびゼロ抵抗温度との関係を表
2に示す。表2からわかるように、オンセット温度はど
の膜でもほぼ等しい。しかし、膜によって転移幅に差が
あり、c軸配向成分の比率が減少するにしたがって、ゼ
ロ抵抗温度が上昇する。
【0057】
【表2】
【0058】実施例4 基板としてSrTiO3 を用い、その表面を(100)
面から0〜10°の範囲で傾斜させた面とした。それぞ
れの基板上に形成された2212相のBi系超電導薄膜
の配向を調べた結果を表3に示す。表3から明らかなよ
うに、傾斜角が0°の場合には(001)配向(すなわ
ちc軸配向)のみであり、傾斜角が2°の場合には(0
01)配向と(110)配向が混在している。傾斜角が
3〜7°の場合には(110)配向のみであり、かつc
軸は全て平行である。さらに、傾斜角が8°、10°の
場合には、膜の回折ピークは認められず、結晶方位はラ
ンダムである。
【0059】
【表3】
【0060】実施例5 基板として表面が(110)面から5°傾いた面である
SrTiO3 を用いた以外は、実施例1と同一の条件で
Bi系酸化物を形成した。この膜は、実施例1と同様
に、Bi2 Sr2 CaCu2 y2相の(119)面が基
板面に平行であるという配向を示していた。
【0061】さらに、4軸X線回折により膜面内でのc
軸の方位を調べたところ、c軸方向が基板の[1-10]
方向に揃っていることがわかった。このことから、c軸
が互いに平行であることが確認された。
【0062】以下の比較例2および実施例5〜12で
は、基板上に組成変調膜(グレーディング膜)およびB
i系超電導薄膜を連続的に形成した。
【0063】比較例2 基板としてSrTiO3 (110)を用い、これを80
0℃に加熱した。酸素流量を0.45sccm、RF電
力を40Wに設定して酸素プラズマを供給した。この条
件は、実施例1と同一である。酸素プラズマの供給と同
時に、Biのみを2分間蒸着した。この蒸着時間は、B
i酸化物1〜2層に相当する。その後、Bi、Sr、C
aおよびCuを同時に90分間蒸着した。
【0064】図6に示すように、この膜は図3と異なる
X線回折パターンを示し、c軸配向を示すことがわかっ
た。このことから、Biが過剰な組成変調膜が形成され
た場合には、所望の配向を有する超電導膜が得られない
ことがわかる。また、この膜は78Kの超電導転移温度
を示した。この膜の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=
2:1.9:1.1:2.4であった。
【0065】実施例6 基板としてSrTiO3 (110)を用い、これを80
0℃に加熱した。酸素流量を2.3sccm、RF電力
を40Wに設定して酸素プラズマを供給した。この条件
は、比較例1と同一である。酸素プラズマの供給と同時
に、Srのみを2分間蒸着した。この蒸着時間は、Sr
酸化物1〜2層に相当する。その後、Bi、Sr、Ca
およびCuを同時に90分間蒸着した。
【0066】図7に示すように、この膜は図4と異なる
X線回折パターンを示し、Bi2 Sr2 CaCu2 y2
相(117)配向を示すピークのみが観察された。c軸
配向成分の割合は0.2%であった。この膜は79Kの
超電導転移温度を示した。この膜の組成は、Bi:S
r:Ca:Cu=2:2.1:1.5:2.2であっ
た。
【0067】実施例7 基板としてLaAlO3 (110)を用い、これを83
0℃に加熱した。酸素流量を2.3sccm、RF電力
を100Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場
合、xの値は約73である。酸素プラズマの供給と同時
に、Caのみを2分間蒸着した。この蒸着時間は、Ca
酸化物1〜2層に相当する。その後、Bi、Sr、Ca
およびCuを同時に90分間蒸着した。
【0068】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 Ca2 Cu3 y3相の(119)配向を示すピーク
と(1111)配向を示すピークとが観察された。c軸配
向成分の割合は約0.5%であった。この膜は103K
の超電導転移温度を示した。この膜の組成は、Bi:S
r:Ca:Cu=2:2.1:1.9:2.7であっ
た。
【0069】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0070】実施例8 基板としてLaGaO3 (110)を用い、これを78
0℃に加熱した。酸素流量を2sccm、RF電力を1
20Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場合、
xの値は約70である。酸素プラズマの供給と同時に、
Cuのみを2分間蒸着した。この蒸着時間は、Cu酸化
物1〜2層に相当する。その後、Bi、Sr、Caおよ
びCuを同時に90分間蒸着した。
【0071】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 Ca2 Cu3 y3相の(119)配向を示すピーク
のみが観察された。c軸配向成分の割合は0.4%であ
った。この膜は101Kの超電導転移温度を示した。こ
の膜の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:2.2:
2.1:2.9であった。
【0072】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0073】実施例9 基板としてNdGaO3 (110)を用い、これを81
0℃に加熱した。酸素流量を2.5sccm、RF電力
を90Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場
合、xの値は約73である。酸素プラズマの供給と同時
に、SrおよびCaを2分間蒸着した。この蒸着時間
は、(Sr、Ca)酸化物1〜2層に相当する。その
後、Bi、Sr、CaおよびCuを同時に90分間蒸着
した。
【0074】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 CaCu2 y2相の(119)配向を示すピークの
みが観察された。c軸配向成分の割合は0.5%であっ
た。この膜は79Kの超電導転移温度を示した。この膜
の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:2.2:1.
5:2.7であった。
【0075】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0076】実施例10 基板としてPrGaO3 (110)を用い、これを75
0℃に加熱した。酸素流量を1.8sccm、RF電力
を100Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場
合、xの値は約67である。酸素プラズマの供給と同時
に、SrおよびCuを2分間蒸着した。この蒸着時間
は、(Sr、Cu)酸化物1〜2層に相当する。その
後、Bi、Sr、CaおよびCuを同時に90分間蒸着
した。
【0077】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 Ca2 Cu3 y3相の(1111)配向を示すピーク
のみが観察された。c軸配向成分の割合は0.6%であ
った。この膜は95Kの超電導転移温度を示した。この
膜の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:2.2:
2.3:2.7であった。
【0078】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0079】実施例11 基板としてLiNbO3 (110)を用い、これを79
0℃に加熱した。酸素流量を1.9sccm、RF電力
を130Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場
合、xの値は約70である。酸素プラズマの供給と同時
に、CaおよびCuを2分間蒸着した。この蒸着時間
は、(Ca、Cu)酸化物1〜2層に相当する。その
後、Bi、Sr、CaおよびCuを同時に90分間蒸着
した。
【0080】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 CaCu2 y2相の(119)配向を示すピークの
みが観察された。c軸配向成分の割合は0.4%であっ
た。この膜は76Kの超電導転移温度を示した。この膜
の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:1.8:1.
5:2.3であった。
【0081】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0082】実施例12 基板としてKTaO3 (110)を用い、これを770
℃に加熱した。酸素流量を2.1sccm、RF電力を
110Wに設定して酸素プラズマを供給した。この場
合、xの値は約73である。酸素プラズマの供給と同時
に、Sr、CaおよびCuを2分間蒸着した。この蒸着
時間は、(Sr、Ca、Cu)酸化物1〜2層に相当す
る。その後、Bi、Sr、Ca、およびCuを同時に9
0分間蒸着した。
【0083】この膜のX線回折パターンには、Bi2
2 CaCu2 y2相の(117)配向を示すピークの
みが観察された。c軸配向成分の割合は0.1%であっ
た。この膜は79Kの超電導転移温度を示した。この膜
の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:1.9:1.
4:2.1であった。
【0084】前記の条件で最初からBi、Sr、Caお
よびCuを同時に蒸着した場合には主成分がc軸配向で
ある膜が得られた。
【0085】次に、基板上にバッファ層を形成し、その
上に超電導薄膜を形成した例について説明する。
【0086】実施例13 基板としてSrTiO3 (110)を用い、これを80
0℃に加熱した。酸素流量を0.45sccm、RF電
力を40Wに設定して酸素プラズマを供給した。この条
件は、実施例1と同一である。酸素プラズマの供給と同
時に、Sr、CaおよびCuを、1.6:0.4:1.
0の比率で蒸着し、膜厚15nmのバッファ層を形成し
た。基板を成膜室から取り出し、X線回折によりバッフ
ァ層の配向を調べた。このバッファ層は、(110)配
向の(Sr、Ca)2 CuO3 であった。
【0087】基板を成膜室に戻し、Bi、Sr、Caお
よびCuを同時に1.9:2.0:1.1:1.9の比
率で蒸着した以外は前記と同様の条件で蒸着して、超電
導薄膜を形成した。この膜は(119)配向のBi2
2 CaCu2 y2相であった。また、この膜は78K
の超電導転移温度を示した。
【0088】以上の例では図1の蒸着装置を用い、金属
成分と同時に酸素プラズマを供給している。一方、以下
の実施例14に示すように、金属成分を着膜した後、オ
ゾンを供給して酸化物超電導薄膜を形成してもよい。
【0089】実施例14 基板としてMgO(100)を用いた。成膜室内を高真
空に排気した。クヌーセン・セルを各蒸着源の蒸発温度
に見合った温度に加熱して10分間着膜した。金属成分
の蒸着の終了と同時にオゾンを2sccmの流量で導入
した。基板を700℃に加熱して100分間熱処理し、
自然冷却した。
【0090】得られたBi2 Sr2 CaCu2 y2超電
導薄膜の膜厚は500nmであった。超電導転移温度は
80Kであった。膜の表面は鏡面であった。走査型電子
顕微鏡(SEM)によって観察したところ、数十nm以
上の凹凸はなかった。この膜の組成は、Bi:Sr:C
a:Cu=2:2.50:1.01:1.99であっ
た。
【0091】次に、図1の蒸着装置を用い、図8に示す
超電導トンネル接合を形成した。図8において、基板1
01には超電導層102、トンネル層103、および超
電導層104が順次形成されている。超電導層102と
超電導層104には、それぞれAuまたはAgからなる
電極105、106が接続されている。
【0092】まず、超電導体−常電導体−超電導体(S
−N−S)タイプの超電導トンネル接合を形成した例に
ついて説明する。
【0093】実施例15 基板としてSrTiO3 (110)を用いた。成膜室1
内を1×10-9Torrまで排気した。各クヌーセン・
セル2a〜2dを加熱し、Biソースを460℃、Sr
ソースを465℃、Caソースを564℃、Cuソース
を1073℃に設定した。基板を800℃に加熱した。
金属成分の着膜と同時に高周波で励起した酸素プラズマ
の供給を開始した。
【0094】酸素流量を0.5sccm、RF電力を4
0Wに設定し、200分間成膜した。次に、酸素流量を
2.3sccm、RF電力を200Wに設定し、10分
間成膜した。さらに、元の条件すなわち酸素流量を0.
5sccm、RF電力を40Wに設定し、300分間成
膜した。この間、金属成分の蒸発量は一定に保った。
【0095】図9に、3層の薄膜のX線回折パターンを
示す。図9から明らかなように、この膜には(117)
配向のBi2 Sr2 CaCu2 y2相と(115)配向
のBi2 Sr2 CuOy1相とが混在している。さらに、
断面TEM像を調べると、SrTiO3 (110)基板
上に、(117)配向のBi2 Sr2 CaCu2
y2相、(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1相、(1
17)配向のBi2 Sr2 CaCu2 y2相が順次積層
されていることがわかった。3層の薄膜の膜厚は、基板
側から順に200nm、9nm、300nmであった。
ICPによれば、3層の薄膜の組成は、Bi:Sr:C
a:Cu=2:2.20:1.04:2.09であっ
た。
【0096】以上の実験を繰り返し、(115)配向の
Bi2 Sr2 CuOy1相からなるトンネル層が得られる
条件の範囲を調べた。図10において、横軸は基板面に
供給される活性酸素量と酸素以外の成分量(粒子数)と
の比率x、縦軸は基板温度y(℃)である。斜線で示さ
れる範囲は、y=850(直線A´)、y=4x+48
0(直線B´)、y=2.5x+525(直線C´)の
3直線で囲まれている。
【0097】以下の実施例16〜24では、基板上に、
Bi系酸化物超電導体の組成と比較して、Sr、Ca、
Cuからなる群より選択される少なくとも1種の金属成
分が過剰に含まれる組成変調膜を形成し、その上に積層
型のトンネル接合を形成した。いずれの場合も、接合を
構成する膜中のc軸配向成分の割合は0.5%以下であ
る。
【0098】実施例16 基板:LaAlO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚500nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚5nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3 このトンネル接合では、100Kにおいてジョセフソン
特性が観測された。
【0099】一方、超電導層の少なくともいずれか一方
がc軸配向である場合、4.2Kまで冷却してもトンネ
ル電流は観測されなかった。
【0100】実施例17 基板:SrTiO3 (110) 下部超電導層:(117)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚1000nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚60nm 上部超電導層:(117)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚500nm このトンネル接合では、76K以下の温度領域において
ジョセフソン特性が観測された。76Kより高い温度で
は、準粒子によるトンネル現象が観測された。
【0101】実施例18 基板:LaAlO3 (110) 下部超電導層:(117)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚500nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚50nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚400nm このトンネル接合では、77K以下の温度領域において
ジョセフソン特性が観測された。
【0102】一方、トンネル層および上部超電導層がc
軸配向である場合、77K以下でも準粒子によるトンネ
ル現象が観測されるだけであり、ジョセフソン特性は観
測されなかった。
【0103】実施例19 基板:LaGaO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚600nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚60nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚700nm このトンネル接合では、78K以下の温度領域において
ジョセフソン特性が観測された。
【0104】一方、トンネル層および上部超電導層がc
軸配向である場合には、トンネル層の膜厚が5nm以下
では50K以下の温度領域でジョセフソン特性が観測さ
れた。しかし、トンネル層の膜厚が5nmより厚いとジ
ョセフソン特性は観測されなかった。
【0105】実施例20 基板:NdGaO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚700nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚40nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚1000nm。
【0106】このトンネル接合では、79K以下におい
てジョセフソン特性が観測された。
【0107】一方、上部超電導層がc軸配向である場
合、ジョセフソン特性は観測されなかった。
【0108】実施例21 基板:PrGaO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚550nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚10nm 上部超電導層:(117)配向のBi2 Sr2 CaCu
2 y2、膜厚900nm このトンネル接合では、77K以下の温度領域において
ジョセフソン特性が観測された。
【0109】実施例22 この実施例においては、下部超電導層とトンネル層との
間にも組成変調膜を形成した。
【0110】基板:SrTiO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚300nm トンネル層:(115)配向のBi2 Sr2 CuOy1
膜厚15nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚800nm。
【0111】このトンネル接合では、105K以下の温
度領域においてジョセフソン特性が観測された。
【0112】実施例23 この実施例においては、トンネル層と上部超電導層との
間にも組成変調膜を形成した。
【0113】基板:LiNbO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚350nm トンネル層:(117)配向のBi2 Sr2 CaCu2
y2、膜厚20nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚700nm このトンネル接合では、77K以下においては下部およ
び上部の超電導層間の電気伝導は超電導体としての挙動
を示した。77〜105Kの温度領域においては、ジョ
セフソン特性が観測された。105Kを超えると、準粒
子トンネル伝導のみが観測された。
【0114】実施例24 この実施例においては、下部超電導層とトンネル層との
間およびトンネル層と上部超電導層との間にも組成変調
膜を形成した。
【0115】基板:KTaO3 (110) 下部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚450nm トンネル層:(119)配向のBi2 Sr2 CaCu2
y2、膜厚25nm 上部超電導層:(119)配向のBi2 Sr2 Ca2
3 y3、膜厚750nm このトンネル接合では、107K以下の温度領域におい
てジョセフソン特性が観測された。
【0116】実施例25 超電導体−絶縁体−超電導体(S−I−S)タイプの超
電導トンネル接合を形成した例について説明する。
【0117】基板としてLaSrGaO4 (110)を
用い、これを800℃に加熱した。酸素プラズマの供給
を開始し、Sr、CaおよびCuを2分間蒸着し、その
後Bi、Sr、CaおよびCuを蒸着した。この段階
で、膜全体の組成は、Bi:Sr:Ca:Cu=2:
2:1:2、膜厚は700nmであった。そして、(1
19)配向のBi2 Sr2 CaCu2 y2相が形成され
た。この場合、c軸は基板面に垂直な方向に対して約4
2°傾いている。
【0118】次に、Biソースのシャッターを閉じ、C
uソースの温度を調節し、Sr:Ca:Cu=2:1:
1.5に設定して蒸着した。この結果、(110)配向
の(Sr0.67Ca0.332 CuO3 が10nmの厚さで
形成された。
【0119】さらに、成膜条件を元の条件に戻してB
i、Sr、CaおよびCuを蒸着した。この結果、(1
17)配向のBi2 Sr2 CaCu2 y2相が形成され
た。
【0120】このトンネル接合は、80K以下の温度領
域においてジョセフソン特性を示した。
【0121】実施例26 この実施例においては、Bi系超電導薄膜をY系超電導
薄膜上に形成した。
【0122】SrTiO3 (110)基板上に膜厚40
0nmのY系超電導薄膜を形成した。このY系超電導薄
膜は(110)配向である。次に、膜厚10nmのBi
系2201相の半導体薄膜を形成した。このBi系22
01相半導体薄膜は(100)配向(a軸配向)であ
る。再び、Y系超電導薄膜を形成した。このY系超電導
薄膜は(110)配向である。
【0123】Bi系2201相半導体は10K未満の温
度領域においては超電導転移することが確認されてい
る。したがって、この接合は10K未満の温度では、超
電導体−超電導体−超電導体の積層構造である。一方、
10以上、85K未満の温度では超電導体−半導体−超
電導体の積層構造であり、ジョセフソン特性が確認され
た。
【0124】実施例27 以上の説明では図8に示す積層構造の超電導トンネル接
合を形成したが、図11に示すマイクロブリッジ形の超
電導トンネル接合を形成することもできる。
【0125】基板101としてLaGaO3 を用い、そ
の表面を(100)面から5°傾斜させた面とした。こ
の基板101上にBi系2212相の超電導層102を
300nmの厚みで形成した。この結晶のc軸は基板面
に垂直な方向から90°傾斜し、かつ互いに平行になっ
ている。この膜を加工し、幅60nm、長さ250nm
の弱接合領域107を形成した。弱接合領域107の左
右の超電導層102にそれぞれ配線105、106を接
続した。
【0126】面内における弱接合領域107の長手方向
とBi系2212相のc軸とのなす角をθとする。88
°≦θ≦92°の場合にジョセフソン特性が観測され、
超電導層102と配線105、106との超電導コンタ
クトが実現できた。
【0127】一方、c軸配向膜で同様の接合を形成した
場合、超電導層102と配線105、106との接合部
で超電導電流が流れなくなる。
【0128】以上の説明では図1に示す蒸着装置を用い
たが、図12に示す反応性スパッタ装置を用いることも
できる。図12において、成膜室21内には基板ホルダ
22が回転可能に設置され、このホルダ22の周縁部に
基板23が載せられる。基板ホルダ22および基板23
はヒータ24により加熱される。基板ホルダ22に対向
する位置にはターゲット25a〜25eが設置される。
ターゲット25a〜25eとしては、それぞれBi、S
rCO3 、CaCO3 、CaCO3 およびCuが装着さ
れている。各ターゲット25a〜25eには、高周波電
源26a〜26eから高周波が印加される。また、各タ
ーゲット25a〜25eの基板23側には、シャッター
27a〜27eが設けられている。成膜室21は排気系
28により排気される。成膜室21にはガス導入口29
から所定のガスが導入される。
【0129】この反応性スパッタ装置を用い、実施例2
8、29に示すようにS−I−Sタイプのトンネル接合
を形成した。
【0130】実施例28 基板としてSrTiO3 (110)を用いた。成膜室2
1を高真空にした後、基板23を700℃に加熱した。
酸素とアルゴンとの混合ガス(混合比1:1)を導入し
て、成膜室21内の圧力を300mTorrに設定し
た。均一な膜を作製するために、基板21を回転させ
た。高周波電源26a〜26eから各ターゲット25a
〜25eに300〜400Wの高周波を印加して放電さ
せた。シャッター27dを閉じ、それ以外のシャッター
を開いて、Bi、Sr、CaおよびCuの4成分を着膜
させた。この際、各ターゲットへの投入電力を調節し
て、着膜成分の組成をBi:Sr:Ca:Cu=2:
2:1:2に設定した。この条件で膜厚500nmの薄
膜を形成した。この膜は、(117)配向のBi2 Sr
2 CaCu2 y2相であった。この膜では、c軸は基板
面に垂直な方向に対して約49°傾いている。
【0131】次に、シャッター27aを閉じ、それ以外
のシャッターを開いて、Sr、CaおよびCuの3成分
を着膜させた。この際、各ターゲットへの投入電力は一
定に保った。また、2つのCaCO3 ターゲットへの投
入電力は同一にした。こうして着膜成分の組成をSr:
Ca:Cu=1:1:1に設定した。この条件で膜厚1
0nmの薄膜を形成した。この膜は、(110)配向の
SrCaCuO3 であった。この膜では、c軸が基板面
と平行になっている。
【0132】さらに、成膜条件を1層目と同一に戻し、
(117)配向のBi2 Sr2 CaCu2 y2相を形成
した。
【0133】このS−I−Sトンネル接合では、50K
の動作温度においてジョセフソン特性が観測された。
【0134】実施例29 ターゲットとして、Y、BaおよびCuを含む焼結体、
CaおよびCuを含む焼結体、ならびにBi、Sr、C
aおよびCuを含む焼結体の3種を用いた。
【0135】基板:LaGaO3 (110) 下部超電導膜:(110)配向のYBa2 Cu3 a
膜厚500nm トンネル層:(103)配向のCa2 CuO3 、膜厚1
1nm。この膜ではc軸は基板面に垂直な方向から約4
5°傾いている。
【0136】上部超電導膜:(1111)配向のBi2
2 Ca2 Cu3 y3、膜厚200nm このS−I−Sトンネル接合では、65K以下の温度領
域においてジョセフソン特性が観測された。また、この
接合では、YBa2 Cu3 a は下部電極として用いら
れているため、耐環境性の点で問題はない。実際に、大
気中に1週間放置した後にもジョセフソン特性に劣化は
認められなかった。
【0137】さらに、図13に示すレーザ蒸着装置を用
いることもできる。図13において、成膜室51内には
基板ホルダ52が設置され、このホルダ52上に基板5
3が載せられる。基板ホルダ52および基板53はヒー
タ54により加熱される。基板ホルダ52に対向する位
置には蒸着源55a、55bが設置される。各蒸着源5
5a、55bとしては、Bi:Sr:Ca:Cu=2:
2:2:3の焼結体と、Sr:Cu=2:1の焼結体と
が用いられる。各蒸着源55a、55bには、ArFエ
キシマレーザ56からビューイングポート57を通して
レーザビームが照射される。成膜室51は排気系58に
より排気される。成膜室51にはガス導入口59から酸
素ガスが導入される。
【0138】実施例30 基板53としてLaAlO3 (110)を用いた。成膜
室51内を高真空にした後、基板53を650℃に加熱
した。ガス導入口59から酸素ガスを導入し、成膜室5
1内の圧力を10mTorrに設定した。
【0139】まず、蒸着源55aにレーザビームを照射
し、基板53上にBi2 Sr2 Ca2 Cu3 y3相の超
電導薄膜を700nmの膜厚で形成した。この膜は(1
11)配向である。この膜では、c軸は基板面に垂直な
方向から約42°傾いている。次に、蒸着源55bにレ
ーザビームを照射し、Sr2 CuO3 を13nmの膜厚
で形成した。この膜は(110)配向であり、そのc軸
は基板面と平行である。再び蒸着源55aにレーザビー
ムを照射し、(1111)配向のBi2 Sr2 Ca2 Cu
3y3相の超電導薄膜を形成した。
【0140】このS−I−Sトンネル接合では、70K
以下の温度領域においてジョセフソン特性が観測され
た。
【0141】一方、基板としてLaAlO3 (100)
を用いた場合、得られた膜は全てc軸配向であった。こ
の接合では、10Kまで冷却しても、ジョセフソン特性
は観測されなかった。
【0142】なお、Bi系に限らず、Tl系、Pb系の
酸化物超電導体を用いた場合でも、以上で説明したのと
同様な効果が得られると予想される。Tl系の場合に
は、BiがTlに、SrがBaに置換される。Pb系の
場合には、Bi2 が(Pb、Cu)3 に、Caが(C
a、Y)に置換される。ただし、超電導特性に関して
は、それぞれの酸化物超電導体を用いた場合で若干異な
る。
【0143】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、全
c軸のうち基板面に垂直な方向に向いているc軸の割合
を1%以下である酸化物超電導薄膜を提供することがで
き、基板面に垂直な方向に大きな臨界電流密度およびコ
ヒーレンス長を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いられた蒸着装置の構成図。
【図2】基板上に形成された超電導薄膜の断面図。
【図3】実施例1で形成された超電導薄膜のX線回折
図。
【図4】比較例1で形成された超電導薄膜のX線回折
図。
【図5】本発明における超電導薄膜の成膜条件を示す
図。
【図6】比較例2で形成された超電導薄膜のX線回折
図。
【図7】実施例6で形成された超電導薄膜のX線回折
図。
【図8】基板上に形成された超電導トンネル接合の断面
図。
【図9】実施例15で形成された超電導トンネル接合の
X線回折図。
【図10】本発明におけるトンネル層の成膜条件を示す
図。
【図11】実施例27で形成されたマイクロブリッジ形
の超電導トンネル接合の平面図。
【図12】本発明において用いられた反応性スパッタ装
置の構成図。
【図13】本発明において用いられたレーザ蒸着装置の
構成図。
【符号の説明】
1…成膜室、2a〜2d…クヌーセン・セル、3…基
板、4…基板ホルダ、5…ヒータ、6…石英管、7…コ
イル、8…高周波電源、9…排気系、21…成膜室、2
2…基板ホルダ、23…基板、24…ヒータ、25a〜
25e…ターゲット、26a〜26e…高周波電源、2
7a〜27e…シャッター、28…排気系、29…ガス
導入口、51…成膜室、52…基板ホルダ、53…基
板、54…ヒータ、55a、55b…蒸着源、56…A
rFエキシマレーザ、57…ビューイングポート、58
…排気系、59…ガス導入口、101…基板、102…
超電導層、103…トンネル層、104…超電導層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平3−91858 (32)優先日 平3(1991)4月23日 (33)優先権主張国 日本(JP)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成されたBi系、Tl系、P
    b系からなる群より選択される酸化物からなる酸化物超
    電導薄膜において、前記酸化物の全c軸のうち前記基板
    面に垂直な方向に向いているc軸の割合が1%以下であ
    ることを特徴とする酸化物超電導薄膜。
  2. 【請求項2】 基板上に、Bi系、Tl系、Pb系から
    なる群より選択される酸化物で構成される酸化物超電導
    薄膜を製造するにあたり、活性酸素と、Bi系、Tl
    系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成する
    一部の金属成分を供給して、前記基板上に酸化物からな
    る組成変調膜を形成する工程と、活性酸素と、Bi系、
    Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成
    する全部の金属成分を供給して、前記組成変調膜上に酸
    化物超電導薄膜を形成する工程とを具備したことを特徴
    とする酸化物超電導薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 基板上に、Bi系、Tl系、Pb系から
    なる群より選択される酸化物で構成される酸化物超電導
    薄膜を製造するにあたり、前記基板の温度をy(℃)、
    活性酸素の量とBi系、Tl系、Pb系からなる群より
    選択される酸化物を構成する金属成分の量との比率をx
    として、y=850、y=6.25x+540、y=4
    x+560の3直線で囲まれる範囲内の条件で、活性酸
    素と金属成分とを供給して前記基板上に酸化物超電導薄
    膜を形成することを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 基板上に順次形成された、それぞれBi
    系、Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物で
    構成される、下部の超電導層、トンネル層および上部の
    超電導層を有する超電導トンネル接合において、前記下
    部の超電導層、トンネル層および上部の超電導層を構成
    するそれぞれの酸化物の全c軸のうち前記基板面に垂直
    な方向に向いているc軸の割合が1%以下であることを
    特徴とする超電導トンネル接合。
  5. 【請求項5】 基板上に順次形成された、それぞれBi
    系、Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物で
    構成される、下部の超電導層、トンネル層および上部の
    超電導層を有する超電導トンネル接合を製造するにあた
    り、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる群よ
    り選択される酸化物を構成する一部の金属成分を供給し
    て、前記基板上に酸化物からなる組成変調膜を形成する
    工程と、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系からなる
    群より選択される酸化物を構成する全部の金属成分を供
    給して、前記組成変調膜上に下部の酸化物超電導層を形
    成する工程と、活性酸素と、Bi系、Tl系、Pb系か
    らなる群より選択される酸化物を構成する一部の金属成
    分を供給して、前記下部の超電導層上に酸化物からなる
    トンネル層を形成する工程と、活性酸素と、Bi系、T
    l系、Pb系からなる群より選択される酸化物を構成す
    る全部の金属成分を供給して、前記トンネル層上に上部
    の酸化物超電導層を形成する工程とを具備したことを特
    徴とする超電導トンネル接合の製造方法。
  6. 【請求項6】 基板上に順次形成された、それぞれBi
    系、Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物で
    構成される、下部の超電導層、トンネル層および上部の
    超電導層を有する超電導トンネル接合を製造するにあた
    り、前記基板の温度をy(℃)、活性酸素の量とBi
    系、Tl系、Pb系からなる群より選択される酸化物を
    構成する金属成分の量との比率をxとして、y=85
    0、y=6.25x+540、y=4x+560の3直
    線で囲まれる範囲内の条件で活性酸素と金属成分とを供
    給して前記基板上に下部の酸化物超電導層を形成する工
    程と、y=850、y=4x+480、y=2.5x+
    525の3直線で囲まれる範囲内の条件で活性酸素と金
    属成分とを供給して前記下部の酸化物超電導層上に酸化
    物からなるトンネル層を形成する工程と、y=850、
    y=6.25x+540、y=4x+560の3直線で
    囲まれる範囲内の条件で活性酸素と金属成分とを供給し
    て前記トンネル層上に上部の酸化物超電導層を形成する
    工程とを具備したことを特徴とする超電導トンネル接合
    の製造方法。
JP3305124A 1990-11-30 1991-11-20 酸化物超電導薄膜およびその製造方法ならびに超電導トンネル接合およびその製造方法 Pending JPH057027A (ja)

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JP2-336705 1990-11-30
JP33670590 1990-11-30
JP6799591 1991-03-07
JP3-67995 1991-03-07
JP3-84680 1991-03-25
JP8468091 1991-03-25
JP9185891 1991-04-23
JP3-91858 1991-04-23

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005062424A1 (ja) * 2003-12-18 2005-07-07 Fujitsu Limited アンテナ装置、電波受信装置、及び、電波送信装置
US7507691B2 (en) 2004-09-21 2009-03-24 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Bismuth based oxide superconductor thin films and method of manufacturing the same
US7981840B2 (en) 2005-03-02 2011-07-19 National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology Method of manufacturing Bi-based oxide superconductor thin films

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