JPH0559519A - めつき層合金化プロセスのシミユレーシヨン装置 - Google Patents

めつき層合金化プロセスのシミユレーシヨン装置

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JPH0559519A
JPH0559519A JP22157691A JP22157691A JPH0559519A JP H0559519 A JPH0559519 A JP H0559519A JP 22157691 A JP22157691 A JP 22157691A JP 22157691 A JP22157691 A JP 22157691A JP H0559519 A JPH0559519 A JP H0559519A
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JP
Japan
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simulation
qualitative
variable
variables
iron
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Pending
Application number
JP22157691A
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English (en)
Inventor
Toshiharu Iwatani
敏治 岩谷
Shunichi Kumagai
俊一 熊谷
Kazuo Nose
和夫 能勢
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶融亜鉛めっきライン(CGL)の定性シミ
ュレーションに適した十分な変数の種類及び変数間の定
性的な関係を見い出し,これらを用いることにより,実
際に即したシミュレーション結果を得ることのできるめ
っき層合金化プロセスのシミュレーション装置の提供。 【構成】 上記CGL4の定性シミュレーション装置で
は,上記変数として少なくともシミュレーション時刻,
合金化炉8内のめっき鋼板9の走行位置,上記めっき鋼
板9の温度,亜鉛めっき層6への鉄拡散速度,亜鉛層7
中の鉄濃度,合金化速度定数が用いられ,更にこれらの
変数間の定性的な関係を表わす最小限必要な定性関係式
が設定され,これらの変数,定性関係式を用いて上記定
性シミュレーションの演算を行ったので,上記鉄濃度の
定性シミュレーション装置による予測値を実際の計測値
に対し±1%以内の誤差範囲に収めることができた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,表面にめっき層が施さ
れてなる鋼材を加熱炉内で走行させることにより,上記
めっき層中に上記鋼材からの鉄を拡散させて上記めっき
層を所定範囲内の鉄濃度の合金層に変化させる,例えば
溶融亜鉛めっきライン等のめっき層合金化プロセスの状
態を表わす変数の時間的挙動を演算するシミュレーショ
ン装置に係り,特に定性シミュレーションの手法を適用
し,この定性シミュレーションに適した変数等の条件を
選択・設定することにより有効なシミュレーションを行
うことのできるシミュレーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上記したようなめっき層合金化プロセス
の一例となる溶融亜鉛めっきライン(Continuous Galva
nizing Line;以下CGLという)の概略構成を図9及
び図10に示す。各図において,CGL4では,洗浄後
の冷延鋼板5に対し焼鈍炉11で焼鈍処理を行ってめっ
き用の冷延鋼板5にした後,めっき浴槽12に満たされ
た溶融亜鉛13内で溶融亜鉛めっきが施され,更に合金
化炉8において亜鉛めっき層6の合金化処理が行われ
る。上記合金化処理とは,亜鉛がめっきされためっき鋼
板9を合金化炉8において600℃前後に加熱し,表面
の亜鉛めっき層6(めっき層)の中に冷延鋼板5からの
鉄を拡散させて,鉄(Fe)−亜鉛(Zn)の亜鉛層7
(合金層)を形成させる処理である。上記亜鉛層7を形
成させることにより,通常の溶融亜鉛めっきのみの鋼板
よりも耐食性,加工性が改善され,コスト等をも考慮す
ると非常に有用な防錆鋼板になる。近年,上記したよう
な合金層の形成された鋼板が自動車産業用として需要が
増大しその安定した生産が要求されている。上記亜鉛と
鉄により形成される合金の物性は,鉄の亜鉛めっき層6
中への拡散度合によって変化し,加工性,耐食性等に影
響を与えるが,一般的に上記亜鉛層7中の鉄濃度fe%
が10%前後に形成された合金が望ましいとされてい
る。また,同一の冷延鋼板5上で,板の幅方向又は長手
方向により形成される合金の物性が異なると,最終的に
製造された合金化鋼板10上に斑模様又は縞模様が発生
し外見が悪化する,いわゆる合金化ムラの発生を引き起
こす。しかし,上記亜鉛層7中の鉄濃度が10%前後の
所定範囲内で一定であれば,上記合金化ムラを生じるこ
とがないとされる。従って,上記合金化処理において
は,亜鉛層7中の鉄濃度fe%を,目標範囲,例えば1
0±1%程度以内(9〜11%)で一定にすることが要
求される。上記鉄濃度fe%の従来の制御方法として
は,合金化炉8内を走行中のめっき鋼板9に対しX線セ
ンサを用いてオンラインで上記鉄濃度fe%を計測し,
それに基づいて上記操業条件の制御を行うものや,上記
溶融亜鉛めっきライン4についての数式モデルを予め設
定しこの数式モデルを用いてシミュレーションを行い,
このシミュレーション結果に基づいて上記鉄濃度fe%
が上記目標範囲に入るような操業条件を設定するもの等
が考えられる。ところが,前者のオンライン計測によれ
ば,その計測精度は現状において±2%程度であり,こ
れに基づいて鉄濃度を±1%以内の精度に収めることは
困難である。一方,上記CGL4の操業に影響を与える
操業条件の数は子細なものまで含めると100以上にな
る。上記CGL4の操業条件のうち主要なものを図11
に示す。その中でも上記鉄濃度の制御に適用することが
できるものは,合金化炉温のパターン,めっき鋼板9の
走行速度,めっき付着量等である。但し,これらの操業
条件がどのようなメカニズムで上記鉄濃度に影響を与え
るかは現在までは定性的にしか解明されておらず,それ
らの定量的な関係は十分把握されていないのが実情であ
る。例えば,一定の板温度における鉄濃度fe%の時間
変化に関する実験結果を図12に示す。これによれば,
時間経過と共に鉄濃度が増加して行くのは明らかであ
る。しかしながら,鉄濃度fe%のほとんど全ての挙動
を網羅すべく,上記数式モデルを設定しこれらの挙動を
一定の数式で記述するのは,必要とされる数式の数が膨
大により,現実には困難である。また,合金化炉8内の
めっき鋼板9の色,合金化度等によりめっき鋼板9の温
度の計測値が異なるので,炉内におけるめっき鋼板9の
温度計測を正確に行うことはできない。そこで,上記め
っき鋼板9の温度と鉄濃度fe%の関係を数式化しよう
とすると,上記めっき鋼板9の温度を合金化炉8の炉内
温度との関係から求めなければならない。ところが,次
の(1)式,(2)式のように, q=G・(σε1 ε2 )/(ε1 +ε2 −ε1 ε2 )・〔TW 4 −T(k) 4 〕 ・・・(1) T(k+1) =T(k) +qΔt/HρC ・・・(2) q:単位面積当りに鋼板が吸収した熱量(Kcal/m
2 ) G:補正値(板幅,板厚,走行速度により補正。) σ:ステファン・ボルツマン定数(=4.87) ε1 ε2 :エミシビティ(ここではε1 =ε2 =0.
9) TW :炉温(K) T(k) :板温(K) Δt:きざみ時間(ここでは5秒) H:板厚(mm) ρ:比重(=7850kg/m3 ) C:比熱(Kcal/Kg・℃,板温により層別に設定
した。) 確定することが困難なパラメータ,特にε1 ,ε2 等が
多数存在する。このようにCGL4の挙動を一定の数式
で記述するのは困難であるので,さまざまな形の式を仮
定してシミュレーションを行う必要がある。この場合,
数式を決定した後にも多くのパラメータを変化させてシ
ミュレーションを行いそれらの結果を比較検討してパラ
メータを決定する必要がある。更には,上記CGL4の
プロセス状態を表す変数や上記操業条件等について変数
間或いは変数と操業条件との間の関係が定量的に把握さ
れていない場合が多い。このような理由で,従来のCG
L4は定量シミュレーションによることなく,実験結果
から人により決定された操業条件の大まかな設定値に基
づいて制御されている。そのため,上記従来のCGL4
では,製品のうちの数%に合金化ムラが発生し商品価値
を低下させる原因となったり,或いは逆に過度に慎重な
運転を行うことにより操業効率が低下するといった問題
があった。上記したように,上記鉄濃度を定量的なシミ
ュレーションで求めることは困難であるが,ある目標範
囲に鉄濃度が入るか否かを決定することは十分可能であ
る。例えば上記鉄濃度fe%の管理目標は,CGL4特
有であって,一定の幅のある目標範囲(9〜11%)で
ある。このような定量的ではない,即ち定性的な関係か
ら上記CGL4の変数の挙動を予測する手法として,い
わゆる定性シミュレーションがある。以下,一般的な定
性シミュレーションの原理を説明する。定量的なシミュ
レーションを行う場合の変数の記述方法と上記定性シミ
ュレーションを行う場合の変数の記述方法とを図13の
(A),(B)にそれぞれ対比して示す。同図(A)に
示す変数xは0から100までの連続値である。一方,
同図(B)に示す変数xの値は,予め設定された境界標
(0,10,50,100)により,この変数xが存在
する区間(0≦x≦100)が複数の離散的な定性値
(分割区間)に分割されていることを示している。即
ち,この変数xは0,0〜10(0と10の境界標は含
まない。以下同様である。),10,10〜50,5
0,50〜100,100の7つの定性値をとることに
なる。このように分割される区間の定性値幅が細かけれ
ば,上記定量的なシミュレーションに近い結果を得るこ
とができると考えられるが,上記定性値幅が細か過ぎる
場合には,実用上の演算時間以内にシミュレーションが
終了しないこともあり得る。尚,このような定性シミュ
レーションでは,定性値が次の定性値に移り得る変化方
向として,増加,減少,変化なしの3通りの方向が設定
される。図14は2つの変数x,y間の座標平面を示
し,同図(A)は定量値の座標平面であり,同図(B)
は上記定性値の座標平面を示す。この場合,変数x,y
の境界標は0と10である。図15は図14に示した座
標平面上における変数xと変数yとの関係を示し,同図
(A)はy=xの連続的な関係を示し,同図(B)は定
性値の座標平面上において変数xと変数yとが定性的に
単調増加の関係にあり,x=0のときy=0になり,x
=10のときy=10になるという関係を示している。
即ち,後者は前者の関係を定性的に表現し更に一定の対
応関係(対応値:0と0,10と10)を加えたものを
示している。同図(B)中の定性関係式において,M+
xyは変数xと変数yとが単調増加(M+)であること
を示している。この場合,上記変数x,yは,対応する
それぞれ3つの定性値によりそれぞれの関係が限定され
ることになる。即ち,上記変数x,yはy=0及びx=
0と,0≦y≦10及び0≦x≦10と,y=10及び
x=10の3つの座標により関係付けられている。上記
各座標はそれぞれ変数x,yの定性値により表されるプ
ロセス状態を示している。上記したような変数の記述方
法については,図16に示すように,変数x,f(x)
間の関係において上下限(上限式f1 (x),下限式f
2 (x))が判明している場合についても記述可能であ
る。上記定性シミュレーションを行う際には,予め選択
され設定された変数とこれら変数毎の境界標,変数間の
定性的な関係を示す定性関係式に少なくとも基づいて,
上記変数の時間的挙動が演算される。この場合,上記定
性シミュレーションの演算に先立って,各変数に初期値
が設定され,各初期値より与えられる座標,即ちプロセ
スの初期状態からシミュレーションが開始される。そし
て,シミュレーション時刻毎に各変数の変化方向が上記
定性関係式や対応値に基づいて限定され,限定された変
化方向に存在する定性値により,次に遷移すべき座標が
決定される。なお,図15(B)に示す座標空間におい
て,変数xとyの境界標が対応値(0と0,10と1
0)として設定されているので,一方が境界標にあると
きは他方も必ず対応する境界標となる座標をとることに
なる。この場合,初期のプロセス状態がy=0及びx=
0の座標であったとすると,この座標からの変数x,y
の変化方向はいずれも増加のみに限定されるので,次に
遷移する座標は0≦y≦10及び0≦x≦10の座標と
なる。従って,上記座標空間の場合,Qで示される座標
は,シミュレーション実行時には実現しない定性値の組
み合わせとして,即ち実現しないプロセス状態として演
算対象から除外される。このように,上記定性シミュレ
ーションでは,用いる変数の値が,連続値を大まかに分
割した幅を有する一つの定性値も含むので,大まかに分
割された区間内の連続値の全ては当該定性値に含まれる
ことになる。そのため,この定性値に含まれる連続値で
表現し得る全てのプロセス状態が上記一つの定性値で表
現されることになる。従って,定量的なシミュレーショ
ンのように,パラメータを変化させることにより全ての
プロセス状態を表現する必要がない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したように,定性
シミュレーションでは,上記定性値として,境界標単体
のものと幅のある連続値を含む境界標間の区間よりなる
ものとがあり,この境界標間の区間よりなる定性値をも
一つの値として用いるので,シミュレーション演算が比
較的粗くなる。そこで,合金化プロセスの定性シミュレ
ーションによるシミュレーション精度を上げるため,当
該プロセス特有の有効な変数,条件等を見つけることが
必要である。しかしながら,現状までは上記したような
有効な変数,条件等は見出されておらず,上記合金化プ
ロセスに定性シミュレーション手法が実用的に適用され
ていないのが実情である。そこで,本発明の第1の目的
とするところは,上記溶融亜鉛めっきラインの定性シミ
ュレーションに適した十分な変数の種類及びこれら変数
間の定性的な関係を見い出し,これらを用いて上記定性
シミュレーションを実行することにより実際のプロセス
状態に即したシミュレーション結果を得ることのできる
めっき層合金化プロセスのシミュレーション装置を提供
することにある。ところで,上記したような定性シミュ
レーションの場合,変数の変化方向によって次にとり得
るプロセス状態が決まるので,限定された変化方向が複
数のとき,最終的にとり得るプロセス状態を数多く算出
すること,いわゆるプロセス状態の遷移の枝分れを生じ
ることがある。このように,多数のプロセス状態の枝分
れを生じると,実用的な時間内にシミュレーションを終
えることができないといった不都合がある。従って,本
発明の第2の目的とするところは,定性シミュレーショ
ンに必要な演算時間を短くすることのできるめっき層合
金化プロセスのシミュレーション装置を提供することに
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために,第1の発明が採用する主たる手段は,その要
旨とするところが,表面にめっき層が施されてなる鋼材
を加熱炉内で走行させることにより,上記めっき層中に
上記鋼材からの鉄を拡散させて上記めっき層を所定範囲
内の鉄濃度の合金層に変化させるめっき層合金化プロセ
スの状態を構成する変数の時間的挙動を演算するシミュ
レーション装置において,上記変数が存在する複数の分
割区間を記憶する変数分割区間記憶手段と,少なくと
も,上記合金層中の鉄濃度の時間微分が上記めっき層中
への鉄拡散速度に等しいこと,上記加熱炉内の鋼材の温
度と合金化速度定数とが単調増加の関係にあること,上
記合金層中の鉄濃度と上記鉄拡散速度の積が上記合金化
速度定数に等しいこと,上記加熱炉内の鋼材の走行位置
とシミュレーション時刻とが単調増加の関係にあること
及び上記鋼材の走行位置と上記鋼材の温度とが単調増加
の関係にあることに基づいた定性関係式を設定する定性
関係式記憶手段と,上記設定された定性関係式に基づい
て上記変数の変化方向及び上記変数が存在する分割区間
により表される前記プロセスの状態を上記シミュレーシ
ョン時刻毎に演算する状態演算手段とを備え,上記分割
される変数として,少なくとも上記シミュレーション時
刻,上記加熱炉内の鋼材の走行位置,上記加熱炉内の鋼
材の温度,上記めっき層中への鉄拡散速度,上記合金層
中の鉄濃度,上記合金化速度定数を用いた点に係るめっ
き層合金化プロセスのシミュレーション装置として構成
されている。また,上記第2の目的を達成するために,
第2の発明が採用する主たる手段は,その要旨とすると
ころが,上記第1の発明に係る状態演算手段が,上記変
数の時間的挙動の演算に供される分割区間を減少させる
ための演算条件に従って上記変数が存在する分割区間を
上記シミュレーション時刻毎に演算する手段として構成
されている。なお,上記演算条件としては,上記変数が
実際上存在し得ない分割区間を上記変数が存在する分割
区間から除去することを内容とする条件であること,又
は上記定性関係式に用いられる変数に上記分割区間の上
限及び/若しくは下限を設定することを内容とする条件
を設定することもできる。そして,上記第2の目的を達
成するために,第3の発明が採用する主たる手段は,そ
の要旨とするところが,上記第1の発明に係る状態演算
手段が,上記変数の変化方向を除外して前記プロセスの
状態を上記シミュレーション時刻毎に演算する手段とし
て構成されている。
【0005】
【作用】上記第1の発明によれば,実際のプロセスの状
態に即したシミュレーション結果を得るために,最小限
必要な分割される変数として,シミュレーション時刻,
上記加熱炉内の鋼材の走行位置,上記加熱炉内の鋼材の
温度,上記めっき層中への鉄拡散速度,上記合金層中の
鉄濃度,合金化速度定数が用いられ,更にこれらの変数
間の関係を表わす,少なくとも,上記合金層中の鉄濃度
の時間微分が上記めっき層中への鉄拡散速度に等しいこ
と,上記加熱炉内の鋼材の温度と上記合金化速度定数と
が単調増加の関係にあること,上記合金層中の鉄濃度と
上記鉄拡散速度の積が上記合金化速度定数に等しいこ
と,上記加熱炉内の鋼材の走行位置とシミュレーション
時刻とが単調増加の関係にあること及び上記鋼材の走行
位置と上記鋼材の温度とが単調増加の関係にあることに
基づいた定性関係式が見い出され設定された。従って,
上記第1の発明に係るシミュレーション装置は実際のプ
ロセス状態に即した有用なシミュレーション結果を得る
ことができる。また,上記第2の発明によれば,変数の
時間的挙動の演算に供される分割区間を減少させるため
の演算条件に従って,上記変数の存在する分割区間がシ
ミュレーション時刻毎に演算されるので,上記変数の時
間的挙動の演算対象となる分割区間が少なくて済む。従
って,上記めっき層合金化プロセスが最終的にとり得る
状態を絞り込むことができる。これによって,シミュレ
ーションに必要な演算時間を短くすることができる。更
に,上記第3の発明によれば,上記シミュレーション時
刻毎のプロセスの状態は,上記変数の変化方向を除外し
て演算され,上記変数が存在する区間のみにより表わさ
れる。従って,前記プロセスの次にとりうる状態の数は
少なくなる。その結果,演算時間の短縮化を図ることが
できる。
【0006】
【実施例】以下添付図面を参照して,本発明を具体化し
た実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以
下の実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発
明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここ
に,図1は本発明の一実施例に係る定性シミュレーショ
ン装置の概略構成を示すブロック図,図2は上記定性シ
ミュレーション装置に用いられる変数と各変数に設定さ
れる境界標とを示す図表,図3は上記変数間の定性関係
を示す定性関係式及びその定義を示す図表,図4は上記
定性シミュレーション装置を動作させるプログラムの一
部を示す説明図,図5は上記定性シミュレーション装置
により演算されたCGLの時間的な状態遷移を示す模式
図,図6は上記定性シミュレーション装置により演算さ
れた亜鉛層中の鉄濃度の時間的挙動を示すグラフ図,図
7は上記定性シミュレーション装置により演算された鉄
濃度の演算値と実際に検出された鉄濃度の実績値を対比
して示すグラフ図,図8は上記定性シミュレーション装
置に対し指定された変数の変化方向の考慮を行わないと
いうシミュレーション条件を設定しなかったことによる
プロセス状態遷移の枝分れの発生を示す状態説明図であ
る。但し,図9及び図10に示した一般的な溶融亜鉛め
っきライン4(CGL4)と共通する要素には,同一の
符号を使用すると共に,その詳細な説明は省略する。本
実施例に係る上記CGL4の定性シミュレーション装置
1は,プログラミング言語としてLISP言語を使用可
能のワークステーションにより具現化され,図1に示す
ように,上記CGL4のプロセス状態を表わす変数の種
類,これらの変数を複数の定性値(分割区間)に分割す
るための境界標,上記変数間の定性的な関係を表わす定
性関係式,シミュレーションを効率良く実行させるため
のシミュレーション条件,上記変数の上下限等をそれぞ
れ設定入力するための設定入力部3と,中央演算処理部
CPUとメモリMとより主としてなり,上記設定入力部
3からインタフェースモジュール21を介して設定入力
された上記変数,定性関係式,シミュレーション条件,
上記変数の上下限等及び上記CGL4の操業条件に基づ
いて,上記変数の時間的挙動をシミュレーション時刻毎
に演算するシミュレーション部2と,上記シミュレーシ
ョン部2からインタフェースモジュール21を介して入
力された上記シミュレーション時刻毎の変数,特に上記
亜鉛層7中の鉄濃度fe%を画面表示もしくは印字出力
する出力部22とより主として構成されている。上記定
性シミュレーション装置1ではCGL4のプロセス状態
のシミュレーションを行うために,このシミュレーショ
ンに先立って適宜の種類の変数が選択され,上記設定入
力部3から設定入力される。上記設定入力される変数と
しては,図2に示すように,上記合金化炉8により加熱
されて得た合金化鋼板10の亜鉛層7中の鉄濃度(fe
%),上記合金化炉8内のめっき鋼板9の温度(te
m),上記亜鉛めっき層6中への鉄拡散速度(v),上
記合金化炉8内のめっき鋼板9の走行位置(bash
o),合金化速度定数(a),時刻(time:シミュ
レーション時刻)が用いられる。これらの変数は上記C
GL4のプロセス状態を的確に表現し得る変数として数
多くの試験・研究の結果に基づいて選択されたものであ
って,特に,上記鉄濃度fe%の評価を有効に行うため
には,必ず必要である。加えて,上記設定入力される変
数として,上記めっき鋼板9の走行速度lsを併用すれ
ば,上記鉄濃度fe%の評価を,より有効に行うことが
できる。また,各変数毎に当該変数が存在する連続値と
しての区間を複数の分割区間に分割するための境界標が
それぞれメモリMに記憶されている。例えば,上記亜鉛
層7中の鉄濃度fe%を例にとると,この鉄濃度fe%
には,0,2,6,8,9,10,11,12,inf
(infは正の無限大であることを示す)といった9つ
の境界標が設定されている。これによって,上記鉄濃度
fe%が存在する区間は,0,0〜2(0と2を含まな
い,以下境界標間の値については同様である),2,2
〜6,6,6〜8,8,8〜9,9,9〜10,10,
10〜11,11,11〜12,12,12〜inf,
infの17個の定性値(分割区間)に分割されること
になる。以下他の変数についても同様である。即ち,上
記変数が存在する複数の分割区間を記憶する機能を実現
する手段が本発明の変数分割区間記憶手段である。
【0007】また,上記設定入力された各変数間の定性
的な関係を示す定性関係式も図3に示す内容のものが設
定入力される。上記変数間の定性的な関係は次の通りで
ある。 亜鉛層7中の鉄濃度fe%の時間微分が亜鉛層7中
への鉄拡散速度vに等しいこと(定性関係式=(d/d
t fe% v):以下,他の変数の定性関係式につい
ては図3を参照のこと), 上記合金化炉8内のめっき鋼板9の温度temと上
記合金化速度定数aとが単調増加(M+)の関係にある
こと, 上記亜鉛層7中の鉄濃度fe%と亜鉛層7中への鉄
拡散速度vの積が上記合金化速度化定数aに等しいこ
と, 上記合金化炉8内のめっき鋼板9の走行位置bas
hoとシミュレーション時刻timeとが単調増加の関
係にあること, 上記合金化炉8内の,めっき鋼板9の走行位置ba
shoと上記温度temとが単調増加の関係になるこ
と,及び めっき鋼板9の走行速度lsの値は一定であること
に基づいている。上記したように設定された定性関係式
についても,特に上記鉄濃度fe%の実際に即したシミ
ュレーション結果を得るために最低限必要なものとして
は,式番号〜で示す定性関係式であって,で示す
定性関係式があればより好ましいものとなる。 なお,式番号,,の定性関係式において( )内
の値は各変数の境界標を示し,それぞれ図中表示された
対の対応関係を示している。上記したような変数,境界
標,定性関係式をLISP言語を用いて記述したプログ
ラムの一例を図4に示す。上記プログラムの内容は設定
入力部3からシミュレーション部2へ入力されメモリM
に格納されている。即ち,少なくとも上記式番号〜
の定性関数式を記憶する機能を実現する手段が本発明に
いう定性関数式記憶手段である。又,上記定性シミュレ
ーション装置1では,次のようなシミュレーションの停
止条件が予め設定されている。例えば, (1)同じプロセス状態が前回の時刻に引続き演算され
たとき,或いは間に他のプロセス状態を介して過去の時
刻のプロセス状態と同じプロセス状態が演算されたと
き,即ち,対応するプロセス状態の全ての変数の定性値
及びそれぞれの変化方向が一致したとき。 (2)全ての変数の変化方向がいずれも「変化なし」で
あったとき。 (3)全ての変数の定性値及びそれぞれの変化方向が全
ての定性関数式を満足させないとき。 (4)逐次演算されたプロセス状態の総計が予め設定さ
れた所定の数に達したとき。 といった内容の停止条件が設定されている。ところで,
一般的にシミュレーションを行う場合,使用される変数
及びこれらの関係の記述だけでなく,効率の良いシミュ
レーションを行うためのシミュレーション条件を設定す
ることがある。特に上記定性シミュレーションの場合,
連続値の大まかな分割区間を一つの定性値と考えるた
め,本質的に大まかな情報を用いてシミュレーションを
行うことになり,その結果上記プロセス状態の枝分れの
発生が多くなる場合がある。これを防止するために,上
記シミュレーション部2では,図4のプログラム中の式
(10)〜式(12)に示す3つのシミュレーション条
件及び式(13)〜式(16)に示す上下限設定式が設
定されている。
【0008】本実施例装置では,各時刻毎のプロセス状
態を判断する際に,変数が存在している定性値そのもの
だけでなくその変数の変化方向(増加,減少,変化な
し)も区別して判断される。これは,プロセス状態の同
定を厳密にすることによりシミュレーション精度を高く
するためである。例えば図13の変数xを例にあげる
と,この変数xのとりうる定性値は7個であるが,それ
ぞれの定性値について上記3つの変化方向を有している
ので,x以外の変数の条件が同じ場合,この変数xによ
ってとりうるプロセス状態は21通りの全て異なる状態
である。しかしながら,上記変化方向を考慮しないでプ
ロセス状態を判断すると,とりうるプロセス状態は7通
りですむ。そこで,必要以上の精度を期待しなくてもす
む場合には,上記変化方向の区別を無視することもでき
る。そこで,式(11)の如く, (ignore−qdir 変数名)といったシミュレ
ーション条件式の設定を行うことにより,この変数の変
化方向を区別しないで(除外して)プロセス状態を演算
するシミュレーションを行うことができる。本実施例で
は,上記鉄拡散速度vに対してその宣言を行っている。
これによって,鉄拡散速度vの変化方向の違いによるプ
ロセス状態の枝分れの発生がなくなる。また,シミュレ
ーション停止条件も緩和される。従って,シミュレーシ
ョンが停止するまでの時間を短縮することができる。即
ち,上記変数の変化方向を除外して前記プロセスの状態
を上記シミュレーション時刻毎に演算する機能を実現す
る手段が本発明にいう状態演算手段のひとつである。一
方,本実施例装置では,或る一つの変数のみが境界標間
の定性値にあり,他の変数が全てそれぞれの境界標単体
の定性値である場合に,このようなプロセス状態が繰り
返し出現しても,これらは同じ状態とは判断されない。
しかしながら,プロセスの状態特性が振動する系である
場合には,上記したようなプロセス状態が繰返し間欠的
に出現することが考えられる。ところが,これらは同一
と判断されないため,シミュレーションは延々と続くこ
とになる。そこで,上記定性シミュレーション装置1
は,上記或る変数の定性値について現在の境界標間の定
性値に新たな境界標を設定するアルゴリズムを備えてい
る。上記新たな境界標が設定されることにより,新たな
定性値が設けられるので,上記ある変数が上記新たな境
界標上の定性値をとる可能性が増大する。これによっ
て,振動する系に対してもシミュレーションの演算を収
束させるようになっている。しかしながら,上記したよ
うに新たな境界標を設定することにより,定性値の数が
増加するので,プロセス状態の枝分れが発生する可能性
がある。一方,当該CGL4は,振動する系ではないの
で上記したような新たな境界標を設定する必要がない。
そこで式(10)のように, (no−new−landmarks 変数名)のシミ
ュレーション条件を設定することによって当該変数に対
し新たな境界標の作成を禁止し,余分な枝分れの発生を
防止するようになっている。また,上記したように設定
された境界標の値には,便宜上使用されるものもあり,
実際にはその境界標の値に変数が到達しないものが存在
する。例えば,めっき鋼板9の温度temの境界標に
は,0が存在するが,実際には上記温度temが0にな
ることはあり得ない。また,上記鉄濃度fe%やめっき
鋼板9の走行位置bashoについても無限大(in
f)になることはあり得ない。そこで,式(12)のよ
うに, (unreachable−values (変数名
境界標))のシミュレーション条件式を設定することに
よって,当該変数が上記境界標に到達しないことを指定
することができる。これによって,上記設定された境界
標についての演算が省略される。これによっても,演算
時間の短縮化を図ることができる。即ち,上記変数が実
際上存在し得ない分割区間を上記変数が存在する分割区
間から除去することを内容とする条件が本発明にいう変
数の時間的挙動の演算に供される分割区間を減少させる
ための演算条件のひとつである。なお,これらのシミュ
レーション条件式を設定しなくても,上記定性シミュレ
ーションを有効に行うことはできる。しかしながら,上
記したようなシミュレーション条件式を設定することに
より,シミュレーションの演算に供される定性値を減少
させることができる。結果としてとり得るプロセス状態
をできるだけ絞り込むことが可能になり,シミュレーシ
ョン結果を得るまでの演算時間の短縮化を図ることがで
きる。
【0009】更に,上記設定された変数のうち,時刻t
ime,走行位置bashoについては,図4のプログ
ラムの如く,それぞれの上限と下限とが設定される。こ
こで,xは上記時刻を,yは上記走行位置を表わし,式
(13)の変数yのxに関する上限を示す正関数 y≦90x+5 を示しており,式(14)はその逆関数 x≧(y−5)/90 を示している。上記プログラムでは,上記したように正
関数と逆関数の両方を指定するようになっている。ま
た,式(15),式(16)は,yのxに関する下限を
示す正関数及びその逆関数であり,それぞれ y≧90x+5 x≦(y−5)/90 を示している。以上,式(13)〜式(16)について
は,上限・下限が一致しており, y=90x+5 であることを示し,上限下限間に連続値としての幅は存
在しない。しかし,連続値としての幅を持たせることも
可能で,上記変数x,yの所定の範囲毎に関数の形を変
化させることにより,より複雑な形の範囲の設定を行う
ことも可能である(図16参照)。これにより,上限・
下限の範囲外の定性値についてシミュレーション演算を
行う必要がなく,演算時間の短縮化に寄与する。尚,設
定されるのは上限若しくは下限の一方のみであっても演
算対象となる定性値を削減できることはいうまでもな
い。即ち,上記定性関数式に用いられる変数に上記分割
区間の上限及び/若しくは下限を設定することを内容と
する条件が,本発明にいう上記演算条件のひとつであ
る。本実施例の定性シミュレーション装置1は上記した
ように構成されている。そこで,上記定性シミュレーシ
ョン装置1によるCGL4のプロセス状態のシミュレー
ションに先立って,図11に示したそれぞれの操業条件
が上記設定入力部3からシミュレーション部2へ設定入
力されメモリMに格納される。そして,シミュレーショ
ン演算の開始指令が設定入力部3から与えられると,上
記シミュレーション部2は上記各変数に初期値を設定す
る。そして,シミュレーション部2は,時刻timeを
進め,上記プログラムの内容(定性関係式等の内容)と
上記メモリMに格納された操業条件に基づいて,時刻t
ime毎に各変数の変化方向を決定し更に各変数が存在
するそれぞれの定性値を演算してメモリMに逐次格納す
る。即ち,上記設定された定性関係式に基づいて上記変
数の変化方向及び上記変数が存在する分割区間をシミュ
レーション時刻毎に演算する機能を実現する手段が本発
明の状態演算手段である。この場合,変数の変化方向
は,上記定性関係式,定性関係式中の変数間の対応値,
上記上下限設定式により限定される。即ち,当該時刻に
おけるプロセス状態はそのときの全ての変数の存在して
いる定性値及びそれぞれの変数の変化方向により表され
る。そして,いずれかの変数について2以上の変化方向
に限定されれば,上記したようなプロセス状態の枝分れ
を生じることになる。上記したように演算された時刻毎
のプロセス状態は直前の時刻に演算されたもの,又は間
に他のプロセス状態を介して以前に演算されたものと同
じか否かが判断される。そして,分岐した状態遷移の枝
があれば,その枝毎に過去に演算されたプロセス状態と
同じプロセス状態が演算されたと判断されるまで定性シ
ミュレーションが続行される。そして,過去に演算され
たプロセス状態と同じプロセス状態が演算されたとき,
即ち定性シミュレーションを停止させる停止条件が成立
したとして,その枝についてのシミュレーションが停止
される。そして,全ての枝についてのシミュレーション
が停止された時,定性シミュレーション装置1のシミュ
レーションが終了する。そこで,シミュレーション部2
はシミュレーションが終了した時刻までのメモリMに格
納された各変数の時間的挙動を出力部22に出力し,出
力部22が例えば上記挙動を印字する。このときのプロ
セス状態の時間的な状態遷移を図5に示す。図中個々の
丸印はそれぞれ演算されたプロセス状態を表し,●は時
刻timeが上記境界標単体の定性値であるときのプロ
セス状態を表わしている。これによると,上記CGL4
がとり得るプロセス状態は,分岐した状態遷移S,T,
Uの三通りに極めて少なく絞り込まれており,上記した
ように設定された変数の種類,定性関係式,シミュレー
ション条件式,特定の変数に対する上下限設定式が当該
CGL4について極めて適した条件であったことを示し
ている。
【0010】また,このときの上記出力部22による各
変数の内の鉄濃度fe%の出力結果の一例を図6に示
す。同図に示す鉄濃度fe%は図5のプロセス状態の状
態遷移がSである場合のものであるが,他の状態遷移
T,Uについての鉄濃度fe%も上記Sの場合とほぼ同
様であっていずれも上記目標範囲内に達している。更
に,上記CGL4の合金化炉8により実際に合金化処理
が行われた31本の合金化鋼板10について,そのとき
の操業条件と同じ条件で,上記定性シミュレーション装
置1によりシミュレーション演算を行った場合の鉄濃度
fe%の実測値と演算値の比較を図7に示す。これによ
れば,全ての事例が±1%程度の誤差範囲内に入ってお
り,上記定性シミュレーション装置1は実用に値するシ
ミュレータといえる。なお,上記シミュレーション条件
のうち,シミュレーション停止条件の判断時に変数の変
化方向を除外して同じ状態が続いたか否かを判断する内
容のシミュレーション条件を設定しない場合の状態遷移
の一例を図8に示す。同図中の丸印は図5のものと同義
である。図示のように,上記したシミュレーション条件
を外すだけで,CGL4がとり得るプロセス状態が極め
て増加し,演算時間が増大することになる。ただし,い
ずれのプロセス状態の場合も,最終的な鉄濃度はほとん
ど全て上記目標範囲内に達している。一方,シミュレー
ション演算を所定の時刻まで続行していっても,上記鉄
濃度fe%が目標範囲内に達しない場合には,シミュレ
ーション演算を停止させるようにし,更に当初設定され
た操業条件でも特に鉄濃度に大きく影響する合金化プロ
セス条件を主として,所定幅変化させた後あらためて上
記シミュレーション演算を実行するように構成すること
も可能である。これにより,上記鉄濃度を目標範囲内に
おさめ得る操業条件を決定することもできる。
【0011】また,どのような操業条件の場合に上記鉄
濃度がいかなる挙動を示すか,例えば上記目標範囲をこ
えたり,逆に下回ったりするかを分析して,これらの挙
動をルール化することもでき,これによって上記CGL
4の操業指針を与えるガイダンスシステムの構築の一助
とすることができる。なお,上記定性シミュレーション
装置1は,ワークステーション上でLISP言語を用い
て実現したが,これに限らず,汎用のプロセスコンピュ
ータ又はパーソナルコンピュータ上でFORTRAN言
語等を用いて実現することもできる。上記したように,
本実施例装置は,定性シミュレーションの技術をCGL
4の分野に適用したものであって,本発明者らの鋭意の
研究努力により上記CGL4の定性シミュレーションに
適した設定条件,即ち最小限必要な変数,これらの変数
の境界標,上記変数の上下限,上記変数間の定性関係式
を見い出すことができた。換言すれば,少なくとも上記
鉄濃度fe%,めっき鋼板9の温度tem,鉄拡散速度
V,めっき鋼板9の走行位置basho,合金化速度定
数a,シミュレーション時刻timeを上記変数として
用い,少なくとも図3に示す式番号〜の定性関係式
を設定することにより,上記CGL4のとり得るプロセ
ス状態を絞り込むことが可能で,結果として有用なシミ
ュレーション結果を得ることができた。更に,上記シミ
ュレーション条件及び変数の上下限設定式の設定によ
り,演算時間を短縮し実用的なシミュレーション装置と
した。
【0012】
【発明の効果】第1の発明は上記したように構成されて
いる。それにより,上記めっき層合金化プロセスの定性
シミュレーションに適し且つ十分な変数の種類,上記変
数間の定性的な関係を見い出すことができた。従って,
これらを用いて上記定性シミュレーションを実行するこ
とにより,実際の状態に即したシミュレーション結果を
得ることができた。また,第2の発明は上記したように
構成されている。それにより,上記変数の時間的挙動の
演算に供され分割区間を減少することができる。これに
よって,シミュレーションに要する演算時間を短縮する
ことができる。そして,第3の発明は上記したように構
成されている。それにより,上記シミュレーション時刻
毎に演算されるプロセスの状態は,上記変数が存在する
分割区間のみにより表わされる。従って,前記プロセス
のとりうる状態の数は少なくなる。これによって,シミ
ュレーションに要する演算時間を短縮することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る定性シミュレーショ
ン装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】 上記定性シミュレーション装置に用いられる
変数と各変数に設定される境界標とを示す図表。
【図3】 上記変数間の定性関係を示す定性関係式及び
その定義を示す図表。
【図4】 上記定性シミュレーション装置を動作させる
プログラムの一部を示す説明図。
【図5】 上記定性シミュレーション装置により演算さ
れたCGLの時間的な状態遷移を示す模式図。
【図6】 上記定性シミュレーション装置により演算さ
れた亜鉛層中の鉄濃度の時間的挙動を示すグラフ図。
【図7】 上記定性シミュレーション装置により演算さ
れた鉄濃度の演算値と実際に検出された鉄濃度の実績値
を対比して示すグラフ図。
【図8】 上記定性シミュレーション装置に対し指定さ
れた変数の変化方向の考慮を行わないというシミュレー
ション条件を設定しなかったことによるプロセス状態遷
移の枝分れの発生を示す状態説明図。
【図9】 一般的な溶融亜鉛めっきラインを示すブロッ
ク構成図。
【図10】 上記溶融亜鉛めっきラインの合金化炉を中
心とした要部を示す概略構成図。
【図11】 上記溶融亜鉛めっきラインの操業条件の代
表的なものを示す図表。
【図12】 実験により得た炉内温度の違いによる亜鉛
層中の鉄濃度の時間変化を示すグラフ図。
【図13】 変数xの存在する区間を表示した説明図で
あって,同図(A)は一般的な連続値に関するものであ
り,同図(B)は境界標を用いて分割された複数の定性
値よりなる変数の存在区間を示す説明図。
【図14】 変数x,yより設定された座標平面を示す
グラフ図であって,同図(A)は連続値における座標平
面を示し,同図(B)は上記定性値による座標平面を示
すグラフ図。
【図15】 変数xと変数yとの間に一定の関係がある
ことを示すグラフ図であって,同図(A)はy=xの連
続的な関係を示し,同図(B)は変数x,yとの間が単
調増加であるといった定性的な関係であってそれぞれの
変数間に対応した値が設定されていることを示すグラフ
図。
【図16】 上記定性値として設定し得る,上限・下限
との間に幅を有する変数を示すグラフ図。
【符号の説明】
1…定性シミュレーション装置 2…シミュレーション部 3…設定入力部 4…溶融亜鉛めっきライン(めっき層合金化プロセス) 5…冷延鋼板 6…亜鉛めっき層(めっき層) 7…亜鉛層(合金層) 8…合金化炉(加熱炉) fe%…鉄濃度 tem…温度 v…鉄拡散速度 basho…走行位置 a…合金化速度定数 time…時刻

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にめっき層が施されてなる鋼材を加
    熱炉内で走行させることにより,上記めっき層中に上記
    鋼材からの鉄を拡散させて上記めっき層を所定範囲内の
    鉄濃度の合金層に変化させるめっき層合金化プロセスの
    状態を構成する変数の時間的挙動を演算するシミュレー
    ション装置において,上記変数が存在する複数の分割区
    間を記憶する変数分割区間記憶手段と,少なくとも,上
    記合金層中の鉄濃度の時間微分が上記めっき層中への鉄
    拡散速度に等しいこと,上記加熱炉内の鋼材の温度と合
    金化速度定数とが単調増加の関係にあること,上記合金
    層中の鉄濃度と上記鉄拡散速度の積が上記合金化速度定
    数に等しいこと,上記加熱炉内の鋼材の走行位置とシミ
    ュレーション時刻とが単調増加の関係にあること及び上
    記鋼材の走行位置と上記鋼材の温度とが単調増加の関係
    にあることに基づいた定性関係式を設定する定性関係式
    記憶手段と,上記設定された定性関係式に基づいて上記
    変数の変化方向及び上記変数が存在する分割区間により
    表される前記プロセスの状態を上記シミュレーション時
    刻毎に演算する状態演算手段とを備え,上記分割される
    変数として,少なくとも上記シミュレーション時刻,上
    記加熱炉内の鋼材の走行位置,上記加熱炉内の鋼材の温
    度,上記めっき層中への鉄拡散速度,上記合金層中の鉄
    濃度,上記合金化速度定数を用いたことを特徴とするめ
    っき層合金化プロセスのシミュレーション装置。
  2. 【請求項2】 上記状態演算手段が,上記変数の時間的
    挙動の演算に供される分割区間を減少させるための演算
    条件に従って上記変数が存在する分割区間を上記シミュ
    レーション時刻毎に演算する請求項1記載のめっき層合
    金化プロセスのシミュレーション装置。
  3. 【請求項3】 上記演算条件が,上記変数が実際上存在
    し得ない分割区間を上記変数が存在する分割区間から除
    去することを内容とする条件である請求項2記載のめっ
    き層合金化プロセスのシミュレーション装置。
  4. 【請求項4】 上記演算条件が,上記定性関係式に用い
    られる変数に上記分割区間の上限及び/若しくは下限を
    設定することを内容とする条件である請求項2記載のめ
    っき層合金化プロセスのシミュレーション装置。
  5. 【請求項5】 上記状態演算手段が,上記変数の変化方
    向を除外して前記プロセスの状態を上記シミュレーショ
    ン時刻毎に演算する請求項1記載のめっき層合金化プロ
    セスのシミュレーション装置。
JP22157691A 1991-09-02 1991-09-02 めつき層合金化プロセスのシミユレーシヨン装置 Pending JPH0559519A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20040036110A (ko) * 2002-10-23 2004-04-30 주식회사 포스코 연속 전기도금에서의 아연-철 합금강판의 철 합금화 제어방법
CN111593281A (zh) * 2019-02-20 2020-08-28 宝山钢铁股份有限公司 一种适用于快速处理及镀锌的综合模拟实验平台及其方法

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KR20040036110A (ko) * 2002-10-23 2004-04-30 주식회사 포스코 연속 전기도금에서의 아연-철 합금강판의 철 합금화 제어방법
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