JPH0542263Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、自動車のデフアレンシヤルと協働す
る終減速装置の入力部材を構成するリダクシヨン
ピニオン等の歯車軸を、一対のテーパローラベア
リングによつてベアリングテーナ内に回転自在に
支持するようにした組立体において、上記テーパ
ローラベアリングに所要のプレロードを与えるた
めの調定装置に関するものである。

（従来の技術） 自動車の終減速装置における入力部材を構成す
るリダクシヨンピニオン及びその軸受装置の典型
的な構成を、第２図について説明する。図中符号
１０はその一端部に終減速傘歯車即ちリダクシヨ
ンギアと噛合するベベルギヤ１２を具えたリダク
シヨンピニオンを総括的に示し、その軸部１４は
傾斜方向が相反するインナテーパローラベアリン
グ１６及びアウタテーパローラベアリング１８に
よつてベアリングリテーナ２０上に回転自在に軸
支され、同ベアリングリテーナ２０は図中一点鎖
線で示したデフアレンシヤルキヤリヤ２２に複数
のボルト（図示せず）によつて固着される。上記
リダクシヨンピニオンの軸部１４のベベルギヤ１
２とは反対側の端部にコンパニオンフランジ２４
がスプライン嵌合され、同フランジ２４はその軸
部２６がスペーサリング２８を介して上記アウタ
テーパローラベアリング１８のインナレース３０
に当接している。アウタ及びインナテーパローラ
ベアリング１８及び１６間に環状のカラー３２が
介装され、また、リダクシヨンピニオン１４のベ
ベルギヤ１２側の端部はパイロツトベアリング３
４を介して上記デフアレンシヤルキヤリア２２に
軸支されているので、リダクシヨンピニオン軸部
１４に螺合されたナツト３６の締付トルクを加減
することによつて、アウタテーパローラベアリン
グ１８及びインナテーパローラベアリング１６に
プレロードを賦与することができる。

しかし、リダクシヨンピニオン軸部１４の外径
の製作誤差、インナ及びアウタテーパローラベア
リング１６及び１８の内径、外径及び軸線方向の
高さにおける製作誤差、更にベアリングリテーナ
２０の各ベアリング１６，１８のアウタレース嵌
合孔の製作誤差、及びこれら誤差の集積によつ
て、単にナツト３６に或る定められた締付トルク
を与えるだけでは、各テーパローラベアリング１
６及び１８に適切なプレロードを賦与することが
できない。一例として、アウタテーパローラベア
リング１８のインナレース３０の内径がリダクシ
ヨンピニオン軸部１４の外径に対して相対的に小
さすぎるときは、同ベアリングを圧入したときイ
ンナレース３０が半径方向に拡張し、テーパロー
ラをアウタレース３８に対し押し付けることとな
るので、ベアリングが固すぎてリダクシヨンピニ
オン１０の回転が円滑に行なわれないようにな
る。このような場合、カラー３２をその軸線方向
の寸度が僅かに大きいもの即ち高さｈが大きいも
のと交換してやると、アウタレース３８に対して
インナレース３０が相対的に軸線方向に上昇する
ためテーパローラが上昇してプレロードが減少し
ベアリングの回転が楽に行なわれるようになる。
上記種々の製作誤差及びこれらの集積に対して、
テーパローラベアリング１６及び１８に、固すぎ
ず、また緩すぎない適切なプレロードを与えるた
めには、夫々何がしかの誤差を持つた一組の組立
体となるリダクシヨンピニオン１０、インナ及び
アウタテーパローラベアリング１６及び１８、及
びベアリングリテーナ２０に適合するカラー３２
を選択する必要があり、このため例えば0.03mmず
つ高さｈを異にする10種〜20種のカラー３２が用
意されている。

そして、一応各部品を第２図に示すように組立
て、リダクシヨンピニオン１０又はベアリングリ
テーナ２０の回転に必要なトルクを測定して、ト
ルクが予め設定された範囲内にあれば適正なプレ
ロードが賦与されていると判断して合格品とし、
トルクが設定範囲を越えて大きすぎ又は小さすぎ
る場合は、分解して適当と思われるカラー３２と
交換し、再び上記手順をくり返して適正なプレロ
ードが賦与されるまで調定作業が行なわれる。し
かし、このような調定手法では、ナツト３６をく
り返し脱着するためそのネジ部や外形を傷つけた
り、コンパニオンフランジ２４に傷をつける可能
性が大きく、また作業時間が長くなつて不経済で
あるので、従来、第３図に示すようなプレロード
調定装置４０が利用されていた。

調定装置４０は、リダクシヨンピニオン１０に
パイロツトベアリング３４を取付け、更にインナ
及びアウタテーパローラベアリング１６及び１８
を圧入し、両ベアリング間にはカラー３２を介装
して、各ベアリング１６及び１８をベアリングリ
テーナ２０に嵌装した組立体Ａを、上記パイロツ
トベアリング３４に嵌合して略垂直に保持する受
台４２と、同受台４２を固定の架構４４或いは工
場床面等に支持する支持台４６と、同支持台４６
を図中実線で示した作動位置と図中一点鎖線で示
した後退位置又は休止位置とに選択的に移動させ
る空気圧応動装置４８と、上記アウタベアリング
１８のインナレース３０に当接して同レースを一
定の加圧力をもつて圧下する第１の押圧ヘツド５
０と軸部１４の端面に適宜の圧下力を加える第２
の押圧ヘツド５２とを具えたプレス等の加圧装置
５４と、組立体Ａが図示位置より下降したとき、
ベアリングリテーナ２０に当接して同リテーナを
支持する固定の架台５６とを具えている。

上記支持台４６を移動させる空気圧応動装置４
８は、第１及び第２電磁三方弁５８及び６０を介
して圧縮空気源６２に連結されており、作業者が
操作スイツチ６４の作動側接点ａを閉成して第１
電磁三方弁５８を付勢することにより圧縮空気が
ピストン右側室に供給されて、支持台４６が図中
実線で示す作動位置に移動し、また操作スイツチ
６４の休止側接点ｂを閉成して第２電磁三方弁６
０を付勢することにより圧縮空気がピストン左側
室に供給されて支持台４６が図中一点鎖線で示す
後退位置に移動するように構成されている。

上記調定装置４０によつてテーパローラベアリ
ング１６及び１８にプレロードを賦与する場合、
図中実線で示すように支持台４６上に受台４２を
装架し、受台４２に組立体Ａのパイロツトベアリ
ング３４を嵌装して同組立体を略直立させて保持
し、次に加圧装置５４を作動させて第１押圧ヘツ
ド５０によりアウタテーパローラベアリング１８
のインナレース３０を予め設定された加圧力Ｐで
圧下する。加圧力Ｐの作用下に、ベアリングリテ
ーナ２０を回転させてそのトルクを計測し、もし
トルク値が設定範囲内に収つておれば組立体Ａは
適正品と判断されるので、調定装置４０から取外
したのち第２図に示されているようにスペーサリ
ング２８を軸部１４に嵌装し、更にコンパニオン
フランジ２４を取付けてナツト３６を所定のトル
クで締付ければよい。次に、ベアリングリテーナ
２０の回転トルクが設定範囲から逸脱し、大きす
ぎるか小さすぎる場合は、操作スイツチ６４をｂ
接点に切換えて空気圧応動装置４８のピストンを
右動させ、支持台４６を後退位置に移動させる。
受台４に支持されなくなるので、組立体Ａが下降
してベアリングリテーナ２０が架台５６によつて
支えられるが、この際受台４２とパイロツトベア
リング３４との嵌合は通常作業上の便宜から緩く
作られているので受台４２は分離して落下する。
そこで、加圧装置５４の第２押圧ヘツド５２を下
降させて軸部１４の上端面を圧下すると、リダク
シヨンピニオン１０とインナテーパローラベアリ
ング１６のインナレース及びローラと、カラー３
２とが一体となつて落下し、ベアリングリテーナ
２０には、インナテーパローラベアリング１６の
アウタレースとアウタテーパローラベアリング１
８とが残存して支持される。落下したリダクシヨ
ンピニオン１０からカラー３２を取外し、上述し
たトルク偏差を考慮して適当と思われる高さの新
たなカラー３２を上記軸部１４に嵌装し、架台５
６上に支持されているベアリングリテーナ２０及
びインナテーパローラベアリング１６のアウタレ
ース、アウタテーパローラベアリング１８を、再
び軸部１４に嵌装して組立て、上記作業をくり返
してベアリングリテーナ２０の回転トルクを測定
する手順を行ない、通常は２〜３回の作業によつ
て適切なカラー３２が発見され、組立体Ａが適正
品となる。

しかし、上記従来の調定装置４０では、第２押
圧ヘツド５２の圧下力を受けてリダクシヨンピニ
オン１０が落下する際に、衝撃によつてパイロツ
トベアリング３４が損傷したり、同ベアリングに
隣接する軸端部に傷がつく等の不具合が発生する
ことがあつた。

（考案が解決しようとする問題点） 本考案は、上述した従来のリダクシヨンピニオ
ン等歯車軸軸受のプレロード調定装置における欠
点を解消し、歯車軸の落下衝撃を緩衡することに
よつて同歯車軸及び付属部品の損傷を確実に防止
することができる安価な構成を提供することを目
的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 本考案は、上記目的を達成するために創案され
たもので、歯車軸と、同歯車軸を回転自在に支持
するベアリングリテーナと、夫々のインナレース
を上記歯車軸に外嵌され、かつ夫々のアウタレー
スを上記ベアリングリテーナに内嵌されたインナ
及びアウタテーパローラベアリングと、上記イン
ナ及びアウタテーパローラベアリング間に介装さ
れて両ベアリングを歯車軸の軸線方向に隔置する
カラーとからなる組立体を支持する受台、上記受
台に対向して配置され上記アウタテーパローラベ
アリングのインナレース及び歯車軸に当接して同
インナレース及び歯車軸を選択的に上記受台側に
押圧することができる加圧装置、上記受台を所定
位置に保持し又は同受台の上記加圧力作用方向の
変位を許容する可動の支持台、及び上記受台に連
結され同受台が加圧力作用方向に変位する際に緩
衝作用を生起するエアシリンダ装置を具備してな
ることを特徴とする歯車軸軸受のプレロード調定
装置を要旨とするものである。

（作用） 本考案によれば、歯車軸軸受のプレロードが適
切でなく、カラーを交換するために、加圧装置に
より歯車軸を圧下してベアリングリテーナと歯車
軸とを分離する際に、上記受台に緩衝用のエアシ
リンダが連結されているので、歯車軸及びこれと
一体に下降する付属部品の落下衝撃による損傷が
防止される。

（実施例） 以下本考案を自動車の終減速装置におけるリダ
クシヨンピニオン及びベアリング組立体に適用し
た実施例を、第１図について具体的に説明する。

（なお、第２図及び第３図を参照して既に説明
した従来のプレロード調定装置と実質的に同一の
部材又は部分には同一の符号を付し、重複説明は
省略する。）本考案によれば、リダクシヨンピニ
オン及びベアリング組立体Ａを略直立状態で支持
する受台４２に連結部材６６を介してエアシリン
ダ装置６８のピストン軸７０が連結されている。
エアシリンダ装置６８は固定架構或いは工場床面
４４に固着されて樹立されたシリンダ７２と、同
シリンダ内に摺動自在に嵌装されたピストン７４
を具え、ピストン７４上には、ピストン両側室を
連通する絞り孔７６が穿設されている。また上記
シリンダ７２のピストン下側室は、圧力調整弁７
８を介して前記圧縮空気源６２に連通され、調定
装置４０の稼動中は、常時一定圧の圧縮空気が上
記圧力調整弁７８を介して供給されている。更
に、上記連結部材６６は、その一端をピストン軸
７０と平行に樹立されたガイド部材８０に摺動自
在に嵌装されてピストン軸の上下変位を円滑にガ
イドするように構成されている。なお、上記連結
部材６６と受台４２との連結態様は、連結部材の
他端部をボルト等によつて受台に一体的に固着し
てもよいし、図示のように受台の小径部分に単に
外嵌して同受台を支持するようにしてもよい。な
おまた、ピストン７４の絞り孔７６は、シリンダ
７２の外部に配置されてピストン両側室を連通さ
せる連通管内のオリフイスをもつて、均等的に代
替し得ることは自明である。

以下に上記構成の作動態様を説明する。先づ、
組立体Ａのベアリングプレロードの適否を、第１
押圧ヘツド５０の加圧下において、ベアリングリ
テーナ２０の回転トルクを測定することによつて
判断する段階では、既に述べた従前の構成と実質
的に変りがない。ただ、図示のようにエアシリン
ダ装置６８のピストン７４の上昇ストロークに余
裕がある場合は、第１押圧ヘツド５０の加圧開始
前に受台４２がピストン７４と共に図示位置より
上昇しているので、第１押圧ヘツド５０が下降し
てアウタテーパローラベアリング１８のインナレ
ース３０に当接する際に、ピストン下側室内の圧
縮空気が絞り孔７６を通つてピストン上側室に移
動することによつて衝撃的接触が緩衝されるとい
う一応の効果が期待される。（なお、ピストン７
４が第１押圧ヘツド５０の下降前に上方行程端に
あるのは、いうまでもなくピストン下側面と上側
面との間の受圧面積差に基づくものである。） 次に、ベアリングリテーナ２０の回転トルクを
測定した結果、組立体Ａのベアリングプレロード
が適当でないと判断された場合、従来の装置と同
様に、支持台４６が空気圧応動装置４８の作動に
よつて図中に一点鎖線で示した不作動位置に退去
したのち、第２押圧ヘツド５２によつて軸部１４
が下方に圧下される。支持台４６の退去により、
受台４２が連結部材６６を介してエアシリンダ装
置６８により支持されることとなるので、リダク
シヨンピニオン１４と、インナテーパローラベア
リング１６のインナレース及びテーパローラと、
パイロツトベアリング３４とが一体となつてエア
シリンダ装置６８に支えられながら絞り孔７６の
絞り効果によつて緩速度で下降し、衝撃的に落下
することがない。一方、架台５６には、ベアリン
グリテーナ２０と、インナテーパローラベアリン
グ１６のアウタレースと、アウタテーパローラベ
アリング１８とが分離して支持される。アウタテ
ーパローラベアリング１８が軸部１４の圧入部即
ち大径部１４′から完全に抜けた下降位置で第２
押圧ヘツド５２を上昇させると、ピストン７４の
上下両側面の受圧面積差により同ピストンが緩速
度で上昇し、連結部材６６を介して受台４２が上
昇するので、分離されたリダクシヨンピニオンの
大径軸部１４′にアウタテーパローラベアリング
１８のインナレース３０が軽く引掛つた状態でロ
ーラ及びベアリングリテーナ２０と一緒に持上げ
られる。この状態では、上記インナレース３０は
大径軸部１４′に圧入された状態ではなく、単に
引掛つた状態であるから、ベアリングリテーナ２
０とアウタテーパローラベアリング１８とを一体
に軸部１４から容易に取外すことができ、続いて
カラー３２を取出すことができる。（なお、この
際、第１及び第２押圧ヘツド５０及び５２が上方
に退去していることはいうまでもない。） そこで、検出されたトルク偏差を考慮して適切
と思われる高さのカラー３２を新たに選択して軸
部１４に嵌装し、次にアウタテーパローラベアリ
ング１８のインナレース３０を軸部に圧入し、以
下既に述べた手順を繰返して、適正なベアリング
プレロードを与えられた組立体Ａが得られるので
ある。

上記説明から明らかなように、受台４２に構造
簡単かつ安価なエアシリンダ装置６８を連結する
ことによつて、リダクシヨンピニオン１０の衝撃
的落下を防止することができるので、その軸端や
パイロツトベアリング３４を損傷するような不具
合を確実に解消することができる。なお、上記プ
レロード調定装置は、例示したリダクシヨンピニ
オン及びテーパローラベアリングの組立体のみな
らず、一組の傾斜方向を異にするテーパローラベ
アリングによつて歯車軸を実質的に片持ち支持す
る（但しパイロツトベアリングを補完的に用いる
場合を含む）類似の構成に広く適用し得るもので
ある。

（考案の効果） 叙上のように、本考案に係る歯車軸軸受のプレ
ロード調定装置は、歯車軸と、同歯車軸を回転自
在に支持するベアリングリテーナと、夫々のイン
ナレースを上記歯車軸に外嵌され、かつ夫々のア
ウタレースを上記ベアリングリテーナに内嵌され
たインナ及びアウタテーパローラベアリングと、
上記インナ及びアウタテーパローラベアリング間
に介装されて両ベアリングを歯車軸の軸線方向に
隔置するカラーとからなる組立体を支持する受
台、上記受台に対向して配置され上記アウタテー
パローラベアリングのインナレース及び歯車軸に
当接して同インナレース及び歯車軸を選択的に上
記受台に向い押圧することができる加圧装置、上
記受台を所定位置に保持し又は同受台の上記加圧
力作用方向の変位を許容する可動の支持台、及び
上記受台に連結され同受台が加圧力作用方向に変
位する際に緩衝作用を生起するエアシリンダ装置
を具備してなることを特徴とし、従来のプレロー
ド調定装置に構造簡単かつ安価なエアシリンダ装
置を付設することによつて歯車軸及び同軸上の付
属部品の破損を確実に防止することができる利点
がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す断面図、第２
図は第１図の装置によつてプレロードの調定が行
なわれる自動車用終減速装置のリダクシヨンピニ
オン及びベアリング組立体の断面図、第３図は従
来のプレロード調定装置を示す第１図同様の断面
図である。 １０……リダクシヨンピニオン、１６……イン
ナテーパローラベアリング、１８……アウタテー
パローラベアリング、２０……ベアリングリテー
ナ、３４……パイロツトベアリング、４０……プ
レロード調定装置、４２……受台、４６……支持
台、４８……空気圧応動装置、５４……加圧装
置、６８……エアシリンダ装置。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 歯車軸と、同歯車軸を回転自在に支持するベア
   リングリテーナと、夫々のインナレースを上記歯
   車軸に外嵌され、かつ夫々のアウタレースを上記
   ベアリングリテーナに内嵌されたインナ及びアウ
   タテーパローラベアリングと、上記インナ及びア
   ウタテーパローラベアリング間に介装されて両ベ
   アリングを歯車軸の軸線方向に隔置するカラーと
   からなる組立体を支持する受台、上記受台に対向
   して配置され上記アウタテーパローラベアリング
   のインナレース及び歯車軸に当接して同インナレ
   ース及び歯車軸を選択的に上記受台側に押圧する
   ことができる加圧装置、上記受台を所定位置に保
   持し又は同受台の上記加圧力作用方向の変位を許
   容する可動の支持台、及び上記受台に連結され同
   受台が加圧力作用方向に変位する際に緩衝作用を
   生起するエアシリンダ装置を具備してなることを
   特徴とする歯車軸軸受のプレロード調定装置。