JPH05332965A - 破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材、およびそれを用いた構造物の破壊予知方法 - Google Patents

破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材、およびそれを用いた構造物の破壊予知方法

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JPH05332965A
JPH05332965A JP6266892A JP6266892A JPH05332965A JP H05332965 A JPH05332965 A JP H05332965A JP 6266892 A JP6266892 A JP 6266892A JP 6266892 A JP6266892 A JP 6266892A JP H05332965 A JPH05332965 A JP H05332965A
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JP
Japan
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fiber bundle
composite material
plastic composite
conductive fiber
conductive
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Application number
JP6266892A
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English (en)
Inventor
Hiroaki Yanagida
博明 柳田
Masaru Miyayama
勝 宮山
Norio Muto
範雄 武藤
Minoru Sugita
稔 杉田
Teruyuki Nakatsuji
照幸 中辻
Yasushi Otsuka
靖 大塚
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimizu Construction Co Ltd
Shimizu Corp
Original Assignee
Shimizu Construction Co Ltd
Shimizu Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 プラスチック材2の内部に導電性繊維束3を
プラスチック材2と一体に設け、さらに導電性繊維束3
の両端にこの導電性繊維束3の電気抵抗値を測定するた
めの端子4,4を設けて、破壊予知機構を有する繊維束
含有プラスチック複合材1を構成した。 【効果】 導電性繊維3の電気抵抗値によりプラスチッ
ク複合材1の応力度状態および破壊進行状況を把握で
き、プラスチック複合材1自身が自己の破壊状況等を通
報することができるものとなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、破壊予知機構を有する
繊維束含有プラスチック複合材およびそれを用いた構造
物の破壊予知方法に係わり、特に、導電性繊維束を利用
し、該導電性繊維束の電気抵抗値あるいはその変化状況
により材料の破壊状況等を自己判断的に通報することの
できる、破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック
複合材およびそれを用いた構造物の破壊予知方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、繊維を含有したプラスチック
複合材としては、繊維強化プラスチック複合材(FRP
複合材)が知られている。このFRP複合材は優れた比
強度を有し、そのため現在多くの分野で使用されてい
る。また、比強度に係る優位性の他にも耐環境に強い材
料として最近では特に建築・土木分野においても多く用
いられるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、FRP
複合材は強化繊維を人為的にマトリックス(母材、すな
わち樹脂)内に含有させたものであるから、複合化され
た材料の性質が不均一となり易い。そのため、耐力強度
を裏付ける上で定量的な根拠を得るのが難しく、その意
味で信頼度がいま一つ低いといった弊害を含んでいた。
【0004】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、材料が自身の耐力限界を自己診断的に通知すること
のできる、破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチッ
ク複合材、およびそれを用いた構造物の破壊予知方法を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る破壊予知
機構を有する繊維束含有プラスチック複合材は、プラス
チック材の内部に導電性繊維束が該プラスチック材と一
体に設けられて所定の部材形状に形成され、前記導電性
繊維束の両端には該導電性繊維束の電気抵抗値を測定す
るための端子が設けられ、さらにこれら端子は前記プラ
スチック材の外面に露出されていることを特徴とするも
のである。
【0006】請求項2に係る発明は、請求項1記載の破
壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材にお
いて、前記導電性繊維束が前記プラスチック材のための
強化繊維を兼ねた構成であることを特徴とするものであ
る。
【0007】請求項3に係る発明は、請求項1または2
記載の破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複
合材において、前記導電性繊維束が炭素繊維束であるこ
とを特徴とするものである。
【0008】請求項4に係る発明は、請求項1ないし3
の何れかに記載の破壊予知機構を有する繊維束含有プラ
スチック複合材において、前記導電性繊維束とは別に、
前記プラスチック材の強化用としての補強用繊維束を備
えていることを特徴とするものである。
【0009】請求項5に係る発明は、請求項4に記載の
破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材に
おいて、前記補強用繊維束を構成する補強用繊維を、前
記導電性繊維束を構成する導電性繊維よりも伸び率の大
きいものとしたことを特徴とするものである。
【0010】請求項6に係る発明は、請求項5に記載の
破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材に
おいて、前記導電性繊維束の含有率を、前記補強用繊維
束の体積の10%以下としたことを特徴とするものであ
る。
【0011】請求項7に係る構造物の破壊予知方法は、
請求項1ないし6の何れかに記載の繊維束含有プラスチ
ック複合材で構造物の一部または全部を構成し、前記端
子を利用して前記導電性繊維束の電気抵抗値を測定し、
該測定値または該測定値の変化状態より前記繊維束含有
プラスチック複合材の破壊進行状況を把握することを特
徴とするものである。
【0012】
【作用】請求項1に係る破壊予知機構を有する繊維束含
有プラスチック複合材では、導電性繊維束の電気抵抗値
を測定するのみで、該複合材の応力度状態や破壊進行状
況を非破壊的に把握することができる。
【0013】請求項2に係る破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材では、導電性繊維束にプラス
チックのための強化機能を持たせることにより、いわゆ
るFRP(繊維強化プラスチック)において上記請求項
1の作用を発揮する複合材を実現する。
【0014】請求項3に係る破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材では、導電性繊維束として、
比較的一般的な炭素繊維からなる炭素繊維束を用いるこ
とにより、該プラスチック複合材の汎用性を高めること
ができる。
【0015】請求項4に係る破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材では、実質的にはFRP(繊
維強化プラスチック)材の内部に導電性繊維束を設けた
構成となる。この構成では、例えば、プラスチック材強
化用の補強用繊維束にプラスチック材の強度を担わせる
ことにより、導電性繊維束を積極的に破断させる構成と
することも可能である。
【0016】請求項5に係る破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材では、導電性繊維束が破断し
ても、補強用繊維束によりプラスチック複合材の強度を
維持することができる。
【0017】請求項6に係る破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材では、導電性繊維束が破断し
た場合に、補強用繊維によりプラスチック複合材の強度
を確実に保証できるものとなる。
【0018】請求項7に係る構造物の破壊予知方法で
は、構造物の応力度状態、破壊進行状況等を、例えば歪
み計等の他の何等の応力検知手段を別置することなく、
しかも非破壊的に検知することができる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。図1は本発明が適用されてなる破壊予知機構
を有する繊維束含有プラスチック複合材の一例を示すも
ので、航空機の圧力隔壁である。この圧力隔壁(破壊予
知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材)1は、
周知の通り、航空機の機体尾部に設けられてキャビンを
気密的に区画し、キャビン内部の与圧を確保する作用を
なすものである。
【0020】この圧力隔壁1は、通常一般の航空機用圧
力隔壁と同様ほぼ半球形(椀型)のものである。この圧
力隔壁1は、プラスチック材2の内部に炭素繊維束(導
電性繊維束)3,3が一体に埋設されてなり、かつ全体
として一体に形成されたものとなっている。
【0021】ただし、本実施例における前記圧力隔壁1
では、前記プラスチック材2がFRP(繊維強化プラス
チック)より形成されている。このプラスチック材2す
なわちFRPを構成する強化繊維(補強用繊維:図示せ
ず)の種類は特に限定されるものではなく、例えばガラ
ス繊維,炭素繊維,ボロン繊維,アラミッド繊維等、従
来より用いられている各種の強化繊維を用いることがで
きる。
【0022】前記炭素繊維束(導電性繊維束)3は、炭
素繊維の連続繊維を多数本集合させたもので、本実施例
に係る圧力隔壁1では図1に示すように、2つの炭素繊
維束3,3が半球形の前記プラスチック材2の内部に十
字状に設けられている。ただし、これら2つの炭素繊維
束3,3はその交点において互いに直接接触せず、前記
プラスチック材2を介していわゆる立体交差した構成と
なっている。
【0023】前記炭素繊維束3の両端にはそれぞれ、該
炭素繊維束3の電気抵抗値を計測するための端子4,4
が設けられている。そして、これら端子4は前記プラス
ック材2の外面2aに露出した構成となっている。
【0024】次に、上記の如く構成された圧力隔壁1
(破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合
材)の作用と共に、本発明に係る構造物の破壊予知方法
の一実施例について説明する。
【0025】図2は、前記圧力隔壁1の前記各端子4
に、抵抗測定器5を接続した状態を示している。該抵抗
測定器5により、第1の炭素繊維束3Aの電気抵抗値
と、第2の炭素繊維束3Bの電気抵抗値とをそれぞれ測
定する。
【0026】ここで、本発明者等が、上記圧力隔壁1と
同様の構造を有する試験片(破壊予知機構を有する繊維
束含有プラスチック複合材)を用いて実施した実験例に
ついて下記に示す。図3および図4は、実験に用いた試
験片Tを示すものである。この試験片Tは、プラスチッ
ク材2′の内部に炭素繊維束(導電性繊維束)3′を一
体に設けたものである。また、このプラスチック材2′
も強化繊維(補強用繊維束:この場合ガラス繊維)によ
り強化されたいわゆるFRPである。この試験片Tを下
記の実験条件で引っ張り、それに伴う荷重P(t),試
験片Tの歪み量ε(μm),炭素繊維束3の電気抵抗値
R(Ω)との関係を求めた。
【0027】〈実験例〉 △試験片T プラスチック材2′:ビニルエステル樹脂 導電性繊維束3′:炭素繊維(PAN系高強度タイプ) 補強用繊維束:ガラス繊維 寸法:8mm □,長さ700mm △実験条件 R0(初期抵抗値):5.6Ω 室温:23℃ 電流I:0.9mA 電圧V:0.05mV/cm 引張速度:1mm/min. △電源発生器 YEW DC Voltage Current Standard Type
2553
【0028】上記実験の結果を図5に示す。図中、ΔR
は、初期抵抗値R0に対する増加抵抗(Ω)を示してい
る。また、このΔRを示す線図において、ΔR値が最高
値(図中d点)を越えた後、図中e点に至る線図は、試
験片Tの歪み量εが1.6mm(16000μm)となった後、荷
重Pを除荷したときのカーブを示したものである。な
お、上記試験片Tは、さらに荷重Pを加え、歪み量εが
1.7mmとなった時点で破断している。
【0029】図5より、引張荷重Pの増加による歪み量
εの増加に伴い、炭素繊維束3′の電気抵抗値Rが漸次
増加していくことが解る。そして、荷重Pの増加に伴う
電気抵抗値R(増加抵抗ΔR)は、a−b点間で比較的
急激に、b−c点間では緩やかに、そしてc点から急激
に増加するといった三段階移行の傾向を示している。さ
らに、その後荷重Pを除荷しても、抵抗値Rはa点すな
わち初期抵抗値R0には戻らず、高い値の方にシフトし
ていることが解る。
【0030】上記の事項に関し本発明者は、様々な条件
を違えても、破断近くまでの高歪み域まで荷重を加えた
場合には上記傾向、すなわち抵抗値Rの三段階移行、お
よび抵抗値Rの高値側へのシフトといった傾向が生ずる
ことを実験により確認している。なお、上記でいう「条
件」とは、荷重Pの大きさ,引張速度,導電性繊維の種
類,等を含むものである。
【0031】また、これらの実験から、抵抗値Rの除荷
後の高値側へのシフト量すなわちa−e点間の値は、高
歪み域において急激に変化した量すなわちc−d点間の
値にほぼ等しいものであることを把握した。さらに、荷
重Pを完全除荷した後、再び最初の最高歪み値まで荷重
を加えると、抵抗値R(ΔR)は今度はe−d点間のカ
ーブをほぼそのままトレースして上昇し、そこから除荷
すると、再びd点からe点に向けて同じ曲線を描くこと
が解った。以後、これを繰り返しても同様になってい
る。また、c点の現われる位置、およびc−d点間の抵
抗値変化(シフト量)は、導電性繊維束の強度,伸性に
よって異なり、例えば、c点の発現位置は導電性繊維束
を高強度とすることにより高歪み域側に移行し、またc
−d点間の抵抗値変化量は、導電性繊維束を高強度,高
伸性のものとすることにより大きいものとなる。
【0032】以上の現象に関し、d−e点間における現
象は炭素繊維束3′の可逆的な構造変化、c−d点間に
おける現象は不可逆的な構造変化に起因していると考察
できる。
【0033】ちなみに、炭素繊維束3′に代えて炭素繊
維の単線を用いた場合は、歪みの増加に伴う電気抵抗値
の上昇は見られるが、上記炭素繊維束3′の場合とは異
なり破断までのほぼ直線的な変化であり、上記の如き明
確なヒステリシスは現われない。
【0034】上記実験例に示すように、前記圧力隔壁1
が圧力を受け、歪みを生じたとすると、該圧力隔壁1を
構成する前記炭素繊維束3は、その歪みに伴って電気抵
抗値Rの変化を示すこととなる。従って、炭素繊維束3
の電気抵抗値Rを測定することにより、該圧力隔壁1自
身の歪みを把握でき、それにより応力度状態、さらに言
えば該圧力隔壁1自身の破壊進行状況を知ることができ
る。
【0035】しかも、前記炭素繊維束3は上述のよう
に、歪み量εに対する電気抵抗値Rが特異な変化を示す
ものであるから、この性質を利用して、例えば、前記炭
素繊維束3の破断強度をプラスチック材2の破壊強度に
合わせておき、電気抵抗値Rが前記図5におけるc点
(マークポイント)の値を示した時点で警報を発するよ
うに構成することも可能である。もっとも、このマーク
ポイントは破壊強度にかなり近い位置に現われる場合も
あるから、実用上は、炭素繊維束3の強度をプラスチッ
ク材2の強度よりかなり小さいものとし、マークポイン
トがもっと低歪み領域で発現するように設定する方が望
ましいし、この繊維束含有プラスチック複合材を、上記
圧力隔壁1の如き絶対に破壊することの許されないもの
ではなく、破壊した場合でも容易に交換可能であるも
の、あるいは積極的に破壊させるものとして用いる場合
には、炭素繊維束3の破断強度を意図的にプラスチック
材2の破壊強度より若干小さく設定しておき、炭素繊維
束3の破断を検知して警報を発するようにすることも不
可能ではない。
【0036】また一方、上記の試験片Tの如く、プラス
チック材2′の内部に、前記炭素繊維束(導電性繊維
束)3′のほかに例えばガラス繊維束等の補強用繊維束
も含有させるようにし、この補強用繊維束にブラスチッ
ク材2′の強度を担わせるように設定すれば、該複合材
自体の形態は保持したまま炭素繊維束(導電性繊維束)
のみが破断するような構成とすることが可能である。そ
して、かかる構成とした場合には、この導電性繊維束の
破断による電気抵抗値変化をマークポイントとして、複
合材の破壊予知情報とすることができる。この点につい
て以下に図を用いて説明する。
【0037】図6は、本発明者が実施した別の実験のデ
ータで、導電性繊維束の歪み(伸び率)と増加抵抗ΔR
との関係等を表したグラフである。この実験で用いた試
験片は、上記試験片Tと同様に、母体となるプラスチッ
ク材の内部に、導電性繊維束と共にガラス繊維等からな
る非導電性の補強用繊維束を含有している。この実験で
は、導電性繊維束を構成する導電性繊維としてピッチ系
高性能タイプの炭素繊維を用いているが、この炭素繊維
束(導電性繊維束)の伸び率は前記補強用繊維束の伸び
率よりも小さいものとなっている。また、この場合、炭
素繊維束のプラスチック材中への混入量は、体積比にし
て補強用繊維束の0.3%〜0.4%としている。なお、
図中、一点鎖線で現した線図は、同導電性繊維束に加え
た荷重と歪みとの関係を示したものである。
【0038】このグラフについて概要を予め説明してお
く。炭素繊維束の抵抗はやはり歪みの増加(荷重の増
加)に伴って上昇し、増加抵抗ΔRはある点(本実験例
では、歪み率が約0.5%となった点)から急激に上昇
している。この増加抵抗ΔRの変化傾向が変わる点が図
5に示したグラフにおける前記c点に相当する。このc
点を越えた後、低値側に戻るいくつか(図示例では7
つ)の線図が描かれているが、これらは、前記c点を越
えた後、前記炭素繊維束にさらに歪みを生じさせたとこ
ろで一旦荷重を除荷しその後再び歪みを与える、といっ
た操作を繰り返したことによるものである。したがっ
て、図中d1〜d7の点がそれぞれ、先の図5に示した
グラフのΔRの線図におけるd点に相当する。また、当
然ながら、d2点はd1点において除荷・再載荷を行っ
た後、d3点はd2点において除荷・再載荷を行った後
に除荷・再載荷操作を実施したものである。d4〜d7
の点についても同様である。
【0039】さて、この実験によれば、導電性の炭素繊
維束は、歪み率が約0.9%となったところで破断し
た。グラフより、破断と共に増加抵抗ΔRが瞬時にして
無限大となったことが解る。なお、破断により増加抵抗
ΔRが直線的に上昇する途中で歪み率の低値側に戻る線
図は、炭素繊維束の破断直後に荷重を除荷し、その後荷
重を再載荷したものである。破断した直後にも拘わらず
抵抗値が無限大となっていないのは、除荷により、試験
片がガラス繊維の弾性あるいはさらにプラスチック材自
身の弾性によって歪みが多少復元し、それによって破断
した炭素繊維束のうちの一部が接触したためと推察でき
る。この後、再び荷重を加える(歪みを生じさせる)
と、抵抗値は無限大となった。
【0040】上記実験から、導電性繊維束が破断した場
合には、電気抵抗値が一瞬にして無限大となる極めて顕
著な現象を示すことが明らかである。したがって、上述
したように、導電性繊維束の破断ポイントをプラスチッ
ク複合材の破断強度よりも小さく設定しておけば、該導
電性繊維束の破断によってON/OFF信号的な顕著な
検知信号を得られ、プラスチック複合材の破壊予知をよ
り容易に行うことができる。その際、導電性繊維束の破
断ポイントは、例えば該導電性繊維束の混入量、あるい
は該導電性繊維束を構成する導電性繊維の種類を適宜選
択することにより自由に設定することが可能である。
【0041】そして、このように導電性繊維束が破断し
た場合でも、補強用繊維束の伸び率が導電性繊維束より
も大きいため補強用繊維束は破断することなくプラスチ
ック複合材の強度を確保し、プラスチック複合材が破壊
するのを防止できる。ここで、このように導電性繊維束
が破断しても補強用繊維束が破断しないようにするに
は、補強用繊維束の伸び率を導電性繊維束の伸び率より
も大きいものとすることが必要である。もっとも、ガラ
ス繊維や上述したアラミッド繊維等のプラスチック補強
用繊維は通常、炭素繊維よりも大きい伸び率を有し、し
かも炭素繊維束の含有量が補強用繊維束の含有量に比し
て極めて小さいため、この点について特に考慮する必要
が生ずることは通常はあり得ないだろう。ただし、導電
性繊維束が破断した際にもプラスチック複合材の強度を
充分に保証するためには、導電性繊維束の含有量を補強
用繊維束の含有量の10%(体積比)以下に抑さえるこ
とが望ましい。
【0042】このように、上記圧力隔壁1すなわち破壊
予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材は、自
己の応力度状態および破壊進行状態を自己判断的に知ら
せるいわゆるインテリジェント・マテリアルとして機能
するものとなる。
【0043】また、前記炭素繊維束3は、一旦破断点近
くの高歪みを受けた場合には、除荷後においても図5に
も示したようにその電気抵抗値Rが高い値にシフトする
から、それによって圧力隔壁1が高歪みを生じたもので
あるかどうかを、あるいはさらにそのシフト量によって
その程度までも知ることができ、圧力隔壁1の応力度履
歴を把握することができる。したがって、例えば圧力隔
壁1に生じている現在の応力度、あるいは過去に生じた
最大応力度などを知ることもでき、圧力隔壁1の耐力監
視に役立てることができる。
【0044】また、炭素繊維束3をこれに一定値以上の
歪みが生じたときに破断するような構成とし、この炭素
繊維束3の破断の検知により前記圧力隔壁1の応力度状
態を知ることもできる。そして、この場合には検知信号
がON/OFF的な信号となるため、より高感度の検知
を行えるものとなる。
【0045】また、上記実施例に係る圧力隔壁1では、
プラスチック材2をFRPにより構成したが、本発明に
係る繊維束含有プラスチック複合材のプラスチック材2
としては、補強用繊維束を有しないものであっても勿論
構わない。その場合には、例えば、前記炭素繊維束(導
電性繊維束)3を図2に示したものよりも多数設置して
該炭素繊維束3自体をプラスチック材2のための強化繊
維として機能させた構成とすることも可能である。また
その場合には、それら強化繊維すなわち導電性繊維束の
全てに抵抗測定用の端子を設ける必要はなく、抵抗を測
定すべき必要な繊維束のみに選択的に端子を設ければよ
い。
【0046】なお、上記実施例のようにプラスチック材
2の強化繊維(補強用繊維束)として炭素繊維等の導電
性繊維を用いる場合には、前記炭素繊維束3等の抵抗測
定用の導電性繊維束とそれら強化繊維とが直接接触して
導通状態とならないようにすべきである。
【0047】次に、図7は本発明に係る破壊予知機構を
有する繊維束含有プラスチック複合材の他の実施例を示
したもので、該プラスチック複合材を航空機6の機体の
一部である翼体7,7,…に適用した例を示すものであ
る。
【0048】すなわち、これら翼体7は、プラスチック
材2と該プラスチック材2の内部に一体に設けられた炭
素繊維束(導電性繊維束)3とから構成され、かつ各炭
素繊維3の両端には電気抵抗値を測定するための端子
4,4が設けられているものである。図示は省略してあ
るが、各炭素繊維3のこれら端子4,4には抵抗測定器
の配線が接続されており、各炭素繊維束3,3,…の電
気抵抗値を計測するよう構成されている。
【0049】上記構成のものにおいても、前記圧力隔壁
1と同様、翼体7の応力度状態,応力度履歴,破壊進行
状況等を翼体7自身が自己診断的に通報するものとな
る。また、上記のように翼体7全体ではなく翼体7の一
部をこのプラスチック複合材によって構成するように
し、それによって翼体7全体の応力度状態を知るように
することも可能であるから、本発明に係るプラスチック
複合材は必要部分に分散的に配置してもよい。
【0050】上記の他にも、例えば、車両車体,比較的
圧の低い圧力容器,構造物等、プラスチック材により構
成可能なあらゆる部分または全体に適用することがで
き、何れにおいても上記同様の効果を奏することができ
る。
【0051】なお、上記各実施例においては、本発明に
係るプラスチック複合材として、前記圧力隔壁1あるい
は前記翼体7等、比較的平面的なものについてのみ説明
したが、本発明は例えばブロック状のプラスック複合材
に適用することも無論可能である。そして、その場合に
は、前記炭素繊維束等の導電性繊維束をそれぞれ直交す
るX,Y,Zの各方向に設けることにより、該プラスチ
ック複合材の危険位置等を三次元的に把握することが可
能となる。
【0052】
【発明の効果】以上説明したとおり、請求項1に係る発
明によれば、所定の部材形状とされた該プラスチック複
合材を構成する導電性繊維束の電気抵抗値を測定するの
みで該プラスチック複合材の応力度状態を非破壊的に把
握することができる。しかも、導電性繊維束は歪みとの
関係において特異な電気抵抗値変化を呈するため、該性
質により、ある時点における応力度のみならず応力度履
歴までも把握することができる。そして、このように構
成された該プラスチック複合材は、自身の破壊進行状況
を自ら知らせる自己診断インテリジェント・マテリアル
として機能する、といった優れた効果を奏する。
【0053】また、請求項2に係る発明によれば、導電
性繊維束が強化繊維としても機能する極めて合理的なプ
ラスチック複合材を実現できる。
【0054】請求項3に係る発明によれば、導電性繊維
束として比較的一般的な炭素繊維からなる炭素繊維束を
用いることにより、該プラスチック複合材の汎用性を高
めることができる。
【0055】請求項4に係る発明によれば、プラスチッ
ク材強化用の繊維束にプラスチック材の強度を担わせる
ことにより、該プラスック複合材に設定値以上の荷重が
加わったときに導電性繊維束を積極的に破断させる構成
とし、この導電性繊維束の破断による電気抵抗値変化を
マークポイントとして複合材の破壊予知情報とすること
も可能となる。
【0056】請求項5に係る発明によれば、導電性繊維
束を所定の歪みが生じたときに破断する構成とし、導電
性繊維束の破断によるプラスック複合材の応力度状態あ
るいは歪み状態を高感度に検知でき、しかも導電性繊維
束が破断しても、補強用繊維束によりプラスチック複合
材の強度を維持することができる。
【0057】請求項6に係る発明によれば、請求項5の
発明を実施するにおいて、導電性繊維束が破断した場合
にも、補強用繊維によりプラスチック複合材の強度を確
実に保証できるものとなる。
【0058】請求項7に係る発明によれば、構造物の応
力度状態、破壊進行状況等を、歪み計等の他の何等の応
力検知手段を別置することなく、自身の包含する導電性
繊維束の電気抵抗値を測定するのみで非破壊的に検知す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る破壊予知機構を有する繊維束含有
プラスチック複合材を圧力隔壁に適用した例を示す斜視
図である。
【図2】図1に示した圧力隔壁(プラスチック複合材)
の作用を説明するための斜視図である。
【図3】本発明に係る実験に用いた試験片を一部省略し
て示す正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本発明に係るプラスチック複合材の荷重と歪み
量および増加抵抗との関係のを示すグラフである。
【図6】本発明に係るプラスチック複合材の歪み率と増
加抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る破壊予知機構を有する繊維束含有
プラスチック複合材の他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 圧力隔壁(破壊予知機構を有する繊維束含有プラス
チック複合材) 2,2′ プラスチック材 2a 外面 3,3′ 炭素繊維束(導電性繊維束) 4 端子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 武藤 範雄 神奈川県相模原市宮下本町1丁目5番地18 (72)発明者 杉田 稔 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設 株式会社内 (72)発明者 中辻 照幸 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設 株式会社内 (72)発明者 大塚 靖 東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設 株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチック材の内部に導電性繊維束が
    該プラスチック材と一体に設けられて所定の部材形状に
    形成され、前記導電性繊維束の両端には該導電性繊維束
    の電気抵抗値を測定するための端子が設けられ、さらに
    これら端子は前記プラスチック材の外面に露出されてい
    ることを特徴とする破壊予知機構を有する繊維束含有プ
    ラスチック複合材。
  2. 【請求項2】 前記導電性繊維束が前記プラスチック材
    のための強化繊維を兼ねた構成である請求項1記載の破
    壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材。
  3. 【請求項3】 前記導電性繊維束が炭素繊維束であるこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の破壊予知機構を
    有する繊維束含有プラスチック複合材。
  4. 【請求項4】 前記導電性繊維束とは別に、前記プラス
    チック材の強化用としての補強用繊維束を備えているこ
    とを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の破壊
    予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材。
  5. 【請求項5】 前記補強用繊維束を構成する補強用繊維
    は前記導電性繊維束を構成する導電性繊維に比して伸び
    率が大であることを特徴とする請求項4記載の破壊予知
    機構を有する繊維束含有プラスチック複合材。
  6. 【請求項6】 前記導電性繊維束の含有率が、前記補強
    用繊維束の体積の10%以下であることを特徴とする請
    求項5記載の破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチ
    ック複合材。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6の何れかに記載の繊維
    束含有プラスチック複合材で構造物の一部または全部を
    構成し、前記端子を利用して前記導電性繊維束の電気抵
    抗値を測定し、該測定値または該測定値の変化状態より
    前記繊維束含有プラスチック複合材の破壊進行状況を把
    握することを特徴とする構造物の破壊予知方法。
JP6266892A 1991-08-15 1992-03-18 破壊予知機構を有する繊維束含有プラスチック複合材、およびそれを用いた構造物の破壊予知方法 Pending JPH05332965A (ja)

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