JPH0532835U - クラツチのトルク伝達用圧縮コイルばね - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 クラツチデイスク１からクラツチハブ５への
回転力の伝達及びこれらに生じる振動の吸収は、トルク
伝達用圧縮コイルばね１０がそのピツチの不均一なコイ
ル部１１を軸線方向に撓ませつつ、広範囲のトルク域に
わたつて効果的に行われる。 【効果】 トルク伝達用圧縮コイルばね１０のコイル部
１１のピツチは、中央から両端側に向けて対称的に変化
しているため、コイル部１１の軸線Ｐをトルク伝達用圧
縮コイルばね１０の装着位置におけるクラツチデイスク
１と同心の円弧と同じ曲率で湾曲させることが可能とな
る。これによつて、コイル部１１の伸縮時における軸線
Ｐの曲率が一定のままとなり、トルク伝達用圧縮コイル
ばね１０が他の部材と強く擦れ合うことによつて摩耗や
異音が発生するのが防止される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、エンジンに直結されて回転するフライホイールに押し付けられるこ とにより回転駆動されるクラツチデイスクと、駆動輪側への駆動力の伝達を行う クラツチシヤフトに一体的回転可能に嵌装されるクラツチハブとの間にコイル部 の軸線を略円周方向に向けて装着することにより、振動を吸収しつつクラツチデ イスクからクラツチハブへのトルクの伝達を行うクラツチのトルク伝達用圧縮コ イルばねに関するものである。

【０００２】

【従来の技術及び考案が解決しようとする課題】

上記のようなクラツチに装着されるトルク伝達用圧縮コイルばねは、伝達され るトルクが小さいときには撓み易くするとともにトルクが大きいときには撓み難 くすることにより、広範囲のトルク域にわたつて振動を効果的に吸収しつつトル クの伝達を行うことができる。

【０００３】 このようにトルク伝達用圧縮コイルばねの荷重−撓み特性をトルクに応じて変 える手段の一つとして、従来は、実開昭５１−７４０７号公報に開示されている ように、コイル部のピツチをその軸線方向において変化させた圧縮コイルばねを 用いる手段が公知である。

【０００４】 しかしながら、この従来の圧縮コイルばねは、クラツチデイスクの略円周方向 に向けられるコイル部の軸線がクラツチデイスクと同心の円弧状をなすのではな くて一直線状をなしていた。このため、トルク伝達用圧縮コイルばねが伸縮する ときにはコイル部がその軸線を部分的に湾曲させるように変形し、そのコイル部 の湾曲した部分の外周がクラツチデイスクやクラツチハブ等の他の部材と強く擦 れ合つて、摩耗や異音の発生を来すという欠点があつた。

【０００５】

【課題を解決するための手段】 本考案は、上記課題を解決するための手段として、コイル部のピツチをそのコ イル部の軸線方向において中央から両端側へ対称的に変化させ、かつ、そのコイ ル部の軸線を湾曲させた構成とした。

【０００６】

【考案の作用及び効果】

本考案のトルク伝達用圧縮コイルばねを装着し、クラツチデイスクをフライホ イールに押し付けて回転駆動すると、低トルク域においてはコイル部がほぼ全長 にわたつて撓みを生じつつ振動の吸収とともにトルクの伝達が行われる。トルク が大きくなるにしたがい、コイル部はピツチの小さい部分から順に密着して巻き 数が少なくなることによつてばね定数が高くなり、大きい荷重に対して振動の吸 収が効果的に行われつつトルクが伝達される。

【０００７】 本考案は、コイル部の軸線方向における中央から両端側へ対称的にピツチを変 化させるようにしたから、トルク伝達用圧縮コイルばねが装着されるべき位置に おけるクラツチデイスクと同心の円弧と同一の一定の曲率となるようにコイル部 の軸線を湾曲させることが可能である。

【０００８】 このように成形したトルク伝達用圧縮コイルばねを装着すると、トルクの伝達 と振動の吸収が行われるのにともない、コイル部はその軸線をクラツチデイスク と同心の円弧と一致させたままの状態で伸縮する。したがつて、クラツチデイス クやクラツチハブ等の他の部材と強く擦れ合う恐れがなく、摩耗や異音の発生を 防止することができる効果がある。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を添付図面に基づいて説明する。 図において、符号１は、図示しないエンジンのクランクシヤフトに直結されて 回転するフライホイールと図示しないプレツシヤープレートとの間に配置される 円環形をなす一対のクラツチデイスクを示し、このクラツチデイスク１、１は、 プレツシヤープレートで押されるとフライホイールとの間の摩擦力によつて回転 駆動されるようになつている。クラツチデイスク１、１は図示しない手段により 円形のクラツチプレート２に同心に固着されており、クラツチプレート２の中心 孔３には、図示しない駆動輪側へ駆動力を伝達するためのクラツチシヤフト４に 一体的に回転するように外嵌されたクラツチハブ５が相対的回転を自由に内嵌さ れている。さらに、クラツチプレート２とクラツチプレート２にピン７によつて 固着したサブクラツチプレート６との間の間隙には、クラツチハブ５の外周に形 成したフランジ８が配置されている。

【００１０】 クラツチプレート２、サブクラツチプレート６及びクラツチハブ５のフランジ ８には、クラツチプレート２と同心の円弧形をなし、かつ、軸線方向において互 いに整合し合う切欠取付部１２、１６及び１８が円周方向において適宜間隔を空 けた複数位置に形成されている。これらの切欠取付部１２、１６及び１８には、 夫々、クラツチプレート２及びサブクラツチプレート６からクラツチハブ５のフ ランジ８へのトルクの伝達を行うとともに、そのトルク伝達時における振動の吸 収を行うためのトルク伝達用圧縮コイルばね１０が装着されている。

【００１１】 以下、そのトルク伝達用圧縮コイルばね１０について説明する。 このトルク伝達用圧縮コイルばね１０は、ばね素線を一定の径寸法で螺旋巻き したものであつて、コイル部１１とその両端の座巻き部１２、１２とからなる。 コイル部１１の螺旋のピツチは、その軸線方向における中央が最も大きく、両端 の座巻き部１２、１２側に向かつて対称的に次第に小さくなつている。

【００１２】 さらに、コイル部１１は、成形の後にその軸線Ｐを湾曲させるように変形させ る加工が施されている。この軸線Ｐの湾曲の曲率は、上記した螺旋のピツチの変 化の仕方によつて決まり、本実施例では、クラツチプレート２、サブクラツチプ レート６及びフランジ８に形成された前記切欠取付部１２、１６及び１８の円弧 とほぼ同一の一定の曲率となつている。

【００１３】 次に、本実施例の作用を説明する。 クラツチデイスク１、１がプレツシヤープレートで押されてフライホイールに 押し付けられると、クラツチデイスク１、１及びこれと一体をなすクラツチプレ ート２とサブクラツチプレート６が回転駆動され、その回転力は、トルク伝達用 圧縮コイルばね１０を介してクラツチハブ５に伝達され、さらに、クラツチシヤ フト４を介して駆動輪側へ伝達される。

【００１４】 このクラツチデイスク１、１からクラツチハブ５への回転力の伝達が行われる 際には、トルク伝達用圧縮コイルばね１０は、その一方の座巻き部１２を両クラ ツチプレート２、６の切欠取付部１２、１６の一方の端縁で押圧されるとともに 他方の座巻き部１２をクラツチハブ５のフランジ８の切欠取付部１８の他方の端 縁で押圧されることによつて弾縮される。このときに、コイル部１２の軸線Ｐは ほぼ一定の曲率に保たれるから、トルク伝達用圧縮コイルばね１０のコイル部１ １は切欠取付部１２、１６及び１８の内周に部分的に強く押し付けられることが なく、コイル部１１とクラツチプレート２、サブクラツチプレート６及びクラツ チハブ５との間で強く擦れ合うことによる摩耗や異音の発生が防止される。

【００１５】 また、両クラツチプレート２、６やクラツチハブ５に生じる振動は、トルク伝 達用圧縮コイルばね１０が伸縮することによつて吸収される。このときに、伝達 されるトルクすなわちトルク伝達用圧縮コイルばね１０に作用する軸線方向の荷 重が比較的小さいあいだは、コイル部１１がその軸線Ｐ方向におけるほぼすべて の範囲にわたつて撓みを生じることとなるため、ばね定数は小さいのであり、伝 達されるトルクが大きくなると、ピツチの小さい部分から順に密着してコイル部 １１の有効巻き数が減少するため、ばね定数が増大する。なお、このばね定数の 変化の仕方は図２のグラフに示すとおりである。したがつて、広範囲のトルク域 にわたつて振動が効果的に吸収されつつ、トルクの伝達が行われる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）クラツチの一部切欠正面図である。

【図１】（Ｂ）図１（Ａ）のＸ−Ｘ断面図である。

【図２】トルク伝達用圧縮コイルばねの荷重−撓み特性
を示すグラフである。

【符号の説明】

１：クラツチデイスク ４：クラツチシヤフト ５：ク
ラツチハブ １０：トルク伝達用圧縮コイルばね １
１：コイル部 Ｐ：軸線

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンに直結されて回転するフライホ
   イールに押し付けられることにより回転駆動されるクラ
   ツチデイスクと、駆動輪側への駆動力の伝達を行うクラ
   ツチシヤフトに一体的回転可能に嵌装されるクラツチハ
   ブとの間にコイル部の軸線を略円周方向に向けて装着す
   ることにより、振動を吸収しつつ前記クラツチデイスク
   から前記クラツチハブへのトルクの伝達を行うクラツチ
   のトルク伝達用圧縮コイルばねであつて、 前記コイル部のピツチを該コイル部の軸線方向において
   中央から両端側へ対称的に変化させ、かつ、該コイル部
   の軸線を湾曲させたことを特徴とするクラツチのトルク
   伝達用圧縮コイルばね。