JPH05317401A - 香り発生器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 香りを必要とするときに人がほのかに匂いを
感じるいき値程度の極めて僅かな吐出コントロールがで
き、且つ、香りの経時的な匂い変化もなく安定して発生
させることのできる、低価格で信頼性の高い香り発生装
置により、常に意図する香り環境を実現できるようにす
る。 【構成】 香料８を供給する香料供給容器２と、直方柱
形状の圧力室１３を底部に設けた香料収納容器３と、圧
力室１３の側壁面の一部に形成した、表面に撥液性皮膜
１５を施した香料噴霧用のノズル４と、ノズル４と対抗
する圧力室１３の側壁面に、圧力室１３に供給された香
料８に急激な圧力振動波を生じさせるピエゾ駆動式圧力
振動波発生手段とで構成し、且つ、ノズル４と、圧力室
１３と、圧力振動波発生手段とを下部液面２４より低位
置に配し、電気信号７に応じてノズル４から香料８の微
小液滴を吐出／停止させるよう構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、液体香料を微粒子化し
て噴霧することにより、人間のいき値程度の極めてわず
かな量の吐出コントロールを可能にし、自然に近い心地
よい香り雰囲気を居住空間において醸し出すことができ
る、香り発生器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の香り発生器は、卓上型のマスキン
グ効果をねらった芳香剤がよく知られているが、これら
のものはいずれも香料の自然蒸発を利用したものであ
る。

【０００３】また、微量液滴の吐出方法としてはよく知
られている、ドロップ・オン・デマンド型インクジェッ
トヘッドなどに使用されているピエゾ駆動のインク液吐
出装置などがあり、この方式について図面とともに説明
する。

【０００４】図５において、ピエゾ駆動型のインク液滴
吐出ヘッド１０１の例で、振動板１１に接着されたピエ
ゾ板１２の両側に電気信号３を入力すると、ピエゾ板１
２および振動板１１が変位し、圧力室１３にポンプ１０
２により供給されている、インク１０３に急激な圧力上
昇を生させ、圧力室１３の一部に設けられた吐出ノズル
４より微小のインク液滴を吐出させるものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述した従来の芳香剤
は、香りを発生させる開口部の開閉状態により香りの強
弱をコントロールするだけのものであるため、香料の匂
いが強くなりすぎ逆に不快感を与えたりすることがあ
り、さらに香料の自然蒸発を利用して香りを発生させて
いるため、低沸点の成分から気化し、時間経過に伴い高
沸点の成分だけが残存するため、香りの質が使いはじめ
た頃と変わってしまうといったような問題点を有してい
る。また、ピエゾ振動子を用いた従来のインク液滴吐出
ヘッドを、香り発生装置として使用した場合、ポンプを
使用して圧力室に香料を供給する方法では、複雑な機構
や手段を装置に備える必要がありコストアップや大型化
すると言った問題が生じる。

【０００６】また、ポンプを使用せずに圧力室に香料を
供給しようとした場合、圧力室内の空気の逃げ道が極め
て小さな吐出ノズルしかないため、液の供給がスムーズ
にできないと言った問題があり、さらにポンプ以外の何
等かで強制的に香料を圧力室に供給した場合には、吐出
ノズルより香料が外部に漏出し、漏出した香料から匂い
が生じるため、意図する香り環境を阻害すると言う課題
がある。

【０００７】本発明は、上記課題に鑑み、好みの香りを
必要なときに人がほのかに感じるいき値程度の極めてわ
ずかな量でのコントロールを行い、さらに、香りの経時
的な匂い変化もなく安定して発生させることのできる、
低価格で信頼性の高いコンパクトな香り発生装置の提供
を目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の香り発生器は、液体香料を供給する香料供給
容器と、長方柱形状の圧力室を底部に設け、前記香料供
給容器から供給された香料の液面を一定に保持しつつ、
前記圧力室に香料を供給する香料収納容器と、前記圧力
室の壁面の一部に形成した、表面に撥液性物質皮膜を施
した吐出ノズルと、前記吐出ノズルと対向する圧力室壁
面に、前記圧力室に供給された香料に急激な圧力振動波
を生じさせるピエゾ駆動式圧力振動波発生手段とで構成
し、且つ、前記吐出ノズルと、前記圧力室と、前記ピエ
ゾ駆動式圧力振動波発生手段とを前記香料収納容器に供
給された香料の液面より低位置に配し、電気信号に応じ
て前記吐出ノズルから液体香料の微小液滴を吐出／停止
させるよう構成したことを特徴とするものである。

【０００９】また、本発明は圧力室形状を長方柱形状と
することにより、香料供給容器から供給された香料が圧
力室内の空気層と完全に置換され、気泡の残存なく圧力
室に香料が供給されるよう構成したことを特徴とするも
のである。

【００１０】また、本発明は輸送時に香料の漏出がな
く、さらに香料供給容器を香料収納容器へ装着する際に
も、香料供給容器内の液体香料が流出することなく装着
でき、さらに香料収納容器に供給された香料の液面が一
定の位置で保持できるように、香料供給容器と香料収納
容器とを分割し、香料供給容器の供給口を、香料より比
重の軽い耐油性に優れた樹脂栓にて封鎖し、香料供給容
器が香料収納容器に装着されると樹脂栓が浮上し、香料
が供給されるよう構成したことを特徴とするものであ
る。

【００１１】

【作用】上記構成による作用は、以下の通りである。

【００１２】本発明は、圧力室を長方柱形状とし、一方
の壁面に吐出ノズルを設け、圧力振動波発生手段である
ピエゾ振動子を吐出ノズルと対向する壁面位置に設ける
ことにより、ピエゾ振動子からの圧力振動波を受けた液
体香料の共振波が吐出ノズルに直線的に伝わるため、ノ
ズル先端より香料を噴霧させることが可能となる。この
ため、インク液滴吐出ヘッドのような圧力室を圧力上昇
をさせる必要がなく、圧力室が開放できるため、上部に
設けられた香料供給容器からの液体香料が強制的に供給
することなく供給できる。また、長方錘形状の圧力室で
あるため香料の表面張力によるメニスカスの形成もない
ため、圧力室への香料供給もスムーズにでき、気泡の残
存なく香料が圧力室まで供給できる。

【００１３】また、香料供給容器の供給口を耐油性が高
く、香料より比重の軽い樹脂栓にて封鎖することによ
り、本体となる香料収納容器に香料供給容器を装着する
際に香料供給容器を逆さまにしても、香料が流出するこ
となく固定できる。さらに、香料供給容器が完全に固定
できると、香料収納容器内に設けられたピンに樹脂栓が
押され、樹脂栓が固定部から外れて浮上し、香料が供給
されるため、香料収納容器内の香料液面は常に一定にな
る。

【００１４】また、香料供給容器内の香料液面および香
料収納容器内の香料液面より低位置に吐出ノズルを設
け、ノズル開口面にフッ素系の撥液性物質をコーティン
グすることにより、撥液性皮膜の香料に対する接触角の
作用で香料はノズルから流出せずにノズル開口部に凸状
のメニスカスを形成して安定状態が保持される。このた
め、香料供給容器より供給された香料は圧力室へ供給さ
れても、ノズルからの液垂れによる香りの漏出はなく、
さらに、香りの不要な場合に香りが発生するといったこ
ともなく無駄な消費も防止できる。

【００１５】また、香料の吐出は圧力振動波発生手段で
あるピエゾ振動子に入力する電気信号の駆動電圧や駆動
周波数および駆動時間などを制御することによって微量
な噴霧量の制御が可能となる。

【００１６】また、香料は消費された分だけ上部に設け
られている香料供給容器から香料収納容器に供給され、
香料供給容器内には代わりに空気が置換される。このた
め、ノズル部に作用する静圧は香料供給容器の香料が空
になるまで一定であるため、電気信号が一定ならば吐出
量も一定となり、また、香料収納容器の液面高さも低く
しているため香料がなくなるまで吐出量の変化を小さく
できると言う効果がある。以上のような構成によって吐
出効率の高い、信頼性に優れた香り発生器が実現でき、
安価な装置で各人の好みにあった香り空間の演出が可能
となる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の一実施例について、添付図面
を用い説明する。

【００１８】（実施例１）まず、図１、図２、図３、図
４により本発明の第一の実施例について説明する。 図
１は本発明の実施例における香り発生装置の斜視図であ
る。

【００１９】図１において、１はカセット型の香り発生
器、２は香料供給容器、３は香料収納容器、４はノズ
ル、５はホルダー、６はリード電極ＰＣ板、７は電気信
号である。香り発生器１は概ね香料を供給する香料供給
容器２と、香料を一定量収納する香料収納容器３と、香
料収納容器３の底部に設けられた圧力室壁面に固定し
た、香料の微小液滴を電気信号７に応じて吐出するノズ
ル４とから構成されている。そして各々が着脱自在のカ
セット型香り発生器１は、図示していない送風回路をも
つ香り発生装置や空気調和機などの一部に設けられたリ
ード電極取り出し用接点を兼ねたカセット用のホルダー
５に香料収納容器３が挟まれ、図示していないピエゾ電
極からのリード取り出し用接点がリード電極ＰＣ板６に
接して固定されるようになっている。

【００２０】図２は本発明の実施例における香り発生器
の断面図である。図２において、８は香料、９は樹脂
栓、１０はブッシュ、１１は振動板、１２はピエゾ板、
１３は圧力室、１４は供給口、１５は撥液性皮膜、１６
は導電性ゴム電極シート、１７はスリーブ、１８は通気
孔、１９は補給口、２０はネジブッシュ、２１はテフロ
ンパッキン、２２はピンである。

【００２１】香り発生器１は香料供給容器２と底部に香
料８の微小液滴を電気信号７に応じて噴霧させるための
圧力室１３を設けた香料収納容器３とに別れており、香
料供給容器２を香料収納容器３に装着することにより、
香料供給容器２内の例えば果物や花の香りなどに調合さ
れた香料８が補給口１９より香料収納容器３に供給さ
れ、さらに供給口１４を通じて圧力室１３に供給される
構造となっている。

【００２２】圧力室１３の側壁面の一部には金属性の振
動板１１が、その振動板１１の外側の面にはピエゾ板１
２が接合されている。また、振動板１１と対抗する圧力
室１３の側壁面に香料８の微小液滴を吐出するためのノ
ズル４が設けられており、このノズル４の外表面にはフ
ッ素系の撥液性物質や単分子膜による撥液性皮膜１５が
形成されており、ノズル４および振動板１１はテフロン
パッキン２１およびスリーブ１７を用いて香料収納容器
３にカシメなどにより固定されている。なお、ピエゾ板
１２へは導電性ゴム電極シート１６などを用いてリード
電極ＰＣ板６と接続されている。また、香料収納容器３
とネジブッシュ２０との境界の一部に外気と常に連通し
た小さな通気孔１８が設けてある。

【００２３】図３は図２の動作を説明するための断面図
である。図３において２４は下部液面、２５は上部液
面、Ｐ１はノズル４から下部液面２４までの静圧、Ｐ２
はノズル４から上部液面２５までの静圧である。

【００２４】以上の構成でつくられた香り発生器１の動
作について説明する。香り発生器１が図示していない送
風回路を持つ香り発生装置や空気調和機などに設けられ
たホルダー５と導電性ゴムシート１６を介したリード電
極ＰＣ板６間にセットされると、ノズル４の位置が下部
液面２４より低いためノズル４開口部には正の静圧Ｐ１
が作用する。しかし、ノズル４面には撥液性皮膜１５が
施してあるため、表面張力が２５ｄｙｎｅ／ｃｍ前後の
香料８であってもノズル４から液垂れは発生せずノズル
４開口部に凸状のメニスカスを形成して安定な状態が保
持される。例えば、ノズル４の半径ｒを０．０２５ｍ
ｍ、香料の表面張力γを２５ｄｙｎｅ／ｃｍ、液の密度
ρを０．９ｇ／ｃｍ²、重力の加速度ｇを９８０ｃｍ／
ｓｅｃ²、接触角θを６０゜とするとメニスカス保持圧
Ｐは Ｐ＝（２・γ）／（ｒ・ρ・ｇ・ｓｉｎθ）…（１） より１７０ｍｍＡｑ以上となる。即ち、１７０ｍｍＡｑ
以下の静圧Ｈ１ではノズル４からの液垂れは発生しない
ことを意味する。

【００２５】このような状態において、図示していない
リモコンなどを介した駆動制御回路によって電気信号７
がホルダー５と導電性ゴム電極シート６を介してピエゾ
板１２の電極に印加されると、ピエゾ板１２と振動板１
１の振動によって圧力室１３内の香料８に急激な圧力振
動波が生じ、その共振波によってノズル４からは電気信
号７に応じた微小液滴が空気中に噴霧され、そのまま空
気中で蒸発するか、図示していない液滴受けや加熱板な
どに付着した後蒸発して香りを発生させる。香料８の圧
力室１３への供給は香料の静圧Ｐ１と振動板１１とピエ
ゾ板１２が元に復帰する作用によって供給口１４よりな
されるが、振動板１１の復帰時に生じる負圧と香料の静
圧Ｐ１が相殺するためノズル４部のメニスカスに作用す
る圧力は極めて小さい。このため、気泡の吸入や不要な
吐出は起こらない。香料収納容器３に開けた小さな通気
孔１８は休止時における香りの漏出を最小限に抑え、且
つ、香料８の消費に伴う容積変化や、温度や気圧による
香料供給容器２および香料収納容器３内の圧力変化を香
料８の静圧のみに保持するためである。

【００２６】なお、液面位置は違っていても静圧Ｐ１と
Ｐ２は同一である。即ち、香料収納容器３内の香料８が
噴霧され下部液面２４が低下すると、香料供給容器２内
の香料８が補給口１９より香料収納容器３に補給され、
代わりに香料供給容器２には補給口１９から空気が入り
下部液面２４と補給口１９開口部面とがつながったとこ
ろで大気圧と均衡するため、下部液面２４は香料供給容
器２の香料８が全部なくなるまで変化せずノズル４にか
かる静圧も一定となる。したがって、液面の変化による
噴霧量の変化を防止できるので駆動制御回路の負担が軽
くなる。さらに、香料供給容器２の高さ方向を数式
（１）で示したメニスカス保持圧以上にのばし、容積を
増やすことも可能である。

【００２７】図４は本発明の実施例における香料供給容
器２単体の断面図である。図４において、８は香料、９
は樹脂栓、１０はブッシュ、５１はパッキン、５２はキ
ャップである。香料供給容器２は香料収納容器３に取り
付け使用されるが、取り付けられるまでは樹脂栓９およ
びパッキン５１を介したキャップ５２で封鎖されており
香料８が漏出しないようになっている。また、樹脂栓９
は香料８より比重の軽い例えばポリプロピレン樹脂など
を使用し、ブッシュ１０の内側でシールできる構造とな
っている。香料収納容器３への取り付けは、パッキン５
１およびキャップ５２を取り外し、香料収納容器３に予
め固定されているネジブッシュ２０にねじ込むことによ
り、ピン２２で樹脂栓９が押され、香料８より比重の軽
い樹脂栓９は浮上し香料８が香料収納容器３内に自動的
に供給される構造である。

【００２８】以上本発明の香り発生装置についての構
成、動作および作用などについて説明したが、香り発生
装置の構成材料には、金属、ガラス、セラミックスなど
の他に、透明または半透明のプラスチック材料などを使
用することにより香料の残量を目で確認することができ
るメリットもあり、また成形型によるコストダウンも可
能となる。また、本香り発生装置は液滴噴霧型なので香
りの成分が使いはじめから終了まで変化しない利点があ
り、カセット式なので香料の種類を数多く揃えることに
より各人の好みにあった香りを選択することが可能であ
る。

【００２９】

【発明の効果】以上のように本発明は、香り発生器を香
料供給容器と香料収納容器に分割し、香料収納容器内の
液面より低位置に撥液性皮膜を施したノズルを設け、そ
のノズルと対抗する位置に圧力振動波の発生手段を設け
た構造とすることにより、ノズルに作用する液の静圧を
一定に保持できるようにし、吐出の安定化を図ると共
に、圧力振動波による共振波を直接的に利用して香料の
噴霧を行うことができ、また、上記構造としたことによ
り、圧力室の気泡の残存などもなく香料が供給できるた
め、安定した信頼性の高いピエゾ駆動型の香り発生器の
提供が可能となる。そして、自動車や一般家庭などの空
気調和機や送風回路を有する単独タイプの香り発生装置
として搭載することにより、手軽な価格で家庭やオフィ
スの各部屋を各人の好みに応じた香り空間を演出するこ
とが可能となり、精神の安定や気分転換を図ることがで
きるし、作業能率の向上などの効果が期待できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例における香り発生器の斜視図

【図２】同香り発生器の断面図

【図３】図２の動作を説明するための断面図

【図４】本発明の一実施例における香料供給容器の断面
図

【図５】従来のピエゾ駆動型インクジェットヘッドの断
面図

【符号の説明】

１ 香り発生器 ２ 香料供給容器 ３ 香料収納容器 ４ ノズル ５ ホルダー ６ リード電極ＰＣ板 ７ 電気信号 ８ 香料 ９ 樹脂栓 １０ ブッシュ １１ 振動板 １２ ピエゾ板 １３ 圧力室 １４ 供給口 １５ 撥液性皮膜 １６ 導電性ゴム電極シート １７ スリーブ １８ 通気孔 １９ 補給口 ２０ ネジブッシュ ２１ テフロンパッキン ２２ ピン ２４ 下部液面 ２５ 上部液面 ５１ パッキン ５２ キャップ １０１ インク液滴吐出ヘッド １０２ ポンプ １０３ インク

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】液体香料を供給する香料供給容器と、柱形
   状の圧力室を底部に設け、前記香料供給容器から供給さ
   れた香料の液面を一定に保持しつつ、前記圧力室に香料
   を供給する香料収納容器と、前記圧力室の壁面の一部に
   形成した、表面に撥液性物質皮膜を施した吐出ノズル
   と、前記吐出ノズルと対向する圧力室壁面に、前記圧力
   室に供給された香料に急激な圧力振動波を生じさせるピ
   エゾ駆動式圧力振動波発生手段とからなり、電気信号に
   応じて前記吐出ノズルから、前記液体香料の微小液滴を
   吐出／停止させる一体型香料吐出装置であって、前記吐
   出ノズルと、前記圧力室と、前記圧力振動波発生手段と
   が、前記香料収納容器内の香料液面よりも常に低位置に
   ある香り発生器。
2. 【請求項２】香料供給容器の供給口を、液体香料より比
   重の軽い耐油性に優れた樹脂栓にて封鎖し、前記香料収
   納容器に装着されると樹脂栓が浮上し、香料が供給する
   よう構成したことを特徴とする請求項１記載の香り発生
   器。