JPH0530921A - 大豆蛋白ゲルの製造法 - Google Patents

大豆蛋白ゲルの製造法

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JPH0530921A
JPH0530921A JP3216135A JP21613591A JPH0530921A JP H0530921 A JPH0530921 A JP H0530921A JP 3216135 A JP3216135 A JP 3216135A JP 21613591 A JP21613591 A JP 21613591A JP H0530921 A JPH0530921 A JP H0530921A
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soybean protein
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soybean
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西村隆司
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Abstract

(57)【要約】 【目的】脱脂から得られる豆乳および分離大豆蛋白から
得られる豆腐は油分が少ないため、通常の全脂豆乳から
調製された豆腐と比べ、色調において白さが劣り、また
喉通りの悪さが感じられ食感も劣る。一方、通常の豆乳
や分離大豆蛋白はpHを下げ加熱するだけでは均一なゲ
ルを形成することはできない。また大豆蛋白凝固剤を添
加し、ゲル化するためには高温(80°C以上)で加熱
処理することが必要で、熱に不安定な生理活性物質等
(ビタミン類、酵素類)はこの時に分解あるいは劣化し
てしまう。そこで、色調が白く、喉通りがよく生理活性
物質が失活してない豆腐を目的とした。 【構成】大豆蛋白質(蛋白質濃度4%以上)をpH 5.0
〜6.5 (好ましくは 5.5〜6.3)に調整後、高圧処理 (100
0〜10000kg /平方cmで 5〜30分間相当) を行ってゲル
形成をさせる新規な食感を有する大豆蛋白ゲルの製造法 【効果】 本発明により、油脂を含まなくとも喉通りが
良く、色の白い豆腐状ゲルを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は大豆蛋白質をpH調整
後、高圧下で処理する事により熱処理する事なく豆腐状
のゲル化食品を提供できるものである。
【0002】
【従来の技術】大豆蛋白質のゲル化は加熱により蛋白質
を熱変性させるもの、豆腐のようにカルシウムイオンの
ような2価金属イオンやグルコノデルタラクトンによっ
て凝固させる方法が一般的に知られている。近年、蛋白
質、多糖類を圧力処理によってゲル化させる方法が報告
されている。加圧処理で形成された蛋白質、多糖類ゲル
の特性、官能検査結果については林らが、また分離大豆
蛋白質加熱ゲルの加圧処理によるゲルの性状については
廣塚が報告している。(林ら、日本農芸化学会大会要旨
集、p278 、1987) 。また酵素的に蛋白質のゲル化能を
改質する方法としては、架橋剤としてトランスグルタミ
ナーゼの作用により蛋白質中のグルタミン残基とリジン
残基を架橋してゲル化する方法が知られている。(特開
昭58-149645 号)
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】脱脂大豆を原料にし
て、そこから得られる豆乳および分離大豆蛋白をカルシ
ウム塩、グルコノデルタラクトン等によってゲル化させ
た豆腐は油分が少ないため、通常の全脂豆乳から調製さ
れた豆腐と比べ、色調において白さが劣り、また喉通り
の悪さが感じられ食感も劣る。一方、通常の豆乳や分離
大豆蛋白はpHを下げ加熱するだけでは均一なゲルを形
成することはできない。またカルシウム塩、グルコノデ
ルタラクトン等を添加し、ゲル化するためには高温(8
0℃以上)で加熱処理することが必要で、熱に不安定な
生理活性物質等(ビタミン類、酵素類)はこの時に分解
あるいは劣化してしまう。
【0004】
【発明の構成】本発明者らは大豆蛋白の高圧処理の研究
を進めていく過程で大豆蛋白溶液のpHを調整し、圧力
をかけることで大豆蛋白溶液が豆腐状にゲル化すること
を見いだし、油脂を含まなくとも喉通りが良く、色の白
い豆腐状ゲルをの調製する方法を見いだした。
【0005】即ち、本発明は、大豆蛋白質(蛋白質濃度
4%以上)をpH 5.0〜6.5 ( 好ましくは 5.5〜6.3)に
調整後、高圧処理 (1000〜10000kg /平方cmで 5〜30分
間)を行ってゲル形成をさせる大豆蛋白ゲルの製造法で
ある。本発明に用いる大豆蛋白は丸大豆、脱脂大豆から
調製した豆乳、酸沈澱蛋白、酸およびアルコールコンセ
ントレート、分離大豆蛋白質等大豆蛋白を主成分とする
ものをを用いることができる。
【0006】大豆蛋白溶液の蛋白質濃度は4%以上が好
ましい。大豆蛋白でも脱脂大豆から調製した酸沈澱蛋白
は豆乳や分離大豆蛋白と比べゲル化しにくい傾向がある
が蛋白溶液を予め加熱(90℃,10分間程度)してお
くことで同等の蛋白質濃度でゲル化させることができ、
かつ風味に悪影響を与える酵素類(リポキシゲナーゼ、
トリプシンインヒビター等)の失活や殺菌が行える。
【0007】大豆蛋白溶液のpHは 5.0〜6.5 ( 好まし
くは 5.5〜6.3 ) が適当であり、塩酸(硫酸、くえん
酸、その他の無機酸、有機酸でも可)等を用いて調製す
ることができる。pHを下げた方がゲルの固さは増すが
酸度も上がり食には適さなくなる。この時のpH調整に
おいて加圧処理後のpHが 5.0〜6.5 ( 好ましくは 5.5
〜6.3 ) の範囲に入るようにグルコノデルタラクトンを
添加することができる。グルコノデルタラクトンを用い
た場合、圧力処理のほうが加熱処理と比べ色調も白く、
破断強度の高い、しなやかなゲルが調製できる。豆腐製
造の際に凝固剤としてグルコノデルタラクトンだけで加
熱して調製した豆腐はカルシウム塩やマグネシウム塩で
調製した豆腐と比べ、もろくて割れやすい事が知られて
いるが、加圧処理によって調製したグルコノデルタラク
トンを用いた豆腐は加熱処理のそれと異なり、割れにく
く、弾力性をもつゲル(豆腐)とすることができる。
【0008】圧力処理は静水圧で 1000 〜10000kg/平方
cmの範囲で5〜30分間処理することができる。圧力処理
は通常の豆腐製造時のように高温( 80°C℃以上) で長
時間(1時間程度)処理しないため、熱に不安定な生理
活性物質(ビタミン類、酵素類)や分解しやすい色、香
り成分等を含有させることができる。必要により磁場、
電場をかけて高圧処理 (1000〜10000kg /平方cm)する
こともできる。
【実施例】
【0009】以下実施例により本発明の実施態様を説明
する。 実施例1 脱脂大豆から調製した豆乳、酸沈澱蛋白、および分離大
豆蛋白(不二製油(株)製,PR−R)をそれぞれ6%
水溶液に調整し、次に塩酸を用いて それぞれの蛋白溶
液のpHを 6.5, 6.0, 5.5に調整し、それぞれ加熱処理
(95°C、20分間) 、加圧処理(4000kg /平方cm,20 分
間, 25°C) を行い、状態変化を観察した。結果を表1
に示す。
【0010】
【表1】 豆乳の場合 ─────────────────────────────────── pH 加熱変化 加圧変化 ─────────────────────────────────── 6.5 粘度増加 粘度増加 6.0 凝固(もろく不均一) ゲル化(固くなめらか) 5.5 凝固(もろく不均一) ゲル化(固くなめらか) ───────────────────────────────────
【0011】
【表2】 酸沈澱蛋白の場合 ─────────────────────────────────── pH 加熱変化 加圧変化 ─────────────────────────────────── 6.5 粘度増加 粘度増加 6.0 凝集 ゲル化(柔らかくなめらか) 5.5 凝固(もろく不均一) ゲル化(固くなめらか) ───────────────────────────────────
【0012】
【表3】 分離大豆蛋白の場合 ─────────────────────────────────── pH 加熱変化 加圧変化 ─────────────────────────────────── 6.5 粘度増加 粘度増加 6.0 凝固(もろく不均一) ゲル化(柔らかくなめらか) 5.5 凝固(もろく不均一) ゲル化(固くなめらか) ───────────────────────────────────
【0013】pH調整後、加圧処理した蛋白溶液はpH
6.0, 5.5 の条件で豆腐状にゲル化した。このゲルはき
めが細かくなめらかで通常の豆腐より優れた食感を有し
ていた。一方、pH調整後、加熱処理した蛋白溶液はp
H 6.0, 5.5 の条件で凝集、凝固はしたがもろもろでゲ
ル状にはならなかった。また、加圧処理において豆乳や
分離大豆蛋白に比べ、酸沈澱蛋白は同条件下でゲル化し
にくかったが、蛋白溶液を予め加熱(90°C,10分
間程度)しておくことで同等の蛋白質濃度でゲル化する
ことができた。
【0014】「実施例2」脱脂大豆から調製した酸沈澱
タンパク質溶液(タンパク質濃度4%、pH7)は10
0℃湯浴で10分間加熱し、直後に氷水で冷却した。こ
れにグルコノデルタラクトン(GDL)を最終濃度2
0、25、30mMになるように添加し、90°C湯浴
で30分間あるいは400MPa静水圧25℃、30分
間処理し、ゲル化させ、その堅さ(破断強度)とpHの
変化を調べた。
【0015】
【表4】 ─────────────────────────────── GDL濃度(mM) 破断強度(g) pH ─────────────────────────────── 加熱 加圧 加熱 加圧 ─────────────────────────────── 20 40 42 5.97 5.96 25 44 50 5.67 5.69 30 43 44 5.41 4.46 ─────────────────────────────── 加熱、加圧処理ともに25mMでゲルは最も堅くなり、
加圧処理でできたゲルは加熱処理のものより破断強度の
高い、しなやかな物性を示した。
【0016】実施例3 グルコノデルタラクトン(GDL)はグルコン酸の分子
内エステルであり、水によく溶けて微酸性を呈するが、
そのまま放置するか、あるいは加熱するとグルコン酸を
生じ、pHが低下する。GDLが加熱処理と同様に加圧
処理で開裂しpHが低下することを確かめるため,GD
Lの1%(w/v)溶液を温度,圧力を変えて処理し,
反応時間のpHの変化を測定し、表に示した。GDLは
処理温度の上昇に伴いpHの低下が速くなるが,加圧処
理でも圧力の増加に伴いpHが低下し,圧力処理による
GDLゲルの形成は,酸凝固作用によるものであること
が判った。加圧処理は25℃で行った。
【0017】
【表5】 ───────────────────────────────── 表. 加熱、加圧処理によるGDLのpH変化 ────────────────────────────────── 時間 (分) 25 °C 40 °C 60 °C100 °C100MPa 200MPa 400MPa ────────────────────────────────── 0 3.72 3.72 3.72 3.72 3.72 3.72 3.72 2 3.41 3.38 3.32 2.85 3.20 3.05 2.74 5 3.33 3.23 3.09 2.73 3.10 2.93 2.70 10 3.23 3.05 2.82 2.69 3.02 2.83 2.70 20 3.11 2.90 2.74 2.69 2.90 2.75 2.70 30 3.01 2.81 2.71 2.69 2.85 2.73 2.70 60 2.82 2.75 2.69 2.69 2.78 2.72 2.70 90 2.75 2.73 2.69 2.69 2.76 2.70 2.70 ──────────────────────────────────
【0018】実施例4 分離大豆蛋白質(不二製油(株)製、PR−R)の6%
溶液にグルコノデルタラクトン(GDL)を20mM、27mM
(乾物当り6%、8%) 添加し、加熱( 95°C, 30分
間) または加圧(4000kg /平方cm、30分間,25 °C)
してゲル化させ、ゲルの物性( 色調、破断強度、pH )と
食感( 喉通り)を調べた。色調は、日本電色(株)製色
差計Z−1001DP、破断強度はヤマデン(株)製レ
オナーRE3305で測定した。結果を表5に示す。
【0019】
【表6】 GDL 20mM添加の場合 ─────────────────────────────────── 破断強度(g) pH 色調(L値、 a値、 b値) ─────────────────────────────────── 加熱 77 5.84 79.9 −0.3 7.7 加圧 98 6.00 82.0 −0.7 8.5 ───────────────────────────────────
【0020】
【表7】 GDL 27mM添加の場合 ─────────────────────────────────── 破断強度(g) pH 色調(L値、 a値、 b値) ─────────────────────────────────── 加熱 106 5.60 80.8 −1.0 8.4 加圧 165 5.66 82.5 −0.4 8.7 ───────────────────────────────────
【0021】以上のように、加熱処理に対し、加圧処理
によるGDLゲル凝固物は、色調においてL値が高く白
く見えた。さらに破断強度が高くなり、しなやかな物性
を示した。また加熱処理は、処理後離水が見られたが、
加圧処理では、処理直後はほとんど離水はなく、放置後
徐々に浸み出てきた。凝固の組織状態に加熱と何らかの
差があると思われた。加熱ゲルと加圧ゲルの食感の違い
を10名のパネラーに官能評価してもらったところ、全員
が加圧ゲルの方が加熱ゲルより喉通りが良いと判断し
た。
【0022】実施例5 分離大豆蛋白質(不二製油(株)製「PR−R」)にL
−アスコルビン酸をPR−R 100g 当り500mg 添加した
6%蛋白溶液にグルコノデルタラクトン(GDL)を、
20mM(乾物当たり6%)添加し、加熱(95℃, 30分
間) または加圧(4000kg /平方cm、30分間,25 ℃) し
てゲル化させ、処理前後の活性なL−アスコルビン酸の
量の変化を調べた。結果を表5に示す。
【0023】
【表7】 L−アスコルビン酸含量(mg/100g) ─────────────────────────────────── 処理前 加熱処理後 加圧処理後 ─────────────────────────────────── 498 385 498 ───────────────────────────────────
【0024】以上のように、加熱、加圧処理後のL−ア
スコルビン酸含量の変化は加熱処理では少し減少した
が、加圧処理では全く変化しなかった。加圧処理は加熱
処理と異なり高温で長時間処理されないため、ビタミン
類や熱に不安定な生理活性物質等も大豆蛋白ゲルに含有
させることができることが分かった。
【0025】
【効果】本発明により、油脂を含まなくとも喉通りが良
く、色の白い豆腐状ゲルを得ることができる。油脂を含
めば更に喉通りが良く、色の白い豆腐状ゲルを得ること
ができることは言うまでもない。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】大豆蛋白質(蛋白質濃度4%以上)をpH
    5.0〜6.5( 好ましくは 5.5〜6.3)に調整後、高圧処理
    (1000〜10000kg /平方cmで 5〜30分間相当)を行ってゲ
    ル形成をさせる大豆蛋白ゲルの製造法
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