JPH05304966A - エストライドの製造方法 - Google Patents

エストライドの製造方法

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JPH05304966A
JPH05304966A JP11158092A JP11158092A JPH05304966A JP H05304966 A JPH05304966 A JP H05304966A JP 11158092 A JP11158092 A JP 11158092A JP 11158092 A JP11158092 A JP 11158092A JP H05304966 A JPH05304966 A JP H05304966A
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NGK Insulators Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 重合度の大きいエストライドを高い反応速度
で得ることができるエストライドの製造方法を提供する
こと。 【構成】 固定化リパーゼを用いてリシノール酸からエ
ストライドを製造する際に、反応の進行に応じてバルク
中の水分量を調整しつつ反応を進行させる。これにより
NVが40以下のエストライドを得ることができる。好ま
しい水分量の調整範囲は図1の曲線C2とC4との間の領域
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酵素を利用してリシノー
ル酸からエストライドを合成する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】エストライドはオキシ脂肪酸2分子間の
水酸基とカルボキシル基とから脱水縮合してできた鎖状
のエステルであり、工業的にきわめて多くの用途を持つ
有用物質である。従来、エストライドはリシノール酸を
220 ℃に数時間加熱することにより製造されているが、
リシノール酸を高温にさらすために食品等の用途に不向
きな色や臭気を持つという問題があった。
【0003】この問題を解決するために、特開平1-1659
1 号公報や特開平2-13387 号公報には、酵素の一種であ
るリパーゼを水に溶解し、リシノール酸中に分散させて
色や臭気のないエストライドを合成する方法が提案され
ている。しかしこの方法では反応系中に多量の水が存在
するために脱水縮合反応の進行速度が遅くなるととも
に、重合度の低いエストライドしか得られないという問
題があった。
【0004】そこで本発明者等は、担体に固定化したリ
パーゼを使用し、かつ担体内水分を調整することにより
重合度の大きいエストライドを高い反応速度で得る方法
を開発し、既に特願平4-18902 号として出願した。しか
しその後の研究により、担体内水分量を正確に測定しか
つ制御することは実験室的には可能であるものの、工業
的には容易ではないという問題があることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来
の問題点を解決し、工業的に制御が容易な方法によって
重合度の大きいエストライドを高い反応速度で得ること
ができるエストライドの製造方法を提供するために完成
されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明は、酵素を用いてリシノール酸から
エストライドを製造する方法において、上記酵素として
固定化リパーゼを使用し、バルク中の水分量を調整しつ
つ反応を進行させることを特徴とするものである。なお
リパーゼとしてはキャンジダ−ルゴサ(Candida-rugosa)
由来のものを用いることが好ましく、固定化担体として
は例えば焼成セピオライトのような多孔質セラミックが
使用される。
【0007】本発明においては、上記のように固定化さ
れたリパーゼを収納した反応容器に循環させるバルク中
の水分量と、中和価(NV)とを連続的に測定する。こ
こでNVはリシノール酸からの脱水縮合反応の進行状態
を示す指標として用いられるもので、リシノール酸のN
Vは140 〜170 程度であるが、従来の加熱法により得ら
れたエストライドのNVは40前後であるため、本発明に
おいてもNVを40以下とすることが反応進行の目的とさ
れる。このようにして測定されたバルク中の水分量(mg/
kg) は、フラッシュエバポレータ等の手段によって容易
に調整することができ、本発明ではNVの変化に応じて
バルク中の水分量を調整することにより、NVが40以下
のエストライドを得ることができる。
【0008】
【作用】本発明によれば、生体触媒であるリパーゼを使
用してリシノール酸からエストライドを製造するので、
従来のようにリシノール酸を高温にさらす必要がなく、
色や臭気のないエストライドを得ることができる。また
本発明によれば、NVの変化に応じてバルク中の水分量
を調整しつつ反応を進行させるので、反応系中の水分量
を酵素の活性が十分に発揮される領域に維持しつつ脱水
縮合反応を行わせることができ、高い反応速度を得るこ
とができる。更に本発明によれば、工業的に測定や制御
が容易なバルク中の水分量を調整しつつ反応を進行させ
るので、安定した工程管理が可能である。
【0009】
【実施例】以下に本発明の実施例を比較例とともに示
す。図1は横軸にバルク中の水分量x(mg/kg) を取り、
縦軸に中和価y(NV:無次元量)を取ったグラフであ
る。このグラフ中にRUN1として示すのは、比較的多量の
水分を含有するリシノール酸を出発原料とし、固定化さ
れたリパーゼを収納した反応容器に循環させ、バルク中
の水分量を全く調整せずに反応を進行させた場合であ
る。この場合には固定化リパーゼの作用によって脱水縮
合反応が進行するが、CEとして示した曲線に達した点で
反応が停止し、NVを65以下とすることができない。こ
の曲線CEは反応平衡線を意味するもので、これを0≦x
≦8000の範囲内の近似式で表すと、次の式となる。 y=8.14×10-14x4 −1.22×10-9x3+4.92×10-6x2+1.92×10-3x +33.6
【0010】また図1中にRUN2として示すのは、水分含
有量を調整したリシノール酸を出発原料とし、RUN1と同
様にバルク中の水分量を全く調整せずに反応を進行させ
た場合である。この場合にも曲線CEに達した時点で反応
が停止し、NVを65以下とすることができない。これら
のRUN1とRUN2は従来のリパーゼを水に溶解し、リシノー
ル酸中に分散させて反応させる方法を示すもので、前記
したとおり重合度の低いエストライドしか得られない。
なお、曲線CEに達した点のバルク中の水分量は空気中の
湿度に対応するものである。また曲線CEの付近では反応
速度が極めて低くなるために、これらの方法は工業的に
エストライドを製造する方法としては不向きであること
が分かる。
【0011】次にRUN3とRUN4として示すのは、RUN2と同
一のリシノール酸を出発原料とし、本発明によってNV
の変化に応じてバルク中の水分量を調整しつつ反応を進
行させた場合である。この場合にはNVが60以下となっ
てもなお反応が進行し、矢印に示すようにNVが40以下
のエストライドを得ることができる。このように反応の
進行に連れてバルク中の水分量を低下させることが好ま
しいのは、高分子化によってバルクの親水性が低下し、
各反応段階によって至適水分領域が変化するためであ
る。
【0012】図1にC4として示した曲線は、これよりも
バルク中の水分量が低下するとリパーゼの酵素活性が発
現しない領域を示すためのものである。この曲線C4は0
≦x≦1000の範囲内の近似式で表すと、次の式とな
る。 y=7.24×10-7x2+2.28×10-2x +32.0 従って、本発明のエストライドの製造方法を実施する場
合には、上記の式と式との間の領域として表現され
る範囲内にバルク中の水分量を調整しつつ反応を進行さ
せ、NVが40以下のエストライドを得ることが必要であ
る。なお、式で表される曲線CEよりも下側の領域で
は、反応が逆に進行することとなる。
【0013】また図1にC2として示される曲線およびC3
として示される曲線は、反応を高効率で進行させること
ができる領域を示すもので、それぞれ次の式と式に
より近似される。 y=6.82×10-8x2+1.26×10-2x +32.1 (但し0
≦x≦8000) y=−9.31×10-6x2+7.22×10-2x +32.0 (但し0
≦x≦2000) 従って本発明のエストライドの製造方法を実施するにあ
たり、これらの曲線C2とC3との間の領域として表現され
る範囲内にバルク中の水分量を調整しつつ反応を進行さ
せれば、更に好ましい結果を得ることができる。なお曲
線CMは最も好ましい反応進行状況を示す線であり、実際
にはこの曲線CMを目標値として運転を制御するとよい。
【0014】また図1には示されていないが、反応をど
のような経路で進行させるかによって、目的とするNV
が40以下のエストライドを得るまでに要する時間は大き
く異なる。表1に上記のRUN1〜RUN4につき、NVが40に
達するまでの時間を示す。
【0015】
【表1】
【0016】上記のように、曲線CMに近い経路で反応を
進行させたRUN4の場合には、従来に比較して極めて短い
反応時間でNVが40以下のエストライドを製造すること
ができる。また本発明により得られたエストライドの色
度を測定した結果、表2の通りの結果となり、反応によ
るエストライドの着色はほとんど見られなかった。
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のエスト
ライドの製造方法によれば、NVが40以下の重合度の大
きいエストライドを高い反応速度で得ることができ、し
かも工業的に測定や制御が容易なバルク中の水分量を調
整しつつ反応を進行させるので、安定した工程管理が可
能である。よって本発明は従来の問題点を解消したエス
トライドの製造方法として、産業の発展に寄与するとこ
ろは極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】エストライドの脱水縮合反応中におけるバルク
中の水分量xと中和価yとの関係を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵素を用いてリシノール酸からエストラ
    イドを製造する方法において、上記酵素として固定化リ
    パーゼを使用し、バルク中の水分量を調整しつつ反応を
    進行させることを特徴とするエストライドの製造方法。
  2. 【請求項2】 バルク中の水分量を、横軸にバルク中の
    水分量x(mg/kg)を取り、縦軸に中和価y(NV:無次
    元量)を取ったグラフにおいて、次の式と式との間
    の領域として表現される範囲内に調整しつつ反応を進行
    させ、NVが40以下のエストライドを得ることを特徴と
    する請求項1記載のエストライドの製造方法。 y=8.14×10-14x4 −1.22×10-9x3+4.92×10-6x2+1.92×10-3x +33.6 (但し0≦x≦8000)・・・・・式 y=7.24×10-7x2+2.28×10-2x +32.0 (但し0≦x≦1000)・・・・・式
  3. 【請求項3】 バルク中の水分量を、横軸にバルク中の
    水分量x(mg/kg)を取り、縦軸に中和価y(NV:無次
    元量)を取ったグラフにおいて、次の式と式との間
    の領域として表現される範囲内に調整しつつ反応を進行
    させ、NVが40以下のエストライドを得ることを特徴と
    する請求項1記載のエストライドの製造方法。 y=6.82×10-8x2+1.26×10-2x +32.1 (但し0≦x≦8000)・・・・・式 y=−9.31×10-6x2+7.22×10-2x +32.0 (但し0≦x≦2000)・・・・・式
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