JPH05297426A - 非線形光学材料および非線形光学装置 - Google Patents

非線形光学材料および非線形光学装置

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JPH05297426A
JPH05297426A JP10142392A JP10142392A JPH05297426A JP H05297426 A JPH05297426 A JP H05297426A JP 10142392 A JP10142392 A JP 10142392A JP 10142392 A JP10142392 A JP 10142392A JP H05297426 A JPH05297426 A JP H05297426A
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optical
nonlinear
heteroaromatic ring
nonlinear optical
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JP10142392A
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Toshikuni Kaino
俊邦 戒能
Takashi Kurihara
栗原  隆
Ryuichi Yamamoto
隆一 山本
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Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 使用波長範囲が広く、高速応答性を有し、か
つ動作入力光強度が小さい、実用に供し得る高効率非線
形光学材料およびこれを用いた高性能非線形光学装置を
提供する。 【構成】 非線形光学材料はドナー性を有する複素芳香
環とアクセプター性を有する複素芳香環とから構成され
るπ電子共役高分子である。また、非線形光学装置10
はこの非線形光学材料からなる光学媒質20と、誘電体
多層蒸着ミラー23A,23Bのような光学素子とを備
える。このドナー性を有する複素芳香環はチオフェン
が、アクセプター性を有する複素芳香環はピリジンが好
ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光情報処理や光通信シ
ステムにおいて、将来的にさらに重要性を増す光スイッ
チや光メモリに用いられる非線形光学材料に関する。本
発明は、また、光スイッチや光メモリから構成される光
信号演算処理装置などの非線形光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】非線形光学効果とは、物質に光が入射し
たときに、物質の電気分極Pが、下式
【0003】
【数1】 P=χ(1) E+χ(2)2 +χ(3)3 +・・・ (1) で表されるのに対し、第2項以降の項により発現する効
果を言う。ここに、χ(i) はi次の電気感受率、Eは光
の電界強度である。特に、式(1)の第2項による第2
高調波発生(SHG)や第3項による第3高調波発生
(THG)は波長変換効果としてよく知られているが、
第3項はまた、光強度に応じた光学定数の変化、例えば
非線形屈折率効果や非線形吸収効果を与えるものとして
重要である。例えば、非線形屈折率効果は物質の屈折率
nが入射光強度に比例して変化するものであり、n=n
0 +n2 Iで記述される(n0 は定数、n2 は非線形屈
折率係数である)。この効果を示す非線形光学材料と、
光共振器や偏光子あるいは反射鏡などの他の光学素子と
を組み合わせると、光双安定素子や光スイッチあるいは
位相共役波発生器などの光情報処理や光通信システムに
おいて将来的に用いられる重要なデバイスの実現が可能
である。
【0004】このような非線形屈折率効果を示す非線形
光学材料を媒質とする非線形光学装置の従来例を以下に
説明する。図7は媒質として従来の非線形光学材料を使
用した光双安定素子の構成の一例を示す概略斜視図であ
る。
【0005】図7において、符号15は光双安定素子、
21は非線形屈折率を有する光学材料(非線形屈折率媒
質)、22Aおよび22Bは誘電体蒸着ミラー、Piは
入力光、Ptは出力光である。この光双安定素子15は
非線形屈折率媒質21の両面に反射率約90%の誘電体
蒸着ミラー22Aおよび22Bが塗布されたものであ
る。この構成においては、入力光Piの波長をわずかに
変化させて共振条件を満足すると、入力光Piの強度に
対して出力光Ptの強度が図8(A),(B)に示した
ような特性を持つ(動作原理については文献 アプライ
ド フィジックスレター(Appl.Phys.Let
t.)vol.35,451(1976)に詳しい)。
これらの特性は、それぞれ、リミッタ動作および双安定
動作に対応しており、上述した光双安定素子は光通信や
光情報処理システムにおいて入力光パルスの波形整形、
光スイッチ、あるいは光信号メモリ、光論理演算動作な
どへの応用が可能なものである。
【0006】ところで、この種の非線形光学装置におい
ては、特性として、使用可能な入力光波長ならびに入力
光強度、さらに光信号の強度変化に対して追随可能な応
答時間の3つの値が重要である。例えば、図7中の非線
形屈折率媒質21としてGaAsとGaAlAsの半導
体薄膜を交互に繰り返し成長させて作製した超格子結晶
を用いた例においては、結晶内で励起子が光吸収に伴っ
て励起されることによって屈折率が光強度依存性を示す
こと(吸収依存性効果)を動作原理としているため、上
述した式(1)の第3項の係数が大きく(すなわち、3
次非線形の効率が高く)、動作に必要な入力光強度は5
×104 W/cm2 程度と小さくて済む点では優れてい
るものの、使用可能な入力光波長が励起子吸収スペクト
ル近傍のきわめて狭い範囲に限られてしまうこと、およ
び応答時間が励起子寿命により決定され、3×10-8
ecより高速の光信号処理には使えないことなどの問題
点があった。
【0007】また、非線形光学媒質として非線形光学液
体である二硫化炭素(CS2 )を満たしたガラスセルを
用い、前記誘電体蒸着ミラー22A,22Bの代わり
に、外部ミラーを用いた別の従来例においては、光電界
に応じた分子の回転配列により屈折率が光強度依存性を
示すこと(分子回転非線形効果)を動作原理としてい
る。このため、使用可能な入力光波長が可視から近赤外
域の広い範囲にわたるという点では優れているものの、
3次非線形の効果がそれほど高くなく、動作に必要な入
力光強度が108 W/cm2 程度と大きくなること、お
よび応答時間が分子の回転緩和時間により決定され、1
-11 〜10-12 secより高速の光信号処理には使え
ないことなどの問題点があった。
【0008】以上のことから明らかなように、非線形光
学装置の性能は、非線形光学材料の特性によってほとん
ど決定される。従って、使用可能な波長範囲が広く、3
次非線形の効率が高く、動作に必要な入力光強度が小さ
く、応答時間が短い材料の開発が熱望され、それに向け
て活発な研究が行われているのが現状である。
【0009】このような非線形屈折率効果を示す3次の
非線形光学材料としては、ベンゼン環や2重結合あるい
は3重結合などのπ電子共役をもつ有機非線形光学材料
が最近特に注目されている。例えば、ポリジアセチレン
ビス−(パラトルエンスルホネート)(略称PTS)で
は、3次効果の定数χ(3) は、χ(3) =1×10-10
su(非線形屈折率係数に換算すると、n2 =2×10
-12 (W/cm2-1となる)の値をもち、上記のCS
2 液体より2桁大きい。また、この非線形効果のメカニ
ズムは吸収によるものでなく、かつ分子や結晶格子との
相互作用によるものでもなく、純粋に電子分極に由来す
るものであるために、光信号の強度変化に追随可能な応
答時間が10-14 secときわめて高速であることが有
機非線形光学材料の大きな特徴である。また、使用可能
な入力光波長は0.65μm付近から2.0μm以上の
広い範囲にわたっているという優れた特性を併せ持って
いる。
【0010】しかしながら、上記PTSなどのポリジア
セチレンは、一般に結晶性高分子であるために、実際に
光スイッチや光メモリー用の媒質として用いる場合に
は、媒質全体が単結晶となっていることが必要である。
もし、媒質の一部に非結晶質部が存在したり、全体が多
結晶状態になっていて微小な単結晶の集合体であったり
すると、入射光の散乱損失が増大してしまい、使いもの
にならない。従って、ポリジアセチレンを用いた光学装
置を製造するにあたっては、目的に応じた大型結晶の育
成あるいは薄膜結晶化などの技術が不可欠であり、さら
にこれらの結晶が得られた場合でも、結晶を切断したり
表面を研磨したりする加工技術を確立することが必要で
ある。ポリジアセチレンに関するこれらの周辺技術は今
のところまだ解決されていない。
【0011】また、代表的な導電性高分子材料であるポ
リアセチレンについても上記PTSを上回る大きな3次
の非線形光学定数(χ(3) >10-9esu)を有する
が、PTS同様結晶性高分子であるため光透過性、加工
性に劣り、実用的観点から光スイッチや光メモリー用媒
質としての使用は困難である。
【0012】このように、ポリジアセチレンあるいはポ
リアセチレンなど従来公知である高い非線形光学効果を
有する高分子材料として、実用レベルで非線形光学装置
への応用に供せられるものは一つも実現していない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上述
した事情に鑑みてなされたもので、従来の光双安定素子
を始めとする、光スイッチ、位相共役波発生装置などの
非線形屈折率を利用した非線形光学装置に適用する際の
問題点、すなわち上述したような使用波長制限、低速応
答性、高動作入力光強度、あるいは所望の光学材料を容
易に入手できないこと、などの欠点を除去するため、使
用波長範囲が広く、高速応答性を有し、かつ動作入力光
強度が小さい、実用に供し得る高効率非線形光学材料お
よびこれを用いた高性能非線形光学装置を提供すること
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために本発明者らは鋭意検討した結果、π共役系につい
てアクセプター性を有する複素芳香環とドナー性を有す
る複素芳香環とから構成されるπ電子共役高分子材料
が、きわめて大きな非線形光学効果を有するとともに光
の透過性に優れる薄膜を容易に得ることができることを
初めて見いだし、本発明を完成した。
【0015】すなわち、本発明の第1の局面に従う非線
形光学材料は、ドナー性を有する複素芳香環とアクセプ
ター性を有する複素芳香環とから構成されるπ電子共役
高分子からなることを特徴とする。
【0016】本発明の非線形光学材料は、また、前記ド
ナー性を有する複素芳香環はチオフェンであり、前記ア
クセプター性を有する複素芳香環はピリジンであること
を特徴とする。
【0017】本発明の第2の局面に従う非線形光学装置
は、非線形屈折率を有する光学媒質と、光学素子とを具
備した非線形光学装置において、前記非線形屈折率を有
する光学媒質は、ドナー性を有する複素芳香環とアクセ
プター性を有する複素芳香環とから構成されるπ電子共
役高分子材料からなることを特徴とする。
【0018】本発明の非線形光学装置は、また、前記ド
ナー性を有する複素芳香環はチオフェンであり、アクセ
プター性を有する複素芳香環はピリジンであることを特
徴とする。
【0019】
【作用】本発明においては、ドナー性を有する複素芳香
環とアクセプター性を有する複素芳香環とから構成され
るπ電子共役高分子材料からなる。上述した従来のπ電
子共役高分子材料系の非線形光学材料がπ電子共役長を
長くすること、あるいはπ電子共役系を平面的に広げる
ことによって非線形光学効果が大きくなることを基本と
していたのに対し、本発明の非線形光学材料ではπ電子
共役高分子材料が分子内にπ共役系についてアクセプタ
ー性を有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳香環
とを有するために分子内での電荷移動が容易におこり、
これがπ電子共役高分子材料の非線形光学特性を著しく
向上させている。上述したπ共役系についてのアクセプ
ター性、ドナー性については、次の著書:G.R.Ne
wkome and W.W.Paudler,“Co
ntemporary Heterocyclic C
hemistry”(John Wiley,NewY
ork 1982に詳しい。ただし、この著書のなかで
は、π共役系についてのアクセプター性、ドナー性を、
それぞれπ−deficient(π−欠乏的),π−
excessive(π−過剰的)と表現としている。
【0020】また、本発明の非線形光学材料は異種の芳
香環から構成されるために結晶性が阻害され、非晶質の
高分子が容易に得られ、この結果光学的透明性に優れる
薄膜フィルムの製作が容易である。
【0021】さらにπ共役系についてアクセプター性を
有する複素芳香環がピリジンであり、ドナー性を有する
複素芳香環がチオフェンである場合に本発明の効果が特
に大きい。ピリジンおよびチオフェンは交互に結合して
いても良い。あるいは、2分子以上の単位が繰り返して
いても良い。
【0022】また、本発明の非線形光学装置は、上述し
たような非線形屈折率を有する光学媒質と、光共振器や
偏光子、あるいは反射鏡などの光学素子とで構成してあ
る。非線形屈折率を有する光学媒質としてπ共役系につ
いてアクセプター性を有する複素芳香環とドナー性を有
する複素芳香環とから構成されるπ電子共役高分子材料
を用いているため、使用波長範囲が広がるとともに、応
答性が速くなり、動作入力光強度が小さくてすむ。
【0023】本発明の非線形光学材料であるπ電子共役
高分子を構成するドナー性を有する複素芳香環の具体例
としては5員環のチオフェン,ピロール,フラン等が挙
げられる。これらのうちチオフェンが好ましい。アクセ
プター性を有する複素芳香環の具体例としては6員環の
ピリジン,ピリミジン等が挙げられる。これらのうちピ
リジンが好ましい。
【0024】上述したπ共役系についてアクセプター性
を有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳香環とか
ら構成されるπ電子共役高分子材料としては、上述した
5員環の1個以上および6員環の1個以上から構成され
るπ電子共役高分子材料であるポリ(2,5−チオフェ
ンジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ(ビチオフ
ェンジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ(2,5
−チオフェンジイル−ビピリジンジイル)、ポリ(ビチ
オフェンジイル−ビピリジンジイル)、ポリ(2,5−
ピロールジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ(ビ
ピロールジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ
(2,5−ピロールジイル−ビピリジンジイル)、ポリ
(ビピロールジイル−ビピリジンジイル)、ポリ(2,
5−フランジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ
(ビフランジイル−2,5−ピリジンジイル)、ポリ
(2,5−フランジイル−ビピリジンジイル)、ポリ
(ビフランジイル−ビピリジンジイル)、ポリ(2,5
−チオフェンジイル−2,5−ピリミジンジイル)、ポ
リ(ビチオフェンジイル−2,5−ピリミジンジイ
ル)、ポリ(2,5−チオフェンジイル−ビピリミジン
ジイル)、ポリ(ビチオフェンジイル−ビピリミジンジ
イル)、ポリ(2,5−ピロールジイル−2,5−ピリ
ミジンジイル)、ポリ(ビピロールジイル−2,5−ピ
リミジンジイル)、ポリ(2,5−ピロールジイル−ビ
ピリミジンジイル)、ポリ(ビピロールジイル−ビピリ
ミジンジイル)、ポリ(2,5−フランジイル−2,5
−ピリミジンジイル)、ポリ(ビフランジイル−2,5
−ピリミジンジイル)、ポリ(2,5−フランジイル−
ビピリミジンジイル)、ポリ(ビフランジイル−ビピリ
ミジンジイル)などが挙げられる。
【0025】これらのうち、下記式(I)〜(IV)で
示されるようなピリジンおよびチオフェンから構成され
るπ電子共役高分子材料であるポリ(2,5−チオフェ
ンジイル−2,5−ピリジンジイル)(略称PTP
Y)、ポリ(ビチオフェンジイル−2,5−ピリジンジ
イル)(略称PBTPY)、ポリ(2,5−チオフェン
ジイル−ビピリジンジイル)(略称PTBPY)あるい
はポリ(ビチオフェンジイル−ビピリジンジイル)(略
称PBTBPY)が特に好ましい。
【0026】
【化1】
【0027】これらのπ電子共役高分子材料の一部は、
アモルファス構造をもつ導電性高分子材料として既に知
られており、合成法も公知である(J.Chem.So
c.,Chem.Commun.,p.1210(19
91)等に詳しい)。他のものも同様に合成できる。例
えば、ジハロ芳香族モノマーをニッケルゼロ価錯体の存
在下で脱ハロゲン縮重合することによって合成できる。
また、後で述べるように、これらのポリマーはギ酸に可
溶のポリマを合成することができるため、成形性に優
れ、取扱いやすく、かつ化学的に安定である。
【0028】これらのアクセプター性を有する複素芳香
環とドナー性を有する複素芳香環とから構成されるπ電
子共役高分子材料は、上述したように3次非線形効果が
きわめて大きく、また、光透過性に優れている。
【0029】また、そのようなπ電子共役高分子材料は
3次効果が大きいために非線形屈折率係数が大きな値と
なり、この材料を非線形光学媒体として光双安定素子、
光スイッチ、位相共役波発生器などの非線形光学装置を
構成することができる。
【0030】図1はπ共役系についてアクセプター性を
有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳香環とから
構成されるπ電子共役高分子材料の3次効果の効率を評
価すべく行った実験の測定データ(THG強度パター
ン)を示したものである。有機材料の3次効果は、一般
に、第3高調波光(THG光)の強度を測定することに
よって評価される。図1に示す場合は、π共役系につい
てアクセプター性を有する複素芳香環とドナー性を有す
る複素芳香環とから構成された厚さの均一なπ電子共役
高分子材料フィルムに、波長1.55μm前後のレーザ
パルス光を入射し、サンプルをレーザ光の入射方向と垂
直な軸の周りに回転させながら、出てくるTHG光の強
度を測定した結果である。このパターンはメーカフリン
ジと呼ばれるものであり、すでに効率が既知の材料(こ
こでは石英ガラスを用いた)を同一の観測系で測定し
て、THGのピーク強度と比較すれば、3次効果の効率
を測定することができる(測定原理については、文献
エレクトロニクス レターズ(Electron.Le
tt.)vol.23,No.11,595(198
7)に詳しい)。
【0031】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明に係わるπ共
役系についてアクセプター性を有する複素芳香環とドナ
ー性を有する複素芳香環とから構成されるπ電子共役高
分子材料およびこれを用いた非線形光学装置を実施例に
より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されない。
【0032】[実施例1]図2は本発明の非線形光学材
料PTPYの合成反応スキームの一例を示す反応工程図
である。図2に示すように、2−MgBr−5−ハロチ
オフェン(ハロゲンはBr,I,Cl)と2,5−ジブ
ロモピリジンを原料として5−ハロ−2−(5′−ブロ
モ−2′−ピリジニル)チオフェンを合成し、ニッケル
ゼロ価錯体の存在下で、60〜80℃の条件で反応を行
うことによって目的とする高分子化合物PTPYを得
た。これをギ酸に溶解(1重量%前後)し、スピンコー
ティングにより0.02〜0.5μmの薄膜フィルムを
得た。
【0033】上述のようにして得られたポリ(2,5−
チオフェンジイル−2,5−ピリジンジイル)(PTP
Y)フィルム(この場合の厚さは0.05μm)の3次
効果を測定した。図3はPTPYフィルムのχ(3) を示
すスペクトル線図である。得られた結果を3次の電気感
受率χ(3) で表し、入射光波長に対してプロットした結
果である。χ(3) の値は2×10-10 esu前後であ
り、前述のPTSとほぼ同程度の値であることが確かめ
られた。なお、この測定値から非線形屈折率はn2 =2
×10-12 (W/cm2-1前後と算出される。
【0034】次いで、PTPYの吸収スペクトルを、分
光光度計で測定した。その結果、無吸収波長域0.70
〜2.2μmときわめて広いことが判った。すなわち、
この材料は使用可能波長域が前述のPTSよりさらに広
く優れている。なお、波長域0.65μm〜1.5μm
におけるPTPYの3次非線形光学効果については未測
定であるが、非線形効果のメカニズムがPTSと同じに
純粋の電子分極によることを考えるとこれらの波長域に
おいても、PTPYのχ(3) またはn2 は図3の値とほ
ぼ同等の値をもつことが容易に推察される。
【0035】さらに同様な考察から、π共役系について
アクセプター性を有する複素芳香環とドナー性を有する
複素芳香環とから構成されるπ電子共役高分子材料の応
答時間はPTSと同様に10-14 sec程度と推測さ
れ、充分な高速性を備えている。
【0036】一方PTPYギ酸溶液のキャスティングに
より2μm厚のフィルムを得て、プリズムカップリング
法によってこのフィルムの光透過性を評価したところ、
波長1.3μmで2dB/cmという優れた光透過性を
有することが判った。
【0037】[実施例2〜4]π共役系についてアクセ
プター性を有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳
香環とから構成されるπ電子共役高分子材料であるPB
TPY,PTBPY,PBTBPYをそれぞれ実施例1
に準じて合成し、それらの高分子材料の非線形光学効果
および光透過性を実施例1と同様に測定した。表1に得
られた結果を示す。表1から、本発明の非線形光学材料
はいずれも高非線形光学効果と優れた光透過性を有して
いることが判る。
【0038】
【表1】
【0039】[実施例5]図4は本発明の光双安定素子
の構成の一例を示す概略斜視図であり、ここに10は光
双安定素子(外部光共振器)、20は非線形屈折率媒
質、23A,23Bは誘電体多層蒸着ミラー、Piは入
力光、Ptは出力光である。この外部光共振器は、上述
した方法により作製したPTPYフィルムを非線形屈折
率媒質20として使用し、入力光を約90%反射し、残
りを透過させる誘電体多層蒸着ミラー23A,23Bを
非線形屈折率媒質20を挟んで対向させて配置した外部
光共振器である。ここに、上述したPTPYフィルムは
PTPYのギ酸溶液をガラス基板上にキャスティング
し、溶媒を除去した後、基板より剥離することによっ
て、10×10×1mm3 程度の大きさのフリースタン
ディングなフィルム状の非線形屈折率媒質にしたものを
使用した。
【0040】[実施例6]図5は、本発明の光制御光ス
イッチの構成の一例を示す概略斜視図である。図5にお
いて、符号11は光制御光スイッチ、20は本発明の非
線形屈折率媒質、24A,24Bは偏光子、Piは入力
光、Ptは出力光、Pgはゲートパルス光である。この
光制御光スイッチ11は、互いに偏光軸が直交するよう
配置された2枚の偏光子24A,24Bからなる直交偏
光子系を有し、これらの直交偏光子24A,24Bで非
線形屈折率媒質20を挟んだ構成である非線形屈折率媒
質20としては実施例1で得られたPTPYを使用し
た。この構成においては、ゲートパルスPgが入射して
いる間だけ直交偏光子24Aを通過した直線偏光が、非
線形屈折率媒質20の屈折率変化によって偏光角の回転
を受け、直交偏光子24Bを通過する。すなわち入力光
Piはゲート光Pgによって光スイッチされる。
【0041】本装置においても、使用可能波長範囲、応
答時間、および動作入力光強度(ゲートパルス光)の値
は重要であるが、使用可能波長範囲および応答時間につ
いてきわめて優れていることは実施例1より明らかであ
る。
【0042】[実施例7]図6は、本発明の位相共役波
発生装置の構成の一例を示す概略断面図である。図6に
おいて、12は本発明の位相共役波発生装置、20は本
発明の非線形屈折率媒質、25A,25Bは半透過鏡、
26は全透過鏡、Piは入力光、Ptは出力光、A1
2 ,Ac ,Ap は光波である。本発明の位相共役波発
生装置12は、本発明の非線形屈折率媒質20を第1の
半透過鏡25Aと全透過鏡26とで挟み、さらに半透過
鏡25Aからの光を半透過鏡25Bが半透過鏡25Aと
全透過鏡26の光軸に傾いて非線形屈折率媒質20に入
射するように配置してある。非線形屈折率媒質20とし
ては実施例1にて得られたPTPYを使用した。
【0043】この構成は縮退4光波混合と呼ばれる光学
配置であって、非線形屈折率媒質20に、A1 ,A2
(A1 と反対方向),Ap (傾入射)の3つの光波が入
射すると、Ap に対して空間位相項のみが共役である第
4の光波Ac が発生する。この位相共役波は画像情報処
理技術における像修正や、実時間ホログラフィなどの有
効な手段として注目されている。
【0044】本実施例においても装置の高速応答性、お
よび低動作入力光強度が確認できた。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、π電子共役高分子材料
をπ共役系についてアクセプター性を有する複素芳香環
とドナー性を有する複素芳香環とから構成することによ
って、従来の最高レベルの3次の非線形光学特性が得ら
れるとともに、光透過性に優れる薄膜を得ることが可能
である。
【0046】また本発明によれば、大きな非線形屈折率
を持ち、かつきわめて応答速度が大きく、可視域から近
赤外領域の広い波長範囲で透光性を有するアクセプター
性を有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳香環と
から構成されるπ電子共役高分子材料のフィルムを非線
形屈折率媒質として用いて、光双安定素子、光スイッ
チ、あるいは位相共役波発生装置などの将来の光情報処
理あるいは光通信分野で重要となる非線形光学装置を構
成することができるため、従来の非線形光学液体や半導
体超格子結晶を用いた非線形光学装置と比較して波長依
存性、応答速度、動作に必要な入力光強度の点で格段に
優れたものとすることができ、現存の半導体レーザを光
源として使用できるという実用的価値のある非線形光学
装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるπ共役系についてアクセプター性
を有する複素芳香環とドナー性を有する複素芳香環とか
ら構成されるπ電子共役高分子材料のTHG強度パター
ンを示す線図である。
【図2】本発明の実施例1の非線形光学材料ポリ(2,
5−チオフェンジイル−2,5−ピリジンジイル)の合
成反応スキームの一例を示す反応工程図である。
【図3】本発明の実施例1のポリ(2,5−チオフェン
ジイル−2,5−ピリジンジイル)のχ(3) 値のスペク
トルを示す線図である。
【図4】本発明の実施例5に従う光双安定素子の構成を
示す概略斜視図である。
【図5】本発明の実施例6に従う光制御光スイッチの構
成を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の実施例7に従う位相共役波発生装置の
構成を示す概略断面図である。
【図7】従来の非線形光学装置(光双安定素子)の構成
の一例を示す概略斜視図である。
【図8】図7の非線形光学装置(光双安定素子)の
(A)リミッタ動作特性、(B)双安定動作特性を示す
線図である。図中の矢印はPiの増加時、および減少時
のPtの特性を現す経路を示す。
【符号の説明】
10 光双安定素子(外部光共振器) 11 光制御光スイッチ 12 位相共役波発生装置 15 光双安定素子 20 本発明の非線形屈折率媒質 21 従来の非線形屈折率媒質 22A,22B 誘電体蒸着ミラー(反射率約90%) 23A,23B (外部)誘電体多層蒸着ミラー 24A,24B 偏光子(直交偏光子系を構成してい
る) 25A,25B 半透過鏡 26 全透過鏡 Pi 入力光 Pt 出力光 Pg ゲートパルス光
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 隆一 神奈川県横浜市緑区荏田南4丁目26番18号

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ドナー性を有する複素芳香環とアクセプ
    ター性を有する複素芳香環とから構成されるπ電子共役
    高分子からなることを特徴とする非線形光学材料。
  2. 【請求項2】 前記ドナー性を有する複素芳香環はチオ
    フェンであり、前記アクセプター性を有する複素芳香環
    はピリジンであることを特徴とする請求項1記載の非線
    形光学材料。
  3. 【請求項3】 非線形屈折率を有する光学媒質と、光学
    素子とを具備した非線形光学装置において、前記非線形
    屈折率を有する光学媒質は、ドナー性を有する複素芳香
    環とアクセプター性を有する複素芳香環とから構成され
    るπ電子共役高分子材料からなることを特徴とする非線
    形光学装置。
  4. 【請求項4】 前記ドナー性を有する複素芳香環はチオ
    フェンであり、アクセプター性を有する複素芳香環はピ
    リジンであることを特徴とする請求項3記載の非線形光
    学装置。
JP10142392A 1992-04-21 1992-04-21 非線形光学材料および非線形光学装置 Pending JPH05297426A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013512985A (ja) * 2009-12-03 2013-04-18 コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー ピレン化合物の導入された伝導性高分子及びそれを用いた有機太陽電池
US8940906B2 (en) 2009-06-26 2015-01-27 Osaka University Nonlinear luminescent molecule, fluorescent stain, and observation method

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US8940906B2 (en) 2009-06-26 2015-01-27 Osaka University Nonlinear luminescent molecule, fluorescent stain, and observation method
JP2013512985A (ja) * 2009-12-03 2013-04-18 コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー ピレン化合物の導入された伝導性高分子及びそれを用いた有機太陽電池

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