JPH0529716A - 光半導体素子 - Google Patents

光半導体素子

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JPH0529716A
JPH0529716A JP27854391A JP27854391A JPH0529716A JP H0529716 A JPH0529716 A JP H0529716A JP 27854391 A JP27854391 A JP 27854391A JP 27854391 A JP27854391 A JP 27854391A JP H0529716 A JPH0529716 A JP H0529716A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 活性層への注入効率を高めることができ、低
しきい値でかつ高速特性の優れた多重量子井戸構造の半
導体レーザを提供すること。 【構成】 Inx Ga1-x As(0<x≦1)を井戸層
とする多重量子井戸活性層32と、この活性層32の上
に形成されたInPに格子整合する第1のp型クラッド
層33と、活性層32の側面に形成された、p型クラッ
ド層33よりもアクセプタ濃度の高い第2のp型クラッ
ド層37とを備えた多重量子井戸構造の半導体レーザで
あり、第1のp型クラッド層33のアクセプタ濃度を活
性層32から0.25μmの範囲で2×1017cm-3
下に設定し、第2のp型クラッド層37のアクセプタ濃
度を1×1018cm-3以上に設定し、活性層32の井戸
層をInx Ga1-x As(0.53<x≦1)から形成
したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、埋め込み量子井戸構造
を有する光半導体素子に係わり、特に多重量子井戸構造
のレーザ等の特性向上をはかった光半導体素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、電子のドゥ・ブロイ波長以下の層
厚を有する井戸層を該井戸層よりも禁制帯幅が広い障壁
層で挟んだ量子井戸構造を少なくとも一つ有する、いわ
ゆる量子井戸半導体レーザが開発されている。この量子
井戸半導体レーザは、量子井戸を活性層に持たないダブ
ルヘテロ構造半導体レーザと比べて、発振しきい値を下
げられる、変調帯域を広げられる、発振スペクトル幅を
挟められる、温度特性を改善できる、高出力が得られる
など様々な利点を有する。
【0003】また最近では、量子井戸に基板と格子整合
しない材料を用いることにより、発振波長の自由度を広
げたり、更なる特性向上をはかったりできるようになっ
てきた。一般的には、活性層近傍に基板と格子整合しな
い材料があると大量の結晶欠陥が発生し、レーザの特性
や信頼性の劣化が顕著になる。しかし、基板と格子整合
しない材料を活性層に用いても、その層厚がある臨界厚
より薄い場合には活性層が弾性的に歪み、レーザの特性
や信頼性を劣化させる結晶欠陥は発生しない。この臨界
厚の一つの目安としては、Matthews and Blakesleeのモ
デルによる計算結果を使うことができる。
【0004】このような歪量子井戸構造を採用した0.98
μm帯GaAs基板上のInGaAs/AlGaAs半
導体レーザで、信頼性の高い高出力レーザや超低しきい
値のレーザなどが実現されている。半導体レーザ増幅
器,光スイッチ,光変調器など、半導体レーザ以外の光
半導体素子においても、歪光導波層の導入により、TE
/TMモード特性を変えたり、スイッチング特性や吸収
特性を変えたりすることができるなど、様々な可能性の
広がりが考えられる。
【0005】ところで、光ファイバ通信で主に用いられ
るInP基板上のInGaAs/InGaAsP系半導
体レーザの場合、低しきい値の単一横モード発振を得る
ために、一般に活性層の左右を活性層より禁制帯幅の大
きな材料で埋め込んだいわゆる埋め込み構造を用いるこ
とが多い。この場合、歪量子井戸層は側面に歪みヘテロ
界面を持つことにより、その近傍で大きな歪みと応力が
発生する。
【0006】以下、図23に示す(001)InP基板
上のIn0.7 、Ga0.3 As歪量子井戸構造レーザを例
にとって具体的に説明する。この半導体レーザは、n型 InP基板1(クラッド層を兼ねる)の上に、厚さ 4.2
nmのアンドープ In0.7 Ga0.3 As井戸層2をInPに格子整合する
アンドープ InGaAsP(1.2 μm組成)障壁層3で挟んだ歪み
量子井戸4層からなる活性層(光導波路層)4と、厚さ
1.5μmのp型InPクラッド層5、さらに厚さ0.8 μ
mのp型InGaAsP(1.2 μm組成)コンタクト層
6からなる積層構造を成長し、この積層構造をFeドー
プ半絶縁InP層7で埋め込んだ構造を有する。
【0007】障壁層3は、各井戸層2の間に12nmず
つ、両端の井戸層2の上下にそれぞれ20nm、合計厚
さ76nm積層されている。従って、活性層4の合計層
厚は92.8nmとなる。また、埋め込まれた活性層4の幅
は2μmである。なお、素子基板の上下には電流注入の
ための電極11,12が形成されている。また、へき開
により長さ1mmのレーザ共振器を構成している。
【0008】InP基板の格子定数は 0.58688nmである
のに対して、In0.7 Ga0.3 Asの格子定数は 0.593
81nmである。ここで、側面のない無限平面を仮定すれ
ば、井戸層2は 4.2nmと薄いので弾性的に歪む。歪み
の大きさは、εxx=εyy=-0.01167、εzz=−2(C12
/C11)εxx=0.011974、εyz=εZX=εxy=0とな
る。但し、C12/C11=0.504 はIn0.7 Ga0.3 As
のポアソン比である。この結果、歪んだIn0.7 Ga
0.3 As井戸層2の格子定数は、xy面内でInPに等
しくなり、z方向の格子定数は 0.60092nmとなる。
【0009】しかし、実際には活性層4は、Feドープ
InP埋め込み層7により幅2μmのストライプに埋め
込まれている。従って、井戸層2と埋め込み層7との境
界に格子不整合が起きることになる。井戸層2は厚さ
4.2nmなので、平均して約6.99 単位格子層からなるこ
とになる。なお、面心立方系の閃亜鉛鉱構造では(00
1)方向に格子間隔aの間に位置をずらして原子層が4
層存在するが、ここでは位置の合った4層(格子定数
a)毎に単位格子層と数えている。
【0010】一方、この厚さをInPの格子定数で割る
と 7.16 単位格子層からなることになる。井戸層2は4
層あるから、活性層4の側面にトータル 0.68 単位格子
層分の格子不整合が生じることになる。活性層4の幅は
2μmと厚いから、活性層全体が弾性的に圧縮されるこ
とはない。この結果、活性層4の側面近傍に転位などの
格子欠陥が起こりやすくなる。
【0011】この上部の歪量子井戸層側面の格子不整合
は 0.5単位格子層より大きいので、歪量子井戸層の格子
面は側面で埋め込み層の一つ上の格子面とつながる方が
距離的に近く、転位のできる確率が高い。このような格
子欠陥があると、不純物の偏析も起こりやすい。また、
このような欠陥により、発光効率の低下,発振しきい値
上昇,微分利得の低下などのレーザ特性の劣化、或いは
著しい信頼性の低下などが生じる。
【0012】半導体レーザ以外の光半導体素子において
も、埋め込み歪量子井戸光導波層側面に格子不整合によ
る欠陥が生じることにより、様々なデメリットが生じ
る。例えば、埋め込み歪量子井戸光導波路においては、
この欠陥により吸収係数の増加や光散乱の増加が生じ
る。また、埋め込み歪量子井戸光吸収層を有する光検出
素子においては、この側面の欠陥からの発生再結合暗電
流の増加,欠陥に偏析した不純物による内部電界の不均
一,欠陥での再結合による量子効率の低下,信頼性の低
下など、様々な問題が生じる。
【0013】また、光半導体素子以外の半導体素子にお
いても、例えば pseudomorphicHEMTの歪チャネル
層,歪In(Ga)Asオーミックコンタクト層など、
歪半導体層が特性改善のために使われている。この歪半
導体層を基板全面ではなく一部分に埋め込み形成する場
合には、側面の格子不整合により生じる格子欠陥や不純
物の偏析に起因して、キャリア寿命の低下、散乱中心の
増加による電子輸送特性の劣化、雑音の増加、信頼性の
低下など、種々の問題が生じる。
【0014】一方、光通信に広く利用されているInG
aAsPやInGaAsを井戸層に持つ量子井戸レーザ
では、伝導帯の井戸障壁が低く価電子帯の井戸障壁が高
いことから、電子の障壁層や光導波層へのオーバーフロ
ーが起こり易く、また正孔の井戸層への注入効率が低い
という問題があった。このため、キャリアの利用効率が
悪く、同じ発振波長のバルク型ダブルヘテロ半導体レー
ザと比べて、発振しきい値の低減や変調帯域の拡大の効
果は顕著でなかった。
【0015】また、誘導放出が大きくなりキャリアの不
足が生じたときに正孔の井戸層への注入効率が低いこと
から、井戸間での正孔密度に差が生じ、光に対する利得
飽和εも大きいという問題もあった。このことは、量子
井戸の効果による微分利得の増大にもかかわらず、ダン
ピングが大きくなり周波数帯域が伸びないということを
意味する。高出力レーザは長共振器で井戸数が多めのと
きに良好な特性が得られるが、このような問題があるた
め、井戸数をあまり増やすことができないのが現状であ
った。
【0016】一般に、量子井戸レーザではキャリアに対
する利得Gの飽和が顕著なので、発振しきいキャリア密
度が高くなると、微分利得が急激に悪化する。従って、
高速応答特性の観点からも、発振しきい値の低減が重要
である。発振条件はΓG=αで表されるから、発振しき
い値を下げるためには、光学的なトータルロスαを小さ
くして発振に必要な利得を下げてやる必要がある。
【0017】量子井戸レーザ、特に井戸層に歪を導入し
た歪量子井戸レーザでは活性層の導波損失を極めて小さ
くできるが、p−クラッド層のアクセプタ密度が高いと
損失が大きくなる。量子井戸レーザは光閉じ込め係数Γ
が小さいので、クラッド層の吸収の影響は極めて大き
い。従って、低しきい値の量子井戸レーザを得るために
は、p−クラッド層のアクセプタ密度を下げてやる必要
がある。
【0018】しかしこの場合、p−クラッド層と活性層
とのヘテロ接合部に大きなバンド障壁ができるため、正
孔の量子井戸活性層への注入効率が低くなってしまうと
いう問題があった。このことは、低しきい値でかつ高速
応答可能な量子井戸レーザを作ることは困難であること
を意味する。このヘテロ界面の障壁の問題を解決するた
めに、GRIN(graded index)構造の採用も提案され
ているが、この場合は結晶成長に精密制御が必要にな
り、工程が複雑になる問題がある。
【0019】この他、埋込み構造歪量子井戸レーザで
は、活性層の側面に格子不整合による転位欠陥が発生し
やすいという問題があった。特に、側面にFeなどの遷
移金属をドープした層がある場合、不純物である遷移金
属と転位の複合欠陥がレーザ特性を劣化させることが懸
念されていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の埋
め込み構造の歪半導体層を有する半導体素子では、歪半
導体層側面の格子不整合に起因して格子欠陥や不純物偏
析などの欠陥が生じ、特性や信頼性の著しい劣化が生じ
るという問題があった。
【0021】また、InGaAs系やInGaAsP系
の多重量子井戸レーザでは、正孔の井戸層への注入効率
が悪く、井戸間での正孔密度に差が生じ易く、従って井
戸数を増やすことが困難であった。さらに、吸収損失が
小さく正孔の注入効率が高いレーザを実現することも困
難であり、発振しきい値の低減や高速応答特性の向上が
思うようにはかれなかった。
【0022】本発明は、上記事情を考慮してなされたも
ので、その目的とするところは、歪半導体層側面の格子
不整合を緩和することにより、特性や信頼性の優れた埋
め込み歪量子井戸構造の光半導体素子を提供することに
ある。
【0023】また、本発明の他の目的は、量子井戸活性
層へのキャリアの注入効率を高めることができ、低しき
い値でかつ高速特性の優れた光半導体素子を提供するこ
とにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は、大きく分けて
次の2つに分類される。即ち、第1乃至第5の発明は歪
み量子井戸層の側面の格子不整合を緩和するものであ
り、第6乃至第10の発明は注入効率の向上をはかるも
のである。
【0025】第1の発明の光半導体素子では、歪量子井
戸層の側面が基板法線方向に対して45度上のテーパ状
になるように構成されている。
【0026】第2の発明の光半導体素子では、クラッド
層のうち歪量子井戸層の左右に延びる基板に平行な面内
の部分の半導体層に、その平均格子定数が基板と歪量子
井戸層の中間の値になるような材料が使われている。こ
こでいう平均格子定数とは、クラッド層のうち歪量子井
戸層の左右に延びる基板に平行な面内の部分の半導体層
に多層構造が用いられている場合、その活性層厚さに対
応する多層構造にわたって格子定数の平均をとった値を
指すものとする。
【0027】第3の発明の光半導体素子では、クラッド
層のうち歪量子井戸層の左右に延びる基板に平行な面内
の部分の半導体層の一部に、そのc軸が基板法線方向を
向いた正方晶系の半導体層が使われており、そのa軸の
格子定数は半導体基板よりも小さい。
【0028】これらいずれの発明においても、ストライ
プ状の光導波路層(半導体レーザでは活性層、光検出素
子では光吸収層に相当)は、その上下左右を歪量子井戸
の障壁層よりも禁制帯幅が広いクラッド層で囲まれてい
ることを想定している。もちろん、第1の発明を他の二
つの発明と併用して使うことも可能である。
【0029】第4の発明の骨子は、第2の領域に埋め込
まれた第1の領域の歪半導体層側面に生じる格子不整合
を、格子定数が連続的に変化する組成変化領域を設けて
緩和し、転位の発生確率を減らそうとするものである。
【0030】ここで、歪半導体層といっているのは、故
意に格子定数の異なる組成の半導体層を1層当たりの膜
厚を臨界膜厚以下に積層して弾性的に歪を導入した半導
体層のことであって、結晶成長の組成制御が不完全であ
るために入ってしまう歪を想定したものではない。一般
に、GaAsやInP基板の上に成長する半導体層の場
合、結晶成長の組成制御が不完全であるために入ってし
まう歪は大きく見積もっても0.2%以下であり、それ
以上の格子不整合を有する場合には故意に作成した歪半
導体層と考えることができる。
【0031】歪半導体層をその一部分とする埋め込み光
導波路を用いた光半導体素子においては、光導波路の形
成されている部分を第1の領域、光導波路の側面に隣接
する埋め込み部を第2の領域と考えることができる。
【0032】組成変化領域は、例えば不純物の拡散によ
り境界部の原子の相互拡散を促進することで形成でき
る。また、第1の領域と第2の領域の一方を選択成長に
より形成する際に、他方の領域の上に形成されたマスク
からの距離に応じてその結晶組成が変化することを利用
しても形成できる。
【0033】第5の発明の骨子は、埋め込み歪半導体層
側面の格子不整合を単位格子間隔の半分より小さくする
ことによって、転位の発生する確率を減らそうとするも
のである。ここで、歪半導体層といっているのは、先に
述べたように、格子定数の異なる組成の半導体層を1層
当たりの膜厚を臨界膜厚以下に積層して弾性的に歪を導
入した半導体層のことである。
【0034】本発明は第1の領域に歪半導体層が埋め込
まれている半導体素子において、最も下部にある歪半導
体層の下部主面を基準格子面として、その法線方向上向
きに座標系Zをとり、第1の領域が無限に広がっている
と仮定したときの第1の領域の基準格子面からn番目の
単位格子面の座標Z1(n)、第1の領域に隣接する第
2の領域が無限に広がっていると仮定したときの第2の
領域の基準格子面からn番目の単位格子面の座標をZ2
(n)とし、 Z2(n+1)−Z2(n) Z2(n)−Z2(n−1) Z1(n+1)−Z1(n) Z1(n)−Z1(n−1) の4つの値のうち最小のものをδmin (n)とすると
き、任意のnに対して、 ABS{Z2(n)−Z1(n)}<δmin (n)/2 …(1) を満たすようにしたものである。ここで、ABS(x)
はxの絶対値を表すものとする。これを言いかえれば、
第1の領域と第2の領域の境界の格子不整合を最大でも
単位格子層の1/2よりも小さくなるように抑えるよう
にするということである。なお、ここでは単位格子層と
いう用語をZ方向の結晶構造の周期として定義してい
る。例えば閃亜鉛鉱構造の場合、Z方向を(001)方
向に取ると格子定数aが一単位格子層となるし、Z方向
を(111)方向に取ると31/2 aが一単位格子層とな
る。なお、基準面が低指数面でない場合、例えばオフ基
板の場合には、一番近い低指数面の法線方向をZ方向と
することで、上記の議論を準用することができる。
【0035】式(1)を満たすための一つの形態とし
て、半導体基板よりも格子定数が大きい第1の歪半導体
層と、半導体基板よりも格子定数の小さい第2の歪半導
体層とをそれぞれ一層以上積層し、一方による側面の格
子不整合を他方の格子不整合で相殺する方法が考えられ
る。この方法は、特に一方の歪半導体層だけではその合
計膜厚が厚くなり過ぎて式(1)を満たすようにできな
い場合に効果がある。
【0036】Z方向の一単位格子にm個の同族原子面が
存在する場合がある。例えば、閃亜鉛鉱構造の III−V
族化合物半導体の(001)方向にはZ=0の基準格子
面がIII 族原子面とすると、a/2にも III族原子面が
存在するのでm=2となる。(110)面の場合は III
族原子とV族原子が同一面上に混在するので、単位格子
層21/2 aの中にm=4の同族原子面が存在することに
なる。このような場合には、横ずれも伴って、単位格子
層の中の異なる同族原子面との転位が発生する可能性が
ある。この場合、任意のnに対して、 ABS{Z2(n)−Z1(n)}<δmin (n)/(2m) …(2) を満たすようにするのが好ましい。
【0037】歪半導体層をその一部分とする埋め込み光
導波路を用いた光半導体素子においては、光導波路の形
成されている部分を第1の領域、光導波路に隣接する埋
め込み部を第2の領域と考えることができる。
【0038】歪量子細線ないし歪量子箱の場合、歪量子
細線や歪量子箱を構成する半導体を第1の領域、その側
面の障壁層を構成している半導体を第2の領域と考える
ことができる。勿論、上記の実施態様については、複数
組み合わせて使うこともできる。
【0039】第6の発明の骨子は、量子井戸活性層への
注入効率を上げるために、量子井戸活性層の側面から電
流注入を行うことにある。
【0040】即ち本発明は、Inx Ga1-x As(0<
x≦1)を井戸層とする多重量子井戸活性層と、この活
性層の主面に形成されたInPに格子整合する第1のp
型クラッド層とを備えた半導体レーザにおいて、活性層
の側面に第1のp型クラッド層よりもアクセプタ濃度の
高い第2のp型クラッド層を形成するようにしたもので
ある。
【0041】また本発明は、より望ましくは、第1のp
型クラッド層のアクセプタ濃度を活性層から0.25μmの
範囲で2×1017cm-3以下に設定し、第2のp型クラ
ッド層のアクセプタ濃度を1×1018cm-3以上に設定
し、さらに井戸層をInx Ga1-x As(0.53<x≦
1)で形成するようにしたものである。
【0042】第9及び第10の発明は、本来の格子定数
が半導体基板の格子定数より大きい(又は小さい)井戸
層と、本来の格子定数が半導体基板の格子定数と等しい
又はそれより小さく(又は大きく)且つ井戸層よりも禁
制帯幅の広い障壁層とを、交互に積層した多重量子井戸
構造の光半導体素子において、井戸層の軽い(又は重
い)正孔帯の禁制帯端と障壁層の軽い(又は重い)正孔
帯の禁制帯端を実質一致させるようにしたものである。
【0043】
【作用】第1の発明の光半導体素子では、光導波路層側
面の格子不整合がテーパ面内に分散するので、格子の変
形がテーパ幅に渡って緩やかに起こり、大きな歪や応力
の発生が防止される。その結果、転位などの格子欠陥や
不純物の偏析が防げ、特性や信頼性の優れた光半導体素
子を実現できる。
【0044】第2の発明の光半導体素子では、ストライ
プ状の光導波路層を含む基板と平行な面内の平均格子定
数が基板の格子定数と歪量子井戸層の格子定数の中間の
値を持つので、光導波路層側面の格子不整合が緩和され
る。その結果、転位などの格子欠陥や不純物の偏析が防
げ、特性や信頼性の優れた光半導体素子を実現すること
ができる。
【0045】第3の発明の光半導体素子では、ストライ
プ状の光導波路層を含む基板と平行な面内に正方晶系材
料(カルコパイライト構造半導体)が使われており、そ
の正方晶系材料格子定数aが基板の格子定数よりも小さ
い値を持つ。このカルコパイライト構造半導体混晶のc
軸方向の格子定数を2で除した値c/2は一般にa軸方
向の格子定数aより小さい。従って、その厚みを適当に
選ぶことにより、歪量子井戸層の格子定数が基板より小
さい埋め込み歪量子井戸光導波路層を有する光半導体素
子においては、埋め込み層と活性層の基板法線方向の平
均の格子定数を概略整合させることが可能になる。従っ
て、半導体基板との格子不整合を起こすことなしに光導
波路層側面の格子不整合を緩和することができる。その
結果、転位などの格子欠陥や不純物の偏析が防げ、特性
や信頼性の優れた光半導体素子を実現できる。
【0046】第4の発明では、第1の領域と第2の領域
の間の格子不整合により発生した応力は、その間に形成
された組成変化領域全体に分散される。従って、境界面
への応力集中による転位の発生が抑制でき、転位による
特性や信頼性の低下のない半導体素子が実現できる。
【0047】第2の領域に不純物が高濃度にドープされ
ている場合、境界部から第1の領域への不純物拡散が起
こると、拡散領域では母体原子の相互拡散も促進され
る。このため、第1の領域と第2の領域の境界部では、
歪量子井戸の無秩序化と並行して領域間の母体原子の相
互拡散が進み、組成変化領域が形成される。
【0048】半導体混晶を選択成長を行う場合、混晶の
組成,膜厚,歪量は、マスクからの距離,開口比などに
依存する。この事実を利用して、境界部に格子定数を変
化させた領域を作ることができる。この変化の方向を他
方の領域に近付くにつれて他方の領域の平均の格子定数
に近付くように設定することで、上述の組成変化領域を
形成できる。
【0049】第5の発明では、式(1)を満たすように
して第1の領域と第2の領域の境界の格子不整合を最大
でも単位格子層の1/2よりも小さくなるように抑える
と、一つずれた単位格子面よりずれていない単位格子面
の方が距離的に近いので、第1の領域と第2の領域の境
界の転位の発生を効率的に防止することができる。
【0050】半導体基板よりも格子定数が大きい第1の
歪半導体層と、半導体基板よりも格子定数の小さい第2
の歪半導体層とをそれぞれ1層以上積層し、一方による
側面の格子不整合を他方の格子不整合で相殺することに
より、式(1)を満たす歪半導体層の膜厚や層数を増や
すことができる。
【0051】Z方向の一単位格子にm個の同族原子面が
存在する場合には、式(2)も満たすようにして第1の
領域と第2の領域の境界のZ方向の格子不整合を最大で
も同族原子面間隔の1/2よりも小さくなるように抑え
ることで、隣接する領域の一つずれた同族原子面よりも
ずれていない同族原子面の方を距離的に近くでき、横ず
れも伴う同族原子面との転位の発生も効率的に防止する
ことができる。
【0052】いずれの場合においても、第1の領域と第
2の領域の境界付近における転位などの格子欠陥の発生
が防げ、特性や信頼性の優れた半導体素子を実現するこ
とができる。
【0053】第6乃至第8の発明によれば、正孔の注入
は主として量子井戸活性層の側面から行われる。活性層
側面の第2のp型クラッド層は各井戸層や障壁層と直接
接しているから、第2のp型クラッド層から井戸層への
直接或いは障壁層を介しての正孔注入効率が高く、正孔
密度の井戸間でのばらつきも抑制される。この効果は特
に、第2のp型クラッド層の正孔濃度を1×1018cm
-3以上と高くした場合に顕著である。従って、注入効率
向上による微分利得の増大,しきい値の低下,光に対す
る利得飽和の抑制、ひいては高速応答の実現が図れる。
また、性能を落とさずに量子井戸数を増やすことが可能
になり、高出力化にも効果がある。
【0054】また、第1のp型クラッド層のアクセプタ
濃度を活性層から0.25μmの範囲で2×1017cm-3
下に設定することにより、第1のp型クラッド層による
光吸収が抑制され、より一層のしきい値の低減が可能に
なる。このしきい値の低減により利得の非線形性の小さ
な領域で使用できるようになるため、微分利得の向上も
図れる。この効果は、価電子帯間の吸収が小さいInx
Ga1-x As(0.53<x≦1)歪多重量子井戸半導体レ
ーザにおいて著しい。
【0055】第9の発明では、重い正孔に対しては多重
量子井戸が形成されるが、軽い正孔に対しては実質量子
井戸が形成されず、各井戸は軽い正孔によりカップリン
グしているので、p型クラッド層から離れた井戸層へも
効率良く正孔注入を行うことができる。この結果、井戸
数を増やして特性向上をはかることができる。
【0056】第10の発明は、第9の発明の軽い正孔と
重い正孔の役割を逆にしたもので、各井戸は重い正孔に
よりカップリングしているので、p型クラッド層から離
れた井戸層へも効率良く正孔注入を行うことができる。
この結果、井戸数を増やして特性向上をはかることがで
きる。
【0057】
【実施例】以下、本発明の詳細を図示の実施例によって
説明する。
【0058】まず、第1乃至第3の発明の実施例につい
て説明する。
【0059】図1は、本発明の第1の実施例に係わる半
導体レーザの概略構造を示す断面図である。n型InP
基板1a上にn型InPバッファ層(クラッド層)1b
が形成されている。バッファ層1bの上には、InGa
As歪量子井戸層2とInGaAsP障壁層3を交互に
積層してなる多重量子井戸活性層4がストライプ状に形
成されている。活性層4の側面には、p型InAlAs
層18とp型InP層17を交互に積層した埋込み層8
が形成されている。そして、活性層4及び埋込み層8の
上には、p型InPクラッド層5及びp型InGaAs
Pコンタクト層6が形成されている。そして、コンタク
ト層6上にp側電極11が形成され、基板1aの下面に
n側電極12が形成されている。
【0060】この半導体レーザは、次のようにして製造
される。まず、図2(a)に示すように、(001)主
面を持つn型InP半導体基板1a上に有機金属気相成
長(MOCVD)法により、厚さ2μmのn型InPバ
ッファ層1bを成長し、その上に、アンドープInGa
As/InGaAsP多重量子井戸活性層4と厚さ10
nmの薄いアンドープInPダミー層14を成長する。
活性層4は、厚さ4.2nmのアンドープIn0.7 Ga0.3
As歪量子井戸層2を4層、厚さ12nm(両端のみ2
0nm)のアンドープInGaAsP(波長 1.2μm組
成)障壁層3を5層、交互に積層したものである。
【0061】この積層構造の上にSiO2 膜15を堆積
し、通常のPEP技術によりパターニングを行い、活性
領域となる幅2μmのストライプの両サイド16を幅1
μmずつエッチングで除去する。このとき、薄いInP
ダミー層14のエッチングには塩酸系のエッチング液
を、活性層4のエッチングにはSH系(硫酸、過酸化水
素水、水の混合液)のエッチング液を用いる。フォトレ
ジストはSiO2 膜15のエッチング後に除去してお
く。SiO2膜15とInPダミー層14をマスクとし
たSH系エッチングにより、図2(a)に示すような形
状の中央部が凹んだ活性層断面が得られる。テーパ部の
幅は片側 0.4μmであり、中央部の活性層幅は1μmで
ある。
【0062】次いで、図2(b)に示すように、SiO
2 膜15を残したまま、MOCVD法により活性層4の
両サイドの部分16に歪埋込み層8を積層する。この歪
埋込み層8は、厚さ 4.2nmのp型In0.7 Al0.3
s層18を4層、p型InP層17で挟むように積層し
たもので、その合計膜厚は活性層厚(92.8nm)と概略
等しい。
【0063】次いで、図2(c)に示すように、SiO
2 膜15を除去した後、この上にMOCVD法により厚
さ2μmのp型InPクラッド層5、厚さ 0.8μmのp
型InGaAsPコンタクト層6を順次成長する。そし
て、コンタクト層6の上にはp型オーミック電極(Ti
/Pt/Au)11、基板1の下部にはn型オーミック
電極(Au/Ge)12を形成する。
【0064】次いで、コンタクト層6とp型クラッド層
5を選択エッチングにより活性層4を含む幅10μmの
メサに形成する。さらに、SH系のエッチング液により
外側の活性層4bを除去することにより、図1に示した
ようなマッシュルーム型の断面形状を持つ自己整合挟搾
メサ(SACM)構造の半導体レーザになる。このウエ
ハは長さ1mmのバー状にへき開された後、幅300μ
mのチップに切り出され、モジュールに実装される(図
では省略)。発振波長はおおよそ1.55μmである。
【0065】このような構成において、In0.7 Al
0.3 As層18及びInP層17は、活性層4よりもそ
の禁制帯幅が広い。In0.7 Al0.3 As層18は、I
0.7 Ga0.3 As歪量子井戸層2と格子定数がほぼ等
しい。従って、埋め込み層8は活性層4と格子定数が概
略等しい構造をしており、平均の格子定数(0.58813 n
m)はInP基板1の格子定数とIn0.7 Ga0.3 As
歪量子井戸層2の格子定数との中間の値になる。歪量子
井戸層2とIn0.7 Al0.3 As層18の位置を完全に
合わせるのが理想であるが、結晶成長上ずれが生じるこ
とがある。しかし、歪量子井戸層2とIn0.7 Al0.3
As層18の位置ずれがあっても、活性層4の側面がテ
ーパ状になっているので格子不整合の影響はテーパ部に
分散され、極端に大きな歪みや応力の発生は防止でき
る。従って、転位などの格子欠陥や不純物の偏析が防止
でき、特性や信頼性の劣化がない埋め込み構造歪量子井
戸レーザが実現できる。
【0066】この構造の採用により、線幅増大係数(α
パラメータ)〜2の歪量子井戸の優れた特性が安定して
得られ、その結果10Gb/s変調時(しきい値バイア
ス、変調電流40mApp)のチャーピング(−20dB
平均スペクトル幅)が 0.3nm以下の優れた特性の半導体
レーザが実現できる。また、信頼性が高くチャーピング
の小さい本発明の半導体レーザにより、外部変調器を使
わない10Gd/s直接強度変調ー直線検波方式の数百
km光ファイバ伝送システムの実用化が可能になる。
【0067】この実施例の変形として、埋め込み層8を
多層ではなく単層のIn0.667 Al0.333 Asで構成し
てもよい。この場合も、活性層4と埋め込み層8の平均
の格子定数(0.58813 nm)は概略等しく、その値は基
板の格子定数とIn0.7 Ga0.3As歪量子井戸層2の
格子定数の中間の値になる。ミクロには活性層4の側面
に格子不整合があるが、活性層側面がテーパ状に形成さ
れているので、歪みと応力はテーパ部に分散され、上記
の例と同様格子欠陥や不純物の偏析が防止できる。な
お、活性層4と埋め込み層8の平均の格子定数が完全に
一致していない場合においても、その値をInP基板1
と歪量子井戸層2の中間の値にすることにより、活性層
側面に発生する格子不整合の緩和に効果がある。
【0068】図3は、本発明の第2の実施例に係わる半
導体レーザの概略構造を示す断面図である。この実施例
の半導体レーザの構造と製法は第1の実施例の半導体レ
ーザとほぼ同じであるが、歪量子井戸層2がIn0.48
0.52Asであり、InP埋め込み層17の内部にIn
AlAs層の代わりに厚さ1.56nmのカルコパイライト
構造(正方晶系)のAg0.65Cu0.35GaSe2 の埋め
込み層9が一層挿入されている点で異なっている。発振
波長は光ファイバアンプ励起に適した1.48μmである。
【0069】In0.48Ga0.52As歪量子井戸層2の格
子定数は 0.58485nmで、先の実施例と反対にInP基
板の格子定数 0.58688nmよりも小さい。歪量子井戸層
2が無限に広がっているものと仮定した場合の歪量子井
戸層2の歪みの大きさは、εxx=εyy= -0.003471、ε
zz=−2(C12/C11)εxx=0.003422、εyx=εzx
εxy=0となる。ここで、In0.48Ga0.52Asのポア
ソン比はC12/C11=0.493 を仮定した。歪んだ後の基
板法線方向の歪量子井戸層2の格子間隔は 0.58284nm
となる。一方、Ag0.65Cu0.35GaSe2 層9の格子
定数はa=0.5845nm,c= 1.092nmであり、その厚
さを1.56nmとすると、そのa軸方向の歪みを無視した
場合歪んだ状態での歪量子井戸活性層とマクロに基板法
線方向の格子整合がとれる。実際にはAg0.65Cu0.35
GaSe2 層9の歪みもあるので、さらに組成や厚さを
微調整しないと完全な整合はとれない。
【0070】また、膜厚平均の格子整合を完全にとって
もミクロには活性層4の側面に格子不整合が存在する。
しかし、このように格子整合が不完全であっても、先の
実施例と同様に活性層4の側面はテーパ状になっている
ため、格子不整合の影響はテーパ部全体に分散され、格
子欠陥や不純物の偏析が防止できる。また、Ag0.65
0.35GaSe2 層9の禁制帯幅はおよそ1.77eVとI
nP基板と比べて大きな値を持つので、電流狭搾や光の
閉じ込めには好ましい方向に働く。カルコパイライト材
料には他にも様々なものがあるので、格子定数、禁制帯
幅などの観点で選択の自由度が大きい。よって、この方
法により、高出力で信頼性の高い埋め込み構造歪量子井
戸半導体レーザが実現できる。
【0071】なお、本発明は上記の実施例に限らず、種
々の変形が可能である。障壁層は必ずしも一定組成であ
る必要はなく、活性層側からクラッド層へ向けて屈折率
が連続的に或いは階段状に小さくなる(禁制帯幅は大き
くなる)GRIN構造であってもよい。量子井戸層も二
重量子井戸であったり、ダブルバリア構造であってもよ
い。活性層材料も、InGaAs,InGaAsP,I
nGaAlAs,InGaAsSb,GaAlAsS
b,GaAlPSb,InAlSb,InGaAlSb
など、種々の組み合わせが可能である。
【0072】光導波路層の横方向光(及び電流)閉じ込
め構造は、上記のSACM構造の他に、埋込みヘテロ構
造、半絶縁性InP埋込み構造など様々なタイプが可能
である。半導体レーザ場合は、分布帰還型(DFB)レ
ーザ,分布反射型(DBR)レーザ,複数の電極を持つ
波長可変レーザ,複合共振器レーザ,モニタ集積レー
ザ,光導波路集積レーザ,双安定レーザなどであっても
よい。勿論、半導体レーザの他、半導体光導波路,半導
体光検出素子(ホストダイオード),半導体スイッチ,
半導体方向性光結合器,半導体光変調器、これらを集積
化したフォトニックICなど、様々な光半導体素子に本
発明を適用することができる。半導体光導波路などの場
合、ストライプは直線に限られるものでなく、曲がり光
導波路,全反射型光導波路,Y分岐,クロス(X),テ
ーパなど、側面を持つ様々な光導波路に適用できる。断
面テーパ形状も中央部が凹状になっているものに限定さ
れるものではない。
【0073】次に、第4の発明の実施例について説明す
る。
【0074】図4は、本発明の第3の実施例に係わる半
導体レーザの概略構造を示す断面図である。図5はその
製造工程を示す断面図である。この半導体レーザは下記
のようにして作製される。まず、図5(a)に示すよう
に、(001)主面をもつn型InP半導体基板1a上
に有機金属気相成長(MOCVD)法により、厚さ2μ
mのn型InPバッファ層(クラッド)1bを介して、
アンドープ InGaAs/InGaAsP多重量子井戸活性層4を
堆積する。活性層4は図5(b)に示すように、厚さ3
nmのアンドープIn0.7 Ga0.3 As歪量子井戸層2
を7層、厚さ10nm(但し下端の層3aは30nm、上端
の層3bは100nm)のInPに格子整合する波長 1.2μm
組成のアンドープInGaAsP層3を挟んだ構造をし
ている。
【0075】この上端のInGaAsP層3bの上に回
析格子を形成した後、図5(c)に示すように、その上
にSiO2 膜15を堆積し、通常のPEP技術によりパ
ターニングを行い、活性領域となる幅2μmのストライ
プの両サイドを幅1μmずつエッチングで除去する。こ
のとき、活性層4のエッチングにSH系のエッチング液
(硫酸,過酸化水素水,水の混合液)を用いると、図5
(c)に示すような中央部が凹んだテーパ状の活性層断
面が得られる。テーパ部の幅は片側 0.4μmであり、中
央部の活性層幅は1μmである。
【0076】次いで、図5(d)に示すように、SiO
2 膜15を除去した後、MOCVD法により全体を厚さ
2μm、アクセプタ濃度2×1018cm-3のp型InP
クラッド層5と、厚さ 0.8μmのp型InGaAsPコ
ンタクト層6で埋め込む。この埋込み成長の間に、再成
長界面から活性層4へp型ドーパントである亜鉛が拡散
する。良く知られているように、半導体超格子に亜鉛な
どの不純物を拡散すると III族原子の相互拡散が促進さ
れ、無秩序化が起こる。その結果、活性層4の側面の亜
鉛拡散領域は歪量子井戸層2と無歪みの障壁層3の中間
組成の領域となる。
【0077】この混晶化はp型InPクラッド層5と活
性層4の間にも起こるが、側面の形状がテーパ状になっ
ていることも作用して、活性層側面の中間組成の領域は
外側ほどInPの組成に近い組成変化領域27となる。
側面の格子不整合は、この組成変化領域27全体に分散
されるので、応力の極端な集中が緩和され、転位などの
欠陥の発生が防止される。なお、上部からの亜鉛の活性
層4への拡散はInGaAsP層3bにより阻止され
る。
【0078】その後、コンタクト層6の上にp型オーミ
ック電極(Ti/Pt/Au)11を、基板1の下部に
n型オーミック電極(Au/Ge)12を形成し、コン
タクト層6とp型クラッド層5を順次選択エッチングに
より活性層4を含む幅10μmのメサに形成する。さら
にSH系のエッチング液により外側の活性層を除去する
ことにより、図4に示すようなマッシュルーム型の断面
形状を持つ自己整合挟搾メサ(SACM)構造の半導体
レーザ・ウェハができる。
【0079】このウェハは長さ1mmのバー状にへき開
された後、幅300μmのチップに切り出され、モジュ
ールに実装される(図では省略)。発振波長はおよそ1.
55μmである。上記のように活性層側面の格子不整合に
もかかわらず転位の発生が抑制されているので、低しき
い値,高出力,高速,低チャープ,狭スペクトル線幅で
信頼性の高い歪量子井戸分布帰還型半導体レーザが実現
される。
【0080】この実施例では亜鉛の拡散はオーバークロ
ース工程の中で行われているが、オーバーグロースとは
別の独立の工程として拡散を行ってもよい。また、拡散
される不純物は亜鉛に限られるものではなく、例えばカ
ドミウム,マグネシウム,ベリリウム,炭素,シリコン
など、他の不純物であってもよい。
【0081】次に、図6を用いて第4の実施例の半導体
レーザの製造方法を説明する。最初の結晶成長から活性
層のパターニングまでの工程は図5(a)〜(c)と同
じである。その後、図6(a)に示すように、活性層の
パターニングに用いたSiO2 膜15を残したまま、活
性層を除去した部分にIn0.52Al0.48As層26aと
InP層26bの多層構造からなる埋込み層26を選択
成長する。この埋込み層26は活性層4よりも禁制帯幅
が大きいので、活性層4を介さない電流リークを防止す
る役割を担う。
【0082】このとき、SiO2 膜15の上ではInの
方がAlより拡散距離が長いので、In0.52Al0.48
s層26aの成長時に、SiO2 膜15に近い部分には
AlよりもInが過剰に供給される。この結果、In
0.52Al0.48As層26aはSiO2 膜15に近い部分
28でIn/(In+Al)比が0.52より大きくなって
いる。活性層4に近づくにつれてIn/(In+Al)
比が0.52より大きくなり、格子定数も大きくなるので、
埋込み層26の平均の格子定数は活性層4の平均の格子
定数に近づく。即ち、この組成変化領域28は、側面が
テーパになっている効果と合わせて、活性層側面の格子
不整合の影響を分散させる方向に働く。この結果、応力
の集中が緩和され転位などの欠陥の発生を抑制できる。
活性層4に近い部分の埋め込み層26の平均の格子定数
は、結晶成長条件、In0.52Al0.48As層26aの厚
さ、層数などにより調整することができる。
【0083】その後、前の実施例と同様にSiO2 膜1
5を除去してp−InPクラッド層5、p−InGaA
sPコンタクト層6を成長し、電極形成やメサの形成を
行うことで、図6(b)に示すような半導体レーザが完
成する。この実施例でも、活性層側面の格子不整合に起
因する転位の発生が有効に抑制されることから、高性能
で信頼性の高い半導体レーザが実現される。また、逆
に、活性層の方を埋込み層の後から選択成長で形成する
組合せも考えられる。
【0084】量子井戸レーザの特性は、量子井戸層の数
に依存する。図7にIn0.7 Ga0.3 As/InGaA
sP系の歪量子井戸レーザの微分利得の井戸層数依存性
の計算例を示す。良好な特性を得るためには、ある程度
の層数が必要であるが、本実施例のような側面の格子不
整合の影響を緩和する手段を講じないと、層数の多い
(合計膜厚が厚い)場合には側面近傍に深刻な転位を生
じることになる。本実施例の方法によれば、活性層側面
の転位の発生なしに、さらに合計膜厚を厚くすることも
可能である。この実施例の構造の採用より、しきい値が
低く、線幅増大係数(αパラメータ)が小さく、微分利
得が大きく、且つ信頼性の高い半導体レーザが安定して
得られる。この優れた特性の歪量子井戸半導体レーザ
は、例えば、超高速光通信やコヒーレント光通信の光源
として、或いは光増幅器励起用高出力光源として使われ
る。
【0085】なお、本発明は上記の実施例に限らず、種
々の変形が可能である。各半導体層は必ずしも一定組成
である必要はなく、例えば光導波層は活性層側からクラ
ッド層へ向けて屈折率が連続的に、或いは階段状に小さ
くなる(禁制帯幅は大きくなる)GRIN構造であって
もよい。光導波路層の横方向光(及び電流)閉じ込め構
造は上記のSACM構造の他、埋込みヘテロ構造、半絶
縁性InP埋込み構造など様々なタイプが可能である。
側面の形状も上記の実施例のような中央部のくびれたテ
ーパ形状に限られるものでなく、垂直でも、上部の狭い
台形でも、下部の狭い逆台形でも、その他の形状でもか
まわない。
【0086】半導体レーザの場合、分布帰還型(DF
B)レーザのほかに、ファブリペロー(FP)レーザ、
分布反射型(DBR)レーザ、複数の電極を持つ波長可
変レーザ、複合共振器レーザ、モニタ集積レーザ、光導
波路集積レーザ、双安定レーザなどであってもよい。勿
論、半導体レーザの他、半導体レーザ光増幅器,半導体
光導波路,半導体光検出素子(ホトダイオード),半導
体光スイッチ,半導体方向性光結合器,半導体光変調
器、これらを集積化したフォトニックICなど、様々な
光半導体素子、或いはpseudomorphic HEMTやヘテロ接合
バイポーラトランジスタなどの電子デバイスに本発明を
適用することができる。
【0087】第1の領域の形状は直線ストライプに限ら
れるものではなく、例えば矩形、多角形、円形、櫛形、
Y分岐、クロス(X)、曲線など、任意の形状の領域に
適用することができる。第1の領域が他の領域に完全に
囲まれていない場合、第2の領域にも歪半導体層が存在
する場合、第3の領域がある場合などであっても、歪半
導体層を含む各領域の側面に組成傾斜領域を作ること
で、本発明の作用効果が得られることは明らかであろ
う。作製方法もMOCVD法に限定されるものではな
い。例えばALE(原子層エピタキシ)など他の成長方
法であっても構わないし、各領域の作成順序はどちらが
先であっても構わない。
【0088】材料もInGaAs,GaAlAs,In
GaAsP,InGaAlAs,InGaAlP,In
GaAsSb,GaAlAsP,GaAlAsSb,G
aAlPSb,InAlPSb,InGaAlSb,A
lGaNなどのIII−V族半導体混晶のほか、SiG
e,SiC,ZnSSe,CdSSe,HgCdTe,
カルコパイライト材料など、種々の材料の組み合わせが
可能である。
【0089】次に、第5の発明の実施例について説明す
る。
【0090】図8は、本発明の第5の実施例に係わる半
導体レーザの概略構造を示す断面図である。この半導体
レーザは下記のようにして作製される。(001)主面
をもつn型InP半導体基板1a上に有機金属気相成長
(MOCVD)法により、厚さ2μmのn型InPバッ
ファ層(クラッド)1bを介して、アンドープ InGaAs/InGaAsP多重量子井戸活性層4を
積層する。
【0091】活性層4は図9に示すように、厚さ 4.206
nmのアンドープ In0.7 Ga0.3 As歪み量子井戸層2の上下を、厚さ
2.005nmのアンドープIn0.48Ga0.52As0.78
0.22歪障壁層3aで挟んだ積層構造を7層、厚さ10n
m(但し下端の層は30nm、上端の層は700nm)
のInPに格子整合する波長 1.2μm組成のアンドープ
InGaAsP層3bで挟んだ構造をしている。この上
端のInGaAsP層3bの上に回析格子を形成した
後、その上にSiO2 膜を堆積し、通常のPEP技術に
よりパターニングを行い、活性領域となる幅2μmのス
トライプの両サイドを幅1μmずつエッチングで除去す
る。このとき、活性層4のエッチングにSH系のエッチ
ング液(硫酸、過酸化水素水、水の混合液)を用いる
と、図8に示すような中央部が凹んだテーパ状の活性層
断面が得られる。テーパ部の幅は片側 0.4μmであり、
中央部の活性層幅は1μmである。
【0092】次いで、SiO2 膜を除去した後、MOC
VD法により全体を厚さ2μmのp型InPクラッド層
5、厚さ 0.8μmのp型InGaAsPコンタクト層6
で埋め込む。コンタクト層6の上にはp型オーミック電
極(Ti/Pt/Au)11を、基板1の下部にはn型
オーミック電極(Au/Ge)12を形成する。コンタ
クト層6とp型クラッド層5を順次選択エッチングによ
り活性層4を含む幅10μmのメサに形成する。さら
に、SH系のエッチング液により外側の活性層を除去す
ると、図8に示すようなマッシュルーム型の断面形状を
持つ自己整合挟搾メサ(SACM)構造の半導体レーザ
になる。このウェハは長さ1mmのバー状にへき開され
た後、幅300μmのチップに切り出され、モジュール
に実装される(図では省略)。発振波長はおよそ1.55μ
mである。
【0093】InP基板1の格子定数は 0.58688nmで
あるのに対して、In0.7 Ga0.3 As歪量子井戸層2
の格子定数は 0.59381nm、In0.48Ga0.52As0.78
0.22歪障壁層3aの格子定数は 0.57986nmである。こ
こで、側面のない無限平面を仮定すれば、歪量子井戸層
2と歪障壁3aはそれぞれ 4.206nm、 2.005nmと薄
いので弾性的に歪む。歪量子井戸層2の歪みの大きさ
は、εxx=εyy=-0.01167、εzz=−2(C12/C11
εxx=0.011974、εyz=εzx=εxy=0となる。C12
11=0.504 はIn0.7 Ga0.3 Asのポアソン比であ
る。
【0094】一方、歪み障壁層3aの歪み大きさは、ε
xx=εyy=-0.012106 、εzz=−2(C12/C11)εxx
=-0.012106 、εyz=εzx=εxy=0となる。ここで、
In0.7 Ga0.52As0.780.22のポアソン比は正確に
求められていないので、C12/C11=0.5 を仮定した。
この結果、歪んだIn0.7 Ga0.3 As歪量子井戸層2
の格子定数は、xy面内でInPに等しくなり、z方向
の格子定数は0.60092nmとなる。厚さ 4.206nmは7
単位格子層に相当する。一方、歪んだIn0.48Ga0.52
As0.780.22歪障壁層3aの格子定数は、xy面内で
InPに等しくなり、z方向の格子定数は 0.57284nm
となる。厚さ 2.005nmは 3.5単位格子層に相当する。
【0095】このときの活性層4の側面の(001)方
向(Z)方向の格子面のずれの大きさを、図10に示
す。格子面のずれは最大 0.04914nmで、δmin = 0.5
7284nmの1/4の 0.14321nmより十分に小さく、式
(2)を満たす。従って、横ずれを伴う(001)同族
原子面のずれによる転位を防止することができる。勿
論、ALE(原子層エピタキシ)モードでない通常のM
OCVDでは層厚や組成を完全に制御することは困難な
ので、各歪半導体層の厚さに若干のずれが生じることも
考えにれる。
【0096】また、上記の格子定数やC12/C11の値が
正確でない場合もある。しかし、いずれの場合において
も7層累積のZ方向格子面のずれの大きさが 0.28642n
mを越えないように、即ち式(1)を満たすように制御
できれば、単位格子面のずれに相当する転位の発生を防
止することができる。ミクロには活性層4の面に小さな
格子不整合が残るが、活性層側面がテーパ状に形成され
ているので、歪みと応力はテーパ部に分散され緩和さ
れ、各半導体層は側面の境界部においても弾性的に歪む
ことができる。従って、歪半導体層2,3aの側面でも
転位などの格子欠陥や不純物の偏析が防止でき、特性や
信頼性の劣化がない埋め込み構造歪量子井戸レーザが実
現できる。
【0097】量子井戸レーザの特性は、量子井戸層の数
に依存する。図7にIn0.7 Ga0.3 As/InGaA
sP系の歪量子井戸レーザの微分利得の井戸層数依存性
の計算例を示す。良好な特性を得るためには、ある程度
の層数が必要であるが、本実施例のような側面の格子不
整合の影響を緩和する手段を講じないと、層数の多い
(合計膜厚が厚い)場合には側面近傍に深刻な転位を生
じることになる。例えば図8の例でもIn0.48Ga0.52
As0.780.22歪障壁層3aが無かったと仮定すると、
側面の計算上の累積不整合量は 0.68796nmとなり一単
位格子層の大きさを越えるから、まず確実に側面に転位
が発生することになる。本発明の方法によれば、活性層
側面の転位の発生なしに、さらに合計膜厚を厚くするこ
とも可能である。
【0098】この実施例の構造の採用より、しきい値が
低く、線幅増大係数(αパラメータ)〜2の歪量子井戸
の優れた特性が安定して得られ、その結果、10Gb/
s変調時(しきい値バイアス、変調電流40mApp)の
チャーピング(−20dB平均スペクトル幅)が 0.3n
m以下の優れた特性の半導体レーザが実現できる。信頼
性が高くチャーピングの小さい本発明の半導体レーザに
より、外部変調器を使わない10Gb/s直接強度変調
−直接検波方式の数百km光ファイバ伝送システムの実
用化が可能になる。
【0099】この実施例の変形として、上下両端を除く
障壁層を歪層3aと無歪層3bの多層構造ではなく単層
の歪InGaAsP層で構成してもよい。この場合も歪
InGaAsP障壁層の組成とxy面上で基板に格子整
合した状態での厚さを式(1)ないし(2)を満たすよ
うに設定することで同様の効果を得ることができる。
【0100】なお、本発明は上記の実施例に限らず、第
4の発明の変形例で説明したような種々の変形が可能で
ある。また、第1の領域が他の領域に完全に囲まれてい
ない場合、第2の領域にも歪半導体層が存在する場合、
第3の領域がある場合などであっても、歪半導体層を含
む各領域の側面において格子面のずれが式(1)を満た
すように各層のずみ量、厚さ、位置を設定することで、
本発明の作用効果が得られることは明らかであろう。こ
のほか、歪を含む量子細線や量子箱の側面の格子不整合
の影響を緩和するのに応用することができる。
【0101】次に、第6〜第8の発明の実施例について
説明する。
【0102】図11は、本発明の第6の実施例に係わる
多重量子井戸半導体レーザの概略構造を示す断面図であ
る。n−InP基板31上に、幅1μmのストライプ状
の活性層32が成長形成され、この活性層32の上にア
クセプタ濃度1×1017cm-3の第1のp−InPクラッ
ド層33が成長形成されている。
【0103】活性層32は図12に示すように、In
0.7 Ga0.3 As井戸層35が8層、InPに格子整合
する波長 1.3μm組成のInGaAsP障壁層36に挟
まれて形成されている。InGaAsP障壁層36のう
ち、最下部の層361 は厚さ30nm、最上部の層36
9 は厚さ70nmであり、他の層362 〜368 は厚さ
10nmである。In0.7 Ga0.3 As井戸層35は、
基板31と面内の原子間隔が合うように成長するため
に、約1.16%の圧縮歪が入っている。井戸層35の厚さ
は4nmであり、転位を発生させないための臨界膜厚よ
り十分に薄い。
【0104】p−クラッド層33の上には、活性領域ス
トライプ34の側面も覆うように、アクセプタ濃度1×
1018cm-3の第2のp−InPクラッド層37が成長
形成され、その上にp−InGaAsPコンタクト層3
8が成長形成されている。p型ドーバンドはいずれもZ
nである。p−クラッド層37は、寄生容量を低減する
ために活性層付近でのメサ幅5μmの狭窄メサ形状に加
工されている。
【0105】また、基板31の下部にはn型オーミック
電極39が、p−コンタクト層38の上にはp型のオー
ミック電極40が形成されており、これらの電極39,
40を介して外部からレーザに電流が注入される。共振
器長は1mmである。
【0106】なお、図11に示す構造は次のようにして
製造される。まず、図13(a)に示すように、基板3
1上に活性層32及びp−クラッド層33を成長し、こ
れを選択的にエッチングして活性領域ストライプ34を
形成する。次いで、図13(b)に示すようにp−クラ
ッド層37及びp−コンタクト層38を成長する。次い
で、図13(c)に示すように、p−コンタクト層3
8,p−クラッド層37,p−クラッド層33及び活性
層32を、活性領域ストライプ34を含むメサ幅10μ
mのメサ形状に加工する。その後、メサの両側に露出し
た活性層32aを除去することにより、図11に示す狭窄
メサ構造が得られる。
【0107】このような構成であれば、活性層32の各
井戸層35の側面はp−InPクラッド層37に接して
いるため、各井戸層35に均一かつ効率的に正孔の注入
が行える。活性層32にはp−クラッド層33からも正
孔が注入されるし、井戸層35面内でのキャリアの移動
は容易な上、活性層幅1μmと狭いので、井戸層35面
内のキャリア不均一は小さい。従って、厚さ方向にも幅
方向にも空間ホールバーニングによる利得飽和は起こり
難く、ダンピングの小さな高周波応答が可能になる。さ
らに、活性層32上部のp−クラッド層33のアクセプ
タ濃度が低いため、p−クラッド層33へしみ出した光
の吸収損失も小さい。従って、発振しきい値が低く、微
分利得の高い領域での動作が可能になる。
【0108】また、本実施例の歪量子井戸活性層32の
側面において、アクセプタの拡散に起因して井戸層とバ
リア層の混晶化が起こり易い。その結果、活性層側面の
格子不整合による応力が混晶化領域に分散し、転位の発
生を抑制できる効果も期待できる。仮に転位の発生があ
っても、転位は活性層32の内部よりもp−InPクラ
ッド層37、ないしは活性層32とp−InPクラッド
層37の間にあるp型混晶化領域の中にあって、この部
分の電子濃度は低いから、レーザ発光への直接的な影響
は小さいものと考えられる。
【0109】この実施例の歪多重量子井戸レーザの導波
損失は4cm-1であり、発振しきい値は8mAであっ
た。微分利得は 7.5×10-12 3 /sであり、3dB
帯域は18GHzである。一方、活性層上部のp−クラ
ッド層33のアクセプタ濃度を1×1018cm-3とした
レーザの導波損失は20cm-1、発振しきい値は15m
A、微分利得は5×10-12 3 /s、3dB帯域は1
4GHzであった。これらのレーザの特性は満足なもの
である。活性層側面からの正孔注入効率が高いため、G
RIN構造のような成長工程の複雑な構造を使わなくて
もしきい値の低域が図れている。
【0110】なお、井戸の側面を直接Feドープ半絶縁
性InPで埋めた従来構造のGRIN歪量子井戸レーザ
では、しきい値は9mAと低いものの、微分利得は3.8
×10-12 3 /sに止まった。周波数応答特性には活
性層へ拡散してきたFeに起因すると見られる低周波で
のロールオフ構造が見られ、ダンピングも大きく、3d
B帯域は6GHzしかなかった。また、GRIN構造を
実現するための多段階に組成を変化させる結晶成長プロ
セスも、本実施例の半導体レーザと比べて複雑である。
【0111】このように本実施例によれば、多重量子井
戸活性層32の側面を、活性層32上のp−クラッド層
33よりもキャリア濃度の高いp−クラッド層37で埋
め込んでいるので、このp−クラッド層37から活性層
32に正孔を注入することができ、注入効率の向上、さ
らに正孔密度の井戸間でのばらつきを抑制することがで
きる。従って、注入効率の向上による微分利得の増大,
しきい値の低下,光に対する利得飽和の抑制、ひいては
高速応答の実現が図れる。また、性能を落とさずに量子
井戸数を増やすことが可能になり、高出力化にも効果が
ある。
【0112】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変
形して実施することができる。例えば、超高速光通信用
DFBレーザ,多電極波長可変レーザ,高出力レーザ,
半導体レーザ増幅器などへの応用も考えられる。他の材
料系でも、価電子帯の障壁が高く正孔の均一な注入が困
難な場合に応用できる。この他、ファセット面に種々の
コーティングが施されていてもよいし、他の素子と集積
化されていてもよい。本発明の効果は、井戸数が大きい
ときやバリア層厚が比較的厚い場合に特に有効である。
また、本発明は多重量子細線レーザへの応用も可能であ
る。細線が共振器ストライプの幅の方向と平行に形成さ
れ、厚さ方向と長さ方向に多重形成されている場合に、
上記の実施例と同様の効果が期待できる。
【0113】次に、本発明の第7の実施例について説明
する。この実施例は、歪量子井戸レーザに負のデチュー
ニング(利得ピーク波長より少しずれた波長に発振波長
を設定すること)をかけて、高速応答性の向上をはかっ
たものである。
【0114】図14は、第7の実施例に係わるDFB半
導体レーザの概略構造を一部切欠して示す斜視図であ
る。n−InP基板41上に、ストライプ状の活性層4
2が成長形成され、この活性層42の上に該活性層42
の側面も覆うようにp−InPクラッド層43が成長形
成され、さらにクラッド層43上にp−InGaAsP
コンタクト層44が形成されている。
【0115】活性層42は図15に示すように、In
0.7 Ga0.3 As井戸層45が4層、InPに格子整合
する波長 1.3μm組成のInGaAsP障壁層46に挟
まれている。InGaAsP障壁層46の内、最下部の
層461 は厚さ30nm、最上部の層465 は厚さ70
nmであり、他の層462 〜464 は厚さ10nmであ
る。最上部の障壁層465 は光導波層を兼ねており、こ
こに周期約245nmの一次の回折格子47が形成され
ている。In0.7 Ga0.3 As井戸層45は、基板41
と面内の原子間隔が一致するように成長するために、約
1.16%の圧縮歪が入っている。井戸層45の厚さは4n
mであり、転位を発生させないための臨界膜厚より十分
に薄い。活性層42は故意にはドーピングされていない
が、p−InPクラッド層を成長する際にドーパントの
Znが拡散するため、5×1017cm-3〜1×1018
-3のp型になっている。
【0116】p−クラッド層43は、寄生容量を低減す
るために活性層付近でのメサ幅5μmの狭窄メサ形状に
加工されている。基板41の下部にはn型オーミック電
極51が、p−コンタクト層44の上にはp型のオーミ
ック電極52が形成されており、これらの電極51,5
2を介して外部からレーザに電流が注入される。共振器
長は300μmであり、共振器方向中央の回折格子には
四分の一波長の位相シフト領域48が形成されている。
また、へき開により形成されたファセット面には、反射
率1%以下の無反射コーティングが形成されている。
【0117】この半導体レーザの発振しきい値は22m
Aであり、波長1.52μmで副モード抑圧比40dB以上
の単一モード発振する。発振しきい値での利得ピーク波
長は1.57μmであり、発振波長は50nm負にデチュー
ニングされている。大きな負のデチューニングにもかか
わらず、発振しきい値の上昇は小さい。狭窄メサ構造に
より、寄生容量と直列抵抗で決まる時定数は8psであ
り、これはCR周波数帯域は20GHzに相当する。
【0118】半導体レーザの注入電流Ib 、共振周波数
fr 、ダンピング係数γの間には、 fr =(1/2π)(ξA/qVa )1/2 (Ib −Ith)1/2 …(3) γ=Kfr 2 +1/τs …(4) の関係がある。ここで、ξは光閉じ込め係数、Aは微分
利得、qは電子の電荷、Va は活性層体積、Ithは発振
しきい値、KはKファクターと呼ばれる係数、τs は微
分キャリア寿命である。Kファクターは非線形利得εと
微分利得Aの比ε/Aに比例する非線形項と、光子寿命
τp に比例する線形項の和で表される。非線形項はAに
反比例して小さくなるが、εに比例して大きくなる。K
ファクターとダンピングにより決まる理論上の最大3d
B帯域fmax の間には、 fmax =23/2 π/K …(5) の関係がある。
【0119】図16は本実施例の半導体レーザのfr の
(Ib −Ith)1/2 依存性である。式(3) から、微分利
得は 6.8×10-12 3 /sと求められる。図17は、
この半導体レーザのγとfr 2 の関係を示す図である。
式(4) からKファクターは0.13nsと求められた。式
(5)より、このレーザのfmax として68GHzが得ら
れる。これは、歪量子井戸構造の導入による微分利得の
増大に加えて、デチューニングとアクセプタ・ドーピン
グにより非線形利得εが小さく抑えられたために実現さ
れたものである。また、デチューニングに関して言え
ば、歪量子井戸構造の導入によって初めて、これほど大
きな負のデチューニングが可能になったとも言える。も
ちろん、負のデチューニングとアクセプタ・ドーピング
そのものも微分利得の増大に寄与している。
【0120】なお、本実施例の場合、アクセプタ・ドー
ピングによる導波ロスの増加でτpが小さくなっている
ことも、線形項を介してKファクターの低域に寄与して
いることを付記しておく。実際の3dB帯域はCR時定
数によるロールオフと出力パワーの飽和により17GH
zであったが、これはレーザ構造の改良で改善できるの
で本質的な制限要因ではない。
【0121】図18は、微分利得対Kファクターの相関
図である。この実施例のレーザのデータを従来の半導体
レーザの特性、負のデチューニングとドーピングを行っ
ていない歪量子井戸レーザの特性、及び20nm負のデ
チューニングをかけた歪量子井戸レーザの特性と比較し
てある。歪量子井戸レーザでは従来の半導体レーザと比
べて微分利得が大きくできるが、本実施例のようなデチ
ューニングやドーピングを行わない場合は非線形利得ε
が大きくなるため、Kファクターがかえって大きくなっ
てしまい、fmax はかえって小さくなってしまった。こ
れに対して本実施例のレーザではKファクターが従来の
レーザより大きくなく、特に40nm以上のデチューニ
ングをかけた場合は従来のレーザよりもかなり小さくな
り、従来の半導体レーザにはない超高速の応答が得られ
ることが分かる。
【0122】次に、第9及び第10の発明の実施例につ
いて説明する。
【0123】図19は、本発明の第8の実施例に係わる
半導体レーザの概略構造を示す断面図である。この半導
体レーザ下記のようにして作製される。(001)主面
を持つn型InP半導体基板1a上に有機金属気相成長
(MOCVD)法により、厚さ2μmのn型InPバッ
ファ層(クラッド)1bを介して、アンドープInGa
AsP層光導波層3a、アンドープInAs/InGa
AsP多重量子井戸活性層4、アンドープInGAsP
層光導波層3bを順に積層する。活性層4は、図20に
示すように、厚さ2nmのアンドープInAs歪量子井
戸層2を12層、厚さ5nmのアンドープInGaAs
P障壁層3を挟んで積層したものである。InGaAs
P層光導波層3bの上に回析格子を形成した後、上にS
iO2 膜を堆積し、通常のPEP技術によりパターニン
グを行い、活性領域となる幅2μmのストライプの両サ
イドを幅1μmづつエッチングで除去する。
【0124】次いで、SiO2 膜を除去した後、MOC
VD法により全体を厚さ2μmのp型InPクラッド層
5、厚さ 0.8μmのp型InGaAsPコンタクト層6
で埋め込む。コンタクト層6の上にp型オーミック電極
(Ti/Pt/Au)11、基板1の下部にはn型オー
ミック電極(Au/Ge)12を形成する。そして、コ
ンタクト層6とp型クラッド層5を選択エッチングによ
り活性層4を含む幅10μmのメサに形成する。さら
に、SH系のエッチング液により外側の活性層を除去す
ることにより、図19に示すようなマッシュルーム型の
断面形状を持つ自己整合挟搾メサ(SACM)構造の半
導体レーザになる。このウェハは長さ1mmのバー状に
へき開された後、幅300μmのチップに切り出され、
モジュールに実装される(図では省略)。
【0125】ここで、InGaAsP障壁層3の組成
は、図20に示すように、その禁制帯端が歪InAs層
2の軽い正孔に対する禁制帯端ELHとおおむね一致する
ように選ぶものとする。現状ではまだInP基板上の歪
In1-u Gau Asv 1-v (0≦x≦1,0≦y≦
1)のバンドアライメントは完全には知られていない。
しかし、InPに挟まれた歪InAs層は軽い正孔に対
してInPに挟まれたIn0.53Ga0.47As層の場合よ
りも浅い量子井戸を形成することが分かっているので、
上記の条件を満たす無歪みのIn1-x Gax Asy
1-y 組成(0<x<0.47,0<y<1)が必ず存在す
る。
【0126】このようにすると、軽い正孔に対しては障
壁ができないため、軽い正孔は各井戸層2と障壁層3を
自由に移動することができる。しかも、軽い正孔は井戸
層内部で重い正孔と波動関数の重なり積分が0でないた
め、部分的に結合している。従って、p−クラッド層か
ら離れた井戸に対しても効率良く井戸へ正孔注入がはか
れ、また井戸間の結合も良くなる。この結果、低しきい
値で高速特性の優れた歪多重量子井戸レーザが実現され
る。
【0127】軽い正孔に対して障壁ができていないこと
は、例えばフォトルミネセンスなどの測定により、確か
めることができる。即ち、重い正孔と電子の再結合によ
る発光は井戸層に平行な偏波成分のみ許容されるのに対
して、軽い正孔と電子の再結合による発光は井戸に垂直
な成分と平行な成分の両者に対して許容されるので、そ
の区別が可能であり、軽い正孔による発光が量子化され
た準位によるものかどうか調べることで、軽い正孔に対
する価電子帯端ELHが概略一致しているかどうかの判断
を下すことができる。
【0128】なお、本発明は上記の実施例に限るもので
はなく、種々の変形が可能である。例えば、InGaA
sP障壁層3をInPよりも格子定数の小さな材料で構
成してもよい。この場合のバンド構造の概念図を図21
に示す。このようにすると、活性層が埋め込まれた歪多
重量子井戸レーザにおいて、側面の格子不整合の影響を
正負の歪みで相殺することができるので、歪井戸層の多
層化を計る際に格子欠陥の発生を抑制することができ
る。
【0129】また、基板より格子定数の小さな半導体層
を井戸層とする場合には、逆に歪井戸層と障壁層の重い
正孔に対する価電子帯端ELHを概略一致させることで、
軽い正孔に対する量子井戸に関しても同様に、正孔の注
入効率向上と井戸間の結合効率の改善を計ることができ
る。この場合のバンド構造図を図22に示す。
【0130】光導波層の横方向光(および電流)閉じ込
め構造は上記のSACM構造の他、埋込みヘテロ構造、
半絶縁性InP埋込み構造など様々なタイプが可能であ
る。分布帰還型(DFB)レーザのほかに、ファブリペ
ロ(FP)レーザ、分布反射型(DBR)レーザ、複数
の電極を持つ波長可変レーザ、複合共振器レーザ、モニ
タ集積レーザ、光導波路集積レーザ、双安定レーザなど
であってもよい。もちろん、半導体レーザ光増幅器、キ
ャリア注入型光スイッチ、半導体光変調器、これらを集
積化したフォトニックICなどにも本発明を適用するこ
とができる。もちろん、材料もInAsやInGaAs
Pに限定されるものではない。
【0131】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、埋
め込まれた歪み半導体層側面の格子不整合が緩和される
ため、歪半導体層側面近傍への格子欠陥や不純物の偏析
の発生を防止することができ、特性や信頼性の優れた光
半導体素子を実現することが可能となる。
【0132】また本発明によれば、量子井戸活性層への
キャリア注入効率を上げることができ、発振しきい値が
低く、かつ高速応答可能な光半導体素子を実現すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例に係わる半導体レーザの概略構造
を示す断面図、
【図2】第1の実施例レーザの製造工程を示す断面図、
【図3】第2の実施例に係わる半導体レーザの概略構成
を示す断面図、
【図4】第3の実施例に係わる半導体レーザの概略構成
を示す断面図、
【図5】第3の実施例レーザの製造工程を示す断面図、
【図6】第4の実施例に係わる半導体半導体レーザの製
造工程を示す断面図、
【図7】第4の実施例におけるレーザ微分利得の井戸層
数依存性を示す特性図、
【図8】第5の実施例に係わる半導体レーザの概略構造
を示す断面図、
【図9】第5の実施例レーザの要部構成を示す断面図、
【図10】第5の実施例における活性層側面のZ方向の
格子面のずれを示す模式図、
【図11】第6の実施例に係わる多重量子井戸半導体レ
ーザの概略構造を示す断面図、
【図12】第6の実施例の要部構成を拡大して示す断面
図、
【図13】第6の実施例レーザの製造工程を示す断面
図、
【図14】第7の実施例に係わる半導体レーザの概略構
造を一部切欠して示す斜視図、
【図15】第7の実施例の要部構成を示す断面図、
【図16】第7の実施例のfr の(Ib −Ith)1/2
存性を示す図、
【図17】第7の実施例のダンピング係数γとfr 2
の関係を示す図、
【図18】第7の実施例におけるレーザ微分利得とKフ
ァクターとの相関を示す模式図、
【図19】第8の実施例に係わる半導体レーザの概略構
造を示す断面図、
【図20】第8の実施例レーザの活性層のバンド構造を
示す模式図、
【図21】第8の実施例における活性層のバンド構造の
他の例を示す模式図、
【図22】第8の実施例における活性層のバンド構造の
他の例を示す模式図、
【図23】従来の多重量子井戸半導体レーザの概略構成
を示す断面図。
【符号の説明】
1a…n型InP基板、 1b…n型InPバッファ層(クラッド層)、 2…InGaAs歪量子井戸層、 3…InGaAsP障壁層、 4…多重量子井戸活性層、 5…p型InPクラッド層、 6…p型InGaAsPコンタクト層、 8…埋込み層、 27,28…組成変化領域、 31…基板、 32…歪量子井戸活性層、 33…第1のp−クラッド層、 34…活性領域ストライプ、 35…歪量子井戸層、 36…障壁層、 37…第2のp−クラッド層、 38…コンタクト層、 39,40…電極。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】半導体基板上に形成され、電子のドゥ・ブ
    ロイ波長以下の層厚を有し半導体基板と格子整合しない
    第1の半導体層を該第1の半導体層よりも禁制帯幅が広
    い第2の半導体層で挟んだ歪量子井戸を少なくとも一つ
    有するストライプ状の光導波路層を有し、この光導波路
    層の周囲を第2の半導体層より禁制帯幅の広い半導体か
    らなるクラッド層で囲んだ構造を有する光半導体素子に
    おいて、 第1の半導体層の基板面と平行でない界面が基板法線方
    向に対して45度以上の角度を有する面により構成され
    ていることを特徴とする光半導体素子。
  2. 【請求項2】半導体基板上に形成され、電子のドゥ・ブ
    ロイ波長以下の層厚を有し半導体基板と格子整合しない
    第1の半導体層を該第1の半導体層よりも禁制帯幅が広
    い第2の半導体層で挟んだ歪量子井戸を少なくとも一つ
    有するストライプ状の光導波路層を有し、この光導波路
    層の周囲を第2の半導体層より禁制帯幅の広い半導体か
    らなるクラッド層で囲んだ構造を有する光半導体素子に
    おいて、 前記光導波路層と同じ基板並行面内にあるクラッド領域
    の平均格子定数が、半導体基板と第1の半導体層との中
    間の大きさを持つことを特徴とする光半導体素子。
  3. 【請求項3】半導体基板上に形成され、電子のドゥ・ブ
    ロイ波長以下の層厚を有し半導体基板より格子定数が小
    さな第1の半導体層を該第1の半導体層よりも禁制帯幅
    が広い第2の半導体層で挟んだ歪量子井戸を少なくとも
    一つ有するストライプ状の光導波路層を有し、この光導
    波路層の周囲を第2の半導体層より禁制帯幅の広い半導
    体からなるクラッド層で囲んだ構造を有する光半導体素
    子において、 前記光導波路層と同じ基板平行面内にあるクラッド領域
    の内部にはc軸が基板法線方向に向いた正方晶構造の半
    導体層を有しており、その正方晶構造の半導体層のa軸
    の格子定数が半導体基板の格子定数より小さいことを特
    徴とする光半導体素子。
  4. 【請求項4】半導体基板とは格子定数が異なる歪半導体
    層を少なくとも一層含む歪量子井戸が形成された第1の
    領域と、この第1の領域の外側の前記歪量子井戸に隣接
    する部分に該歪量子井戸と平均格子定数が異なる第2の
    半導体層が形成された第2の領域とを、同一半導体基板
    上に含んでなる光半導体素子において、 第1の領域と第2の領域の境界部に、平均の格子定数が
    第1の半導体層のそれから第2の半導体層のそれの間で
    連続的に、或いは断続的に変化する組成変化領域が形成
    されていることを特徴とする光半導体素子。
  5. 【請求項5】半導体基板とは格子定数が異なる歪半導体
    層を少なくとも一層含む歪量子井戸が形成された第1の
    領域と、この第1の領域の外側の前記歪量子井戸に隣接
    する部分に該歪量子井戸と平均格子定数が異なる第2の
    半導体層が形成された第2の領域とを、同一半導体基板
    上に含んでなる光半導体素子において、 第1の領域の歪量子井戸の最も下部にある歪半導体層の
    下部主面を基準面として、その基準面に最も近い低指数
    面の法線方向上向きに座標系Zをとり、第1の領域が無
    限に広がっていると仮定したときの第1の領域の基準面
    からn番目の単位格子面の座標Z1(n)、第1の領域
    に隣接する第2の領域が無限に広がっていると仮定した
    ときの第2の領域の基準面からn番目の単位格子面の座
    標をZ2(n)とし、また、 Z2(n+1)−Z2(n) Z2(n)−Z2(n−1) Z1(n+1)−Z1(n) Z1(n)−Z1(n−1) の4つの値のうち最小のものをδmin (n)とすると
    き、任意のnに対して、ABS{Z2(n)−Z1
    (n)}<δmin (n)/2 の関係を満たすことを特徴とする光半導体素子。
  6. 【請求項6】多重量子井戸活性層と、この活性層の主面
    に格子整合する第1のp型クラッド層と、前記活性層の
    側面に形成された、第1のp型クラッド層よりもアクセ
    プタ濃度の高い第2のp型クラッド層とを具備してなる
    ことを特徴とする光半導体素子。
  7. 【請求項7】第1のp型クラッド層のアクセプタ濃度
    を、前記活性層から 0.25 μmの範囲で2×1017cm
    -3以下に設定し、且つ第2のp型クラッド層のアクセプ
    タ濃度を1×1018cm-3以上に設定したことを特徴と
    する請求項6記載の光半導体素子。
  8. 【請求項8】前記井戸層は、Inx Ga1-x As(0.53
    <x≦1)からなることを特徴とする請求項6記載の光
    半導体素子。
  9. 【請求項9】本来の格子定数が半導体基板の格子定数よ
    り大きい井戸層と、本来の格子定数が半導体基板の格子
    定数と等しい又はそれより小さく且つ前記井戸層よりも
    禁制帯幅の広い障壁層とを、交互に積層した多重量子井
    戸構造の光半導体素子において、 前記井戸層の軽い正孔帯の禁制帯端と前記障壁層の軽い
    正孔帯の禁制帯端を、略一致させてなることを特徴とす
    る光半導体素子。
  10. 【請求項10】本来の格子定数が半導体基板の格子定数
    より小さい井戸層と、本来の格子定数が半導体基板の格
    子定数と等しい又はそれより大きく且つ前記井戸層より
    も禁制帯幅の広い障壁層とを、交互に積層した多重量子
    井戸構造の光半導体素子において、 前記井戸層の重い正孔帯の禁制帯端と前記障壁層の重い
    正孔帯の禁制帯端を、略一致させてなることを特徴とす
    る光半導体素子。
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