JPH05280022A - 潮吹き防波構造体及びそれを用いた防波構造 - Google Patents

潮吹き防波構造体及びそれを用いた防波構造

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JPH05280022A
JPH05280022A JP4106177A JP10617792A JPH05280022A JP H05280022 A JPH05280022 A JP H05280022A JP 4106177 A JP4106177 A JP 4106177A JP 10617792 A JP10617792 A JP 10617792A JP H05280022 A JPH05280022 A JP H05280022A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 集束させた波のエネルギーを利用して海水を
吹き上げることでウォーターフロントにおける親水性を
高めた潮吹き防波構造体およびそれを用いた防波構造を
提供すること。 【構成】 ケーソン10内部の空胴部に連通する多数の
貫通孔が形成された波受面12は凹状に湾曲して形成さ
れている。このケーソン10の上面14には空胴部より
上方に伸びる潮吹き通路20が開口している。波受面1
2の前方には、沖に向かうに従い水深が深くなる集波マ
ウンド60がほぼ半楕円エリアにて放射状に伸びてい
る。この集波マウンド60により波が波受面12に集波
され、しかもその波は凹状に湾曲した波受面12により
貫通孔形成エリアに集束され、海水吹上げエネルギーと
して寄与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防波機能を有し、か
つ、ウォーターフロントにおける親水性を高めることの
できる潮吹き防波構造体およびそれを用いた防波構造に
関する。
【0002】
【従来の技術】護岸あるいは離岸における防波堤は、ケ
ーソンと称される構造体により広く知られている。この
ケーソンは形状,機能などに応じて多種多様のものがあ
り、例えば上部斜面ケーソン堤,曲面スリットケーソン
堤,縦スリットケーソン堤あるいは有孔ケーソン堤など
のタイプが知られている。
【0003】さらに、特開平2-112516号公報には、波浪
エネルギーを空気ピストンにより空気エネルギーに変換
して吸収する波浪エネルギー吸収装置を有する防波構造
体が開示されている。
【0004】さらには、防波堤の内外の水域で海水の流
通を可能とし、防波堤内側の湾内の浄化機能を有するも
のも多く提案されている。その一つに、実開平3-65721
がある。これは、壁体間の礫層中に管を埋設し、この管
の一端をラッパ状として上記壁体の外海側を貫通させて
海水中に露出し、その他端を上方の外気中に露出したも
のである。外海の海水は管を通って吹上げられた後に礫
層に導かれ、礫層通過中に浄化されて内海側に導かれ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のケーソンはいず
れも、防波あるいは消波機能を主目的において設計され
ている。しかしながら近年のウォーターフロント開発に
おいては、水辺に人間を呼び戻すことが主目的の1つに
掲げられ、上述した防波構造体であるケーソンにも親水
性を高めることが要求されつつある。しかしながら、従
来のケーソンはいずれも、防波あるいは消波を主目的と
することから、親水性を高める設計としては単にそのデ
ザインを変更するのみであり、たとえ遊歩道を水辺に配
設したとしても、人間を水辺に呼び戻すことができるよ
うな魅力的な演出は到底実現できなかった。
【0006】この種の演出に関しては、上述の実開平3-
65721 にて、管に進水した海水が上方に吹き上がること
で一種の自然噴水を実現し、景観を高めることができる
としている。しかし、上記公報に開示された技術のみで
は、広い範囲の波の波浪エネルギーを海水の吹上げに利
用できないことから、親水性を高めるに足る演出効果を
さほど期待できないと思われる。
【0007】そこで、本発明の目的とするところは、水
辺での演出効果として潮吹き乃至は噴水に着目し、しか
も水域において余りある波浪エネルギーを効果的に利用
して海水を吹上げ、親水性が高くしかも軽量化を図りな
がらも防波効果の高い潮吹き防波構造体およびそれを用
いた防波構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の潮吹き防波構
造体は、海水を取り込む一又は複数の開口を有する波受
面と、前記開口から取り込まれた海水を、波圧力によっ
て上方に吹き出す潮吹き通路と、を有し、前記波受面
は、その少なくとも両側端を中心よりも前方に突出させ
て横断面が凹状に湾曲していることを特徴とする。
【0009】請求項2の潮吹き防波構造体は、海水を取
り込む一又は複数の開口を有する波受面と、前記開口か
ら取り込まれた海水を、波圧力によって上方に吹き出す
潮吹き通路と、を有する構造体を一ブロックとし、複数
の前記ブロックを、各波受面を一列に整列させて横並び
配置し、整列された複数の波受面は、少なくとも両側端
の前記ブロックの波受面を中心の前記ブロックの波受面
よりも前方に突出させて、各波受面を連ねた全体の横断
面が凹状に湾曲していることを特徴とする。
【0010】請求項3の防波構造は、請求項1に記載の
防波構造体と、この防波構造体が設置される水域底部の
基礎工事領域に、沖に向かうに従い水深が深くなる勾配
を持ち、前記構造体の前記波受面に達する以前に波を砕
波させるマウンドと、を有し、前記マウンドは、前記構
造体の前記波受面より沖に向けて略放射状に形成された
ことを特徴とする。
【0011】請求項4の防波構造は、請求項1に記載の
防波構造体を一ブロックとし、複数の前記ブロックを、
各波受面を一列に整列させて横並び配置し、この複数ブ
ロックから成る防波構造体が設置される水域底部の基礎
工事領域に、沖に向かうに従い水深が深くなる勾配を持
ち、前記構造体の前記波受面に達する以前に波を砕波さ
せるマウンドを設け、このマウンドの両端側は、両端の
前記ブロックよりもさらに外側に向けて略放射状に形成
されていることを特徴とする。
【0012】請求項5の防波構造は、請求項2に記載の
複数ブロックから成る防波構造体と、この防波構造体が
設置される水域底部の基礎工事領域に、沖に向かうに従
い水深が深くなる勾配を持ち、前記構造体の前記波受面
に達する以前に波を砕波させるマウンドと、を有し、前
記マウンドの両端側は、両端の前記ブロックよりもさら
に外側に向けて略放射状に形成されていることを特徴と
する。
【0013】
【作用】防波構造体の波受面に波が到達すると、この波
受面で防波作用が行われると共に、一部の波は波受面の
開口より進水することになる。進水した波は、波圧力に
よって潮吹き通路より上方に向けて吹出され、それが潮
吹き乃至は噴水として演出効果を醸し出すことになる。
このような潮吹き現象は、例えば波受面の多数の開口か
ら取り込まれた海水を、その開口及び潮吹き通路に連通
する空胴部のエアピストン作用により吹上げるエアピス
トン型、あるいは一つの開口より取り込まれた海水をテ
ーパ状の吹上げ通路に沿って案内して吹き上げる導波型
を利用することで実現される。このように海水を吹き上
げることは、波浪エネルギーの一部を潮吹き又は噴水と
してエネルギー消費できるので、波を消波させることも
でき、しかも防波構造体の強度をさほど高めなくても、
十分に耐え得る防波構造体を実現できる。
【0014】本発明では特に、一つの防波構造体の波受
面を凹状に湾曲させるか、あるいは複数ブロックの各波
受面を連ねた全体の横断面が凹状に湾曲するようにし
て、波受面自体に波の集束効果を持たせ、波受面上の開
口形成エリアに広い範囲の波を集めることで、海水の吹
上げに起用する波浪エネルギーを増大させることができ
る。
【0015】さらに、集波型の波受面の前方に、略放射
状に伸びる集波マウンドを形成することで、その波受面
の前方に広い範囲の波を集束させ、吹上げに寄与する波
浪エネルギーをさらに増大させている。
【0016】
【実施例】以下、本発明を適用した一実施例について、
図面を参照して具体的に説明する。
【0017】<第1実施例>第1実施例を図1〜図4を
参照して説明する。
【0018】図1に、エアピストン型潮吹き防波構造体
であるケーソン10を利用した防波構造を平面的に示
す。図1において、岸より沖に向けて伸びる中央突堤5
0の先端にケーソン10を配置し、その両側に離岸堤5
2,52を設けている。中央突堤50および離岸堤52
は、図4に示すように比較的大きな自然石を利用した自
然道として構成できる。そして、各堤およびケーソン1
0の設置領域を含む周辺領域が基礎工事エリアとなる。
ケーソン10の詳細な構造は後述するが、その主要構成
としては、図2に示すように前面の波受面12と、その
裏側に存在する空胴部16と、この空胴部16に連通し
て波受面12に形成された多数の貫通孔18と、空胴部
16と連通し上面14に開口する潮吹き通路20とを有
する。このケーソン10は、空胴部16内を波圧力にし
たがってエアピストンとして機能させ、空胴部16内の
海水を潮吹き通路20より噴出させ、海水を吹き上げる
ことで潮吹き乃至は噴水としての演出が可能である。
【0019】この防波構造の特徴的なことは、ケーソン
10の前面の波受面12を図3(B)に示すように凹状
に湾曲させ、さらに岸より沖に向けて例えば半楕円エリ
アに伸びる集波マウンド60を形成したことである。な
お、波受面12は必ずしも一つ又は複数の曲率半径で滑
らかに湾曲するものに限らず、両端を傾斜させて全体と
して凹状に湾曲しているものでも良い。要は、波受面1
2の少なくとも両側端を中心よりも前方に突出させて横
断面が凹状に湾曲していればよく、それにより中心側へ
の集束効果を持たせることができる。集波マウンド60
は例えばケーソン10と隣接する数メートルのエリア
は、例えば図4に示すように被覆ブロック62を配置し
た水平エリアとなっている。そしてマウンド60は、こ
の被覆ブロック62を最大高さとするほぼ一定の勾配で
放射方向に外側に向けて下降傾斜する傾斜部64として
構成されている。
【0020】このような集波マウンド60によれば、波
は水深が浅くなる方向に向かって進むため、ケーソン1
0のほぼ前面領域に波が集まり、この集波された波の波
浪エネルギーを効率的に利用して海水を吹き上げること
が可能となる。さらに本実施例では、波受面12もが凹
状に湾曲しているので、集波マウンド60により波受面
12の前面に集められた波を、波受面12の中心領域の
貫通孔18の形成エリアに集束させることができ、より
広い範囲の波のエネルギーを海水の吹上げ力として利用
できる。
【0021】このケーソン10は、図2及び図3に示す
ように、RC又は無筋コンクリート製であり、中実部を
構成するためにコンクリート殻部の内部には砂などが詰
められている。ケーソン10の空胴部16の少なくとも
上部は、上方に向かうに従い空洞横断面が小となるよう
なテーパ状部分16aを有することが望ましい。この空
胴部16のテーパ状部分16aは、上面14に開口する
潮吹き通路20と連通している。
【0022】本実施例では、波受面12は凹状に湾曲し
ていると共に、水平面に対して鈍角θとなる角度で傾斜
している。空胴部16の背面16bは、波受面12と平
行であり、しかも潮吹き通路20は背面16bに沿って
形成されているので、これらも同様に、水平面となる底
面16cに対して鈍角θとなる角度で傾斜している。
【0023】ここで、貫通孔20が形成された波受面1
2の高さ位置については、図3(A)に示すように、干
潮時満潮時にも貫通孔18の全てが水没しないようにす
ることが望ましい。すなわち、本実施例での波受面12
の最下位置の貫通孔18は、干潮時の水面高さH1 より
も低く、最上位置の貫通孔18は、満潮時の水面高さ位
置H2 よりも高い位置に形成されている。換言すれば、
貫通孔18が形成された波受面12の中心高さ位置を年
間を通してほぼ平均的な水面位置に設定し、波受面12
の縦長さを干満差以上の長さに設定すると良い。このよ
うに、干満の潮位をカバーできる波受面12の縦長さと
しては、例えば太平洋に臨んで設置する場合には最大1
50cm以下、好ましくは130〜150cmの範囲で十分
である。太平洋よりも潮位の変化の少ない日本海側の場
合は、太平洋設置用のものを兼用できる。
【0024】次に、このケーソン10の作用について説
明する。
【0025】図1の実線の水位を波が無い場合の仮想水
位30とすると、ケーソン10の波受面12に対して沖
側からの波が引いた状態では、空胴部16内の水位32
が鎖線のように下がり、空洞部16内は一種の減圧状態
となる。その後、広い範囲の波34が集波マウンド60
により波受面12に集束するように近づき、ついには波
受面12に衝突すると、凹状に湾曲した波受面12によ
って貫通孔18の形成エリアに集束し、空胴部16内の
圧力は一気に加圧され、唯一のエアの逃げ道となる潮吹
き通路20より、エアが勢い良く噴出することになり、
エアピストン動作が行われる。これに従い、空胴部16
内の海水もが加圧されて潮吹き通路20より噴出し、ケ
ーソン10の上面14より所定高さの潮吹きあるいは噴
水を実現できる。
【0026】ここで、上述のエアピストン動作にしたが
った潮吹きを効率良く確保するためには、多数の貫通孔
18は少なくとも空胴部16内外に海水を行き来できる
大きさ好ましくは直径5cm以上であると共に、波受面1
2の面積に対する開口率が、エアピストン動作を確保す
るに足るものでなければならない。開口率が大きすぎる
と、空胴部16内の減圧、加圧状態の明確な差が生じな
いからである。
【0027】本実施例では貫通孔18の開口率を小さく
しながらも、波受面12を水平面に対して鈍角θとなる
角度で傾斜させることで、空胴部16内に海水を取り込
むことを確保している。すなわち、波受面12が傾斜し
ていると、波の圧力により波受面12上を海水がかけ上
がり、波受面12を垂直に設置する場合と比べれば、多
孔の波受面12を主として波反射面としてのみ機能させ
るよりもむしろ、この海水のかけ上がり時に貫通孔18
より空胴部16内に海水を取り込む確率を高めることが
できる。したがって、波の押し寄せ時に空胴部16内に
取り込まれた海水をも、潮吹きに寄与させることができ
る。
【0028】さらには、空胴部16の背面16b及びこ
れに沿って形成した潮吹き通路20が同様に角度θで傾
斜しているので、波圧力及びそれに起因したエア圧を利
用して海水が潮吹き通路20に比較的円滑に導入され、
この潮吹き通路20を介して波受面12の斜め後方に勢
い良く海水を吹き出すことができる。なお、波圧力等を
利用して海水を潮吹き通路20に円滑に導入する機能面
から言えば、背面16bは、空胴部16の底面16cか
ら湾曲して立ち上がらせても良い。海水が円滑に潮吹き
通路20に導かれる構成を採用すれば、比較的短い経路
である潮吹き通路20を鉛直上方に向けて形成すること
もできる。
【0029】さらに、本実施例では特に、干満時によっ
て潮位が変化しても、貫通孔18の全てが水没すること
がないので、波浪エネルギーの高い水面付近の海水を波
受面12に導けることができ、効率的にしかも年間を通
して潮吹きを実現しあるいは噴水を吹き上げることがで
きる。
【0030】このように自然力である波力を利用した潮
吹きあるいは噴水は、年間を通してほぼ波の周期にて繰
り返し実現され、しかも上述した作用によりかなりの高
さの潮吹き又は噴水が実現されるので、夏期にあっては
公園の噴水のように涼しさを醸し出し、冬期にあっては
荒波の激しさを醸し出すことができ、水辺における親水
性を効率的に高めることができる。なお、このような演
出効果を夜間において確保するため、照明などの付帯設
備をケーソン10に設けるものでもよい。
【0031】上記の潮吹き又は噴水効果により、すなわ
ち波受面12より受け入れられた波を潮吹き通路20よ
り放出することにより、波浪エネルギーを潮吹き又は噴
水として消費させることができる。また、ケーソン10
での波の反射について考察すれば、波受面12での波の
反射と、空胴部16の背面16bでの波の反射とは、そ
れぞれ位相が異なり、このことによっても消波を実現で
きる。このような消波機能により、ケーソン10の防波
構造体を設計する際、防波に耐え得るケーソン10の機
械的強度を低減できる効果につながる。また、潮吹き又
は噴水として波浪エネルギーを消費させることで、消波
機能をも奏することが可能となる。
【0032】図4に示すように、この傾斜部64の長さ
をLとし、最大高さをHとすると、勾配はH/Lとして
表される。以下に、傾斜部64の長さLおよび勾配H/
Lについて、マウンド60の機能の説明しつつ考察す
る。
【0033】このマウンド60を設ける理由は上述した
ように広い範囲の波を波受面12の前方に導くことに加
えて、ケーソン10の前方にて、押し寄せる波を砕波さ
せることにある。すなわち、砕波されない波の振幅のみ
が波受面12に到達した場合には、潮吹き通路20から
効果的に海水を吹き上げられないからである。ケーソン
10の前方に傾斜したマウンド60を設けると、ケーソ
ン10に波が近づくに従い水深が浅くなり、波の波高が
徐々に高くなってついには砕波が生ずるのである。マウ
ンド60の傾斜部64の長さを過度に長く設けること
は、基礎工事エリアが拡大するので経済的でなく、ケー
ソン10のはるか前方にて砕波が生じてしまう。逆に、
この傾斜部64の長さを過度に短くすると、ケーソン1
0に到達する前に砕波を実現することができない。
【0034】本実施例の場合、波の周期を5.5秒、波
長を40m、沖波の波高が1m以下、にてシミュレーシ
ョンしたところ、Lが20m、H/Lが1/10で、ケ
ーソン10の直前にて砕波を行うことができ、波浪エネ
ルギーを効果的に利用した海水の吹上を実現できること
がわかった。
【0035】上記の点から本発明者らが傾斜部64の長
さLについて考察した結果、好ましくは、15m≦L≦
50m、さらに好ましくは20m≦L≦30mに設定す
るのがよい。上記範囲により短いとケーソンの直前で破
砕する程波高が成長せず、上記範囲より長いとマウンド
設置コストが増大して経済的でないからである。
【0036】次に、マウンド60の勾配H/Lについて
考察すると、上記距離Lを経済的理由から比較的短く設
定する観点から、1/30≦H/L≦1/8、特に1/
10前後に設定するものが望ましい。
【0037】<第2実施例>図5に、第2実施例に係る
防波構造を平面的に示す。同図に示すケーソン10は図
2〜図4に示すものと同一であり、このケーソン10を
一ブロックとし、複数のブロックを各波受面12が一列
に整列するように横並びさせている。このとき、一列に
整列されたブロック群の前方に形成される集波マウンド
70は、その中央領域は直線傾斜部72で構成され、そ
の両側領域は例えばほぼ1/4楕円領域の範囲で放射状
に伸びる放射状傾斜部74で構成される。
【0038】このような集波マウンド70を設けること
で、複数のケーソン10の各波受面12に広い範囲の波
を集束させることができ、しかも各波受面12が凹状に
湾曲しているので、その波を貫通孔12の形成領域に集
束させることができる。
【0039】<第3実施例>図6に第3実施例に係る防
波構造を平面的に示す。図6に横並びされた複数のケー
ソン80は、図2〜図4に示すケーソン10の波受面1
2のように凹状に湾曲させず、単に水平面に対して鈍角
θをなす角度で傾斜させた波受面82で構成したもので
あり、他の構造は図2〜図4に示すものと同一である。
波受面82が湾曲していないケーソン80を用いて複数
ブロックを横並びさせるに際して、複数の波受面82
は、少なくとも両側端の前記ケーソン80の波受面82
を中心のケーソン80の波受面82よりも前方に突出さ
せて、波受面12を横方向に連ねた全体の横断面が凹状
に湾曲させている。また、各波受面82の前方に形成さ
れた集波マウンド90は、中央領域の直線傾斜部92
と、その両側の例えばほぼ1/8楕円エリアで放射状に
伸びる放射状傾斜部94とから構成される。
【0040】この実施例の場合には、横並び配置された
複数のケーソン80の各波受面82が全体として集波構
造を成し、集波マウンド90により集波された波を各ケ
ーソン80の貫通孔18に案内する事ができる。
【0041】<第4実施例>この第4実施例は、上述し
たケーソン10,80に代えて、図1、図5又は図6の
防波構造に適用されるの防波構造体に関するものであ
る。
【0042】図7及び図8は本実施例に係る導波型潮吹
き防波構造体の一例であるケーソン110を示してい
る。このケーソン110は、コンクリート製の直方体形
状をなし、その中央の中空部には砂などが詰められてい
る。このケーソン110は、沖側に臨んで凹状に湾曲し
た波受面112と、例えば水平な天面114とを有し、
波受面112には第1開口116が、天面114には第
2開口118が形成され、両開口116,118は潮吹
き通路120を介して連通している。なお、波受面11
2を水平面に対して鈍角となる角度で傾斜して配置する
こともできる。
【0043】本実施例では、図8(A),(B)に示す
ように、1つのブロックを構成するケーソン10の波受
面112に複数例えば3つの第1開口116を形成し、
天面114にも同様に3つの第2開口118を形成して
いる。第1,第2開口116,118を連通する潮吹き
通路120はラッパ状をなし、第1開口116より第2
開口118に向かうに従い、円形の孔横断面積が連続し
て小さくなるように形成されている。このような潮吹き
通路120を形成するため、図7の断面上で表れる潮吹
き通路120の下縁122は、例えば一定の曲率にて1
/4の円弧長さで形成されている。一方潮吹き通路12
0の上縁124は、第1開口116側より所定長さの直
線部124aを有し、この直線部124aと第2開口1
18との間が1/4の円弧長さによる湾曲部124bと
して形成されている。
【0044】さらにケーソン110の天面114には、
垂直上方への吹出案内を行うための吹出路延長用ブロッ
ク126が、ケーソン110と一体または別体にて設け
られている。なお、天面114に開口する潮吹き通路
は、必ずしも鉛直上方に伸びるものに限らず、好ましく
は水平面に対して鈍角となる角度で後方に傾斜している
ものでも良い。さらに、この天面114上であって、か
つ、波受面112側の縁部には、波返し用ブロック12
8がケーソン110と一体または別体にて設けられてい
る。
【0045】第1開口116の開口高さ及びその大きさ
に関しては、図8(A)に示す通りである。まず、第1
開口116の下縁16aは、干潮時の平均的水面高さH
1 よりも低い位置に設定される。一方、第1開口116
の上縁16bは、満潮時の平均的水面高さH2 よりも高
い位置に設定される。換言すれば、第1開口116の中
心高さ位置をほぼ平均水面位置に設定し、第1開口11
6の直径を干満差以上の長さに設定すると良い。このよ
うに、干満の潮位をカバーできる第1開口116の径と
しては、例えば太平洋に臨んで設置する場合には最大直
径150cm以下、好ましくは130〜150cmの範囲で
十分である。太平洋よりも潮位の変化の少ない日本海側
の場合は、太平洋設置用のものを兼用できるが、日本海
に臨んで設置する専用タイプの場合には最大直径50cm
以下、好ましくは40〜50cmの範囲で十分である。
【0046】次に、このケーソン110を図1又は図5
のケーソン10に代えて配置した場合の作用について説
明する。
【0047】集波マウンド60又は70により集波され
て、ケーソン110の波受面112に沖側からの波圧力
が繰り返し作用すると、この波は波受面112で受け止
められ、岸側への波の浸入を防止することができる。
【0048】このとき、マウンド60又は70により集
波され、しかも凹状に湾曲した波受面112で第1開口
116に集束された波の圧力により、波受面112に開
口する第1開口116に海水が浸入する。この海水は、
ラッパ状の潮吹き通路120に沿って移動し、第2開口
118に向けて案内されることになる。このとき、潮吹
き通路120の断面形状が、第1開孔116より第2開
口118に向かうに従い連続的に断面積が小さくなる形
状であるため、潮吹き通路120に沿って案内された海
水が加速されることになる。さらに、この潮吹き通路1
20は、第1開口116より水平方向に浸入した海水を
徐々に鉛直上方に向かうように案内するため、第2開口
118からは海水が潮吹き又は噴水の如く吹き上げられ
た形で吹き出すことになる。特に、本実施例では潮吹き
通路120の下縁122および上縁124の湾曲部12
4bを1/4の円弧部分として利用するため、第2開口
18より吹き出す海水はその円弧の接線方向である鉛直
上方に向けて遠心力が付与された形で吹き上げられるこ
とになる。従って、第2開口118よりかなりの高さの
潮吹き又は噴水を実現することが可能となる。
【0049】特に、第1開口116が干満時に拘らず常
に水没しない位置に開口し、波浪エネルギーの高い水面
付近の海水を第1開口116に導けるようにしているの
で、効率的にしかも年間を通して海水を吹き上げること
ができる。
【0050】ここで、第1開口の設置高さの異なる複数
種の潮吹き通路を設ける場合には、干満時いずれの場合
にも少なくとも一つの潮吹き通路を利用して噴水を吹き
上げる必要上、最上位置の第1開口の上端が満潮時の水
面H2 より高く、かつ、最下位置の第1開口の下縁を干
潮時の水面高さH1 よりも低くする必要がある。このこ
とを考慮すると、ケーソン幅方向の同一箇所の上下に2
つの第1開口を形成するよりもむしろ、図8(C)に示
す構造とするとさらに良い。これは、高さ位置の異なる
例えば2種の第1開口130a,130bを、ケーソン
幅方向の位置をもずらして配置した場合を示している。
こうすると、各第1開口130a,130bの2つで、
同図に示す干潮時の平均的水面高さ位置H1 と満潮時の
平均的水面高さ位置H2 をカバーし易くなる。これによ
り、上述した潮位に対応しやすい構造を実現できる。
【0051】なお、図6に示す防波構造として導波型潮
吹き構造体を用いる場合には、上記ケーソン110の波
受面112を凹状に湾曲させずに平面とすれば良い。
【0052】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が
可能である。
【0053】上記の各実施例は、ケーソン10を中央突
堤50または70の先端側に配置したいわゆる離岸タイ
プとして構成したが、護岸タイプとして構成することも
できる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
自然力である波浪エネルギーを波受面の開口形成領域に
集束させ、さらには集波マウンドにより波受面の前方に
集束させることで、効果的に海水を吹き上げることがで
きる潮吹き防波構造体及びそれを用いた防波構造を実現
でき、ウォーターフロントでの親水性を各段に高めるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る防波構造体の概略平
面図である。
【図2】図1の防波構造に適用されるエアピストン型潮
吹き防波構造体の概略断面図である。
【図3】(A)は図2に示す構造体の正面図、(B)は
その平面図である。
【図4】図1の防波構造の概略縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る防波構造の概略平面
図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る防波構造の概略平面
図である。
【図7】図1、図5の防波構造に適用される導波型潮吹
き防波構造体の概略断面図である。
【図8】(A)は図7に示す構造体の平面図、(B)は
複数の第1開口を同一高さとした図7の構造体の正面
図、(C)は複数の第1開口の高さを異ならせた図7の
構造体の正面図である。
【符号の説明】
10、80,110 防波構造体(ケーソン) 12、82、112 波受面 14、114 上面 16 空洞部 16a テーパ状部分 16b 背面 18 貫通孔 20、120 潮吹き通路 60、70、90 集波マウンド 116、130 第1開口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 敏文 東京都中央区京橋1丁目7番1号 戸田建 設株式会社内 (72)発明者 西山 桂司 東京都中央区京橋1丁目7番1号 戸田建 設株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海水を取り込む一又は複数の開口を有す
    る波受面と、 前記開口から取り込まれた海水を、波圧力によって上方
    に吹き出す潮吹き通路と、を有し、 前記波受面は、その少なくとも両側端を中心よりも前方
    に突出させて横断面が凹状に湾曲していることを特徴と
    する潮吹き防波構造体。
  2. 【請求項2】 海水を取り込む一又は複数の開口を有す
    る波受面と、 前記開口から取り込まれた海水を、波圧力によって上方
    に吹き出す潮吹き通路と、を有する構造体を一ブロック
    とし、 複数の前記ブロックを、各波受面を一列に整列させて横
    並び配置し、 整列された複数の波受面は、少なくとも両側端の前記ブ
    ロックの波受面を中心の前記ブロックの波受面よりも前
    方に突出させて、各波受面を連ねた全体の横断面が凹状
    に湾曲していることを特徴とする潮吹き防波構造体。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の防波構造体と、 この防波構造体が設置される水域底部の基礎工事領域
    に、沖に向かうに従い水深が深くなる勾配を持ち、前記
    構造体の前記波受面に達する以前に波を砕波させるマウ
    ンドと、を有し、 前記マウンドは、前記構造体の前記波受面より沖に向け
    て略放射状に形成されたことを特徴とする防波構造。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の防波構造体を一ブロッ
    クとし、複数の前記ブロックを、各波受面を一列に整列
    させて横並び配置し、この複数ブロックから成る防波構
    造体が設置される水域底部の基礎工事領域に、沖に向か
    うに従い水深が深くなる勾配を持ち、前記構造体の前記
    波受面に達する以前に波を砕波させるマウンドを設け、
    このマウンドの両端側は、両端の前記ブロックよりもさ
    らに外側に向けて略放射状に形成されていることを特徴
    とする防波構造。
  5. 【請求項5】 請求項2に記載の複数ブロックから成る
    防波構造体と、 この防波構造体が設置される水域底部の基礎工事領域
    に、沖に向かうに従い水深が深くなる勾配を持ち、前記
    構造体の前記波受面に達する以前に波を砕波させるマウ
    ンドと、を有し、 前記マウンドの両端側は、両端の前記ブロックよりもさ
    らに外側に向けて略放射状に形成されていることを特徴
    とする防波構造。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008190259A (ja) * 2007-02-06 2008-08-21 Chugoku Electric Power Co Inc:The 消波型ケーソン、および消波型ケーソンに用いるパラペット
JP2015135094A (ja) * 2014-01-20 2015-07-27 協立電機株式会社 越波式波力発電装置

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JP2008190259A (ja) * 2007-02-06 2008-08-21 Chugoku Electric Power Co Inc:The 消波型ケーソン、および消波型ケーソンに用いるパラペット
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