JPH05265488A - ピッチ抽出方法 - Google Patents

ピッチ抽出方法

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JPH05265488A
JPH05265488A JP9226092A JP9226092A JPH05265488A JP H05265488 A JPH05265488 A JP H05265488A JP 9226092 A JP9226092 A JP 9226092A JP 9226092 A JP9226092 A JP 9226092A JP H05265488 A JPH05265488 A JP H05265488A
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淳 松本
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ブロック取り出し処理部10で取り出された
入力音声信号はサブブロック分割処理部15により複数
のサブブロックに分割される。ピークレベル検出部16
は、上記入力音声信号の複数のサブブロックよりサブブ
ロック毎のピークレベルを抽出する。最大ピークレベル
検出部17は、上記サブブロック毎のピークレベルから
サブブロック毎の最大ピークレベルを検出する。比較部
18は、サブブロック毎の最大ピークレベルを比較し、
比較結果をクリッピングレベル制御部19に送る。クリ
ッピングレベル制御部19は、センタクリップ処理部1
2のクリッピングレベルをブロック内で段階的あるいは
連続的に変化させる。 【効果】 音声の立ち上がり、立ち下がり等のピークレ
ベルの変動が急激であっても確実なピッチ抽出が可能と
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、入力される音声信号波
形からピッチを抽出するピッチ抽出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】音声は、音の性質として、有声音と無声
音に区別される。有声音は声帯振動を伴う音声で周期的
な振動として観測される。無声音は声帯振動に伴わない
音声で非周期的な雑音として観測される。通常の音声で
は大部分が有声音であり、無声音は無声子音と呼ばれる
特殊な子音のみである。有声音の周期は声帯振動の周期
で決まり、これをピッチ周期、その逆数をピッチ周波数
という。これらピッチ周期及びピッチ周波数は声の高低
やイントネーションを決める重要な要因となる。したが
って、原音声波形から正確にピッチ周期を抽出(以下、
ピッチ抽出という)することは、音声を分析し合成する
音声合成の過程のなかでも重要となる。
【0003】上記ピッチ抽出の方法(以下、ピッチ抽出
方法という)は、波形の上で周期的ピークを検出する波
形処理法、相関処理が波形の位相歪みに強いことを利用
した相関処理法、スペクトルの周期的周波数構造を利用
したスペクトル処理法とに分類される。
【0004】上記相関処理法の一方法である自己相関法
について図11を用いて以下に説明する。図11のAは
300 サンプル分の入力音声波形x(n) であり、図11の
BはAで示したx(n) の自己相関関数を求めた波形であ
る。また、図11のCはAに示されたクリッピングレベ
ルCL でセンタクリップした波形C[ x( n)] であり、
図4のDはCで示したC[ x( n)] の自己相関を求めた
波形Rc (k) である。
【0005】上述したように図11のAに示す300 サン
プル分の入力音声波形x(n) の自己相関関数を求める
と、図11のBに示す波形Rx (k) となる。この図11
のBに示す自己相関関数の波形Rx (k) では、ピッチ周
期のところに強いピークが見られる。しかし、声道の減
衰振動による余分なピークも多数見られる。この余分な
ピークを減少させるために、図11のAに示したクリッ
ピングレベル±CL より絶対値として小さい波形を潰し
た図11のCに示すセンタクリップ波形C[ x(n)]から
自己相関関数を出すことが考えられる。この場合、図1
1のCに示すセンタクリップされた波形C[ x(n)]に
は、もとのピッチ間隔でいくつかのパルスが残っている
だけになっており、そこから求めた自己相関関数R
c (k) の波形には、余分なピークが少なくなっている。
【0006】上記ピッチ抽出により得られたピッチは、
上述したように声の高低やイントネーションを決める重
要な要因となり、原音声波形からの正確なピッチ抽出
は、例えば、音声波形の高能率符号化に適用される。
【0007】
【発明が解決しようとうする課題】ところで、従来、入
力音声波形の自己相関のピークからピッチを求める場
合、センタクリップにより求めるべきピークが鋭く出る
ようにクリッピングレベルを設定していた。具体的に
は、微小なレベルの信号がクリッピングによって欠落し
てしまわないようにクリッピングレベルを低く設定して
いた。
【0008】したがって、クリッピングレベルが低い時
に、音声の立ち上がり時等入力レベルの変動が同一フレ
ーム内で急激であった場合には、入力レベルが大きくな
った時点で、余分なピークが発生することになり、殆ん
どクリッピングの効果が得られず、ピッチ抽出は不安定
になる虞れがある。
【0009】そこで、本発明に係るピッチ抽出方法は、
上記実情に鑑みてなされたものであり、同一フレームで
入力音声波形のレベルが急激に変化した場合であって
も、確実なピッチ抽出が可能となるピッチ抽出方法に関
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るピッチ抽出
方法は、入力される音声信号波形をブロック単位で取り
出し、センタクリップされた出力信号に基づいてピッチ
を抽出するピッチ抽出方法において、該ブロック内を複
数のサブブロックに分割して各サブブロック毎にクリッ
プ用レベルを求め、入力信号をセンタクリップする際に
上記各サブブロック毎に求められたクリップ用レベルに
基づいて上記ブロック内でクリッピングレベルを変化さ
せることを特徴として上記課題を解決する。
【0011】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記ブロック内の複数のサブブロックの内で隣接するサブ
ブロック間のピークレベルの変動が大きいときにセンタ
クリップの際のクリッピングレベルをブロック内で変化
させることを特徴として上記課題を解決する。
【0012】ここで、センタクリップの際のクリッピン
グレベルは、ブロック内で段階的に変化させてもよく、
または連続的に変化させてもよい。
【0013】
【作用】本発明に係るピッチ抽出方法は、ブロック単位
で取り出した入力音声信号波形を複数のサブブロックに
分割し、該各サブブロック毎に求めたクリップ用レベル
に基づいて上記ブロック内でクリッピングレベルを変化
させることにより確実なピッチ抽出ができる。
【0014】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記複数のサブブロックの内で隣接するサブブロック間の
ピークレベルの変動が大きいとき上記ブロック内でクリ
ッピングレベルを変化させることにより確実なピッチ抽
出ができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明に係るピッチ抽出方法の実施例
を図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係るピ
ッチ抽出方法の実施例の機能を説明するための機能ブロ
ック図である。この図1において、本実施例は、入力端
子1から供給される入力音声信号をブロック単位で取り
出すブロック取り出し処理部10と、このブロック取り
出し処理部10で取り出された入力音声信号の1ブロッ
クからクリッピングレベルを設定するクリッピングレベ
ル設定部11と、このクリッピングレベル設定部11に
より設定されたクリッピングレベルで入力音声信号の1
ブロックをセンタクリップ処理するセンタクリップ処理
部12と、このセンタクリップ処理部12からのセンタ
クリップ波形から自己相関を計算する自己相関計算部1
3と、この自己相関計算部13からの自己相関波形から
ピッチを算出するピッチ算出部14とを有する。
【0016】ここで、上記クリッピングレベル設定部1
0は、上記ブロック取り出し処理部10から供給される
入力音声信号の1ブロックを複数のサブブロックに分割
する(本実施例では前半部及び後半部の二つのサブブロ
ックに分割している)サブブロック分割処理部15と、
このサブブロック分割処理部15で分割された入力音声
信号の前半部及び後半部からそれぞれのサブブロックで
のピークレベルを抽出するピークレベル抽出部16と、
このピークレベル抽出部16で抽出されたピークレベル
から該前半部内及び後半部内における最大のピークレベ
ル(以下、最大ピークレベルという)を検出する最大ピ
ークレベル検出部17と、この最大ピークレベル検出部
17からの前半部内最大ピークレベルと後半部内最大ピ
ークレベルとをある条件の基に比較する比較部18と、
この比較部18からの比較結果と上記最大ピーク検出部
17からの二つの最大ピークとからクリッピングレベル
を設定し、上記センタクリップ処理部12を制御するク
リッピングレベル制御部19とを有する。
【0017】上記ピークレベル抽出部16は、サブブロ
ックピークレベル抽出部16a、16bとからなる。該
サブブロックピークレベル抽出部16aは、上記サブブ
ロック分割処理部15で分割された前半部からピークレ
ベルを抽出する。また、該サブブロックピークレベル抽
出部16bは、上記サブブロック分割処理部15で分割
された後半部からピークレベルを抽出する。
【0018】また、上記最大ピーク検出部17は、サブ
ブロック最大ピークレベル検出部17a、17bとから
なる。該サブブロック最大ピークレベル検出部17a
は、上記サブブロックピークレベル抽出部16aで抽出
された前半部のピークレベルから前半部の最大ピークレ
ベルを検出する。また、該サブブロック最大ピークレベ
ル検出部17bは、上記サブブロックピークレベル抽出
部16bで抽出された後半部のピークレベルから後半部
の最大ピークレベルを検出する。
【0019】次に、図1で示した機能部ブロックからな
る本実施例の動作を図2に示すフローチャートと図3に
示す波形図を用いて説明する。
【0020】先ず、図2のフローチャートが開始される
と、ステップS1で入力音声信号波形をブロック単位で
取り出す。具体的には、入力音声信号に窓関数を乗じ、
一部重複(オーバーラップ)させ、入力音声信号波形の
切り出しを行い、図3のAに示される1フレーム(25
6サンプル)の入力音声信号波形を得、そして、ステッ
プS2に進む。
【0021】ステップS2では、上記ステップS1で取
り出された入力音声信号の1ブロックをさらに複数のサ
ブブロックに分割する。例えば、図3のAに示す1ブロ
ックの入力音声信号波形では、n=0、1、・・・、1
27を前半部、n=128、129、・・・、255を
後半部としている。そして、ステップS3に進む。
【0022】ステップS3では、上記ステップS2で分
割された前半部内及び後半部内の入力音声信号波形のピ
ークレベルを抽出する。これが図1のピークレベル抽出
部16の動作である。
【0023】ステップS4では、上記ステップS3で抽
出した前半部内及び後半部内のピークレベルからそれぞ
れのサブブロック内における最大のピークレベルP1
びP2 を検出する。これが図1の最大ピークレベル検出
部17の動作である。
【0024】ステップS5では、上記ステップS4で検
出された前半部内及び後半部内の最大ピークレベルP1
及びP2 をある条件の基に比較し、入力音声信号波形の
レベルの変動が1フレーム内で激しいか否かを判別す
る。ここでいうある条件とは、前半部の最大ピークレベ
ルP1 が後半部の最大ピークレベルP2 に係数k(0<
k<1)を乗じた値よりも小さい、もしくは、前半部の
最大ピークレベルP1 に係数k(0<k<1)を乗じた
値より後半部の最大ピークレベルP2 が小さい、という
ものである。したがって、このステップS5では、P1
<k・P2 もしくは、k・P1 >P2 という条件の基に
前半部と後半部の最大ピークレベルP1 及びP2 を比較
している。これが図1の比較部18の動作である。この
ステップS5で上記条件の基に前半部と後半部の最大ピ
ークレベルP1 及びP2 を比較した結果、入力音声信号
のレベルの変動が1フレーム内で激しいと判別される
(YES)とステップS6に進み、入力音声信号のレベ
ルの変動が1フレーム内で激しくない(NO)と判別さ
れるとステップS7に進む。
【0025】ステップS6では、最大レベルの変動が激
しいという上記ステップS5での判別結果を受け、クリ
ッピングレベルを異ならせて算出する。例えば、図3の
Bにおいて、前半部(0≦n≦127)でのクリップレ
ベルをk・P1 、後半部(128≦n≦255)でのク
リップレベルをk・P2 と設定している。
【0026】一方、ステップS7では、入力音声信号の
レベルの変動が1ブロック内で激しくないという上記ス
テップS5での判別結果を受け、クリッピングレベルを
統一して算出する。例えば、最大ピークレベルP1 と、
最大ピークレベルP2 のいずれか小さい方にkを乗じた
レベル(例えばk・P1 あるいはk・P2 )をクリッピ
ングして設定する。
【0027】このステップS6とステップS7が図1の
クリッピングレベル制御部19の動作である。
【0028】そして、ステップS8では、上記ステップ
S6もしくはステップS7で設定されたクリッピングレ
ベルで入力音声波形の1ブロックのセンタクリップ処理
を行う。これが図1のセンタクリップ処理部11の動作
である。そして、ステップS9に進む。
【0029】ステップS9では、上記ステップS8で行
われたセンタクリップ処理により得た、センタクリップ
波形から自己相関関数を計算する。これが図1の自己相
関計算部12の動作である。そして、ステップS10に
進む。
【0030】ステップS10では、上記ステップS9で
求められた自己相関関数からピッチを抽出する。これが
図1のピッチ抽出手段14の動作である。
【0031】上記図3のAは、N=0、1、・・・、2
55の256サンプルを1ブロックとした入力音声波形
を示した図であり、N=0、1、・・・127までを前
半部、N=128、129・・・、255までを後半部
とし、波形の絶対値の最大ピークレベルを、前半部では
N=0、1、・・99までの100サンプル、後半部で
はN=156、157・・255までの100サンプル
内で求め、それぞれP1 、P2 としている。ここで、例
えば図3のAに示すようにP1 =1、P2 =3のとき、
上記kの値を0.6 とすると、P1 (=1)<k・P
2 (=1.8 )となる。このときには、入力音声信号波形
のレベル変動が激しいとして、上記前半部のクリップレ
ベルをk・P1 =0.6 とし、後半部のクリップレベルを
k・P2 =1.8 とする。このクリッピングレベルを示し
たのが図3のBである。この図3のBで示したクリッピ
ングレベルでセンタクリップ処理した波形が図3のCに
表される波形である。この図3のCで示したセンタクリ
ッパ処理された波形の自己相関関数をとると図3のDに
示すようになる。そして、この図3のDからピッチが算
出できる。
【0032】ここで上記センタクリップ処理部12での
クリッピングレベルは、上述したようにブロック内で段
階的変化させるだけでなく、図3のBに破線で示すよう
に連続的に変化させるようにしてもよい。
【0033】次に、本発明に係るピッチ抽出方法を適用
できる音声信号の合成分析符号化装置(いわゆるボコー
ダ)の一種のMBE(Multiband Excitation: マルチバ
ンド励起)ボコーダについて、図面を参照しながら説明
する。このMBEボコーダは、D. W. Griffin and J.
S. Lim,"Multiband Excitation Vocoder," IEEE Trans.
Acoustics,Speech,and Signal Processing, vol.36, N
o.8, pp.1223-1235, Aug.1988 に開示されているもので
あり、従来のPARCOR(PARtial auto-CORrelatio
n: 偏自己相関)ボコーダ等では、音声のモデル化の際
に有声音区間と無声音区間とをブロックあるいはフレー
ム毎に切り換えていたのに対し、MBEボコーダでは、
同時刻(同じブロックあるいはフレーム内)の周波数軸
領域に有声音(Voiced)区間と無声音(Unvoiced)区間
とが存在するという仮定でモデル化している。
【0034】図4は、上記MBEボコーダに本発明を適
用した実施例の全体の概略構成を示すブロック図であ
る。この図4において、入力端子101には音声信号が
供給されるようになっており、この入力音声信号は、H
PF(ハイパスフィルタ)等のフィルタ102に送られ
て、いわゆるDC(直流)オフセット分の除去や帯域制
限(例えば200〜3400Hzに制限)のための少なく
とも低域成分(200Hz以下)の除去が行われる。この
フィルタ102を介して得られた信号は、ピッチ抽出部
103及び窓かけ処理部104にそれぞれ送られる。ピ
ッチ抽出部103では、入力音声信号データが所定サン
プル数N(例えばN=256)単位でブロック分割され
(あるいは方形窓による切り出しが行われ)、このブロ
ック内の音声信号についてのピッチ抽出が行われる。こ
のような切り出しブロック(256サンプル)を、例え
ば図5のAに示すようにLサンプル(例えばL=16
0)のフレーム間隔で時間軸方向に移動させており、各
ブロック間のオーバラップはN−Lサンプル(例えば9
6サンプル)となっている。また、窓かけ処理部104
では、1ブロックNサンプルに対して所定の窓関数、例
えばハミング窓をかけ、この窓かけブロックを1フレー
ムLサンプルの間隔で時間軸方向に順次移動させてい
る。
【0035】このような窓かけ処理を数式で表すと、 xw (k,q) =x(q) w(kL-q) ・・・(1) となる。この(1)式において、kはブロック番号を、
qはデータの時間インデックス(サンプル番号)を表
し、処理前の入力信号のq番目のデータx(q) に対して
第kブロックの窓(ウィンドウ)関数w(kL-q)により窓
かけ処理されることによりデータxw (k,q) が得られる
ことを示している。ピッチ抽出部103内での図5のA
に示すような方形窓の場合の窓関数wr (r) は、 wr (r) =1 0≦r<N ・・・(2) =0 r<0,N≦r また、窓かけ処理部104での図5のBに示すようなハ
ミング窓の場合の窓関数wh (r) は、 wh (r) = 0.54 − 0.46 cos(2πr/(N-1)) 0≦r<N ・・・(3) =0 r<0,N≦r である。このような窓関数wr (r) あるいはwh (r) を
用いるときの上記(1)式の窓関数w(r) (=w(kL-
q))の否零区間は、 0≦kL−q<N これを変形して、 kL−N<q≦kL 従って、例えば上記方形窓の場合に窓関数wr (kL-q)=
1となるのは、図6に示すように、kL−N<q≦kL
のときとなる。また、上記(1)〜(3)式は、長さN
(=256)サンプルの窓が、L(=160)サンプル
ずつ前進してゆくことを示している。以下、上記(2)
式、(3)式の各窓関数で切り出された各N点(0≦r
<N)の否零サンプル列を、それぞれxwr(k,r) 、xwh
(k,r) と表すことにする。
【0036】窓かけ処理部104では、図7に示すよう
に、上記(3)式のハミング窓がかけられた1ブロック
256サンプルのサンプル列xwh(k,r) に対して179
2サンプル分の0データが付加されて(いわゆる0詰め
されて)2048サンプルとされ、この2048サンプ
ルの時間軸データ列に対して、直交変換部105により
例えばFFT(高速フーリエ変換)等の直交変換処理が
施される。
【0037】ピッチ抽出部103では、上記xwr(k,r)
のサンプル列(1ブロックNサンプル)に基づいてピッ
チ抽出が行われる。このピッチ抽出法には、上述したよ
うに時間波形の周期性や、スペクトルの周期的周波数構
造や、自己相関関数を用いるもの等が知られているが、
本装置では、上述したようにセンタクリップ波形の自己
相関法を採用している。このときのブロック内でのセン
タクリップレベルについては、1ブロックにつき1つの
クリップレベルを設定してもよいが、本装置では上述し
たようにブロックを細分割した各部(各サブブロック)
の信号のピークレベル等を検出し、これらの各サブブロ
ックのピークレベル等の差が大きいときに、ブロック内
でクリップレベルを段階的にあるいは連続的に変化させ
るようにしている。
【0038】このセンタクリップ波形の自己相関データ
のピーク位置に基づいてピーク周期を決めている。この
とき、現在フレームに属する自己相関データ(自己相関
は1ブロックNサンプルのデータを対象として求められ
る)から複数のピークを求めておき、これらの複数のピ
ークの内の最大ピークが所定の閾値以上のときには該最
大ピーク位置をピッチ周期とし、それ以外のときには、
現在フレーム以外のフレーム、例えば前後のフレームで
求められたピッチに対して所定の関係を満たすピッチ範
囲内、例えば前フレームのピッチを中心として±20%
の範囲内にあるピークを求め、このピーク位置に基づい
て現在フレームのピッチを決定するようにしている。こ
のピッチ抽出部103ではオープンループによる比較的
ラフなピッチのサーチが行われ、抽出されたピッチデー
タは高精度(ファイン)ピッチサーチ部106に送られ
て、クローズドループによる高精度のピッチサーチ(ピ
ッチのファインサーチ)が行われる。
【0039】高精度(ファイン)ピッチサーチ部106
には、ピッチ抽出部103で抽出された整数(インテジ
ャー)値の粗(ラフ)ピッチデータと、直交変換部10
5により例えばFFTされた周波数軸上のデータとが供
給されている。この高精度ピッチサーチ部106では、
上記粗ピッチデータ値を中心に、0.2〜0.5きざみで±
数サンプルずつ振って、最適な小数点付き(フローティ
ング)のファインピッチデータの値へ追い込む。このと
きのファインサーチの手法として、いわゆる合成による
分析 (Analysis by Synthesis)法を用い、合成されたパ
ワースペクトルが原音のパワースペクトルに最も近くな
るようにピッチを選んでいる。
【0040】このピッチのファインサーチについて説明
する。先ず、上記MBEボコーダにおいては、上記FF
T等により直交変換された周波数軸上のスペクトルデー
タとしてのS(j) を S(j) =H(j) |E(j) | 0<j<J ・・・(4) と表現するようなモデルを想定している。ここで、Jは
πωs =fs /2に対応し、サンプリング周波数fs
2πωs が例えば8kHzのときには4kHzに対応する。
上記(4)式中において、周波数軸上のスペクトルデー
タS(j) が図8のAに示すような波形のとき、H(j)
は、図8のBに示すような元のスペクトルデータS(j)
のスペクトル包絡線(エンベロープ)を示し、E(j)
は、図8のCに示すような等レベルで周期的な励起信号
(エキサイテイション)のスペクトルを示している。す
なわち、FFTスペクトルS(j) は、スペクトルエンベ
ロープH(j) と励起信号のパワースペクトル|E(j) |
との積としてモデル化される。
【0041】上記励起信号のパワースペクトル|E(j)
|は、上記ピッチに応じて決定される周波数軸上の波形
の周期性(ピッチ構造)を考慮して、1つの帯域(バン
ド)の波形に相当するスペクトル波形を周波数軸上の各
バンド毎に繰り返すように配列することにより形成され
る。この1バンド分の波形は、例えば上記図7に示すよ
うな256サンプルのハミング窓関数に1792サンプ
ル分の0データを付加(0詰め)した波形を時間軸信号
と見なしてFFTし、得られた周波数軸上のある帯域幅
を持つインパルス波形を上記ピッチに応じて切り出すこ
とにより形成することができる。
【0042】次に、上記ピッチに応じて分割された各バ
ンド毎に、上記H(j) を代表させるような(各バンド毎
のエラーを最小化するような)値(一種の振幅)|Am
|を求める。ここで、例えば第mバンド(第m高調波の
帯域)の下限、上限の点をそれぞれam 、bm とすると
き、この第mバンドのエラーεm は、
【0043】
【数1】 で表せる。このエラーεm を最小化するような|Am
は、
【0044】
【数2】 となり、この(6)式の|Am |のとき、エラーεm
最小化する。このような振幅|Am |を各バンド毎に求
め、得られた各振幅|Am |を用いて上記(5)式で定
義された各バンド毎のエラーεm を求める。次に、この
ような各バンド毎のエラーεm の全バンドの総和値Σε
m を求める。さらに、このような全バンドのエラー総和
値Σεm を、いくつかの微小に異なるピッチについて求
め、エラー総和値Σεm が最小となるようなピッチを求
める。
【0045】すなわち、上記ピッチ抽出部103で求め
られたラフピッチを中心として、例えば 0.25 きざみで
上下に数種類ずつ用意する。これらの複数種類の微小に
異なるピッチの各ピッチに対してそれぞれ上記エラー総
和値Σεm を求める。この場合、ピッチが定まるとバン
ド幅が決まり、上記(6)式より、周波数軸上データの
パワースペクトル|S(j) |と励起信号スペクトル|E
(j) |とを用いて上記(5)式のエラーεm を求め、そ
の全バンドの総和値Σεm を求めることができる。この
エラー総和値Σεm を各ピッチ毎に求め、最小となるエ
ラー総和値に対応するピッチを最適のピッチとして決定
するわけである。以上のようにして高精度ピッチサーチ
部106で最適のファイン(例えば 0.25 きざみ)ピッ
チが求められ、この最適ピッチに対応する振幅|Am
が決定される。
【0046】以上ピッチのファインサーチの説明におい
ては、説明を簡略化するために、全バンドが有声音(Vo
iced)の場合を想定しているが、上述したようにMBE
ボコーダにおいては、同時刻の周波数軸上に無声音(Un
voiced)領域が存在するというモデルを採用しているこ
とから、上記各バンド毎に有声音/無声音の判別を行う
ことが必要とされる。
【0047】上記高精度ピッチサーチ部106からの最
適ピッチ及び振幅|Am |のデータは、有声音/無声音
判別部107に送られ、上記各バンド毎に有声音/無声
音の判別が行われる。この判別のために、NSR(ノイ
ズtoシグナル比)を利用する。すなわち、第mバンド
のNSRは、
【0048】
【数3】 と表せ、このNSR値が所定の閾値(例えば0.3)より
大のとき(エラーが大きい)ときには、そのバンドでの
|Am ||E(j) |による|S(j) |の近似が良くない
(上記励起信号|E(j) |が基底として不適当である)
と判断でき、当該バンドをUV(Unvoiced、無声音)と
判別する。これ以外のときは、近似がある程度良好に行
われていると判断でき、そのバンドをV(Voiced、有声
音)と判別する。
【0049】次に、振幅再評価部108には、直交変換
部105からの周波数軸上データ、高精度ピッチサーチ
部106からのファインピッチと評価された振幅|Am
|との各データ、及び上記有声音/無声音判別部107
からのV/UV(有声音/無声音)判別データが供給さ
れている。この振幅再評価部108では、有声音/無声
音判別部107において無声音(UV)と判別されたバ
ンドに関して、再度振幅を求めている。このUVのバン
ドについての振幅|Am UVは、
【0050】
【数4】 にて求められる。
【0051】この振幅再評価部108からのデータは、
データ数変換(一種のサンプリングレート変換)部10
9に送られる。このデータ数変換部109は、上記ピッ
チに応じて周波数軸上での分割帯域数が異なり、データ
数(特に振幅データの数)が異なることを考慮して、一
定の個数にするためのものである。すなわち、例えば有
効帯域を3400kHzまでとすると、この有効帯域が上
記ピッチに応じて、8バンド〜63バンドに分割される
ことになり、これらの各バンド毎に得られる上記振幅|
m |(UVバンドの振幅|Am UVも含む)データの
個数mMX+1も8〜63と変化することになる。このため
データ数変換部109では、この可変個数mMX+1の振幅
データを一定個数NC (例えば44個)のデータに変換
している。
【0052】ここで本装置においては、周波数軸上の有
効帯域1ブロック分の振幅データに対して、ブロック内
の最後のデータからブロック内の最初のデータまでの値
を補間するようなダミーデータを付加してデータ個数を
F 個に拡大した後、帯域制限型のKOS倍(例えば8
倍)のオーバーサンプリングを施すことによりKOS倍の
個数の振幅データを求め、このKOS倍の個数((
MX+1) ×KOS個)の振幅データを直線補間してさらに
多くのNM 個(例えば2048個)に拡張し、このNM
個のデータを間引いて上記一定個数NC (例えば44
個)のデータに変換する。
【0053】このデータ数変換部109からのデータ
(上記一定個数NC の振幅データ)がベクトル量子化部
110に送られて、所定個数のデータ毎にまとめられて
ベクトルとされ、ベクトル量子化が施される。ベクトル
量子化部110からの量子化出力データは、出力端子1
11を介して取り出される。また、上記高精度のピッチ
サーチ部106からの高精度(ファイン)ピッチデータ
は、ピッチ符号化部115で符号化され、出力端子11
2を介して取り出される。さらに、上記有声音/無声音
判別部107からの有声音/無声音(V/UV)判別デ
ータは、出力端子113を介して取り出される。これら
の各出力端子111〜113からのデータは、所定の伝
送フォーマットの信号とされて伝送される。
【0054】なお、これらの各データは、上記Nサンプ
ル(例えば256サンプル)のブロック内のデータに対
して処理を施すことにより得られるものであるが、ブロ
ックは時間軸上を上記Lサンプルのフレームを単位とし
て前進することから、伝送するデータは上記フレーム単
位で得られる。すなわち、上記フレーム周期でピッチデ
ータ、V/UV判別データ、振幅データが更新されるこ
とになる。
【0055】次に、伝送されて得られた上記各データに
基づき音声信号を合成するための合成側(デコード側)
の概略構成について、図9を参照しながら説明する。こ
の図9において、入力端子121には上記ベクトル量子
化された振幅データが、入力端子122には上記符号化
されたピッチデータが、また入力端子123には上記V
/UV判別データがそれぞれ供給される。入力端子12
1からの量子化振幅データは、逆ベクトル量子化部12
4に送られて逆量子化され、データ数逆変換部125に
送られて逆変換され、得られた振幅データが有声音合成
部126及び無声音合成部127に送られる。入力端子
122からの符号化ピッチデータは、ピッチ復号化部1
28で復号化され、データ数逆変換部125、有声音合
成部126及び無声音合成部127に送られる。また入
力端子123からのV/UV判別データは、有声音合成
部126及び無声音合成部127に送られる。
【0056】有声音合成部126では例えば余弦(cosin
e)波合成により時間軸上の有声音波形を合成し、無声音
合成部127では例えばホワイトノイズをバンドパスフ
ィルタでフィルタリングして時間軸上の無声音波形を合
成し、これらの各有声音合成波形と無声音合成波形とを
加算部129で加算合成して、出力端子130より取り
出すようにしている。この場合、上記振幅データ、ピッ
チデータ及びV/UV判別データは、上記分析時の1フ
レーム(Lサンプル、例えば160サンプル)毎に更新
されて与えられるが、フレーム間の連続性を高める(円
滑化する)ために、上記振幅データやピッチデータの各
値を1フレーム中の例えば中心位置における各データ値
とし、次のフレームの中心位置までの間(合成時の1フ
レーム)の各データ値を補間により求める。すなわち、
合成時の1フレーム(例えば上記分析フレームの中心か
ら次の分析フレームの中心まで)において、先端サンプ
ル点での各データ値と終端(次の合成フレームの先端)
サンプル点での各データ値とが与えられ、これらのサン
プル点間の各データ値を補間により求めるようにしてい
る。
【0057】以下、有声音合成部126における合成処
理を詳細に説明する。上記V(有声音)と判別された第
mバンド(第m高調波の帯域)における時間軸上の上記
1合成フレーム(Lサンプル、例えば160サンプル)
分の有声音をVm (n) とするとき、この合成フレーム内
の時間インデックス(サンプル番号)nを用いて、 Vm (n) =Am (n) cos(θm (n)) 0≦n<L ・・・(9) と表すことができる。全バンドの内のV(有声音)と判
別された全てのバンドの有声音を加算(ΣVm (n) )し
て最終的な有声音V(n) を合成する。
【0058】この(9)式中のAm (n) は、上記合成フ
レームの先端から終端までの間で補間された第m高調波
の振幅である。最も簡単には、フレーム単位で更新され
る振幅データの第m高調波の値を直線補間すればよい。
すなわち、上記合成フレームの先端(n=0)での第m
高調波の振幅値をA0m、該合成フレームの終端(n=
L:次の合成フレームの先端)での第m高調波の振幅値
をALmとするとき、 Am (n) = (L-n)A0m/L+nALm/L ・・・(10) の式によりAm (n) を計算すればよい。
【0059】次に、上記(9)式中の位相θm (n) は、 θm (0) =mωO1n+n2 m(ωL1−ω01)/2L+φ0m+Δωn ・・・(11) により求めることができる。この(11)式中で、φ0m
上記合成フレームの先端(n=0)での第m高調波の位
相(フレーム初期位相)を示し、ω01は合成フレーム先
端(n=0)での基本角周波数、ωL1は該合成フレーム
の終端(n=L:次の合成フレーム先端)での基本角周
波数をそれぞれ示している。上記(11)式中のΔωは、
n=Lにおける位相φLmがθm (L) に等しくなるような
最小のΔωを設定する。
【0060】以下、任意の第mバンドにおいて、それぞ
れn=0、n=LのときのV/UV判別結果に応じた上
記振幅Am (n) 、位相θm (n) の求め方を説明する。第
mバンドが、n=0、n=LのいずれもV(有声音)と
される場合に、振幅Am (n) は、上述した(10)式によ
り、伝送された振幅値A0m、ALmを直線補間して振幅A
m (n) を算出すればよい。位相θm (n) は、n=0でθ
m (0) =φ0mからn=Lでθm (L) がφLmとなるように
Δωを設定する。
【0061】次に、n=0のときV(有声音)で、n=
LのときUV(無声音)とされる場合に、振幅Am (n)
は、Am (0) の伝送振幅値A0mからAm (L) で0となる
ように直線補間する。n=Lでの伝送振幅値ALmは無声
音の振幅値であり、後述する無声音合成の際に用いられ
る。位相θm (n) は、θm (0) =φ0mとし、かつΔω=
0とする。
【0062】さらに、n=0のときUV(無声音)で、
n=LのときV(有声音)とされる場合には、振幅Am
(n) は、n=0での振幅Am (0) を0とし、n=Lで伝
送された振幅値ALmとなるように直線補間する。位相θ
m (n) については、n=0での位相θm (0) として、フ
レーム終端での位相値φLmを用いて、 θm (0) =φLm−m(ωO1+ωL1)L/2 ・・・(12) とし、かつΔω=0とする。
【0063】上記n=0、n=LのいずれもV(有声
音)とされる場合に、θm (L) がφLmとなるようにΔω
を設定する手法について説明する。上記(11)式で、n
=Lと置くことにより、 θm (L) =mωO1L+L2 m(ωL1−ω01)/2L+φ0m+ΔωL =m(ωO1+ωL1)L/2+φ0m+ΔωL =φLm となり、これを整理すると、Δωは、 Δω=(mod2π((φLm−φ0m) − mL(ωO1+ωL1)/2)/L ・・・(13) となる。この(13)式でmod2π(x) とは、xの主値を−
π〜+πの間の値で返す関数である。例えば、x=1.3
πのときmod2π(x) =−0.7π、x=2.3πのときmod2
π(x) =0.3π、x=−1.3πのときmod2π(x) =0.7
π、等である。
【0064】ここで、図10のAは、音声信号のスペク
トルの一例を示しており、バンド番号(ハーモニクスナ
ンバ)mが8、9、10の各バンドがUV(無声音)と
され、他のバンドはV(有声音)とされている。このV
(有声音)のバンドの時間軸信号が上記有声音合成部1
26により合成され、UV(無声音)のバンドの時間軸
信号が無声音合成部127で合成されるわけである。
【0065】以下、無声音合成部127における無声音
合成処理を説明する。ホワイトノイズ発生部131から
の時間軸上のホワイトノイズ信号波形を、所定の長さ
(例えば256サンプル)で適当な窓関数(例えばハミ
ング窓)により窓かけをし、STFT処理部132によ
りSTFT(ショートタームフーリエ変換)処理を施す
ことにより、図10のBに示すようなホワイトノイズの
周波数軸上のパワースペクトルを得る。このSTFT処
理部132からのパワースペクトルをバンド振幅処理部
133に送り、図10のCに示すように、上記UV(無
声音)とされたバンド(例えばm=8、9、10)につ
いて上記振幅|Am UVを乗算し、他のV(有声音)と
されたバンドの振幅を0にする。このバンド振幅処理部
133には上記振幅データ、ピッチデータ、V/UV判
別データが供給されている。バンド振幅処理部133か
らの出力は、ISTFT処理部134に送られ、位相は
元のホワイトノイズの位相を用いて逆STFT処理を施
すことにより時間軸上の信号に変換する。ISTFT処
理部134からの出力は、オーバーラップ加算部135
に送られ、時間軸上で適当な(元の連続的なノイズ波形
を復元できるように)重み付けをしながらオーバーラッ
プ及び加算を繰り返し、連続的な時間軸波形を合成す
る。オーバーラップ加算部135からの出力信号が上記
加算部129に送られる。
【0066】このように、各合成部126、127にお
いて合成されて時間軸上に戻された有声音部及び無声音
部の各信号は、加算部129により適当な固定の混合比
で加算して、出力端子130より再生された音声信号を
取り出す。
【0067】上記図4の音声分析側(エンコード側)の
構成や図9の音声合成側(デコード側)の構成について
は、各部をハードウェア的に記載しているが、いわゆる
DSP(ディジタル信号プロセッサ)等を用いてソフト
ウェアプログラムにより実現することも可能である。
【0068】以上より、本発明に係るピッチ抽出方法が
適用されるMBEは、ピッチ抽出部103でのピッチ抽
出をブロックを細分割した各部(各サブブロック)の信
号のピークレベル等を検出し、これらの各サブブロック
のピークレベル等の差が大きいときに、ブロック内でク
リップレベルを段階的にあるいは連続的に変化させるよ
うにしているため、ピークレベルの変動が急激であって
も確実にピッチを抽出できる。
【0069】なお、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記実施例にのみ限定されるものでなく、適用される高能
率符号化方法としても上記MBEに限定されるものでは
ない。
【0070】
【発明の効果】本発明に係るピッチ抽出方法は、入力音
声信号をブロック単位で取り出し、該ブロックを複数の
サブブロックに分割し、各サブブロック毎のピークレベ
ルに応じ、センタクリップされる信号のクリッピングレ
ベルをブロック毎に変化させることで確実なピッチ抽出
が可能となる。
【0071】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、入
力音声信号をブロック単位で取り出し、該ブロックを複
数のサブブロックに分割した内の隣接するサブブロック
のピークレベルの変動の激しいときにブロック毎のクリ
ップレベルを変化させることで音声の立ち上がり、立ち
下がり等、ピークレベルの変動が急激であっても確実な
ピッチを抽出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るピッチ抽出方法の機能ブロック図
である。
【図2】本発明に係るピッチ抽出方法の動作を説明する
ためのフローチャートである。
【図3】本発明に係るピッチ抽出方法を説明するための
波形図である。
【図4】本発明に係るピッチ抽出方法が適用される装置
の具体例としての音声信号の合成分析符号化装置の分析
側(エンコード側)の概略構成を示す機能ブロック図で
ある。
【図5】窓かけ処理を説明するための図である。
【図6】窓かけ処理と窓関数との関係を説明するための
図である。
【図7】直交変換(FFT)処理対象としての時間軸デ
ータを示す図である。
【図8】周波数軸上のスペクトルデータ、スペクトル包
絡線(エンベロープ)及び励起信号のパワースペクトル
を示す図である。
【図9】本発明に係るピッチ抽出方法が適用される装置
の具体例としての音声信号の合成分析符号化装置の合成
側(デコード側)の概略構成を示す機能ブロック図であ
る。
【図10】音声信号を合成する際の無声音合成を説明す
るための図である。
【図11】従来のピッチ抽出方法を説明するための波形
図である。
【符号の説明】
10・・・・・ブロック取り出し処理部 11・・・・・クリッピングレベル設定部 12・・・・・センタクリップ処理部 13・・・・・自己相関計算部 14・・・・・ピッチ算出部 15・・・・・サブブロック分割処理部 16・・・・・ピークレベル抽出部 17・・・・・最大ピークレベル抽出部 18・・・・・比較部 19・・・・・クリッピングレベル制御部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 ピッチ抽出方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、入力される音声信号波
形からピッチを抽出するピッチ抽出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】音声は、音の性質として、有声音と無声
音に区別される。有声音は声帯振動を伴う音声で周期的
な振動として観測される。無声音は声帯振動に伴わない
音声で非周期的な雑音として観測される。通常の音声で
は大部分が有声音であり、無声音は無声子音と呼ばれる
特殊な子音のみである。有声音の周期は声帯振動の周期
で決まり、これをピッチ周期、その逆数をピッチ周波数
という。これらピッチ周期及びピッチ周波数は声の高低
やイントネーションを決める重要な要因となる。したが
って、原音声波形から正確にピッチ周期を抽出(以下、
ピッチ抽出という)することは、音声を分析し合成する
音声合成の過程のなかでも重要となる。
【0003】上記ピッチ抽出の方法(以下、ピッチ抽出
方法という)は、波形の上で周期的ピークを検出する波
形処理法、相関処理が波形の位相歪みに強いことを利用
した相関処理法、スペクトルの周期的周波数構造を利用
したスペクトル処理法とに分類される。
【0004】上記相関処理法の一方法である自己相関法
について図11を用いて以下に説明する。図11のAは
300 サンプル分の入力音声波形x(n) であり、図11の
BはAで示したx(n) の自己相関関数を求めた波形であ
る。また、図11のCはAに示されたクリッピングレベ
ルCL でセンタクリップした波形C[ x( n)] であり、
図4のDはCで示したC[ x( n)] の自己相関を求めた
波形Rc (k) である。
【0005】上述したように図11のAに示す300 サン
プル分の入力音声波形x(n) の自己相関関数を求める
と、図11のBに示す波形Rx (k) となる。この図11
のBに示す自己相関関数の波形Rx (k) では、ピッチ周
期のところに強いピークが見られる。しかし、声道の減
衰振動による余分なピークも多数見られる。この余分な
ピークを減少させるために、図11のAに示したクリッ
ピングレベル±CL より絶対値として小さい波形を潰し
た図11のCに示すセンタクリップ波形C[ x(n)]から
自己相関関数を出すことが考えられる。この場合、図1
1のCに示すセンタクリップされた波形C[ x(n)]に
は、もとのピッチ間隔でいくつかのパルスが残っている
だけになっており、そこから求めた自己相関関数R
c (k) の波形には、余分なピークが少なくなっている。
【0006】上記ピッチ抽出により得られたピッチは、
上述したように声の高低やイントネーションを決める重
要な要因となり、原音声波形からの正確なピッチ抽出
は、例えば、音声波形の高能率符号化に適用される。
【0007】
【発明が解決しようとうする課題】ところで、従来、入
力音声波形の自己相関のピークからピッチを求める場
合、センタクリップにより求めるべきピークが鋭く出る
ようにクリッピングレベルを設定していた。具体的に
は、微小なレベルの信号がクリッピングによって欠落し
てしまわないようにクリッピングレベルを低く設定して
いた。
【0008】したがって、クリッピングレベルが低い時
に、音声の立ち上がり時等入力レベルの変動が同一フレ
ーム内で急激であった場合には、入力レベルが大きくな
った時点で、余分なピークが発生することになり、殆ん
どクリッピングの効果が得られず、ピッチ抽出は不安定
になる虞れがある。
【0009】そこで、本発明に係るピッチ抽出方法は、
上記実情に鑑みてなされたものであり、同一フレームで
入力音声波形のレベルが急激に変化した場合であって
も、確実なピッチ抽出を可能とするピッチ抽出方法の提
供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るピッチ抽出
方法は、入力される音声信号波形をブロック単位で取り
出し、センタクリップされた出力信号に基づいてピッチ
を抽出するピッチ抽出方法において、該ブロック内を複
数のサブブロックに分割して各サブブロック毎にクリッ
プ用レベルを求め、入力信号をセンタクリップする際に
上記各サブブロック毎に求められたクリップ用レベルに
基づいて上記ブロック内でクリッピングレベルを変化さ
せることを特徴として上記課題を解決する。
【0011】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記ブロック内の複数のサブブロックの内で隣接するサブ
ブロック間のピークレベルの変動が大きいときにセンタ
クリップの際のクリッピングレベルをブロック内で変化
させることを特徴として上記課題を解決する。
【0012】ここで、センタクリップの際のクリッピン
グレベルは、ブロック内で段階的に変化させてもよく、
または連続的に変化させてもよい。
【0013】
【作用】本発明に係るピッチ抽出方法は、ブロック単位
で取り出した入力音声信号波形を複数のサブブロックに
分割し、該各サブブロック毎に求めたクリップ用レベル
に基づいて上記ブロック内でクリッピングレベルを変化
させることにより確実なピッチ抽出ができる。
【0014】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記複数のサブブロックの内で隣接するサブブロック間の
ピークレベルの変動が大きいとき上記ブロック内でクリ
ッピングレベルを変化させることにより確実なピッチ抽
出ができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明に係るピッチ抽出方法の実施例
を図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係るピ
ッチ抽出方法の実施例の機能を説明するための機能ブロ
ック図である。この図1において、本実施例は、入力端
子1から供給される入力音声信号をブロック単位で取り
出すブロック取り出し処理部10と、このブロック取り
出し処理部10で取り出された入力音声信号の1ブロッ
クからクリッピングレベルを設定するクリッピングレベ
ル設定部11と、このクリッピングレベル設定部11に
より設定されたクリッピングレベルで入力音声信号の1
ブロックをセンタクリップ処理するセンタクリップ処理
部12と、このセンタクリップ処理部12からのセンタ
クリップ波形から自己相関を計算する自己相関計算部1
3と、この自己相関計算部13からの自己相関波形から
ピッチを算出するピッチ算出部14とを有する。
【0016】ここで、上記クリッピングレベル設定部
は、上記ブロック取り出し処理部10から供給される
入力音声信号の1ブロックを複数のサブブロックに分割
する(本実施例では前半部及び後半部の二つのサブブロ
ックに分割している)サブブロック分割処理部15と、
このサブブロック分割処理部15で分割された入力音声
信号の前半部及び後半部からそれぞれのサブブロックで
のピークレベルを抽出するピークレベル抽出部16と、
このピークレベル抽出部16で抽出されたピークレベル
から該前半部内及び後半部内における最大のピークレベ
ル(以下、最大ピークレベルという)を検出する最大ピ
ークレベル検出部17と、この最大ピークレベル検出部
17からの前半部内最大ピークレベルと後半部内最大ピ
ークレベルとをある条件の基に比較する比較部18と、
この比較部18からの比較結果と上記最大ピーク検出部
17からの二つの最大ピークからクリッピングレベルを
設定し、上記センタクリップ処理部12を制御するクリ
ッピングレベル制御部19とを有する。
【0017】上記ピークレベル抽出部16は、サブブロ
ックピークレベル抽出部16a、16bとからなる。該
サブブロックピークレベル抽出部16aは、上記サブブ
ロック分割処理部15で分割された前半部からピークレ
ベルを抽出する。また、該サブブロックピークレベル抽
出部16bは、上記サブブロック分割処理部15で分割
された後半部からピークレベルを抽出する。
【0018】また、上記最大ピーク検出部17は、サブ
ブロック最大ピークレベル検出部17a、17bとから
なる。該サブブロック最大ピークレベル検出部17a
は、上記サブブロックピークレベル抽出部16aで抽出
された前半部のピークレベルから前半部の最大ピークレ
ベルを検出する。また、該サブブロック最大ピークレベ
ル検出部17bは、上記サブブロックピークレベル抽出
部16bで抽出された後半部のピークレベルから後半部
の最大ピークレベルを検出する。
【0019】次に、図1で示した機能部ブロックからな
る本実施例の動作を図2に示すフローチャートと図3に
示す波形図を用いて説明する。
【0020】先ず、図2のフローチャートが開始される
と、ステップS1で入力音声信号波形をブロック単位で
取り出す。具体的には、入力音声信号に窓関数を乗じ、
一部重複(オーバーラップ)させ、入力音声信号波形の
切り出しを行い、図3のAに示される1フレーム(25
6サンプル)の入力音声信号波形を得、そして、ステッ
プS2に進む。
【0021】ステップS2では、上記ステップS1で取
り出された入力音声信号の1ブロックをさらに複数のサ
ブブロックに分割する。例えば、図3のAに示す1ブロ
ックの入力音声信号波形では、n=0、1、・・・、1
27を前半部、n=128、129、・・・、255を
後半部としている。そして、ステップS3に進む。
【0022】ステップS3では、上記ステップS2で分
割された前半部内及び後半部内の入力音声信号波形のピ
ークレベルを抽出する。これが図1のピークレベル抽出
部16の動作である。
【0023】ステップS4では、上記ステップS3で抽
出した前半部内及び後半部内のピークレベルからそれぞ
れのサブブロック内における最大のピークレベルP1
びP 2 を検出する。これが図1の最大ピークレベル検出
部17の動作である。
【0024】ステップS5では、上記ステップS4で検
出された前半部内及び後半部内の最大ピークレベルP1
及びP2 をある条件の基に比較し、入力音声信号波形の
レベルの変動が1フレーム内で激しいか否かを判別す
る。ここでいうある条件とは、前半部の最大ピークレベ
ルP1 が後半部の最大ピークレベルP2 に係数k(0<
k<1)を乗じた値よりも小さい、もしくは、前半部の
最大ピークレベルP1 に係数k(0<k<1)を乗じた
値より後半部の最大ピークレベルP2 が小さい、という
ものである。したがって、このステップS5では、P1
<k・P2 もしくは、k・P1 >P2 という条件の基に
前半部と後半部の最大ピークレベルP1 及びP2 を比較
している。これが図1の比較部18の動作である。この
ステップS5で上記条件の基に前半部と後半部の最大ピ
ークレベルP1 及びP2 を比較した結果、入力音声信号
のレベルの変動が1フレーム内で激しいと判別される
(YES)とステップS6に進み、入力音声信号のレベ
ルの変動が1フレーム内で激しくない(NO)と判別さ
れるとステップS7に進む。
【0025】ステップS6では、最大レベルの変動が激
しいという上記ステップS5での判別結果を受け、クリ
ッピングレベルを異ならせて算出する。例えば、図3の
Bにおいて、前半部(0≦n≦127)でのクリップレ
ベルをk・P1 、後半部(128≦n≦255)でのク
リップレベルをk・P2 と設定している。
【0026】一方、ステップS7では、入力音声信号の
レベルの変動が1ブロック内で激しくないという上記ス
テップS5での判別結果を受け、クリッピングレベルを
統一して算出する。例えば、最大ピークレベルP1 と、
最大ピークレベルP2 のいずれか小さい方にkを乗じた
レベル(例えばk・P1 あるいはk・P2 )をクリッピ
ングして設定する。
【0027】このステップS6とステップS7が図1の
クリッピングレベル制御部19の動作である。
【0028】そして、ステップS8では、上記ステップ
S6もしくはステップS7で設定されたクリッピングレ
ベルで入力音声波形の1ブロックのセンタクリップ処理
を行う。これが図1のセンタクリップ処理部12の動作
である。そして、ステップS9に進む。
【0029】ステップS9では、上記ステップS8で行
われたセンタクリップ処理により得た、センタクリップ
波形から自己相関関数を計算する。これが図1の自己相
関計算部13の動作である。そして、ステップS10に
進む。
【0030】ステップS10では、上記ステップS9で
求められた自己相関関数からピッチを抽出する。これが
図1のピッチ算出部14の動作である。
【0031】上記図3のAは、N=0、1、・・・、2
55の256サンプルを1ブロックとした入力音声波形
を示した図であり、N=0、1、・・・127までを前
半部、N=128、129・・・、255までを後半部
とし、波形の絶対値の最大ピークレベルを、前半部では
N=0、1、・・99までの100サンプル、後半部で
はN=156、157・・255までの100サンプル
内で求め、それぞれP 1 、P2 としている。ここで、例
えば図3のAに示すようにP1 =1、P2 =3のとき、
上記kの値を0.6 とすると、P1 (=1)<k・P
2 (=1.8 )となる。このときには、入力音声信号波形
のレベル変動が激しいとして、上記前半部のクリップレ
ベルをk・P1 =0.6 とし、後半部のクリップレベルを
k・P2 =1.8 とする。このクリッピングレベルを示し
たのが図3のBである。この図3のBで示したクリッピ
ングレベルでセンタクリップ処理した波形が図3のCに
表される波形である。この図3のCで示したセンタクリ
ッパ処理された波形の自己相関関数をとると図3のDに
示すようになる。そして、この図3のDからピッチが算
出できる。
【0032】ここで上記センタクリップ処理部12での
クリッピングレベルは、上述したようにブロック内で段
階的変化させるだけでなく、図3のBに破線で示すよう
に連続的に変化させるようにしてもよい。
【0033】次に、本発明に係るピッチ抽出方法を適用
できる音声信号の合成分析符号化装置(いわゆるボコー
ダ)の一種のMBE(Multiband Excitation: マルチバ
ンド励起)ボコーダについて、図面を参照しながら説明
する。このMBEボコーダは、D. W. Griffin and J.
S. Lim,"Multiband Excitation Vocoder," IEEE Trans.
Acoustics,Speech,and Signal Processing, vol.36, N
o.8, pp.1223-1235, Aug.1988 に開示されているもので
あり、従来のPARCOR(PARtial auto-CORrelatio
n: 偏自己相関)ボコーダ等では、音声のモデル化の際
に有声音区間と無声音区間とをブロックあるいはフレー
ム毎に切り換えていたのに対し、MBEボコーダでは、
同時刻(同じブロックあるいはフレーム内)の周波数軸
領域に有声音(Voiced)区間と無声音(Unvoiced)区間
とが存在するという仮定でモデル化している。
【0034】図4は、上記MBEボコーダに本発明を適
用した実施例の全体の概略構成を示すブロック図であ
る。この図4において、入力端子101には音声信号が
供給されるようになっており、この入力音声信号は、H
PF(ハイパスフィルタ)等のフィルタ102に送られ
て、いわゆるDC(直流)オフセット分の除去や帯域制
限(例えば200〜3400Hzに制限)のための少なく
とも低域成分(200Hz以下)の除去が行われる。この
フィルタ102を介して得られた信号は、ピッチ抽出部
103及び窓かけ処理部104にそれぞれ送られる。ピ
ッチ抽出部103では、入力音声信号データが所定サン
プル数N(例えばN=256)単位でブロック分割され
(あるいは方形窓による切り出しが行われ)、このブロ
ック内の音声信号についてのピッチ抽出が行われる。こ
のような切り出しブロック(256サンプル)を、例え
ば図5のAに示すようにLサンプル(例えばL=16
0)のフレーム間隔で時間軸方向に移動させており、各
ブロック間のオーバラップはN−Lサンプル(例えば9
6サンプル)となっている。また、窓かけ処理部104
では、1ブロックNサンプルに対して所定の窓関数、例
えばハミング窓をかけ、この窓かけブロックを1フレー
ムLサンプルの間隔で時間軸方向に順次移動させてい
る。
【0035】このような窓かけ処理を数式で表すと、 xw (k,q) =x(q) w(kL-q) ・・・(1) となる。この(1)式において、kはブロック番号を、
qはデータの時間インデックス(サンプル番号)を表
し、処理前の入力信号のq番目のデータx(q) に対して
第kブロックの窓(ウィンドウ)関数w(kL-q)により窓
かけ処理されることによりデータxw (k,q) が得られる
ことを示している。ピッチ抽出部103内での図5のA
に示すような方形窓の場合の窓関数wr (r) は、 wr (r) =1 0≦r<N ・・・(2) =0 r<0,N≦r また、窓かけ処理部104での図5のBに示すようなハ
ミング窓の場合の窓関数wh (r) は、 wh (r) = 0.54 − 0.46 cos(2πr/(N-1)) 0≦r<N ・・・(3) =0 r<0,N≦r である。このような窓関数wr (r) あるいはwh (r) を
用いるときの上記(1)式の窓関数w(r) (=w(kL-
q))の否零区間は、 0≦kL−q<N これを変形して、 kL−N<q≦kL 従って、例えば上記方形窓の場合に窓関数wr (kL-q)=
1となるのは、図6に示すように、kL−N<q≦kL
のときとなる。また、上記(1)〜(3)式は、長さN
(=256)サンプルの窓が、L(=160)サンプル
ずつ前進してゆくことを示している。以下、上記(2)
式、(3)式の各窓関数で切り出された各N点(0≦r
<N)の否零サンプル列を、それぞれxwr(k,r) 、xwh
(k,r) と表すことにする。
【0036】窓かけ処理部104では、図7に示すよう
に、上記(3)式のハミング窓がかけられた1ブロック
256サンプルのサンプル列xwh(k,r) に対して179
2サンプル分の0データが付加されて(いわゆる0詰め
されて)2048サンプルとされ、この2048サンプ
ルの時間軸データ列に対して、直交変換部105により
例えばFFT(高速フーリエ変換)等の直交変換処理が
施される。
【0037】ピッチ抽出部103では、上記xwr(k,r)
のサンプル列(1ブロックNサンプル)に基づいてピッ
チ抽出が行われる。このピッチ抽出法には、上述したよ
うに時間波形の周期性や、スペクトルの周期的周波数構
造や、自己相関関数を用いるもの等が知られているが、
本装置では、上述したようにセンタクリップ波形の自己
相関法を採用している。このときのブロック内でのセン
タクリップレベルについては、1ブロックにつき1つの
クリップレベルを設定してもよいが、本装置では上述し
たようにブロックを細分割した各部(各サブブロック)
の信号のピークレベル等を検出し、これらの各サブブロ
ックのピークレベル等の差が大きいときに、ブロック内
でクリップレベルを段階的にあるいは連続的に変化させ
るようにしている。
【0038】このセンタクリップ波形の自己相関データ
のピーク位置に基づいてピッチ周期を決めている。この
とき、現在フレームに属する自己相関データ(自己相関
は1ブロックNサンプルのデータを対象として求められ
る)から複数のピークを求めておき、これらの複数のピ
ークの内の最大ピークが所定の閾値以上のときには該最
大ピーク位置をピッチ周期とし、それ以外のときには、
現在フレーム以外のフレーム、例えば前後のフレームで
求められたピッチに対して所定の関係を満たすピッチ範
囲内、例えば前フレームのピッチを中心として±20%
の範囲内にあるピークを求め、このピーク位置に基づい
て現在フレームのピッチを決定するようにしている。こ
のピッチ抽出部103ではオープンループによる比較的
ラフなピッチのサーチが行われ、抽出されたピッチデー
タは高精度(ファイン)ピッチサーチ部106に送られ
て、クローズドループによる高精度のピッチサーチ(ピ
ッチのファインサーチ)が行われる。
【0039】高精度(ファイン)ピッチサーチ部106
には、ピッチ抽出部103で抽出された整数(インテジ
ャー)値の粗(ラフ)ピッチデータと、直交変換部10
5により例えばFFTされた周波数軸上のデータとが供
給されている。この高精度ピッチサーチ部106では、
上記粗ピッチデータ値を中心に、0.2〜0.5きざみで±
数サンプルずつ振って、最適な小数点付き(フローティ
ング)のファインピッチデータの値へ追い込む。このと
きのファインサーチの手法として、いわゆる合成による
分析 (Analysis by Synthesis)法を用い、合成されたパ
ワースペクトルが原音のパワースペクトルに最も近くな
るようにピッチを選んでいる。
【0040】このピッチのファインサーチについて説明
する。先ず、上記MBEボコーダにおいては、上記FF
T等により直交変換された周波数軸上のスペクトルデー
タとしてのS(j) を S(j) =H(j) |E(j) | 0<j<J ・・・(4) と表現するようなモデルを想定している。ここで、Jは
ωs /4π=fs /2に対応し、サンプリング周波数f
s ωs /2πが例えば8kHzのときには4kHzに対応
する。上記(4)式中において、周波数軸上のスペクト
ルデータS(j) が図8のAに示すような波形のとき、H
(j) は、図8のBに示すような元のスペクトルデータS
(j) のスペクトル包絡線(エンベロープ)を示し、E
(j) は、図8のCに示すような等レベルで周期的な励起
信号(エキサイテイション)のスペクトルを示してい
る。すなわち、FFTスペクトルS(j) は、スペクトル
エンベロープH(j) と励起信号のパワースペクトル|E
(j) |との積としてモデル化される。
【0041】上記励起信号のパワースペクトル|E(j)
|は、上記ピッチに応じて決定される周波数軸上の波形
の周期性(ピッチ構造)を考慮して、1つの帯域(バン
ド)の波形に相当するスペクトル波形を周波数軸上の各
バンド毎に繰り返すように配列することにより形成され
る。この1バンド分の波形は、例えば上記図7に示すよ
うな256サンプルのハミング窓関数に1792サンプ
ル分の0データを付加(0詰め)した波形を時間軸信号
と見なしてFFTし、得られた周波数軸上のある帯域幅
を持つインパルス波形を上記ピッチに応じて切り出すこ
とにより形成することができる。
【0042】次に、上記ピッチに応じて分割された各バ
ンド毎に、上記H(j) を代表させるような(各バンド毎
のエラーを最小化するような)値(一種の振幅)|Am
|を求める。ここで、例えば第mバンド(第m高調波の
帯域)の下限、上限の点をそれぞれam 、bm とすると
き、この第mバンドのエラーεm は、
【0043】
【数1】
【0044】で表せる。このエラーεm を最小化するよ
うな|Am |は、
【0045】
【数2】
【0046】となり、この(6)式の|Am |のとき、
エラーεm を最小化する。このような振幅|Am |を各
バンド毎に求め、得られた各振幅|Am |を用いて上記
(5)式で定義された各バンド毎のエラーεm を求め
る。次に、このような各バンド毎のエラーεm の全バン
ドの総和値Σεm を求める。さらに、このような全バン
ドのエラー総和値Σεm を、いくつかの微小に異なるピ
ッチについて求め、エラー総和値Σεm が最小となるよ
うなピッチを求める。
【0047】すなわち、上記ピッチ抽出部103で求め
られたラフピッチを中心として、例えば 0.25 きざみで
上下に数種類ずつ用意する。これらの複数種類の微小に
異なるピッチの各ピッチに対してそれぞれ上記エラー総
和値Σεm を求める。この場合、ピッチが定まるとバン
ド幅が決まり、上記(6)式より、周波数軸上データの
パワースペクトル|S(j) |と励起信号スペクトル|E
(j) |とを用いて上記(5)式のエラーεm を求め、そ
の全バンドの総和値Σεm を求めることができる。この
エラー総和値Σεm を各ピッチ毎に求め、最小となるエ
ラー総和値に対応するピッチを最適のピッチとして決定
するわけである。以上のようにして高精度ピッチサーチ
部106で最適のファイン(例えば 0.25 きざみ)ピッ
チが求められ、この最適ピッチに対応する振幅|Am
が決定される。
【0048】以上ピッチのファインサーチの説明におい
ては、説明を簡略化するために、全バンドが有声音(Vo
iced)の場合を想定しているが、上述したようにMBE
ボコーダにおいては、同時刻の周波数軸上に無声音(Un
voiced)領域が存在するというモデルを採用しているこ
とから、上記各バンド毎に有声音/無声音の判別を行う
ことが必要とされる。
【0049】上記高精度ピッチサーチ部106からの最
適ピッチ及び振幅|Am |のデータは、有声音/無声音
判別部107に送られ、上記各バンド毎に有声音/無声
音の判別が行われる。この判別のために、NSR(ノイ
ズtoシグナル比)を利用する。すなわち、第mバンド
のNSRは、
【0050】
【数3】
【0051】と表せ、このNSR値が所定の閾値(例え
ば0.3)より大のとき(エラーが大きい)ときには、そ
のバンドでの|Am ||E(j) |による|S(j) |の近
似が良くない(上記励起信号|E(j) |が基底として不
適当である)と判断でき、当該バンドをUV(Unvoice
d、無声音)と判別する。これ以外のときは、近似があ
る程度良好に行われていると判断でき、そのバンドをV
(Voiced、有声音)と判別する。
【0052】次に、振幅再評価部108には、直交変換
部105からの周波数軸上データ、高精度ピッチサーチ
部106からのファインピッチと評価された振幅|Am
|との各データ、及び上記有声音/無声音判別部107
からのV/UV(有声音/無声音)判別データが供給さ
れている。この振幅再評価部108では、有声音/無声
音判別部107において無声音(UV)と判別されたバ
ンドに関して、再度振幅を求めている。このUVのバン
ドについての振幅|Am UVは、
【0053】
【数4】
【0054】にて求められる。
【0055】この振幅再評価部108からのデータは、
データ数変換(一種のサンプリングレート変換)部10
9に送られる。このデータ数変換部109は、上記ピッ
チに応じて周波数軸上での分割帯域数が異なり、データ
数(特に振幅データの数)が異なることを考慮して、一
定の個数にするためのものである。すなわち、例えば有
効帯域を3400Hzまでとすると、この有効帯域が上記
ピッチに応じて、8バンド〜63バンドに分割されるこ
とになり、これらの各バンド毎に得られる上記振幅|A
m |(UVバンドの振幅|Am UVも含む)データの個
MX+1も8〜63と変化することになる。このため
データ数変換部109では、この可変個数MX+1の振
幅データを一定個数NC (例えば44個)のデータに変
換している。
【0056】ここで本装置においては、周波数軸上の有
効帯域1ブロック分の振幅データに対して、ブロック内
の最後のデータからブロック内の最初のデータまでの値
を補間するようなダミーデータを付加してデータ個数を
F 個に拡大した後、帯域制限型のKOS倍(例えば8
倍)のオーバーサンプリングを施すことによりKOS倍の
個数の振幅データを求め、このKOS倍の個数(( MX
) ×KOS個)の振幅データを直線補間してさらに多く
のNM 個(例えば2048個)に拡張し、このN M 個の
データを間引いて上記一定個数NC (例えば44個)の
データに変換する。
【0057】このデータ数変換部109からのデータ
(上記一定個数NC の振幅データ)がベクトル量子化部
110に送られて、所定個数のデータ毎にまとめられて
ベクトルとされ、ベクトル量子化が施される。ベクトル
量子化部110からの量子化出力データは、出力端子1
11を介して取り出される。また、上記高精度のピッチ
サーチ部106からの高精度(ファイン)ピッチデータ
は、ピッチ符号化部115で符号化され、出力端子11
2を介して取り出される。さらに、上記有声音/無声音
判別部107からの有声音/無声音(V/UV)判別デ
ータは、出力端子113を介して取り出される。これら
の各出力端子111〜113からのデータは、所定の伝
送フォーマットの信号とされて伝送される。
【0058】なお、これらの各データは、上記Nサンプ
ル(例えば256サンプル)のブロック内のデータに対
して処理を施すことにより得られるものであるが、ブロ
ックは時間軸上を上記Lサンプルのフレームを単位とし
て前進することから、伝送するデータは上記フレーム単
位で得られる。すなわち、上記フレーム周期でピッチデ
ータ、V/UV判別データ、振幅データが更新されるこ
とになる。
【0059】次に、伝送されて得られた上記各データに
基づき音声信号を合成するための合成側(デコード側)
の概略構成について、図9を参照しながら説明する。こ
の図9において、入力端子121には上記ベクトル量子
化された振幅データが、入力端子122には上記符号化
されたピッチデータが、また入力端子123には上記V
/UV判別データがそれぞれ供給される。入力端子12
1からの量子化振幅データは、逆ベクトル量子化部12
4に送られて逆量子化され、データ数逆変換部125に
送られて逆変換され、得られた振幅データが有声音合成
部126及び無声音合成部127に送られる。入力端子
122からの符号化ピッチデータは、ピッチ復号化部1
28で復号化され、データ数逆変換部125、有声音合
成部126及び無声音合成部127に送られる。また入
力端子123からのV/UV判別データは、有声音合成
部126及び無声音合成部127に送られる。
【0060】有声音合成部126では例えば余弦(cosin
e)波合成により時間軸上の有声音波形を合成し、無声音
合成部127では例えばホワイトノイズをバンドパスフ
ィルタでフィルタリングして時間軸上の無声音波形を合
成し、これらの各有声音合成波形と無声音合成波形とを
加算部129で加算合成して、出力端子130より取り
出すようにしている。この場合、上記振幅データ、ピッ
チデータ及びV/UV判別データは、上記分析時の1フ
レーム(Lサンプル、例えば160サンプル)毎に更新
されて与えられるが、フレーム間の連続性を高める(円
滑化する)ために、上記振幅データやピッチデータの各
値を1フレーム中の例えば中心位置における各データ値
とし、次のフレームの中心位置までの間(合成時の1フ
レーム)の各データ値を補間により求める。すなわち、
合成時の1フレーム(例えば上記分析フレームの中心か
ら次の分析フレームの中心まで)において、先端サンプ
ル点での各データ値と終端(次の合成フレームの先端)
サンプル点での各データ値とが与えられ、これらのサン
プル点間の各データ値を補間により求めるようにしてい
る。
【0061】以下、有声音合成部126における合成処
理を詳細に説明する。上記V(有声音)と判別された第
mバンド(第m高調波の帯域)における時間軸上の上記
1合成フレーム(Lサンプル、例えば160サンプル)
分の有声音をVm (n) とするとき、この合成フレーム内
の時間インデックス(サンプル番号)nを用いて、 Vm (n) =Am (n) cos(θm (n)) 0≦n<L ・・・(9) と表すことができる。全バンドの内のV(有声音)と判
別された全てのバンドの有声音を加算(ΣVm (n) )し
て最終的な有声音V(n) を合成する。
【0062】この(9)式中のAm (n) は、上記合成フ
レームの先端から終端までの間で補間された第m高調波
の振幅である。最も簡単には、フレーム単位で更新され
る振幅データの第m高調波の値を直線補間すればよい。
すなわち、上記合成フレームの先端(n=0)での第m
高調波の振幅値をA0m、該合成フレームの終端(n=
L:次の合成フレームの先端)での第m高調波の振幅値
をALmとするとき、 Am (n) = (L-n)A0m/L+nALm/L ・・・(10) の式によりAm (n) を計算すればよい。
【0063】次に、上記(9)式中の位相θm (n) は、 θm (m) =mωO1n+n2 m(ωL1−ω01)/2L+φ0m+Δωn ・・・(11) により求めることができる。この(11)式中で、φ0m
上記合成フレームの先端(n=0)での第m高調波の位
相(フレーム初期位相)を示し、ω01は合成フレーム先
端(n=0)での基本角周波数、ωL1は該合成フレーム
の終端(n=L:次の合成フレーム先端)での基本角周
波数をそれぞれ示している。上記(11)式中のΔωは、
n=Lにおける位相φLmがθm (L) に等しくなるような
最小のΔωを設定する。
【0064】以下、任意の第mバンドにおいて、それぞ
れn=0、n=LのときのV/UV判別結果に応じた上
記振幅Am (n) 、位相θm (n) の求め方を説明する。第
mバンドが、n=0、n=LのいずれもV(有声音)と
される場合に、振幅Am (n) は、上述した(10)式によ
り、伝送された振幅値A0m、ALmを直線補間して振幅A
m (n) を算出すればよい。位相θm (n) は、n=0でθ
m (0) =φ0mからn=Lでθm (L) がφLmとなるように
Δωを設定する。
【0065】次に、n=0のときV(有声音)で、n=
LのときUV(無声音)とされる場合に、振幅Am (n)
は、Am (0) の伝送振幅値A0mからAm (L) で0となる
ように直線補間する。n=Lでの伝送振幅値ALmは無声
音の振幅値であり、後述する無声音合成の際に用いられ
る。位相θm (n) は、θm (0) =φ0mとし、かつΔω=
0とする。
【0066】さらに、n=0のときUV(無声音)で、
n=LのときV(有声音)とされる場合には、振幅Am
(n) は、n=0での振幅Am (0) を0とし、n=Lで伝
送された振幅値ALmとなるように直線補間する。位相θ
m (n) については、n=0での位相θm (0) として、フ
レーム終端での位相値φLmを用いて、 θm (0) =φLm−m(ωO1+ωL1)L/2 ・・・(12) とし、かつΔω=0とする。
【0067】上記n=0、n=LのいずれもV(有声
音)とされる場合に、θm (L) がφLmとなるようにΔω
を設定する手法について説明する。上記(11)式で、n
=Lと置くことにより、 θm (L) =mωO1L+L2 m(ωL1−ω01)/2L+φ0m+ΔωL =m(ωO1+ωL1)L/2+φ0m+ΔωL =φLm となり、これを整理すると、Δωは、 Δω=(mod2π((φLm−φ0m) − mL(ωO1+ωL1)/2)/L ・・・(13) となる。この(13)式でmod2π(x) とは、xの主値を−
π〜+πの間の値で返す関数である。例えば、x=1.3
πのときmod2π(x) =−0.7π、x=2.3πのときmod2
π(x) =0.3π、x=−1.3πのときmod2π(x) =0.7
π、等である。
【0068】ここで、図10のAは、音声信号のスペク
トルの一例を示しており、バンド番号(ハーモニクスナ
ンバ)mが8、9、10の各バンドがUV(無声音)と
され、他のバンドはV(有声音)とされている。このV
(有声音)のバンドの時間軸信号が上記有声音合成部1
26により合成され、UV(無声音)のバンドの時間軸
信号が無声音合成部127で合成されるわけである。
【0069】以下、無声音合成部127における無声音
合成処理を説明する。ホワイトノイズ発生部131から
の時間軸上のホワイトノイズ信号波形を、所定の長さ
(例えば256サンプル)で適当な窓関数(例えばハミ
ング窓)により窓かけをし、STFT処理部132によ
りSTFT(ショートタームフーリエ変換)処理を施す
ことにより、図10のBに示すようなホワイトノイズの
周波数軸上のパワースペクトルを得る。このSTFT処
理部132からのパワースペクトルをバンド振幅処理部
133に送り、図10のCに示すように、上記UV(無
声音)とされたバンド(例えばm=8、9、10)につ
いて上記振幅|Am UVを乗算し、他のV(有声音)と
されたバンドの振幅を0にする。このバンド振幅処理部
133には上記振幅データ、ピッチデータ、V/UV判
別データが供給されている。バンド振幅処理部133か
らの出力は、ISTFT処理部134に送られ、位相は
元のホワイトノイズの位相を用いて逆STFT処理を施
すことにより時間軸上の信号に変換する。ISTFT処
理部134からの出力は、オーバーラップ加算部135
に送られ、時間軸上で適当な(元の連続的なノイズ波形
を復元できるように)重み付けをしながらオーバーラッ
プ及び加算を繰り返し、連続的な時間軸波形を合成す
る。オーバーラップ加算部135からの出力信号が上記
加算部129に送られる。
【0070】このように、各合成部126、127にお
いて合成されて時間軸上に戻された有声音部及び無声音
部の各信号は、加算部129により適当な固定の混合比
で加算して、出力端子130より再生された音声信号を
取り出す。
【0071】上記図4の音声分析側(エンコード側)の
構成や図9の音声合成側(デコード側)の構成について
は、各部をハードウェア的に記載しているが、いわゆる
DSP(ディジタル信号プロセッサ)等を用いてソフト
ウェアプログラムにより実現することも可能である。
【0072】以上より、本発明に係るピッチ抽出方法が
適用されるMBEは、ピッチ抽出部103でのピッチ抽
出をブロックを細分割した各部(各サブブロック)の信
号のピークレベル等を検出し、これらの各サブブロック
のピークレベル等の差が大きいときに、ブロック内でク
リップレベルを段階的にあるいは連続的に変化させるよ
うにしているため、ピークレベルの変動が急激であって
も確実にピッチを抽出できる。
【0073】なお、本発明に係るピッチ抽出方法は、上
記実施例にのみ限定されるものでなく、適用される高能
率符号化方法としても上記MBEに限定されるものでは
ない。
【0074】
【発明の効果】本発明に係るピッチ抽出方法は、入力音
声信号をブロック単位で取り出し、該ブロックを複数の
サブブロックに分割し、各サブブロック毎のピークレベ
ルに応じ、センタクリップされる信号のクリッピングレ
ベルをブロック毎に変化させることで確実なピッチ抽出
が可能となる。
【0075】また、本発明に係るピッチ抽出方法は、入
力音声信号をブロック単位で取り出し、該ブロックを複
数のサブブロックに分割した内の隣接するサブブロック
のピークレベルの変動の激しいときにブロック毎のクリ
ップレベルを変化させることで音声の立ち上がり、立ち
下がり等、ピークレベルの変動が急激であっても確実な
ピッチを抽出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るピッチ抽出方法の機能ブロック図
である。
【図2】本発明に係るピッチ抽出方法の動作を説明する
ためのフローチャートである。
【図3】本発明に係るピッチ抽出方法を説明するための
波形図である。
【図4】本発明に係るピッチ抽出方法が適用される装置
の具体例としての音声信号の合成分析符号化装置の分析
側(エンコード側)の概略構成を示す機能ブロック図で
ある。
【図5】窓かけ処理を説明するための図である。
【図6】窓かけ処理と窓関数との関係を説明するための
図である。
【図7】直交変換(FFT)処理対象としての時間軸デ
ータを示す図である。
【図8】周波数軸上のスペクトルデータ、スペクトル包
絡線(エンベロープ)及び励起信号のパワースペクトル
を示す図である。
【図9】本発明に係るピッチ抽出方法が適用される装置
の具体例としての音声信号の合成分析符号化装置の合成
側(デコード側)の概略構成を示す機能ブロック図であ
る。
【図10】音声信号を合成する際の無声音合成を説明す
るための図である。
【図11】従来のピッチ抽出方法を説明するための波形
図である。
【符号の説明】 10・・・・・ブロック取り出し処理部 11・・・・・クリッピングレベル設定部 12・・・・・センタクリップ処理部 13・・・・・自己相関計算部 14・・・・・ピッチ算出部 15・・・・・サブブロック分割処理部 16・・・・・ピークレベル抽出部 17・・・・・最大ピークレベル抽出部 18・・・・・比較部 19・・・・・クリッピングレベル制御部

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力される音声信号波形をブロック単位
    で取り出し、センタクリップされた出力信号に基づいて
    ピッチを抽出するピッチ抽出方法において、 該ブロック内を複数のサブブロックに分割して各サブブ
    ロック毎にクリップ用レベルを求め、入力信号をセンタ
    クリップする際に上記各サブブロック毎に求められたク
    リップ用レベルに基づいて上記ブロック内でクリッピン
    グレベルを変化させることを特徴とするピッチ抽出方
    法。
  2. 【請求項2】 上記ブロック内の複数のサブブロックの
    内で隣接するサブブロック間のピークレベルの変動が大
    きいときにセンタクリップの際のクリッピングレベルを
    ブロック内で変化させることを特徴とする請求項1記載
    のピッチ抽出方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100434538B1 (ko) * 1999-11-17 2004-06-05 삼성전자주식회사 음성의 천이 구간 검출 장치, 그 방법 및 천이 구간의음성 합성 방법
JP2011033672A (ja) * 2009-07-30 2011-02-17 Fujitsu Ltd 音声信号変換装置、音声信号変換方法および音声信号変換プログラム

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