JPH05263815A - 刃先の長いドリルネジ及びその製法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 冷間成形加工及び適正な孔径と直線性を保つ
穿孔が可能である、刃先の長いドリルネジとその成形加
工方法とを提供する。 【構成】 ヘッド端と、柄と、先端２８とを備えたネジ
素材を用い、ヘッド端に駆動ヘッド３０を加工する一
方、柄のドリル部４０に、夫々先端２８からヘッド端に
向けて長手方向に延び、かつ径方向に相互と対向する２
つの長溝３８，３８を加工する。長溝３８，３８は夫々
作業エッジ４２，４２及び末端エッジとを備え、末端エ
ッジ間の径が作業エッジ４２，４２間の径よりも大きく
形成される。次いでドリル部４０を、相互に反対方向に
作動する２つの転造ダイス間に転動させて、末端エッジ
をいずれも内方に転造成形し、転造成形後の末端エッジ
６０，６０間の径を作業エッジ間の径と実質的に等しく
なるように加工する。最後に、柄のヘッド端とドリル部
４０との間のネジ部６８にネジ山６６を加工する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、刃先の長いドリルネ
ジ及びその製法に関し、より詳言すれば、締付ネジの柄
の先端部に穿孔用の刃先の長いドリル部が添付された刃
先の長いドリルネジ及びその成形方法に関し、ドリル孔
の形成に当って、他の工具を要せず、自らの構成部分を
利用して穿孔を可能にする自己穿孔型の締付ネジ及びそ
の成形方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】刃先の長いドリルネジまたは自己穿孔型
ネジは、適用可能な状況において多くの利点を有し、そ
の利点の１つとして、締結に先だってドリル孔を形成す
る必要がないため、締結作業の前のドリル孔形成のため
の労力や工具を不要とすることが出来、この種のネジに
よってドリル孔形成のための付帯的な工数を削減でき
る。しかしながら、自己穿孔型ネジによって形成される
孔は、望ましくない結果が生じることを防止するため
に、高い精度で作成されることを要する。

【０００３】例えば、形成されるドリル孔が大きすぎる
場合には、ネジの適正な締結トルクが得られず、ドリル
孔の大きさの度合いによっては、ネジが被締結部材から
抜出してしまう可能性が生じ、明らかに、こうしたネジ
の被締結部材からの抜出は望ましくない。一方、形成さ
れるドリル孔が小さすぎる場合には、ネジ山は過剰な材
料にネジ孔を形成または過剰な材料を剪断しながら締結
されることとなり、ねじれ不良を生じたり、ネジ切れを
生じる可能性がある。ドリル孔内でのネジのネジ切れが
生じた場合、ネジ切れた先端部を取り出して新しいネジ
を挿入しなければならず、ネジ切れた先端部の取り出し
は、非常に時間のかかる作業であり、作業環境によって
はその取り出しが不可能な場合も生じる。

【０００４】さらに、自己穿孔型ネジは、切削加工によ
らず冷間加工により製造されることが望ましい。切削工
程によってネジが加工される場合には、ネジの素材の持
つ粒子構造の利点を最大限に生かすことが出来ない。一
方、冷間成形によって加工されたネジは、その粒子構造
を維持することが出来るので、材料の構造的な利点を最
大限に生かすことが出来、さらに、付加的な機械加工処
理及び切削工具を不要とし、切削加工時に生じる切り子
等の廃材が発生しない。

【０００５】例えば、ドリルネジを製造する方法及び装
置は、ベアー（Ｂａｅｒ）に付与されたアメリカ特許第
４，２４１，６３９号に示されている。ベアー特許に示
された方法及び装置は、種々の切削作業を用いて自己穿
孔型ネジを製造するものである。ベアー特許に示される
ように、切削作業は、比較的複雑で、種々の高い精度の
位置決め部材及び切削装置を必要とする。さらに、ベア
ーの処理から製造される製品は、切削作業を使用する結
果、最大の材料強度を得られないネジである。

【０００６】自己穿孔型ネジに共通の問題は、特にネジ
のドリル部が長い場合に、ネジが過大なドリル孔を形成
する傾向を持ち、こうした過大なドリル孔は、ネジのド
リル部が実質的に直線となっていない場合に生じ、実質
的に直線状となっていないドリル部は、ネジの締結中に
偏心回転して楕円状または円錐状またはその双方の孔を
形成し、こうした不規則な孔は、通常満足なネジの締結
に必要な公差に合致せず、ネジの被締結部材からの抜出
の可能性を増加させる。

【０００７】ネジ製造業者によるこうした不規則形状の
孔を制御する試みによって、従前のものと同様に形成さ
れた作業エッジと柄の部分より僅かに小径に形成された
末端エッジとを備えたドリル部が加工された。例えば、
こうした従来技術による自己穿孔型ネジは、図８及び図
９に示されている。図８及び図９で示すように、作業エ
ッジと末端エッジとを備えたネジの柄には長溝が加工さ
れている。実質的に直線状でない作業エッジは、柄の不
規則性を補償するために、図９で示すように、末端エッ
ジの径を柄の外周よりも小径としなければ、丸鑿で穿孔
したような孔が形成される。

【０００８】こうして形成されたドリル部は、末端エッ
ジを作業エッジよりも僅かに小径としている結果、真円
状とはなっていない。このため、このタイプのネジは、
締結中に二つの作業エッジのみで被締結部材の材料に接
合することとなるため、駆動された時に不安定となり、
ふらつきを生じる傾向がある。従って、不規則なドリル
部の問題を解決するための解決策によって、同様に好ま
しくない結果を生じる新たな問題が生起される。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上
記の課題を解決して、切削成形によらず、冷間成形によ
って加工され、かつ、孔径が過大にも過小にもならず、
適正に穿孔することができ、更に、穿孔時にふらつきが
生じるおそれがなく、直線的に孔を形成することが可能
な、刃先の長いドリルネジ及びその成形方法を提供する
ことである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】概括すれば、本発明によ
る刃先の長いドリルネジの形成方法は、ヘッド端と先端
を有するネジ素材の供給によって開始される。ヘッド端
には駆動ヘッドが形成され、ドリル部がヘッド端と反対
側の先端の柄に形成される。二つの長溝が、ドリル部の
柄の長手方向に、その先端からヘッド端に向けて形成さ
れる。各長溝によって作業エッジ及び末端エッジが形成
される。二つの長溝によって形成された作業エッジ及び
末端エッジはそれぞれ径方向に対向し、対向する末端エ
ッジ間の径は、対向する作業エッジ間の径よりも大きく
なっている。次に、ドリル部は、相互に反対方向に移動
する２つの転造ダイス間で末端エッジを内向きに転造成
形され、転造成形された末端エッジ間の径は、作業エッ
ジ間の径と実質的に等しいものとなる。最後に、軸部の
ヘッド端部とドリル部の間に、ネジ部が形成される。

【００１１】

【作用】本発明による刃先の長いドリルネジは、転造成
形によって、２つの長溝に設けられている一対の作業エ
ッジと一対の末端エッジがいずれもドリル部の周面と同
径の周面に沿って形成され、実質上、所定の正確な円形
形状となるように加工されているので、穿孔時に柄のふ
らつきが生ずるおそれがなく、安定した直線的な穿孔が
得られ、しかも、その穿孔の径が過大でなく過小でなく
適正に形成される。

【００１２】

【実施例】本発明は、種々の形式の実施例において実施
可能であるが、添付の図面に示すとともに以下に詳述す
る本発明の好適実施例を説明する。なお、以下に説明す
る実施例は、本発明の原理を例示するためのものであ
り、本発明は以下に説明する実施例に限定されるもので
ないことが銘記されなければならない。なお、図示の実
施例の部材間の寸法関係は、本発明の特徴を明瞭に示す
ために実際の寸法関係とは異なるものとして示されてい
る。

【００１３】図１乃至図７は、本発明による刃先の長い
ドリルネジ２０の一連の製造工程を示すものである。ネ
ジ２０の製造方法は、図１のネジ素材２２より開始され
る。ネジ素材２２は、ヘッド端２６及びワーク挿入端ま
たは先端２８を持つ細長い柄２４で構成されている。駆
動ヘッド３０は、ヘッド端２６に形成され、長手方向の
軸線３２は細長い柄２４を通って延びている。細長い柄
２４には、図１０で示す鍛造工程によって長溝をすり割
り形成する場合に変形する材料を滅少させるために、テ
ーパ部３４を設けることが可能である。

【００１４】図２の側面図及び図３の端面図で示すよう
に、ネジ素材２２は、二つの補足形状の鍛造ダイス３
６、３６（図１０参照）間で鍛造され、柄２４のドリル
部４０に径方向に対向する長溝３８、３８が加工され
る。この長溝３８は、先端２８からヘッド端２６に向か
って、長手方向軸線３２とほぼ平行に長手方向に延びて
いる。

【００１５】図３で示すように、長溝３８により、長手
方向に延びる作業エッジ４２と鍛造成形された末端エッ
ジ４４とが形成される。鍛造成形された末端エッジ４４
は、柄２４の外周４６より突出している反面、作業エッ
ジ４２は、軸２４の外周上に位置している。作業エッジ
４２及び鍛造成形された末端エッジ４４の双方は、ほぼ
長手方向軸線と平行であるが、僅かに内向きのテーパを
持つ傾向がある。鍛造成形された末端エッジ４４間の径
４８は、作業エッジ４２間の径５０よりも大きくなって
いる。換言すれば、末端エッジは細長いドリル部の所望
の仕上げ径よりも大きく加工されている。

【００１６】図７に示すネジ２０の次の形成工程におい
て、長溝を形成されたドリル部４０は、各長溝３８によ
って規定される末端エッジ４４をドリル部４０の外周内
の所定の正確で均一径に再成形するために転造加工され
る。図２及び図３により鍛造加工された柄５１は、二つ
の補足的な精密転造ダイス５２、５２によって転造成形
されて、図４及び図５で示す転造加工された柄５４を形
成する。図５で示すように、矢印５６で示す回転方向を
持つ鍛造加工された柄５１は、図１１で示す転造工程に
おいて矢印５８で示す方向に補完的なロールダイスによ
って転造成形される。転造成形方向５８は、鍛造成形さ
れた末端エッジ４４を転造成形された末端エッジ６０に
転造加工するために、ドリルの回転方向とは逆の方向と
されている。

【００１７】鍛造成形された末端エッジ４４を転造成形
された末端エッジ６０に転造成形した後に、転造成形さ
れた末端エッジ６０、６０間の径６２は、作業エッジ４
２、４２間の径と実質的に同一となる。図１１で示す転
造工程は、柄２４の外周面に位置する作業エッジ４２と
転造成形された末端エッジ６０を形成すると同時に、実
質的に直線状の柄２４を形成する。したがって、ヘッド
端２６からドリル部４０の先端２８の柄２４の全体が、
転造成形後に実質的に直線状となる。さらに、転造成形
された末端エッジ６０は、二重曲線形状を持つものとな
る。さらにいうと、転造成形された末端エッジ６０は、
柄２４の周面４６に連続する凸型曲面７０と周面４６の
内側に規定された凹型曲面７２を有している。

【００１８】転造成形された末端エッジ６０は柄２４の
周面４６に沿って形成されているので、転造形成された
末端エッジ６０が、ネジが駆動される時に安定を維持す
る支持を形成する。従って、ネジのふらつきを効果的に
防止することが出来、その結果、ネジ２０は、ふらつき
によって生じる丸鑿で形成したような孔または他の偏心
を補償するために末端エッジを小径とすることなく所望
の寸法で形成することが可能となる。所定の寸法の孔を
穿孔形成することが出来るネジ２０を形成することによ
って、孔が過大となったり過小となったりすることによ
るネジの被締結部材からの抜出や、ねじれ不良が生じる
可能性が大幅に減少される。

【００１９】図６は、ネジ２０の製造工程の次の工程を
示している。図６において、先端２８（図２及び図４に
示すように）は切断されて、ドリル点６４が形成され、
このドリル点６４は、各長溝３８によって規定される各
作業エッジ４２の終端６７に形成されるとともに、作業
エッジ４２が周面４６に接合する終端６７から内側に軸
の長手方向の軸線方向に延びる一対の切削エッジ６５を
有している。切削点６９及び切削エッジ６５が、ドリル
孔穿孔過程における切削動作を行う。切削エッジ６５、
６５は、先端２８に直径方向に実質的に対向する向きに
形成され、ネジが駆動されるときの安定性をさらに増大
させる。ドリル点６４は、成形工程における切削点６９
のゆがみを防止するために、転造工程終了後に切削形成
される。

【００２０】最後に、ネジ部６８を形成するネジ山６６
が、ドリル部４０と駆動ヘッド３０の間に形成される。
なお、必要に応して、ドリル部の一部にもネジ山を形成
することが可能である。ネジ山は、被締結部材における
所望の係合効果に応じてその大きさ、寸法が決定され
る。

【００２１】なお、上記においては、本発明の好適実施
例に関して図面を参照して説明したが、当業者において
本発明の要旨及び特許請求の範囲を逸脱することなく本
発明を種々の構成において容易に実施可能なものであ
り、本発明は、こうした変更、変形のすべてを包含する
ものである。

【００２２】

【発明の効果】本発明による刃先の長いドリルネジは、
２つの長溝に設けられている一対の作業エッジと一対の
末端エッジが、転造成形によって、いずれもドリル部の
周面と同径の周面に沿って形成され、実質上、所定の正
確な円形形状となるように加工されているので、穿孔時
に柄のふらつきが生ずるおそれがなく、安定した直線的
な穿孔が得られ、しかも、その穿孔の径が過大でなく、
また、過小でなく、適正に形成される。従って、ネジの
締付に際して、ネジの抜け出しを生ずることがなく、適
正な締付トルクを得ることができ、また、ねじれ不良と
かネジ切れを生ずるおそれがなくなった。

【００２３】更に、本発明による刃先の長いドリルネジ
は、その加工時の 鍛造及び転造において、冷間成形さ
れるので、粒子構造からみて、切削成形加工のものと対
比した場合に、材料強度が強く、材質的に優れているば
かりでなく、切削工具が不要であって、付加的な機械加
工具類を必要としない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による刃先の長いドリルネジを作成する
素材となるヘッド端とテーパー付き柄とを備えたネジ素
材の斜視図、

【図２】図１で示すネジ素材の柄のドリル部に２つの長
溝が加工された状態を示す側面図、

【図３】図２で示すネジ素材の拡大端面図であって、前
記２つの長溝によって形成された前記柄のドリル部の末
端エッジが前記柄の外周より突出した状態を示す。

【図４】図２で示すネジ素材の末端エッジが内向きに転
造形成された状態を示す側面図

【図５】図４で示すネジ素材の拡大端面図であって、末
端エッジが柄の外周の内側に位置するように転造形成さ
れた状態を示す。

【図６】図４で示すネジ素材の柄の先端部に切削点が加
工された状態を示す斜視図、

【図７】図６で示すネジ素材のヘッド部とドリル部との
間の柄にネジ山が加工された状態を示す斜視図、

【図８】従来のドリルネジのドリル部の拡大概略図、

【図９】図８で示すドリルネジの端面図、

【図１０】図２及び図３で示すネジ素材の端面図であっ
て、補足的な冷間鍛造ダイスによってドリル部に長溝が
成形加工される過程を示す。

【図１１】補足的な転造ダイスを反対方向に動かす状態
を示す斜視図であって、それは、図３で示すように柄の
外周より突出した末端エッジを柄の外周より内方へ向け
て転造形成するために使われる。

【符号の説明】

２０ 刃先の長いドリルネジ ２２ ネジ素材 ２４ 柄 ２６ ヘッド端 ２８ 先端 ３０ 駆動ヘッド ３２ 長手方向の軸線 ３４ テーパー部 ３６、３６ 鍛造ダイス ３８、３８ 長溝 ４０ ドリル部 ４２、４２ 作業エッジ ４４、４４ 末端エッジ ４６ 柄２４の外周 ４８ 末端エッジ４４、４４間の径 ５０ 作業末端エッジ４２、４２間の径 ５１ 鍛造加工された柄 ５２、５２ 転造ダイス ５４ 転造加工された柄 ５６ 矢印（鍛造加工方向） ５８ 矢印（転造成形方向） ６０、６０ 転造加工された末端エッジ ６２ 末端エッジ６０、６０間の径 ６４ ドリル点 ６５ 切削エッジ ６６ ネジ山 ６７ 終端 ６８ ネジ部 ６９ 切削点 ７０ 凸形曲線 ７２ 凹形曲線

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端に駆動ヘッドを備え、他端にドリル
   点を含むドリル部を備えた柄と、前記駆動ヘッドとドリ
   ル部との間に形成されたネジ山部とが設けられ、更に、
   前記ドリル部は互いに対向して設けられた一対の切削エ
   ッジを有する一対の長溝を備え、それらの各長溝は長手
   方向にそれぞれ突出した作業エッジとそれらに対応する
   末端エッジとを備えた、刃先の長いドリルネジの成形方
   法において、 ヘッド端と先端とを備えたネジ素材を用意し、 前記ドリル部の領域における前記ネジ素材の先端の近傍
   に、長手方向に延びる作業エッジと末端エッジとを備え
   た一対の長溝を、前記末端エッジの間の径が前記ドリル
   部の所望の最終径よりも大きく形成されるように、加圧
   成形し、 加圧成形された前記末端エッジと前記ドリル部の周面と
   が等しい径をもつ所定の正確な円形形状となるように再
   成形するために、前記加圧成形されたドリル部を更に転
   造成形し、 前記柄の先端に前記切削エッジを形成し、 前記駆動ヘッドと前記ドリル部との間の柄にネジ山を成
   形する、 ことを特徴とする刃先の長いドリルネジの製法。
2. 【請求項２】 一端に駆動ヘッドを備え、他端にドリル
   点を含むドリル部を備えた柄と、前記駆動ヘッドとドリ
   ル部との間に形成されたネジ山部とが設けられ、更に、
   前記ドリル部は互いに対向して設けられた一対の切削エ
   ッジを有する一対の長溝を備え、それらの長溝は長手方
   向にそれぞれ突出した作業エッジとそれらに対応する末
   端エッジとを備えた、刃先の長いドリルネジにおいて、 前記末端エッジ間の径が、前記作業エッジ間の径を含む
   前記ドリル部の径と実質的に等しく、所定の正確な円形
   形状に加工されている。ことを特徴とする刃先の長いド
   リルネジ。