JPH0214904Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は、被加工物に設けられた下穴内に雄ね
じ部がねじ込まれることにより、その下穴の表面
部を塑性変形させて雌ねじを成形する盛上げタツ
プに係り、特に雄ねじ部に先立つて下穴内に挿入
されるガイド、リーマ等の先行挿入部を備えたタ
ツプに関するものである。

従来技術 雌ねじを成形加工する工具としてタツプが多用
されている。かかるタツプの一種に、形成すべき
雌ねじに対応するねじ山が形成された雄ねじ部を
有し、その雄ねじ部が予め被加工物に設けられた
前記雌ねじの有効径と略同一寸法の下穴内にねじ
込まれることにより、その下穴の表面部を塑性変
形させて前記雌ねじを成形する盛上げタツプがあ
る。これは、主として展延性のある被加工物に対
して用いられ、下穴表面部にタツプのねじ山を食
い込ませることにより、その表面部に生じる塑性
流動によつて雌ねじを成形するもので、切削加工
による場合に比較して切屑を出さず、また、雌ね
じの拡大代が小さくて加工精度が安定している等
の利点がある。

一方、このような盛上げタツプにおいて、前記
下穴の内径と略同じ外径を有して前記雄ねじ部の
先端にその雄ねじ部と同一軸線上に一体的に設け
られ、その雄ねじ部に先立つて前記下穴内に挿入
される先行挿入部、例えばその雄ねじ部を下穴の
軸心に沿つて案内するガイドや下穴の内径を切削
仕上げするリーマ等を備えたものが考えられてい
る。

考案が解決しようとする問題点 しかしながら、かかる先行挿入部を備えた盛上
げタツプは、雄ねじ部による雌ねじ成形後にタツ
プを逆まわりに回転して引き抜こうとしても、先
行挿入部が成形された雌ねじのねじ山に引つ掛か
つて抜けない。このため、雌ねじ成形後にタツプ
をタツピングマシン等から取り外し、進行方向へ
通過させて取り出すようにしなければならず、作
業能率が著しく損なわれるという問題があつた。

問題点を解決するための手段 本考案は上記問題点を解決するために為された
ものであり、その要旨とするところは、前記雄ね
じ部と先行挿入部とを備えた盛上げタツプにおい
て、前記先行挿入部の外周であつて前記雄ねじ部
のねじ溝と同一螺旋上に、前記雌ねじの成形後に
前記雄ねじ部が逆まわりに回転して引き抜かれる
際にその成形された雌ねじのねじ山の通過を許容
するねじ溝を設けたことにある。

作用および考案の効果 このようにすれば、雄ねじ部による雌ねじ成形
後にタツプを逆まわりに回転して引き抜く際にお
ける、成形された雌ねじのねじ山と先行挿入部と
の引つ掛かりが、その先行挿入部に設けられたね
じ溝によつて回避され、そのままタツプを引き抜
くことが可能となる。したがつて、雌ねじ成形後
にタツプをタツピングマシン等から一々取り外す
必要がなく、作業者の負担が軽減されるとともに
作業能率が大幅に向上するのである。

実施例 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。

先ず、第１図は、本実施例に係る盛上げタツプ
（以下、単にタツプという）１０を示す図であり、
タツピングマシン等に把持されるシヤンク１２
と、ねじ山１４が形成された雄ねじ部１６とを備
えている。ねじ山１４は形成すべき雌ねじに対応
する形状を成しているが、雄ねじ部１６の先端側
においては次第に小径とされて食付き部が形成さ
れている。また、かかるねじ山１４には、図示は
省略するが１リードあたり４箇所に突起が設けら
れ、これ等の突起によつて塑性加工が行われるよ
うになつている。なお、雄ねじ部１６には潤滑油
を供給するための１本の油溝１８が軸方向に設け
られている。

上記雄ねじ部１６の先端には、その雄ねじ部１
６と同一軸線上にガイド２０が一体に形成されて
いる。このガイド２０は、雄ねじ部１６に先立つ
て被加工物に設けられた下穴内に挿入される先行
挿入部を成すもので、その外周には、雄ねじ部１
６のねじ溝２２と同一螺旋上にねじ溝２４が設け
られ、ねじ山角度θが雄ねじ部１６のねじ山１４
と等しい低ねじ山２６が形成されている。第２図
は、かかるガイド２０を先端側から示す拡大図で
ある。なお、このガイド２０にも、前記油溝１８
の延長線上に油溝２８が形成されている。

ここで、かかるタツプ１０の雄ねじ部１６の有
効径、厳密には雄ねじ部１６のうちの径寸法が最
も大きい部分における有効径は、第３図に示され
ているように、被加工物３０に形成すべき雌ねじ
３２の有効径と等しく、雄ねじ部１６の谷径は雌
ねじ３２の内径と等しい。また、ガイド２０の外
径は、上記被加工物３０に予め形成された下穴３
４の内径に適合する寸法、すなわち遊びを有する
ことなく下穴３４内へ挿入され得るように、その
下穴３４の内径よりも僅かに小さい寸法であり、
ガイド２０の有効径および谷径は、何れも雄ねじ
部１６のそれより小さい寸法である。なお、下穴
３４の内径は雌ねじ３２の有効径と略等しい。

そして、このようなタツプ１０を用いてタツプ
立てを行う際には、先ず、タツピングマシン等に
取り付けられたタツプ１０を、その先端側から下
穴３４内に挿入する。この時、雄ねじ部１６に先
立つてガイド２０が下穴３４内に挿入されるが、
ガイド２０の外径は下穴３４の内径に適合する寸
法であるため、雄ねじ部１６はそのガイド２０の
作用により、下穴３４の軸心に対して傾斜したり
偏心したりすることなく真直ぐにねじ込まれる。
これにより、下穴３４の表面部は雄ねじ部１６の
ねじ山１４によつて塑性変形され、そのねじ山１
４に対応する雌ねじ３２が成形される。

次に、タツプ１０を逆まわりに回転させて引き
抜くのであるが、ガイド２０の低ねじ山２６は雄
ねじ部１６のねじ山１４と同一の螺旋上に形成さ
れ、且つその有効径および谷径は雄ねじ部１６の
それよりも小さいため、タツプ１０の引抜き時に
ガイド２０が成形された雌ねじ３２のねじ山３６
と干渉することはない。

このように本実施例のタツプ１０は、タツプ立
てに際して雄ねじ部１６を下穴３４の軸心に沿つ
て案内するガイド２０を備えているため、精度の
高い雌ねじ３２が得られるとともに、タツプ１０
の損傷や損耗が軽減されて寿命が向上する。しか
も、雌ねじ３２の成形後にはタツプ１０を逆まわ
りに回転して引き抜くことが可能であるため、雌
ねじ３２の成形後にタツプ１０をタツピングマシ
ン等から一々取り外す必要がなく、作業者の負担
が軽減されるとともに作業能率が大幅に向上する
のである。

なお、かかるタツプ１０を用いる場合には、適
正な内径寸法の雌ねじ３２を形成する上で、下穴
３４の内径寸法が所定の要求精度を満足するよう
に仕上がつていることが望ましく、加工精度の高
いプレスパンチ等によつて下穴３４を形成した場
合にはそのままタツプ立てを行うことができるも
のの、ドリル等の切削工具による場合には、工具
による拡大代が不安定で下穴３４の径寸法がばら
つくため、タツプ立てに先立つてリーマ通し等を
行うことが望ましい。

次に、本考案の他の実施例を説明する。なお、
以下の実施例において前記第１実施例と共通する
部分には同一の符号を付して説明を省略する。

第４図の盛上げタツプ（以下、単にタツプとい
う）４０は、前記第１実施例のタツプ１０に比較
してガイド２０の替わりにリーマ４２を設けた点
が異なる。リーマ４２は、雄ねじ部１６に先立つ
て下穴３４内に挿入される先行挿入部を成すもの
で、その外周には、第５図からも明らかなように
軸方向に４本の直溝４４が形成されることによ
り、タツプ４０のねじ込み方向に向かう４個の切
刃４６が設けられている。また、このリーマ４２
には、前記ガイド２０と同様に、雄ねじ部１６の
ねじ溝２２と同一螺旋上にねじ溝４８が設けら
れ、ねじ山角度θが雄ねじ部１６のねじ山１４と
等しい低ねじ山５０が上記直溝４４により分断さ
れた状態で形成されている。なお、リーマ４２の
先端には食付き部５２が設けられている。

そして、かかるリーマ４２の外径は、タツプ立
てに要求される下穴３４の径寸法と等しく、具体
的には雌ねじ３２の有効径と略同じ寸法で前記第
１実施例のガイド２０と等しい。また、リーマ４
２の有効径および谷径も、ガイド２０と同様に雄
ねじ部１６のそれよりも小さい。なお、予め被加
工物３０に設けられる下穴３４の内径は、タツプ
立てに要求される径寸法よりもリーマ４２の削り
代に略等しい寸法だけ小さい。

このようなタツプ４０においては、雄ねじ部１
６に先立つてリーマ４２が下穴３４内に挿入され
ることにより、切刃４６によつて下穴３４の内径
が所定の寸法に切削仕上げされ、その後に雄ねじ
部１６がねじ込まれて雌ねじ３２が成形される。
このため、予め被加工物３０に設けられる下穴３
４はドリル等による荒加工であつても差支えな
く、別工程でリーマ通し等を行う必要がなくなつ
て加工コストが低減される。なお、雌ねじ３２の
成形後にタツプ４０を逆まわりに回転して引き抜
く際に、リーマ４２が成形された雌ねじ３２のね
じ山３６と干渉することなく引き出されることは
前記第１実施例におけるガイド２０と全く同様で
ある。

以上、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に
説明したが、これ等はあくまでも一つの具体例で
あり、例えば前記直溝４４をねじれ溝としたり、
低ねじ山２６，５０のねじ山角度θを雄ねじ部１
６のねじ山１４とは異なる角度としたりすること
も可能である。また、ガイド２０、リーマ４２の
有効径を雄ねじ部１６の有効径と略一致する寸法
に設定しても差支えないなど、本考案はその精神
を逸脱しない範囲において種々の変更、改良を加
えた態様で実施することができる。要するに、ガ
イド２０やリーマ４２等の先行挿入部に、成形さ
れた雌ねじのねじ山の通過を許容するねじ溝が設
けられておれば良いのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例である盛上げタツプ
の正面図である。第２図は第１図の盛上げタツプ
のガイドを先端側から示す拡大図である。第３図
は第１図の盛上げタツプの各部の寸法を説明する
図である。第４図は本考案の他の実施例に係る盛
上げタツプの要部を示す正面図である。第５図は
第４図の盛上げタツプのリーマを先端側から示す
拡大図である。 １０，４０：盛上げタツプ、１４：ねじ山、１
６：雄ねじ部、２０：ガイド（先行挿入部）、２
４，４８：ねじ溝、３０：被加工物、３２：雌ね
じ、３４：下穴、４２：リーマ（先行挿入部）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 形成すべき雌ねじに対応するねじ山が形成さ
   れ、予め被加工物に設けられた前記雌ねじの有
   効径と略同一寸法の下穴内にねじ込まれること
   により、該下穴の表面部を塑性変形させて前記
   雌ねじを成形する雄ねじ部と、前記下穴の内径
   と略同じ外径を有して前記雄ねじ部の先端に該
   雄ねじ部と同一軸線上に一体的に設けられ、該
   雄ねじ部に先立つて前記下穴内に挿入される先
   行挿入部とを備えた盛上げタツプにおいて、 前記先行挿入部の外周であつて前記雄ねじ部
   のねじ溝と同一螺旋上に、前記雌ねじの成形後
   に前記雄ねじ部が逆まわりに回転して引き抜か
   れる際に該成形された雌ねじのねじ山の通過を
   許容するねじ溝を設けたことを特徴とする盛上
   げタツプ。 (2) 前記先行挿入部は前記雄ねじ部を前記下穴の
   軸心に沿つて案内するガイドである実用新案登
   録請求の範囲第１項に記載の盛上げタツプ。 (3) 前記先行挿入部は前記下穴の内径を切削仕上
   げするリーマである実用新案登録請求の範囲第
   １項に記載の盛上げタツプ。