JPH05253323A - 鋼製メタルヘッド及びその製造方法 - Google Patents

鋼製メタルヘッド及びその製造方法

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JPH05253323A
JPH05253323A JP4085943A JP8594392A JPH05253323A JP H05253323 A JPH05253323 A JP H05253323A JP 4085943 A JP4085943 A JP 4085943A JP 8594392 A JP8594392 A JP 8594392A JP H05253323 A JPH05253323 A JP H05253323A
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星  俊治
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 大きな形状の鋼製メタルヘッドを安定して低
コストで製造することができ、スイートスポットエリア
が拡大されて方向安定性が優れたヘッドを得ることがで
きるゴルフクラブヘッドを提供する。 【構成】 C(炭素)が0.05乃至0.35重量%、
炭素当量が0.80乃至1.30(空冷の場合)又は
0.05乃至1.30(水冷の場合)であって所定の組
成の鉄系材料を、650乃至750℃の温度で焼きなま
し処理し、その後、所定のヘッド形状に成形した後、焼
入れ処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウッド及びアイアン等
のゴルフクラブのヘッドに関し、特に、鉄系材料に絞り
成形等の塑性加工を施した後、焼入れ処理することによ
りその強度を高めた鋼製メタルヘッド及びその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】メタルヘッドを鉄系材料で製造する場合
には、従来、精密鋳造法によりヘッド形状を成形してい
る。しかしながら、この精密鋳造法によりゴルフクラブ
ヘッドを成形する場合には、鋳造欠陥の発生を回避でき
ず、結晶粒も鍛造又は圧延等の加工材と比較して大きい
ため、機械的特性がこれらの加工材に比して劣るという
難点がある。
【0003】一方、圧延又は鍛造によって製造される高
強度鋼板は、種々の分野で使用されているが、この高強
度鋼板を成形加工する場合には、例えば、自動車用鋼板
のように、熱処理後の熱処理材を使用して絞り加工等に
より所定の形状に成形加工している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来の高強度鋼板は、熱処理によって加工性を犠牲にして
強度を上げているため、ウッド用のゴルフクラブヘッド
に求められるような大きな変形能がないという難点があ
る。このため、従来、圧延又は鍛造によって製造される
高強度鋼板を使用してゴルフクラブヘッドを製造するこ
とは困難である。
【0005】一方、精密鋳造法による場合は、大きな形
状のウッド用ゴルフクラブヘッドを製造することはでき
ず、必然的にウッド形状の大きさには制約がある。この
ため、精密鋳造法により製造されたウッド用ゴルフクラ
ブヘッドは、スイートスポットエリアが狭いという欠点
がある。
【0006】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、鉄系材料の加工性と強度とを高レベルで両
立させ、スイートスポットエリアを拡大して方向安定性
を向上させることができる大きな形状の鋼製メタルヘッ
ドを安定して且つ容易に製造することができる鋼製メタ
ルヘッド及びその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る鋼製メタル
ヘッドは、降伏応力が1000MPa以上の鋼板からな
ることを特徴とする。
【0008】本発明に係る鋼製メタルヘッドの製造方法
は、下記組成の鉄系材料を使用する。即ち、 C 0.05乃至0.35% Si 0.40%以下 Mn 2.20%以下 Ni 4.00%以下 Cr 3.0%以下 Mo 1.00%以下 Nb 0.10%以下 Al 0.10%以下 P 0.02%以下 S 0.01%以下 Cu 1.50%以下 B 0.001%以下 N 0.01%以下 Fe 残部および不可避的不純物 炭素当量 0.80乃至1.30。
【0009】但し、この炭素当量は、後工程の焼入れ処
理工程で鉄系材料を空冷する場合のものであり、この焼
入れ処理工程で水冷する場合には、この炭素当量は0.
05乃至1.30以下にする。
【0010】そして、本発明方法はこの組成を有する鉄
系材料を650乃至750℃で焼きなまし処理し、降伏
応力を400MPa以下、伸びを20%以上にする工程
と、この焼きなまし処理後の鉄系材料をメタルヘッドの
形状又はそれを構成する部品の所定の形状に成形加工す
る工程と、この加工後に、前記鉄系材料を焼入れ処理
し、降伏応力を1000MPa以上、引張強度を120
0MPa以上にする工程と、を有することを特徴とす
る。
【0011】
【作用】本発明においては、焼きなまし処理して鉄系材
料を加工が容易な状態にし、この材料を大きな変形能の
下にゴルフクラブのヘッド形状に成形し、その後、焼入
れ処理することにより強度を向上させる。この場合に、
熱処理工程の冷却により、材料の強度を確保するため、
使用する鉄系材料としては、C:0.05%以上0.3
5%以下、Si:0.40%以下、Mn:2.20%以
下、Ni:4.00%以下、Cr:3.0%以下、M
o:1.00%以下、Nb:0.10%以下、Al:
0.10%以下、P:0.02%以下、S:0.01%
以下、Cu:1.50%以下、B:0.001%以下、
N:0.01%以下、Fe:残部および不可避的不純物
の組成のものを使用し、特に、強度を出すための焼入れ
処理工程における冷却が空冷の場合には、炭素当量Ceq
が下記数式1を満足するように組成を決め、前記冷却が
水冷の場合には、炭素当量Ceqが下記数式2を満足する
ように組成を定める。但し、炭素当量Ceqは、下記数式
3を満足する。
【0012】
【数1】0.80≦Ceq≦1.30
【0013】
【数2】0.05≦Ceq≦1.30
【0014】
【数3】Ceq=(%C)+(%Mn)/6+(%Si)
/24+(%Ni)/40+(%Cr)/5+(%M
o)/4+(%V)/14 これにより、ゴルフクラブヘッドに成形する際には、十
分な変形能を得ることができ、その後の熱処理及び冷却
工程で、ゴルフクラブヘッドとして必要な強度を確保す
ることができる。このため、従来のような精密鋳造法で
はなく、鍛造材又は圧延材等の加工鋼板を使用してゴル
フクラブヘッドを製造することができ、ヘッドの大型化
を容易に達成することができる。これにより、ヘッドの
スイートスポットが拡大され、方向性が優れた鋼製メタ
ルヘッドを製造することができる。
【0015】焼入れ処理前の降伏応力及び伸びは、夫々
400MPa以下及び20%以上にすることが好まし
い。焼入れ処理前の降伏応力が500MPaであると成
形性が劣るが、400MPaで成形性が可となり、30
0MPa又は200MPaで成形性が良好になる。ま
た、焼入れ処理前の伸びが10%であると成形性が劣
り、伸びが20%で成形性が可となり、伸びが30%及
び40%になると、成形性が良好になる。このため、焼
入れ処理前の降伏応力は400MPa以下、伸びは20
%以上にする。
【0016】一方、焼入れ処理後の降伏応力は、100
0MPa以上にする。種々の強度レベルの鋼板でヘッド
を作成し、試打したときに、ヘッドにへこみが生じるか
否かを試験した結果、焼入れ処理後の降伏応力が100
0MPa以上になると、へこみが発生せず、800MP
a以下でへこみが生じた。このため、焼入れ処理後の降
伏応力は1000MPa以上にする。
【0017】
【実施例】以下、添付の図面を参照して本発明の実施例
について具体的に説明する。
【0018】図1は本発明の実施例方法を工程順に示す
フローチャート図である。先ず、図1(a)に示すよう
に、冷間圧延材、鍛造材又は固溶化処理材等を使用し、
これを焼きなまし処理する。この焼きなまし温度は65
0乃至750℃である。これにより、上記組成の鉄系材
料からなる冷間圧延材等が軟化し、加工しやすくなる。
この焼きなまし温度が650℃未満であると、冷間圧延
後の材料等を後工程のヘッド形状に成形する工程に供し
得る程度に軟化させることができない。一方、焼きなま
し温度が750℃を超えると、冷却時に粗大な炭化物が
析出し、焼入れ性に悪影響を及ぼす。
【0019】次に、上記組成の鉄系材料の成分添加理由
及び組成限定理由について説明する。
【0020】C(炭素):Cはこのメタルヘッドの素材
となる鉄系材料の強度を高める作用を有する。Cが0.
05%未満であると、強度がゴルフクラブヘッドとして
の必要な強度を満足していない。一方、Cが0.35%
を超えると、母材の靱性及び溶接性が劣化する。このた
め、Cは0.05乃至0.35%にする。
【0021】Si(シリコン):Siは脱酸作用を有す
る。しかし、Si含有量が0.40%を超えると、溶接
性が劣化すると共に、溶接熱影響部の靱性(以下、HA
Z靱性と記す)が劣化する。このため、Si含有量は
0.40%以下にする。
【0022】Mn(マンガン):Mnは強度及び焼入れ
性を向上させる。しかし、Mn含有量が2.20%を超
えると、溶接性及びHAZ靱性が劣化する。このため、
Mn含有量は2.20%以下にする。
【0023】Ni(ニッケル):Niは母材の強度及び
靱性を向上させる。しかし、Ni含有量が4.00%を
超えると、溶接性が劣化する。このため、Ni含有量は
4.00%以下にする。
【0024】Cr(クロム):Crは母材及び溶接部の
強度を高める作用を有する。しかし、Cr含有量が3.
0%を超えると、溶接性及びHAZ靱性が劣化する。こ
のため、Cr含有量は3.0%以下にする。
【0025】Mo(モリブデン):Moは母材及び溶接
部の強度を高める作用を有する。しかし、Mo含有量が
1.0%を超えると、溶接性及びHAZ靱性が劣化す
る。このため、Mo含有量は1.0%以下にする。
【0026】Nb(ニオブ):Nbはオーステナイトの
微細組織を常温域に持ち越す作用を有する。しかし、N
b含有量が0.10%を超えると、Nb添加の効果が飽
和する。このため、Nb含有量は0.10%以下にす
る。
【0027】Al(アルミニウム):Alは脱酸及びA
lNによるオーステナイトの微細組織を常温域に持ち越
す作用を有する。しかし、Al含有量が0.10%を超
えると、AlN添加による効果が飽和する。このため、
Al含有量は0.10%以下にする。P(燐): Pは不可避的不純物であるが、その量が多い
と低温靱性を劣化させる。このため、P含有量は0.0
2%以下に規制する。
【0028】S(硫黄):Sは不可避的不純物である
が、Pと同様に低温靱性を劣化させる。このため、低温
靱性を確保する必要上、S含有量を0.01%に規制す
る。
【0029】Cu(銅):Cuは強度を向上させる元素
である。しかし、Cu含有量が1.50%を超えると、
熱間加工性が劣化する。このため、Cu含有量は1.5
0%以下にする。
【0030】B(ボロン):Bは焼入れ性を向上させる
作用を有する。しかし、B含有量が0.001%を超え
ると、母材の靱性を劣化させる。このため、B含有量は
0.001%以下にする。
【0031】N(窒素):Nは不可避的不純物である。
しかし、N含有量が0.01%を超えると、靱性が劣化
するため、N含有量は0.01%以下にする。
【0032】炭素当量Ceq 上述の組成を有する鉄系材料に対して、後工程の熱処理
工程における冷却時に、空冷する場合には、炭素当量C
eqを0.80以上にする。また、前記冷却時に水冷する
場合には、炭素当量Ceqを0.05以上にする。このよ
うに、炭素当量の下限値を規定することにより、Cの添
加による場合と同様に、鉄系材料の強度を高めることが
できる。なお、熱処理後の冷却工程は、成形品の焼入れ
歪みを抑制するため、空冷にすることが望ましい。この
ように、空冷という比較的遅い冷却速度で十分な強度を
出すために、空冷の場合には水冷の場合よりも炭素当量
を大きくする必要がある。一方、炭素当量が1.30を
超えると、HAZ靱性が劣化する。このため、炭素当量
の上限値は1.30である。
【0033】次に、図1(b)に示すように、上述の組
成を有すると共に、焼きなまし処理により軟化した鉄系
材料をプレス加工等の塑性加工により所定のヘッド形状
又はヘッドの一部をなすヘッド分割部品形状に成形す
る。その後、所定の形状に切削し、更に、MAG溶接な
どにより溶接して、図1(c)に示すように、ヘッドを
組み立てる。次いで、熱処理した後、前述の冷却条件で
冷却して、ヘッドの強度を高める。
【0034】図2は、上記条件により熱処理及び冷却処
理した鉄系材料の機械的特性を示すグラフ図である。こ
の図に示すように、成形前の鉄系材料の降伏応力は50
0MPa以下であり、伸びは10%以上である。しか
し、成形後熱処理することによって、伸びは低下するも
のの、降伏応力が1000MPa以上になる。これによ
り、ゴルフクラブヘッドとして必要な強度を確保するこ
とができる。
【0035】そして、この熱処理及び冷却後のヘッドを
研磨し、めっき又は塗装等の表面処理を施してゴルフク
ラブヘッドが完成する。その後、このヘッドにシャフト
を組み付けてゴルフクラブとなる。
【0036】本実施例においては、所定の条件で焼きな
まし処理した後に、プレス成形等の塑性加工によりヘッ
ド形状又はその分割部品形状に成形し、その後ヘッド形
状に組み立てた後に、焼入れ処理してその強度をゴルフ
クラブヘッドとして十分なものに高める。このため、精
密鋳造ではなく、鉄系材料の圧延材又は鍛造材を使用し
てゴルフクラブヘッドを製造することができるので、ス
イートスポットが広い大きな形状のヘッドを得ることが
できる。このため、本実施例方法により、方向安定性が
優れたヘッドを製造することができる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、圧延材又は鍛造材等の
所定組成の鉄系材料を使用し、所定の条件で焼きならし
処理した後、ヘッドの所定の形状に成形し、その後、焼
入れ処理してその強度を高めるから、大きな形状のヘッ
ドを低コストで製造することができ、スイートスポット
が広いグルフクラブヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例方法を工程順に示すフローチャ
ート図である。
【図2】本発明の効果を示すグラフ図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】降伏応力が1000MPa以上の鋼板から
    なることを特徴とするメタルヘッド。
  2. 【請求項2】C 0.05乃至0.35%(重量
    %、以下同じ) Si 0.40%以下 Mn 2.20%以下 Ni 4.00%以下 Cr 3.0%以下 Mo 1.00%以下 Nb 0.10%以下 Al 0.10%以下 P 0.02%以下 S 0.01%以下 Cu 1.50%以下 B 0.001%以下 N 0.01%以下 Fe 残部および不可避的不純物 炭素当量 0.80乃至1.30 の組成を有する鉄系材料を650乃至750℃で焼きな
    まし処理する工程と、 この焼きなまし処理後の鉄系材料をメタルヘッドの形状
    又はそれを構成する部品の所定の形状に成形加工する工
    程と、 この加工後に、前記鉄系材料を空冷により焼入れ処理す
    る工程と、を有することを特徴とする鋼製メタルヘッド
    の製造方法。
  3. 【請求項3】C 0.05乃至0.35% Si 0.40%以下 Mn 2.20%以下 Ni 4.00%以下 Cr 3.0%以下 Mo 1.00%以下 Nb 0.10%以下 Al 0.10%以下 P 0.02%以下 S 0.01%以下 Cu 1.50%以下 B 0.001%以下 N 0.01%以下 Fe 残部および不可避的不純物 炭素当量 0.05乃至1.30 の組成を有する鉄系材料を650乃至750℃で焼きな
    まし処理する工程と、 この焼きなまし処理後の鉄系材料をメタルヘッドの形状
    又はそれを構成する部品の所定の形状に成形加工する工
    程と、 この加工後に、前記鉄系材料を水冷により焼入れ処理す
    る工程と、を有することを特徴とする鋼製メタルヘッド
    の製造方法。
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