JPH05248937A - 内燃機関のノッキング検出装置 - Google Patents

内燃機関のノッキング検出装置

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JPH05248937A
JPH05248937A JP4975592A JP4975592A JPH05248937A JP H05248937 A JPH05248937 A JP H05248937A JP 4975592 A JP4975592 A JP 4975592A JP 4975592 A JP4975592 A JP 4975592A JP H05248937 A JPH05248937 A JP H05248937A
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久和 菊池
Makoto Nakashizu
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Abstract

(57)【要約】 【目的】ウェーブレット変換の高速処理を実現し、ノッ
キング振動解析へのウェーブレット変換の適用を可能と
する。 【構成】ノックセンサ1から機関振動レベルに応じて出
力される電圧信号を、A/D変換器2でA/D変換す
る。次いで、A/D変換して得られた数値データを、櫛
形フィルタ11と共振器12とから構成され、かつ、所定の
基本ウェーブレット関数とインパルス応答の等しい周波
数サンプリングフィルタ3で処理し、基本ウェーブレッ
ト変換を前記フィルタで実行させる。そして、前記フィ
ルタで得られたウェーブレット関数の展開係数の振幅・
位相に基づいてノッキング発生の有無を高い時間分解能
で検出させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関のノッキング検
出装置に関し、詳しくは、機関振動の検出信号からノッ
キング発生を検出する装置の改善技術に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関において、所定レベル以上のノ
ッキングが発生すると、出力を低下させるのみならず、
衝撃により吸・排気バルブやピストンに悪影響を及ぼす
ため、ノッキングを検出して点火時期を補正することに
より、速やかにノッキングを回避し得るようにした点火
時期制御装置を備えているものがある(特開昭58−1
05036号公報等参照)。
【0003】ところで、前記異常燃焼としてのノッキン
グは、エンジンブロックの音響振動として観測される
が、内燃機関の振動には、ピストンヘッド,ギヤ,バル
ブ着座等による機械的振動が多く含まれる。そこで、従
来では、フーリエ変換やウオルシュアダマール変換等の
直交変換を用い、周期的信号に対する投影として前記音
響振動のスペクトル解析を行い、ノッキング特有の周波
数成分を抽出してノッキング発生の有無を検出するよう
にしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ノッキ
ングのような突発的信号は、以下の特徴を有しており、
正弦波など周期的信号で分析するフーリエ変換等の変換
では、高品質な時間・周波数分析をすることができない
という問題があった。 1)信号波形及び微分係数が不連続であることが多い。
【0005】2)信号の持続時間が短く、信号対雑音比
(S/N比)が劣悪である。 3)統計的性質が非定常である。 4)時間分解能と周波数分解能に関する不確実性関係が
一様に定まる。 即ち、直交変換に用いる周期的信号がたとえ数学的に完
全直交変換を構成していても、上記のような特徴を有す
る信号を有限の時間にわたって観測した結果からスペク
トルを推定し、これの変化を時々刻々追跡することは、
原理的に困難なことであった。特に、機関の高回転時に
は、極めて少数の振動信号のサンプルからスペクトルを
推定することになり、時間分解能と周波数分解能の不確
実性関係により、推定精度の劣化は原理的に避けられな
いものであった。
【0006】ここで、時間・周波数解析の手法の1つと
して、近年、ウェーブレット変換(応用数理 VOL.
1 NO.3 SEP.1991 岩波書店発行等参
照)が注目されている。これは、信号をウェーブレット
と呼ばれる関数系に展開し、展開係数により時間・周波
数解析を行なう手法である。ウェーブレット関数系は、
時間軸と周波数軸で局在する関数であるので、展開係数
により信号の時間と周波数とに関する情報を得ることが
できる。また、ウェーブレット関数系は、基本ウェーブ
レット関数のスケール変換と時間シフトによって得られ
る。この関数系の性質から、ウェーブレット変換の時間
分解能は、図5及び図6に示すように、フーリエ変換の
場合のように一定の時間・周波数分解能を示さず、対象
とする信号の周波数が高くなるにつれて向上するもので
あり、かかる性質によって突発的に発生する信号(高周
波成分を含む信号)の解析に適した手法である。
【0007】そこで、前記ノッキングの音響振動の解析
に上記のウェーブレット変換を適用することを勘案した
が、以下のような問題が生じた。即ち、ウェーブレット
変換を実現する方法としての非直交ウェーブレット変換
の場合、各ウェーブレット関数毎に畳み込み演算を直接
実行する方法があるが、この方法では、ウェーブレット
のスケールに応じて乗算回数が増減し、大きなスケール
の関数では乗算回数が増大する。従って、ノッキング振
動解析に適用する場合のように、高速処理が要求され、
ソフトウェア,ハードウェアに対する制限が大きいアプ
リケーションへのウェーブレット変換の適用は困難であ
った。
【0008】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので
あり、ウェーブレット変換の高速処理を実現して、ノッ
キング検出への適用を可能とし、以て、ノッキング振動
の解析を高品質に行なえる装置を提供することを目的と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのため本発明にかかる
内燃機関のノッキング検出装置は、機関振動をウェーブ
レット変換によって解析してノッキング発生を検出する
内燃機関のノッキング検出装置であって、図1に示すよ
うに構成される。図1において、振動センサは、機関本
体に付設されて機関振動レベルに対応するアナログ検出
信号を出力するものであり、該振動センサからのアナロ
グ信号は、A/D変換器によってディジタル信号に変換
される。
【0010】そして、前記変換されたディジタル信号
は、所定の基本ウェーブレット関数とインパルス応答の
等しい周波数サンプリングフィルタで処理され、該周波
数サンプリングフィルタの処理結果に基づいてノッキン
グ検出手段がノッキング発生を検出する。ここで、前記
周波数サンプリングフィルタは、櫛形フィルタと、並列
接続された所定数の共振器とを縦接接続して構成するこ
とができる。
【0011】また、前記櫛形フィルタを構成する遅延器
数の増減をタップ設定によって行なわせ、並列接続され
た所定数の共振器をそれぞれのタップに縦接接続し、異
なる遅延器数に基づくフィルタリングを並列に行なわせ
るよう構成することが好ましい。また、前記所定の基本
ウェーブレット関数として、Gabor関数又はラプラ
シアン−ガウシャン関数を用いると良い。
【0012】
【作用】かかる構成によると、機関振動のアナログ検出
信号がディジタル信号に変換され、このディジタル信号
が周波数サンプリングフィルタで処理される。ここで、
ウェーブレット関数は、時間軸上で局在する関数であ
り、同一のスケールで時間シフトを行なったウェーブレ
ット関数系に対応する展開係数は、非巡回形フィルタ
(Finite Impulse Response フィルタ) の出力に一致す
ることになるから、非巡回形フィルタの実現方法の1つ
である上記の周波数サンプリングフィルタによって基本
ウェーブレット変換が実行されることになる。
【0013】前記周波数サンプリングフィルタは、櫛形
フィルタと、並列接続された所定数の共振器とを縦接接
続して構成でき、更に、櫛形フィルタにタップを設定す
ることで、遅延器数を行なえるから、前記タップ設定に
よって異なる遅延器数(スケールの異なるウェーブレッ
ト関数)に基づくフィルタリングの並行処理が可能とな
る。
【0014】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。一実施例
のハードウェア構成を示す図2において、ノックセンサ
(振動センサ)1は、図示しない内燃機関のシリンダブ
ロック(本体)に付設され、内蔵した圧電素子によって
機関振動に応じた波形のアナログ電圧信号を出力する。
【0015】該ノックセンサ1から出力されるアナログ
電圧信号は、A/D変換器2によって所定のサンプリン
グ周波数(例えば50KHz)で数値データ(ディジタル
信号)に変換される。そして、前記数値データは、周波
数サンプリングフィルタ3(ディジタルフィルタ)で処
理される。
【0016】前記周波数サンプリングフィルタ3の処理
結果は、内燃機関の燃焼室に臨ませて設けられる点火栓
6による点火時期(点火進角値)ADVを、点火回路5
に送る点火信号に基づいて制御するマイクロコンピュー
タ内蔵のコントロールユニット4に入力され、ノッキン
グ検出手段としての前記コントロールユニット4は、前
記周波数サンプリングフィルタ3の処理結果に基づいて
ノッキング発生の有無を判別し、ノッキング発生時には
点火時期ADVを遅角補正して、ノッキングの発生を速
やかに回避するようになっている。
【0017】ここで、前記周波数サンプリングフィルタ
3の詳細な構成を説明する。前記周波数サンプリングフ
ィルタ3は、図2の概念図に示すように、櫛形フィルタ
11と並列接続された所定数の基本共振器からなる共振器
12とを、縦接接続して構成されるディジタルフィルタで
ある。前記櫛形フィルタ11は、直列接続されるN個の遅
延器13と、2つの乗算器14,15と、加算器16とから構成
され、N個の遅延器13で遅延されたデータを、乗算器14
で乗算係数−1と乗算させ、遅延器13をバイパスしたデ
ータと前記乗算器14の出力とを加算器16で加算し、更
に、加算器16の出力に乗算器15で乗算係数Aを乗算して
出力する構成となっている。
【0018】また、共振器12は、2つの乗算器17,18
と、加算器19と、遅延器20とから構成される基本共振器
を複数並列接続し、各基本共振器における乗算器17の出
力を加算器21a,21b,・・・で相互に加算して、全て
の基本共振器の出力の加算結果を最終的に出力するもの
であり、基本共振器では、櫛形フィルタ11の出力と、加
算器19の出力に乗算器18で所定乗算係数exp(j・2
π/N・ki )を乗算し更に遅延器20で遅延させた値と
を加算器19で加算し、加算器19の出力に乗算器17で所定
乗算係数Hi を乗算して出力するようになっている。
尚、各乗算器17,18の乗算係数の設定については後に詳
細に説明する。
【0019】ところで、本実施例では、機関振動のディ
ジタル信号を、フーリエ変換などの周期関数を基底とす
る直交変換に比して突発的に発生する信号の解析に適し
ている離散ウェーブレット変換によって解析して、ノッ
キング発生の有無を検出するものである。前記離散ウェ
ーブレット変換は、信号をウェーブレット関数系に展開
し、展開係数により信号の時間・周波数解析を行なう手
法であり、ウェーブレット関数は、基本ウェーブレット
関数g(t)のスケール変換と時間シフトとにより得ら
れる。
【0020】スケールa,時間シフトbのウェーブレッ
ト関数ga,b (t) は、
【0021】
【数1】
【0022】と定義される。基本ウェーブレット関数g
(t)には、時間軸上,周波数軸上で局在する関数を選
ぶ。従って、ウェーブレット関数ga,b (t) も時間軸
上,周波数軸上で局在する関数となる。図3及び図4
に、ウェーブレット関数ga,b (t) の時間・周波数分布
を、スケールを1とした場合及びスケールを1より狭い
αに収縮させた場合について示してあり、この図から明
らかなように、ウェーブレット関数のスケールの膨張・
圧縮によって周波数特性を変化させることができること
は分かる。
【0023】前記ウェーブレット関数ga,b (t) によ
り、信号s(t) に対する離散ウェーブレット変換は、
【0024】
【数2】
【0025】と定義される。尚、Tはサンプリング周期
を示し、S(a,b)は信号s(t) のウェーブレット関
数ga,b (t) に対する展開係数を示す。ウェーブレット
変換の時間分解能と周波数分解能をフーリエ変換と比較
すると、図5及び図6に示すようになり、ウェーブレッ
ト変換では、低周波成分は長時間にわたって観測するた
めにその周波数分布は詳しく把握することができるが、
それに対して高周波成分は短時間だけ観測するために周
波数分解能は劣化するが、時間分解能は向上する。
【0026】ノッキングのような突発性信号は、その発
生の性質により高周波成分を含み、然も、持続時間が短
い。また、周波数に関する情報のほか、その発生・持続
時間の情報も重要である。従って、ウェーブレット変換
は、フーリエ変換等の周期関数を基底とする直交変換に
比して、ノッキング信号の解析に適した時間・周波数解
析法である。
【0027】ここで、前記数1に示したウェーブレット
関数は、時間軸上で局在する関数である。従って、同一
のスケールで時間シフトを行なったウェーブレット関数
系に対応する展開係数は、非巡回形フィルタ(Finite I
mpulse Response フィルタ)の出力に一致するものであ
り、本実施例では前記非巡回形フィルタの実現方法とし
て前述のように周波数サンプリングフィルタ3を用いて
いる。
【0028】前記周波数サンプリングフィルタ3のイン
パルス応答は、
【0029】
【数3】
【0030】となる。櫛形フィルタの遅延器数Nと、共
振器の係数ki を適当に決めることで、インパルス応答
h(nT) とウェーブレット関数g(nT)とを、
【0031】
【数4】
【0032】で示される関係とすれば、周波数サンプリ
ングフィルタ3の出力y(nT)は、
【0033】
【数5】
【0034】となる。これは、スケールa=1、シフト
b=nTのウェーブレット関数の展開係数S(1,n
T)に一致する。従って、乗算器18の乗算係数をexp
(j・2π/N・ki )とし、また、乗算器17の乗算係
数をHi とすることで、基本ウェーブレット関数とイン
パルス応答の等しい周波数サンプリングフィルタ3を実
現できるものであり、本実施例ではかかる特性のフィル
タを基本フィルタと称する。
【0035】周波数サンプリングフィルタ3において、
櫛形フィルタ11の遅延器数Nと乗算器における乗算係数
Aを変更することにより、異なるウェーブレット関数の
スケールを実現することができる。周波数サンプリング
フィルタ3において、櫛形フィルタ11の遅延器数Nに対
して、
【0036】
【数6】
【0037】の関係がある異なるスケールai でのウェ
ーブレット変換を実現するためには、櫛形フィルタの遅
延器数を決定するNをNi に変更し、乗算係数Aを、
【0038】
【数7】
【0039】に変更すれば良い。また、周波数サンプリ
ングフィルタ3の性質により、図7の概念図に示すよう
に、1つの櫛形フィルタの直列接続されるN個の遅延器
列の途中にタップを設定し、各タップに図2における乗
算器15以降の構成の共振器をそれぞれ共振器Ri〜Rk
として縦接接続すれば、1つの櫛形フィルタを共通的に
用いて複数の異なるスケールai 〜ak でのウェーブレ
ット変換を行なわせることが可能となる。尚、遅延器の
個数を示すNi からNk は、前記数6の関係によりそれ
ぞれのスケールに対応して設定される。
【0040】上記の周波数サンプリングフィルタ3によ
ると、全てのスケール(ai 〜ak)で1サンプル間で
実行される乗算回数は等しく、数2により畳み込み演算
を直接実行する場合よりも高速な処理が可能となる。更
に、ハードウェアとして構成する場合、構成が単純であ
るためLSIレイアウトが容易に行なうことができる。
また、並列性が高いため、複数のシグナルプロセッサに
よる並列処理も容易に実現できる。
【0041】ここで、ノッキング検出として実験的に適
用した具体的な実施例を説明する。まず、基本ウェーブ
レット関数g(t) には、Gabor 関数を選んだ。このGabo
r 関数は、時間・周波数軸上で広がりが最小となる関数
として知られており、
【0042】
【数8】
【0043】と示すことができ、本実施例では、T=√
2/10,ω0 =12π/128 TとしたGabor 関数を用い
た。この関数を、櫛形フィルタの遅延器数Nを128 と
し、共振器12を構成する並列接続される基本共振器の数
を7とした基本フィルタのインパルス応答により近似す
る。
【0044】そこで、Gabor 関数に128 点の方形窓をか
けてフーリエ変換を行い、最も大きなフーリエ係数をも
つ周波数を7つ選んで、基本フィルタの極配置を決定す
る係数ki (i=0..6)の値を決定した。また、前記
係数ki に対応する係数Hi(i=0..6)はフーリエ
係数と一致させ、図8に示すように、フィルタによって
近似された基本ウェーブレット関数を得るようにした。
【0045】前記基本フィルタのスケールai は、
【0046】
【数9】
【0047】とし、i=−30〜20までの50種のスケール
でのウェーブレットを、前述のような櫛形フィルタに対
するタッピングによって行なわせるようにした。しかし
ながら、数9に示したスケールでは、数6により遅延器
数Ni は整数とならない。そこで、
【0048】
【数10】
【0049】として遅延器数を整数で近似した。ここ
で、Q[・]は、数値の小数点以下のまるめを意味す
る。上記の設定において、スケールa=1である基本ウ
ェーブレット関数及びスケールが最小(a=0.125 )の
ウェーブレット関数の周波数特性を図9に、また、基本
ウェーブレット関数及びスケールが最大(a=4)のウ
ェーブレット関数の周波数特性を図10に示す。これらの
図から明らかなように、ウェーブレット変換の周波数分
解能は、低周波数域で高く、高周波数域で低くなる。
【0050】ところで、上記のように50個のスケールの
異なるウェーブレット関数によりウェーブレット変換を
行なわせるが、かかるウェーブレット変換を直接畳み込
み演算により実現した場合、1サンプル毎の複素乗算の
回数は8147回となる。これに対して、上記に示した周波
数サンプリングフィルタを用いた実施例(遅延器数の増
減を櫛形フィルタのタッピングによって実現する実施
例)によると、前記複素乗算回数は750 回となり、直接
畳み込み演算を実行するよりも1/10以下の乗算回数で
ウェーブレット変換が行なえる。従って、ウェーブレッ
ト変換による解析が高速処理でき、以て、高速処理が要
求されるノッキング検出への適用が可能となり、ノッキ
ング検出をウェーブレット変換を用いて解析させること
で、たとえ高回転時であっても高い時間分解能でノッキ
ング発生を検出できる高い品質のノッキング検出装置が
実現できる。
【0051】次に、異常燃焼時(ノッキング発生時)及
び正常燃焼時におけるウェーブレット変換の具体的結果
を、図11及び図12に示す。図11(a),(b),(c) は、典型的
な正常燃焼時の内燃機関の振動を観察した場合であり、
図11(a) は振動波形を、図11(b) はウェーブレット変換
の振幅を、図11(c) はウェーブレット変換の位相を示し
ている。
【0052】一方、図12(a),(b),(c) は、異常燃焼(ノ
ッキング)が発生している場合を示すものであり、前記
同様、図12(a) は振動波形を、図12(b) はウェーブレッ
ト変換の振幅を、図12(c) はウェーブレット変換の位相
を示している。尚、対象とする内燃機関を、自動車用の
V型8気筒機関とし、かかる機関を回転数1200rpm で一
定運転させ、点火時期を強制的に進角調節することで異
常燃焼を強制的に発生させた。
【0053】ウェーブレット変換の振幅を示す図11(b)
及び図12(b) では、振幅を黒から白の濃淡変化により表
しており、黒が振幅の最小を、白が振幅の最大を示して
いる。同様に、ウェーブレット変換の位相を示す図11
(c) 及び図12(c) では、黒から白への変化が0から2π
への位相変化を表している。尚、図11及び図12に示すサ
ンプリング期間は、混合気の点火後1.4ms から5.4 msの
間である。
【0054】ウェーブレットの振幅を、正常燃焼時と異
常燃焼時(ノッキング発生時)とで比較すると、両者と
も共通に時間シフトb=120 からb=160 にかけて、ス
ケールが2以下の成分が強くなることが分かり、然も、
この部分が異常燃焼の発生と無関係に同一時刻に生じて
いることにより、異常燃焼に因るものではなくスラップ
音と呼ばれる機械振動であることが予測される。
【0055】一方、b=50からb=100 サンプルの間で
は、異常燃焼が生じている場合でのみ、スケールが21
から20 の展開係数が大きくなっている。また、この期
間内に2-2から2-3のスケールの振幅が大きくなる時間
がある。更に、ウェーブレット変換の位相を示す図11
(c) 及び図12(c) により、b=50からb=100 の間で展
開係数の位相を比較すると、異常燃焼が生じている場合
には、0から2πへの位相の変化が20 から21 のスケ
ールではっきりと現れているのに対し、正常な燃焼の場
合には前記変化が現れていない。
【0056】以上の比較から、回転数1200rpm では、異
常燃焼(ノッキング)の振動は、スケールが21 から2
0 、また、2-2から2-3のウェーブレット関数の展開係
数により、混合気点火後2.4 msから3.4ms にかけて検出
できることが分かった。従って、上記のような実験を複
数の回転数の下で行なわせれば、各回転数域で異常燃焼
による振動が現れる時期を特定でき、これを判別条件と
して、実際に機関を運転しているときの異常燃焼の発生
を、前記特定時期におけるウェーブレットの振幅・位相
の大きな変化として、機械振動と区別して検出すること
ができる。このため、かかるノッキング検出のフォーマ
ットを予めコントロールユニット4にプログラミングし
ておけば、周波数サンプリングフィルタ3から出力され
るウェーブレット変換の展開係数における振幅・位相に
基づいてノッキング発生の有無を検出させることができ
る。
【0057】ところで、上記実施例では基本ウェーブレ
ット関数としてGabor 関数を用いたが、このGabor 関数
に代えてラプラシアン−ガウシャン(Laplacian-Gaussi
an)関数を用いても良い。図13は、基本フィルタの設計
に用いた前記ラプラシアン−ガウシャン関数を示し、図
14は、基本フィルタによって近似された基本ウェーブレ
ット関数としてのラプラシアン−ガウシャン関数を示
す。
【0058】そして、図15及び図16は、前記ラプラシア
ン−ガウシャン関数を基本ウェーブレット関数として用
いた場合の正常燃焼時及び異常燃焼時(ノッキング発生
時)におけるウェーブレット変換の振幅を示している。
この図15及び図16から明らかなように、ラプラシアン−
ガウシャン関数を基本ウェーブレット関数とした場合に
は、周波数分解能が低いため、基本ウェーブレット関数
としてGabor 関数を用いた場合に比べ、異常燃焼の発生
により特徴的にウェーブレット変換の振幅が大きくなる
部分が不明瞭であるが、異常燃焼に伴う振幅特性の変化
が鋭く発生し、時間分解能は向上している。このため、
ノック成分の振幅の時間変化が明瞭に読み取れるという
利点がある。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように本発明によると、ノ
ッキング振動のような突発的信号の解析に適した時間・
周波数解析法であるウェーブレット変換を、直接畳み込
み演算を行なわせる場合に比べ、高速に処理させること
ができ、特に高速処理が要求されるノッキング検出への
適用が可能となり、ウェーブレット変換による解析によ
って機関の高回転時においても高い品質でノッキング発
生を検出させることができるようになるという効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例のハードウェア構成を示すシス
テム概略図。
【図3】ウェーブレット関数の時間・周波数分布を示す
線図。
【図4】ウェーブレット関数の時間・周波数分布を示す
線図。
【図5】ウェーブレット変換における時間・周波数分解
能を示す線図。
【図6】フーリエ変換における時間・周波数分解能を示
す線図。
【図7】複数の異なるスケールでのウェーブレット変換
を実現するためのフィルタを示す概念図。
【図8】基本フィルタによって近似された基本ウェーブ
レット関数を示す線図。
【図9】最小スケールのウェーブレット関数の周波数特
性を示す線図。
【図10】最大スケールのウェーブレット関数の周波数特
性を示す線図。
【図11】正常燃焼時におけるウェーブレット変換特性を
示す図。
【図12】異常燃焼時(ノッキング発生時)におけるウェ
ーブレット変換特性を示す図。
【図13】基本フィルタの設定に用いたラプラシアン−ガ
ウシャン関数を示す線図。
【図14】基本フィルタによって近似された基本ウェーブ
レット関数としてのラプラシアン−ガウシャン関数を示
す線図。
【図15】ラプラシアン−ガウシャン関数を用いたウェー
ブレット変換の正常燃焼時の振幅特性を示す図。
【図16】ラプラシアン−ガウシャン関数を用いたウェー
ブレット変換の異常燃焼時(ノッキング発生時)の振幅
特性を示す図。
【符号の説明】
1 ノックセンサ 2 A/D変換器 3 周波数サンプリングフィルタ 4 コントロールユニット 5 点火回路 6 点火栓 11 櫛形フィルタ 12 共振器

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】機関振動をウェーブレット変換によって解
    析してノッキング発生を検出する内燃機関のノッキング
    検出装置であって、 機関本体に付設されて機関振動レベルに対応するアナロ
    グ検出信号を出力する振動センサと、 該振動センサからのアナログ検出信号をディジタル信号
    に変換するA/D変換器と、 該A/D変換器で変換されたディジタル信号を処理する
    ディジタルフィルタであって、所定の基本ウェーブレッ
    ト関数とインパルス応答の等しい周波数サンプリングフ
    ィルタと、 該周波数サンプリングフィルタの処理結果に基づいてノ
    ッキング発生を検出するノッキング検出手段と、 を含んで構成された内燃機関のノッキング検出装置。
  2. 【請求項2】前記周波数サンプリングフィルタが、櫛形
    フィルタと、並列接続された所定数の共振器とを縦接接
    続して構成されることを特徴とする請求項1記載の内燃
    機関のノッキング検出装置。
  3. 【請求項3】前記櫛形フィルタを構成する遅延器数の増
    減をタップ設定によって行なわせ、並列接続された所定
    数の共振器をそれぞれのタップに縦接接続し、異なる遅
    延器数に基づくフィルタリングを並列に行なわせるよう
    構成したことを特徴とする請求項2記載の内燃機関のノ
    ッキング検出装置。
  4. 【請求項4】前記所定の基本ウェーブレット関数が、G
    abor関数であることを特徴とする請求項1,2又は
    3のいずれかに記載の内燃機関のノッキング検出装置。
  5. 【請求項5】前記所定の基本ウェーブレット関数が、ラ
    プラシアン−ガウシャン関数であることを特徴とする請
    求項1,2又は3のいずれかに記載の内燃機関のノッキ
    ング検出装置。
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