JPH05200303A - 排ガス浄化用触媒素材及びそれを用いた触媒 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、コールドスタートにおける触媒の
効率を高めることのできるメタル担体を用いた排ガス浄
化用触媒素材およびそれを用いた触媒を提供することに
ある。 【構成】 フェライト系耐熱ステンレス等のような耐熱
性の金属薄板の両面に突出するようにフックを形成する
ことにより触媒素材を形成し、この触媒素材を別の金属
平板と共にスパイラル状に巻くまたはジグザグ状に曲げ
ることにより所要の寸法形状の触媒を形成する。 【効果】 金属薄板間を流れる排ガスはフックによりそ
の流れを乱されることで、排ガスからの熱の受け取りに
必要な時間を確保でき、かつフックの突出端部が加熱さ
れやすいことにより、より迅速に触媒の温度を上昇で
き、触媒の活性化に必要な時間を短縮できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は自動車等に使用される内
燃機関からの排ガスを浄化するための触媒に関し、特
に、メタル担体を用いた排ガス浄化用触媒に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、特に自動車の排ガスによる大気汚
染の問題がクローズアップされ、浄化用触媒に対する要
求もより過酷なものとなっている。そのため、これまで
のセラミック担体を用いた触媒から、より優れた浄化性
能を有するメタル担体を採用したものへの変更が企図さ
れている。このメタル担体の材料としては、Ｆe-２０wt
％Ｃr-５wt％Ａl系ステンレスをはじめとするフェライ
ト系耐熱ステンレスがある。

【０００３】この耐熱ステンレス製板は、一般的に、ハ
ニカム構造で形成され、エンジンの排気系に介装されて
用いられている。しかしながら、エンジンが始動したば
かりで触媒が冷えている状態、いわゆる「コールドスタ
ート」ではメタル担体の触媒は活性化されず、十分な浄
化作用を達成することができなかった。

【０００４】このコールドスタートにおける触媒の効率
を高める手段として、メタル担体に電流を流して触媒を
予熱し、触媒の活性化を高めた状態でエンジンを始動さ
せる手段や、ハニカム構造の平板部分を細かく波打たせ
た形状にしたり、平板をなくして波板のみで形成する等
のような新規なハニカム構造に形成することにより、排
ガスによる触媒温度の上昇速度を速め、それにより短時
間に触媒を活性化しようとする手段等が提案されてい
る。

【０００５】しかしながら、前者の触媒を余熱する手段
の場合、十分に浄化作用を発揮できる反面、その消費電
力が、例えば、小型乗用車用触媒の場合でも約４.５〜
５kwと非常に大きい。そのため、触媒余熱用のバッテリ
を別途に用意することが必要となり、自動車軽量化の動
きに逆行するものであった。また、後者のハニカム構造
の変更による手段では、触媒の昇温速度をある程度速め
ることはできるが、例えば、１９９０年１０月に米国カ
リフォルニア州で制定された規制の最終的規制値（１マ
イル走行当りのＨＣ排出量を最大０.０７５ｇに抑制）
に適合するには不十分である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のハニ
カム構造とは異なった新規な構造に形成することにより
触媒活性化までに必要な時間を短縮し、コールドスター
トにおける浄化率を高めることのできる排ガス浄化用触
媒素材及びそれを用いた触媒を提供しようとするもので
ある。

【０００７】本発明はまた、従来のハニカム構造の触媒
に比べ、簡単に製造でき、それにより、より安価に供給
できる排ガス浄化用触媒素材を提供し、それにより、よ
り安価に提供できる排ガス浄化用触媒素材及びそれを用
いた触媒を提供しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明による排ガス浄化
用触媒素材は、フェライト系耐熱ステンレス等のような
耐熱性の金属薄板の両面にフックがそれぞれ突出するよ
うに形成される。

【０００９】本発明による排ガス浄化用触媒は、両面に
フックがそれぞれ突出するように形成されたフェライト
系耐熱ステンレス等のような耐熱性の金属薄板と、別の
フックを有しない金属平板とを相互に重ね合わせ、スパ
イラル状に巻くまたはジグザグ状に曲げることにより所
要の寸法形状に形成される。本発明による排ガス浄化用
触媒は、フックを形成された金属薄板にフックの突出長
と同等またはそれより僅少大きな突出長を有する突起が
適当に離間されて配設されるのが好ましい。

【００１０】

【作用】金属薄板に形成されたフックは排出されるガス
の流れに対して突出することになる。そのため、排ガス
の流れはフック位置で乱され、排ガスから金属薄板への
熱伝達を行う時間を確保すると同時に、金属薄板のフッ
ク突出端部における温度上昇が顕著となり、触媒活性化
を早めることになる。フックを有しない金属平板は、重
ね合わされたときにフック相互が絡み合って、排ガスの
流路を閉鎖してしまうのを防止する一種のスペーサとし
て機能する。それと同時に、排ガスの流れがフック、お
よびフックを形成すること形成された穴により過剰に乱
されてしまうのを防止するための一種の整流板としての
作用も行う。

【００１１】また、突起またはビードがフックの突出長
と同等またはそれより僅少大きな突出長を有することに
より、金属薄板を金属平板と共にスパイラル状またはジ
グザグ状に加工成形するときに、排ガスの流路となる隣
接した金属薄板間の空間を一定の間隔に保持すると共
に、フックの先端が隣接した金属平板により、特に押し
つぶされるような変形を受けるのを防止する。ビードの
形状で作成される場合、ビードの伸延方向を適当に選定
することにより、排ガスの整流を行う。

【００１２】

【実施例】本発明の実施例による排ガス浄化用触媒素材
は、図１および図２に示すように、金属薄板１の両面側
にフック２を突出するように形成された板状材料から作
成される。金属薄板１は、図３に示すように、別のフッ
クを有しない金属平板３と相互に重ね合わされ、スパイ
ラル状に巻くまたはジグザグ状に曲げることによって所
要の寸法形状の排ガス浄化用触媒を形成する。

【００１３】金属薄板１は、Ｆe-２０wt％Ｃr-５wt％Ａ
l系ステンレスのようなフェライト系耐熱ステンレスの
薄板で作成される。金属平板３は金属薄板１と同じ材料
で作成されるのが好ましいが、少なくとも、金属薄板の
フック２が対向する位置にくるフックと絡み合う等して
金属薄板１間の間隔を不均一にしてしまうのを防止でき
るものであることが必要である。

【００１４】フック２は、図２に示すように、相互に１
点で交差する複数本（図示の場合、３本）の切断線Ｃに
沿って金属薄板１を切断し、かつその交差した点を中心
としてその回りの部分を金属薄板１の一方の面から他面
側に向かってそれぞれ押し出すことにより、金属薄板１
の両面側に突出したフック２を設けるように形成され
る。フック２の寸法形状および離間間隔については特に
限定されるものではない。しかし、排ガスからの熱の受
取りを十分に行える一方、排ガスの流れを過剰に阻害し
てエンジンの出力ロスが大きくならないように適当に選
定されるべきである。

【００１５】上述のごとく金属薄板１に整列して形成さ
れるフック２のうち、適当な間隔で離間した位置のもの
は、フック形状ではなく、図４に示すように、突出され
た湾曲部またはビード４の形状で設けられるのが好まし
い。湾曲部またはビード４の突出長ｈは、フック２の突
出長Ｈと同等または僅少大きく形成される。また、湾曲
部またはビード４の相互の離間間隔は、フックの寸法形
状および離間間隔や作成する触媒の最終的な寸法形状等
により適宜に選定される。

【００１６】相互に重なり合う金属薄板１と金属平板３
との間は、フック２および湾曲部またはビード４により
一定間隔に保持され、排ガスの流路を形成する。その一
方で、フック２および湾曲部４は排ガスの流路に立柱し
た障害物のような形に配置されることになる。

【００１７】これにより、金属薄板１と金属平板３との
間を通り抜けようとする排ガスは、その流れに渦流を発
生されると共に、フック２を形成することにより形成さ
れた穴５を通り抜けて金属薄板１の他面側へと流れ、フ
ック２の回りにより一層複雑な渦流を発生することにな
る。そのためフック２は、流動する排ガスからの熱を効
率良く受け取ることができる。また、特にフック２の突
出端部は、角を有して突出しているため、該部分におけ
る排ガスからの受熱効率は著しく大きくなる。

【００１８】湾曲部またはビード４は、主として、金属
薄板１間に突出するフック２が巻き加工時に金属薄板１
間で潰されてしまうのを防止しかつ金属薄板１間の間隔
を一定に保持するように作用するが、フック２と同様
に、渦流の発生および熱の受け取りも行う。湾曲部また
はビード４は排ガスの流れ方向に適当な伸延形状で金属
薄板１に連続して設けることもできる。この伸延形状を
適当に選定することにより、フック２による発生する渦
流が過剰となるのを防止するための整流作用を行わせる
ことができる。

【００１９】フック２は、図１〜図４では、金属薄板に
円形または多角形の穴を形成するように三角形の山形形
状で突出するよう図示されている。しかし、上述の説明
から明らかなように、巻き加工または曲げ加工後に、金
属薄板間に排ガスの流路を確保すると同時に、該流路に
突出する部分を設けることができるフック形状であれば
どのような形状も適用可能である。一例として、図５
（ａ）に片開き形フックを、そして図５（ｂ）に両開き
形フックを示す。

【００２０】フック２は金属薄板１の面に対して、各部
位のフックがそれぞれ対向する面に突出するように説明
したが、図６に示すように、１つの部位におけるフック
がそれぞれ対向する面に突出するよう形成することでき
る。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、フェライト系耐熱ステ
ンレス等のような耐熱性の金属薄板にフックを形成する
ことにより非常に簡単に触媒用素材を作成でき、該フッ
クを形成された金属薄板を金属平板と共にスパイラル状
に巻くまたはジグザク状に曲げて所要の寸法形状に形成
することにより触媒を作成するため、排ガスの流れに渦
流を効果的に発生させて排ガスからの熱を受け取るため
の時間を確実に確保することができ、しかもフックの突
出端部が単独で突出していることにより加熱されやす
く、それにより、より迅速に触媒の温度を上昇でき、触
媒の活性化に必要な時間を短縮でき、もって、コールド
スタートにおける触媒の効率を高めることができるもの
である。

【００２２】さらに、フックの突出長と同等またはそれ
より僅少大きな突出長を有する突起が配設されているこ
とにより、巻き加工または曲げ加工時にフック２が金属
薄板１間で潰されてしまうのを確実に防止でき、かつ金
属薄板１間の間隔を一定に保持できるものである。ま
た、この突起を排ガスの流れ方向に適当に伸延させるこ
とにより、排ガスの過剰な乱れを防止し、エンジンの出
力ロスを最少限に抑えることができるものである。

【００２３】加えて、プレス加工により金属薄板にフッ
ク等を形成し、その金属薄板を巻くことにより作成でき
るため、非常に簡単に製造でき、それにより安価に触媒
を供給できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例による排ガス浄化用触媒素材を
示す部分断面図である。

【図２】図１に示すものの平面図であり、図示のフック
のうちの１つは説明のために未加工または加工途中の状
態で示されている。

【図３】本発明の実施例による排ガス浄化用触媒の部分
断面図である。

【図４】金属薄板の変形例を示す図１と同様な図であ
る。

【図５】金属薄板に形成されるフックの変形例を示す図
である。

【図６】金属薄板に形成されるフックの変形例を示す図
５と同様な図である。

【符号の説明】

１ 金属薄板 ２ フック ３ 金属平板 ４ 湾曲部またはビード ５ 穴

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 フェライト系耐熱ステンレス等のような
   耐熱性の金属薄板の両面にフックがそれぞれ突出するよ
   うに形成されることを特徴とした排ガス浄化用触媒素
   材。
2. 【請求項２】 両面にフックがそれぞれ突出するように
   形成されたフェライト系耐熱ステンレス等のような耐熱
   性の金属薄板と、別のフックを有しない金属平板とを相
   互に重ね合わせ、スパイラル状に巻くまたはジグザグ状
   に曲げることにより所要の寸法形状に形成されることを
   特徴とした排ガス浄化用触媒。
3. 【請求項３】 前記フックを形成された金属薄板にはフ
   ックの突出長と同等またはそれより僅少大きな突出長を
   有する突起またはビードが適当に離間されて配設される
   ことを特徴とした請求項２記載の排ガス浄化用触媒。