JPH0519576Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は減筒運転が可能な内燃機関用燃料噴射
装置に関するものである。

［従来の技術］ 多気筒デイーゼル機関の低負荷運転において、
所定の気筒への燃料噴射を停止して燃費を節約す
る減筒運転装置は、例えば実開昭57−176670公報
や実開昭58−18042号公報などに既に提案されて
いる。

しかし、前者の技術では燃料溜室とプランジヤ
室とを連通する吸入口を閉鎖するものであるか
ら、プランジヤの圧縮仕事による動力損失を免れ
ない。また、後者の技術では噴射管の途中から燃
料をタンクへ戻すものであるから、これも噴射ポ
ンプが通常の場合と同様に駆動され、動力の損失
を伴うばかりでなく、燃料配管が複雑になり、タ
ンクへ圧送される燃料の流れにより騒音が発生す
る。

また、実開昭60−23231号公報に開示される燃
料噴射装置は、フイードポンプと噴射ポンプの吸
入口との間に逆止弁を挿入接続し、さらに逆止弁
の下流側に加圧空気を供給して逆止弁を閉鎖状態
に保持し、プランジヤへの燃料圧送を停止させる
ものであるから、減筒運転開始時に燃料溜室（ギ
ヤラリ）に残つている燃料が噴射ポンプにより気
筒へ圧送され、この噴射量は規定量よりも少なく
なり、不完全な燃焼を生じたり、また減筒運転を
取り止め噴射ポンプを再始動する場合には、ギヤ
ラリの加圧空気を追い出さなければならず、これ
にかなりの時間を必要とし、負荷の変動に対応し
た迅速な運転の切換えが難しい。

［考案が解決しようとする問題点］ そこで、本考案の目的は、減筒運転時の噴射ポ
ンプの動力損失が少なく、しかも減筒運転開始と
同時に燃料をカツトして気筒へ無駄な燃料が噴射
されることがない、内燃機関用燃料噴射装置を提
供することにある。

［問題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案の構成は機
関により駆動されるカム軸を支持する本体に、カ
ム軸と直交する複数のバレルを平行に並設し、各
バレルにカム軸により往復動されるプランジヤを
回動可能に嵌挿してプランジヤ室を区画し、バレ
ルの周囲に配設した燃料溜室とプランジヤ室とを
結ぶ燃料通路をバレルの周壁に設け、プランジヤ
に螺旋状の燃料調量溝と該燃料調量溝をプランジ
ヤ室へ連通する軸方向通路とを設けたものにおい
て、軸方向のスリツトを有する減筒スリーブを一
部のプランジヤに外嵌し、かつ前記バレルの燃料
通路よりも基端側部分に配設し、前記スリツトが
燃料溜室と燃料調量溝を連通する位置と遮断する
位置とに減筒スリーブを回動する回動機構を備え
たものである。

［作用］ 操作レバー１９により軸２１の偏心ピン２１ａ
を回動すると、ロツド２３がプランジヤ４の配列
方向に摺動され、ロツド２３に結合したピン１６
に係合する軸方向溝３５を有する減筒スリーブ３
６が回動され、スリツト４０により燃料調量溝３
が燃料溜室（ギヤラリ）３８に連通される。

したがつて、プランジヤ４が上下に往復動され
ても、プランジヤ室８の燃料はプランジヤ４の通
路６と燃料調量溝３と減筒スリーブ３６のスリツ
ト４０を経て燃料溜室３８との間を往復するだけ
で、機関の気筒へ圧送されない。この時、プラン
ジヤ４の往復動により消費される動力は、燃料溜
室３８とプランジヤ室８との間を往復動する燃料
の流体摩擦だけである。

［考案の実施例］ 第１図は噴射ポンプのポンプ本体５の上半部を
示す正面断面図である。ポンプ本体５の上端部
に、シール部材を介してバレル７が嵌合される。
バレル７の下端部は内径が小さくされ、プランジ
ヤ４を直接摺動可能に嵌合している。バレル７の
下端部にスリーブ２５が外嵌され、プランジヤ４
とともに回動されるようになつている。スリーブ
２５の端部フランジにボールからなる係合片３９
が溶接などにより結合され、断面逆Ｌ字形の燃料
調節杆２４のスリツトに係合される。したがつ
て、燃料調節杆２４をプランジヤの配列方向に往
復動することにより、プランジヤ４が回動され、
これにより公知のように燃料噴射量が加減され
る。

バレル７の上半部に、実質的にはバレルの一部
を構成する接続筒１５の下半部が嵌合され、かつ
中間部のフランジ１５ａがガスケツトを介してポ
ンプ本体５の上端部に重ね合され、図示してない
ボルトにより結合される。接続筒１５にプランジ
ヤ４の上端部を嵌合する円筒部すなわちプランジ
ヤ室８が形成され、接続筒１５のフランジ１５ａ
よりも上方部分に、吐出弁１０を嵌合する円筒形
の弁ハウジング９が嵌合され、さらに弁ホルダ１
３が螺合固定される。

中空状の弁ホルダ１３と吐出弁１０との間にば
ね１４が介装される。吐出弁１０がプランジヤ室
８の圧力により開かれると、燃料が出口１２から
図示してない噴射管を経て機関の燃料噴射弁へ送
られ、ここから機関の気筒へ噴射される。

バレル７に形成した燃料溜室３８は、各プラン
ジヤの燃料溜室と互いに連通されてギヤラリを構
成する。燃料溜室３８の内部の接続筒１５とバレ
ル７の段部との間にあつて、減筒スリーブ３６が
プランジヤ４に回動可能に外嵌される。減筒スリ
ーブ３６の下半部にスリツト４０が設けられる。

接続筒１５の壁部に、プランジヤ室８と燃料溜
室３８とを連通する噴射始めポート２と、噴射終
りポート３３が軸方向に間隔を存して設けられ
る。プランジヤ４に上端へ開口する軸方向の通路
６が設けられ、通路６はプランジヤ４の外周面に
設けた部分螺旋形の燃料調量溝３と連通される。

燃料溜室３８の一側方にプランジヤ４の配列方
向に延びるロツド２３が軸方向摺動可能に支持さ
れ、ロツド２３に結合したピン１６が減筒スリー
ブ３６の軸方向溝３５に係合される。また、ロツ
ド２３に横方向溝２２が設けられ、横方向溝２２
に係合する偏心ピン２１ａを有する軸２１が、燃
料溜室３８を閉鎖するねじ栓１７に回動可能に支
持される。

軸２１の端部に減筒運転と通常運転に切り換え
る操作レバー１９が嵌合されかつナツト２０によ
り締結される。軸２１に巻装したコイルばね１８
の一端がねじ栓１７に、他端が操作レバー１９に
それぞれ係止され、コイルばね１８により軸２１
が通常運転方向へ回転付勢される。

燃料調量溝３よりも下方に、プランジヤ４の外
周面に軸方向に延びるカツトオフ溝３ａが設けら
れる。減筒スリーブ３６のスリツト４０はカツト
オフ溝３ａを燃料溜室３８に連通可能にする。第
２図は常時燃料を圧送するポンプ本体の要部を示
す。

次に、本考案による内燃機関用燃料噴射装置の
作動について説明する。第３図に示すように、通
常の運転では、コイルばね１８（第１図）の力に
よりロツド２３が矢印ｘ方向へ付勢され、ピン１
６により減筒スリーブ３６が所定の回動量だけ時
計方向に回動された位置にある。この時、第１図
に示すように、プランジヤ４の燃料調量溝３とカ
ツトオフ溝３ａは減筒スリーブ３６のスリツト４
０と一致しないような回転位相にある。したがつ
て、プランジヤ４が上方へ駆動されると、プラン
ジヤ４の上端により噴射始めポート２が閉じら
れ、プランジヤ室８の燃料が加圧されて吐出弁１
０を押し開き、出口１２から機関へ圧送される。
圧送期間は、プランジヤ４の燃料調量溝３が噴射
終りポート３３を横切る時終了する。この時、プ
ランジヤ室８はプランジヤ４の軸方向の通路６、
燃料調量溝３、噴射終りポート３３を経て、燃料
溜室３８と連通し、プランジヤ４の上昇運動に対
してプランジヤ室８の燃料は燃料溜室３８へ戻さ
れる。

次に、減筒運転の場合に、操作レバー１９によ
り軸２１を回動すると、偏心ピン２１ａによりロ
ツド２３が第３図の矢印ｘと反対方向へ摺動され
る。したがつて、ピン１６により減筒スリーブ３
６が反時計方向へ回動され、スリツト４０が第４
図に鎖線で示す位置になり、プランジヤ４の燃料
調量溝３ないしカツトオフ溝３ａと連通する。し
たがつて、プランジヤ４の往復動に対して、プラ
ンジヤ室８の燃料は軸方向の通路６、燃料調量溝
３、カツトオフ溝３ａ、スリツト４０を経て燃料
溜室３８との間を往復動するだけで吐出弁１０の
方へ圧送されない。この時の動力損失は、プラン
ジヤ４の摺動による機械的摩擦とプランジヤ室８
と燃料溜室３８との間を往復動する燃料の流体摩
擦損失に止まる。

なお、例えば６気筒機関の場合、任意の３気筒
へ燃料を圧送するプランジヤ４に減筒スリーブ３
６が外嵌され、減筒スリーブ３６が共通のロツド
２３により回転されると、３気筒には燃料が噴射
されず、残る３気筒に通常のように燃料が噴射さ
れる。

上述の説明から明らかなように、燃料調量溝３
の幅を軸方向に拡げれば、カツトオフ溝３ａは特
に必要でない。

また、上述の実施例では、燃料溜室３８とプラ
ンジヤ室８とを結ぶ通路として、噴射初め通路２
と噴射終り通路３３を設けているが、これを１つ
にしてもよい。

［考案の効果］ 本考案は上述のように、機関により駆動される
カム軸を支持する本体に、カム軸と直交する複数
のバレルを平行に並設し、各バレルにカム軸によ
り往復動されるプランジヤを回動可能に嵌挿して
プランジヤ室を区画し、バレルの周囲に配設した
燃料溜室とプランジヤ室とを結ぶ燃料通路をバレ
ルの周壁に設け、プランジヤに螺旋状の燃料調量
溝と該燃料調量溝をプランジヤ室へ連通する軸方
向通路とを設けたものにおいて、軸方向のスリツ
トを有する減筒スリーブを一部のプランジヤに外
嵌し、かつ前記バレルの燃料通路よりも基端側部
分に配設し、前記スリツトが燃料溜室と燃料調量
溝を連通する位置と遮断する位置とに減筒スリー
ブを回動する回動機構を備えたものであるから、
減筒運転時、減筒スリーブを回動すると、プラン
ジヤ室の燃料が燃料調量溝、スリツトを経て燃料
溜室へ戻され、機関の気筒への燃料噴射が停止さ
れる。

本考案は減筒運転時、減筒スリーブを回動する
ものであるから、構成が簡単であり、操作力が軽
く、減筒スリーブを回動するアクチユエータが小
形のものでよい。

減筒運転時、プランジヤ室の燃料はプランジヤ
により加圧されないで、燃料調量溝から減筒スリ
ーブのスリツトを経て燃料溜室へ戻されるので、
燃料の流れによる流体摩擦が非常に小さく、噴射
ポンプの動力損失が軽減される。

プランジヤ室の燃料を加圧しないで燃料溜室へ
戻すことにより、機関への燃料噴射を停止するも
のであるから、減筒運転と同時に、迅速に燃料噴
射が停止され、再始動時は減筒スリーブの逆回動
により通常の燃料噴射状態に戻される。したがつ
て、機関の負荷変動に順応した効果的な減筒運転
が得られ、時間的遅れによる機関のストールなど
を防止できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る内燃機関用燃料噴射装置
の正面断面図、第２図は減筒運転を行わない気筒
と接続されるプランジヤ室回りの正面断面図、第
３図は第１図の線−による要部の平面断面
図、第４図は第１図の線−による要部の平面
断面図である。 ２……噴射始めポート、３……燃料調量溝、４
……プランジヤ、７……バレル、８……プランジ
ヤ室、１９……操作レバー、２１……軸、２１ａ
……偏心ピン、２２……横方向溝、２３……ロツ
ド、３３……噴射終りポート、３５……軸方向
溝、３６……減筒スリーブ、３８……燃料溜室、
４０……スリツト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 機関により駆動されるカム軸を支持する本体
   に、カム軸と直交する複数のバレルを平行に並設
   し、各バレルにカム軸により往復動されるプラン
   ジヤを回動可能に嵌挿してプランジヤ室を区画
   し、バレルの周囲に配設した燃料溜室とプランジ
   ヤ室とを結ぶ燃料通路をバレルの周壁に設け、プ
   ランジヤに螺旋状の燃料調量溝と該燃料調量溝を
   プランジヤ室へ連通する軸方向通路とを設けたも
   のにおいて、軸方向のスリツトを有する減筒スリ
   ーブを一部のプランジヤに外嵌し、かつ前記バレ
   ルの燃料通路よりも基端側部分に配設し、前記ス
   リツトが燃料溜室と燃料調量溝を連通する位置と
   遮断する位置とに減筒スリーブを回動する回動機
   構を備えたことを特徴とする、内燃機関用燃料噴
   射装置。