JPH05178838A - 新規抗生物質ピエリシジンb1 n−オキシドおよびその製造法 - Google Patents

新規抗生物質ピエリシジンb1 n−オキシドおよびその製造法

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JPH05178838A
JPH05178838A JP11212391A JP11212391A JPH05178838A JP H05178838 A JPH05178838 A JP H05178838A JP 11212391 A JP11212391 A JP 11212391A JP 11212391 A JP11212391 A JP 11212391A JP H05178838 A JPH05178838 A JP H05178838A
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piericidin
oxide
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antibiotic
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JP11212391A
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English (en)
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Tomio Takeuchi
富雄 竹内
Hiroshi Nishioka
浩 西岡
Tsutomu Sawa
力 澤
Masa Hamada
雅 濱田
Makoto Hori
誠 堀
Hiroshi Osanawa
博 長縄
Kazuo Umezawa
一夫 梅澤
Yoshikazu Takahashi
良和 高橋
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Microbial Chemistry Research Foundation
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】イノシトールリン脂質代謝回転阻害活性を有す
る新規な抗生物質、ピエリシジンB N−オキシドを
提供する。 【構成】式(I)で表わされるピエリシジンB N−
オキシド、醗酵法によるピエリシジンB N−オキシ
ドの製造法、及び該ピエリシジンB N−オキシドを
有効成分とする抗腫瘍剤。 【効果】本化合物はグラム陽性・陰性細菌の他かびに対
しても抗菌活性を示す。又従来既知のピエリシジン関連
物質にくらべ哺乳動物に対する急性毒性が低く、各種動
物癌細胞に対し増殖阻害活性を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な抗生物質に関し、
より具体的には抗菌活性、癌細胞増殖阻害活性、イノシ
トールリン脂質代謝回転阻害活性を有する新規な抗生物
質ピエリシジンB N−オキシドに関する。
【0002】
【従来の技術】抗菌性物質及び抗腫瘍性物質に関しては
既に多数のものが医薬として実用化されているが、これ
らは薬剤耐性、薬効および副作用の点で必ずしも満足で
きるものではなく、より優れた新規な抗菌性及び抗腫瘍
性物質を提供する不断の希求があるのが現状である。
【0003】ピエリシジン及びその関連物質としては既
に多くの化合物が発見されておる[「アグリカルチラル
・バイオロジカル・ケミストリー」32,115(19
68);同前,41,849(1977);「ジャーナ
ル・オブ・アンチバイオテックス」43,1329(1
990)、同前,43,1341(1990)]けれど
も、既知のピエリシジン関連物質のいづれも毒性が強
く、抗菌活性も低い。また、種々の細胞増殖因子やra
s,src等の癌遺伝子の活性化による細胞増殖や細胞
癌化に関与すると云われているイノシトールリン脂質代
謝回転[サイエンス(Science),231,40
7−410(1986),「ジャーナル・オブ・バイオ
ロジカル・ケミストリー(J.Biol.Che
m.)」261,4978−4985(1986)参
照]を阻害する活性をもつ化合物は制癌活性を有するこ
とが期待される。
【0004】
【解決すべき課題】本発明は上記の希求に応えることの
できる新規な抗生物質を提供することを目的とするもの
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは抗菌
活性と抗腫瘍活性をもつが毒性の低い新規な化合物を見
いだすべく、鋭意研究を行なっている。そして、本発明
者らは、ストレプトミセス属に属する一菌株の培養液中
に抗菌活性、抗腫瘍活性およびイノシトールリン脂質代
謝回転の阻害活性をもつ物質が産生され蓄積されている
ことを認め、その物質を単離してそれの化学構造が後記
の式(I)で表わし得るピエリシジンB N−オキシ
ドであること、この物質が抗細菌活性、抗かび活性、白
血病L−1210細胞及びP388D細胞の増殖阻害
活性、一般に抗腫瘍活性を有すること、またイノシトー
ルリン脂質代謝回転に対する阻害活性も有すること、及
び新規な化合物であることを知見した。これらの研究の
結果に基づいて、本発明を完成した。
【0006】すなわち、第1の本発明では、式(I):
【0007】
【0008】で表わされる新規な抗生物質、ピエリシジ
ンB N−オキシドが提供される。
【0009】また、第2の本発明では、ストレプトミセ
ス属に属するピエリシジンB N−オキシド生産菌を
培養し、その培養物から上記の式(I)のピエリシジン
N−オキシドを採取することを特徴とする、ピエリ
シジンB N−オキシドの製造法が提供されるもので
ある。
【0010】本発明によるピエリシジンB N−オキ
シドは下記の理化学的性状を有するものである。
【0011】(1)形状外観:淡黄色油状物質 (2)質量分析[FAB−MS(positiv
e)]:m/z 446(M+H) [FAB−MS(negative)]:m/z 44
4(M−H) (3)分子式:C2639NO (4)比旋光度:[α] 25=−4.5゜(c=0.
2、メタノール) (5)紫外部吸収スペクトル:添付図面の図1に示す。
図1における実線はメタノール中の本化合物の吸収スペ
クトルを、破線は0.1N NaOH−メタノール中の
本化合物の吸収スペクトルを、また、点線は0.1N
HCl−メタノール中の本化合物の吸収スペクトルを表
わす。
【0012】(6)赤外部吸収スペクトル(KBr
錠):添付図面の図2に示す。
【0013】(7)プロトン核磁気共鳴スペクトル:重
クロロホルム中で400MHz、室温で測定したピエリ
シジンB N−オキシドのH−核磁気共鳴スペクト
ルを添付図面の図3に示す。
【0014】(8)13C−核磁気共吸鳴スペクトル:
重クロロホルム中で100MHz、室温で測定したピエ
リシジンB N−オキシドの炭素13核磁気共鳴スペ
クトルを添付図面の図4に示す。
【0015】(9)溶解性:メタノール、エタノール、
クロロホルム、アセトンに可溶、水、ヘキサンに難溶で
ある。
【0016】(10)TLC:シリカゲル60F254
(メルク社製)の薄層クロマトグラフィーで展開溶媒と
してクロロホルム−メタノール(10:1)展開した時
のR値は0.47である。
【0017】本発明による新規抗生物質ピエリシジンB
N−オキシドは前述の式(I)で示される化学構造
を有する。
【0018】ピエリシジンB N−オキシドの化学構
造は、プロトン核磁気共鳴スペクトル、炭素13核磁気
共鳴スペクトル、質量分析スペクトルを詳細に検討する
ことによって前記の通り決定された。
【0019】本発明のピエリシジンB N−オキシド
(以下、本化合物という)は後記の生物学的性質を有す
る。
【0020】本化合物はグラム陽性および陰性細菌、並
びにかびに対して抗菌活性を示す。本化合物は哺乳動物
に対する急性毒性が既知のピエリシジン関連物質に比べ
て低く、各種の動物癌細胞に対し増殖阻害活性を有す
る。
【0021】本発明によるピエリシジンB N−オキ
シドは癌細胞増殖抑制活性、並びにイノシトールリン脂
質代謝回転阻害活性を有して抗腫瘍剤として有効であ
る。
【0022】試験例1 ピエリシジンB N−オキシドの抗菌作用を次の如く
試験した。
【0023】すなわち、ピエリシジンB N−オキシ
ドの普通栄養寒天板上での各種細菌、並びに寒天板上で
の各種カビに対する最低発育阻止濃度を日本化学療法学
会標準法によって測定した。
【0024】 第1表 最低発育阻止濃度 (MIC.) 試験菌 μg/ml スタヒロコッカス・アウレウス FDA209p 50 スタヒロコッカス・アウレウス・スミス 50 スタヒロコッカス・アウレウス MS9610 50 ミクロコッカス・ルテウス FDA16 50 バチルス・アンスラシス 25 バチルス・ズブチリス NRRL B−558 6.25 バチルス・ズブチリス PCI 219 25 バチルス・セレウス ATCC 10702 25 コリネバクテリウム・ボビス 1810 12.5 エシエリヒア・コリ NIHJ 25 エシエリヒア・コリ K−12 50 エシエリヒア・コリ BE 1121 1.56 エシエリヒア・コリ BE 1186 3.12 シゲラ・ディセンテリエ JS 11910 6.25 プロテウス・ミラビリス IFM OM−9 6.25 シユドモナス・エルギノサ A3 25 シユドモナス・エルギノサ GN315 25 クリプトコッカス・ミヤビナス F−10 12.5 ピリクラリヤ・オリーゼ 25 ピリクラリヤ・ササキ 0.78 キサントモナス・シトリ 0.39 キサントモナス・オリーゼ 3.12 トリコヒートン・アステロイデス 429 6.25 トリコヒートン・メンタグロヒテス F−15(833) 6.25 アスペルギルス・フミガタス 25試験例2 抗生物質ピエリシジンB N−オキシドの培養腫瘍細
胞に対する増殖阻害作用を次の如く試験した。
【0025】L−1210細胞及びP388D細胞は
RPM11640培地に細胞濃度1×10細胞/ml
で浮遊させ、各濃度のピエリシジンB N−オキシド
を添加して2日間培養した。その後、細胞数を算定して
増殖の程度を調べて細胞増殖阻害効果を判定した。夫々
の腫瘍細胞に対する本化合物のIC50値は夫々0.3
μg/ml及び0.8μg/mlであった。
【0026】試験例3 抗生物質ピエリシジンB N−オキシドのイノシトー
ルリン脂質代謝回転阻害作用を次の如く試験した。
【0027】3×10個/mlのヒト上皮性カルシノ
ーマ細胞A431を1晩培養後、トリチウムラベルされ
たイノシトールを37℃で取り込ませる。30分後、各
濃度の抗生物質ピエリシジンB N−オキシドと上皮
性細胞増殖因子EGF(400ng/ml)を加え、3
7℃で60分間放置する。その後、TCA不溶画分であ
るイノシトールリン脂質の放射性活性を測定することに
より、本化合物のイノシトールリン脂質代謝回転阻害活
性を評価する。
【0028】その結果、ピエリシジンB N−オキシ
ドのIC50値は1.5μg/mlであった。
【0029】第3の本発明においては、式(I)のピエ
リシジンB N−オキシドを有効成分として含むこと
を特徴とする、イノシトールリン脂質代謝回転阻害剤が
提供される。
【0030】また、第4の本発明では、式(I)のピエ
リシジンB N−オキシドを有効成分として含むこと
を特徴とする抗腫瘍剤が提供される。
【0031】本発明によるピエリシジンB N−オキ
シドは、ストレプトミセス属に属するピエリシジンB
N−オキシド生産菌を培養してその培養物中にピエリ
シジンB N−オキシドを蓄積させ、その後にそれを
採取することによって製造できる。
【0032】本発明の方法で使用できるストレプトミセ
ス属に属するピエリシジンB N−オキシド生産菌の
一例には、東京都板橋区で採取された土壌より平成2年
6月に微生物化学研究所において分離された放線菌の菌
株であってMJ288−OF3の菌株番号を付された菌
株がある。本菌株の菌学的特徴は次に記載されるとおり
である。
【0033】MJ288−OF3株の菌学的性状 1.形態 MJ288−OF3株は、分枝した基中菌糸より、まっ
すぐ、あるいは曲がった気菌糸を伸長する。輪生枝およ
び胞子のうは認められない。気菌糸の先端には50個以
上の胞子の連鎖を認め、胞子の大きさは約0.6〜0.
7×1.0〜1.2ミクロンであった。なお、胞子の表
面は平滑である。
【0034】2.各種培地における生育状態 色の記載について[ ]内に示す標準は、コンティナー
・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモ
ニー・マニュアル(Container Corpor
ation of America のcolor h
armoneymanual)を用いた。
【0035】(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(2
7℃培養) うす黄〜うす黄茶[2gc,Bamboo]の発育上
に、白〜明るい灰[3fe,Silver Gray]
の気菌糸を着生し、溶解性色素は認められない。
【0036】(2)グルコース・アスパラギン寒天培地
(27℃培養) 発育はうす黄[2ea,Lt Wheat]〜うす黄茶
[2gc,Bamboo]、気菌糸は着生せず、溶解性
色素は認められない。
【0037】(3)グリセリン・アスバラギン寒天培地
(ISP−培地5、27℃培養) 発育はオリーブ灰[2ie,Lt Mustard T
an]、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められな
い。
【0038】(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP
−培地4、27℃培養) うす黄茶[2gc,Bamboo]の発育上に、明るい
茶灰[5dc,Pus−sywillow Gray]
の気菌糸を着生し、溶解性色素は認められない。
【0039】(5)チロシン寒天培地(ISP−培地
7、27℃培養) 発育は無色〜オリーブ灰[2ie,Lt Mustar
d Tan]、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認めら
れない。
【0040】(6)栄養寒天培地(27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0041】(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP−
培地2、27℃培養) うす黄茶[3ie,Camel〜3le,Cinnam
on]の発育上に、白の気菌糸をうっすらと着生し、溶
解性色素は認められない。
【0042】(8)オートミール寒天培地(ISP−培
地3、27℃培養) 無色の発育上に、白〜茶白の気菌糸を着生し、溶解性色
素は認められない。
【0043】(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(27
℃培養) 無色の発育上に、白の気菌糸をわずかに着生し、溶解性
色素は認められない。
【0044】(10)スターチ寒天培地(27℃培養) うす黄[2ea,Lt Wheat]〜うす黄茶[2g
c,Bamboo]の発育上に、白の気菌糸をうっすら
と着生する。溶解性色素は認められない。
【0045】(11)リンゴ酸石灰寒天培地(27℃培
養) 無色〜うす黄の発育上に、白の気菌糸をうっすらと着生
し、溶解性色素は認められない。
【0046】(12)セルロース(濾紙片添加合成液、
27℃培養) 発育は無色、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められ
ない。
【0047】(13)ゼラチン穿刺培養 15%単純ゼラチン培地(20℃培養)、グルコース・
ペプトン・ゼラチン培地(27℃培養)のいずれにおい
ても、発育は無色〜うす黄、気菌糸は着生せず、溶解性
色素は認められない。
【0048】(14)脱脂牛乳(37℃培養) 発育は無色〜うす黄茶、気菌糸は着生せず、溶解性色素
も認められない。
【0049】3.生理的性質 (1)生育温度範囲 イースト・スターチ寒天培地(可溶性デンプン1.0
%、イースト・エキス0.2%、紐寒天3.0%、pH
7.0)を用い、6℃、20℃、24℃、27℃、30
℃、37℃、50℃の各温度で試験した結果、6℃、5
0℃を除き、そのいずれの温度でも発育したが、生育至
適温度は27℃〜30℃付近と思われる。
【0050】(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチ
ン培地、20℃培養:グルコース・ペプトン・ゼラチン
培地、27℃培養) 15%単純ゼラチン培地では3週間培養の観察で液化を
認めない。グルコース・ペプトン・ゼラチン培地におい
て、培養後5日目頃より液化が始まるが、その作用は弱
い。
【0051】(3)スターチの加水分解(スターチ無機
塩寒天培地およびスターチ寒天培地、いずれも27℃培
養) いずれの培地においても培養後3日目頃より水解性が認
められ、その作用は強い方である。
【0052】(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂
牛乳、37℃培養) 培養後14日目頃より凝固状を呈し3〜4日間完了後、
ゆっくりとペプトン化が進行するが、その作用は弱い方
である (5)メラニン様色素の生成(トリプトン・イースト・
ブロス、ISP−培地1:ペプトン・イースト・鉄寒天
培地、ISP−培地6:チロシン寒天培地、ISP−培
地7:いずれも27℃培養) いずれの培地でも陰性である。
【0053】(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴド
リーブ寒天培地、ISP−培地9:27℃培養) D−グルコース、L−アラビノース、D−フラクトース
を利用して発育し、イノシトール、ラムノース、ラフィ
ノース、D−マンニトール、ラクトースは利用しない。
D−キシロース、シュクロースは、おそらく利用しない
と思われる。
【0054】(7)リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰
寒天培地、27℃培養) 陰性である。
【0055】(8)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カ
リウム含有ペプトン水、ISP−培地8:27℃培養) 陽性である。
【0056】(9)セルロースの分解(濾紙片添加合成
液、27℃培養) 陰性である。
【0057】以上の性状を要約すると、MJ288−O
F3株は、その形態上まっすぐ、あるいは曲がった気菌
糸を伸長し、輪生枝及び胞子のうは認められない。又、
気菌糸の先端には50個以上の胞子の連鎖を認め、胞子
の表面は平滑である。種々の培地で、無色〜うす黄茶の
発育上に白の気菌糸をうっすらと着生する場合が多く、
豊富な気菌糸を着生する時は明るい灰〜明るい茶灰を呈
する。溶解性色素は認められない。メラニン様色素の生
成は陰性である。スターチの水解性は強い方、蛋白分解
力は弱い方である。
【0058】又、細胞壁に含まれる2,6−ジアミノピ
メリン酸はLL−型であった。これらの性状より、MJ
288−OF3株は、ストレプトミセス(Strept
o−myces)属に属すると考えられる。
【0059】なお、MJ288−OF3株を工業技術院
微生物工業技術研究所に寄託申請し、平成3年3月27
日、微工研菌寄第12132号として寄託された。
【0060】次に、ピエリシジンB N−オキシドの
製造について説明する。
【0061】本発明では、ストレプトミセス属に属する
ピエリシジンB N−オキシド生産菌株を栄養源含有
培地に接種して好気的に発育させることによってピエリ
シジンB N−オキシドを含む培養物が得られる。栄
養源としては放線菌の栄養源として使用しうるものが使
用される。栄養源として、例えば市販されているペプト
ン、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、綿実粉、
落花生粉、大豆粉、酵母エキス、NZ−アミン、カゼイ
ンの水解物、硝酸ソーダ、硝酸アンモニウム、硫酸アン
モニウムなどの窒素源が使用でき。また市販されている
グリセリン、しょ糖、でん粉、グルコース、ガラクトー
ス、マンノース、糖蜜などの炭水化物あるいは脂肪など
の炭素源が使用できる。更に、食塩、リン酸塩、炭酸カ
ルシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩を添加して使
用できる。その他必要に応じて微量の金属塩を添加する
ことができる。これらのものはピエリシジンB N−
オキシド生産菌が利用し、ピエリシジンB N−オキ
シドの生産に役立つ物であればよく、公知の放線菌の培
養材料はすべて用いることができる。
【0062】ピエリシジンB N−オキシドの生産は
ストレプトミセス属に属するピエリシジンB N−オ
キシド生産能を有する微生物が使用される。具体的に
は、本発明者らの分離したストレプトミセスMJ288
−OF3株がピエリシジンBN−オキシドを生産する
ことが本発明者等によって明らかにされているが、その
他の菌株については、抗生物質生産菌の単離の常法によ
って適当なものを自然界により分離することが可能であ
る。また、ストレプトミセスMJ288−OF3株を含
めて、ピエリシジンB N−オキシドの生産菌を放射
線照射その他の変異処理に付して、ピエリシジンB
N−オキシドの生産能を高める余地も残されている。更
に遺伝子工学的手法によりピエリシジンB N−オキ
シドの生産も可能である。
【0063】ピエリシジンB N−オキシドはストレ
プトミセス属に属するピエリシジンB N−オキシド
生産菌を適当な培地で好気的に培養し、その培養物から
目的物を採取することによって製造することができる。
使用しうる培養温度はピエリシジンB N−オキシド
生産菌の発育が実質的に阻害されずに該抗生物質を生産
しうる範囲であれば、特に制約されるものでなく、使用
する生産菌に応じて選択できるが、好ましくは25−3
0℃の範囲内の温度を挙げることが出来る。
【0064】培養時間は、通常、抗生物質ピエリシジン
N−オキシドが十分に蓄積するまで継続すること
ができ、使用生産菌や、培地組地、培養温度により異な
るが、通常は48−96時間の培養で目的の抗生物質を
得ることができる。
【0065】培養中の抗生物質ピエリシジンB N−
オキシドの蓄積量は検定菌としてミクロコッカス・ルテ
ウスFDA16株を使用して、通常の抗生物質の定量に
用いられる円筒平板法によって定量することができる。
【0066】かくして、培養物中に蓄積され抗生物質ピ
エリシジンB N−オキシドは、培養後に必要によ
り、濾過、遠心分離などのそれ自体公知の分離方法によ
って菌体も除去し、その濾液上澄から適当な有機溶媒を
用いた溶媒抽出法や、吸着、高速液体クロマトグラフィ
ー、向流分配法を利用したクロマトグラフィーを、単独
でまたは、組み合わせて使用することにより単離精製し
て採取することができる。ここに用いられる有機溶媒と
しては、クロロホルム、酢酸エチルなど、抗生物質ピエ
リシジンB N−オキシドを溶解でき、水に実質的に
不溶なものを挙げることができる。また、吸着クロマト
グラフィー担体としては、活性炭、シリカゲル、多孔性
ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂を用いることがで
きる。
【0067】また、分離した菌体からは、適当な有機溶
媒を用いた溶媒抽出法や菌体破砕による溶出法により菌
体から抽出し上記と同様に単離、精製して採取すること
ができる。ここに用いられる有機溶媒としてはメタノー
ル、アセトンなど抗生物質ピエリシジンB N−オキ
シドを溶解でき、菌体を破壊できるものを挙げることが
できる。
【0068】かくして、前記した抗生物質ピエリシジン
N−オキシドが得られる。
【0069】次の実施例により本発明を更に詳しく説明
する。
【0070】実施例1. 抗生物質ピエリシジンB
N−オキシドの製造 寒天斜面培地に培養したストレプトミセスMJ288−
0F3株(微工研菌寄第12132号)を、シュークロ
ース4.0%、味の素プロリッチ2.5%、食塩0.2
5%、炭酸カルシュウム(沈降性)0.32%、硫酸銅
0.0005%、塩化マンガン0.0005%、硫酸亜
鉛0.0005%を含む液体培地(pH7.4に調整)
(三角フラスコ(500ml容))に110mlずつ分
注し、常法により120℃で20分間滅菌したものに接
種し、その後、27℃で3日間振盪培養した。これによ
り、種母培養物を得た。
【0071】この種母培養液を、同様に三角フラスコに
分注滅菌した同上組成の培地成分を含む液体培地800
mlに2%接種し、27℃で4日間振盪培養した。
【0072】このようにして得られた培養液を遠心分離
器にかけ菌体を分離しこの菌体にメタノール200ml
を加え、攪拌し、濾過した。この濾液はメタノールを減
圧下に濃縮したあと、先の遠心上澄液と合わせpH2.
0に合わせ酢酸ブチル800mlでピエリシジンB
N−オキシドを抽出した。この抽出液を減圧下に濃縮
し、得られた残渣479mgをシリカゲルカラム(15
g)にかけて、クロロホルム−メタノール(混合比5
0:1)で展開溶出した。この溶出活性分画を集め、減
圧下に濃縮して得られた粗粉末を次に、セファデックス
LH−20カラム(200ml)にかけてメタノールで
展開して精製した(15.9mg)。必要に応じてシリ
カゲルプレートでクロロホルム−メタノール−水(混合
比10:1.5:0.1)で展開し活性区分をシリカゲ
ルプレートからかきとり、クロロホルム−メタノール
(混合比1:1)でシリカゲルより抽出し、再びセファ
デックスLH−20カラム(200ml)にかけメタノ
ールで展開し活性分画を減圧下に濃縮すると、10mg
のピエリシジンB N−オキシドを油状物として得
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピエリシジンB N−オキシドの紫外部吸収
スペクトルを示す。なお、実線はメタノール中の本化合
物の吸収スペクトルを、破線は0.1N NaOH−メ
タノール中の本化合物の吸収スペクトルを、また点線は
0.1N HCl−メタノール中の本化合物の吸収スペ
クトルを表わす。
【図2】ピエリシジンB N−オキシド(KBr錠
中)の赤外部吸収スペクトルを示す。
【図3】ピエリシジンB N−オキシドのH- NM
Rスペクトル(重クロロホルム中、400MHz)を示
す。
【図4】ピエリシジンB N−オキシドの13C- N
MRスペクトル(重クロロホルム中、100MHz)を
示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年3月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】(7)プロトン核磁気共鳴スペクトル:重
クロロホルム中で400MHz、室温で測定したピエリ
シジンB 1 N−オキシドの 1H−核磁気共鳴スペクト
ルを添付図面の図3に示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】(8)13C−核磁気共鳴スペクトル:重
クロロホルム中で100MHz、室温で測定したピエリ
シジンB 1 N−オキシドの炭素13核磁気共鳴スペク
トルを添付図面の図4に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:465) 7804−4B (72)発明者 濱田 雅 東京都新宿区内藤町1番地26 秀和レジデ ンス405号 (72)発明者 堀 誠 東京都練馬区練馬4丁目24番3号 (72)発明者 長縄 博 東京都大田区田園調布本町3番17号 (72)発明者 梅澤 一夫 東京都渋谷区広尾3丁目1番2−505号 (72)発明者 高橋 良和 東京都多摩市桜ケ丘3丁目2番地の3

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の式(I): で表わされる化合物である抗生物質、ピエリシジンB
    N−オキシド。
  2. 【請求項2】 ストレプトミセス属に属するピエリシジ
    ンB N−オキシド生産菌を培養し、その培養物から
    請求項1に示された式(I)のピエリシジンB N−
    オキシドを採取することを特徴とする、ピエリシジンB
    N−オキシドの製造法。
  3. 【請求項3】 請求項1に示された式(I)の抗生物質
    ピエリシジンBN−オキシドを有効成分とするイノシ
    トールリン脂質代謝回転阻害剤。
  4. 【請求項4】 請求項1に示された式(I)の抗生物質
    ピエリシジンBN−オキシドを有効成分とする抗腫瘍
    剤。
JP11212391A 1991-04-18 1991-04-18 新規抗生物質ピエリシジンb1 n−オキシドおよびその製造法 Pending JPH05178838A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101979630A (zh) * 2010-08-31 2011-02-23 浙江省农业科学院 一种杀虫生物活性物质的制备方法

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