JPH05164060A - 歯車式ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 摺動部に流体膜を安定に形成し、直接接触に
よる摩耗や摩耗に伴う騒音ならびにポンプ効率の低下を
防止するようにした製作の容易な歯車式ポンプを提供す
る。 【構成】 インナロータ１３およびアウタロータ１４の
両端面に各同心円上に形成される凹部１３ａ、１４ａ
は、インナロータ１３の外歯面またはアウタロータ１４
の内歯面の各歯面から閉じるように独立して形成され、
回転時に吸入ポート２１または吐出ポート２２と一時的
に連通する。回転時、吸入ポート２１に凹部１３ａ、１
４ａが連通している間に凹部１３ａ、１４ａに燃料が充
満し、吸入ポート２１に凹部１３ａ、１４ａが非連通と
なったときはこの凹部の充満燃料がインナロータおよび
アウタロータの摺接面に供給される。凹部１３ａ、１４
ａは歯面に向けて閉じた溝状のものであるから、溝内の
保有燃料により有効に油膜が形成され、油膜切れによる
摩耗を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、歯車式ポンプに関し、
特に自動車用燃料ポンプに利用するのに好適な歯車式ポ
ンプに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の歯車式ポンプとして、特開昭６０
−８５２８４号公報および特開昭６１−１０４１７８号
公報に示すものが知られている。これらの歯車式ポンプ
は、流体の吸入口および吐出口を備えたロータハウジン
グと、その内部に格納されるアウタロータおよびインナ
ロータとからなり、アウタロータの歯数より１枚少ない
歯数の歯をもつインナロータを回転駆動させることによ
り、インナロータに噛み合うアウタロータをインナロー
タと同一方向に回転する。

【０００３】吸入配管からロータハウジングの吸入口に
導入されるオイルは、インナロータ、アウタロータによ
って形成される空間部分に吸入され、インナロータ、ア
ウタロータの回転によってこの隙間部分が容積変化する
ことによるポンプ作用によって吐出口から吐出配管に送
り出される。そして、これらのポンプの場合、ロータの
端面またはこのロータを支持する支持部材の端面に潤滑
油を導入するテーパードランドまたは細線状の潤滑溝を
設けている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の歯車式ポンプによると、燃料ポンプ用の歯車
式ポンプに用いた場合、トロコイドロータの外径は約２
０〜３０ｍｍと小さく、このような小径のトロコイドロ
ータに前記公報に開示される複雑形状のテーパードラン
ド、細線状の潤滑溝を設けることは製作加工が困難であ
り、製造コストが高コストになる。

【０００５】本発明の目的は、アウタロータ、インナロ
ータおよびケーシングとの間の摺動部に流体膜を安定に
形成し、直接接触による摩耗や摩耗に伴う騒音ならびに
ポンプ効率の低下を防止するようにした歯車式ポンプを
提供することにある。本発明の別の目的は、このポンプ
内部のアウタロータまたはインナロータの摺接面に流体
を導入する凹部を容易に形成可能な歯車式ポンプを提供
することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の歯車式ポンプは、外周部に外歯が形成される
インナロータと、内周部に前記外歯に噛み合う内歯が形
成され、前記インナロータ回転中心の偏心位置に回転中
心をもつアウタロータと、前記インナロータと前記アウ
タロータを収容するとともに、前記インナロータと前記
アウタロータとの間に形成される複数の容積室に対応し
て吸入ポートと吐出ポートとを有するケーシングとを備
え、前記インナロータと前記アウタロータとを回転駆動
して前記吸入ポートから前記吐出ポートへ流体を圧送す
る歯車式ポンプにおいて、前記インナロータまたは前記
アウタロータの端面に形成され、前記吸入ポートまたは
前記吐出ポートと一時的に連通する凹部であって、前記
外歯または前記内歯の各歯面から閉じる位置に形成され
る凹部を有することを特徴とする。

【０００７】

【作用】インナロータおよびアウタロータが回転駆動さ
れると、前記凹部が吸入ポートまたは吐出ポートに一時
的に連通する。このとき、この凹部に流体が充満する。
そして、この凹部が吸入ポートまたは吐出ポートに非連
通となるとき、この凹部に充満された流体の一部がイン
ナロータまたはアウタロータとケーシングとの間の摺接
面に供給される。このため、インナロータまたはアウタ
ロータとケーシングの間の摺接面に流体膜が積極的に形
成されるので、インナロータまたはアウタロータとケー
シングとの直接接触による摩耗が防止される。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。自動車用内燃機関の燃料ポンプに本発明を適用し
た第１実施例を図１および図２に示す。図２に示すよう
に、燃料ポンプ１は、モータ部２とポンプ部３とからな
る。円筒状のハウジング４の一端には、樹脂製のベアリ
ングホルダ４１が嵌入されている。このベアリングホル
ダ４１には、後述するシャフト１０のベアリングが設け
られ、図示しないブラシ等が保持される。

【０００９】ハウジング４にはさらにフレームエンド４
２が嵌入されている。そして、ハウジング４の端縁部を
かしめることにより、ベアリングホルダ４１とフレーム
エンド４２とが固定される。このフレームエンド４２に
は、給電端子６や逆止弁５０が設けられる。モータ部２
には、給電端子６に供給される電流によって回転駆動さ
れるアーマチャ５がハウジング４内に収容されている。
アーマチャ５に固定されるシャフト１０は回転可能に支
持されている。

【００１０】ポンプ部３には、ケーシング１５、ポンプ
スペーサ１６、スペーサカバー１７がハウジング４に圧
入等によって固定されている。トロコイド曲線によって
形成されるインナロータ１３とアウタロータ１４は、イ
ンナロータ１３の外歯とアウタロータ１４の内歯とを噛
み合わせ、各ロータの軸心を偏心させてポンプスペーサ
１６、スペーサカバー１７およびケーシング１５で囲ま
れるポンプ室に収容される。インナロータ１３の外歯の
数は、アウタロータ１４の内歯の数よりも１個少なく形
成される。

【００１１】軸受２８とブッシュ３０は、ケーシング１
５の内壁１５ａに圧入される。またインナロータ１３の
内壁１３ａに圧入される軸受３３は、ブッシュ３０の周
りに回転可能に嵌合されている。そして、図１に示すよ
うに、インナロータ１３の両端面に半球状の凹部１３ａ
が同心円上で等間隔に１０個形成されている。アウタロ
ータ１４についても同様に同心円上に等間隔に半球状の
凹部１４ａが１１個形成されている。これらの凹部１３
ａ、１４ａはインナロータ１３およびアウタロータ１４
の各歯面に向けて閉じている。インナロータ１３の凹部
１３ａを形成する位置は、それぞれインナロータ１３の
歯面頂部のロータ半径方向内側のロータの剛性を損なわ
ない位置であり、アウタロータ１４の凹部１４ａを形成
する位置は、アウタロータ１４のロータ半径方向外側に
各ロータの剛性を損なわない位置である。本発明として
は、これらの凹部の形状は特に限定されるものでなくま
た個数についても限定されない。

【００１２】シャフト１０の回転力がカップリング１２
を経由してインナロータ１３に伝達されると、インナロ
ータ１３とアウタロータ１４との噛み合いによってイン
ナロータ１３とアウタロータ１４とは同一方向に回転
し、インナロータ１３の外歯とアウタロータ１４の内歯
とによって形成される隙間としてのポンプ室が容積変化
してポンプ作用を行う。これにより、燃料は、吸入口２
０から吸入ポート２１、ポンプ室、吐出ポート２２を経
由してモータ内部２９に入り、逆止弁５０を有する吐出
口５１から外部に圧送される。

【００１３】次にこの実施例の作動について説明する。
図２に示す給電端子６に電圧が印加されると、直流モー
タを構成するアーマチャ５が回転する。アーマチャ５の
回転に伴いシャフト１０に固定されるカップリング１２
が回転すると、カップリング１２に噛み合うインナロー
タ１３が回転し、インナロータ１３の外歯に噛み合うア
ウタロータ１４が回転する。すると、燃料ポンプ１は、
トロコイドポンプとして作動し、吸入口２０から吸込ん
だ燃料を、吸入ポート２１からポンプ室内に取込み、ポ
ンプ室の圧縮体積変化により燃料を吐出ポート２２より
モータ内部２９へ送り出す。モータ内部２９を通過した
燃料は、逆止弁５０を押し開いて吐出口５１、図示しな
い配管を経由して燃料噴射弁から内燃機関に供給され
る。

【００１４】この場合、インナロータ１３の回転に伴い
アウタロータ１４が回転すると、その際、前記凹部１３
ａおよび凹部１４ａのうちの吸入ポート２１に対面する
つまり連通する凹部１３ａおよび凹部１４ａはその内部
に燃料を吸い込む。このため、インナロータ１３、アウ
タロータ１４の各端面とスペーサカバー１７との間の端
面に油膜が形成されるため、その端面における油膜切れ
による摩耗が防止される。

【００１５】さらには、これらの凹部１３ａおよび凹部
１４ａがインナロータ１３およびアウタロータ１４の各
歯部端面に向けて閉じた溝に構成されるから、スペー
サカバー１７側のインナロータ１３およびアウタロータ
１４の端面に形成される凹部１３ａおよび凹部１４ａが
吸入ポート２１と非連通になったとき、凹部１３ａ、１
４ａ内の燃料の拡散によりスペーサカバー１７とインナ
ロータ１３およびアウタロータ１４との隙間に積極的な
油膜形成が確保されて潤滑機能を果たす。一方、ケー
シング１５側のインナロータ１３およびアウタロータ１
４の端面に形成される凹部１３ａおよび凹部１４ａにつ
いては、吐出ポート２２に連通するとき燃料が凹部１３
ａおよび凹部１４ａに取り込まれるから、これらの凹部
１３ａおよび凹部１４ａが吐出ポート２２と非連通にな
ったときにケーシング１５とインナロータ１３およびア
ウタロータ１４の隙間に積極的な油膜形成がなされて油
膜切れを防止する。したがって、インナロータ１３およ
びアウタロータ１４とスぺーサカバー１７、ポンプスペ
ーサ１６およびケーシング１５との間の摺動抵抗が低減
され、摩耗が低減される。このため、トロコイドポンプ
を駆動するトルクが小さくなるのでモータ部２で消費す
る供給電流を低減することができる。

【００１６】また前記実施例の場合、インナロータ１３
およびアウタロータ１４は焼結金属で作られ、半球状の
凹部１３ａ、１４ａは成形型に半球状の凸部を形成して
作られるから、成形型の製造が容易になり、また成形が
容易になり、成形型の摩耗も少なくなり耐久性が良好で
あるという効果がある。次に本発明の第２実施例による
燃料ポンプの変形例を図３に示す。

【００１７】第２実施例に示す燃料ポンプはインナロー
タ１３およびアウタロータ１４に形成する凹部１３ｂ、
１４ｂの形状を楕円状溝に形成した例である。この凹部
１３ｂ、１４ｂは、前記第１実施例と同様にインナロー
タ１３の両端面およびアウタロータ１４の両端面の歯部
頂面に閉じるように形成されている。この実施例におい
ても凹部１３ｂおよび凹部１４ｂが端面に向けて閉じた
溝状に形成されるから溝内の燃料が保持され、有効に油
膜形成に寄与するため、油膜切れによる摩耗を防止する
ことができる。

【００１８】なお、前記実施例の前記凹部１３ａ、１４
ａについては、インナロータ１３およびアウタロータ１
４の各両端面に形成したが、これらの凹部は、インナロ
ータ１３およびアウタロータ１４の各一方の端面のみに
形成してもよく、またインナロータ１３の端面のみまた
はアウタロータ１４の端面のみに形成してもよい。ま
た、凹部は、すべての歯と歯の間に設けるものに限ら
ず、一部の歯と歯の間にまばらに設けてもよい。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の歯車式ポ
ンプによると、アウタロータまたはインナロータの端面
に流体保持用の凹部を有する構成であるから、この凹部
内の流体がアウタロータ、インナロータおよびケーシン
グの摺動部に供給されてこの摺動部に流体膜が積極的に
形成されるため、流体膜切れに伴う直接接触による摩耗
を確実に防止することができるという効果がある。

【００２０】また、本発明によると、摩耗しにくい耐久
性の高いアウタロータおよびインナロータをもつ歯車式
ポンプを比較的容易に製造することができるという効果
がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による燃料ポンプを示すも
ので、図２に示すＡ−Ａ線断面図である。

【図２】本発明の第１実施例による燃料ポンプを示す断
面図である。

【図３】本発明の第２実施例による燃料ポンプを示す断
面図である。

【符号の説明】

１３ インナロータ １３ａ、１３ｂ 凹部 １４ アウタロータ １４ａ、１４ｂ 凹部 １５ ポンプケーシング（ケーシング） １６ ポンプスペーサ（ケーシング） １７ スペーサカバー（ケーシング） ２１ 吸入ポート ２２ 吐出ポート

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】外周部に外歯が形成されるインナロータ
   と、 内周部に前記外歯に噛み合う内歯が形成され、前記イン
   ナロータ回転中心の偏心位置に回転中心をもつアウタロ
   ータと、 前記インナロータと前記アウタロータを収容するととも
   に、前記インナロータと前記アウタロータとの間に形成
   される複数の容積室に対応して吸入ポートと吐出ポート
   とを有するケーシングとを備え、 前記インナロータと前記アウタロータとを回転駆動して
   前記吸入ポートから前記吐出ポートへ流体を圧送する歯
   車式ポンプにおいて、 前記インナロータまたは前記アウタロータの端面に形成
   され、前記吸入ポートまたは前記吐出ポートと一時的に
   連通する凹部であって、前記外歯または前記内歯の各歯
   面から閉じる位置に形成される凹部を有することを特徴
   とする歯車式ポンプ。