JPH05163158A - 人尿性キニノゲナーゼを有効成分とする皮膚潰瘍の予防及び治療剤 - Google Patents

人尿性キニノゲナーゼを有効成分とする皮膚潰瘍の予防及び治療剤

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JPH05163158A
JPH05163158A JP3351325A JP35132591A JPH05163158A JP H05163158 A JPH05163158 A JP H05163158A JP 3351325 A JP3351325 A JP 3351325A JP 35132591 A JP35132591 A JP 35132591A JP H05163158 A JPH05163158 A JP H05163158A
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kininogenase
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treatment
prevention
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JP3351325A
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Kiichi Sawai
喜一 澤井
Masatsune Kurono
昌庸 黒野
Osamu Asano
修 浅野
Motohide Hayashi
元英 林
Tsunemasa Suzuki
常正 鈴木
Tamikazu Suzuki
民和 鈴木
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Sanwa Kagaku Kenkyusho Co Ltd
Original Assignee
Sanwa Kagaku Kenkyusho Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 人尿性キニノゲナーゼを有効成分とする皮膚
潰瘍の予防及び治療剤を提供する。 【構成】 人尿由来のキニノゲナーゼであって、殊に S
DS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法では主バンドが
41000 に且つ副バンドが 31000 にあり、ゲル濾過法に
よれば 47000 - 54000 の範囲内の分子量を示し、原液
の等電点が pI 3.92、4.08 及び 4.23 のキニノゲナー
ゼを有効成分として含有し、必要に応じてクエン酸及び
その塩から選択された物質が配合される。 【効果】 本剤は使用安全性が高く、主として点滴静注
投与され、全身的に作用して四肢の細血管を拡張して血
流を増加させ、血流障害に起因する皮膚潰瘍の諸症候を
比較的短期間の連投により改善する。従って、本剤は治
療目的のみならず、血流障害、例えば閉塞性血栓血管炎
や閉塞性動脈硬化症等に起因する皮膚潰瘍の予防のため
にも使用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は皮膚潰瘍の予防及び治療
剤、殊に人尿性キニノゲナーゼを有効成分とする皮膚潰
瘍の予防及び治療剤に係る。
【0002】
【従来の技術】近年、平均寿命が延びる傾向にあり、又
医療技術の進歩等により寝たきり老人が増加して所謂
「床擦れ」の問題があり、更にはストレスやアレルギー
を原因とする皮膚潰瘍、凍傷等の皮膚疾患が注目されつ
つある。このような皮膚疾患は、患部が広範囲にわたる
場合を除いて生命の危険に直接的な関係はないものと考
えられており、その治療に関しては、一般に皮膚保護
剤、抗感染症剤、ステロイドホルモン、例えば副腎皮質
ホルモン剤等のの局所的塗布投与が行われてきた。しか
しながら、これらは対症療法的なものに過ぎず、抜本的
な治療方法は確立されていないと云っても過言ではな
い。
【0003】このような現状に鑑みて、本発明者等は全
身作用的投与による皮膚潰瘍の治療についての研究を従
来から行っており、その結果アルドース還元酵素阻害剤
であるヒダントイン化合物が糖尿病合併症に伴う皮膚潰
瘍の予防と治療に有効性のあることを見い出した (特願
平 2 - 5773 明細書)。又、クロストリジウム属等の菌
体の培養物から得られる蛋白質が細胞増殖促進作用を有
することが見い出されている (特開昭 60 - 28999 公
報)。
【0004】一方、本発明による皮膚潰瘍の予防及び治
療剤が有効成分として用いようとするキニノゲナーゼは
国際酵素命名委員会が「キニノゲニン」の名称を与えて
おり、「カリジノゲナーゼ」とも称されているトリプシ
ン様酵素であり、血漿中や各種の組織に存在している物
質である。血漿中のキニノゲナーゼは分子量が約 80000
であってブラジキニンを遊離し、組織中のキニノゲナ
ーゼは分子量が約 30000 であってカリジンを遊離する
ものとされている。このように、主として肝で生合成さ
れるキニノゲナーゼと膵、顎下腺及び腎に高濃度に存在
する組織由来のキニノゲナーゼとは性質が異なってお
り、組織由来のキニノゲナーゼの内で膵及び顎下腺に見
い出されるものと尿中に見い出されるものとは免疫化学
的には同一のものと称されているが、全く同一であるか
否かは明確にはされていない。組織由来のキニノゲナー
ゼは血中のキニノーゲンを分解してキニンを生成し、こ
れを介して細動脈を拡張して血流を増加させ、又血圧降
下作用を発現する。従って原料入手の観点から、ブタ膵
臓由来のものが狭心症、高血圧症、末梢血管障害等の治
療目的で医薬品として使用されているが、異種蛋白であ
るために抗原性の観点から主として経口的に投与されて
いる。人尿由来のキニノゲナーゼに関しては、ブタ膵臓
由来のものと異なり抗原性が低いものと考えられるので
従来から注目され、各種の抽出分離法が提案されている
(特公昭 46 - 19067、特公平 1 - 41310 及び同 1 - 4
7997 公報参照)。しかしながら、人尿キニノゲナーゼ自
体、単一の物質であるか否かが不明であり、規格も統一
されるに至っておらず、従って現在迄の処医薬品として
実用化されるには至っていない。尚、キニノゲナーゼが
皮膚潰瘍の予防又は治療に有効であるとする報告は従来
全くなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来技術
に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、新規な皮
膚潰瘍予防及び治療剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者等は、
既述のように、全身作用的な物質であって皮膚潰瘍の予
防と治療に有効な物質に関する探索を鋭意継続した結
果、上記のキニノゲナーゼ、殊に人尿由来のキニノゲナ
ーゼが強力な脳機能障害改善作用を有しており且つ使用
安全性の高いことを見い出して本発明を完成するに至っ
た。
【0007】従って、本発明による皮膚潰瘍の予防及び
治療剤は人尿性キニノゲナーゼを有効成分としているこ
とを特徴としている。
【0008】本発明による皮膚潰瘍の予防及び治療剤に
おいて、キニノゲナーゼは人尿から抽出精製されたもの
であり、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法では主
バンドが 41000 に且つ副バンドが 31000 にあり、ゲル
濾過法によれば 47000 - 54000 の範囲内の分子量を示
し、原液の等電点が pI 3.92、4.08 及び 4.23 のキニ
ノゲナーゼであるのが有利である。
【0009】本発明による皮膚潰瘍の予防及び治療剤は
上記の人尿性キニノゲナーゼを 1ml当り約 0.15 PNA 単
位含有し且つクエン酸又はその塩を 0.1 - 1 重量% 含
有しているのが有利である。
【0010】本発明による皮膚潰瘍の予防及び治療剤の
有効成分である人尿性キニノゲナーゼに関する活性を示
す PNA 単位とは、H-D-Val-Leu-Arg-p-ニトロアニリド
を基質とし、これに上記の人尿性キニノゲナーゼを作用
させ、遊離した p-ニトロアニリド (PNA) を波長 405nm
での吸光度測定により比色定量し、37 ± 0.1℃ にお
いて 1 分間に1 μmol の PNAを生成した場合を 1 単位
とするものである。本発明による脳機能改善剤において
クエン酸又はその塩、例えばナトリウム塩やカリウム塩
を共存させるのは、キニノゲナーゼが一般に熱や光に対
して安定ではなく、本発明に用いられるものも例外では
なく、常温保存の場合には 6 ケ 月を越えると活性の低
下が認められ、又 2500 ルクス又はそれ以上の照度の光
照射を行うと比較的短時日で活性の低下が認められるか
らである。従って、換言すれば遮光下に、例えば褐色ア
ンプル中で低温保存すれば (-10℃ 程度)、安定化剤と
してのクエン酸又はその塩の共存は要件とはならないこ
とに留意され度い。
【0011】
【製造例等】次に、本発明による皮膚潰瘍の予防及び治
療剤の製造例、製剤例、活性試験例及び薬理試験例によ
り本発明を更に詳細に且つ具体的に説明する。尚、本発
明による皮膚潰瘍の予防及び治療剤は分解の抑制、延い
てはバイオアベイラビリティー向上の観点から主として
静注剤を企図しており、従って以下においては、これに
関連して説明するが、常法により経口剤として製剤化し
得ることに留意され度い。
【0012】製造例 1 (原液) 健常成人男子尿 10 リットルに塩酸を添加して pH を 5
に調整し、次いでキトサン 100g を添加して 1 時間攪
拌することにより尿中のキニノゲナーゼをキトサンに吸
着させた。吸着体を濾取し、充分に水洗した後に、0.2M
トリス塩酸緩衝液 500ml (pH9.0) にてキニノゲナーゼ
を溶出させ濾過することにより抽出液を得た。この抽出
液に対して、0.5M 塩化ナトリウム含有 0.1M 炭酸水素
ナトリウム緩衝液 (pH 9.0) を用いて透析処理を行っ
た。得られた透析液をアプロチン-セファロースカラム
(トリプシン阻害剤) で処理してキニノゲナーゼを吸着
させた後に、0.5M 塩化ナトリウム含有 0.1M 酢酸緩衝
液 (pH 3.5) にて溶出させることにより人尿性キニノゲ
ナーゼ原液 (18ml) を得た。
【0013】この原液の物理化学的性質は下記の通りで
あった。 (1) 性状 無色乃至淡黄色の澄明な液体であって、無臭であり、僅
かに塩味を呈し、pHは 5 - 7.5 である。
【0014】(2) 分子量 (A) SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法 a) Laemmli 法 分子量 41000 の位置に主バンドが、又 31000 の位置に
副バンドが認められ、両バンド共に活性が認められた。 (B) ゲル濾過法 a) Sephacryl S-200 を用いるゲル濾過法 分子量約 50000 の位置に単一のピークが認められ、活
性のピークと一致した。 b) Sephadex G-100 を用いるゲル濾過法 分子量約 47000 の位置に単一のピークが認められ、活
性のピークと一致した。 c) TSK-GEL (東洋曹達株式会社製) を用いた高速液体ク
ロマトグラフィー法 分子量約 54000 の位置に単一
のピークが認められ、活性のピークと一致した。
【0015】(3) アミノ酸組成 測定された上記の分子量値を勘案して分子量を 50000
と仮定すると、得られたキニノゲナーゼを構成するアミ
ノ酸残基数は 375 となり、その組成は下記の表 1 に示
される通りであった。このアミノ酸組成から明らかなよ
うに、このキニノゲナーゼを構成するアミノ酸は塩基性
のものが少なく酸性のものが多い。尚、Edman 分解法に
よれば、N 末端アミノ酸配列は Ile-Val-Gly であり、
これは人尿キニノゲナーゼに関して既に明らかにされて
いる N 末端領域の一次構造並びにヒト腎臓由来のキニ
ノゲナーゼの cDNA 解析からもたらされた一次構造と同
一である。
【0016】 A : キニノゲナーゼ 1 モル中のアミノ酸のモル数
(実測値)、 B : A を整数化した値、 * : Half-cystine、 n.d. : not detected。
【0017】(4) 糖組成 上記のキニノゲナーゼは酸性糖蛋白性物質であり、その
糖組成は下記の表 2に示される通りである。尚、N-グリ
コシド型糖鎖と 0-グリコシド型の糖鎖の結合している
ことが確認された。
【0018】
【0019】(5) 等電点 キャリアーアムホリン含有蔗糖密度勾配法により測定し
た処、キニノゲナーゼ原液の等電点は pI 3.92、4.08
及び 4.23 であった。
【0020】(6) 比活性 キニノゲナーゼ原液の活性は 1ml 当り 1.5 PNA 単位以
上であり、蛋白質 1mg当りとしては 4.0 PNA 単位以上
であった。
【0021】(7) 活性阻害物質 上記のキニノゲナーゼはアプロチニンにより、その活性
が 95% 以上阻害される。
【0022】(8) 免疫学的性質 キニノゲナーゼ原液の免疫学的性質をオクタロニー法に
より調べた処、ウサギ抗ヒト尿キニノゲナーゼ血清と明
瞭な沈降線を生じるが、ウサギ抗ブタ膵臓キニノゲナー
ゼ血清とは沈降線を生じないことが判明した。
【0023】(9) 酵素学的性質 (A) 天然キニノーゲンを基質とした場合 上記キニノゲナーゼのキニン遊離能に及ぼす影響を調べ
た。先ず、pH の影響について調べた処、ヒト低分子キ
ニノーゲンを基質とした場合及びイヌ低分子キニノーゲ
ンを基質とした場合に pH 5 - 11 の範囲で遊離活性が
認められ、最大遊離活性は pH 8.0 付近であった。一
方、ヒト高分子キニノーゲンを基質とした場合には pH
5 - 12 の範囲で遊離活性が認められ、最大遊離活性は
pH 8.5 付近であった。次に、各種濃度のイヌ低分子キ
ニノーゲン、ヒト低分子キニノーゲン及びヒト高分子キ
ニノーゲンを基質として、上記キニノゲナーゼの経時的
キニン遊離能を調べ、キニノゲナーゼの酵素動力学的定
数を求めた結果は下記の表 3 に示される通りであっ
た。
【0024】 LMWK : 低分子量キニノーゲン、 HMWK : 高分子量キニノーゲン。
【0025】(B) 低分子合成基質を用いた場合 低分子合成基質に対する上記のキニノゲナーゼの分解活
性について上記の (A)項におけると同様に検討し、キニ
ノゲナーゼの酵素動力学的定数を求めた結果は下記の表
4 に示される通りであった。
【0026】 BAEE : ベンゾイル-L-Arg エチルエーテル 塩酸塩、 PNA : H-D-Val-L-Leu-L-Arg-p-ニトロアニリド 2 塩酸
塩、 MCA : L-Pro-L-Phe-L-Arg-4-メチル-クマリル-7-アミ
ド。
【0027】製造例 2 (安定化粉末の製法) 製造例 1 で得た原液にクエン酸ナトリウムを濃度 3%
になるように添加し、70℃ において 20 時間加熱して
滅菌し、次いで凍結乾燥させることにより所望の安定化
粉末を得た。
【0028】製造例 3 (稀釈用アンプル製剤) 製造例 2 で得た凍結乾燥粉末に生理食塩水を添加して
1ml 当りキニノゲナーゼを 0.075 PNA 単位又は 0.15 P
NA単位含有するように調整し、無菌下でアンプルに 0.5
ml、1ml、2ml 宛分注し、アンプルを溶封した。このア
ンプル製剤は用時に開封され、必要に応じて静注用ビタ
ミン B1・B6・B12 複合剤と共に、補液 (例えば「フィ
ッシュザルツ」、「ソリタT3」又は「ラクトンゲル液 "
フソー"」等) 200ml に溶解稀釈され、点滴静注投与に
供されることができる。この場合の投与所要時間は 30
分間が適当である。
【0029】薬理試験例 1 (健常人を対象とする安全性
確認試験) 健常成人男子を対象としてキニノゲナーゼ 0.01、0.0
2、0.04、0.075、0.15及び 0.30 PNA 単位/body 単回投
与試験並びに 0.15 PNA 単位/body/day の 3日間反復投
与試験を実施した。被験者は各投与群毎に 3 例、計 21
例とし、年齢は 21 - 37 歳、身長は 160- 183cm、体
重は 51 - 78kg であった。被検薬の投与は「日局」 5%
ブドウ糖液100ml にキニノゲナーゼを規定量添加して
溶解させ、大伏在静脈から 30 分間にわたり点滴静注す
ることにより行われた。評価は臨床症状観察として自覚
症状、血圧、心拍数、体温、呼吸数、聴診等について観
察した。臨床検査としては血液学的検査、血清生化学的
検査、線溶・凝固系検査、尿検査、キニノゲナーゼ抗体
検査 (感作赤血球凝集試験)、心電図及び血漿中薬物動
態について実施した。臨床症状の観察では単回投与試験
の最高投与量である 0.30 PNA 単位/body 群における 3
例中の 2 例に、投与開始直後から約 10 分間にわたり
キニノゲナーゼの薬理作用に起因するものと思われる軽
度の顔面紅潮感が認められた。又、単回投与の 0.15、
0.30 PNA 単位投与群及び 0.15 PNA 単位/day の 3 日
間反復投与群において点滴静注の最中に拡張期圧の低下
傾向が認められ、0.075 PNA 単位又はそれ以上の投与群
においては心拍数に増加傾向が認められたが、キニノゲ
ナーゼの投与に起因するものと考えられる他の異常所見
は認められなかった。臨床検査では、何れの投与群にお
いても、キニノゲナーゼの投与に起因するものと思われ
る臨床検査値の変動は認められなかった。抗体検査にお
いても抗体の産生は認められなかった。キニノゲナーゼ
の血漿中濃度は 0.01 及び 0.02 PNA 単位投与群では検
出されなかったが、0.04 PNA 単位及びそれ以上の投与
群では検出された。0.04、0.075、0.15 及び 0.30 PNA
単位投与群の C30min、AUC0-180min は投与量との間に
高い線形関係が認められた。尚、t1/24 は約170 分であ
った。尚、3 日間の反復投与試験において 1 日目と 3
日目ではほぼ同様の血漿中濃度推移を示し、薬物動態学
的パラメータも殆ど差はなく、従って連投による薬物の
体内蓄積は生じないものと考えられた。
【0030】薬理試験例 2 (有効量の設定試験) 閉塞性血栓血管炎又は閉塞性動脈硬化症の患者であって
四肢に潰瘍を認め、閉塞部位が確認された者 (軽症 -
中等症の者) を対象として1 日 1 回下記の用量でキニ
ノゲナーゼを補液に添加し (既述の「製造例 3 参照)、
30 分間の持続静注により 2 週間にわたり投与した。 A 群 : 0.075 PNA 単位/body、 B 群 : 0.15 PNA 単位/body、 C 群 : 0.30 PNA 単位/body。 潰瘍の直径を経時的に測定し、平均直径 (mm) 及び縮小
率 (√長径 x √短径)を算出した結果は下記の表 5 及
び 6 に示される通りであり、0.15 - 0.30 PNA単位/bod
y の投与で有効性が認められた。尚、潰瘍の平均直径で
は 0.30PNA 単位/body 投与群に減少が認められるが、
減少率に関しては 0.15 PNA 単位/body投与群が優って
おり、副作用発現の可能性を考慮に入れると、後者が至
適用量と考えられた。
【0031】 表 5 中において、数値 : mean ± SE (mm), ( ) : 例数, * : p > 0.05, ** : p > 0.01.
【0032】 表 5 中において、数値 : mean ± SE (%), ( ) : 例数, * : p > 0.05, ** : p > 0.01.
【0033】薬理試験例 3 (臨床試験) 閉塞性血栓血管炎又は閉塞性動脈硬化症の患者であって
四肢に潰瘍を認め、閉塞部位が確認された者) を対象と
して各地の施設に委託して臨床試験を実施した。 (1) 試験方法 (A) 被験薬物 (a) 低用量群 : 0.075 PNA 単位のキニノゲナーゼ
(0.5ml) + プラセボ1.0ml/body、 (b) 高用量群 : 0.150 PNA 単位のキニノゲナーゼ
(1.0ml) + プラセボ0.5ml/body。 (B) 投与方法及び期間 上記の被験薬物 (アンプル入り、キニノゲナーゼに関し
ては既述の「製造例 3」参照) を補液 (「フィシザル
ツ」、「ソリタ T」又はラクトンゲル液「フソー」) 20
0ml に添加して稀釈し、30 分間で点滴静注した。投与
期間は 2 週間とした。尚、試験開始前に 1 週間の観察
期間を設け、併用禁止薬剤の洗い出しを行った。 (C) 解析手法 計量データについては t-検定、順序データについては
Mann-Whitney の U 検定、分類データについてはΧ2-検
定及び Fisher の直接確立計算法を用いることにした。
尚、有意水準は 5% とし、10% も参考にすることにし
た。
【0034】(2) 被調査者 (A) 対象 試験開始当時の被調査者である患者の累計数は 84 名
[低用量群 (以下、「L群」と称する) 40 名、高用量群
(以下、「H 群」と称する) 44 名] であったが、内 3
名 (H 群) は併用薬違反 (1 名) 及び慢性腎不全 (2
名) で調査対象から除外され、従って症例数は 303 例
であり、この内で併用薬違反、副作用の発現により投与
中止等を含めて厳密には適正な調査対象ではないが部分
的にはデータを採用した症例が L 群 で 16 例、H 群で
19 例、計 35 例あった。 (B) 被調査者の背景因子 解析対象 81 例の内で有用度採用症例は 66 例あり、そ
れら患者の背景因子について集計し解析した結果は下記
の表 7 に示される通りであり、何れにおいても有意差
は認められなかった。
【0035】 表 7 中において、 * : √長径 x √短径 (mm)
【0036】(3) 試験成績 (総合評価) (A) 全般的改善度 1 週間後における全般的改善度は、「中等度」以上の改
善を対象としてL 群16.7% (4/24)、H 群 22.2% (6/27)
であり、両群間に有意差は認められなかったが、「軽
度」改善以上をも対象にすると L 群 45.8% (11/24)、H
群 77.8% (21/27) であって H 群が L 群よりも有意に
改善率が高かった (p < 0.05)。2 週間後における全般
的改善度は、「中等度」以上の改善を対象として L 群4
8.3% (14/29)、H 群 48.6% (17/35) であり、両群間に
有意差は認められなかったが、「軽度」改善以上をも対
象にすると L群 58.6% (17/29)、H 群 94.3% (33/35)
であって H 群が L 群よりも有意に改善率が高かった
(p < 0.01)。
【0037】(B) 安全度 1 週間後における安全率 (「安全度で全く問題がない」
と判定された症例の割合) は L 群 91.9% (34/37)、H
群 93.0% (40/43) であった。2 週間後においては L 群
87.5% (28/32)、H 群 93.0%(41/43)) であって、何れ
の評価時期においても両群間に有意差は認められなかっ
た。
【0038】(C) 有用度 有用度を mean ± SE で調べた結果、L 群の 66.47 ±
4.83 に対して H 群は75.78 ± 3.26 と優れた値を示し
たが、両群間に有意差は認められなかった。尚、有用度
を下記の 5 段階に区分して評価した。 a) 極めて有用 : 100 - 91 b) 有用 : 90 - 71 c) やや有用 : 70 - 51 d) 有用とは云えない : 50 - 21 e) 好ましくない : 20 - 0 その結果、「有用」以上を対象とする場合に L 群が 5
5.2%(16/29)、H 群が62.2% (23/37) であって両群間に
有意差は認められなかったが、「やや有用」以上をも対
象にすると L 群 62.1% (18/29)、H 群 89.2% (33/37)
であって H 群が L 群よりも有意に有用率が高かった
(p < 0.05)。
【0039】(4) 項目別評価 (A) 潰瘍の大きさ改善度 1 週間後における L 群及び H 群の改善率は「縮小」以
上を対象とする場合にL 群が 46.4% (13/28)、H 群が 6
0.0% (21/35) であり、両群間に有意差は認められなか
ったが、「やや縮小」以上をも対象にすると L 群 57.1
% (16/28)、H群 82.9% (29/35) であって H群が L 群よ
りも有意に改善率が高かった (p < 0.05)。
【0040】(B) 潰瘍の大きさの推移 投与前と比較して、L 群における潰瘍の大きさは 1 週
間後、2週間後共に縮小したが、有意な縮小とは認めら
れなかった。これに対して、H 群における潰瘍は、投与
前の潰瘍の大きさを 100% とする場合に、1 週間後では
84.29 ± 4.53% に、又 2 週間後では 64.20 ± 6.55%
と何れも有意に縮小した (p < 0.01,p < 0.001)。
【0041】(C) 肉芽の性状改善度 肉芽の性状改善度は下記の表 8 に示される通りであ
り、両群間に有意差は認められなかったが、「中等度」
改善以上を対象とする場合に L 群で改善率は 1週間後
の時点で 20.8% (5/24)、 2 週間後で 39.3% (11/28)
であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で 29.6% (8/2
4)、 2 週間後で40.0% (14/35) であり、「軽度」改善
以上をも対象とする場合には L 群の改善率が 1 週間後
の時点で 50.0%(12/24)、 2 週間後で 64.3% (18/28)
であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で59.3% (16/2
7)、 2 週間後で 80.0% (28/35) であり、キニノゲナー
ゼが肉芽の性状を改善する作用を有していることが判
る。
【0042】
【0043】(D) 安静時における疼痛の改善度 安静時における疼痛の改善度は下記の表 9 に示される
通りであり、両群間に有意差は認められなかったが、
「中等度」改善以上を対象とする場合に L 群で改善率
は 1 週間後の時点で 17.2% (5/29)、 2 週間後で 28.6
% (8/28) であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で 35.7
% (10/28)、 2 週間後で 44.1% (15/34)であり、「軽
度」改善以上をも対象とする場合には L 群の改善率が
1 週間後の時点で 41.4% (12/29)、 2 週間後で 67.9%
(19/28)であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で 60.7%
(17/28)、 2 週間後で 67.6% (23/34) であり、キニノ
ゲナーゼが疼痛を和らげる作用を有していることが判
る。
【0044】
【0045】(E) 四肢における冷寒の改善度 四肢における冷寒の改善度は下記の表 10 に示される通
りであり、両群間に有意差は認められなかったが、「中
等度」改善以上を対象とする場合に L 群で改善率は 1
週間後の時点で 16.7% (4/24)、 2 週間後で 30.4% (7/
23) であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で 30.4% (7/
23)、 2 週間後で 31.0% (7/29) であり、「軽度」改善
以上をも対象とする場合には L 群の改善率が 1 週間後
の時点で 41.7% (10/24)、 2 週間後で 56.5% (13/23)
であり、一方 H 群は 1 週間後の時点で 47.8% (11/2
3)、 2 週間後で 55.2% (16/29) であり、キニノゲナー
ゼが四肢の冷寒を和らげる作用を有していることが判
る。
【0046】
【0047】(5) 層別解析 有用度採用症例 66 例について、患者の背景因子を考慮
に入れて層別解析を t- 検定、U 検定及び Fisher の直
接確立計算法により行った処、L 群と H 群との間に有
意差が認められ (p < 0.05 又はそれ以下)、又はその傾
向が認められた(p < 0.1) 層別項目は下記の通りであ
り、潰瘍部位が下肢 (足背・踵) の場合を除き何れの場
合にも H 群が優れていた。男、年齢 (40 - 59)、入
院、中等症例、閉塞部位・下肢、潰瘍部位・下肢(足背
・踵、趾)、手術歴・有、随伴疾患・無、既往症・無、
併用薬・有、潰瘍の大きさ・10mm ≦ <20mm (√長径
x √短径)、肉芽の性状・やや不良例、感染・有及び四
肢冷寒・中等度。
【0048】(6) 一般検査 Ankle pressure index、血圧、心拍数について測定し、
評価した。 (A) Ankle pressure index 投与前と比較する場合に、L 群に関しては 1 週間後の
時点では Index に有意差が認められなかったが、2 週
間後には 0.53 ± 0.07 (mean ± SE) から 0.63± 0.0
7 と有意に増加した (p < 0.05)。一方、H 群に関して
は、投与前 0.52 ± 0.05 であった index 値が 1 週間
後には 0.53 ± 0.07 に、又 2 週間後には 0.58 ± 0.
06 と何れも有意に増加した (p < 0.05, p < 0.05)。 (B) 血圧及び心拍数 投与前と比較する場合に、両群共に 1 週間後及び 2 週
間後の両時点で有意な変化は認められなかった。
【0049】(7) 副作用 試験期間中に発現した副作用で、本剤との関連性を否定
し得ないとして医師が「関連あり」、「関連があるらし
い」又は「関連がないとも云えない」と判定した主たる
症例は下記の通りであった。尚、副作用の発現率は L
群 16.2% (6/37)、H 群 9.3% (4/43) であり、両群間に
有意差は認められなかった。又、副作用のために投与を
中止した例数は L 群 1 例、H 群 3 例であった。腹鳴
亢進、胸内苦悶、頭痛・ふらつき、鼻出血、血圧低下、
顔面紅潮、下痢・発汗、嘔吐・全身熱感及び腹痛。更
に、臨床検査値における異常変動症例に関して、上記と
同様な判定が下された項目もあったが、投与前と投与後
の値に関して対応のある t-検定を行った処、何れも変
動は軽微で、臨床上殊に問題となる項目はなかった。
【0050】
【発明の効果】本発明は人尿性キニノゲナーゼを有効成
分とする皮膚潰瘍の予防及び治療剤を提供する。本発明
による剤は主として点滴静注投与され、閉塞性血栓血管
炎、閉塞性動脈硬化症等に起因する皮膚潰瘍を改善す
る。即ち、現在一般に汎用されている皮膚潰瘍の治療剤
は皮膚保護剤、二次感染防止のための抗感染症剤又は皮
膚代謝を促すステロイドホルモン例えば副腎皮質ホルモ
ン剤等の局所塗布投与を基本としているが、これらは血
流障害を要因としている皮膚潰瘍の場合には根本的な治
療剤とは云えず、又ステロイドホルモンは副作用発現の
可能性が高いので、連投に不向きである。これに対し
て、本発明による剤は使用安全性が高く、全身作用的投
与により且つ比較的短期間での連投により身体の内部か
ら要因を排除しながら皮膚潰瘍を治療するものであり、
従って合併症としての皮膚潰瘍の発現を予防するために
も用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 元英 愛知県名古屋市東区東外堀町35番地 株式 会社三和化学研究所内 (72)発明者 鈴木 常正 愛知県名古屋市東区東外堀町35番地 株式 会社三和化学研究所内 (72)発明者 鈴木 民和 愛知県名古屋市東区東外堀町35番地 株式 会社三和化学研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人尿性キニノゲナーゼを有効成分として
    いることを特徴とする、皮膚潰瘍の予防及び治療剤
  2. 【請求項2】 キニノゲナーゼが人尿から抽出精製され
    たものであり、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法
    では主バンドが 41000 に且つ副バンドが 31000 にあ
    り、ゲル濾過法によれば 47000 - 54000 の範囲内の分
    子量を示し、原液の等電点が pI 3.92、4.08 及び 4.23
    のものであることを特徴とする、請求項1に記載の皮
    膚潰瘍の予防及び治療剤。
  3. 【請求項3】 人尿性キニノゲナーゼを 1ml 当り約 0.
    15 PNA 単位含有し且つクエン酸又はその塩を 0.1 - 1
    重量%含有していることを特徴とする、請求項1又は2
    に記載の皮膚潰瘍の予防及び治療剤。
JP3351325A 1991-12-10 1991-12-13 人尿性キニノゲナーゼを有効成分とする皮膚潰瘍の予防及び治療剤 Pending JPH05163158A (ja)

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