JPH05153995A - イチゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方法 - Google Patents

イチゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方法

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JPH05153995A
JPH05153995A JP3288102A JP28810291A JPH05153995A JP H05153995 A JPH05153995 A JP H05153995A JP 3288102 A JP3288102 A JP 3288102A JP 28810291 A JP28810291 A JP 28810291A JP H05153995 A JPH05153995 A JP H05153995A
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anthocyanin
callus
culture
cells
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JP3288102A
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Tsukasa Mori
司 森
Junichi Shigeta
潤一 茂田
Masao Seki
昌夫 関
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IHI Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 イチゴから得られた細胞を固体培地で培養し
てカルス化する工程と、カルス細胞を照度3000Lux以下
の光条件下で液体培養する第1培養工程と、照度3000Lu
x以上の光条件下で培養し培養細胞内にアントシアニン
を生成させる第2培養工程と、培養細胞からアントシア
ニンを抽出する工程とを具備した製造方法における第2
培養工程で、第1培養工程の培養後の液体培地と新規調
整の液体培地とを混合した液体培地を用いることを特徴
とするアントシアニンの製造方法。 【効果】 第2培養工程で、第1培養工程での使用済培
地を混合した液体培地を用いることにより、第2培養工
程でのアントシアニン生産が促進され、この培養期間を
短縮できるので、アントシアニンの生産効率が向上す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イチゴ培養細胞を用い
てアントシアニンを大量生産するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】アントシアニンは花の色という意味を持
ち、花や果実の赤、紫、青系統の鮮やかな色のほとんど
はこのアントシアニンによっている。シソ、ブドウ、ク
ロマメ、赤カブ、バラ、イチゴなどはアントシアニンに
よりその色を呈している。このアントシアニンは着色料
や塗料の素材として実用価値が高いため、大量生産が検
討されている。また最近ではアントシアニンの血圧降下
作用などの研究もなされており、色素以外にも興味深い
性質を有している。
【0003】従来、アントシアニンの一般的な製法とし
ては、アントシアニンを含む種々の植物を材料とし、塩
酸酸性メタノールで材料からアントシアニンを抽出し、
この抽出液からイオン交換クロマトグラフィーによって
アントシアニンを分離する方法や、前記抽出液中に酢酸
鉛を加えて塩化鉛の沈澱をこし分け、次に生じた青色の
鉛塩を集め、これを塩酸酸性メタノールに再び溶かし、
エーテルを加えてアントシアニンを沈澱させ、鉛塩とし
て精製するか又はピクリン酸塩として析出させ、塩化物
に変えてアントシアニン結晶を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来法
によるアントシアニン製造では、栽培植物からアントシ
アニンを抽出することから原料コストが高くなり、アン
トシアニンを安価に製造することが不可能であった。ま
た栽培植物を原料とすると、植物の成長が遅く、栽培に
時間と手間がかかり、アントシアニンの生産効率が悪い
問題があった。さらにアントシアニンの製造が栽培植物
の収穫時期に左右され、年間を通して平均的にアントシ
アニンの製造ができない等の問題があった。
【0005】そして従来、栽培植物体からのアントシア
ニンの製造方法に比べ、アントシアニンの生産効率が高
く、アントシアニンを大量にかつ年間を通して平均的に
製造することが可能な方法として、ニンジン、ブドウ、
バラ、リンゴ、キクイモなどから誘導されたアントシア
ニン生産細胞を大量に培養し、この培養細胞からアント
シアニンを抽出する方法が検討されてきている。
【0006】しかし現段階では、アントシアニン生産細
胞を工業的規模で大量に培養するまでには至っていな
い。この主な原因としては、アントシアニン生産細胞を
材料から取り出し、培養を行う際に、培養細胞をスケー
ルアップして培養し、増殖させるのが困難であることが
挙げられる。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、アントシアニン生産能の高いイチゴ細胞を用い、ア
ントシアニンを効率良く大量生産することのできる製造
方法の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、イチゴから得
られた細胞をオーキシンあるいはオーキシンとサイトカ
イニンとを添加した固体培地で培養してカルスを形成す
る工程と、次いでカルス細胞をオーキシンあるいはオー
キシンとサイトカイニンとを添加した液体培地を用い、
照度3000Lux以下の光条件下で培養する第1培養工程
と、次いで培養細胞を照度3000Lux以上の光条件下で培
養し培養細胞内にアントシアニンを生成させる第2培養
工程と、次いで得られた培養細胞からアントシアニンを
抽出する工程とを具備したアントシアニンの製造方法で
あって、前記第2培養工程で、第1培養工程の培養後の
液体培地と新規調整の液体培地とを混ぜ合わせた液体培
地を用いて培養細胞の培養を行うことを特徴とするイチ
ゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方法である。
【0009】これらの製造方法において用いる固体培地
及び液体培地に添加するオーキシンとしては2,4−ジ
クロロフェノキシ酢酸が好適である。またサイトカイニ
ンとしてはベンジルアデニンが好適である。2,4−ジ
クロロフェノキシ酢酸の添加量は0.1〜5mg/リットルの範囲
が望ましく、ベンジルアデニンの添加量は5mg/リットル以
下が望ましい。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明者
らは、イチゴの各部から取り出した細胞を用い、光条件
や培地中のホルモン組成(オーキシン、サイトカイニン
濃度)を適切に設定することにより、イチゴ培養細胞を
大量に製造し、アントシアニンを大量生産する方法を発
明し、特願平1−224000号、特願平2−1651
89号、特願平2−165190号として特許出願し
た。
【0011】さらに本発明者らは、前記イチゴ培養細胞
の培養において、照度3000Lux以上として培養細胞内に
アントシアニンを生成させる工程(第2培養工程)で、
その前の第1培養工程で使用した後の液体培地と、新規
調整の液体培地とを混ぜ合わせた液体培地を用いること
により、アントシアニンの生成速度が促進され、この培
養期間を短縮できることを見出し、本発明を完成させ
た。
【0012】本発明のイチゴ培養細胞を用いたアントシ
アニンの製造方法では、まず、カルス化に適当な細胞を
イチゴから無菌的に取り出す。材料のイチゴは、特定品
種に限定されることなく、種々の品種から選択して使用
することができ、例えば我国で一般に広く栽培されてい
るオランダイチゴ(Fragariachiloensis Duchvar. an
anassa Bail)や四季なりイチゴ(Fragaria×ananass
a)などを使用できる。
【0013】カルス化に適当な細胞としては、イチゴの
葉、茎、根、ランナーなどの各部位から得ることがで
き、特に葉の断片が好適である。これらの部位は、適当
な大きさに切断した後、組織培養において通常使用され
る殺菌剤中に浸漬して殺菌し、無菌環境下に移し、滅菌
水で洗浄した後、薄刃カッター等を用いて1〜数mm程度
の大きさの断片とし、あるいは実体顕微鏡で観察しなが
ら生長点を摘出する。
【0014】次に、得られた細胞を固体培地に置床して
カルス化を行う。このカルス化に用いられる固体培地と
しては、MS(Murashige & Skoog)培地やLS(Lin &
Staba)培地、B5培地、EM培地などの基本培地に、
オーキシンあるいはオーキシンとサイトカイニン、炭素
源としてサッカロースなどの糖、0.8〜1%程度の寒天を
添加した固体培地が使用される。
【0015】前記オーキシンとしては、2,4−ジクロ
ロフェノキシ酢酸(以下、2,4−Dという)が特に好
適に使用され、またサイトカイニンとしてはベンジルア
デニン(以下、BAという)が好適に使用される。2,
4−Dの添加量は、0.1〜5mg/リットルの範囲が好ましい。
2,4−Dの添加量が0.1mg/リットル未満であるとカルス
形成が殆ど起こらず、添加量が5mg/リットルを越えるとカ
ルス形成が阻害されて細胞が枯れてしまう。また、BA
の添加量は5mg/リットル以下が望ましい。BAは必須では
なく、これを添加しなくても2,4−D単独の添加培地
を用いてカルスを形成することができるが、低濃度の添
加によってカルス形成が促進される。一方、BAの添加
量が5mg/リットルより多いと、カルス形成が阻害され細胞
が枯れてしまう。
【0016】イチゴから取り出した細胞をカルス化する
ための培養は、20〜30℃程度の温度で、照度3000Lux以
下の光条件とするのが望ましい。カルスの増殖は照度30
00Lux程度の場合に良好であるが、照度をそれ以上高く
するとカルスの増殖能が低下するとともに、培養時間の
経過に伴ってカルス表面にアントシアニンが生成され、
このようにアントシアニンが生成されたカルスは、次に
液体培養を行っても培養細胞の増殖が悪く、大量培養用
のカルスを形成するには不適当である。
【0017】このような条件でイチゴの細胞からカルス
を形成し、必要に応じて継代培養を行って大量培養用の
カルスを作製する。この固体培地により形成されるカル
スの内、白色〜クリーム色の柔らかいカルスは、次に液
体培地にて培養する際の増殖能が高く、一方、カルス表
面にアントシアニン等が生成して着色したり固くなった
カルスは増殖能が低い。このため大量培養用のカルス
は、白色の柔らかいカルスを選抜して用いることが望ま
しい。
【0018】次に、得られた大量培養用のカルスを液体
培地に入れ、照度3000Lux以下で振とう培養する(第1
培養)。ここで使用する液体培地としては、LS培地、
MS培地、B5培地、GA培地、EM培地などを基本培
地とし、これにオーキシンあるいはオーキシンとサイト
カイニンを添加した液体培地が使用される。
【0019】この液体培地中に添加するオーキシンとサ
イトカイニンは、2,4−DとBAが好ましく、それら
の添加量は、先のカルス化の際に使用した固体培地と同
様に、2,4−Dが0.1〜5mg/リットル、BAが0〜5mg/リッ
トルの範囲とするのが好ましい。2,4−Dの添加量が0.
1mg/リットル未満であると、カルスから組織の分化が起こ
ったり、培養細胞が緑化して増殖速度が低下するなどの
不都合が生じて好ましくない。また2,4−Dの添加量
が5mg/リットルを越えると、培養細胞の増殖が阻害され
る。また、BAは必須ではなく、BAを添加しなくて
も、2,4−D単独の培地を用いて培養細胞を増殖させ
ることができるが、低濃度のBA添加により培養細胞の
増殖を促進させることができる。一方、BAの添加量が
5mg/リットルを越えると、培養細胞の増殖が阻害される。
【0020】この液体培地を用いた第1培養の条件は、
温度20〜30℃とされ、光条件は照度3000Lux以下とす
る。この培養において照度3000Luxより高くすると、培
養細胞が緑化して増殖が悪くなる場合があり好ましくな
い。この条件で培養を行うことにより、カルスの細胞が
液体培地内で増殖し、この培養細胞を必要に応じてスケ
ールアップして培養し、所望量の培養細胞を生産する。
【0021】次に、液体培地内で増殖した培養細胞を、
第1培養工程の培養後の液体培地と新規調整の液体培地
とを混ぜ合わせた液体培地を用い、照度3000Lux以上、
好ましくは照度3000〜8000Luxの光条件下で培養し、培
養細胞を更に増殖させながら、培養細胞にアントシアニ
ンを生成させる(第2培養工程)。
【0022】この第2培養工程で使用する新規調整の液
体培地としては、LS培地、MS培地など第1培養工程
で用いたものと同じ組成の液体培地を用いることが望ま
しい。この新規調整の液体培地に添加するオーキシンあ
るいはオーキシンとサイトカイニンの種類や添加量は、
前述したカルス形成用の固体培地や一次培養用液体培地
と同様に、オーキシンとしては2,4−Dが、サイトカ
イニンとしてはBAが好ましく、それらの添加量は2,
4−Dが0.1〜5mg/リットル、BAが0〜5mg/リットルの範囲と
する。
【0023】第1培養工程の培養後の液体培地(以下、
再使用液体培地という)は、前記第1培養工程での所定
期間の培養後に、培養器から内容物を取り出し、培養細
胞をろ過し、そのろ液を使用する。この再使用液体培地
と、新規調整の液体培地との混合比率は、再使用液体培
地が重量比5〜80%、好ましくは40〜60%となるように
混合する。再使用液体培地の混合量が5%より少ない
と、新規調整の液体培地のみを用いた培養と差が見られ
ず、第2培養工程を短縮する効果が得られない。一方、
再使用液体培地の混合量を80%より多くすると、培地中
の各成分の組成比が変化していることや何等かの生育抑
制物質が生じていることが要因となって培養細胞の増殖
が悪くなる。なお、再使用液体培地と新規調整の液体培
地とを混合した液体培地には、培地中に不足する栄養成
分やオーキシン、糖などの成分を添加して使用しても良
い。
【0024】この第2培養工程での光条件が照度3000Lu
xより低いと、培養細胞中にアントシアニンが十分に生
成されず、また照度が8000Luxより高いと、培養細胞の
増殖が悪くなるとともに培養細胞のアントシアニン生産
能も悪くなる。
【0025】このように再使用液体培地と新規調整の液
体培地とを混合した液体培地に、第1培養で得られた培
養細胞を入れ、照度3000Lux以上、20〜30℃で振とう培
養することにより、培養細胞内にアントシアニンを生成
させる。本発明においては、再使用液体培地と新規調整
の液体培地を混合した液体培地を用いて第2培養するこ
とによって、新規調整の培地のみを用いた場合に比べ、
アントシアニン生成が促進され、短期間でアントシアニ
ン生成量がピークとなる。なお、この第2培養において
も必要に応じて培養のスケールアップを行うことが可能
である。
【0026】次に、アントシアニン生成の終了した細胞
を液体培地から分離し、この細胞からアントシアニンを
抽出、精製してアントシアニンを製造する。培養細胞か
らアントシアニンを抽出、精製する方法は、従来既知の
方法を用いることができる。例えば、液体培地から培養
細胞を分離し、好ましくは凍結乾燥などの乾燥処理を行
い、必要に応じて粉砕し、これを塩酸酸性メタノールな
どの抽出溶媒に浸漬し、1〜複数回の抽出を行ってアン
トシアニンを抽出し、この抽出液を減圧乾固し、これを
水に溶解させた後、イオン交換樹脂を充填したカラムに
流し込んでアントシアニンを樹脂に吸着させ、塩酸エタ
ノール液等の流出液を流してアントシアニンを分離精製
する方法などが好適に用いられる。以上の各操作によ
り、アントシアニンが製造される。
【0027】本発明によるアントシアニンの製造方法で
は、イチゴから得られた細胞をオーキシンあるいはオー
キシンとサイトカイニンとを添加した固体培地で培養し
てカルスを形成し、次いでアントシアニン生産能の高い
カルスを、オーキシンあるいはオーキシンとサイトカイ
ニンとを添加した液体培地を用い、照度3000Lux以下の
光条件下で培養し、次いで照度3000Lux以上の光条件下
で培養して、培養細胞内にアントシアニンを生成させ、
次いで得られた培養細胞からアントシアニンを抽出して
アントシアニンを製造するので、培養のスケールアップ
を極めて容易に行うことができる。
【0028】即ち、イチゴの細胞から誘導されたカルス
を、まずフラスコなどの小型培養器内で増殖させた後、
増殖した培養細胞を大型タンク培養器にスケールアップ
して培養し、このタンク培養器内で培養細胞を照度3000
Lux以下の光条件下で増殖させた後、照度3000Lux以上の
条件に切換えて培養し、培養細胞にアントシアニンを生
成させることによって、大量のアントシアニンを短期間
にかつ容易に得ることができる。
【0029】さらに、上記カルスあるいはカルスを液体
培地で増殖させた培養細胞を、照度3000Lux以下の光条
件で継代培養しておくことにより、任意の時期にこれら
細胞の大量培養を開始することができるので、栽培植物
を用いたアントシアニン生産と異なり、年間を通して平
均的にアントシアニンを製造することができる。
【0030】また液体培地を用いたカルス細胞の培養に
おいては、植物の通常栽培に比べて生産効率が格段に高
く、短期間で大量のアントシアニンを製造することがで
きるので、アントシアニンの製造コストを低減化するこ
とが可能となる。
【0031】さらに本発明によるアントシアニンの製造
方法では、培養細胞内にアントシアニンを生成させる第
2培養工程で、第1培養工程で培養に用いた後の再使用
液体培地と新規調整の液体培地とを混合した液体培地を
用いて、第1培養工程で得られた培養細胞を培養するこ
とによって、新規調整の培地のみを用いた場合に比べ、
アントシアニン生成が促進され、この第2培養工程の培
養期間を短縮でき、アントシアニンの生産効率をより一
層向上させることができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明によるイチゴ培養細胞を用いた
アントシアニンの製造方法の実施例を示す。
【0033】(試料の調整)イチゴ(四季なりイチゴ:
Fragaria×ananassa)の幼苗を、5%中性洗剤溶液で10
分間攪拌洗浄した後、70%エタノールに入れて30秒超音
波洗浄した。その後5%NaClO水溶液に8分間浸漬し
て滅菌し、各試料をクリーンベンチ内に入れ、滅菌水で
3回洗浄した。この幼苗から葉、茎、柄を切り出し、細
かく裁断して1mm〜数mmの断片とした。
【0034】(カルスの形成)LS培地に2,4−Dを
1mg/リットル、BAを0.5mg/リットル添加し、1%の寒天を
加えた固体培地を用い、葉、茎、柄の断片試料、及びラ
ンナーから摘出した生長点細胞をこの固体培地に置床
し、温度25℃、照度800Luxの16時間日長の条件で2週間
培養し、カルスの形成状態を調べた。その結果、それぞ
れの試料ともカルスが形成された。
【0035】葉の断片試料を用い、LS培地に2,4−
Dを0〜7mg/リットル、BAを0〜5mg/リットルの範囲で添加し
た各種の固体培地を用い、これら培地に葉の断片試料を
置床してカルス形成に最適な培地ホルモン組成を調べ
た。その結果を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】表1から明らかなように、カルス形成用培
地中の2,4−D濃度は、0.1〜5mg/リットル、望ましくは
1〜2mg/リットルの範囲とし、またBAは0〜5mg/リットル、好
ましくは2mg/リットル以下の範囲が好適である。
【0038】また、葉の断片試料および茎の断片試料を
用い、2,4−D以外のオーキシンとして、インドール
酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸(NAA)、インドー
ル酢酸(IAA)を0.1〜5mg/リットルの範囲で加えた培地
を用い、上記葉と茎の断片試料を置床してカルス化の有
無を調べた。結果を表2に示した。
【0039】
【表2】
【0040】表2に示したように、2,4−D以外のオ
ーキシン(IBA,NAA,IAA)を用いてもカルス
形成が可能であるが、2,4−Dに比べこれらのオーキ
シンはカルス形成が不良であった。
【0041】(カルスの第1培養)上記試験により、
2,4−Dが1mg/リットル、BAが0.1mg/リットルを含む固体
培地で、葉の断片試料から得られた白く柔らかいカルス
を用い、このカルスを切開して分割し、分割片を500ml
フラスコに入れ、この中に2,4−Dを1mg/リットル、B
Aを0.1mg/リットル添加したLS培地(液体培地)100mlを
入れ、照度を800Lux、3000Lux、8000Luxとし、培養温度
25℃、80r.p.m.で振とう培養し、各光条件でのカルスの
増殖を調べた。
【0042】その結果、照度800Lux及び3000Luxとした
ときにカルスの増殖が良好であった。しかし、3000Lux
で培養したカルスは、10〜14日後に培養細胞が変色して
以後の増殖が低下した。一方、照度800Luxで培養したカ
ルスは変色することもなく高い増殖率を示した。この80
0Luxの光条件で培養したカルスは、1〜2週間の培養サイ
クルで継代培養でき、同一条件でスケールアップ培養し
て培養細胞を大量生産することが可能であった。一方、
8000Luxで培養したカルスは、培養当初から増殖が不良
であり、培養開始後、数日で変色し、カルスの増殖はほ
とんど見られなかった。
【0043】これらの結果より、イチゴの細胞から誘導
したカルスを、照度3000Lux以下の温度条件で液体培養
することにより、カルスを増殖させることができ、この
条件でスケールアップ培養することによって培養細胞の
大量生産が可能であることが判明した。また、液体培地
中に添加するオーキシン或いはオーキシンとサイトカイ
ニンの種類及びそれらの添加量は、固体培地によるカル
ス形成の場合と同様に、オーキシンとしては2,4−D
が好ましく、その添加量は0.1〜5mg/リットル、好ましくは
1〜2mg/リットルの範囲が望ましい。また、サイトカイニン
としてはBAなどが使用でき、BAの添加量は0〜5mg/
リットル、好ましくは2mg/リットル以下の条件が好適であっ
た。
【0044】(第2培養)前記カルスの第1培養工程
で、葉の断片試料から得られたカルスを照度800Luxの光
条件で2週間培養した培養器の内容物を取り出してろ過
し、ろ液(再使用液体培地)と培養細胞とを分離した。
一方、LS培地に2,4−Dを1mg/リットル、BAを0.1mg
/リットル添加し、糖濃度3%とした新規調整培地を作製
し、500ml容フラスコに、この新規調整培地50mlと再使
用培地50mlを入れ、培養細胞2gを入れて光条件を8000Lu
x連続光照射とし、培養温度25℃、80r.p.m.で振とう培
養した(実施例とする)。また、比較のために新規調整
のLS培地100mlに培養細胞2gを入れて同様に振とう培
養した(コントロールとする)。
【0045】培養開始から数日毎に各培養器1本当りの
アントシアニン生産量を測定した。アントシアニン生産
量は、培養器内の培養細胞を取り出して重量を測定し、
次に、各培養器の培養細胞を0.1g採取し、細胞を破砕し
ながら塩酸酸性メタノールでアントシアニンを抽出し、
遠心分離して得られた抽出液を規定量に希釈し520nmで
比色定量を行って吸光度を測定しアントシアニン検量線
から各培養細胞0.1g当りのアントシアニン量を求め、培
養細胞重量を掛けて、培養器1本当りのアントシアニン
生産量として求めた。この結果を図1に示す。
【0046】図1から明らかなように、実施例ではアン
トシアニン生産量の増加がコントロールよりもかなり早
く、培養開始から8日目にアントシアニン生産量がピー
クとなる。一方コントロールは培養2週間程度でアント
シアニン生産量がピークとなる。培養開始から8日目で
のアントシアニン生産量(培養器当り生産量)は、コン
トロールが約350μgであるのに対し、実施例では約550
μgである。この結果から、本発明では第2培養工程の
培養日数を8日程度の短い培養期間とすることが望まし
く、短期間の培養でのアントシアニン生産量をコントロ
ールよりもかなり増加できることが分かった。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、イチ
ゴから得られた細胞をオーキシンあるいはオーキシンと
サイトカイニンとを添加した固体培地で培養してカルス
を形成し、次いでオーキシンあるいはオーキシンとサイ
トカイニンとを添加した液体培地を用い、照度3000Lux
以下の光条件下でカルス細胞の培養を行い、次いで照度
3000Lux以上の光条件下で培養し培養細胞内にアントシ
アニンを生成させ、次いで得られた培養細胞からアント
シアニンを抽出してアントシアニンを製造する。イチゴ
細胞から形成したカルスを液体培養する際に培養のスケ
ールアップを極めて容易に行うことができ、培養のスケ
ールアップを行うことによって大量の培養細胞を得るこ
とができ、アントシアニンを大量生産することができ
る。
【0048】また、上記カルスあるいはカルスを液体培
地で増殖させた培養細胞を、照度3000Lux以下の光条件
で継代培養しておくことにより、任意の時期にカルス細
胞の大量培養を開始することができるので、製造時期や
製造量を任意に計画でき、その計画に沿って確実に製造
を実施することが可能である。
【0049】また、液体培地を用いたカルス細胞の培養
は、イチゴ等原料植物の通常培養に比べて生産効率が格
段に高く、タンク培養器などの設備を用いて短期間で大
量の培養細胞を作り、アントシアニンを製造することが
できるので、アントシアニンの生産コストを低減化する
ことができる。
【0050】さらにまた、本発明では、培養細胞内にア
ントシアニンを生成させる第2培養工程で、第1培養工
程で培養に用いた後の再使用液体培地と新規調整の液体
培地とを混合した液体培地を用いて、第1培養工程で得
られた培養細胞を培養することによって、新規調整の培
地のみを用いた場合に比べ、アントシアニン生成が促進
され、この第2培養工程の培養期間を短縮でき、アント
シアニンの生産効率をより一層向上させることができ
る。さらに、第1培養工程での再使用液体培地を有効利
用できることから、培地コストや使用済培地の廃液処理
コストを低減できる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】再使用培地を添加した培地と通常培地二次培養
のそれぞれの培養における培養日数とアントシアニン生
産量の関係を示すグラフである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イチゴから得られた細胞をオーキシンあ
    るいはオーキシンとサイトカイニンとを添加した固体培
    地で培養してカルスを形成する工程と、 次いでカルス細胞をオーキシンあるいはオーキシンとサ
    イトカイニンとを添加した液体培地を用い、照度3000Lu
    x以下の光条件下で培養する第1培養工程と、 次いで培養細胞を照度3000Lux以上の光条件下で培養し
    培養細胞内にアントシアニンを生成させる第2培養工程
    と、 次いで得られた培養細胞からアントシアニンを抽出する
    工程とを具備したアントシアニンの製造方法であって、 前記第2培養工程で、第1培養工程の培養後の液体培地
    と新規調整の液体培地とを混ぜ合わせた液体培地を用い
    て培養細胞の培養を行うことを特徴とするイチゴ培養細
    胞を用いたアントシアニンの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記固体培地及び液体培地に添加するオ
    ーキシンとして2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を用
    い、サイトカイニンとしてベンジルアデニンを用いたこ
    とを特徴とする請求項1記載のイチゴ培養細胞を用いた
    アントシアニンの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記2,4−ジクロロフェノキシ酢酸の
    添加量を0.1〜5mg/リットルとし、ベンジルアデニンの添加
    量を5mg/リットル以下としたことを特徴とする請求項2記
    載のイチゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方
    法。
JP3288102A 1991-11-01 1991-11-01 イチゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方法 Withdrawn JPH05153995A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002072702A1 (fr) * 2001-03-09 2002-09-19 Dow Corning Toray Silicone Co., Ltd. Composition de silicone gras
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CN113383784A (zh) * 2021-04-16 2021-09-14 花意生活(北京)电子商务有限公司 一种盆栽花卉催花剂及其制备方法

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