JPH0512692Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 本考案はリンパ球、骨髄細胞、さらには精子、
受精卵等の生体細胞などにつき、これを超急速冷
凍処理して高生存率の凍結を行うため、ヘリウム
冷凍機を用いて構成した冷凍装置に関する。

《従来の技術》 最近家畜精子や受精卵、あるいは人体の血液中
における各種細胞、さらには骨髄細胞等を凍結し
て、これを保存しておき、必要に応じて適時解凍
することで所期の目的に当該生体細胞等を利用す
ることが、盛んに行われている。

ところで、上記の如き生体細胞の凍結に際して
は、その生存率を高めることが最も重要な事柄と
なるが、そのためには10000℃／min以上の冷却
速度をもつた超急速冷凍を施すのがよいとされて
いる。

そこで上記超急速冷凍を行うため、既に第２図
に示す如き冷凍装置が用いられている。

すなわち、液体ヘリウム容器ａ内の液体ヘリウ
ムｂを内圧b′により導管ｃにて導出し、これを自
然蒸発または蒸発器ｄによつてヘリウム蒸気とな
し、当該蒸気を所望開成度合とした調節弁ｅによ
つて、排気口ｆをもつた凍結チヤンバーｇに送気
し、このヘリウム蒸気内に、緩衝液ｈと共に供与
される生体細胞等の被凍結体ｉを滴下させること
で、当該被凍結体ｉを緩衝液ｈと共に超急速冷凍
結させるようにしたものである。

しかし、上記冷凍装置によるときは、排気口ｆ
から使用済のヘリウムガスを排気してしまうと、
その凍結コストが極めて高価なものとなつてしま
い、これを回避するため、排気口ｆからの排ヘリ
ウムガスを回収し、これを精製して再液化するこ
とは可能であるものの、このためには高額の設備
投資が必要となるだけでなく、その稼動運転およ
び管理に高度な技術を要求されることとなり、ま
た液体ヘリウムを取扱わねばならないため、これ
にも特殊技能が要求されるだけでなく、作業にも
危険が伴なうこととなる。

さらに同上装置によると、導管ｃの途中にあつ
て液体ヘリウムが蒸発し、これによりヘリウム蒸
気の吐出圧が脈動し易くなる上、液体ヘリウム容
器ａ内の内圧b′も一定に保ち難くなり、この結果
凍結チヤンバーｇ内での温度制御も困難となつて
しまう等の諸欠陥が存する。

そこで液体ヘリウムを直接取扱うことの必要が
ないヘリウム冷凍機を利用した第３図の如き冷凍
装置も既に提案されている。

一般にヘリウム冷凍機ｊなるものは、同図に示
す通りコンプレツサｋの低圧側である作動ガス吸
入ラインｌと高圧側である作動ガス吐出ラインｍ
とからなる作動部ｎを具備し、さらに真空断熱手
段等による断熱器ｏ内の第１蓄冷器Ｐ１、第２蓄
冷器Ｐ２をも備えたものであるが、かかるヘリウ
ム冷凍機ｊにあつて、その第１蓄冷器Ｐ１から冷
端部である第２蓄冷器Ｐ２にかけて、導出パイプ
ｑを密接巻きして熱交換コイル部ｑ１，ｑ２を形
成し、この導出パイプｑ内の循環系ヘリウムガス
を、当該熱交換コイル部ｑ１，ｑ２によつて冷却
した後、これを凍結チヤンバーｇに導入し、さら
に当該チヤンバーｇに連結した帰還パイプｒのポ
ンプｓを稼動することにより循環させるようにし
たもので、もちろん、この場合にも上記凍結チヤ
ンバーｇ内に緩衝液ｈと共に被凍結体ｉが滴下さ
れることとなる。

上記第２図の装置によれば、第１図の装置がも
つ欠陥についてはこれを大幅に改善できるもの
の、熱交換コイル部ｑ１，ｑ２による間接熱交換
であるため、熱交換損失が大きくなると共に、循
環系ヘリウムガスによる立上りの予冷に可成りの
時間がかかり、かつ熱交換の速度にも限界がある
から、循環系ヘリウムガス量を増大させようとす
れば、より大きなヘリウム冷凍機が必要となり、
従つて負荷の変動に対応し難いものとなる。

また、運転中に循環系ヘリウムガスの循環量を
増大させると、一たん急激に温度上昇してしま
い、これが所定の低温に安定するまでに可成の時
間を要するなど、レスポンスの点でも満足すべき
結果が得られない。

《考案が解決しようとする問題点》 本考案は上記従来装置の難点につき検討した結
果、ヘリウム冷凍機の作動ガスにつき、その一部
を冷端部から外部に導出し、この作動ガスを冷凍
チヤンバーに供与した後、ヘリウム冷凍機の作動
ガス吸入ラインに帰還させて循環系を形成させる
よう構成することで、液体ヘリウムを直接用いな
いようにして、特殊技能が要求されないように
し、かつ循環系に直接ヘリウム冷凍機の作動ガス
を流すことで、熱効率とレスポンスを向上させ、
高価なヘリウムの消費を削減して凍結コストの低
下を計り、凍結チヤンバー内の温度調整をも作動
ガスの循環量を調節するだけで、簡易かつ安定的
に調整し得るようにするのが、その目的である。

《問題点を解決するための手段》 本考案は上記の目的を達成するため、コンプレ
ツサの低圧側である作動ガス吸入ラインと高圧側
である作動ガス吐出ラインとからなる作動部と、
断熱器内の第１、第２蓄冷器とを具備したヘリウ
ム冷凍機にあつて、上記第２蓄冷器である冷端部
から、前記作動部のヘリウムである作動ガスの一
部を、冷凍ガス供給ラインにより、被凍結体が供
与される気密な凍結チヤンバーに供給自在とな
し、当該凍結チヤンバーから導出した冷凍ガス帰
還ラインを前記作動部の作動ガス吸入ラインに帰
還してなるヘリウム冷凍機を用いた超急速冷凍装
置を提供しようとするものである。

《作用》 ヘリウム冷凍機を稼動させれば、ヘリウムであ
る作動ガスの一部が、冷凍ガス供給ラインによつ
て冷凍チヤンバー内に供給され、このとき緩衝液
と共に当該チヤンバー内に滴下された被凍結体
が、ここで超急速冷凍されて落下し、これにより
得られた凍結済被凍結体は凍結チヤンバーに保留
されるが、作動ガスは冷凍ガス帰還ラインからヘ
リウム冷凍機の作動部における作動ガス吸入ライ
ンに導入され、コンプレツサを介して高圧側であ
る作動ガス吐出ラインに流入し、さらに作動ガス
の一部が上記の如く流出していくという循環系が
作動することとなる。

《実施例》 本考案につき第１図の実施例によつて、これを
詳記すれば、１がヘリウム冷凍機で、既知の通り
作動部２がコンプレツサ３と、低圧側の作動ガス
吸入ライン４と、高圧側の作動ガス吐出ライン５
により形成され、第１蓄冷器６と冷端部をもつ第
２蓄冷器７とが、断熱器８により形成した真空部
８ａに内装されており、図示例では上記の第２蓄
冷器７が、さらにサーマルシールド９により囲成
されている。

本考案では、上記の如くヘリウム冷凍機１にあ
つて、その冷却端を有する第２蓄冷器７から分流
ライン２ａによつて、作動部２におけるヘリウム
である作動ガスの一部を、冷凍ガス供給ライン１
０によつて外部へ導出するのであるが、この際当
該ライン１０は、できるだけ断熱器８の突設され
ている断熱パイプ８ｂによつて被装し、パイプ真
空部８ｃによつて包被するのがよく、従つて冷凍
ガス供給ライン１０は、サーマルシールド９、断
熱パイプ８ｂを貫設してパイプ真空部８ｃから外
部に露呈している。

さて外部に露呈された冷凍ガス供給ライン１０
には順次滅菌フイルタ１１、流量調節弁１２そし
て開閉弁１３が接続された後、その放出端１０ａ
が、凍結チヤンバー１４内に開口しており、ここ
で、上記凍結チヤンバー１４としては、密閉容器
１４ａ内にメツシユ部１４ｂをもつた内筒１４ｃ
を収納し、このメツシユ部１４ｂを通過した作動
ガスが、当該密閉容器１４ａに連結した冷凍ガス
帰還ライン１５に流入されるようになつている。

さらに、この冷凍ガス帰還ライン１５には順次
開閉弁１６、活性炭などを用いた吸着筒１７が介
接され、その終端は、前記低圧部２の作動ガス吸
入ライン４に連絡されている。

ここで、図示例では、さらに実際の稼動操作
上、滅菌ガスライン１８、パージ用ヘリウムライ
ン１９そして放出ライン２０が、冷凍ガス供給ラ
イン１０と冷凍ガス帰還ライン１５とに連結され
ている。

上記滅菌ガスライン１８はエチレンオキサイド
ガス等の滅菌ガスを収納した滅菌源ボンベ１８ａ
と流量調節弁１８ｂおよび開閉弁１８ｃをもつた
滅菌用パイプ１８ｄを、冷凍ガス供給ライン１０
にあつて、前記滅菌フルタ１１と流量調節弁１２
との間に連結してあり、次に前記のパージ用ヘリ
ウムライン１９は、パージ用ボンベ１９ａ、流量
調節弁１９ｂ、開閉弁１９ｃをもつたパージ用パ
イプ１９ｄを、冷凍ガス帰還ライン１５にあつ
て、前記の開閉弁１６と吸着筒１７との間に連結
し、さらに同上帰還ライン１５の開閉弁１６と凍
結チヤンバー１４との間にあつて、前記放出ライ
ン２０の放出弁２０ａをもつた放出用パイプ２０
ｂがそれぞれ連結されている。

尚、図中２１は、生体細胞等の被凍結体２２を
緩衝液２３中に投入した容器であり、２４は当該
容器２１と凍結チヤンバー１４とを連結した被凍
結体供給パイプで、順次ポンプ２５と開閉弁２６
とが介接されている。

そこで上記の冷凍装置を使用するには、実際上
次のようにして稼動操作するのが望ましい。

すなわち、被凍結体２２の凍結処理に先立つ
て、滅菌処理を施すため、開閉弁１８ｃを開き流
量調節弁１８ｂの開度により決る量の滅菌ガス
を、滅菌源ボンベ１８ａから滅菌ガスライン１８
を介して、冷凍ガス供給ライン１０に流入し、当
該滅菌ガスを、開閉弁１６の閉止状態下にあつ
て、滅菌フイルタ１１の下流側、すなわち流量調
節弁１２−開閉弁１３−凍結チヤンバー１４−冷
凍ガス帰還ライン１５−放出ライン２０−放出弁
２０ａへと送り込み、これにより当該系内の滅菌
を行つて、異物、滅菌等による生体細胞等の汚染
を防止する。

次にヘリウムによるパージを行うが、これは系
内に水分、空気、そして上記の滅菌ガス等が残留
していることで、ヘリウム冷凍機１の運転に支障
が生じないようにするためであり、これには上記
滅菌ガスの供給を止めてから、パージ用ヘリウム
ライン１９を稼動させることによつて、パージ用
ボンベ１９ａからヘリウムガスを開閉弁１９ａの
開成、流量調整弁１９ｂによる流量調整により冷
凍ガス帰還ライン１５に流入させ、これを順路で
ある吸着筒１７−作動ガス吸入ライン４−分流ラ
イン２ａ−冷凍ガス供給ライン１０−滅菌フイル
タ１１−流量調節弁１２−開閉弁１３−凍結チヤ
ンバー１４−放出ライン２０−放出弁２０ａを経
て外気へ放出するのであり、もちろんこの場合開
閉弁１６は閉止しておくこととなる。

次にヘリウム冷凍機１の稼動による予冷を行う
のであるが、このためには開閉弁１３を閉成した
状態でヘリウムの冷凍機１を運転するのであつ
て、この予冷運転は第２蓄冷器７の冷端部が例え
ば15K程度といつた目標温度に達するまで行われ
る。

このような予冷が終れば、ヘリウム冷凍機１を
運転のままで開閉弁１３と開閉弁１６とを開成
し、これによつて、ヘリウム冷凍機１における作
動ガスの一部が第２蓄冷器３から取り出されて、
冷凍ガス供給ライン１０から凍結チヤンバー１４
に供給されることとなり、この際、滅菌フイルタ
１１の存在によつて、凍結チヤンバー１４内が再
汚染されるといつたことを完全に除去し得ること
となり、このことで当該チヤンバー１４内は例え
ば20K程度の目標温度に達する。

そこで、被凍結体２２の凍結処理を行うことと
なるが、これには図示例の如く生体細胞の如く被
凍結体２２を緩衝液２３等と共に、凍結チヤンバ
ー１４の内筒１４ｃ内に滴下するのであり、これ
により極低温の当該ヘリウムによる作動ガスによ
り、超急速にて当該凍結体２２が冷却され凍結さ
れることとなる。

これにより緩衝液２３と共に凍結された被凍結
体２２は、内筒１４ｃの底部であるメツシユ部１
４ｂに落動堆積され、被凍結体２２と熱交換を完
了したヘリウムガスは、当該メツシユ部１４ｂを
通過して、密閉用１４ａから冷凍ガス帰還ライン
１５に流入し、これが吸着筒１７を通過すること
で、上記生体細胞等に起因する水分などを、筒内
の活性炭などによる吸着剤によつて除去し、これ
がヘリウム冷凍機１に帰還されて循環系が稼動す
ることとなり、次々と被凍結物の凍結処理が進行
していくこととなる。

以上のようにして、所定量の生体細胞につき、
その凍結処理が終了したならば、ヘリウム冷凍機
１の稼動を停止し、開閉弁である１３と１６を閉
じた後、凍結チヤンバー１４を、当該循環系から
取り外すのである。

尚ここで、断熱器８だけでなくサーマルシール
ド９をも設けることで、外熱の侵入をより効果的
に抑制でき、循環系の作動ガスとして、さらに低
温のものが得易くなる。

《考案の効果》 本考案は上記のようにして構成できるものであ
るから、液体ヘリウム自体を直接取扱う必要がな
くなり、この結果液体ヘリウム取扱い上の特殊技
術が要求されるとなく、安全な運転が確保される
だけでなく、ヘリウム冷凍機との熱交換を行う従
来装置に比し、熱交換に伴う熱損失がないため、
より低い温度が得易くなつて超急速凍結処理に至
便となり、かつ、ヘリウム冷凍機で冷却されたヘ
リウムの一部が直接取り出されて行くため、レス
ポンスが良好で負荷の変動にも対応し易くなり、
さらに温度調節も、作動ガスであるヘリウムの循
環量を調節することで容易になし得ると共に、当
該温度も安定したものとなる。

また本考案によりば、前記したパージ処理に際
してヘリウムが外部に放出されるだけであるか
ら、高価なヘリウムの消費が僅少ですみ、凍結コ
ストを安価にすることが可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る超急速冷凍装置の配管説
明図、第２図と第３図は従来の超急速冷凍装置を
示す夫々別異の配管説明図である。 １……ヘリウム冷凍機、２……作動部、３……
コンプレツサ、４……作動ガス吸入ライン、５…
…作動ガス吐出ライン、６……第１蓄冷器、７…
…第２蓄冷器、８……断熱器、１０……冷凍ガス
供給ライン、１４……凍結チヤンバー、１５……
冷凍ガス帰還ライン、２２……被凍結体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. コンプレツサの低圧側である作動ガス吸入ライ
   ンと高圧側である作動ガス吐出ラインとからなる
   作動部と、断熱器内の第１、第２蓄冷器とを具備
   したヘリウム冷凍機にあつて、上記第２蓄冷器で
   ある冷端部から、前記作動部のヘリウムである作
   動ガスの一部を、冷凍ガス供給ラインにより、被
   凍結体が供与される気密な凍結チヤンバーに供給
   自在となし、当該凍結チヤンバーから導出した冷
   凍ガス帰還ラインを前記作動部の作動ガス吸入ラ
   インに帰還してなるヘリウム冷凍機を用いた超急
   速冷凍装置。