JPH0511987B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、重症患者を少ない人手でも速やかに
安全な場所に避難させることが可能であり、かつ
クツシヨン性が極めて良好で患者に苦痛を与える
ことの無い、ガス充填式の救命担架に関する。

従来の技術 病院等で火災その他の非常事態が発生した際
に、重症患者、即ち寝たきりの患者や、脚に障害
のある者や、手術後の起きられない患者等々は、
安全な場所に速やかに避難させるには、従来は担
架やストレツチヤーが用いられてきた。

この内担架は、患者を横たわらせる布製の床の
四隅に把手があるもので、ストレツチヤーは床の
下に所要時には折り畳むことが出来る車輪付きの
脚を取り付けたものである。

発明が解決しようとする課題 さて病院で火災が発生した場合など、速やかに
避難が開始されるが、一人では起き上がつて逃げ
出すことの出来ない患者に対しては脱出に誘導員
の手助けが必要であり、このため車椅子や担架や
ストレツチヤー等に乗せて所定の避難口へと急ぐ
ことに成る訳であるが、この避難口としては通常
エレベーター、階段、また（設置が為されている
場所では）脱出シユート等が利用されている。

しかし、従来は上記避難器具にも、また避難口
にも多くの問題があり、火災や地震の時の脱出に
は困難を極め、人命に直接響いてくるため、この
問題点の解決が強く要望されていた。

即ち、避難用具に関しては； １ 殆ど歩けない患者を運ぶのであるから、患者
の全体重と避難用具の全重量とを支えなければ
成らず、多くの人手が必要であり、一般的に付
添いや看護人は女性なので、一人の患者を避難
させ終わるのに３人も４人も掛かり切りに成ら
ざるを得ないが、人手不足のため患者全員を避
難させるのに相当な時間が掛かり、場合によつ
ては手遅れにさえ成ることもある。

２ 避難用具の全長が長く、安全対策が取られて
いないため、担架やストレツチヤーが壁面等に
当たり易く、強く当たるとそのシヨツクが直に
患者に伝わつて苦痛や不安感を与え、更にひど
い場合には患者を負傷させて終うような事態も
生じる。

３ そこで、このことに大変に気を使うことに成
り、避難速度も遅く成り勝ちである。

４ 階段では下りの場合は足場に細心の注意を払
わねば成らず、避難用具の全長が長いため、急
いでいることもあつて壁面等に突つかえること
が多く、躍り場での方向転回が非常に難しく時
間が掛かる。特にストレツチヤーでは大きくて
方向性の安定しない車輪があるために不本意に
滑り、更に全体に重量が有るので取り扱いには
困難を極め、誘導員自身も極めて危険な状態に
置かれている。

５ また、従来の避難用具は大きくて一定の固定
された形状を有し、特に長手方向の折り畳みが
出来ないために、平時の収納には場所を取り、
取り出しも難しく、勢い常備して置かないとい
うような危険なことにも成る。

また避難口に関しては； １ パニツク状態で避難する人は、エレベーター
や、階段や、脱出シユート等の避難口に殺到
し、ここではボトルネツクの問題が生じて、後
が詰まつた危険な状態と成るが、これに加えて
大きく横幅を取る担架やストレツチヤーが合流
すると、身動きが全く取れないように成るが、
特にエレベーターでは、担架やストレツチヤー
が１〜２台しか乗せられないのである。

２ また、我が国では土地のコストが異常に高い
ため、非常階段や滑り台や脱出シユート等が設
けられた場所が極く限られて居り、ここに人々
が集中する上に、担架やストレツチヤーから患
者を移し代えるというような二重手間で時間の
かかる作業を行わなければ成らない。

３ この問題の解決のため、当発明者は先に平成
２年特許願第54335号のガス充填式救命担架を
発明して、所期の目的を達成しているのである
が、これは底床式の舟形の袋に充気装置を接続
したものであり、更に患者に対するクツシヨン
性を良好なものにすることが望ましい、という
ことが判明している。

４ またこの物は、滑走させた時に床気室の抵抗
を幾分小さくした方がより好ましくある。

本発明は、上述した多くの課題を全て解決しよ
うとするものである。

課題を解決するための手段 そこで、本発明は、周囲を舟形輪環状に成型し
たガス充填式の袋の上面に人体を寝かす為の高床
を形成し、舟形に通気するガスの吹き込み口に設
け、該吹き込み口に充気装置を接続し、高床上に
人体を固定するためのベルトを上記舟形に取り付
け、舟形の主として前後方向の任意箇所に把手と
牽引ロープとを取り付けて、ガス充填式救命担架
としたものである。

作 用 このため、充気装置を作動させると、ガス吹き
込み口を通じてすぐにガスが上記袋部に充填さ
れ、全体は舟形輪環状に膨張して担架と成る。

この後、患者を袋の上面に張設した高床の上に
寝かせてベルトで固定するのである。

患をは載せた部位は高床で、高床の周囲の袋は
言わば空気クツシヨンであり、袋のクツシヨン性
は大変に良好であるから、これは例えば階段のよ
うなゴツゴツした場所から受ける衝撃を良く吸収
することが出来るし、曲がり角の壁面にぶつけた
際に受ける衝撃なども十分緩和出来るため、患者
に対する衝撃を余り気にせずに雑に扱えることに
成る。

この時、舟形に取り付けられたベルトで人体が
しつかり固定されているから、シヨツクに対して
患者は安全であり、また避難中も安心して任せて
いられる。

また、本発明では接地部分が舟形輪環状の部位
のみであるから、滑走抵抗も非常に小さいものと
成つている。

このように耐衝撃性に優れて居り、患者の全体
重を支えてくれ、全体が極めて軽量であり、また
床面の滑りが良いため、前後方向の任意の箇所に
設けた把手または牽引ロープを引けば、例え女性
ひとりでも、楽に患者を避難させることが可能で
ある。

また、この時の避難路としては階段が有利であ
り、上述のように何等ためらうこと無く引きずり
降ろせば良く、また方向転換も容易であるから、
階段の途中や躍り場でつかえず、次々とスムーズ
に避難させられる。

或は、脱出シユートを利用する時にも、本発明
の担架のまま、患者を脱出シユート内に挿入し、
一緒に滑り降りるようにすれば良い。

即ち、どの脱出ルートを採つても、極く小人数
で、ベツドからずつとそのまま引きずつて安全な
場所まで、速やかにかつ途中安全に逃がれられる
ことに成る。

こうして、避難行動の全体に於いて、滞りなく
速やかに、安全に作業が進行し、ストレツチヤー
等々の大型避難用具を用いる際のボトルネツクを
解消し、火災等に巻き込まれる犠牲者の数を激減
させることが可能である。

尚、本発明のガス充填式救命担架は折り畳みが
可能であるから、普段は主としてその長手方向に
丸めて、小さくしたまま運搬したり収納して置け
ることに成つている。

実施例 次に、本発明の実施例について、図面に基づい
て説明するが、本発明は、特にこの実施例のみに
限定されるものではない。

第１図は本実施例の斜視図、第２図は同実施例
の天地を返した状態の斜視図である。

全体形状を舟形とし、患者を乗せる基台と成る
主気室１をガス充填式のゴム引き布の袋で構成
し、全体の上面部分に同一素材の床シート２を張
設し、前記主気室１に通気するガスの吹き込み口
を設け、該吹き込み口に充気装置７を接続し、該
充気装置７を主気室１の前方側面部に設置し、充
気装置７には圧搾ガス（炭酸ガスと窒素ガスとを
95：５の重量比で混合して成るガス）を充填して
あり、別に作動ピンと安全ピンとを備えている。

前記床シート２には、患者を寝かせて固定する
ためのベルト５を患者の胸部、腹部、脚部に当接
する３箇所の取り付けてあり、該ベルト５は夫々
中央のバツクル５０で着脱自在としている。

また、主気室１の前後端部に手が入る大きさの
把手３を形成し、その両側及び主気室１の側面部
にはリング６０を取り付けて、当該リング６０に
牽引用のロープ６が取り付けられるように成つて
いる。

尚、更に本実施例には、患者を落下物などから
守るため、患者の上面を覆うための天幕８１を設
けたのであるが、該天幕８１は舟形の前部に取り
付けた円筒形の収納室８内に捲回して収納されて
居り、必要に応じて引き出して患者の上面を覆つ
た後、固着具８２にて舟形の後部に引つ掛けて止
めるものであり、前記固着具８２を外せば天幕８
１は収納室８内のバネ力で引出口８０内へ巻き戻
されるように成つている。

また、主気室１の底面部の輪状接地部Ａの位置
には、左右５対のキヤスター４を取り付けてい
る。当該キヤスター４にはボール４０が嵌め込ま
れて居り、あらゆる方向に円滑に回転自在であ
る。

本実施例でこのようなキヤスター４を取り付け
た理由は、特に階段での移動に際し各ステツプの
前縁部に滑り止めのゴム材が固定されている場
合、ゴム材との間に生ずる摩擦によつて本救命担
架が滑り辛く成り、非難速度が鈍く成るような事
態を、キヤスター４の働きにより難無く回避出来
るようにするためである。

次に、本実施例の使用法及び作用を説明する
と、小さく巻き畳まれた本実施例を収納場所から
取り出し、充気装置７の安全ピンを引いて外した
後、作動ピンを手前に引くと、充気装置７からガ
スの吹き込み口を通じて、直ちに勢い良くガスが
患者を寝かす床シート２の回りの主気室１に充填
され、全体は輪環舟形状に急速に膨張してガス入
り担架と成り、回りを主気室１の空気クツシヨン
で保護された高床２が形成される。

そして患者を高床２の上に寝かせ、前記ベルト
５をバツクル５０で固定するが、該バツクル５０
は固定動作がワンタツチであるから、この作業は
誤りなく速やかに行い得る。

患者の上には、ベツドで使用している毛布等を
頭から被せ、更に前記天幕８１を収納室８の引出
口８０より引き出して脚側で固定具８２によつて
固定すれば、避難中に体を冷やすこと無く、また
火の粉や落下物から身を守れる訳である。

さて、輪環状の壁部で構成している主気室１の
袋は空気クツシヨンであるから、移送中に床面か
ら受ける衝撃が最大限吸収することが出来るし、
移送中に曲がり角の壁面などに本担架をぶつけた
際に受ける衝撃を緩和出来るため、この点で気を
使う必要は無く成るから避難係は如何に速く逃げ
るかということにのみ専念出来る。

この時、床シート２の３本のベルト５で患者の
身体が固定されているから、移動中のシヨツクに
対して患者は安全であり、避難係に安心して任せ
ていられる。

このように、ガスが充填されたゴム引き布製の
主気室１は耐衝撃性に優れて居り、全体が極めて
軽量であるため、進行方向の把手３や牽引ロープ
６を引けば、例え避難係が女性であつたとして
も、ひとりで楽々と患者を避難させることが出来
るし、キヤスター４は接地部分が舟形輪環状の部
位のみ（二点鎖線Ａ）であるから滑走抵抗が非常
に小さく、特に階段での移動に際し各ステツプの
前縁部に滑り止めのゴム材が固定されている場合
などでは、ゴム材との間に生ずる摩擦により本救
命担架が滑り辛く成り非難速度が鈍く成るような
事態を、キヤスター４の働きにより難無く回避す
ることが出来るため、階段をフルに活用して本担
架を何等ためらうこと無く引きずり降ろせば良い
し、また躍り場等での方向転換も容易で、後がつ
かえたりせず、次々とスムーズに避難させられ
る。

また、避難係が２人の場合には、先導側が把手
３を持つて浮かし、本担架を水平に保つように
し、また後の補助係はロープ６を持つて本担架が
階段を滑り降りるスピードの調節をすれば良い。

本実施例は、使用後にはガスを抜き、主気室１
などの傷の有無を調べ、充気装置７を新しいもの
に交換し、舟形全体を長手方向に巻き上げ、折り
畳んで収納し、次回のもしもの使用に備えるので
ある。

尚、本実施例の主気室１両側の４箇所を含め
て、リング６０は本実施例をロープ掛けの上クレ
ーンなどで吊り降ろす際に重要と成る。実際には
このような場面も生じ得るからである。

また、天幕９１に透明窓を設けたり全体を透明
素材から構成しても良い。

さて、本発明は上述した実施例にのみ限定され
ない。

例えば、舟形の素材には前述のようなゴム引き
布以外に、ゴムを使用したり、またビニール樹脂
との併用なども可能である。

主気室を２重構造にすれば耐衝撃性能も格段に
向上するし、内部に吊り材を取り付ければ、内部
の空気流通を最小限に止どめられ、主気室の形状
がしつかりと保たれるように成る。

高床は１枚のシートでも良いが、ここに空気室
を形成することでクツシヨン性の向上が見られる
のでより好ましい。

実施例ではキヤスター４（コロ）を取り付けて
いるが、これは必ずしも用いなくて良く、或は他
の種類の滑走性の良好な部品を利用しても良い。
この場合取り付け位置に関しては、主気室内部に
吊り材が設けられている場合にはこの部位を利用
することが、補強上の観点から言つても望ましい
訳である。

充填ガスにはCO₂なども利用可能であるが、更
にはHeガスを用いることにより全体の軽量化に
大いに役立つ。

本発明への充気方法には、前述したような充気
装置７を用いずとも、本体とは別個に備えたガス
ボンベや手動式ポンプ、病室内に配管されている
ガス管等からブロー弁を通じ充填する手段を採用
することも可能である。

本発明の収納時に、所謂フアーストエイドや、
水筒や乾ぽん、タオル等といつた非常用具を一緒
に収納して置くのも好ましい。また反射材を貼付
しておいたり、照明ライトを取り付けるのも便利
である。

尚、本発明は天地を返して使用することも可能
であり、このためには高床の裏側に人体を固定す
るためのベルトを設けておくようにする。

発明の効果 以上、本発明は、周囲を舟形輪環状に成型した
ガス充填式の袋の上面に人体を寝かす高床を形成
し、舟形に通気するガスの吹き込み口を設け、該
吹き込み口に充気装置を接続し、高床上に人体を
固定するためのベルトを舟形に取り付け、舟形の
主として前後方向の任意箇所に把手と牽引ロープ
とを取り付けて成る、ガス充填式救命担架とした
ので、高床と袋のクチシヨン性が大変に良好で、
階段のようなゴツゴツした場所から受ける衝撃
や、曲がり角の壁面にぶつけた際に受ける衝撃な
ども十分緩和出来、患者に対する衝撃を余り気に
せずに雑に扱え、接地部分が舟形輪環状の部位の
みであるから、滑走抵抗も非常に小さいものと成
つて居り、例え女性ひとりでも楽に患者をベツド
からずつとそのまま引きずつて安全な場所まで速
やかにかつ途中安全に逃がれられるように成り、
避難行動の全体に於いて、滞りなく速やかに、安
全に作業が進行し、ストレツチヤー等々の大型避
難用具を用いる際のボトルネツクを解消し、災害
時に於ける犠牲者の数を激減させることに成功し
ている。

この他、本発明のガス充填式救命担架は折り畳
み式であるから、普段はその長手方向に巻き上
げ、小さくしたまま収納して置けるし、脱出シユ
ートが利用可能であり、本発明を複数台ロープで
直列に連結して移動することも可能であり、主気
室を十分高く作れば、エレベーター内に積み上げ
ることも可能であり、近未来の寝たきり老人の増
加という社会問題にも十分対応できるものであ
る。

更に本発明は、山岳、雪中、沼地等々の足場が
悪く、従来の担架等が使用出来ない場所、地域で
も大きな力の発揮し、また海上でも浮力が有るか
ら、ボートとしても十分に使用可能であり、正に
画期的な発明と成つている。

【図面の簡単な説明】

第１図は一実施例の斜視図であり、第２図は同
実施例の天地を返して見た状態を表す斜視図であ
る。 １……主気室、２……床シート、３……把手、
４……キヤスター、４０……ボール、５……ベル
ト、５０……バツクル、６……ロープ、６０……
リング、７……充気装置、８……収納室、８０…
…引出口、８１……天幕、８２……固定具、Ａ…
…接地部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 周囲を舟形輪環状に成型したガス充填式の袋
   の上面に人体を寝かす高床を形成し、舟形に通気
   するガスの吹き込み口を設け、該吹き込み口に充
   気装置を接続し、また高床上に人体を固定するた
   めのベルトを舟形に取り付け、舟形の主として前
   後方向の任意箇所に把手と牽引ロープとを取り付
   けて成る、ガス充填式救命担架。