JPH0474587B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、補強リングと該リング内で液密に
且つ捩りを生じないように固定されほぼ軸方向に
突出したリツプリングとからなり、弾性材料から
なるリツプリングは密封面が軸に弾性圧接し、該
密封面は被密封空間に面した側が、周面に均一に
分布して被密封空間の方にのみ開口した油ポケツ
トにより分断され、該油ポケツトが半径方向では
底面により制限され円周方向では軸の表面及び回
転軸に対し鋭角をなしたせき止面により制限され
たロータリ軸シールリングに関する。

〔従来の技術と問題点〕

上記形式のロータリ軸シールリングに関し、欧
州特許出願第33963号を引用する。そこでは底面
と被密封軸との距離が一定しており、また底面は
せき止面に対し鋭角をもつて境界を画して接触し
ている。せき止面は互いに平行なせき止面リブの
表面を形成し、同一の傾斜を有する部分範囲にお
いて、被密封軸の表面に相対する。この構造のゆ
えに、せき止面の流体力学効果は、被密封軸の回
転方向及び回転速度が一定であることに依存す
る。それゆえ、それらが一定でなくなると例えば
摩耗及び／又は漏れが高まり、密封効果が損なわ
れる。

また、実開昭49−147461号公報に開示されるオ
イルシールがある。そこでは、シヤフトの回転方
向に対して傾斜した平坦な面によりせき止面を形
成し、底面は互に相反する方向に傾斜するせき止
面の交差部により形成されシヤフトに対し平行に
されている。この構造によれば、被密封液が一方
のせき止面から他方のせき止面に移行するときに
急激な方向変化が生じ、そのため被密封液は失速
し移行が困難となり流れの断絶が生じてポケツト
内に滞留する。その結果、密封面の十分な潤滑が
行なわれず摩耗の虞がある。

周知のロータリ軸シールリング製造方法とし
て、ドイツ特許明細書第3246152号を引用する。
そこでリツプリングとして使用されるのは、チユ
ーブ状スリーブである。該スリーブは予め作製し
仕上加硫したチユーブから切り取つたものであ
り、径が漸増的に拡大している成形体（下型）に
スリーブの一端側を嵌め込み、上型によりスリー
ブの他端側を押圧することによりスリーブが変形
しラツパ状に径が拡大して、該前端にフランジが
形成される。次にフランジ付近で固定が行われる
が、これは大幅に自動化可能な操作の途中におい
て、ごく短時間のうちに行うことが可能である。
ただし、シールリツプ内面の流体力学的に有効な
戻り要素の取付けが困難である。

当該戻り要素は、シールリツプの周面に配設し
た窪み内に刻設又は嵌入することにより、従つて
表面に機械加工を適用して形成することが知られ
ている。しかしこれは費用が極めてかかるだけで
なく、戻り要素単体の形状又は姿勢が所定の数値
から僅かに逸脱しただけでも、密封効果が著しく
変化する。また劣化に伴い、付加的に問題を生じ
る。

〔発明の目的〕

この発明は、冒頭挙げた種類のロータリ軸シー
ルリングを改良し、被密封軸の回転方向及び回転
速度に左右されない、優れた密封効果が得られる
ようにすることを目的としている。また本発明は
更に、ドイツ特許明細書第3246152号により周知
の方法を改良し、前記欠点を取り除いてシールリ
ツプ内面に流体力学的に有効な戻り要素を得るこ
とを目的とする。

〔目的達成のための手段〕

本発明の目的の最初のものは、冒頭挙げた種類
のロータリ軸シールリングにおいて、本発明によ
り、各油ポケツトの底面は曲面をなしせき止面は
該底面の周方向両側に曲面状に形成され該底面と
該せき止面とが曲面により移行し合うよう構成
し、こうして形成した底面と軸との距離を被密封
空間へと向かつて増加させることにより達成され
る。

本発明提案によるロータリ軸シールリングで
は、油ポケツトの軸に対向する面を湾曲した底面
により制限しておくことができる。この底面は実
質的に円筒面又は円錐面の切片形状に近づけてあ
り、各部分範囲における湾曲部の曲率は被密封軸
のそれより小さく、湾曲した一つの底面の中心軸
は、軸の軸線に対し鋭角をなす。

本発明提案によるロータリ軸シールリングの油
ポケツトは対称性をもつて大きさを増加し、被密
封空間の方に開口する。これにより油ポケツトに
含まれた潤滑油の容積は、被密封軸の回転方向に
係わりなく、その回転速度に応じてのみ変化す
る。

この変化は、被密封軸の低速回転時に油ポケツ
トに含まれて潤滑油の容積が、高速回転時のそれ
よりも大きいことを特徴とする。この変化に応じ
て含有された潤滑油の流体力学的に有効な表面が
大きくなり、密封面の充分な潤滑を確実に保証す
ると共に、潤滑油の容積を回転速度の高まりに伴
うより高い圧力の下で低減させる。

本発明提案によるロータリ軸シールリングの油
ポケツト底面は、望ましくは各油ポケツトの縁
で、隣接の密封面に曲面により滑らかに移行す
る。これにより通常の運転条件の下でストールが
阻止され、良好な密封効果の達成が著しく促進さ
れる。

円周方向で隣接した油ポケツトは相互に移行し
合うよう構成することができ、運転条件の下で油
ポケツトに生じる流体力学的に有効な力を格別均
一に周面に分布させることが可能となる。摩耗の
ない密封効果の達成が、これにより促進される。

本提案によるロータリ軸シールリングのリツプ
リングは、周知の圧縮成形法及び／又はトランス
フアー成形法を用いて、場合によつては完成品の
形状をもつて製造し、そして同一工程において金
型内に挿入した補強リングと一体に結合すること
ができる。その製造に使用されるのは概ね加硫材
料であり、該材料は成形過程の間に同時に完全に
加硫される。しかし、この完全加硫にはかなりの
時間が必要となることがあり、本方法の経済的な
実施可能性が損なわれる。

本発明によれば、弾性材料からなるリツプリン
グと一体に形成した細長く突出した断面形のシー
ルリツプを用い、シールリツプの製造時に該リツ
プをリツプリングの縦断面に対し横向き及び／又
は外向きに配置して被密封軸の径より大きい径と
し、補強リングにリツプリングを固定する前又は
その間にリツプリングの重心を中心に捩つてリツ
プリングの内径を被密封軸の径より小さくするこ
とにより、ロータリ軸シールリングが形成され
る。

環状に完結したシールリツプを有するリツプリ
ングも補強リングも、回転対称な形状に形成した
個別の部品から構成することができる。これによ
り補強リング及びリツプリングの製造が著しく簡
素化され、寸法及び弾性の最大限の連続性が周面
全体にわたつて保証される。

シールリツプは両部品の組立前において、リツ
プリングの横向き及び／又は外向きの環状突起を
形成しており、比較的細長の断面形を有し、内径
が被密封軸の外径よりも大きい。

リツプリングは、補強リングに固着する前又は
その間に重心を中心に捩つて、リツプリングの内
径が被密封軸の径より小さくなるようにする。こ
うして円周方向でシールリツプが圧縮され、リツ
プリングから離れるにつれひだが一層顕著とな
る。取付けを完了したロータリ軸シールリングの
シールリツプは、その結果、リツプリングに面し
た範囲でのみ周面全体が連続的に軸に当接する。
ひだにより形成した油ポケツト間にこうして形成
された接触域は、被密封軸の方に突出した指状の
延長部を有する。

延長部の分布は周面で完全に均等にされてお
り、その際シールリツプを形成する高分子材料の
分子配向が、リツプリングの表面方向と平行でひ
だの方向に従つていることが極めて有利である。
摩耗特性はあらゆる部分領域で完全に均等にされ
ており、寿命を長くすることができる。

シールリツプの縦断面は、ひだを得るため出来
るだけ縦長に構成し、望ましくは最大厚さの少な
くとも2.5倍を超える長さとすべきである。それ
より大きな比も可能であるが、その場合一般にひ
だ間の相互距離が大きくなりすぎ、漏れを生じる
ことがある。シールリツプの内面と外面とが平行
である場合、特にこの欠点がしばしば障害となつ
て現れる。縦断面を被密封空間の方に鋭角にする
ことも可能であるが、その場合には周面方向で隣
接したひだ間の相互距離が格別に小さくなる。同
時に、シールリツプが機械的に弱くなり、実際に
設計する際この点を考慮せねばならない。これは
特定の限界値を下回ることはできないが、この限
界値は個々のケースで決定される。

シールリツプは、望ましくはリツプリングと一
体の構成部分をなし、それを製造する材料として
考慮できるのは弾性に優れたもののみである。好
ましくはゴム弾性材料を使用する。しかしポリテ
トラフルオロエチレンやポリアミドも適宜に試験
したのち考慮の対象とすることができる。

〔実施例〕

本発明の対象を、以下添付図面に基づき更に説
明する。

図示したロータリ軸シールリングは深絞り鋼板
からなる補強リング１を含み、該リングの縦断面
は、半径方向内側に突出した脚部を有する。ゴム
弾性材料から成るリツプリング２がほぼ軸方向で
被密封空間の方に突出し、前記脚部に固着してあ
る。リツプリング２の密封面４は、軸の停止時に
環状ガーターばね３の作用で被密封軸５の表面に
弾性的に圧接する。密封面４は周面に均等に配設
され被密封空間の方にのみ開口した油ポケツト６
を有し、該ポケツトはリツプリング周面の範囲の
方向で、内側に湾曲した単一の底面により制限さ
れている。無ポケツト６は被密封空間の方向へと
向かつて横断面が回転軸を中心に対称に拡大し、
油ポケツトを周面方向で制限するせき止面７部分
は互に外側へと湾曲し、これにより底面はこの方
向において密封面に滑らかに移行している。内側
湾曲部と外側湾曲部における湾曲の曲率はほぼ等
しく、隣接した油ポケツト相互の距離は、油ポケ
ツト間でも湾曲がさして中断されることのないよ
う設計してある。以下機能について説明する。

被密封軸の回転速度が低いとき、油ポケツトに
は被密封媒体、例えば潤滑油がかなり詰まる。

潤滑油は毛管引力の働きにより、本来の密封面
と被密封軸表面との間の最も狭い範囲、つまりリ
ツプリング２の底面が被密封軸表面に対し最小の
角度をなした範囲にまで達する。これにより、軸
がごく小さな相対速度で捩れただけでも、半径方
向外向きに大きな力が発生し、密封面を軸の表面
から持ち上げる。これにより摩耗が防止される一
方、前記範囲は回転軸及び被密封空間の方向に対
し鋭角をなしているので漏れが生じることはな
い。また、油ポケツトに流入した潤滑油は、被密
封軸の回転速度が高まるのに伴い内圧が上昇し、
この内圧の上昇は、底面が軸方向に傾斜して形成
されているため、潤滑油を押出すように作用しこ
うして被密封空間に戻される量が増す。これによ
り油ポケツトに含まれた潤滑油の容積減少が進
む。

〔発明の効果〕

本発明提案によるロータリ軸シールリングは、
比較的高圧でも被密封軸の回転方向及び回転速度
に係わりなく殆ど摩耗なしに密封することがで
き、それゆえ特にこれまで密封が困難であつた事
例に最適である。

本構成によれば、油ポケツト内は対象な曲面に
より形成されているから、被密封液は失速するこ
となく滑らかに一方のせき止面から他方のせき止
面に移行することができ油ポケツト内で被密封液
の循環が良く行なわれる。その結果、密封面の十
分な潤滑が達成される。

また、本構成によれば、底面が軸と鋭角に成す
ように傾斜しているから、高速回転に伴い油ポケ
ツト内の被密封液の内圧が上昇し密封面と軸表面
との間に生じる距離が拡大すると、底面は被密封
液をポケツト内より外に押出すように作用し、こ
のようにして上記距離が調節される。

本発明によれば、摩耗や漏れは被密封軸の回転
方向及び回転速度に左右されず、常に優れた密封
効果を発揮するロータリ軸シールリングが得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明提案による種類のロータリ軸シ
ールリングの部分断面図。第２図は第１図のロー
タリ軸シールリングを前から見た正面図。 １…補強リング、２…リツプリング、３…環状
ガーターばね、４…密封面、５…軸、６…油ポケ
ツト。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 補強リングと、該リング内で液密に且つ捩り
   を生じないように固定されほぼ軸方向に突出した
   リツプリングとからなり、弾性材料からなるリツ
   プリングは密封面が軸に弾性圧接し、該密封面は
   被密封空間に面した側が、周囲に均一に分布し被
   密封空間の方にのみ開口した油ポケツトにより分
   断され、該油ポケツトが半径方向では底面により
   制限され円周方向では軸の表面及び回転軸に対し
   鋭角をなしたせき止面により制限されたロータリ
   軸シールリングにおいて、各油ポケツト６の底面
   は曲面をなしせき止面７は該底面の周方向両側に
   曲面状に形成され該底面と該せき止面とが曲面に
   より移行し合うよう構成し、こうして形成した底
   面は軸５との距離が被密封空間へと向かつて増加
   していることを特徴とする、ロータリ軸シールリ
   ング。 ２ 前記底面は、各油ポケツト６の縁で隣接の密
   封面４に曲面により移行していることを特徴とす
   る、特許請求の範囲第１項に記載のロータリ軸シ
   ールリング。 ３ 円周方向に隣接する油ポケツト６を相互に曲
   面により移行し合うように構成したことを特徴と
   する、特許請求の範囲第１項又は第２項に記載の
   ロータリ軸シールリング。 ４ 補強リングと、該リング内で液密に且つ捩り
   を生じないように固定されほぼ軸方向に突出した
   リツプリングとからなり、弾性材料からなるリツ
   プリングは密封面が軸に弾性圧接し、該密封面は
   被密封空間に面した側が、周囲に均一に分布し被
   密封空間の方にのみ開口した油ポケツトにより分
   断され、該油ポケツトが半径方向では底面により
   制限され円周方向では軸の表面及び回転軸に対し
   鋭角をなしたせき止面により制限されたロータリ
   軸シールリングにおいて、各油ポケツト６の底面
   は曲面をなしせき止面７は該底面の周方向両側に
   曲面状に形成され該底面と該せき止面とが曲面に
   より移行し合うよう構成し、こうして形成した底
   面は軸５との距離が被密封空間へと向かつて増加
   していることを特徴とする、ロータリ軸シールリ
   ングの製造方法であつて、被密封軸の径よりも大
   きな内径を有する弾性リツプリングに肉薄の突出
   したシールリツプを設けたのち補強リングに個着
   してなる製造方法において、シールリツプは製造
   時にリツプリングの縦断面に対して横向き及び／
   又は外向きに配置して被密封軸の径より大きい径
   とし、補強リングにリツプリングを固着する前又
   はその間にリツプリングの重心を中心に捩つてリ
   ツプリングの内径を被密封軸の径より小さくする
   ことを特徴とする方法。