JPH045165Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この考案は中空糸膜を利用して血液のガス交換
や浄化を行なう中空糸膜型血液処理装置に関する
ものである。

「従来の技術」 周知のように、血液のガス交換や浄化（透析）
を人工的に行なう医療装置として、処理膜に中空
糸膜を使用した構造の中空糸膜型血液処理装置が
知られている。すなわち、多数の中空糸膜により
容器内に多数の血液流通路と、ガスまたは透析液
の流通路とを形成し、上記中空糸膜を介して血液
と、ガス（酸素あるいは酸素と空気あるいは酸素
と空気と二酸化炭素とから構成される）あるいは
透析液とを接触させ、血液中の二酸化炭素をガス
中に排出させたり、血液中の老廃物を透析液中に
排出させて、血液を浄化処理する構造の装置であ
る。

このような血液処理装置の一例として、従来、
第４図に示す構造の人工肺が提供されている。

図中符号１は円筒状の筒体を示すもので、この
筒体１の両端部は拡径されて筒体頭部２ａ，２ｂ
となつている。この筒体頭部２ａ，２ｂの側部に
はガスを上記筒体１中に導入し、筒体１外に排出
する流通管３ａ，３ｂが設けられている。

前記構成の筒体１内には多数の中空糸（ガス交
換膜）４が集束状態で収められている。これら中
空糸４は、シリコーン膜、ポリカーボネート膜、
ポリオレフイン多孔質膜、再生セルロース膜、ポ
リサルフオン膜、ナイロン多孔質膜、ポリエステ
ル多孔質膜、アクリル多孔質膜、フツ素樹脂多孔
質膜等の生体適合性がよく、ガス透過性のある材
料から構成されて、内径30〜1000μｍであり、内
部に血液を流通させるものである。

前記収束状態の中空糸４……は、筒体１内に収
納後にその両端部をポリウレタン樹脂、シリコー
ン樹脂などのポツテイング材５，５により上記筒
体１内において固定されており、このポツテイン
グ材５，５の外側端面には前記中空糸４……が開
口している。

そして、この筒体１には、その両開口部６ａ，
６ｂを覆うようにして蓋体７，８が取り付けられ
ている。この蓋体７，８はキヤツプ状に形成され
ており、この蓋体７，８と前記ポツテイング材
５，５との間にはそれぞれＯ−リング９が介装さ
れ、蓋体７，８−筒体１間が気密構造となつてい
る。そして、上方の蓋体８には血液流通突管１０
ａが設けられ、下方の蓋体７には血液流通突管１
０ｂが設けられており、上方の血液流通突管１０
ａから蓋体８内に血液を流入させ、さらに各中空
糸４……内に血液を流入させ、下方の蓋体７の血
液流通突管１０ｂから血液を流出させるようにな
つている。

上記構成において、ガスは各中空糸４……間を
通り、これら中空糸膜を介して血液とガスとがガ
ス交換し、血液中の老廃ガスは中空糸４外の流通
ガス中に排出され、流通ガス中の酸素は血液中に
吸収される。

ところで、前記従来の中空糸膜型人工肺（血液
処理装置）には、次のような欠点があつた。

すなわち、蓋体８の端面に設けられ、血液を各
中空糸４内に導入するために設けられている血液
流通突管１０ａは、蓋体８の端面の中心に突設さ
れており、この血液流通突管１０ａから前記ポツ
テイング材５の端面５ａまで血液を導いている
が、蓋体８内の外周縁部８ａでは中空糸４の開口
端部がまばらであるので、血液の流れは大変遅く
なり、淀んだ状態になる。そのため、次のような
問題が生じていた。

(イ) 蓋体８内で血液の滞留が生じ、それに伴つて
血栓が生じやすく、処理終了に伴う血液回収時
に残血が生じる。これは特にＯ−リング９近傍
で顕著である。

(ロ) 血液の導入時に、血液は蓋体８の中央部で速
く、周縁部では遅いので、中空糸束の内、中央
部分の中空糸４……中の血液は速く流れ、周辺
部分の中空糸４……中の血液の流れが大変遅く
なり、血液処理効率上および血栓防止上、好ま
しくない状態となる。

本考案者らは、これらの問題点を解決するため
に本願考案に先立つて第５図に示す構造の中空糸
膜型血液処理装置を提案した。

図中、第４図と共通する部分には同一符号を付
して説明を簡略化する。図中、符号２０は血液流
入側の蓋体を示すもので、この蓋体２０の特徴
は、その血液流通突管２１が側面の特定の位置に
突設されていることと、この蓋体２０と筒体１と
の連結がこれらの段差状の連結部C₁において超
音波溶接により一体に接合されていることにあ
る。

前記血液流通突管２１は、その蓋体２０内の開
口部が前記ポツテイング材５の上端面５ａの直上
に位置し、その流通（中心線）方向が同ポツテイ
ング材５の上端面５ａに平行となるとともに、第
２図に示すように、蓋体２０の内周面２０ａにほ
ぼ接するように、形成されている。

また、この蓋体２０の内周面２０ａには、前記
したように、蓋体２０と筒体１との接合が超音波
溶接により行なわれているために、滑らかで、単
純な形状となつており、血液の流通の障害になる
ものがない。そして、超音波溶接による接合によ
つてＯ−リングを設けなくても済んでいるため、
前記構造のように、血液流通突管２１をポツテイ
ング材５の端面５ａの直上に開口させることがで
き、その結果、ポツテイング材５の端面５ａから
蓋体２０の内部の上底面２０ｂ間までの寸法をほ
ぼ血液流通突管２１の内径寸法に等しく設定する
ことができている。したがつて、血液流通突管２
１の血液流は、蓋体２０内に入つてからも何等拡
散も集束もされず、蓋体２０の内周面２０ａに沿
つて渦状に均一に流れ、蓋体２０内において局部
的な停滞を生じることがない。このように、蓋体
２０内の血液の流れが均一化されるので、それに
伴つて蓋体２０内の血液の圧力も平均化され、そ
の結果、蓋体２０内の血液は各中空糸４……内に
ほぼ同流速で流入する。

また、図中、符号２２は血液流出側の蓋体を示
すもので、この蓋体２２はこの蓋体２２と筒体１
との連結がこれらの段差状の連結部C₂において
超音波溶接により一体に接合されていること以
外、従来の血液処理装置（第４図）とほぼ同一構
造に形成されている。すなわち、その血液流通突
管２３は、この蓋体２２の底面の中央に突設され
ており、蓋体２２は全体形状がほぼ漏斗状（この
漏斗状の傾斜角度は2°〜15°が良好である）とな
つている。したがつて、中空糸束の各中空糸４中
をほぼ均一な速度で流出側の蓋体２２内に流下し
てきた血液は、ほぼ漏斗状の蓋体２２内を中央部
の血液流通突管２３に向かつて集まりながら流下
し、しかも、この蓋体内周面は流れを乱す突起物
がない滑らかな表面であるので、血液の停滞が全
く生じずに装置の外に排出される。

なお、この構造の装置においては、流入側の血
液流通突管２１の中心線を蓋体２０の内周面２０
ａにほぼ接するように構成したが、本考案では、
前記中心線は蓋体２０の中心軸（中空糸束の中心
軸）に交差せずに、外れて居れば良いので、必ず
しも血液流通突管２１の中心線を蓋体２０の内周
面２０ａに接するように構成しなければならない
ことはない。

このように従来提案の中空糸膜型血液処理装置
によれば、流入側蓋体の血液流通突管から蓋体内
に流入した血液は、蓋体内においてポツテイング
材端面上を蓋体内の外縁部分に沿つて渦を巻くよ
うに流れ、蓋体内に均一な渦流を生じ、蓋体内の
血液の流れおよび圧力が平均化される。その結
果、蓋体内において血液停滞に伴う血栓が生じる
ことなく、多数の中空糸への流入の均一に行なわ
れ、中空糸内における血栓の心配もなくなる。そ
して、中空糸束の各中空糸中をほぼ均一な速度で
流出側の蓋体内に流下してきた血液は、ほぼ漏斗
状の蓋体内を中央部の血液流通突管に向かつて集
まり、しかも、この蓋体内周面は流れを乱す突起
物がない滑らかの表面であるので、血液の停滞が
全く生じずに装置の外に排出されることになる。

「考案が解決しようとする問題点」 ところで、その後、本願考案者らが係る血液処
理装置のより一層の品質向上を目的に検討を続け
たところ、従来提案の装置には次のような改良す
べき点のあることが判明した。

前記従来提案の装置（第５図）に限らず、旧来
の血液処理装置（第４図）においても、採血針を
介して患者からの導き出された血液は、リザーバ
ーに一旦貯留され、このリザーバーから血液処理
装置に導入されるようになつている。この血液流
通系において、前記採血針やリザーバーから、特
にリザーバーから血液中に気泡が混入しやすく
（実際には避けがたく発生している）、混入した気
泡は血液処理装置の血液流入側の蓋体内の最上部
に留どまる。この気泡は、前記従来の血液処理装
置においては、蓋体２０の上底部２０ｂの中心部
分に位置し続ける。それは、この装置において
は、前記したように、蓋体２０内において血液流
は蓋体２０の内周面に沿つて蓋体２０の中心部分
を中心として渦状に均一に流れるようになつてい
るからである。ここで問題となるのは、気泡の発
生そのものではなく、気泡が一定の位置に居続け
ることと、この気泡が位置する蓋体２０の中心部
分は比較的血液流の緩やかなところである、とい
う２つの点にある。これら２つの条件が揃うこと
によつて、同一の血液が気泡（空気）に接し続け
る時間が比較的長くなつてしまい、長時間に亙つ
て装置を使用した場合、その部分にあつた血液が
かたまりやすくなる心配がでてくる。これは装置
の一層の性能向上という点からは解決すべきこと
である。

「問題点を解決するための手段」 本考案に係る中空糸膜型血液処理装置は、前記
従来の問題点を解決するためになされたもので、
血液流入側の流通突管の蓋体内開口部において、
ポツテイング材の上端面からの高さ寸法が最も大
きくなるように蓋体内の上底面が傾斜しているこ
とを特徴とするものであり、さらに本考案におい
ては、必要に応じて前記流通突管の蓋体側部への
水平、垂直方向の取付角度を適宜変えるようにし
たものである。

「作用」 上記構成によれば、避けがたく蓋体内に入つて
きた気泡は、蓋体内の上底面が傾斜しているため
に、この傾斜面に沿つて蓋体内の一番高い個所
（流通突管の開口部）へ移動するが、流通突管の
開口部近傍には常に内部に向かつての血液流があ
るため再び下流へ押し流される。このように、蓋
体内に侵入した気泡は、蓋体内の上底面の傾斜に
沿つて上動し、上動した後、再び下流に流され
る、という一連の循環移動を繰り返すことにな
り、蓋体内において、気泡に一部の血液が比較的
長く接触し続けてしまうことが防止される。その
結果、装置を長時間使用した場合でも凝血の発生
を防止することができる。

以下、本考案を実施例によりさらに詳しく説明
する。

「実施例 １」 第１図および第２図は本考案の第１の実施例を
示すもので、図中、第５図と共通する部分には同
一符号を付して説明を簡略化する。図中、符号３
０は血液流入側の蓋体を示すもので、この蓋体３
０の特徴は、その内部の上底面３０ｂが所定角度
（ポツテイング材５の上端面５ａに対し１〜15°）
傾斜していることにある。この上底面３０ａの傾
斜は、血液流通突管３１の蓋体３０内の開口部３
１ａ近傍において、ポツテイング材５の上端面５
ａからの高さ寸法が最も大きくなるような向きに
設定されている。

本実施例においては、前記特徴部分以外は第５
図に示した装置と同様である。すなわち、血液流
通突管３１は、その蓋体３０内の開口部３１ａが
ポツテイング材５の上端面５ａの直上に位置し、
その流通（中心線）方向が同ポツテイング材５の
上端面５ａに平行となるとともに、第２図に示す
ように、蓋体３０の内周面３０ａにほぼ接するよ
うに、形成されている。

しかして、上記構成によれば、第２図に示すよ
うに、体外循環回路中のリザーバー等から避けが
たく蓋体３０内に入つてきた気泡Ｂ…は、蓋体３
０内の上底面３０ｂが傾斜しているために、この
傾斜面に沿つて蓋体３０内の一番高い個所である
流通突管３１の開口部３１ａへ移動する。しか
し、流通突管３１の開口部３１ａ近傍には常に蓋
体３０内部に向かつての血液流があるため再び下
流へ押し流される。

このように、蓋体３０内に侵入した気泡Ｂ…
は、蓋体３０内の上底面３０ｂの傾斜に沿つて上
動し、上動した後、再び下流に流される、という
一連の循環移動を繰り返すことになり、蓋体３０
内において、気泡Ｂ…に一部の血液が比較的長く
接触し続けてしまうことが防止される。その結
果、装置を長時間使用した場合でも、空気に触れ
ることによる凝血が生じる心配がなくなる。

「実施例 ２」 第３図は本考案の第２の実施例を示すもので、
図中、第１図と共通する部分には同一符号を付し
て説明を簡略化する。図中、符号３２は血液流入
側の蓋体３０に取り付けられている血液流通突管
を示すもので、この血液流通突管３２の特徴は、
その蓋体３０の側部への取付角度が蓋体３０の上
底面３０ｂに対して所定の角度範囲（−15°〜＋
15°）内で傾斜していることにある（図の実線で
は0°傾斜、すなわち、ポツテイング材５の上端面
５ａに対して上底面３０ｂと同角度傾斜、点線で
は−15°傾斜）。

実線のように血液流通突管３２を上底面３０ｂ
とほぼ同角度に傾斜させる場合は、患者の血液の
粘度が比較的低く、蓋体３０の中の血液の流れが
速く、気泡が容易に循環移動する場合である。

逆に点線のように血液流通突管３２を上底面３
０ｂに交差させるように設ける必要のある場合
は、患者の血液の粘度が比較的高く、蓋体３０中
の血液の流れが遅くなりやすく、そのため気泡が
血液流通突管３２の開口部の近傍に停滞しやすく
なる場合である。このような場合は、図の点線の
ように血液流通突管３２を傾斜させることによ
り、血液流通突管３２からの血液流は上底部３０
ｂの開口部近傍に当たるので、血液の粘度が高
く、この開口部近傍に停滞気味のある気泡を撹乱
させて循環移動を促進させることができる。

「考案の効果」 以上説明したように、本考案に係る中空糸膜型
血液処理装置は、血液流入側の流通突管の蓋体内
開口部において、ポツテイング材の上端面からの
高さ寸法が最も大きくなるように蓋体内の上底面
が傾斜していることを特徴とするものであり、さ
らに本考案においては、必要に応じて前記流通突
管の蓋体側部への水平、垂直方向の取付角度を適
宜変えるようにしたものである。

従つて、本考案の血液流通突管によれば、避け
がたく蓋体内に入つてきた気泡は、蓋体内の上底
面が傾斜しているために、この傾斜面に沿つて蓋
体内の一番高い個所（流通突管の開口部）へ移動
するが、流通突管の開口部近傍には常に内部に向
かつての血液流があるため再び下流へ押し流され
る。このように、蓋体内に侵入した気泡は、蓋体
内の上底面の傾斜に沿つて上動し、上動した後、
再び下流に流される、という一連の循環移動を繰
り返すことになり、蓋体内において、気泡に一部
の血液が比較的長く接触し続けてしまうことが防
止される。その結果、装置を長時間使用した場合
でも凝血の発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図はこの考案の第１の実施例
を示すもので、第１図はこの考案に係る中空糸膜
型血液処理装置の縦断面構成図、第２図は第１図
の−線に沿う同血液処理装置の断面構成図、
第３図はこの考案の第２の実施例を示す縦断面構
成図、第４図および第５図はそれぞれ従来の中空
糸膜型血液処理装置の新旧各一例を示す縦断面構
成図である。 １……筒体、２ａ，２ｂ……筒体頭部、３ａ，
３ｂ……ガス（または透析液）流通管、４……中
空糸、５……ポツテイング材、５ａ……ポツテイ
ング材の上端面、２２……血液流出側の蓋体、２
３……血液流通突管、３０……血液流入側の蓋
体、３０ａ……蓋体の内周面、３０ｂ……蓋体の
内部の上底面、３１，３２……血液流通突管。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 両端側部にガスまたは透析液の流通管が突設さ
   れている筒体内に外観柱状に収束された多数の中
   空糸が収納されるとともに、その両端部がポツテ
   イング材により固定され、血液の流通突管を有す
   るキヤツプ状の蓋体が前記筒体の両端部に超音波
   溶接により一体に連結されてなり、 前記血液流入側の蓋体の血液流通突管がこの蓋
   体の側部に、その流入口が前記ポツテイング材の
   ほぼ端面直上に位置され、 前記血液流入側の血液流通突管の蓋体内開口部
   において、前記ポツテイング材の上端面からの高
   さ寸法が最も大きくなるように蓋体内の上底面が
   所定角度傾斜され、 前記血液流入側の血液流通突管の取付角度が前
   記蓋体の上底面の対して所定角度範囲内に設定さ
   れるとともに、この血液流通突管の流れ中心が前
   記蓋体の中心軸線に当接しないようにして設けら
   れ、 前記血液流出側の蓋体の血液流通突管がこの蓋
   体の底面の中央部に突設されていることを特徴と
   する中空糸膜型血液処理装置。