JPH04361110A - 原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡およびその制御方法 - Google Patents

原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡およびその制御方法

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JPH04361110A
JPH04361110A JP3136213A JP13621391A JPH04361110A JP H04361110 A JPH04361110 A JP H04361110A JP 3136213 A JP3136213 A JP 3136213A JP 13621391 A JP13621391 A JP 13621391A JP H04361110 A JPH04361110 A JP H04361110A
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謙治 山▲崎▼
Yasuhiro Torii
鳥居 康弘
Nobuyuki Takeuchi
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋭く尖らせた探針を試
料表面に接近させ、探針先端と試料表面との距離に依存
する物理量を検出することにより、表面形状の測定や材
料分析などを高い空間分解能で行う走査型プローブ顕微
鏡に関するもののうち、探針先端と試料表面に働く原子
間力等の力を検出して表面形状を測定する原子間力顕微
鏡と、探針先端と試料表面の間に流れるトンネル電流を
検出して表面形状や電子的特性を測定する走査型トンネ
ル顕微鏡とを複合した原子間力顕微鏡/走査型トンネル
顕微鏡およびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】走査型トンネル顕微鏡(以下STMと略
記する)は導電性物質の表面を原子オーダーの高分解能
で観察や分析ができ、また原子間力顕微鏡(以下AFM
と略記する)は導電性とは無関係に表面を原子オーダー
の高分解能で観察できるということで注目されている。 これらの複合装置である原子間力顕微鏡/走査型トンネ
ル顕微鏡(以下AFM/STMと略記する)は導電性物
質と非導電性物質が混在する表面について表面形状の観
察と電子的特性の分析が高い空間分解能で同時にできる
ということで注目されており、例えば日本金属学会会報
第29巻第5号(1990)349頁から357頁に解
説されている。
【0003】従来のAFM/STMの構成および動作は
以下の通りである。すなわち、先端が鋭く尖った探針を
取り付けた柔らかい板バネを試料表面に接近させると、
探針先端と試料表面の間に原子間力により斥力又は引力
が働き、板バネがたわむ。このたわみの量は板バネ背面
の別の探針と板バネ背面間に流れるトンネル電流量や光
てこの原理による光検出器の検出量により、非常に高い
感度で検出することが可能である。また、導電性の探針
・板バネを用い、試料と探針の間にバイアス電圧を印加
することにより、試料が導電性である場合、トンネル現
象によるトンネル電流が試料・探針間に流れる。この原
子間力やトンネル電流は試料・探針間距離に大きく依存
するので、試料をXY方向(面内方向)にラスタースキ
ャンさせながらこの物理量を検出し、これが一定になる
ように試料をZ方向(試料表面に垂直な方向)にフィー
ドバック制御することにより、原子オーダーで試料の表
面形状が観察できる。例えば、導電性物質と非導電性物
質が混在する表面で、原子間力が一定になるようにフィ
ードバック制御してトンネル電流をラスタースキャンに
対応させながらマッピングすることにより、表面形状と
導電性物質の分布が高い空間分解能で観察できる。また
、トンネル電流が一定になるようにフィードバック制御
しながら原子間力を検出することにより、STM観察中
に試料・探針間に働く力を測定することができる。
【0004】ところで、STMの方法に分光機能を付加
した走査型トンネル分光法(以下STSと略記する)と
いう技術がある。これは、各XY走査点で試料・探針間
の相対位置を一旦固定した状態で、バイアス電圧を掃引
しながらトンネル電流信号を入力し、I(トンネル電流
)−V(バイアス電圧)特性を測定することにより、各
XY走査点での電子的特性を高い分解能で分析できる方
法として注目されている。例えば日本物理学会誌vol
.46,No.4(1991)293頁から295頁に
解説されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術によるAFM/STMでは、原子間力を一定の
条件で、ある値に設定したバイアス電圧を試料・探針間
に印加した際に流れるトンネル電流値の空間分布、つま
り特定のバイアス電圧での導電性の空間分布の像および
試料表面の凹凸像が得られるのみで、分光機構がない。 従って、特定のバイアス電圧での導電性が同じであって
も試料・探針間のI−V特性等の電気的特性の異なる複
数の物質が混在する試料表面を観察したい場合や、表面
状態密度等の詳しい電子的特性を得たい場合には、これ
ができないという問題があった。
【0006】また、非導電性物質を含む表面を観察する
場合には、トンネル電流が一定になるようにフィードバ
ック制御する方法は使えず、原子間力が一定になるよう
にフィードバック制御することになるが、この場合、原
子間力よりトンネル電流の方が垂直方向の分解能が高い
(距離依存性が大きい)ので、フィードバック制御の誤
差によるトンネル電流の変動が大きく、異なる導電性物
質を区別することが難しいという問題があった。
【0007】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであり、その第1の目的は電気的特性は異な
るが特定のバイアス電圧での導電性が同じである複数の
物質が混在する試料表面の観察や、表面状態密度等の詳
しい電子的特性の測定が可能なAFM/STMを提供す
ることにある。
【0008】また、本発明の第2の目的は非導電性物質
を含む表面を観察する場合に、フィードバック制御の誤
差によるトンネル電流の変動を小さくし、異なる導電性
物質を区別しそれらの分質分布を観察することが可能な
AFM/STMを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の第1の目的を達成
するために、本発明の原子間力顕微鏡/走査型トンネル
顕微鏡およびその制御方法においては、試料と、探針と
、該試料・探針間の該試料表面の面内方向の相対的位置
を走査制御する走査制御部と、該試料・探針間の該試料
表面に垂直な方向の相対的位置をフィードバック制御す
るフィードバック制御部と、該試料又は該探針にバイア
ス電圧を印加するバイアス電圧制御部と、該試料・探針
間に働く力を検出する原子間力検出部と、該試料・探針
間に流れる電流を検出するトンネル電流検出部から構成
されている原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡にお
いて、前記フィードバック制御部から前記原子間力検出
部から出力される原子間力の信号の値をパラメータとし
た関数を帰還信号としてフィードバック制御を行い、か
つ走査型トンネル分光法の方法による分光機能を付加す
ること、つまり前記バイアス電圧制御部が所定の電圧波
形でバイアス電圧を変化させると同時に、走査制御にお
ける走査点で電気的特性などの異なるバイアス電圧のト
ンネル電流信号を前記トンネル電流検出部が入力するこ
とを特徴としている。
【0010】また、同じく上記の第2の目的を達成する
ため、本発明の原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡
およびその制御方法においては、試料と、探針と、該試
料・探針間の該試料表面の面内方向の相対的位置を走査
制御する走査制御部と、該試料・探針間の該試料表面に
垂直な方向の相対的位置をフィードバック制御するフィ
ードバック制御部と、該試料又は該探針にバイアス電圧
を印加するバイアス電圧制御部と、該試料・探針間に働
く力を検出する原子間力検出部と、該試料・探針間に流
れる電流を検出するトンネル電流検出部から構成されて
いる原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡において、
前記フィードバック制御部が、前記原子間力検出部から
出力される原子間力の信号およびトンネル電流検出部か
ら出力されるトンネル電流の信号の双方を同時に入力し
、これらをパラメータとする関数を帰還信号として該試
料表面の導電性/非導電性の性質に応じてフィードバッ
ク制御することを特徴としている。
【0011】
【作用】本発明の原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微
鏡(AFM/STM)では、従来のAFM/STMに走
査型トンネル分光法(STS)の方法による分光機能を
付加することにより、つまり試料・探針間の相対的位置
の走査制御における各走査点で、バイアス電圧を所定波
形の高周波で変化させると同時に、複数のトンネル電流
信号を測定し、バイアス電圧と時間対応させることによ
り、各走査点でのI−V特性が得られるようにする。こ
れにより、電気的特性は異なるが特定のバイアス電圧で
の導電性が同じである複数の物質が混在する試料表面の
物質分布観察や、表面状態密度等の詳しい電子的特定の
測定を高い空間分解能で可能にしている。
【0012】また、本発明の原子間力顕微鏡/走査型ト
ンネル顕微鏡(AFM/STM)においては、フィード
バック制御部が、トンネル電流の信号と試料・探針間に
働く原子間力の信号の双方を同時に入力し、これらをパ
ラメータとする関数を帰還信号としてフィードバック制
御する。例えば、トンネル電流が流れる部分は導電性で
あると判断し、トンネル電流を一定にすることを優先し
たフィードバック制御を行い、トンネル電流が流れない
部分は非導電性であると判断し、原子間力を一定にして
フィードバック制御を行う。このようにフィードバック
制御部がトンネル電流と原子間力の複数信号を入力して
フィードバック制御を行うことにより、非導電性物質を
含む表面を観察する場合に、フィードバック制御の誤差
によるトンネル電流の変動を小さくし、異なる導電性物
質を区別することを可能としている。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳
細に説明する。
【0014】図1は本発明の第1の実施例を示すAFM
/STMの構成図である。本実施例におけるAFM/S
TMを構成する部分として、図中の1は試料、2aは探
針、2bは板バネ、2cはレーザー発信器、2dは光検
出器、2eはXYZ軸圧電素子、2fはトンネル電流検
出器、3はフィードバック制御回路、4は走査波形発生
回路、5は所定の波形でバイアス電圧を発生するバイア
ス電圧制御回路、6a,6bはストレージオシロスコー
プである。板バネ2b,レーザー発信器2c,光検出器
2dは試料1・探針2a間に働く力(原子間力)を検出
する原子間力検出部に相当する試料1はXYZ軸圧電素
子2e上に載置され、試料1表面に平行な平面上(面内
方向)の直交軸をXY軸として、また試料1表面に垂直
な方向をZ軸として探針2aとの相対的位置が制御され
る。
【0015】上記各部の接続構成と各部の機能は次の通
りである。探針2aは板バネ2bの先端に固着され、試
料1表面に近接して配置される。ここで、試料1の表面
と探針2aの先端の間に原子間力が働くと、探針2aと
一体となっている板バネ2bがたわむ。このたわみ量は
、レーザー発信器2cから発信されたレーザー光の進路
を変え、これが光検出器2dにより検出されて原子間力
信号として出力される。つまり、光検出器2dを構成す
る左右2つの光検出部分の各光検出量の差信号が、板バ
ネ2bのたわみを高感度で検出する。フィードバック制
御回路3は、光検出器2dから原子間力信号を入力し、
この信号が一定になるようにフィードバック制御し、そ
の結果をZ印加電圧信号として出力する。例えば、原子
間力信号から一定の設定基準値を差し引いた帰還信号に
ついて、この帰還信号が常にゼロに近づくように、帰還
信号を予め設定した時定数で積分し、これに帰還信号に
比例する信号を加えるなどした信号を増幅し、Z印加電
圧信号として出力する。Z印加電圧信号はXYZ軸圧電
素子2eのZ印加端子に入力され、試料1のZ軸方向の
位置を変化させることにより、試料1・探針2a間距離
が常に一定に制御される。走査波形発生回路4は、試料
1をX,Y方向にラスタースキャンの方法で走査制御す
るためのX,Y掃引信号をXYZ軸圧電素子2bのX,
Y印加端子に出力する。ストレージオシロスコープ6a
はフィードバック制御回路3からZ印加電圧信号を入力
し、走査波形発生回路4からX,Y掃引信号を入力して
、これらを関連付け、試料1の凹凸を示すAFM像を3
次元図形や濃淡図として表示する。バイアス電圧制御回
路5は高周波の三角波を試料1に出力する。試料1・探
針2a間に流れており、バイアス電圧や試料1の電気的
特性に従って変化するトンネル電流は、板バネ2bに接
続されたトンネル電流検出器2fによって検出され、ス
トレージオシロスコープ6bに出力される。ストレージ
オシロスコープ6bはトンネル電流検出器2fからトン
ネル電流の信号を入力し、バイアス電圧制御回路5から
バイアス電圧信号を入力し、さらに走査波発生回路4か
らX,Y掃引信号を入力して、これらを関連付け、試料
1の電気的特性の分布や表面状態密度等の電子的特性を
示すSTS像を3次元図形や濃淡図として表示する。
【0016】以上のように構成した第1の実施例の作用
を述べる本実施例では、バイアス電圧制御回路5が所定
の電圧波形でバイアス電圧を掃引することにより、従来
のAFM/STMにSTS(走査型トンネル分光法)に
よる分光機能を付加したものである。本実施例でのX掃
引信号と試料表面の物質分布、各物質の電気的特性、バ
イアス電圧、トンネル電流の関係の例を図2(a),(
b−1),(b−2),(c),(d)に示す。試料が
図2(a)に示すようにX掃引信号の値に対応する部分
で物質A,物質Bと物質Cからなっており、物質Cは非
導電性物質であり、物質Aと物質Bの電気的特性が順に
図2(b−1),(b−2)に示したトンネル電流のバ
イアス電圧依存性を持つものとする。例えば、順にp型
半導体およびn型半導体である場合にはこのような電気
的特性を持つものがある。所定の電圧波形のバイアス電
圧としては図2(c)に示すような高周波の三角波とす
るのが適当であり、この場合、トンネル電流は図2(d
)に示したようになる。このトンネル電流の波形とX,
Y掃引信号を関連付けることにより、試料表面の各物質
の分布を観察することができる。また、導電性の各部分
について、STSの方法に従って表面状態密度等の電子
的特性の情報を得ることも可能である。これに対して従
来例の様にバイアス電圧が直流である場合、正バイアス
電圧では物質Bと物質Cの各部分で共にトンネル電流が
流れないので区別ができず、負バイアス電圧では同様に
物質Aと物質Cの区別ができない。
【0017】このように従来のAFM/STMにSTS
の方法による分光機能を付加することにより、導電性物
質と非導電性物質が混在する表面で、例えば、上記物質
A,物質B,物質Cの試料・探針間のI−V特性が示す
ような電気的特性は異なるが特性のバイアス電圧での導
電性が同じである複数の導電性物質の分布観察や、表面
状態密度等の詳しい電子的特性の測定が高い空間分解能
で可能となる。
【0018】次に、本発明の第2の実施例を説明する。
【0019】図3はその第2の実施例を示すディジタル
制御のAFM/STMの構成図であって、1は試料、2
aは探針、2bは板バネ、2cはレーザー発信器、2d
は光検出器、2eはXYZ軸圧電素子、12a,12b
はA/D変換器、12c,12d,12e,12fはD
/A変換器、13はDSP部(ディジタルシグナルプロ
セッサ部)、14は制御用コンピュータである。
【0020】試料1,探針2a,板バネ2b,レーザー
発信器2c,光検出器2d,XYZ軸圧電素子2eの構
成は第1の実施例と同様である。A/D変換器12aは
、試料1・探針2a間に流れるトンネル電流を検出し、
これをディジタル信号に変換し、DSP部13に出力す
る。A/D変換器12bは、光検出器2dから原子間力
信号を入力し、これをディジタル信号に変換し、DSP
部13に出力する。D/A変換器12cはDSP部13
から入力したディジタルのバイアス電圧信号をアナログ
信号に変換し、試料1に出力する。D/A変換器12d
,12eはDSP部13から入力したディジタルのX,
Y掃引信号をアナログ信号に変換し、XYZ軸圧電素子
2eのX,Y印加端子に出力する。D/A変換器12f
はDSP部13から入力したディジタルのZ印加電圧信
号をアナログ信号に変換し、XYZ軸圧電素子2eのZ
印加端子に出力する。DSP部13は予め制御用コンピ
ュータ14から指示された方法に従って、A/D変換器
12a,12bから順にトンネル電流信号と原子間力信
号を入力し、D/A変換器12c,12d,12e,1
2fに順にバイアス電圧信号,X掃引信号,Y掃引信号
,Z印加電圧信号を出力することにより、試料1・探針
2a間距離を一定にするためのフードバック制御および
XY方向に試料1を走査するための走査制御、バイアス
電圧制御を行う。制御用コンピュータ14は、DSP部
13にフードバック制御,走査制御,バイアス電圧制御
の方法を指示し、DSP部13から得られたデータを入
力し、これを表示,記憶,処理する。具体的には、X,
Y掃引信号に対するZ印加電圧信号による凹凸を示す像
またはトンネル電流信号による導電性などの電気的特性
を示す像などが得られる。
【0021】以上のように構成した第2の実施例の動作
および作用を述べる。
【0022】まず、DSP部13が行うフィードバック
制御、走査制御およびバイアス電圧制御の動作について
説明する。図4はその制御方法を示すフローチャートで
あって、Vはバイアス電圧値、Iはトンネル電流信号値
、Fは原子間力信号値、Zは印加電圧信号値である。 IBはトンネル電流の絶対値がこの値以下の場合は原子
間力のみをフィードバック制御の対象とする境界値、F
Bは原子間力がこの値以下かつトンネル電流の絶対値が
IB以上の場合はトンネル電流のみをフィードバック制
御の対象とする境界値で、FSは原子間力がこの値とな
る様に探針をZ方向にフィードバック制御する設定基準
値、ISはトンネル電流の絶対値がこの値に一定となる
様に探針をZ方向にフィードバック制御する設定基準値
で、(F−FS)または(│I│−IS)はフィードバ
ック制御の帰還信号となる。ZF,ZI,ZFIは各々
の場合に、帰還信号からZ印加電圧信号値を求めるフィ
ードバック制御関数である。
【0023】DSP部13は、まずバイアス電圧Vを出
力し、次にトンネル電流信号Iと原子間力信号Fを入力
する。トンネル電流信号の絶対値│I│が境界値IBよ
り小さい場合には、そこは非導電性物質である可能性が
高いと判断して原子間力のみをフィードバック制御の対
象とし、(F−FS)を帰還信号とするZFのフィード
バック制御関数を計算する。トンネル電流信号の絶対値
│I│が境界値IB以上でかつ原子間力信号Fが境界値
FBより小さい場合には、そこは導電性の高い物質であ
ると判断してZ方向分解能の高いトンネル電流のみをフ
ィードバック制御の対象とし、(│I│ーIS)を帰還
信号とするZIのフィードバック制御関数を計算する。 それ以外の場合は、そこは導電性はあるものの十分では
ない可能性が高いと判断して原子間力とトンネル電流の
双方をフィードバック制御の対象としたり、あるいは導
電性が十分ではない理由や測定の目的によっては、後で
述べるようにZFIの制御関数中の係数の値を選ぶこと
により、事実上トンネル電流のみあるいは原子間力のみ
をフィードバック制御の対象として、ZFIのフィード
バック制御関数を計算する。次に、このようにしてフィ
ードバック関数から求めたZ印加電圧信号Zを出力し、
最後に、XY走査点を次の走査点に進めて以上の制御を
繰り返す。
【0024】次に各フィードバック制御関数について具
体的に説明する。1変数のフィードバック制御関数ZF
,ZIはディジタルPIDフィードバックの方法を用い
る場合、次の様になる。つまり、帰還信号の時間列をX
nとするとフィードバック制御関数Znは、Zn=−p
Xn−iX′n−d(Xn−Xn−1)X′n=X′n
−1+Xn(X′oの値は状況による)p:比例利得係
数 i:積分利得係数 d:微分利得係数 (n−1とは1回前のフィードバック制御の際の値を示
す。Xoはゼロとしてもよい。)となる。
【0025】2変数のフィードバック制御関数ZFIに
ついては、2つの帰還信号の時間列(│In│−IS)
,(Fn−FS)の一次結合の時間列Xnを用いて、上
記の1変数のフィードバック制御関数に代入すればよい
。つまり、時間列   Xn=a(Fn−FS−FC)+b(│In│−I
S−IC)+cについて上記の1変数のフィードバック
制御関数を計算すればよい。ここでa/b〜0とすれば
、ほとんど原子間力のみを対象としたフィードバック制
御となり、b/a〜0とすれば、ほとんどトンネル電流
のみを対象としてフィードバック制御となる。フィード
バック制御関数ZF,ZI,ZFIの各利得係数p,i
,dについて、順にF,I,FIのサフィックスを付け
、pF,iF,…,dFIと表記すると、トンネル電流
Iと原子間力Fの2変数について、フィードバック制御
関数ZF,ZI,ZFIが連続になるように、 1:a:b=pFI:pF:pI=iFI:iF:iI
=dFI:dF:dI=1:IC:FC、IC=IB−
IS、FC=FB−FS、c=bIC(=aFC) と各係数を設定するのが適当である。
【0026】このように、トンネル電流信号と原子間力
信号の双方を同時に入力し、非導電性物質と導電性物質
が混在する試料表面について、非導電性物質の部分は原
子間力の関数をフィードバック制御の帰還信号とし、導
電性の高い物質の部分はZ方向分解能の高い(試料・探
針間距離依存性が大きい)トンネル電流の関数をフィー
ドバック制御の帰還信号とし、非常に薄い非導電性酸化
膜に覆われている導電性物質の様な、導電性はあるもの
の十分ではない部分は原子間力とトンネル電流の双方を
パラメータとする関数を帰還信号としてフィードバック
制御するという、フィードバック制御の対象とする帰還
信号の自動調節が可能となる。
【0027】原子間力信号とトンネル電流に対して、フ
ィードバック制御の対象とする帰還信号の自動調節が可
能となることの効果としては、導電性物質と非導電性物
質が混在する表面を観察する場合に、フィードバック制
御の誤差によるトンネル電流の変動を小さくし、安定化
することができる。これにより、異なる導電性物質を区
別し、それらの物質分布観察が可能となる。また、第1
の実施例の様なアナログ制御でなくディジタル制御の構
成とすることにより、信号の後処理が容易になり、また
各種の付加機構を加える際にハードウエアの変更の必要
がないという効果がある。
【0028】次に、本発明の第3の実施例を説明する。 本実施例は、前述の第2の実施例がバイアス電圧を常に
一定とした動作の実施例であったのに対し、第1の実施
例のようにSTSによる分光機能を付加したものである
【0029】図5は、その第3の実施例を示すディジタ
ル制御のAFM/STMのフィードバック制御、走査制
御およびバイアス電圧制御の方法を示すフローチャート
であって、図3に示したディジタル制御のAFM/ST
Mの構成で実現可能である。この場合、フィードバック
制御、走査制御、バイアス電圧制御の計算はDSP部1
3が行う。
【0030】図5で、V,I,F,Z,IB,FB,F
S,IS,ZF,ZI,ZFIの各記号は第2の実施例
の図4での説明で示した通りであり、Xは第2の実施例
でも説明した原子間力とトンネル電流の一次結合である
帰還信号で、X=a(F−FS−FC)+b(│I│−
IS−IC)+cと表される。△XはXの許容誤差、△
F,△Iは各々帰還信号(F−FS),(│I│−IS
)の許容誤差である。mは帰還信号が連続して許容誤差
以上であった回数、nは同一走査点でフィードバック制
御を繰り返す最大回数である。
【0031】DSP部13は、まずバイアス電圧Vを出
力し、次にトンネル電流信号Iと原子間力信号Fを入力
する。トンネル電流信号の絶対値│I│が境界値IBよ
り小さい場合には、そこは非導電性物質である可能性が
高いと判断して原子間力のみをフィードバック制御の対
象とし、(F−FS)を帰還信号とするZFのフィード
バック制御関数を計算する。トンネル電流信号の絶対値
│I│が境界値IB以上でかつ原子間力信号Fが境界値
FBより大きい場合には、そこは導電性の高い物質であ
ると判断してZ方向分解能の高いトンネル電流のみをフ
ィードバック制御の対象とし、(│I│−IS)を帰還
信号とするZIのフィードバック制御関数を計算する。 それ以外の場合は、そこは導電性はあるものの十分でな
い可能性が高いと判断して原子間力とトンネル電流の双
方をフィードバック制御の対象としたり、あるいは導電
性が十分ではない理由や測定の目的によっては、後で述
べるようにZFIの制御関数中の係数の値を選ぶことに
より、事実上トンネル電流のみあるいは原子間力のみを
フィードバック制御の対象として、ZFIのフィードバ
ック制御関数を計算する。このようにしてフィードバッ
ク関数から求めたZ印加電圧信号Zを出力した後、各場
合の帰還信号の絶対値│F−FS│,││I│−IS│
,│X│が各許容誤差△F,△I,△X以上であった場
合は、フィードバック制御が十分に目標の値まで制御で
きていないと判断し、フィードバック制御を繰り返す。 もし、同一の走査点で、帰還信号の絶対値が許容誤差以
上であることがn回以上続いた場合は、試料表面のその
部分は観察に適さない状態にあると判断し、その走査点
での観察をあきらめ、XY走査点を次の走査点に進める
。帰還信号の絶対値が許容誤差未満であった場合には、
試料・探針間のZ方向相対位置が十分に制御されている
と判断し、STSの方法に従って、バイアス電圧を特定
の範囲内で高速に掃引させながら、トンネル電流信号を
何度か入力する。最後に、XY走査点を次の走査点に進
めて以上の制御を繰り返す。
【0032】以上述べたように本実施例は、第2の実施
例に第1の実施例に示したSTSによる分光機能を付加
することにより、第1および第2の実施例の効果が同時
に現れる。具体的には、従来のAFM/STMの方法に
よる分光機能を付加することにより、導電性物質と非導
電性物質が混在する表面で、電気的特性は異なるが特定
のバイアス電圧での導電性が同じである複数の導電性物
質の分布観察や、表面状態密度等の詳しい電子的特性の
測定が高い空間分解能で可能となる。また、トンネル電
流信号と原子間力信号の双方を同時に入力し、非導電性
物質と導電性物質が混在する試料表面について、フィー
ドバック制御の対象とする帰還信号を自動調節すること
により、フィードバック制御の誤差によるトンネル電流
の変動を小さくし、安定化することができる。これによ
り、導電性物質の分布観察や電子的特性の測定が、高精
度で実現できる。
【0033】さらに上記に加えて、帰還信号の絶対値が
ある値以上の場合は、フィードバック制御を繰り返すと
いうことにより、各データは帰還信号の絶対値がある値
未満である際に収集されることが保証される。これは得
られたデータの正確度が高いことを意味する。
【0034】なお、以上に挙げた本発明の実施例は、本
発明により考え得る実施例の極一部であり、AFM,S
TM,STSに関する既存の方法や上に挙げた実施例中
に述べた方法の組み合わせにより本発明は多数の実施態
様を取り得るものである。例えば、 [a]AFMの原子間力の検出方法として(1)実施例
で示した光てこの方法、(2)板バネ背面の別の探針と
板バネ背面間に流れるトンネル電流量による方法、(3
)板バネ背面に照射したレーザー光の干渉による方法、 [b]試料と探針の相対位置を制御するために(1)試
料の位置を動かすもの、(2)探針の位置を動かすもの
、 [c]測定環境として(1)大気の不活性ガスなど気体
中のもの、(2)電解溶液,純水,オイルなど液体中の
もの、(3)超高真空など真空中のもの、[d]測定温
度として(1)室温などの常温のもの、(2)数百度か
ら千度℃程度の高温のもの、(3)液体ヘリウムから液
体窒素温度程度の低温のもの、[e]フィードバック制
御の帰還信号がトンネル電流などの信号と(1)設定基
準値との差であるもの、(2)設定基準値との商の対数
であるもの、 [f]フィードバック制御の帰還信号が原子間力と(1
)特定のバイアス電圧でのトンネル電流との2変数関数
であるもの、(2)2つ以上のバイアス電圧での2つ以
上のトンネル電流を変数とする3変数以上の関数である
もの [g]複数の変数から帰還信号を導く関数が(1)一次
結合で表されるもの、(2)2以上の非線形関数である
もの、 [h]フィードバック制御の方法が(1)PID制御で
あるもの、(2)ファジー制御であるもの、[i]バイ
アス電圧を(1)試料に印加するもの、(2)探針に印
加するもの、等の組み合わせにより種々の実施形態を取
り得るものである。具体的な組み合わせの方法は観察す
る試料や目的に応じて、最適なものを選択するべきであ
るが、適切な組み合わせにより同様の効果が得られるも
のである。
【0035】このように本発明はその主旨に沿って種々
に応用され、種々の実施態様を取り得るものである。
【0036】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
AFM/STMによれば、従来のAFM/STMにST
Sの方法による分光機能を付加することにより、導電性
物質と非導電性物質が混在する表面で、電気的特性は異
なるが特定のバイアス電圧での導電性が同じである複数
の導電性物質の分布観察や、表面状態密度等の詳しい電
子的特性の測定が高い空間分解能で可能となる。
【0037】また、AFM/STMにおいて、フィード
バック制御部が、トンネル電流の信号と試料・探針に働
く力の信号の双方を同時に入力し、これらをパラメータ
とする関数を帰還信号としてフィードバック制御するこ
とにより、導電性物質と非導電性物質が混在する表面を
観察する場合に、フィードバック制御の誤差によるトン
ネル電流の変動を小さくして、安定化することができる
。これにより、導電性物質の分布観察や電子的特性の測
定が、高精度で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す原子間力顕微鏡/
走査型トンネル顕微鏡の構成図
【図2】(a),(b−1),(b−2),(c),(
d)は上記第1の実施例の動作を示すX掃引信号と試料
表面の物質分布、各物質の電気的特性、バイアス電圧、
トンネル電流の関係例を示す図
【図3】本発明の第2の実施例を示すディジタル制御原
子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡の構成図
【図4】
上記第2の実施例の原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕
微鏡の制御方法のフローチャート
【図5】本発明の第3
の実施例を示す原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡
の制御方法のフローチャート
【符号の説明】
1…試料、2a…探針、2b…板バネ、2c…レーザー
発信器、2d…光検出器、2e…XYZ軸圧電素子、2
f…トンネル電流検出器、3…フィードバック制御回路
、4…走査波形発生回路、5…バイアス電圧制御回路、
6a,6b…ストレージオシロスコープ、12a,12
b…A/D変換器、12c,12d,12e,12f…
D/A変換器、13…ディジタルシグナルプロセッサ部
(DSP部)、14…制御用コンピュータ。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  試料と、探針と、該試料・探針間の該
    試料表面の面内方向の相対的位置を走査制御する走査制
    御部と、該試料・探針間の該試料表面に垂直な方向の相
    対的位置をフィードバック制御するフィードバック制御
    部と、該試料又は該探針にバイアス電圧を印加するバイ
    アス電圧制御部と、該試料・探針間に働く力を検出する
    原子間力検出部と、該試料・探針間に流れる電流を検出
    するトンネル電流検出部から構成されている原子間力顕
    微鏡/走査型トンネル顕微鏡であって、前記フィードバ
    ック制御部が前記原子間力検出部から出力される原子間
    力の信号の値をパラメータとした関数をフィードバック
    制御の帰還信号とし、前記バイアス電圧制御部が所定の
    電圧波形でバイアス電圧を変化させることができる電圧
    発生器から成ることを特徴とする原子間力顕微鏡/走査
    型トンネル顕微鏡。
  2. 【請求項2】  試料・探針間の該試料表面の面内方向
    の相対的位置を走査制御する過程において、試料・探針
    間に働く原子間力の値をパラメータとした関数を帰還信
    号として該試料・探針間の該試料表面に垂直な方向の相
    対的位置をフィードバック制御する際に、前記試料・探
    針間に所定の電圧波形のバイアス電圧を印加すると同時
    に該試料・探針間に流れるトンネル電流を測定すること
    を特徴とする原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡の
    制御方法。
  3. 【請求項3】  試料と、探針と、該試料・探針間の該
    試料表面の面内方向の相対的位置を走査制御する走査制
    御部と、該試料・探針間の該試料表面に垂直な方向の相
    対的位置をフィードバック制御するフィードバック制御
    部と、該試料又は該探針にバイアス電圧を印加するバイ
    アス電圧制御部と、該試料・探針間に働く力を検出する
    原子間力検出部と、該試料・探針間に流れる電流を検出
    するトンネル電流検出部から構成されている原子間力顕
    微鏡/走査型トンネル顕微鏡であって、前記フィードバ
    ック制御部が、前記原子間力検出部から出力される原子
    間力の信号およびトンネル電流検出部から出力されるト
    ンネル電流の信号の双方をパラメータとする関数を帰還
    信号としてフィードバック制御することを特徴とする原
    子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡。
  4. 【請求項4】  試料・探針間の該試料表面の面内方向
    の相対的位置を走査制御する過程において、前記試料・
    探針間に働く原子間力の値および該試料・探針間に流れ
    るトンネル電流の値の双方をパラメータとした関数を帰
    還信号として該思料表面の導電性/非導電性の性質に応
    じて該試料・探針間の該試料表面に垂直な方向の相対的
    位置をフィードバック制御することを特徴とする原子間
    力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡の制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007147347A (ja) * 2005-11-25 2007-06-14 Seiko Epson Corp 探針、片持ち梁、走査型プローブ顕微鏡、及び走査型トンネル顕微鏡の測定方法

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