JPH04295027A - 微粒子分散ガラスの製造方法 - Google Patents

微粒子分散ガラスの製造方法

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(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光スイッチや光コンピ
ュータ等の非線形光電子素子の材料として利用されるC
dSx Se1−x (0≦x≦1)半導体微粒子分散
ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1983年に大きさ100オングストロ
ーム程度のCdSxSe1−x (0≦x≦1)半導体
微粒子がガラスマトリクス内に分散されているシャープ
カットフィルターガラスにおいて3次の非線形性が測定
され(J.Opt.Soc.Am.vol.73,No
.5,647(1983))、微粒子分散ガラスが、光
スイッチや光コンピュータ等の非線形光電子材料として
注目を集めている。このような微粒子分散ガラスにおい
ては、量子閉じ込め効果によるエネルギーバンドの離散
化が観察され、バンド充満効果もしくは励起子閉じ込め
効果により3次の非線形性が増大すると解釈されている
(例えば、光学第19巻第1号(1990年1月)10
〜16頁)。
【0003】このような半導体微粒子分散ガラスの製法
としては、スパッタ法やゾルゲル法があるが、微粒子の
粒径と濃度のコントロールのしやすい溶融法が一般的で
ある。
【0004】図3に、このようなCdSx Se1−x
 半導体微粒子分散ガラス内のCdSx Se1−x 
のエネルギーレベルの模式図を示す。これは量子化され
た最低のエネルギー準位に対応している。光励起された
キャリア(電子,正孔)は、■のコンダクションバンド
から直接に、または浅いドナーレベルからバレンスバン
ドにまたは浅いアクセプターレベルに輻射をともなって
遷移する過程と■の非輻射過程で禁制帯の中にある複合
欠陥によるトラップレベル(深い準位と呼ばれる)に緩
和した後に■の輻射過程でバレンスバンドに緩和すると
いう、3準位系のモデルが一般的に考えられる。このこ
とは、半導体微粒子分散ガラスの蛍光スペクトルを測定
することにより明らかになる。CdSx Se1−x 
半導体微粒子分散ガラスの蛍光スペクトルの典型的な例
を図4に示すが、バンド端近傍(図3の■に対応)から
の発光と、低エネルギー側にピークをもつブロードな発
光(図3の■に対応)が認められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この複合欠陥によるト
ラップレベルからの発光■は、緩和時間が長く10μs
〜10msのオーダーであるため、非線形性の応答速度
の制限要因となり、全光型の素子に必要とされる数ps
(ピコ秒)のオーダーの速い応答ができなくなる。そこ
でこの緩和のおそい発光成分を消すまたは小さくする必
要がある。メカニズムは解明されていないが、これを実
現する方法としてレーザー光を長時間照射する手法が利
用できる。これはレーザーアニーリング(J.Opt.
Soc.Am.B5  No.7(1988))やフォ
トダークニング(J.Opt.Soc.Am.B4  
No.5(1987))といわれる現象で、複合欠陥か
らの発光■が小さくなり、相対的にバンド端近傍からの
発光■が強くなり、かつ、非線形性の応答速度が速くな
る。しかし、この場合には、非輻射過程■が増え、全体
の発光強度も低下するため、非線形応答に必要な大きな
χ(3) (3次の非線形特性の大きさを表わす非線形
感受率の値)が得られなくなるという欠点がある。また
、パワーの大きなレーザー光源を使うため、材料を均一
にダークニングさせることがむずかしい。
【0006】本発明は、非線形光電子材料としての従来
の微粒子分散ガラスにおける上述の欠点を解決すべくな
されたものであり、本発明の目的は、非線形性の応答の
遅い成分、すなわち、緩和の遅い複合欠陥からの発光が
少ないもしくは存在しないCdSx Se1−x 微粒
子分散ガラスの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するためになされたものであり、マトリクスとなるガ
ラス原料および析出させる微粒子の原料を含む混合物を
ガラス融液とした後、マトリクスガラス中にCdSx 
Se1−x (0≦x≦1)微粒子を析出させるCdS
x Se1−x 微粒子分散ガラスの製造方法において
、熱処理によりCdSx Se1−x 微粒子をガラス
マトリクス内に析出させた後、得られた微粒子分散ガラ
スを湿式処理してマトリクス中にH2 Oを導入するこ
とを特徴とするCdSx Se1−x 微粒子分散ガラ
スの製造方法である。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
よれば、マトリクスとなるガラス原料および析出させる
微粒子の原料を含む混合物をガラス融液とした後、熱処
理することによりCdSx Se1−x 微粒子をマト
リクスガラス内に析出させる。この熱処理は、マトリク
スガラスのTg(ガラス転移点、以下同じ)〜(Tg+
100℃)の温度で行なうのが好ましい。熱処理温度が
Tgより低いと、微粒子の析出が非常に遅いか又はほと
んど微粒子が析出せず、また、(Tg+100℃)より
高いと、ガラスの軟化が激しく、マトリクスガラスの結
晶化がはじまるからである。熱処理温度と熱処理時間の
長さにより、析出するCdSx Se1−x 微粒子の
粒径は5〜1000オングストロームの範囲でコントロ
ールできる。
【0009】本発明によれば、このようにして得られた
、CdSx Se1−x 微粒子分散ガラスを湿式処理
してマトリクス内にH2 Oを導入する。この湿式処理
は、次のような方法で行なうのが好ましい。 (1)当該ガラスを100℃  〜(Tg−150℃)
の温度で水蒸気で処理する。 (2)当該ガラスをpH一定の緩衝液(95%以上H2
 O)中に浸漬して10〜50℃の温度で処理する。 以下、上記方法(1),(2)を順次説明する。上記方
法(1)において、用いられる水蒸気としては、相対湿
度が60%以上のものが好ましく、80%以上のものが
特に好ましい。水蒸気は、不活性ガスキャリアにより、
処理されるガラスを収容する炉内に導入される。水蒸気
処理温度を100℃  〜(Tg−150℃)とした理
由は、100℃より低温では、水蒸気が水滴として付着
することがあり、均一に処理できない可能性があり、一
方(Tg−150℃)よりも高温では、CdSx Se
1−x 微粒子の粒径が変化しやすくなり、またマトリ
クス内よりH2 Oが抜け出てしまうのに対して、10
0℃  〜(Tg−150℃)の温度では、このような
問題がなく、H2 Oがマトリクス内に均一に導入され
るからである。処理時間は、3時間より短かいと、ほと
んど蛍光スペクトルに変化がみられず、また100時間
を超えても処理効果の向上はみられない。このため、処
理時間は3〜100時間とするのが好ましいが、適切な
処理時間は処理されるガラスの形状により異なり、蛍光
スペクトルでモニターしながら決められる。たとえば、
100μm 厚さの薄片試料では、200℃で15〜3
0時間となる。
【0010】上記方法(1)によりCdSx Se1−
x 微粒子分散ガラス内に導入されたH2 Oの量は、
水蒸気処理前と処理後のガラスについてのESCA分析
による酸素の量の差により求められる。導入されるH2
 Oの量は、酸素の量の差が0.5〜10原子%(at
%)に相当する量とするのが好ましい。導入されたH2
 Oの量が酸素の量の差0.5at%に相当する量に満
たない場合、H2 Oの効果が小さく、一方10at%
に相当する量を超えた場合、ガラスマトリクスの劣化が
はじまるので好ましくない。上記(1)の水蒸気処理に
より、緩和のおそい複合欠陥に起因した発光成分が十分
に小さくなっているかまたは消失していることが蛍光ス
ペクトルより認められる。
【0011】次にH2 OをCdSx Se1−x 微
粒子分散ガラス内に導入するための方法(2)について
説明する。この方法(2)は、微粒子分散ガラスをpH
一定の緩衝液(95%以上のH2 Oを含む)中に浸漬
し、10〜50℃の温度で処理するものである。浸漬の
ための溶液のpHは、6〜9の弱酸性、中性および弱ア
ルカリ性とするのが好ましい。その理由は、pHが6未
満の強酸性側では、P2 O5 のガラス骨格が切れや
すくなり、pH9より高くなると、溶液中のH2 Oが
減少し、マトリクス内に入りにくくなるためである。こ
のような理由により、pHは6〜9とするのが好ましい
。また好ましい液温を10〜50℃をする理由は、10
℃より低温ではH2 Oがマトリクスガラス内に入りに
くく、蛍光スペクトルの複合欠陥からの発光が消えにく
く、また、液温が50℃を超えると、マトリクスガラス
表面からZnOやCdOなどのガラス修飾成分が抜けや
すくなり、表面に青ヤケ層が形成されるからである。ま
た、好ましい処理時間を5〜100時間とする理由は、
5時間より短時間では、蛍光スペクトルにほとんど変化
があらわれず、また処理時間が100時間を超えても、
処理効果の向上は認められないからである。ここで浸漬
とは、バルク形状ガラスの場合は、ガラスを液中に浸漬
することであり、粉末形状のガラスの場合は、ガラスに
H2 Oを滴下して浸みこませることを意味している。 方法(2)によりCdSx Se1−x 微粒子分散ガ
ラス内に導入されるH2 Oの量は、上記のように処理
前と処理後のガラスのESCA分析による酸素の量の差
により求められ、導入されるH2 Oの量は、酸素の量
の差が0.5〜10at%に相当する量とするのが好ま
しい。
【0012】次にマトリクスガラスについて説明する。 本発明において、マトリクスガラスとしては、P2 O
5 と、ZnOおよび/またはCdOとを必須構成成分
とし、P2 O5 が35〜65モル%、ZnOとCd
Oの合量が65〜25モル%であるリン酸塩系ガラスを
用いるのが好ましい。ここでマトリクスガラスの組成を
上記のようにする理由は、P2 O5 の量が35モル
%未満ではマトリクスとなるガラスの熱的安定性が不十
分となり、CdSx Se1−x の微粒子を析出させ
る熱処理工程において、マトリクスガラスから結晶が析
出しやすくなり好ましくなく、またP2 O5 の量が
65モル%を超えると、マトリクスガラスの化学的耐久
性が不十分となり使用上問題となるからである。したが
ってP2 O5 の量は35〜65モル%とするのが好
ましい。特に好ましいP2 O5 の量は40〜65モ
ル%である。
【0013】また、ZnOとCdOの合量が65モル%
を超えるとマトリクスとなるガラスの熱的安定性が不十
分となり、熱処理工程においてマトリクスガラスから結
晶が析出しやすくなり好ましくない。また、ZnOとC
dOの合量が25モル%未満ではマトリクスとなるガラ
スの化学的耐久性が不十分となるので好ましくない。し
たがって、ZnOとCdOの合量は、65〜25mol
 %とするのが好ましい。特に好ましいZnOとCdO
の合量は65〜35mol %である。
【0014】さらに、前記したマトリクスガラス成分の
他に任意成分として、アルカリ金属酸化物、アルカリ土
類金属酸化物、ZrO2 、TiO2 、PbO、Si
O2 、B2 O3 、Al2 O3 、As2 O3
 、Sb2 O3 等を含むことができるが、これらの
合量は、25mol %以下にしなければならない。そ
の理由は、25mol %を超えた場合、溶融法により
ガラスを溶解すると、CdSx Se1−x 微粒子構
成元素のS、Se成分のガラス融液に対する溶解度が少
なくなるため、溶解度を超えたS、Se成分は融液から
揮発し、原料中のS、Se成分の濃度を高めても、ガラ
ス中に残存するS、Se成分の濃度を高めることができ
ず、従って、熱処理により析出するCdSx Se1−
x 微粒子の濃度を高めることができないからである。 また、上述のマトリクスガラス内に分散されるCdSx
 Se1−x 微粒子の含量は外割で(マトリクスガラ
ス100モル%に対して)3〜12モル%が好ましい。 その理由は、CdSx Se1−x が外割で3モル%
未満では、熱処理により、均一に微粒子が析出せず、粒
径分布が非常に大きくなるため、非線形特性が劣化し、
また、CdSx Se1−x が外割で12モル%を超
えると、CdSx Se1−x 微粒子を析出させた後
にH2 Oを導入しても、緩和のおそい複合欠陥からの
発光成分を消すことがむずかしくなるからである。
【0015】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに説明する。 実施例1 マトリクスガラスの原料として、50mol %のP2
 O5と50mol %のZnOからなる組成物を用い
、この組成物100mol %に対し4mol %のC
dSeを半導体微粒子原料として混合したものを、12
00℃で15分間保持したのちに急冷して均質ガラス(
日本光学硝子工業会規格JOGIS−1975によって
測定したTg=400℃)を得た。その後に、430℃
(=Tg+30℃)で16時間熱処理し、CdSe微粒
子分散ガラスを作製した。この時、X線回折により、C
dSe微粒子の粒径は平均29.7オングストロームと
評価された。このCdSe微粒子分散ガラスを粉砕した
後にタブレット状にプレスした。これに室温(27℃)
でpH7.5のH2 Oを滴下して浸漬処理した。この
状態で30時間保持した後に蛍光スペクトルを測定した
ところ、図1に示す様に、浸漬処理前の蛍光強度曲線(
a)が浸漬処理後の蛍光強度曲線(b)のように変化し
ており、複合欠陥からの発光が消えていることが確認さ
れた。また発光ピークのシフトはなくCdSe微粒子の
粒径の変化は認められなかった。
【0016】実施例2 実施例1と同様に得られた微粒子分散ガラスを50μm
 の厚さに光学研磨し、150℃の炉内で水蒸気をN2
 ガスキャリアで導入しながら50時間保持して、微粒
子分散ガラス内にH2 Oを導入した。導入されたH2
 Oの量は、図2に示すように、水蒸気処理前と処理後
のガラスのESCA分析による酸素の量の差により3〜
5%と定量された。また水蒸気処理後の微粒子分散ガラ
スについて、蛍光測定したところ、複合欠陥からの発光
が1/8に低下し、バンド端近傍の発光強度は10倍以
上に増大していた。
【0017】実施例3 マトリクスガラスの原料として、50mol %のP2
 O5と30mol %のZnOと20mol %のC
dOからなる組成物を用い、この組成物100mol 
%に対し9mol %のCdSeを半導体微粒子原料と
して混合したものを、実施例1と同様の条件で溶解、急
冷して均質ガラス(日本光学硝子工業会規格JOGIS
−1975によって測定したTg=380℃)を得た。 その後に、実施例1と同様の条件で熱処理してCdSe
微粒子を析出させ、CdSe微粒子分散ガラスを作製し
た。このCdSe微粒子分散ガラスを300μm の厚
さに光学研磨し、30℃,pH7.8のH2 O(緩衝
液)内に浸漬し、約20時間保持した。処理後に蛍光測
定をおこなったところ、図1とほぼ同様に変化しており
(但し、粒径が異なるためピーク位置は異なる)、複合
欠陥からの発光は、ほとんど認められず、バンド端近傍
のみの発光が認められた。また。 表面層に光学的に認められる劣化はなく良好な状態であ
った。
【0018】
【発明の効果】本発明によりH2 Oをマトリクスガラ
ス内に導入したCdSx Se1−x (0≦x≦1)
微粒子分散ガラスは、緩和時間が長い複合欠陥からの発
光が減少ないし消失しているので、応答の速い良好な非
線形特性の非線形光電子材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のCdSe微粒子分散ガラスの浸漬処
理前後の蛍光スペクトル図、
【図2】実施例2のCdSe微粒子分散ガラスの水蒸気
処理前後のESCA分析図、
【図3】ガラスマトリクス内で量子化されたCdSx 
Se1−x微粒子のエネルギーレベルの模式図、
【図4
】典型的なCdSx Se1−x 微粒子分散ガラスの
蛍光スペクトル図。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  マトリクスとなるガラス原料および析
    出させる微粒子の原料を含む混合物をガラス融液とした
    後、マトリクスガラス中にCdSx Se1−x (0
    ≦x≦1)微粒子を析出させるCdSx Se1−x 
    微粒子分散ガラスの製造方法において、熱処理によりC
    dSx Se1−x 微粒子をガラスマトリクス内に析
    出させた後に、得られたCdSx Se1−x 微粒子
    分散ガラスを湿式処理してガラスマトリクス中にH2 
    Oを導入することを特徴とするCdSx Se1−x 
    微粒子分散ガラスの製造方法。
  2. 【請求項2】  ガラスマトリクス内でのCdSx S
    e1−x 微粒子の析出を、マトリクスガラスのTg 
     〜(Tg+150℃)の温度で行なう、請求項1に記
    載の方法。
  3. 【請求項3】  湿式処理を、微粒子分散ガラスを10
    0℃  〜(Tg−150℃)の温度で水蒸気で処理す
    ることにより行なう、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】  湿式処理を、微粒子分散ガラスをpH
    一定の緩衝液(95%以上H2 O)中に浸漬して10
    〜50℃の温度で処理することにより行なう、請求項1
    に記載の方法。
  5. 【請求項5】  マトリクスガラスとして、P2 O5
     とZnOおよび/またはCdOを必須構成成分とし、
    P2 O5 が35〜65モル%、ZnOとCdOの合
    量が65〜25モル%であるガラスを用い、このマトリ
    クスガラス100モル%に対するCdSx Se1−x
     の含量が3〜12モル%である、請求項1または2に
    記載の方法。
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