JPH0375257B2

JPH0375257B2 -

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Publication number: JPH0375257B2
Application number: JP63144497A
Authority: JP
Priority date: 1988-06-10
Filing date: 1988-06-10
Publication date: 1991-11-29
Also published as: JPH01313172A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明はキヤビテー内を比較的高い真空のもと
でダイカスト鋳造を行なう真空ダイカスト装置に
関するものであり、アルミニウム合金の精密な鋳
物を多量に生産する、例えば自動車、二輪車等の
構成部品の生産に良く使用される。

〔従来の技術〕

従来、一般的に使用される真空ダイカスト装置
については第１図により説明する。

１はキヤビテーであつて固定金型２Ａと可動金
型２Ｂとによつて構成される。３は円筒状の射出
シリンダースリーブであつて、その一端部（図に
おいて左側）はキヤビテー１にランナー７を介し
て連絡され、他端部の外周近傍には注湯孔４が穿
設される。

また、射出シリンダースリーブ３内にはプラン
ジヤーチツプ５が摺動自在に配置されるもので、
このプランジヤーチツプ５は図示せぬ射出シリン
ダーにピストン６にて一体的に連結される。

尚、説明を容易とする為に、プランジヤーチツ
プ５の先端５Ａよりランナー７側（図において左
側）の射出シリンダースリーブ３内をスリーブ室
３Ａと呼ぶ。

また、キヤビテー１には真空引きベント８が開
口し、この真空引きベント８は図示せぬ例えば真
空ポンプ等の真空源に接続される。

そして、プランジヤーチツプ５が注湯孔４を開
口した状態において、溶湯を注湯孔４を介して射
出シリンダースリーブ３内のスリーブ室３Ａに注
湯し、次いで、射出シリンダーにて押圧されるピ
ストン６によつて、プランジヤーチツプ５により
射出シリンダースリーブ３のスリーブ室３Ａ内の
溶湯をキヤビテー１内へ低速射出次いで、高速射
出するとともにかかる射出時には真空引きベント
８よりキヤビテー１内へ導入される真空圧力にて
キヤビテー１内を真空に保持して鋳込み、キヤビ
テー１内での溶湯の凝固を待つて型開きして、製
品を取り出すものである。

〔発明が解決しようとする課題〕

かかる従来の真空ダイカスト装置によると次の
問題点を有する。射出シリンダースリーブ３のス
リーブ室３Ａ内の溶湯は、プランジヤーチツプ５
による低速射出時において、キヤビテー１内へ未
だ射出されるものでなく、射出シリンダースリー
ブ３のスリーブ室３Ａを含むランナー７内を充填
するものであるが、かかるキヤビテー１への射出
開始以前に射出シリンダースリーブ３のスリーブ
室３Ａ内の溶湯がキヤビテー１内に噴流出する現
象が発生する。（この噴流は第１図にＡとして示
される。）これによると、製品に湯境いを作つて
外観品質を損うとともに製品中に無数に大小のブ
ローホールが点在し、気密性を劣化させるもので
あつた。この噴流出現象は、真空ダイカストを用
いない通常のダイカストにおいて、給湯量が多過
ぎたり、プランジヤーチツプの低速、高速切換え
位置設定が遅かつたりするなどの原因により高速
射出以前に溶湯がランナーを通過してキヤビテー
内にゆつくり入り込み、一部が固化して湯境いな
どを作る、いわゆる「タレ込み現象」とは全く異
なり、真空ダイカストにおける特異な現象であつ
て、キヤビテー中に激しい噴流あるいは噴滴状に
てキヤビテーの最上部にまで達する程の勢いで入
り込むのが特徴である。

この噴流出現象は、キヤビテー及び射出シリン
ダースリーブのスリーブ室中の真空度を高める程
発生し易くなり、これを防止する為に真空度を下
げたり、あるいは、ランナーゲート部の射出抵抗
を大きくして鋳造されることがある。

然しながら、これらの対応はキヤビテー内への
噴流出防出対策の為に止むを得ず行なう手段であ
り、本来の真空ダイカストの効果を減じさせるも
のであつた。

〔課題を解決する為の手段〕〔作用〕本発明になる真空ダイカスト装置は、キヤビテ
ー及び射出シリンダースリーブのスリーブ室中の
真空度を下げたり、あるいはランナーゲート部の
射出抵抗を大きくしたりすることなく、キヤビテ
ー内への噴流出現象を防止した真空ダイカスト装
置を提供することにあり、前記目的達成の為にキ
ヤビテー内を真空に保持して射出シリンダースリ
ーブ内の溶湯をプランジヤーチツプにてキヤビテ
ー内へ射出成形する真空ダイカスト装置におい
て、プランジヤーチツプが注湯孔を開放して射出
シリンダースリーブ内への注湯時において、注湯
孔を開放し、一方プランジヤーチツプによる射出
成形時に注湯孔を閉塞保持する注湯孔開放部材
と；射出シリンダースリーブの、キヤビテーと反対
側の端部内周とピストンとの間に配置された第１
シール部材と；注湯孔よりキヤビテー側の射出シリンダースリ
ーブの外円周と、注湯孔よりキヤビテーの反対側
の射出シリンダースリーブの外円周とに配置され
た第２シール部材と；よりなりプランジヤーチツ
プによる射出成形時に、注湯孔開閉部材と第２シ
ール部材及びピストンと第１シール部材とによつ
て、注湯孔を含む背圧調節室を形成するととも
に、この背圧調節室内に真空圧力を導入してなる
真空ダイカスト装置である。

これによると、プランジヤーチツプと射出シリ
ンダースリーブとの間隙より空気がスリーブ室内
に流入することがなく射出シリンダースリーブの
スリーブ室中の真空下で体積膨張と集合を伴なつ
てキヤビテー内へと移動する力によつて射出シリ
ンダースリーブのスリーブ室中の溶湯をランナー
より一気にキヤビテー内へ吹き上げる噴流出現象
を防止できたものである。

〔実施例〕

まず、発明者は、真空ダイカスト装置におい
て、好ましくない高速射出以前のキヤビテー内へ
の噴流出現象の発生メカニズム実験により解明し
た。

実験は、まずキヤビテー及び射出シリンダース
リーブ中を真空引きし、その真空圧力を50Torr
迄変化させて行なつた。その結果、キヤビテー及
び射出シリンダースリーブのスリーブ室中の真空
圧力が一定以下に低下すると、突然キヤビテー内
への噴流出が始まることが判明し、噴流限界圧力
が存在した。この限界圧力以下の圧力条件下では
必ずキヤビテー内への噴流出現象が発生し、それ
以上の圧力条件下では噴流出現象は見られず、溶
湯液面は静かであつた。この限界圧力は湯量、湯
温、プランジヤーチツプと射出シリンダースリー
ブとのチツプクリヤランス、射出シリンダースリ
ーブ径、ランナー形状、等の条件で変わるが本実
験では400〜500Torrであつた。

次いで、プランジヤーチツプの外周と射出シリ
ンダースリーブとの間隙に環状の気密シール部材
を配置して実験を行なつた。この結果、キヤビテ
ー及び射出シリンダースリーブのスリーブ室中の
圧力を大気圧より50Torr迄変化させてもスリー
ブ室中の溶湯がキヤビテー内へ噴流出することは
無かつた。

すなわち、プランジヤーチツプと射出シリンダ
ースリーブとの間の間隙を無くすことにより噴流
出現象が発生しなくなることが判つた。

以上のことから、射出シリンダースリーブのス
リーブ室中の溶湯のキヤビテー内への噴流出の原
因は、射出シリンダースリーブ内に配置されたプ
ランジヤーチツプによつて区分されるランナー側
のスリーブ室と注湯孔側の射出シリンダースリー
ブとの間の差圧の為に、射出シリンダースリーブ
とプランジヤーチツプとの間隙（一般的にプラン
ジヤーチツプと射出シリンダースリーブとの間隙
は50μ程有る）を通して、スリーブ室内に注湯孔
側の射出シリンダースリーブ内の空気が流入し、
この流入した空気がスリーブ室内の真空下で体積
膨張と集合を伴ないスリーブ室中の溶湯に造波現
象を与え、真空引きベントのあるキヤビテー中へ
と急速に移動する。

かかる移動時に発生する力により射出シリンダ
ースリーブのスリーブ室中に充たされている溶湯
を一気にキヤビテー内へ吹きあげる事にその原因
があることが判明した。

このことは、射出シリンダースリーブのスリー
ブ室外部よりスリーブ室内へ空気の流入を阻止す
ることによつてキヤビテー内への溶湯の噴流出現
象を防止できることを示すものである。

以下、本発明になる真空ダイカスト装置の一実
施例を第２図により説明する。尚、第１図と同一
構造のものについては、同一符号を使用して説明
を省略する。

１０は、射出シリンダースリーブ３の外周に摺
動自在に配置された円筒状の注湯孔開閉部材であ
り、この注湯孔開閉部材１０はピストン６に固定
的に配置されたＥクリツプ１１にスプリングＳに
てバツクアツプされる。

そして、この注湯孔開閉部材１０の先端１０Ａ
は、プランジヤーチツプ５が注湯孔４を閉塞した
際、注湯孔開閉部材１０が注湯孔４を閉塞し、以
後プランジヤーチツプ５が射出成形の為に図にお
いて左動しても、この注湯孔開閉部材１０が左動
することのないよう射出シリンダースリーブ３の
外周より突起する停止突部３Ｂに当接する。

１２は、射出シリンダースリーブ３の、キヤビ
テー１と反対側の端部内周３Ｂとピストン６の外
周との間に配置された環状の第１シール部材であ
る。

１３は、注湯孔４よりキヤビテー１側（図にお
いて左側）の射出シリンダースリーブ３の外円周
と、注湯孔４よりキヤビテー１の反対側（図にお
いて右側）の射出シリンダースリーブ３の外円周
とに配置した環状の第２シール部材である。すな
わち注湯孔４をはさんで射出シリンダースリーブ
３の外円周に第２シール部材１３よりなる二個の
環状のシール部材１３，１３が配置された。

そして、注湯孔開閉部材１０の先端１０Ａが射
出シリンダースリーブ３の係止突部３Ｂに当接し
た、プランジヤーチツプ５の射出成形時におい
て、注湯孔開閉部材１０と第２シール部材１３，
１３及びピストン６と第１シール部材１２と、に
よつて注湯孔４を含む背圧調節室１４が形成され
る。

そして、この背圧調節室１４には注湯孔開閉部
材１０に設けた真空圧力導入路１５によつて図示
されぬ真空源よりの真空圧力が導入される。

次にその作用について説明する。

まず、射出に先立つてプランジヤーチツプ５を
ピストン６にて図において右方向に移動させ、注
湯孔４と射出シリンダースリーブ３とを連通状態
とする。このとき、注湯孔開閉部材１０はＥクリ
ツプ１１にてスプリングＳのバネ力に抗してピス
トン６と同期的に右動し、注湯孔４を開放する。

従つて射出シリンダースリーブ３内に注湯孔４
を介して溶湯を供給し得るものである。

次いでプランジヤーチツプ５を左動させてプラ
ンジヤーチツプ５によつて注湯孔４を閉塞する
と、注湯孔開閉部材１０もまたスプリングＳにて
左方向に押圧されて、プランジヤーチツプ５と同
期的に左動して注湯孔４を閉塞し、その先端１０
Ａは射出シリンダースリーブ３の停止突部３Ｂに
当接する。

そして、かかる状態において、注湯孔開閉部材
１０の内周面と第２シール部材１３，１３及びピ
ストン６の外周と射出シリンダースリーブ３の内
周面との間に配置した第１シール部材１２とによ
つて、注湯孔４を含む背圧調節室１４が形成され
る。この状態は第２図の良く示される。

また、このプランジヤーチツプ５が注湯孔４を
閉塞した位置が低速射出の開始点となる。かかる
低速射出の開始点において、キヤビテー１内には
真空引きベント８より真空圧力が導入されて大気
圧より低い真空圧力にキヤビテー１内及びスリー
ブ室３Ａ内は保持されているものであり、一方背
圧調節室１４内にも真空圧導入路１５を介して真
空圧力が導入されて、背圧調節室１４内が真空圧
力に保持される。

そして、スリーブ室３Ｂ内に作用するスリーブ
室内真空圧力P₁と背圧調節室Ｐ内に作用する背
圧調節室内真空圧力P₂の差は後述する臨界圧力
差を超えない圧力であり、これによると、スリー
ブ室３Ｂ内に作用するスリーブ室内真空圧力P₁
にて、プランジヤーチツプ１０と射出シリンダー
スリーブ３との間隙よりスリーブ室３Ａ内に外部
より空気を吸引せんとするも、背圧調節室１４に
作用する真空圧力P₂により外気より流入した空
気は真空圧力導入路１５を介して外気へほとんど
排出されるのでスリーブ室３Ａ内への空気の流入
が阻止され、キヤビテー１への溶湯の噴流出を阻
止できるものである。

本発明者による実験結果によれば、スリーブ室
３Ａよりキヤビテー１に対する噴流出現象が抑止
できるスリーブ室３Ａと背圧調節室１４との臨界
圧力差△Ｐは次式で表わされる。

(1) スリーブ室３Ａ内の圧力が200Torr以上で
は、 △Ｐ＝P₂−P₁≦70Torr △Ｐ：噴流出現象を抑止できる臨界圧力差 P₂：背圧調節室内真空圧力（Torr） P₁：スリーブ室内真空圧力（Torr） (2) スリーブ室３Ａ内の圧力が200Torr以下で
は、 △Ｐ＝P₂−P₁≦150Torr 尚、この臨界圧力差は湯量、湯温、プランジヤ
ーチツプと射出シリンダースリーブとのチツプク
リヤランス、射出シリンダースリーブ径、ランナ
ー形状、射出シリンダースリーブ温度、等の条件
によつて変わるもので適正にこの臨界圧力差は設
定されなければならない。

而して、本発明になる真空ダイカスト装置によ
ると、少なくとも射出シリンダースリーブ３内を
プランジヤーチツプ１０が低速射出の為に移動す
る際、背圧調節室１４内に付与した真空圧力によ
つて、プランジヤーチツプ１０と射出シリンダー
スリーブ３との間隙よりスリーブ室３Ａ内に流入
する空気流れをほとんど阻止したので、キヤビテ
ー１内への溶湯の噴流出を生じさせることがな
い。

従つて、前記実験結果よりも明らかな如く、射
出シリンダースリーブ３のスリーブ室３Ａ中の真
空下で空気の体積膨張と集合を伴ない、スリーブ
室３Ｂ中に溶湯の造波現象を与えることがなく従
つてキヤビテー１内へ移動する力によつて射出シ
リンダースリーブ３のスリーブ室３Ａ中の溶湯を
ランナー７よりキヤビテー１内へ吹き上げる噴流
出現象を完全に防止できたものである。

〔発明の効果〕

以上の如く、本発明になる真空ダイカスト装置
によると、真空ダイカストにおけるキヤビテー内
への溶湯の噴流出現象は、射出シリンダースリー
ブのスリーブ室内へ外部から空気が流入すること
によつて発生するメカニズムを解明し得て、はじ
めてなされたものであり、キヤビテー内の真空度
を下げたり、あるいはランナーの射出抵抗を大き
くしたりすることなく本来のブローホールが無く
気密性が秀れ、且つ鋳肌品質の良好な真空ダイカ
ストを可能にしたもので真空を用いない通常のダ
イカストでは全く不要なもので真空ダイカストに
おいてのみ有用なものであつてその産業上の効果
は絶大なものである。

また、射出シリンダースリーブの外周に注湯孔
開閉部材を配置し、これに真空圧力導入路を設け
たことによると、背圧調節室内への真空圧力導入
路の配管の自由度が高く、設計的自由度が向上し
たものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の真空ダイカスト装置を示す要部
断面図、第２図は本発明になる真空ダイカスト装
置を示す要部断面図である。１……キヤビテー、３……射出シリンダースリ
ーブ、３Ａ……スリーブ室、４……注湯孔、５…
…プランジヤーチツプ、６……ピストン、７……
ランナー、８……真空引きベント、１０……注湯
孔開閉部材、１２……第１シール部材、１３……
第２シール部材、１４……背圧調節室、１５……
真空圧力導入路。

Claims

【特許請求の範囲】１キヤビテー内を真空に保持して射出シリンダ
ースリーブ内の溶湯をプランジヤーチツプにてキ
ヤビテー内へ射出成形する真空ダイカスト装置に
おいて、プランジヤーチツプが注湯孔を開放して
射出シリンダースリーブ内への注湯時において、
注湯孔を開放し、一方プランジヤーチツプによる
射出成形時に注湯孔を閉塞保持する注湯孔開閉部
材と；射出シリンダースリーブの、キヤビテーと反対
側の端部内周とピストンとの間に配置された第１
シール部材と；注湯孔よりキヤビテー側の射出シリンダースリ
ーブの外円周と、注湯孔よりキヤビテーの反対側
の射出シリンダースリーブの外円周とに配置され
た第２シール部材と；よりなりプランジヤーチツ
プによる射出成形時に、注湯孔開閉部材と第２シ
ール部材及びピストンと第１シール部材とによつ
て、注湯孔を含む背圧調節室を形成するととも
に、この背圧調節室内に真空圧力を導入してなる
真空ダイカスト装置。２背圧調節室内に加えられる真空圧力とスリー
ブ室内に加えられる真空圧力との差をスリーブ室
よりキヤビテーに対する噴流出を抑止できるスリ
ーブ室と背圧調節室との臨界圧力差以下としてな
る請求項第１項記載の真空ダイカスト装置。３注湯孔開閉部材に背圧調節室内に真空圧力を
導入する真空圧導入路を設け、真空圧力源と接続
してなる請求項第１項記載の真空ダイカスト装
置。