JPH0372308B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は外科用排出装置、とくに体腔例えば胸
腔から流体を排出しかつ体腔内に適当な圧力を維
持するように設計された排出装置に関するもので
ある。

肺を囲む胸腔内に流体が存在せず、また肺を外
方に引張つて胸腔に充満させるように該空間に負
圧を作用させることは、正常な呼吸に不可欠であ
る。肺を手術する場合や肋骨の間を貫通する異物
によつて胸腔が侵されたり、または患者が胸膜炎
に罹かつている場合には、胸腔内に流体が発生
し、正常な呼吸を妨げる傾向がある。したがつて
そのような流体を胸腔から除去するとともに、所
望程度の負圧を胸腔内に維持することを保証しう
る装置を提供することが必要である。

この目的に対して用いられてきた基本的な型の
装置は例えば米国特許第3363626号および第
336362号に開示されている。この装置は水中排出
装置として知られ、三つの室を備えている。それ
らの第一の室は胸腔から開胸管
（thoracotomytube）を介して排出された液体を
収集する収集室を有し、第二の室は胸腔が大気圧
にさらされないようにする貯水封鎖室
（underwater seal chamber）として知られ、さ
らに第三の室は胸腔内の負圧の程度を調整するの
に役立つ圧力計室として知られている。この型の
装置は流体を胸腔から除去するのに、また所望程
度の負圧を胸腔内に維持するのにかなりの成功を
収めた。しかしながら、このような装置は貯水封
鎖室内に水を予め充填したり、また胸腔内に所望
程度の負圧を維持するように圧力計室を所望レベ
ルまで予め充填したりしなければならない。しか
しながら、患者の胸腔に取付けることができ、か
つ予備的充填作業をも必要とせず、しかも真空ポ
ンプを必要としない排出装置が要求された。例え
ば、貯水封鎖室や圧力計室を充填するのに液体を
利用できない場合や真空ポンプを使用できない場
合等の非常事態においては、患者の胸腔に取付け
て流体を排出させそして肺をふくらませることの
できる装置を提供することが必要である。

米国特許第4015603号に開示された排出装置は
排出装置の上端における開胸管の下端に貯水封鎖
室を設けることによつて、予備充填型の貯水封鎖
室を設ける必要をなくした装置を提供した。この
特許に開示された装置では、貯水封鎖室は患者の
胸腔から排出された液体によつて形成される。し
かしながら、米国特許第4015603号に開示された
装置は自己調整型真空ポンプの使用を必要とし、
そのようなポンプが利用できない場合では、この
特許に開示された装置を利用することができなか
つた。

さらに、米国特許第4015603号に開示されたよ
うに開胸管の下端に貯水封鎖室を設けることは、
ある種の異常事態においては別の問題を発生させ
た。患者の気管支が閉塞していて、空気を肺に吸
い込むのが困難な場合には、かなり高い負圧が胸
腔内に発生する。そのような高い負圧によつて貯
水封鎖部内の流体は胸腔管を経て上方に引上げら
れ、また負圧の程度が十分に高い場合には、流体
が胸腔内に再び流入することがあつた。この貯水
封鎖室からの流体が胸腔内に再び流入する状態
は、患者を感染させるか、さもなくば患者に問題
を生じさせる。その上、胸腔内に高い負圧がある
間貯水封鎖室によつて形成された封鎖部を完全に
損なうおそれがあつた。貯水封鎖室が損なわれる
と、吸引力が絶たれるかまたは装置が大気へ開放
した収集室を備えた二びん型装置として用いられ
る場合には、重大な損傷を生ずる危険性があつ
た。

米国特許第3853128号には、従来の貯水封鎖室
や圧力計室を有する排出装置に正圧逃し弁を設け
ることが開示されている。この正圧逃し弁は貯水
封鎖室と圧力計室との間に配置され、収集室内の
高圧を逃がすようになつている。しかしながら、
米国特許第3853128号に開示された装置は、使用
前に予備充填されなければならず、予備充填する
ことなく使用しうる二室型装置としては作動しな
い。

本発明は、先行技術の装置について上に記載し
た問題を解決する外科用排出装置を提供し、水の
予備的充填および真空ポンプを必要としない水中
排出装置を提供するものである。さらに、装置は
胸腔内のかなり高い負圧によつて貯水封鎖室内の
液体が開胸管を経て上方に引上げられて胸腔内に
流入することのない弁装置を備えている。

本発明によれば、収集室を有し、この収集室が
開胸管の下端に隣接してその上端に設けられた貯
水封鎖室を備えた排出装置が提供される。したが
つて、開胸管が胸腔に取付けられる場合には、開
胸管内に排出された液体は貯水封鎖室内に流入し
て貯水封鎖部を形成する。封鎖室が満たされた場
合、液体は収集室内に溢流する。

また収集室と大気への出口との間には一方向弁
が配置されている。この一方向弁は、収集室内の
圧力が大気圧より高い場合に収集室内からガスを
逃がすため開放するように設計されているが、大
気から収集室内に空気が侵入しないようになつて
いる。一方向弁すなわち出口弁と胸腔からの分泌
物によつて形成される貯水封鎖部との組合せは、
気胸の危険性に対する二重の保護を形成する。

一方向弁はさらに、高負圧が発生している間流
体が貯水封鎖室から胸腔内に流するのを防止する
装置を備えている。流出弁は胸腔および排出装置
内の圧力が大気圧よりも低い場合は閉鎖したまま
であり、したがつて排出装置内のデツドスペース
を制限する。

さらに、装置を床上に置くか、さもなくばフツ
クを用いてベツドの脇に取り付ける装置が設けら
れている。加えて、排出装置は吸引力を調整して
使用することができ、正圧逃し弁は吸引ポンプが
故障した場合およびきわめて高い圧力が胸腔内で
突然発生する場合に、装置内で過度の正圧が発生
するのを防止するようになつている。

本発明の付加的特徴および利点は、添付図面と
関連する本発明の実施例の詳細な記載から明らか
になるであろう。

第１図は容器１を有する水中排出装置を示す。
容器１は硬質プラスチツク材料等で形成される。
容器１は患者の胸腔内に延びる開胸管を取付ける
ための入口２を備えている。入口２には容器１内
に或る長さだけ下方に延びる管状延長部３が設け
られている。

容器１内には隔壁４が設けられ、この隔壁４は
容器全体を横切つて容器１の一方の端壁からリツ
プ５まで延び、このリツプ５は容器１の反対側の
端壁から離されている。隔壁４は溝付端部６を備
え、この端部６は入口２の管状延長部３の下端に
配置されている。管状延長部３は隔壁の溝部６に
向かつて下方に延びている。さらに隔壁４には、
以下の記載から一層明らかになる目的で、傾斜側
壁７が設けられている。

また排出装置は出口８を備え、この出口８もま
た下方に延びる管状延長部９を備え、管状延長部
９は制御可能な真空源に取付けられるたわみホー
スを受けるようになつている。管状延長部９は出
口室１０内に延び、この出口室１０は排出装置の
残部から出口室１０を完全に遮断する側壁１１と
底壁１２とを有している。出口室１０の底壁１２
は孔を備え、この孔内には一方向出口弁１３が設
けられている。第２図から分かるように、この出
口弁１３は出口室１０の底壁の孔の上に広がる拡
大頭部１４を有している。一方向出口弁１３の軸
部は底壁１２からの弁の上向運動を制限する止め
リング１５を有している。排出装置内の圧力が出
口室１０内の圧力を越えると、弁１３は上方に移
動して、ガスが収集室から出口室１０へ通過でき
るようにする。しかしながら、出口室１０内の圧
力が収集室より高くなると、弁１３は底壁１２の
孔を通つて延びる拡大頭部１４により閉鎖された
ままとなる。

さらに、装置の上壁には孔１６が設けられてい
る。これらの孔の下側には玉弁１８を有する正圧
逃し弁１７が取付けられ、前記玉弁１８は、通
常、包囲箱２０の底壁の孔１９を覆う位置に配置
されている。正圧逃し弁１７の目的は、収集室内
の圧力がきわめて高い圧力に達しかつ装置がその
ような高圧を放出しえない真空ポンプで作動され
る場合に、高い正圧を大気へ放出する装置を提供
することである。通常、玉弁１８は孔１９上に着
座したままで正圧逃し弁１７を閉鎖した状態に維
持するが、収集室内の圧力が大気圧を越える場合
にのみ開放する。

排出装置１はさらに傾斜底壁２１を備えてい
る。この傾斜底壁２１を利用することによつて、
排出装置はその前面に印刷された目盛により測定
される容積の測定精度を高められる。

排出装置の後壁は支持要素２３を受けるように
された溝付案内要素２２を備え、前記支持要素２
３は第３図に示されたように形成され、排出装置
が床上に支持されねばならない場合に排出装置の
フロアスタンドを形成する。また排出装置の各端
部に固定された一連の支持ブラケツト２５を有す
る支持要素２４が設けられている。装置をベツド
のレールから支持する場合には、ブラケツト２５
は第４図に示されたように支持される。

本発明の排出装置を使用する場合、貯水封鎖部
を予め充填することは不必要である。開胸管は入
口２に接続され患者の胸腔と容器の吸入口２とを
接続する。一方向出口弁１３は患者の胸腔に大気
が進入しないように保護する。容器の排出口８に
は調整可能な吸引装置（真空装置）を接続するの
が普通である。しかし、場合により、排出装置は
吸引装置なしでも使用可能である。吸引装置を使
用しない場合は、患者の呼吸を生ぜしめる胸廓の
収縮と拡張とに基づき胸廓内の負圧形成および排
液が行われる。すなわち、胸廓の収縮により肺と
の間の胸腔内の圧力が上昇し、一方排出装置内は
大気圧にあるため、その圧力差に起因して胸腔内
の液またガスが開胸管を通して排出装置へ送られ
る。つぎに胸廓が拡張すると胸腔スペース内の圧
力は低下するが、この圧力が大気圧以下となつて
も、排出装置からの逆流は生じない。これは出口
弁１３が排出装置における排出口８から入口２に
向かう流れを阻止するからである。胸腔内の負圧
の増大によつて肺は胸廓に近づくように拡張せし
められる。このように、胸廓の収縮、拡張の繰返
しにより、肺の拡張を誘因する負圧形成および胸
腔内の排液が行われる。なお、貯水封鎖部は小さ
な溝６を胸腔からの排液で満たすことにより形成
されるので、吸引装置の使用の有無に係わらず、
排出装置はシールに必要な液体を前以て満たして
おく必要はない。出口弁１３は患者を気胸の危険
性を孕む空気の流入から保護する役割をもなす。
胸腔から出た分泌液は最初溝部６を満たし、管状
延長部３の下端に貯水封鎖部を形成する。液体が
隔壁４によつて形成された貯水封鎖部をリツプ５
の上縁の高さまで満たすと、分泌物はさらにリツ
プ５を越えて収集室に落下する。排出装置に傾斜
底壁が設けられているため、最初、液体分泌物の
量を正確に測定することができる。これは小児科
ではとくに有用である。排出装置は吸引力を調整
してまたは調整せずに使用することができる。吸
引力を用いる場合、調整された吸引源からきたホ
ースが出口８に取付けられ、所望程度の負圧を収
集室および胸腔内に維持する。吸引力を作動させ
ている場合、収集室および胸腔内に発生する可能
性のある正圧に対して正圧逃し弁１７が設けられ
ている。この正圧逃し弁１７は収集室内に突然高
圧が発生する場合に開放する。

貯水封鎖室が患者の胸腔からの分泌物によつて
開胸管の端部に直接形成される、排出装置の使用
において重要なことは、気管支頭の閉塞により生
ずるような胸腔内の過度の負圧によつて、貯水封
鎖部内の液体が開胸管内を上昇して胸腔内に逆流
しないように排出装置を構成することである。米
国特許第4015603号に開示されたような先行技術
の二室型装置では、大気圧へ開放する場合開胸管
内の液体の45.72cm（18in）の上昇は水柱45cmの
負圧によつて形成することができたのに対し、一
方向出口弁を有する本発明の排出装置において
は、同じ開胸管内の液体上昇を生じさせるために
は水柱62.8cmの負圧が必要である。本発明の装置
において開胸管が少なくとも76.2cm（30in）の長
さを有する場合には、貯水封鎖部内の流体を胸腔
内に再び流入させるには水柱100.6cmの負圧を必
要とする。したがつて、本発明の装置は貯水封鎖
室内の分泌物が胸腔内に再び流入するのを実質的
に防止する。この付加的保護作用は貯水封鎖部と
直列に配置された一方向出口弁によるものであ
り、胸腔に達する大気により気胸の発生する危険
性をさらに低下することができる。

本発明に対して多くの変更および変型をなしう
ることが前記の技術内容から明らかである。

【図面の簡単な説明】

第１図は二室型水中排出装置の斜視図、第２図
は第１図の２−２線に沿う断面図、第３図はフロ
アスタンドを所定位置に取付けた排出装置の下部
の部分斜視図、第４図は支持要素を所定位置に取
付けた水中排出装置の上部の部分斜視図。 １……容器、２……入口、３……管状延長部、
４……隔壁、８……出口、１３……一方向出口
弁。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 一対の側壁、一対の端壁、頂壁および底壁を
   有する容器と、頂壁の一端に隣接した入口開口
   と、頂壁の他端に隣接した出口開口と、容器の上
   端に隣接しその内部の一部分を横切つて側壁から
   側壁まで延長して上方に室を形成する隔壁であつ
   て、入口下方に貯水封鎖部を形成するため前記入
   口開口に真下に凹んだ溝型端部を有するものと、
   前記隔壁の立上がつたリツプと、前記隔壁の溝型
   端部内に下向きに延長する前記入口の管状延長部
   と、前記出口開口の下方の前記容器内に設けられ
   た出口室と、前記出口室の底壁に設けられ容器か
   ら出口開口を経てガス流を通すが反対方向のガス
   流を阻止する一方向弁装置とを含み、該弁装置は
   出口室内の圧力が前記容器内の残りの部分の圧力
   より低いとき開放しそれにより前記入口が体腔に
   連通するとき体腔からの分泌物が隔壁上方の室を
   立上がつたリツプの高さまで満たしついで容器の
   底部に溢流し前記管状延長部および隔壁の溝型端
   部が貯水封鎖部を形成して一方向弁とともに前記
   入口および前記出口の間に直立の封鎖部を形成す
   る排出装置。 ２ 前記出口室からのガス流用の平行な通路を形
   成するため大気への第２の出口を有する前記出口
   室内の正圧逃し弁をさらに含む特許請求の範囲第
   １項に記載の排出装置。 ３ 前記正圧逃し弁は大気への前記第２の出口の
   下方に前記出口室に形成された弁座および通常前
   記弁座に着座して大気への前記第２の出口を閉鎖
   する玉弁を含み前記正圧逃し弁は前記出口室内の
   圧力が大気圧を越えるとき開放する特許請求の範
   囲第２項に記載の排出装置。 ４ 前記隔壁が前記溝型端部に隣接した傾斜部分
   を有する特許請求の範囲第１項に記載の排出装
   置。