JPH0370029B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は縮緬生地に刺繍加工するに当り、精
練加工して製品化された練り縮緬を使用せず、縮
緬加工工程前の原反即ち生縮緬に刺繍を施す方法
に関し、織屋或いは機屋段階等においても縮緬生
地に刺繍加工し得ることを目的とするものであ
る。

（従来の技術） 従来縮緬に刺繍加工するに当つては、精練加工
後の完成品である練り縮緬を使用し、和装用刺繍
機に装備した特定の刺繍枠に生地を水平に張つ
て、縮緬生地とは異質の特に加工された刺繍糸を
使用して刺繍を施し、半製品である縮緬原反即ち
に生縮緬に原反生地の組成糸と同質の糸を使用し
て刺繍を施す方法は存しなかつた。

（発明が解決しようとする問題点） 従来の練り縮緬による刺繍加工では、 (1) 縮緬生地を特定の刺繍枠に水平に強く張つて
所望の模様を刺繍していたが、練り縮緬の性質
上刺繍加工中に絶えず生地に弛みが生じて、刺
繍模様に歪みが生じ、所望の模様を正確に縫い
上げるには高度の技術を要し、熟練者でなけれ
ば確実な刺繍加工ができないうらみがあつた。

(2) 又、生地や刺繍模様部に汚れが生じた場合は
シミ抜き加工に手間が掛る欠点がある。

(3) 更に練り縮緬での刺繍は、いわゆる後加工
（後縫い）であるので、必ず生地の糸と刺繍糸
とは異質の糸が使用される関係から、染段階で
複雑な処理工程と特別の技術を要した (4) 従来の製品縮緬生地に刺繍する場合において
は、刺繍加工により必ず針穴ができ、染加工の
段階で種々後処理を施しても、その針穴を消去
することは不可能である等の問題点があつた。

（問題点を解決するための手段） そこで、本願出願人においては、縮緬生地に刺
繍加工を施すに当り、種々研究の結果、生地を織
つたままの状態で未だ機場にある原反即ち生縮緬
に前加工（先縫い）による刺繍を施すことによ
り、前記の従来技術の欠点を解消する方法を開発
するに至つた。

なお、本発明における刺繍糸には原反の組成糸
と同一の糸を使用することを主旨とするが、従来
の刺繍糸を用いても差し支えは生じない。

（作用） (1) 本発明において使用する半製品である生縮緬
は製品化した練チリメンの如く伸び縮みしない
性質のものであるから、特定の刺繍枠を用いな
くても刺繍模様に歪みを生じないので一般汎用
の多頭原反刺繍機により刺繍加工が施し得る作
用効果がある。

かつ又機屋で織り上げた原反をそのまま多頭
式原反刺繍機にかけて刺繍できるので、刺繍加
工は極めて能率的に実施される。

(2) 本発明では生縮緬のままの状態で、即ち原反
に刺繍を施すのであるから、いわゆる先縫いに
よる前加工によるため、製品にシミ等の汚染又
は針穴が生じても、精練加工の際これらのシミ
及び針穴等は自然に除去される。

(3) 本発明における生縮緬に刺繍加工した縮緬生
地の染色加工は容易であり、殊に刺繍糸に原反
生地と同質の糸を使用することを主旨としてい
るので染色加工に複雑な処理を要せずこれを簡
素化する作用効果がある。

（実施例） 本発明の実施例を、使用ミシンの非限定的実施
例に基づき、添付図面を参照して説明する。

図面の第１図は本発明における原反刺繍枠に縮
緬原反（生縮緬生地）を水平に張つて刺繍を施す
状態を示し、１は縮緬原反、２は原反の中芯、４
は原反刺繍機、４は原反刺繍枠、５は原反刺繍枠
の枠支承部、６は原反を横方向に張るクリツプ、
７は原反を縦方向に張る掛留具、８はミシン本
体、９はミシン針、１０は刺繍模様であつて、縮
緬原反１に織り上げた状態のままの所謂生縮緬を
一般汎用の原反刺繍機３に装備した原反刺繍枠４
に図示の通りに張つて刺繍加工を施す方法であ
る。

この発明の方法では小巾（並巾）もの、広巾
（二巾）ものの何れの原反にも刺繍が可能であり、
従つて広巾の縮緬生地で仕上げられる着物におい
て、左右の柄を合わせる際、従来の練り縮緬での
刺繍加工では完全な柄合わせが不可能であつた
が、上記の方法によれば広巾の中心にミシン目を
入れて二巾の左右に一時に刺繍できるので、着物
の左右の柄合わせも完全になし得るものである。
又前記せるような練り縮緬での刺繍加工では得ら
れなかつた種々の作用効果をもたらす方法であ
る。

第２図は従来の和装（縮緬）刺繍枠の概略図で
あつて、１１は布張りの内枠（生地を圧える枠）、
１２は布張りの外枠、１３は伸縮調整ねじ、１４
は枠支持板、１５は枠掛留具を示し、この刺繍枠
では内枠１１と外枠１２の間に練り縮緬生地を挾
持して、内枠で生地を圧え、外枠で伸縮調整を行
うようにするもので、練り縮緬での刺繍加工にお
いては、その生地の性質上この刺繍枠によらざる
を得ず、それには高度の熟練と手間を要する。

本発明の方法において、この刺繍枠を使用する
ことも可能であるが、逆に練り縮緬での刺繍加工
に本発明におけるが如く原反刺繍枠を利用するこ
とは不可能である。

本発明の縮緬原反に刺繍加工を施す方法では、
上記の如き特定の刺繍枠を用いる必要はなく、前
記の原反刺繍機３に装備した原反刺繍枠４等の一
般刺繍用の枠を用いて刺繍加工できるものであ
る。

（本発明の効果） (1) 本発明による生縮緬生地による刺繍加工方法
は、従来の練り縮緬による刺繍加工に比し、模
様の縫い上げが確実で歪みが生ぜず、かつ加工
に特定の高価な和装用刺繍枠を用いることも要
せず、又特別な熟練を要せずして刺繍を施し得
る効果がある。

(2) 又、本発明は縮緬加工前の原反に刺繍する方
法であるので織屋或いは機屋段階で、織り上げ
た原反をそのまま原反刺繍機にかけて刺繍でき
るのに縮緬の刺繍加工の省力化、効率化に大き
な効果がある。

(3) 本発明の方法においては製品にミシン等の汚
染又は針穴が生じても精練加工の際自然に除去
され、仕上処理に複雑な工程と特別の技術を必
要としない効果がある。

(4) 本発明の生縮緬での刺繍加工においては原反
生地と同質の糸を使用することを主旨としてい
るので染色加工処理を極めて容易にする作用効
果がある。

(5) 又本発明では二巾で仕上げられる着物の原反
に一挙に刺繍できるので、着物の左右の柄合せ
が完全にできる効果がある。

(6) 以上の通り本発明は縮緬の刺繍加工におい
て、その工程と手間を省き、従つてコストダウ
ンが図れ、縮緬の刺繍業界に省力化と高率化並
びに品質保全の効果をもたらし、その生産性、
経済化に大きく貢献し、沈滞する縮緬業界の活
性化に寄与し得るものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例であつて、本発明はこ
れに限定されものではない。第１図は本発明にお
ける縮緬原反に刺繍を施す状態を示す斜視図、 第２図は従来の和装（縮緬）刺繍枠の平面図であ
る。 図において、１……縮緬原反、２……原反
の中芯、３……原反刺繍機、４……原反刺繍枠、
５……枠支承部、６……原反横張り用クリツプ、
７……原反掛留具、８……ミシン本体、９……ミ
シン針、１０……刺繍模様、１１……内枠、１２
……外枠、１３……伸縮調整ねじ、１４……枠支
持板、１５……枠掛留具。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 縮緬に刺繍加工を施すに当り、縮緬加工（精
   練）工程前の原反即ちいわゆる生縮緬に、その原
   反生地と同一の糸（又は従来の刺繍糸）を使用
   し、従来用いられている特定の刺繍枠によらず、
   原反枠等の一般汎用の刺繍用枠を用いて刺繍する
   ことを特徴とする縮緬原反に刺繍を施す方法。