JPH036825Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、多噴孔型燃料噴射ノズルから燃焼が
噴霧される、形状がトロイダルタイプの直接噴射
式デイーゼルエンジンの燃焼室に関するものであ
る。

［従来の技術］ 従来、ピストン頂部に、上方に向つて開口した
凹状のキヤビテイを有し、該キヤビテイの底面の
中央部に上方に突出する円錐形の突起を有するト
ロイダルタイプの燃焼室に、複数の噴孔を有する
燃料噴射弁から燃料を噴射して燃焼させる直接噴
射式デイーゼルエンジンは知られている（たとえ
ば、実公昭58−50255号公報、実開昭58−14423号
公報、実開昭58−18026号公報、実開昭56−55726
号公報、特開昭54−47910号公報、実開昭57−
25121号公報、特開昭56−54921号公報、特開昭56
−81218号公報、特開昭56−106021号公報、特開
昭57−326号公報）。

このような多噴孔型の燃料噴射弁を有しトロイ
ダルタイプ燃焼室を備えた高速型デイーゼルエン
ジンにおいては、低速域から高速域の全ての運転
領域で噴霧とスワールの関係をよい燃焼状態が得
られるようにすることは困難ある。すなわち、高
速時の燃焼を良くする為には噴射期間を短かく
し、スワールを弱くする方法が一般的であるが、
この方法では空気量の少ない低速時にはスワール
比が極端に小さく噴射期間が短かくなりすぎるの
で、逆に燃焼が悪化し、黒鉛の発生が著しい。そ
して、低速型マツチングにすると前述の逆の傾向
になる。したがつて、巾広い運転領域において燃
焼状態を良好に保つことは、従来の技術では達成
することが難しい。

高速マツチング型にしたデイーゼルエンジンに
おいて、低速時の燃焼性を改善するには、燃焼室
内の気流の流れを促進して空気と燃料の混合をよ
くすることが有効である。この混合気流には、主
として、燃焼室内を旋回するスワールと、小さな
渦のマイクロタービランスの２種類があるが、低
速域のスワールを弱めないようにマイクロタービ
ランスを作る必要がある。しかも、マイクロター
ビランスの形成は、着火遅れ時間を短かくしてス
モークの発生が大きくならないように、着火後燃
焼後期の燃焼をよくするように配慮されたものが
望ましい。

従来からも、スワールの形成、マイクロタービ
ランスの形成に関する提案が、実開昭56−39815
号公報、実開昭56−39816号公報、実開昭58−
161124号公報、実開昭58−191332号公報、実開昭
59−100924号公報、特公昭58−49689号公報、特
開昭55−25523号公報、特開昭55−109720号公報
に開示されている。

［考案が解決しようとする問題点］ しかし、上記の提案は、燃焼室の底面全域に突
条をつけたり、燃焼室の側面に突条をつけたり、
中央突起に突状の板状物を設けたりしてスワール
と協動してマイクロタービランスを発生させるも
のであつたため、これらの突条が燃焼室内のスワ
ールを弱めてしさまい、低速域のスワール不足の
問題をさらに大きくしてしまうという欠点があつ
た。また、噴霧が直接あたる燃焼室側や底面に突
起を設けることは、混合の良化により着火を早め
てしまい、適当な着火遅れが確保し難く、スモー
クの発生を増大させてしまうという欠点もあつ
た。

本考案は、多噴孔型燃料噴射弁から燃料が噴霧
されるトロイダルタイプの直接噴射式デイーゼル
エンジンの燃焼室あつて、構造諸元を高速マツチ
ングさせた燃焼室において、スワールを弱めるこ
となく、マイクロタービランスを発生させ、燃料
噴霧と空気との混合を良好にして燃焼を改善さ
せ、黒鉛の発生を抑制するとともに、出力向上を
はかることを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ この目的に沿う本考案のデイーゼルエンジンの
燃焼室は、ピストン頂部に凹状のキヤビテイを有
し該キヤビテイ底面の中央に円錐形の突起を有し
ているトロイダルタイプのデイーゼルエンジンの
燃焼室において、前記突起の外周部に、スワール
方向に急激に径を縮小させた段差を設けたものか
ら成る。

［作用］ このような構成の燃焼室においては、スワール
ポートから吸気がスワールを付与されて吸引さ
れ、燃焼噴射弁から燃料が噴霧されると、空気と
燃料は燃焼室内で混合しながらスワールを維持し
て旋回する。スワールが、突起の表面に沿つて旋
回するとき、段差部分において流れが突起表面か
ら剥離し、剥離したとたんにマイクロタービラン
スを生じる。マイクロタービランスによる燃焼室
内混合気の乱れによつて、燃料と空気の混合が良
好になつて、燃焼が改善され、スモークが低減さ
れるとともに出力が向上する。

このマイクロタービランスの生成に際しては、
燃焼室内に突条を突出させるものではないので、
スワールは本質的に弱められない。したがつて空
気量の少ない低速域においてスワールの弱め過ぎ
の現象は回避され、良好な燃焼が保たれる。

また、マイクロタービランスは、突起の表面の
段差で形成され、噴霧が直接あたる燃焼室側壁ま
たは底面で形成されるものではないので、噴霧の
過早着火をもたらさず、着火遅れが適度に保たれ
て空気と燃料の混合が確保され、良好な燃焼とス
モークの低速がはかられる。

［実施例］ 以下に、本考案に係るデイーゼルエンジンの燃
焼室の望ましい実施例を図面を参照して説明す
る。

第１実施例 第１図および第２図は本考案の第１実施例を示
している。第１図、第２図において、ピストン１
の頂部には、上方に向つて開放された凹状のキヤ
ビテイ２が形成されており、該キヤビテイ２は燃
焼室を構成する。キヤビテイ２は底面３と側壁４
とを有し、水平断面は任意形状でよく、図示例で
は円形とされている。キヤビテイ２の中心は、図
示例ではピストン１の中心と一致されているが、
デイーゼルエンジンの吸、排気弁の位置と前記燃
焼室に直接燃料を噴射する直接噴射式燃料噴射弁
との位置関係から、ピストン１の中心と偏芯させ
て設けられてもよい。キヤビテイ２の底面３の中
央部には、上方に向つて突出する円錐状の突起が
設けられており、これによつて燃焼室はトロイダ
ルタイプの燃焼室に形成されている。

突起５の上方には、シリンダヘツドに取付けら
れた多噴孔型燃料噴射弁ノズルから燃料が円錐状
に噴霧される。第１図の矢印ｆは４噴孔型燃料噴
射弁の場合の燃料噴霧を示している。ただし噴孔
の数は４に限るものではない。また矢印Ｓは燃焼
室内におけるスワールの方向を示している。すな
わち、燃焼室には、通常ヘリカル状に形成された
吸気ポート、いわゆるスワールポートから、スワ
ールを与えられて吸引された吸気がスワールを形
成しており、燃料との混合を高めて燃焼が促進さ
れるように配慮されている。

円錐形の突起５には、その外周部に、スワール
Ｓ方向に急激に径を縮小させた段差６が複数個設
けられている。段差６からスワールＳ方向下流側
は、除々になめらかに径が拡大されており、次の
段差６で再び径が縮小される。段差６は、スワー
ルＳ方向に、噴霧ｆの下流側でかつ燃焼後期にス
ワールにのつた噴霧ｆが倒達する位置に設けられ
ている。段差６の数は噴孔数と必ずしも対応させ
なくてもよいが、望ましくは噴孔の穴数と対応さ
せる方がよい。

上記のような第１実施例における作用は次の通
りである。

まずスワールポートからスワールを与えられた
空気が燃焼室内に吸引され、吸、排気弁が閉じら
れ、ピストン１が上昇して燃焼室内の空気はスワ
ールを維持しながら、断熱圧縮され、燃料噴射弁
から燃料が噴霧されて着火し、燃料は燃焼され
る。

スワールＳがキヤビテイ２内を矢印Ｓ方向に流
れているとき、スワールＳの、突起５の表面７に
沿う流れは、段差６のところで突起表面から剥離
して、第１図に示すような小さな乱れのマイクロ
タービランスS´を生じる。

このマイクロタービランスS´は、スワールＳと
協働して空気と燃料との混合を促進させて燃焼を
良好にさせる。高速マツチングのデイーゼルエン
ジンでは、空気量の少ない低速域では、スワール
Ｓの生成が少ないので、マイクロタービランスS´
の生成は低速域の燃焼改善に大きく寄与し、スモ
ークの発生を抑え、出力を向上させる。

本考案においては突起５中の段差６によるマイ
クロタービランス生成であつて、従来のような突
条を燃焼室内に形成してマイクロタービランスを
生成させるものではないので、スワールＳが突条
によつて弱められることはなく、段差６はスワー
ルＳの弱い低速域の燃焼を弱めることにはならな
い。

また、段差６が突起５に形成されているで、燃
焼室側壁や底面の外周部に形成されている場合の
ように憤霧に影響を与えることはなく、過早着火
を促さない。したがつて過早着火による燃料と空
気の不十分な混合時の着火によるスモーク発生の
増大は抑制される。しかも、突起５の表面７に沿
う流れは着火後若干時間がたつた流れであり、着
火後の燃焼を蚊善するのに効果があるので、スモ
ークの発生は抑制される。

第２実施例 第３図は本考案の第２実施例を示している。第
２実施例では、キヤビテイ２の底面３中央に形成
された円錐状の突起５に、５本の段差８が形成さ
れている場合を示している。この場合の燃料噴射
弁噴孔数は４であつて、段差８の数は噴孔数と必
ずしも対応させなくてもよいことを示している。
その他の構成、作用は第１実施例に準じるので、
準じる部分に第１実施例と同一の符号を付すこと
により説明を省略する。

［考案の効果］ 以上の説明から明らかなように、本考案のデイ
ーゼルエンジンの燃焼室によるときは、キヤビテ
イの中央突起に段差を設けたの、高速マツチング
されたデイーゼルエンジンにおいて、低速時のス
ワールが弱い領域においてマイクロタービランス
を発生させ、黒鉛の発生を抑制するとともに、出
力向上をはかることができる。また燃費率も改善
できる。

また、低速域において適当な着火遅れが確保さ
れるとともに、マイクロタービランスによつて過
度の着火遅れもなく、振動、騒音が低減できる。

さらに、燃焼の良好化によつて燃焼期間を短か
くでき、排気（とくにHC、CO）を改善できる。
また、低温時の始動性、吹上りも改善できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例に係るデイーゼル
エンジンの燃焼室を適用したピストンの平面図、
第２図は第１図のピストンの断面図、第３図は本
考案の第２実施例に係るデイーゼルエンジンの燃
焼室を適用したピストンの平面図である。 １……ピストン、２……キヤビテイ、３……底
面、５……突起、６、８……段差、７……突起表
面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンの頂部に凹状のキヤビテイを有し該キ
   ヤビテイ底面に円錐形の突起を有しているデイー
   ゼルエンジンの燃焼室において、前記突起の外周
   部に、スワール方向に急激に径を縮小させた段差
   を設けたことを特徴とするデイーゼルエンジンの
   燃焼室。